(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エンジンに連結されたダイナモメータと、前記エンジン及び前記ダイナモメータの駆動を制御する制御装置と、該ダイナモメータの回転数を計測する回転計とを備え、時刻と車速により定義された運転パターンの走行モードで該エンジンを駆動させるモード走行試験に用いられるエンジン試験装置であって、
前記制御装置は、
前記走行モードで定義されている時刻及び車速目標値毎に、前記エンジンを駆動させるための制御指令値の生成に用いる補正値を関連付けて記憶しているデータベースと、
前記走行モードで定義された時刻毎に、前記データベースにアクセスし、当該時刻に対応する車速目標値及び補正値を読み出す目標値生成部と、
前記走行モードで定義された時刻毎に、前記目標値生成部が読み出した該時刻に対応する車速目標値及び補正値を取得すると共に、前記回転計から回転数を取得し、該取得した回転数から求めた車速フィードバック値と、該取得した車速目標値と、前記取得した補正値とを用いて、前記エンジンの制御指令値を生成し、該エンジンに送信する指令値演算部と、
前記走行モードで定義された時刻毎に、前記目標値生成部が読み出した該時刻に対応する車速目標値及び補正値を取得する共に、該取得した車速目標値と前記車速フィードバック値の差分値と、該取得した補正値とを用いて、次のモード走行試験に用いる次回の補正値を生成する補正値演算部と、
前記走行モードで定義された時刻毎に、前記データベースにアクセスし、当該時刻に関連付けて記憶されている補正値を、前記次回の補正値の値に更新する補正値保存部とを有していることを特徴とする特徴とするエンジン試験装置。
N回目(Nは2以上の整数)のモード走行試験を行う場合、前記データベースには、N―1回目のモード走行試験において前記補正値演算部が生成した次回の補正値が記憶されていることを特徴とする請求項1に記載のエンジン試験装置。
前記補正値演算部は、取得した車速目標値と前記車速フィードバック値の差分値に所定学習係数を乗算して求めた学習値に、前記取得した補正値を加算することにより、次のモード走行試験に用いる次回の補正値を生成するようになっていることを特徴とする請求項1又は2に記載のエンジン試験装置。
前記指令値演算部は、前記取得した車速目標値を用いたフィードフォワード制御演算により求めたフィードフォワード制御指令値と、前記取得した車速目標値と前記車速フィードバック値の差分値を用いたフィードバック制御演算により求めたフィードバック制御指令値と、前記取得した補正値とを用いて、前記エンジンの制御指令値を生成するようになっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のエンジン試験装置。
前記目標値生成部は、前記時刻に対応する補正値として、前記データベースから、該時刻に所定の無駄時間を加算した無駄時間加算時刻に関連付けられている補正値を読み出すようになっていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のエンジン試験装置。
【背景技術】
【0002】
従来から、エンジンを備えた供試体にダイナモメータを接続し、シミュレーションによりエンジンを駆動させ、エンジンの各種特性を計測するエンジン試験装置が利用されている。例えば、特許文献1には、上記のエンジン試験装置の構成が提案されている。ここで、
図9を参照しながら、特許文献1に記載されている、従来技術のエンジン試験装置の構成を簡単に説明する。
【0003】
図示するように、従来技術のエンジン試験装置400は、ダイナモメータ414と、エンジン412の出力軸とダイナモメータ414の回転軸とを連結するシャフト(連結シャフト)432と、ダイナモ制御部416と、エンジン制御部418と、制御装置420とを有している。また、上記のエンジン412は、架台422に固定されており、その内部には燃焼室(不図示)が設けられている。また、燃焼室には空気吸引用の吸引管424が接続されており、その吸気管424には流入量調節用のスロットル426が設けられている。
【0004】
また、ダイナモ制御部416は、ダイナモメータ414に印加する電流・電圧を可変制御するものであり、このダイナモ制御部416で電流・電圧を可変制御することによって、ダイナモメータ414に接続されたエンジン412の負荷トルクが制御される。
