【実施例1】
【0015】
図1から
図8、および
図11,
図12を参照して、実施例1の不揮発性メモリを有する半導体装置について説明する。
図1は、本実施例の半導体チップCHPのレイアウトを示す概略図である。半導体チップCHPは、
図1に示すように、CPU(Central Processing Unit)CC1、RAM(Random Access Memory)CC2、アナログ回路CC3を有している。また、半導体チップCHPは、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)CC4、フラッシュメモリCC5および半導体チップCHPの周辺部に配置されたI/O(Input/Output)回路CC6を有し、半導体装置を構成している。
【0016】
CPUCC1は、中央演算処理装置とも呼ばれ、記憶装置から命令を読み出して解読し、それに基づいて多種多様な演算および制御などを行う。
【0017】
RAMCC2は、記憶情報をランダムに、すなわち随時記憶されている記憶情報を読み出すこと、および、記憶情報を新たに書き込むことができるメモリであり、随時書き込み読み出しができるメモリとも呼ばれる。RAMとしては、スタティック回路を用いたSRAM(Static RAM)を用いる。
【0018】
アナログ回路CC3は、時間的に連続して変化する電圧および電流の信号、すなわちアナログ信号を扱う回路であり、例えば増幅回路、変換回路、変調回路、発振回路、電源回路などから構成されている。
【0019】
EEPROMCC4およびフラッシュメモリCC5は、書込み動作および消去動作において、記憶情報を電気的に書き換え可能な不揮発性メモリの一種であり、電気的消去可能なプログラマブル読み出し専用メモリとも呼ばれる。このEEPROMCC4およびフラッシュメモリCC5のメモリセルは、記憶(メモリ)用の例えばMONOS(Metal Ox
ide Nitride Oxide Semiconductor)型トランジスタまたはMNOS(Metal Nitride Oxide Semiconductor)型トランジスタなどから構成される。
【0020】
EEPROMCC4とフラッシュメモリCC5の相違点は、EEPROMCC4が、例えば、バイト単位で消去のできる不揮発性メモリであるのに対し、フラッシュメモリCC5は、例えば、ワード線単位で消去できる不揮発性メモリである点である。一般に、フラッシュメモリCC5には、CPUCC1で種々の処理を実行するためのプログラムなどが記憶されている。これに対し、EEPROMCC4には、書き換え頻度の高い各種情報が記憶されている。EEPROMCC4またはフラッシュメモリCC5は、複数の不揮発性メモリセルが行列状に配置されたメモリセルアレイと、それ以外の、アドレスバッファ、行デコーダ、列デコーダ、ベリファイセンスアンプ回路、センスアンプ回路および書込み回路などを有している。
【0021】
I/O回路CC6は、入出力回路であり、半導体チップCHP内から半導体チップCHPの外部に接続された機器への情報の出力、または、半導体チップCHPの外部に接続された機器から半導体チップ内への情報の入力などを行なうための回路である。
【0022】
本実施例の半導体装置は、メモリセル領域とロジック回路領域とを有している。メモリセル領域には、複数の不揮発性メモリセルが行列状に配置されたメモリセルアレイが形成されている。ロジック回路領域には、CPUCC1、RAMCC2、アナログ回路CC3、I/O回路CC6、および、EEPROMCC4またはフラッシュメモリCC5のアドレスバッファ、行デコーダ、列デコーダ、ベリファイセンスアンプ回路、センスアンプ回路または書込み回路などが形成されている。
【0023】
図2は、本実施例における半導体装置のメモリセルアレイを示す平面図である。メモリセルアレイに複数形成されるメモリセルMCは、例えば
