特許第6783679号(P6783679)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6783679-モータ及びブロワ 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6783679
(24)【登録日】2020年10月26日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】モータ及びブロワ
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/24 20060101AFI20201102BHJP
   H02K 7/14 20060101ALI20201102BHJP
   F04D 29/00 20060101ALI20201102BHJP
   F04D 29/056 20060101ALI20201102BHJP
   F04D 29/42 20060101ALI20201102BHJP
   F04D 29/62 20060101ALI20201102BHJP
   F04D 29/66 20060101ALN20201102BHJP
【FI】
   H02K5/24 A
   H02K7/14 A
   F04D29/00 B
   F04D29/056 B
   F04D29/42 H
   F04D29/62 D
   F04D29/62 F
   !F04D29/66 L
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-18694(P2017-18694)
(22)【出願日】2017年2月3日
(65)【公開番号】特開2018-126034(P2018-126034A)
(43)【公開日】2018年8月9日
【審査請求日】2019年7月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000106944
【氏名又は名称】シナノケンシ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 洋平
【審査官】 島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−005211(JP,A)
【文献】 特開2000−217302(JP,A)
【文献】 特開2015−126583(JP,A)
【文献】 特開2001−245447(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/24
F04D 29/00
F04D 29/056
F04D 29/42
F04D 29/62
H02K 7/14
F04D 29/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータハウジングと、
前記モータハウジング内に固定子コアが一体に組み付けられた固定子と、
前記固定子コアの中心孔に同心状に配置されて一体に組み付けられた筒状に形成された軸受ハウジングと、
前記軸受ハウジング内に挿入され内外輪接着により固定された軸受を介して回転子軸が回転可能に軸支された回転子と、備えたモータであって、
前記固定子コアは、コアバック部の外周面と前記モータハウジングの内壁面との間に径方向に弾性部材を介在させて一体に組み付けられており、前記軸受ハウジングは、前記固定子コアの径方向内側に突設された極歯に囲まれた中心孔に対して前記固定子コアの軸方向両端より一体に組み付けられ前記軸受ハウジングと前記軸受との間に軸方向に弾性部材を介在させて組み付けられていることを特徴とするモータ。
【請求項2】
請求項1記載のモータのモータハウジングとブロワハウジングが一体に組み付けられて送風路が形成されており、前記ブロワハウジングに延設された回転子軸にインペラが一体に組み付けられているブロワ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばCPAP(Continuous Positive Airway Press)用などに用いられるモータ及びこれを備えたブロワに関する。
【背景技術】
【0002】
モータを構成する部品としては、回転子、固定子、軸受、モータハウジングなどがある。例えばインナーロータ型のモータにおいては、固定子は固定子コアの外径部分をモータハウジングに固定されている。また回転子は軸受部品を介してモータハウジングに回転可能に軸支されている。
このようなモータ構造において、モータハウジングには、固定子及び回転子の磁気吸引力に起因する振動、回転子と軸受に関する振動の全てが伝達されることになる。また、モータハウジングに伝達される振動は、モータの回転数が早くなればなるほど大きくなってしまう。