また、エンジン制御部418は、スロットル開度指令値(或いは点火進角指令値)等の制御指令値(制御信号)をエンジン412に与えることによって、エンジン412を駆動制御するものであり、通常はECU、もしくはECUにバイパス回路を付加したエンジン制御回路で実現される。このエンジン制御部418によってエンジン412に制御指令値(たとえば所定のスロットル開度指令値)が与えられる。これにより、エンジン412が回転し、その回転がシャフト432を介してダイナモメータ414に伝達される。
なお、エンジン試験装置400では、制御装置420が、ダイナモ制御部416及びエンジン制御部418を介して、ダイナモメータ414及びエンジン412を制御するようになっている。
【0005】
また、上記のようなエンジン試験装置では、一般的に、FF制御及びFB制御を組合せた演算処理により、上記の「スロットル開度指令値」を求めている。ここで、
図10を参照しながら、FF制御及びFB制御を組合せた演算処理を行う指令値演算部の構成について説明する。
【0006】
図示するように、指令値演算部500は、FF制御部511と、FB制御部512と、加算部513とを有している。
【0007】
FF制御部511は、車速目標値の入力を受け付け、受け付けた車速目標値と、所定の係数とを用いたフィードフォワード演算処理により、FF制御スロットル開度を算出し、加算部513にFF制御スロットル開度を送信する。
FB制御部512は、車速目標値の入力を受け付けると共に、駆動させているダイナモメータに設けられた回転計からダイナモメータの回転軸の回転数を取得する。また、FB制御部512は、取得した回転数から車速(車速FB値)を算出する。そして、FB制御部512は、受け付けた車速目標値と、算出した車速FB値との差分値と、所定の係数とを用いたフィードバック演算処理により、FB制御スロットル開度を算出して、加算部513にFB制御スロットル開度を送信する。
加算部513は、FF制御部511から送信されたFF制御スロットル開度と、FB制御部512から送信されたFB制御スロットル開度とを加算し、その加算した値をスロットル開度指令値として、エンジンに送信する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態(第1実施形態、第2実施形態)のエンジン試験装置について図面を用いて説明する。
【0022】
《第1実施形態》
先ず、第1実施形態のエンジン試験装置の構成について、
図1、2を参照しながら説明する。ここで、
図1は、第1実施形態のエンジン試験装置の構成を示す模式図である。
図2は、第1実施形態のエンジン試験装置の補正値データベースの一例を示した模式図である。
【0023】
図1に示すように、第1実施形態のエンジン試験装置W1は、試験対象であるエンジンEに負荷を与えるダイナモメータDと、ダイナモメータDの回転軸とエンジンEの回転軸(出力軸)とを連結するシャフトSと、エンジンEの駆動を制御するエンジン制御装置(EG制御装置)2と、ダイナモメータDの駆動を制御するダイナモメータ制御装置(DM制御装置)3と、EG制御装置2及びDM制御装置3に目標値(車速目標値、トルク目標値)等の各種データを送信すると共に、後述する補正値を管理するシステム管理装置1とを有している。
上記のエンジン試験装置W1は、エンジンEを所定の走行モード(例えば、WLTCモード)で駆動させてエンジンの各種特性を測定するエンジン性能試験(説明の便宜上、「モード走行試験」という)に用いられるように構成されている。
【0024】
なお、以下で説明する第1実施形態では、システム管理装置1と、EG制御装置2と、DM制御装置3とが別体の装置として構成されている例を示すが、特にこれに限定されるものではない。例えば、システム管理装置1と、EG制御装置2と、DM制御装置3とが一体の制御装置(情報処理装置)として構成されていても良い。また、例えば、EG制御装置2及びDM制御装置3とが一体の制御装置として構成されていてもよい(この場合、システム管理装置1と制御装置とを有する構成になる)。
【0025】
また、上記のエンジンEは、架台(図示せず)に固定されており、その内部には燃焼室(図示せず)が設けられている。また、燃焼室には空気吸引用の吸引管(図示せず)が接続されており、その吸気管には流入量調節用のスロットル(図示せず)が設けられている。