図1のフラッシュメモリCC5に形成されている。以下では、メモリセルが形成されている領域をメモリセル領域と呼ぶ。メモリセル領域には、X方向に延在する複数のフィンFIが、Y方向に所定の間隔で配置されている。X方向およびY方向は、半導体基板SBの主面に沿う方向であり、X方向はY方向に対して交差(直交)している。
【0024】
図12に、フィン構造を示す。フィンFIは、半導体基板SBの主面から選択的に突出した略直方体の突起形状を有している。フィンFIは、半導体基板SBの一部であり、半導体基板SBの活性領域(半導体層)である。半導体基板SBを平面視した際、隣り合うフィンFI同士の間は、絶縁膜からなる素子分離膜EIで埋まっており、フィンFIの周囲は、素子分離膜EIで囲まれている。この素子分離膜EIには、例えば、STI(
Shallow Trench Isolation)を用いる。フィンFIは、メモリセルMCを形成するための活性領域(半導体層)である。半導体基板SBは、例えば1〜10Ωcm程度の比抵抗を有するp型の単結晶シリコンなどからなる。
【0025】
フィンFIの下端部分は、
図12に示すように、半導体基板SBの主面を覆う素子分離膜EIで囲まれている。ただし、フィンFIの一部は、素子分離膜EIよりも上に突出している。つまり、隣り合うフィン同士の間の全ての領域が素子分離膜EIにより埋め込まれているわけではない。
【0026】
複数のフィンFI上には、
図2に示すように、Y方向に延在する複数の制御ゲート電極CGおよび複数のメモリゲート電極MGが配置されている。また、フィンFIの上面には、制御ゲート電極CGおよびメモリゲート電極MGを挟むように、制御ゲート電極CGの側のドレイン領域MDと、メモリゲート電極側のソース領域MSとが形成されている。すなわち、X方向において、互いに隣り合う1つの制御ゲート電極CGおよび1つのメモリゲート電極MGは、ソース領域MSとドレイン領域MDとの間に位置している。
【0027】
ドレイン領域MDおよびソース領域MSは、n型の半導体領域である。ドレイン領域MDは、X方向において隣り合う2つの制御ゲート電極CG同士の間に形成されており、ソース領域MSは、X方向において隣り合う2つのメモリゲート電極MG同士の間に形成されている。メモリセルMCは、制御ゲート電極CG、メモリゲート電極MG、ドレイン領域MDおよびソース領域MSから構成される不揮発性記憶素子である。以下では、1つのメモリセルMCを構成するソース領域MSおよびドレイン領域MDを、ソース・ドレイン領域と呼ぶ場合がある。
【0028】
X方向に隣接する2つのメモリセルMCは、ドレイン領域MDまたはソース領域MSを共有している。ドレイン領域MDを共有する2つのメモリセルMCは、Y方向に延在するドレイン領域MDを軸として、X方向に線対称となっており、ソース領域MSを共有する2つのメモリセルMCは、Y方向に延在するソース領域MSを軸として、X方向に線対称となっている。
【0029】
各フィンFIには、X方向に並ぶ複数のメモリセルMCが形成されている。各メモリセルMCのドレイン領域MDは、メモリセルMC上に形成された層間絶縁膜(図示しない)を貫通するコンタクトホール内に形成されたコンタクトプラグ(ビア)CPを介して、X方向に延在する配線MWからなるソース線SLに電気的に接続されている。また、Y方向に配列された複数のメモリセルMCのソース領域MSは、Y方向に延在する配線MWからなるビット線BLに電気的に接続されている。
【0030】
フィンFIは、半導体基板SBの主面から、主面に対して垂直な方向に突出する、略直方体の突起半導体層である。なお、フィンFIは、必ずしも直方体である必要はなく、短辺方向における断面視にて、長方形の角部が丸みを帯びていてもよい。また、フィンFIのそれぞれの側面は半導体基板SBの主面に対して垂直であってもよいが、