【0003】
この対策として、組立後のモータを弾性部品等で包むか或いは吊るなどの防振対策をした後に、製品に組み付けられている。例えば、回転子を軸支する軸受のクリープ現象を抑制するために通し孔が設けられたボールハウジングに嵌め込まれたボールベアリングの外周部に弾性体よりなる筒状のキャップを装着する。このキャップの内周面には通し孔に対応する突起が設けられている。キャップをボールハウジングの外周部に通し孔に突起を嵌め込んで装着することで、突起がボールベアリングの外輪を押圧することで外輪の回転を抑制する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−250245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したモータに防振対策を設けるとすれば、モータを弾性部品で包むとモータ及びこれを組み付けるブロワの外径が大きくなってしまい、モータを弾性部品で吊るすとすれば、防振用の空間が必要となるため製品形状が大きくなってしまう。
また、特許文献1では、ボールハウジングの外周部に弾性体よりなるキャップを装着するので、回転子と軸受間の振動は多少減衰するが固定子と回転子間の駆動がモータハウジング(ブラケット)に伝達されて騒音となり易い。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するため、次の構成を備える。
モータハウジングと、前記モータハウジング内に固定子コアが一体に組み付けられた固定子と、前記固定子コアの中心孔に同心状に配置されて一体に組み付けられた筒状に形成された軸受ハウジングと、前記軸受ハウジング内に挿入され内外輪接着により固定された軸受を介して回転子軸が回転可能に軸支された回転子と、備えたモータであって、前記固定子コアは、コアバック部の外周面と前記モータハウジングの内壁面との間に径方向に弾性部材を介在させて一体に組み付けられており、前記軸受ハウジングは、前記固定子コアの径方向内側に突設された極歯に囲まれた中心孔に対して前記固定子コアの軸方向両端より一体に組み付けられ前記軸受ハウジングと前記軸受との間に軸方向に弾性部材を介在させて組み付けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明は上記目的を達成するため、次の構成を備える。
モータハウジングと、前記モータハウジング内に固定子コアが一体に組み付けられた固定子と、前記固定子コアの中心孔に同心状に配置されて一体に組み付けられた筒状に形成された軸受ハウジングと、前記軸受ハウジング内に挿入された軸受を介して回転子軸が回転可能に軸支された回転子と、備えたモータであって、前記固定子コアは、前記モータハウジングとの間に径方向に弾性部材を介在させて一体に組み付けられており、前記軸受ハウジングは、前記固定子コアの径方向内側に突設された極歯に囲まれた中心孔に対して前記固定子コアの軸方向両端より一体に組み付けられていることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、固定子コア、軸受及び軸受ハウジングが一体に固定され、固定子コアとモータハウジングとの間に弾性部材が介在して組み付けられているので、モータハウジング内で固定子、回転子、軸受との間で防振構造を設けることで、モータの振動がモータハウジングに伝わり難くすることができる。
【0009】
前記軸受ハウジングは、前記固定子コアの径方向内側に突設された極歯に囲まれた中心孔に対して前記固定子コアの両端より一体に組み付けられていることが好ましい。これにより、軸受ハウジングがモータハウジングではなく固定子コアに一体に組み付けられていることから、軸受から直接モータハウジングに振動が伝達され難くなる。
【0010】
前記軸受ハウジングと前記軸受との間に軸方向に弾性部材を介在させて組み付けられていてもよい。
これにより、高速回転する軸受に対して予圧を付与して寿命を長くすることができる。
尚、弾性部材としては、ウェーブワッシャー、板ばね、皿ばね、コイルスプリング等があるが、小型のボールベアリングを高速回転で使用するCPAP用においては、コイルスプリングを自然長より圧縮させて介在させた方が、ウェーブワッシャーに比べて付与する予圧のばらつきが少ないため軸方向に荷重を安定して付与できるのでより好ましい。
【0011】
上述したモータのモータハウジングとブロワハウジングが一体に組み付けられて送風路が形成されており、前記ブロワハウジングに延設された回転子軸にインペラが一体に組み付けられているブロワにおいては、モータハウジングの振動がブロワハウジングに伝わり難くなるため、静音化を実現することができる。