また、ダイナモメータDには、ダイナモメータDの回転軸の回転数を計測する回転計m1が設けられており、回転計m1で計測された回転数(回転数FB値)は、EG制御装置2に送信されるようになっている。
また、ダイナモメータDには、ダイナモメータDの回転軸のトルク値を計測するトルク計m2が設けられており、トルク計m2で計測されたトルク値(トルクFB値)は、DM制御装置3に送信されるようになっている。
【0026】
なお、第1実施形態のエンジン試験装置Wは、システム管理装置1及びEG制御装置2の構成に特徴があり、システム管理装置1及びEG制御装置2以外の構成は、周知技術である。そのため、システム管理装置1及びEG制御装置2の構成については詳細に説明し、システム管理装置1及びEG制御装置2以外の構成につては説明を簡略化する。
【0027】
先ず、エンジン試験装置Wのなかのシステム管理装置1の構成を説明する。
システム管理装置1は、EG制御装置2及びDM制御装置3に目標値等を送信する目標値生成部11と、EG制御装置2から送られてくる補正値(後述する)を補正値データベース14に記憶(登録)させる補正値保存部12と、EG制御装置2及びDM制御装置3との間で各種データの授受を行う通信処理部13と、補正値データベース14とを有している。
【0028】
上記のシステム管理装置1のハードウェア構成は、特に限定されるものではないが、例えば、中央処理装置(CPU)、主記憶装置、補助記憶装置、入出力I/F及び通信I/Fを備えるコンピュータ等の情報処理装置(1台或いは複数台の情報処理装置)により構成される。この場合、上記の補助記憶装置には、各部(目標値生成部11、補正値保存部12、通信処理部13)の機能を実現するためのプログラムが格納されている。また、前記補助記憶装置の所定領域には、補正値データベース14が格納されている。そして、各部(目標値生成部11、補正値保存部12、通信処理部13)の機能は、中央処理装置が補助記憶装置に格納された前記プログラムを主記憶装置にロードして実行することにより実現される。
【0029】
また、補正値データベース14は、
図2に示すように、所定の走行モード(例えば、WLTCモード)で定義された「時刻及び車速目標値」毎に、その「時刻及び車速目標値」に対応する補正値を関連付けて記憶している。
【0030】
具体的には、補正値データベース14は、「時刻(tn(nは自然数))」を登録するフィールド14aと、フィールド14aに登録された「時刻(tn)」に対応する「車速目標値(vtgtn(nは自然数))」を登録するフィールド14bと、フィールド14a、14bに登録された「時刻及び車速目標値」に対応する「補正値(Th_cn(nは自然数))」を登録するフィールド14cとを有するレコードで構成されている(複数のレコードにより構成されている)。
ここで、フィールド14a、14bに登録される「時刻及び車速目標値」は、所定の走行モードにおいて定義されているものであり、「時刻」の単位が「秒」、「車速目標値」の単位が「km/h」である。また、フィールド14a、14bに登録される「時刻及び車速目標値」は、モード走行試験を行う前に、ユーザにより登録されるようになっている。
また、フィールド14cに登録される補正値は、スロットル開度(%)を示すデータであり、エンジンEを駆動制御するためのスロットル開度指令値(制御指令値)の生成に用いられる。また、この補正値は、モード走行試験を行っている際に、補正値保存部12により、補正値データベース14に登録・更新されるようになっている。
【0031】
なお、図示しないが、システム管理装置1の前記補助記憶装置(或いは前記主記憶装置)には、所定の走行モードで定義された「時刻及び車速目標値」毎に、対応するトルク目標値が関連付けられて登録(記憶)されている(ユーザにより予め登録されている)。
【0032】
また、目標値生成部11は、EG制御装置2に対して、所定の走行モード(例えば、WLTCモード)に定義された時刻毎に、その時刻の車速目標値と、その車速目標値に対応する補正値とを送信し、EG制御装置2にエンジンEの駆動を制御する制御指令値(スロットル開度指令値)を生成させる。
【0033】