図5に示すように、垂直に近い傾斜角度を有していてもよい。つまり、フィンFIのそれぞれの断面形状は、略直方体であるか、または台形である。ここでは、フィンFIのそれぞれの側面は、半導体基板SBの主面に対して斜めに傾斜している。
【0031】
また、
図2に示すように、半導体基板SBを平面視した場合、フィンFIが延在する方向が各フィンの長辺方向であり、当該長辺方向に直交する方向が各フィンの短辺方向である。つまり、フィンの長さは、フィンの幅よりも大きい。フィンFIは、長さ、幅、および高さを有する突起半導体層であれば、その形状は問わない。例えば、平面視で、蛇行するレイアウトを有していてもよい。
【0032】
図3は、本実施例の半導体装置の斜視図である。
図3では、メモリセル領域の構造が分かり易いように、素子分離膜EIおよび各素子の上の層間絶縁膜および配線と、制御ゲート電極CG上のキャップ絶縁膜と、メモリゲート電極MG上のキャップ絶縁膜を省略している。メモリセル領域のフィンFIの上部にはメモリセルMCが形成されている。
図3に示すように、制御ゲート電極CGおよびメモリゲート電極MGは、フィンFIと交差し、フィンFIを跨ぐようにY方向に延在している。
【0033】
図4は、
図2のA−A’線における断面図である。また、
図5は、
図2のB−B’線における断面図である。なお、1つのフィンFI上には複数の素子が並んで形成されているが、
図3および
図4では、フィンFI上にメモリセルMCを1つのみ示している。
【0034】
図4に示すように、制御ゲート電極CGの上面は絶縁膜IF4により覆われ、メモリゲート電極MGの上面は絶縁膜IF5により覆われている。絶縁膜IF4,IF5のそれぞれは、例えばシリコン窒化膜からなる。制御ゲート電極CGは、例えばポリシリコン膜からなり、当該ポリシリコン膜内には、n型の不純物(例えばP(リン)またはAs(ヒ素))が導入されている。メモリゲート電極MGは、例えばポリシリコン膜からなる。本実施例の主な特徴は、メモリゲート電極MGの構造とその電極材料にあり、当該特徴については後述する。
【0035】
図3および
図4に示すように、メモリセル領域のソース・ドレイン領域を構成する拡散領域D1が形成されたフィンFIの上面および側面は、シリサイド層S1により覆われている。シリサイド層S1は、例えばNiSi(ニッケルシリサイド)からなる。シリサイド層S1は、フィンFIの上面および側面に沿って延在する層からなる。
【0036】
図3から
図5に示すように、フィンFIのそれぞれの側面の下部は、半導体基板SBの主面上に形成された素子分離膜EIで囲まれている。つまり、各フィン同士の間は、素子分離膜EIで分離されている。
図4に示すように、フィンFI内には、フィンFIの上面から下部に亘ってp型の半導体領域であるp型ウェルPWが形成されている。
【0037】
フィンFIの上面上および側面上には、ゲート絶縁膜GIを介して制御ゲート電極CGが形成されており、フィンFIの長辺方向(X方向)において、制御ゲート電極CGに隣り合う領域には、ONO膜ONを介してメモリゲート電極MGが形成されている。制御ゲート電極CGとメモリゲート電極MGとの間には、ONO膜ONが介在しており、制御ゲート電極CGとメモリゲート電極MGとの間は、ONO膜ONで電気的に分離されている。また、メモリゲート電極MGとフィンFIの上面との間には、ONO膜ONが介在している。ONO膜ONはメモリゲート電極MGの側面および底面を覆うように連続的に形成されている。このため、ONO膜ONは、
図4に示すようなゲート長方向に沿う断面においてL字型の断面形状を有する。
【0038】