【発明の効果】
【0012】
モータハウジング内で固定子、回転子、軸受との間で防振構造を設けることでモータの振動がモータハウジングに伝わり難くしたモータを提供することができる。
また、モータハウジングが振動し難いので、ブロワハウジングに振動が伝わり難くなるため静音化を実現したブロワを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】モータの断面図である。
図2】ブロワの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るモータ及びブロワの一実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。先ず、モータの概略構成について図1を参照して説明する。モータは、DCブラシレスモータが用いられ、本実施例ではインナーロータ型モータが用いられる。
【0015】
図1に示すように、モータハウジング1は、第1モータハウジング1aと第二モータハウジング1bを組み合わせて、連通するねじ孔1c、1dに図示しないボルトをねじ嵌合させて一体に組み付けられる。モータハウジング1としては、SUS(ステンレススチール)、アルミニウム材等が用いられる。
【0016】
固定子2は、モータハウジング1内に組み付けられている。固定子2は、固定子コア2aとその両端面を覆うインシュレータ2bと極歯2eの周囲にインシュレータ2bを介してマグネットワイヤーが巻かれたコイル2cを備えている。固定子コア2aは複数の電磁鋼板が積層されてかしめられた積層コアが用いられる。固定子コア2aは環状のコアバック部2dから径方向内側に向かって複数の極歯2eが形成されている。固定子コア2aは、コアバック部2dの外周面に弾性部材3を介在させて第2モータハウジング1bの内壁面と一体に固定されている。弾性部材3としてはゴムシート、エラストマー樹脂等が用いられる。
これにより、固定子2と回転子6間の振動をモータハウジング1に伝わり難くすることができる。
【0017】
また、固定子コア2aの径方向内側に突設された極歯2eに囲まれた中心孔2fには筒状に形成された一対の軸受ハウジング4a,4bが両端面より圧入又は接着にて固定されている。軸受ハウジング4a,4bは、非磁性体金属材(例えばアルミニウム、非磁性ステンレス等)が用いられ、各極歯2eの磁束作用面に圧入されるため、圧入量が必要最小限となるように調整されている。軸受ハウジング4a,4bの固定子コア2aに対する圧入量が増えて極歯2eの磁束作用面に発生する磁束を妨げると渦電流が発生してモータ性能が低下するおそれがあるからである。軸受ハウジング4a,4bの筒孔内には、軸受5a,5b(ボールベアリング)が各々挿入され、内外輪が接着固定されている。
【0018】
回転子6は、各軸受ハウジング4a,4b内に挿入された軸受5a,5bを介して回転子軸7が回転可能に軸支されている。軸受ハウジング4aと軸受5aとの間にはウェーブワッシャー8a(弾性部材)を介在させている。これにより、高速回転する軸受5a,5bに対して予圧を付与して寿命を長くすることができる。
尚、ウェーブワッシャー8aに替えて、板ばね、皿ばね等であってもよいが、小型のボールベアリングを高速回転で使用するCPAP用においては、コイルスプリング8b(図2参照)を自然長より圧縮させて介在させた方が、ウェーブワッシャー8aに比べて付与する予圧のばらつきが少ないため軸方向に荷重を安定して付与できるのでより好ましい。
【0019】
回転子軸7には回転子マグネット9が同心状に組み付けられている。回転子軸7は軸受ハウジング4a,4bに組み付けられた軸受5a,5bに挿入されて回転子マグネット9が固定子コア2aの極歯2eと対向配置されて組み付けられている。回転子マグネット9と軸受5a,5bとの間にはスペーサー10a,10bが設けられている。
【0020】
また、回転子軸7の一端は、第1モータハウジング1aより外部に延設されており、出力側となる。また、回転子軸7の第2モータハウジング1b側の他端には、センサマグネット11とバランサー12が一体に組み付けられている。センサマグネット11は、回転子磁極位置を検出するものであり、回転子マグネット9と周方向に同位相で着磁されている。バランサー12は、センサマグネット11のバックヨークとして用いられ或いは後述するインペラのカウンターバランス修正材として用いられる。
【0021】