具体的には、目標値生成部11は、所定の走行モードに定義された時刻毎に、補正値データベース14にアクセスし、所定走行モードで定義された時刻毎に、当該時刻に対応する「車速目標値及び補正値」を読み出す。この読み出した「車速目標値及び補正値」が目標値として生成される。また、目標値生成部11は、EG制御装置2に対して、通信処理部13を介して、読み出した「車速目標値及び補正値」を送信する。
例えば、目標値生成部11は、時刻が「t1」のときに、EG制御装置2に対して、「t1」に対応する車速目標値である「vtgt1」と、「t1」に対応する補正値である「Th_c1」とを送信する。また、目標値生成部11は、時刻が「t2」のときに、EG制御装置2に対して、「t2」に対応する車速目標値である「vtgt2」と、「t2」に対応する補正値である「Th_c2」とを送信する。なお、
図1に示す符号のs1が「車速目標値及び補正値」を示すデータ信号を示している。
【0034】
また、目標値生成部11は、DM制御装置3に対して、EG制御装置2に送信した「車速目標値」に対応するトルク目標値を送信し、DM制御装置3にダイナモメータDの駆動を制御する制御信号を生成させる。
【0035】
具体的には、目標値生成部11は、所定走行モードで定義された時刻毎に、前記補助記憶装置(或いは前記主記憶装置)から当該時刻及び車速目標値に対応する「トルク目標値」を読み出す。この読み出した「トルク目標値」が目標値として生成される。また、目標値生成部11は、DM制御装置3に対して、通信処理部13を介して、生成した目標値(読み出した「トルク目標値」)を送信する。なお、
図1に示す符号のs2がトルク目標値を示すデータ信号を示している。
【0036】
また、補正値保存部12は、所定走行モードで定義された時刻毎に、通信処理部13を介して、EG制御装置2から送信されてくる「補正値(Th_cn)」を受信する。例えば、補正値保存部12は、時刻が「t1」のときに、EG制御装置2が生成して送信する、後述する補正値である「Th_c1」を受信する。なお、
図1に示す符号のs7が補正値を示すデータ信号を示している。
そして、補正値保存部12は、EG制御装置2が送信してきた補正値を受信すると、補正値データベース14にアクセスし、受信した補正値に対応する時刻が登録されているレコードのフィールド14cに、受信した補正値を登録する。例えば、補正値保存部12は、時刻が「t1」のときには、フィールド14aに「t1」が登録されているレコードを特定し、特定したレコードのフィールド14cに「Th_c1」を登録する。なお、既に補正値が登録されている場合(2回目以降のモード走行試験の場合)、補正値保存部12は、受信した補正値に対応する時刻が登録されているレコードのフィールド14cに、受信した補正値を上書きして登録する(更新登録する)。
【0037】
次に、EG制御装置2の構成について、上述した
図1と、
図3、4を参照しながら説明する。
なお、
図3は、第1実施形態のエンジン制御装置の指令値演算部の機能を説明するための模式図である。
図4は、第1実施形態のエンジン試験装置が行う補正値演算処理を説明するための模式図である。
【0038】
図1に示すように、EG制御装置2は、エンジンEを駆動制御するためのスロットル開度指令値(制御指令値)を生成する指令値演算部21と、次回のモード走行試験で用いる補正値(スロットル開度指令値の生成に用いる補正値)を生成する補正値演算部22と、システム管理装置1との間で各種データの授受を行う通信処理部23とを有している。
上記の通信処理部23は、システム管理装置1から送信されてくる「車速目標値及び補正値」を受信するようになっている。また、通信処理部23は、ダイナモメータDに設けられた回転計m1が計測した回転数(ダイナモメータDの回転数)を示す回転数FB値を受信するようになっている。
なお、EG制御装置2は、例えば、ECU(電子制御ユニット)、もしくはECUにバイパス回路を付加したエンジン制御回路により実現される。
【0039】
次に、EG制御装置2の構成のなかの指令値演算部21の機能について説明する。
指令値演算部21は、通信処理部23を介して、所定の走行モードで定義された時刻毎にシステム管理装置1から送信されてくる「車速目標値及び補正値」を取得すると共に、ダイナモメータDに設けられた回転計m1が計測した回転数(ダイナモメータDの回転数)を示す回転数FB値を取得する。なお、
図1の符号s5は、「回転数FB値」を示すデータ信号を示している。