ゲート絶縁膜GIは、シリコンからなる半導体基板SBの突起半導体層であるフィンFIの主面および側面を熱酸化して形成した熱酸化膜(シリコン酸化膜)であり、その膜厚は例えば2nmである。また、ONO膜ONは、シリコンからなる半導体基板SBの突起半導体層であるフィンFIの主面および側面を熱酸化した熱酸化膜(シリコン酸化膜)からなるシリコン酸化膜OX1と、シリコン酸化膜OX1上に形成されたシリコン窒化膜NFと、シリコン窒化膜NF上に形成されたシリコン酸化膜OX2とからなる。シリコン窒化膜NFは、メモリセルMCの電荷蓄積部(電荷蓄積層)である。ここで、シリコン酸化膜OX1は例えば4nmの膜厚を有し、シリコン窒化膜NFは例えば7nmの膜厚を有し、シリコン酸化膜OX2は例えば9nmの膜厚を有する。
【0039】
つまり、ONO膜ONは、フィンFIの上面側および制御ゲート電極CGの側面側から順に(下層から順に)積層されたシリコン酸化膜OX1、シリコン窒化膜NFおよびシリコン酸化膜OX2からなる積層構造を有する。ONO膜ONの膜厚は、例えば20nmであり、制御ゲート電極CG下のゲート絶縁膜GIの膜厚よりも大きい。シリコン酸化膜OX2は、シリコン酸窒化膜により形成してもよい。
【0040】
フィンFIの短辺方向(Y方向)において、制御ゲート電極CGは、ゲート絶縁膜GIを介して、フィンFIの上面、側面および素子分離膜EIの上面に沿って延在している。同様に、フィンFIの短辺方向において、メモリゲート電極MGは、ONO膜ONを介して、フィンFIの主面、側面および素子分離膜EIの上面に沿って延在している。
【0041】
また、制御ゲート電極CG、メモリゲート電極MG、ゲート絶縁膜GI、ONO膜ON、絶縁膜IF4およびIF5を含むパターンの側面は、サイドウォール(サイドウォールスペーサ)SWにより覆われている。サイドウォールSWは、例えばシリコン窒化膜およびシリコン酸化膜の積層構造からなる。シリサイド層S1は、制御ゲート電極CGを含む当該パターンおよび上記サイドウォールSWから露出するフィンFIの表面を覆っている。
【0042】
図4に示すように、制御ゲート電極CGを含む当該パターンの直下のフィンFIの上面を挟むように、一対のソース・ドレイン領域がフィンFIの上面に形成されている。ソース領域およびドレイン領域のそれぞれは、n
−型半導体領域であるエクステンション領域EXおよびn
+型半導体領域である拡散領域D1を有する。拡散領域D1は、エクステンション領域EXに比べて不純物濃度が高く、形成深さが深い。ソース領域およびドレイン領域のそれぞれにおいてエクステンション領域EXおよび拡散領域D1は互いに接しており、エクステンション領域EXは、拡散領域D1よりも上記パターンの直下のフィンFIの上面、つまりチャネル領域側に位置している。
【0043】
ドレイン領域MDは、制御ゲート電極CGの直下のフィンFIに隣接し、ソース領域MSは、メモリゲート電極MGの直下のフィンFIに隣接している。つまり、制御ゲート電極CGおよびメモリゲート電極MGを含むパターンを平面視において挟むソース・ドレイン領域のうち、ドレイン領域MDは制御ゲート電極CG側に位置し、ソース領域MSはメモリゲート電極MG側に位置する。言い換えれば、平面視において、ドレイン領域MDは制御ゲート電極CGに隣接し、ソース領域MSはメモリゲート電極MGに隣接する。
【0044】
このように、不純物濃度が低いエクステンション領域EXと、不純物濃度が高い拡散領域D1とを備えた構造、つまりLDD(Lightly Doped Drain)構造を有するソース・ドレイン領域を形成することで、当該ソース・ドレイン領域を有するトランジスタの短チャネル特性を改善することができる。当該ソース領域は、
図2に示すソース領域MSに相当し、当該ドレイン領域は、
図2に示すドレイン領域MDに相当する。
【0045】