インシュレータ2bには、モータ駆動回路が設けられたモータ基板13が支持されている。モータ基板13には、コイル2cから引き出された引出し線が接続される。また、モータ基板13のセンサマグネット11の対向面には、磁極検出センサ14(ホールIC等)が設けられている。磁極検出センサ14によりセンサマグネット11の磁極位置を検出することで、回転子マグネット9の回転位置を検出してコイル2cへの通電方向が切り替えられる。
【0022】
上述したように、固定子コア2aは、第2モータハウジング1bの内壁面に径方向に弾性部材3を介して一体に組み付けられており、軸受ハウジング4a内に軸受5aを介して回転子軸7が一体に組み付けられ、軸受5aと軸受ハウジング4a間に軸方向にウェーブワッシャー8a(弾性部材)を介して回転子6が回転可能に軸支されている。
【0023】
上記構成によれば、固定子コア2a、軸受5a及び軸受ハウジング4aが一体に固定され、固定子コア2aと第2モータハウジング1bとの間に弾性部材3が介在して組み付けられているので、モータハウジング1内で固定子2、回転子6、軸受5a,5bとの間で防振構造を設けることで、モータの振動がモータハウジング1に伝わり難くすることができる。
【0024】
図2は、図1と同様のモータMを備えたブロワ15の構成例を示す。モータMの内部構造は図1と同様であるので、異なる構成を中心に説明する。ブロワ15は、CPAP用のブロワを想定しているものとする。
モータハウジング16(第1モータハウジング16a及び第2モータハウジング16b)内にはモータMが収納されている。また第1モータハウジング16aとブロワハウジング17に囲まれたブロワ室20内にはインペラ18が収納されている。モータハウジング16(第1モータハウジング16a及び第2モータハウジング16b)とブロワハウジング17の外周側には湾曲した凹溝が各々形成されておりこれらを組み合せて環状の送風路19が形成されている。ブロワハウジング17の中央部には流体を軸方向に吸込む吸込み口17aが形成されおり、インペラ18により周方向に加圧されて送風路19を周回して吐出されるようになっている。
【0025】
固定子コア2aは、コアバック部2dの外周面と第2モータハウジング16bの内壁面との間に弾性部材3を介在させて第2モータハウジング16bと第1モータハウジング16aの対向する端面どうしの間に挟み込まれて一体に固定されている。これにより、固定子2と回転子6間の振動をモータハウジング16に伝わり難くすることができる。
また、軸受ハウジング4aと軸受5aとの間にはコイルスプリング8b(弾性部材)を自然長より圧縮した状態で介在させている。これにより、高速回転する軸受5a,5bに対して安定した予圧を付与して(付与する予圧のばらつきが少ないため)寿命を長くすることができる。
よって、モータハウジング16内で固定子2、回転子6、軸受5a,5bとの間で防振構造を設けることで、モータMの振動がモータハウジング16に伝わり難くすることができる。
【0026】
インペラ18は、第1モータハウジング16aより外側に延設されブロワ室20側に進入した回転子軸7の一端に組み付けられている。また、第2モータハウジング16b内の回転子軸7の他端には、センサマグネット11とバランサー12が一体に組み付けられている。バランサー12は、センサマグネット11のバックヨークであると共にインペラ18のカウンターウェイトとして機能する。
【0027】
モータMを起動すると、ブロワ15のインペラ18が回転し、該インペラ18の回転によりブロワハウジング17内に吸込み口17aから軸方向に吸い込まれた流体は送風路19を周回して加圧され図示しない吐出口より圧縮空気が送り出されるようになっている。
【0028】
上記構成によれば、モータハウジング16の振動が低減できるのでブロワハウジング17に振動が伝わり難く、静音化を実現することができる。
【0029】
上記実施例は、インナーロータ型のモータを用いて説明したが、固定子コアは、モータハウジング(軸受ハウジング)の外壁面に径方向に弾性部材を介在させて一体に組み付けることができれば、アウターロータ型のモータであっても適用することができる。
【符号の説明】
【0030】
1,16 モータハウジング 1a,16a 第1モータハウジング 1b,16b 第2モータハウジング 1c,1d ねじ孔 2 固定子 2a 固定子コア 2b インシュレータ 2c コイル 2d コアバック部 2e 極歯 2f 中心孔 3 弾性部材 4a,4b 軸受ハウジング 5a,5b 軸受 6 回転子 7 回転子軸 8a ウェーブワッシャー 8b コイルスプリング 9 回転子マグネット 10a,10b スペーサー 11 センサマグネット 12 バランサー 13 モータ基板 14 磁極検出センサ 15 ブロワ 17 ブロワハウジング 17a 吸込み口 18 インペラ 19 送風路
図1
図2