そして、指令値演算部21は、取得した「車速目標値、補正値、及び回転数FB値」を用いて、スロットル開度指令値を生成し、エンジンEに対して、生成したスロットル開度指令値を送信する。なお、
図1の符号s3は、「スロットル開度指令値」を示す制御信号を示している。
【0040】
具体的には、
図3に示すように、指令値演算部21は、FF制御部211と、FB制御部212と、スロットル開度指令値生成部(加算部)213とを有している。
【0041】
FF制御部211は、システム管理装置1から送信された「車速目標値」を取得し、その取得した車速目標値を用いたフィードフォワード制御演算処理により、FF制御スロットル開度(FF・Th(%))を算出し、加算部213にFF制御スロットル開度を送信する。
なお、上記のフィードフォワード制御演算処理には周知技術が用いられている。例えば、FF制御部211が、制御周期毎に、以下の演算処理を行い、FF制御スロットル開度を求めるようになっている。具体的には、FF制御部211は、取得した車速目標値に到達するために必要なエネルギー(エンジンEに必要なエネルギー)を算出する。また、FF制御部211は、現在のエンジンEの運転状態を示す「回転数FB値等の各種フィードバック値」を取得し、そのフィードバック値を用いて、現時点でエンジンEが出力可能なエネルギーを算出する。そして、FF制御部211は、上記の「必要なエネルギー」と、上記の「出力可能なエネルギー」の大きさを比較する。また、FF制御部211が、上記の「必要なエネルギー」が上記の「出力可能なエネルギー」に比べて大きいと判定した場合、不足するエネルギーを補うように、FF制御スロットル開度を算出する。一方、FF制御部211は、「必要なエネルギー」が「出力可能なエネルギー」に比べて小さいと判定した場合、エンジンEが出力するエネルギーを小さくするように、FF制御スロットル開度を算出する。
【0042】
FB制御部212は、システム管理装置1から送信された「車速目標値(vtgtn)」を取得すると共に、回転計m1から送信されてくる「回転数FB値」を取得する。また、FB制御部212は、取得した「回転数FB値」から車速(車速FB値(vfbtn(nは自然数))を算出する。そして、FB制御部212は、取得した車速目標値と、算出した車速FB値との差分値(Δv=(vtgtn−vfbtn))と、所定の係数とを用いたフィードバック制御演算処理により、FB制御スロットル開度(FB・Th(%))を算出し、加算部213に、算出したFB制御スロットル開度を送信する。 なお、FB制御スロットル開度(FB・Th(%))は、例えば、以下の(式1)により算出することができる。
なお、下記の(式1)のI、Pは、いずれも、予め定められた係数であり、Iの単位が「%/(km/h)/s」であり、Pの単位が「%/(km/h)」になっている。
FB・Th(%)=I*∫(vtgtn-vfbtn)dt+P*(vtgtn-vfbtn)・・・(式1)
【0043】
加算部213は、通信処理部23を介して、所定の走行モードで定義された時刻毎にシステム管理装置1から送信されてくる「補正値(Th_cn(%))」を受信する。また、加算部213は、FF制御部211から送信されるFF制御スロットル開度(FF・Th(%))と、FB制御部212から送信されるFB制御スロットル開度(FB・Th(%))とを受信する。
そして、加算部213は、下記の(式2)が示すように、受信した「FF制御スロットル開度(FF・Th(%))」と、FB制御スロットル開度(FB・Th(%))」と、受信した「補正値(Th_cn(%))」とを加算した「スロットル開度指令値」を生成し、エンジンEに送信する。
「スロットル開度指令値(%)」=FF・Th+FB・Th+Th_cn・・・(式2)
【0044】
次に、EG制御装置2の構成のなかの補正値演算部22の機能について説明する。
補正値演算部22は、通信処理部23を介して、所定の走行モードで定義された時刻毎にシステム管理装置1から送信されてくる「車速目標値及び補正値」を取得すると共に、ダイナモメータDに設けられた回転計m1が計測した回転数(ダイナモメータDの回転数)を示す回転数FB値を取得する。
【0045】
そして、補正値演算部22は、取得した「回転数FB値」から車速(車速FB値(vfbtn))を算出する。なお、補正値演算部22は、上述した指令値演算部21から車速FB値(vfbtn)を取得するように構成されていても良い。この場合、補正値演算部22では、回転数FB値を取得し車速FB値(vfbtn)を算出する必要がない。