図4に示すように、フィンFI上および素子分離膜EI上には、例えばシリコン酸化膜からなる層間絶縁膜ILが形成されている。層間絶縁膜ILは、フィンFI、素子分離膜EI、制御ゲート電極CG、メモリゲート電極MG、ソース・ドレイン領域MS,MD、絶縁膜IF4、IF5、サイドウォールSWおよびシリサイド層S1のそれぞれを覆っている。層間絶縁膜ILの上面は、平坦化されている。
【0046】
層間絶縁膜IL上には複数の配線MWが形成され、配線MWは、層間絶縁膜ILを貫通するコンタクトホール内に設けられたコンタクトプラグCPを介して、メモリセルMCのソース領域および上記ドレイン領域に電気的に接続されている。コンタクトプラグCPの底面は、シリサイド層S1の上面に直接接しており、コンタクトプラグCPはシリサイド層S1を介してソース・ドレイン領域に電気的に接続されている。シリサイド層S1は、例えばタングステン(W)を主に含む金属膜からなる接続部であるコンタクトプラグCPと、半導体からなるフィンFI内のソース・ドレイン領域との間の接続抵抗を低減する役割を有する。
【0047】
なお、制御ゲート電極CGの給電領域(図示しない)では、制御ゲート電極CG上の絶縁膜IF4が除去され、制御ゲート電極CGの上面にシリサイド層を介してコンタクトプラグCPが接続されている。また、メモリゲート電極MGの給電領域(図示しない)では、メモリゲート電極MG上の絶縁膜IF5が除去され、メモリゲート電極MGの上面にシリサイド層を介してコンタクトプラグCPが接続されている。
【0048】
メモリセルMCは、制御ゲート電極CG、メモリゲート電極MG、ドレイン領域およびソース領域を有する不揮発性記憶素子である。制御ゲート電極CGおよびソース・ドレイン領域は制御トランジスタを構成し、メモリゲート電極MGおよびソース・ドレイン領域はメモリトランジスタを構成し、メモリセルMCは制御トランジスタおよびメモリトランジスタにより構成されている。つまり、制御トランジスタとメモリトランジスタとは、ソース・ドレイン領域を共有している。また、制御ゲート電極CGおよびメモリゲート電極MGのゲート長方向(X方向)のドレイン領域とソース領域との間の距離が、メモリセルMCのチャネル長に相当する。制御トランジスタおよびメモリトランジスタは、フィンFIの表面をチャネルとして有するFinFETである。
【0049】
図5に示すように、本実施の形態のメモリゲート電極MGは、ゲート幅方向(
図2のY方向)において、フィンFIの側面(側壁)および上面を、ONO(Oxide Nitride Oxide)膜ONを介して覆っている。つまり、メモリゲート電極MGは、フィンFIの上面上および側面上にONO膜ONを介して形成されている。言い換えれば、半導体基板SBの主面に沿うY方向において、フィンFIの側面はメモリゲート電極MGと隣り合っており、半導体基板SBの主面に対して垂直な方向において、フィンFIの上面とメモリゲート電極MGとは隣り合っている。
【0050】
ここで、上述したスプリットゲート型Fin−MONOSデバイスの問題点について、
図6および
図7を参照して詳述する。
図6は、スプリットゲート型MONOSメモリの書込み/消去動作を概念的に示している。なお、
図6では説明が分かり易いように、従来のプレーナー型のMONOSメモリの例を示す。
【0051】
従来のスプリットゲート型MONOSメモリでは、データの書込み時には、例えば、ドレイン電極(Drain)に0.3V,ソース電極(Source)に5Vの電圧をそれぞれ印加し、制御ゲート電極(CG)に1V,メモリゲート電極(MG)に10Vの電圧をそれぞれ印加する。これにより、ソース電極(Source)−ドレイン電極(Drain)間にチャネルが形成される。この際、制御ゲート電極(CG)とメモリゲート電極(MG)間の電位差から生じる電界によりチャネルの電子にエネルギーを与えることによって加速し、ソース電極(Source)のサイドから電荷蓄積膜であるONO膜のシリコン窒化膜中に電子を注入する。いわゆる、SSI(Source-Side-Injection)書込みと呼ばれるデータ書込み方式である。