また、補正値演算部22は、
図4に示すように、取得した車速目標値(vtgtn)と、算出した(或いは取得した)車速FB値(vtbtn)との差分値(Δv=(vtgtn−vfbtn))と、所定の学習係数Qとを用いた演算処理により、次回のモード走行試験で用いるための補正値(Th_cn)を生成する。 具体的には、補正値演算部22は、下記(式3)に示す数式を用いて、補正値(Th_cn)を算出する。また、補正値演算部22は、システム管理装置1に対して、上記の生成した補正値(Th_cn)を送信する。
なお、下記(式3)の学習係数Qは、単位が「%/(km/s)」になっている。また、下記(式3)の「前回保存した補正値」とは、前回のモード走行試験の際に補正値演算部22が生成して且つシステム管理装置1の補正値データベース14に登録され、今回のモード走行試験の際に、システム管理装置1が補正値データベース14から読み出し、EG制御装置2に送信してきた補正値である。
Th_cn(補正値(%))=(vtgtn-vfbtn)*Q+(前回保存した補正値)・・・(式3)
なお、N回目のモード走行試験の時刻tで使用する補正値を「Th(N,t)」で示し、N+1回目のモード走行試験の時刻tで使用する補正値を「Th(N+1,t)」で示すと、上記(式3)は、以下の(式4)で表すことができる。
Th(N+1,t)= Th_c(t) + Th(N,t)・・・(式4)
但し、Th_c(t)=(vtgtn-vfbtn)*Q:(N回目モード走行試験の時刻tのときに算出した学習値)。
【0046】
このように、補正値演算部22は、前回のモード走行試験の際に算出して登録した補正値に、車速目標値(vtgtn)と車速FB値(vtbtn)との差分値(Δv=(vtgtn−vfbtn))に学習係数Qを乗算した求めたスロットル開度(学習値)を加算することにより、次回のモード走行試験で用いるための補正値を算出している。すなわち、この構成によれば、モード走行試験において、車速目標値と車速フィードバック値の差分がある場合、次のモード走行試験に用いる補正値は、前回のモード走行試験のときに算出された補正値に対して、差分値を反映させた値に修正されるようになる(より最適な補正値になるように学習されていく)。
【0047】
次に、
図1に戻り、DM制御装置3の構成を説明する。
DM制御装置3は、所定の走行モードで定義された時刻毎にシステム管理装置1から送信される「トルク目標値」と、ダイナモメータDに設けられたトルク計m2から送信されるトルクFB値とを受信する。なお、
図1の符号s6は、「トルクFB値」を示すデータ信号を示している。
また、DM制御装置3は、受信したトルク目標値と、所定係数とを用いたフィードフォワード制御演算処理により、FFトルク指令値を算出する。また、DM制御装置3は、受信したトルク目標値と、受信したトルクFB値との差分値と、所定係数とを用いたフィードバック制御演算処理により、FBトルク指令値を算出する。そして、DM制御装置3は、FFトルク指令値及びFBトルク指令値を用いて、トルク指令値を生成して、生成したトルク指令値をダイナモメータDに送信して、ダイナモメータDの駆動を制御する(図中の符号s4が「トルク指令値」を示す制御信号を示している)。
なお、第1実施形態のDM制御装置3は、周知技術により実現されるものであるため、詳細な説明を省略する。
【0048】
次に、第1実施形態のエンジン試験装置Wが行うモード走行試験の際の制御処理の工程について、
図5を参照しながら説明する。
ここで、
図5は、第1実施形態のエンジン試験装置Wが行うエンジンEに対する駆動制御の処理の工程を示したフローチャートである。
【0049】
なお、
図5のフローチャートは、モード走行試験を「N回(Nは1以上の整数)」実施した後に、「N+1回目」のモード走行試験を行っている場合において、所定の走行モードに定義されている時刻tn(n=a:aは1以上の整数)にけるエンジン試験装置Wが行うエンジンEに対する駆動制御処理の流れを示している。
また、このケースでは、エンジン試験装置Wの補正値データベース14には、所定走行モードに定義されている時刻tn毎に、「N回目」のモード走行試験の際に算出した補正値が登録されている。
【0050】