【0052】
一方、データ消去時には、例えば、ドレイン電極(Drain)に1.5V,ソース電極(Source)に7Vの電圧をそれぞれ印加し、制御ゲート電極(CG)に0V,メモリゲート電極(MG)に−7Vの電圧をそれぞれ印加する。これにより、ONO膜のシリコン窒化膜中に正孔を注入する。いわゆる、BTBT(Band-to-Band-Tunneling)消去と呼ばれるデータ消去方式である。
【0053】
図7は、上記のSSI書込み/BTBT消去をフィン型MONOS構造に適用した場合の電界シミュレーション結果(MGバイアス印加時)を示している。
図7に示すように、電界が強くなる箇所は、フィン(Fin)上部のONO膜の下層側(bottom側)のシリコン酸化膜(図中の1)、およびフィン(Fin)下部のONO膜の上層側(top側)のシリコン酸化膜(図中の2)であることが分かる。これらの箇所は、いずれもフィン(Fin)の角部(ラウンド部)やメモリゲート電極MG(またはONO膜)の角部に該当し、形状的な特異点となっている。
【0054】
特に、フィン(Fin)上部の角部(ラウンド部)での電界集中は、データ書き換え時の電圧により電荷保持膜であるONO膜の劣化が懸念され、書き換え劣化やデータ保持特性の悪化(リテンション特性の低下)に繋がる可能性がある。
【0055】
そこで、本実施例の不揮発性メモリを有する半導体装置では、
図8に示すように、メモリゲート電極MGを、ONO膜ONを介してフィンFIの側面に隣接するメモリゲート電極MG1と、ONO膜ONを介してフィンFIの上面に隣接するメモリゲート電極MG2とで構成される上下2層構造としている。そして、メモリゲート電極MG1とメモリゲート電極MG2との境界面は、フィンFIの上面よりも下(半導体基板SBの主面側)に位置するように形成されている。より具体的には、フィンFI上面の直線部分およびコーナー領域(角部)よりも下側(半導体基板SBの主面側)に位置するように形成されている。
【0056】
また、メモリゲート電極MG1およびメモリゲート電極MG2の電極材料は、互いに異なる電極材料で形成されている。フィン(Fin)上部の電界集中を緩和するため、メモリゲート電極MG2の電極材料には、メモリゲート電極MG1の電極材料よりも閾値電圧(Vth)が高い電極材料を用いる。言い換えると、メモリゲート電極MG2の電極材料には、メモリゲート電極MG1の電極材料よりも仕事関数の高い電極材料を用いる。
【0057】
図11に、主要なメタルゲート電極材料の仕事関数を示す。メモリゲート電極MG1およびメモリゲート電極MG2の電極材料の組み合せには、従来のポリシリコンに加えて、これらの電極材料から選択して採用する。
図8に示す本実施例のメモリゲート電極MGでは、フィンFIの下部側のメモリゲート電極MG1をn型ポリシリコンで形成し、フィンFIの上部側のメモリゲート電極MG2をメタルゲート電極材料で形成する例を示している。
【0058】
なお、これらのメタルゲート電極材料には、配線工程などの他の半導体製造プロセスとの親和性を考慮して、アルミニウム(AL),チタン(Ti),タンタル(Ta),ルテニウム(Ru),タングステン(W)およびこれらの合金材料から選択して用いるのがより好適である。
【0059】
また、メモリゲート電極MG1とメモリゲート電極MG2の境界面、すなわち、フィンFIの上部におけるONO膜ONとメモリゲート電極MG2との間に、例えば、窒化チタン(TiN)からなるバリアメタルを設け、下地保護膜やメモリゲート電極MG2のメタルゲート電極材料の拡散防止膜としても良い。この場合、バリアメタル膜の膜厚とメタルゲート電極材料(メモリゲート電極MG2)の膜厚を変えることで、メモリゲート電極MG2の仕事関数(すなわち、閾値電圧)を調整することができる。
【0060】
次に、
図13から
図28を参照して、本実施例の半導体装置の製造方法について説明する。なお、各図の左側には
図12におけるフィンFIの長手方向(L方向)の断面を示し、右側にはフィンFIの短手方向(W方向)の断面を示す。
【0061】
先ず、
図13に示すように、半導体基板SBの主面に、フォトリソグラフィーによりフィンFIを形成し、隣接するフィンFIの間を埋めるように素子分離EIを形成する。フィンFIを形成するフォトリソグラフィーでは、半導体基板SBの主面上にレジスト膜や絶縁膜材料(ハードマスク)を用いてマスクパターンを形成した後、ドライエッチングを施して半導体基板SBを所望の寸法パターンに加工する。その後、素子分離EIとなるSTI酸化膜(Shallow Trench Isolation)をフィンFI間に埋め込み、CMP(Chemical Mechanical Polish)、ウェットエッチングによりSTI酸化膜の高さを調整することでフィン構造を形成する。
【0062】
なお、フィンFIの幅(或いはフィンFI間の幅)が露光装置の最小解像寸法よりも小さい場合、ダミーパターンを用いたスペーサリソグラフィーを用いる。スペーサリソグラフィーでは、先ずダミーパターンを形成し、それに別の材料で側壁パターンを作り込む。次にダミーパターンを除去すると、側壁パターンは元のダミーパターンの外周部に残る。その際、側壁パターンの線幅はリソグラフィーでなく、堆積した側壁パターンの膜厚に依存して決定され、線幅が均一なパターンが形成される。これをマスクとして半導体基板SBをドライエッチング加工すれば露光装置の最小解像寸法よりも線幅が細くかつ均一なフィンFIを形成することができる。
【0063】
次に、
図14に示すように、半導体基板SBの主面上にポリシリコン膜PS1を成膜し、フォトリソグラフィー(レジストパターニングおよびドライエッチング)により制御ゲート電極(コントロールゲート電極)CGを形成する。
【0064】
次に、
図15に示すように、フィンFIの上面および側面を覆うように、半導体基板SBの主面上に下層から順にシリコン酸化膜OX1、シリコン窒化膜NF、シリコン酸化膜OX2の積層膜(ONO膜ON)を成膜する。このONO膜ONは、MONOSの電荷保持膜(電荷蓄積膜)として使用される。
【0065】
続いて、
図16に示すように、メモリゲート電極MG1となるポリシリコン膜PS2を半導体基板SBの主面上に成膜する。
【0066】
次に、
図17に示すように、ポリシリコン膜PS2をドライエッチングにより除去する。この際、エッチングされたポリシリコン膜PS2の上部が、フィンFIの上部(Top部分)よりも下側(半導体基板SBの主面側)に位置するようにエッチング条件を調整する。
【0067】
次に、
図18に示すように、2層目のポリシリコン膜PS3を半導体基板SBの主面上に成膜する。この際、1層目のポリシリコン膜PS2と2層目のポリシリコン膜PS3の不純物濃度を変える。この目的は、
図24の説明で後述するウェットエッチングにより2層目のポリシリコン膜PS3を除去する際、2層目のポリシリコン膜PS3に対して1層目のポリシリコン膜PS2に選択比をもたせることで1層目のポリシリコン膜PS2が除去されないようにするためである。
【0068】
続いて、
図19に示すように、2層目のポリシリコン膜PS3をドライエッチングにより加工し、制御ゲート電極CGとなるポリシリコン膜PS1の両側面にサイドウォール形状のMGパターン(メモリゲート電極MGパターン)を形成する。
【0069】
次に、
図20に示すように、一方の(片側の)サイドウォール形状のMGパターン上に選択的にレジストをパターニングし、ドライエッチングにより他方の(レジストパターンで覆わない方の)MGパターンを除去し、その後、半導体基板SB上およびポリシリコン膜PS1上に露出しているONO膜ONを除去する。
【0070】
次に、
図21に示すように、例えばシリコン酸化膜OX3からなる絶縁膜を半導体基板SBの主面上に成膜し、異方性ドライエッチングにより制御ゲート電極CGとなるポリシリコン膜PS1の側面およびMGパターン(PS3)の側面にサイドウォールを形成する。
【0071】
続いて、
図22に示すように、層間絶縁膜ILとなるP−TEOS膜などのシリコン酸化膜を半導体基板SBの主面上に成膜する。
【0072】
次に、
図23に示すように、層間絶縁膜ILをCMPにより研磨し、2層目のポリシリコン膜PS3を露出させる。
【0073】
次に、2層目のポリシリコン膜PS3を、例えばアンモニア水(NH
3水)などの薬品を用いてウェットエッチングにより除去する。
【0074】
続いて、
図25に示すように、半導体基板SBの主面上に下層から順に、バリアメタルBM、メモリゲート電極MG2用メタル膜M1を成膜する。この際、2層目のポリシリコン膜PS3を除去した部分がバリアメタルBMおよびメモリゲート電極MGで埋まるようにする。このバリアメタルBMは、下地保護膜やメモリゲート電極MG2用メタル膜にアルミニウムなどを用いる場合の拡散防止膜として機能すると共に、バリアメタルBMの膜厚とメモリゲート電極MG2用メタル膜M1の膜厚比を変えることで、仕事関数(閾値電圧Vth)を調整する仕事関数調整膜としても機能する。従って、バリアメタルBM、メモリゲート電極MG2用メタル膜M1に、
図11に示すメタルゲート電極材料の中からなるべく仕事関数の大きい材料を選択して使用し、バリアメタルBMの膜厚とメモリゲート電極MG2用メタル膜M1の膜厚比を調整することで、メモリゲート電極MG2の閾値電圧Vthを高くすることができる。
【0075】
なお、仕事関数の値は、5eV以上であることが望ましい。また、メモリゲート電極MG2用メタル膜M1の下にHigh−k膜を形成することにより、メモリゲート電極MG2の閾値電圧Vthをより高くすることが可能である。
【0076】
次に、
図26に示すように、メタルCMPにより不要な箇所のメタル膜M1を除去することで、メモリゲート電極MG2の上部がメタルゲート化された構造が形成される。
【0077】
最後に、
図27に示すように、半導体基板SBの主面上に層間絶縁膜ILを成膜して、
図8に示す本実施例のメモリゲート電極MGが完成する。
【0078】
なお、
図13から
図27では、制御ゲート電極CGをポリシリコンで形成する例を示しているが、
図28に示すように、制御ゲート電極CGをバリアメタルBM2およびメタル膜M2からなるメタルゲート構造としてもよい。
【0079】
図29を参照して、本実施例の作用効果を説明する。本実施例の不揮発性メモリを有する半導体装置では、上述したように、メモリゲート電極MGをONO膜を介してフィンの側面に隣接するメモリゲート電極MG1(第1ゲート電極)と、ONO膜を介してフィンの上面に隣接するメモリゲート電極MG2(第2ゲート電極)の上下2層構造としている。メモリゲート電極MG1とメモリゲート電極MG2の電極材料は、互いに異なる電極材料で形成する。本実施例では、メモリゲート電極MG1を閾値電圧Vthが比較的低いポリシリコンで形成し、メモリゲート電極MG2を閾値電圧が比較的高いメタル膜で形成している。そして、メモリゲート電極MG1とメモリゲート電極MG2の境界面をフィンの上面よりも下側(半導体基板SBの主面側)に位置するように構成する。
【0080】
これにより、メモリゲート電極MG2はMONOS動作に寄与せず、メモリゲート電極MG1のみMONOS動作に寄与する。その結果、電界の集中する箇所(フィンの上部近傍)をメモリ動作時に使用しない領域とすることができ、書き換えによるONO膜の劣化を抑制することができる。