具体的には、「N+1回目」のモード走行試験では、システム管理装置1の目標値生成部11は、補正値データベース14にアクセスして、「時刻ta」に対応する車速目標値である「vtgta」と、「時刻ta」に補正値である「Th_ca(前回のモード走行試験の際に登録した補正値)」とを読み出す(S100)。
また、システム管理装置1の目標値生成部11は、通信処理部13を介して、EG制御装置2に対して、読み出した「「vtgta」及び「Th_ca(前回(N回目)のモード走行試験の際に登録した補正値)」」を送信する(S101)。
【0051】
また、ダイナモメータDに設けられた回転計m1から回転数FB値がEG制御装置2に対して送信される(S300)。
【0052】
また、EG制御装置2は、ダイナモメータDに設けられた回転計m1から送信された回転数FB値を受信する(S200)と共に、システム管理装置1から送信された「車速目標値(vtgta)及び補正値(Th_ca(前回(N回目)のモード走行試験の際に登録した補正値))」を受信する(S201)。
【0053】
次に、EG制御装置2は、受信した回転数FB値から車速FB値(vfbta)を算出し(S202)、S203の処理に進む。
【0054】
S203では、EG制御装置2は、上述したフィードフォワード制御演算処理によりFF制御スロットル開度(FF・Th(%))を算出する。
また、S203では、EG制御装置2は、下記の式(1)に、受信した「車速目標値(vtgta)及びS202で算出した「車速FB値(vfbta)」を代入してFB制御スロットル開度(FB・Th(%))を算出する。
FB・Th(%)=I*∫(vtgtn-vfbtn)dt+P*(vtgtn-vfbtn)・・・(式1)
【0055】
また、S203では、EG制御装置2は、下記の式(2)に、上記算出した「FF制御スロットル開度(FF・Th(%))」と、上記算出した「FB制御スロットル開度(FB・Th(%))」と、S201で受信した「Th_ca(前回(N回目)のモード走行試験の際に登録した補正値)」とを代入して、スロットル開度指令値を生成し、S204の処理に進む。
「スロットル開度指令値(%)」=FF・Th+FB・Th+Th_cn・・・(式2)
【0056】
S204では、EG制御装置2は、エンジンEに対して、生成したスロットル開度指令値を送信する。また、エンジンEは、EG制御装置2から送られてくるスロットル開度指令値を受信し、このスロットル開度指令値に従い駆動する(S301)。
【0057】
また、EG制御装置2は、S203及びS204の処理と並行して、S205及びS206の処理を行う。
【0058】
具体的には、S205では、EG制御装置2は、上述した下記の(式3)に、S201で取得した車速目標値(vtgta)及び補正値(Th_ca)と、S202で算出した車速FB値(vtbta)とを代入して、次回のモード走行試験に用いる補正値(Th_cn)を算出する(「N+2回目」のモード走行試験で用いる補正値を算出する)。本ステップで算出された補正値(Th_ca)が、「N+1回目」のモード走行試験で求めた補正値(Th_ca)になる。
また、S206において、エンジン制御装置2は、システム管理装置1に対して、S205で算出した「N+1回目」のモード走行試験で求めた補正値(Th_ca)を送信する。
Th_cn(補正値)=(vtgtn-vfbtn)*Q + (前回保存した補正値)・・・(式3)
【0059】
そして、システム管理装置1は、エンジ制御装置2から送信される「N+1回目」のモード走行試験で求めた補正値(Th_ca)を受信する(S102)。
また、システム管理装置1は、補正値データベース104にアクセスして、フィールド14aに「ta」が登録されているレコードを特定し、特定したレコードのフィールド14cに登録されている「Th_ca(N回目のモード走行試験で求めた補正値)」」を、受信した「N+1回目」のモード走行試験で求めた補正値(Th_ca)に更新登録する(上書きする)。
【0060】
このように、第1実施形態のエンジン試験装置Wは、エンジンEのモード走行試験において(例えば、「N+1」回目のモード走行試験において)、走行モードに定義されている時刻tn毎に、次回(例えば、「N+2」回目)のモード走行試験のときに、エンジンEを駆動させるスロットル開度指令値の生成に用いる補正値(Th_ct)を算出し、対応する時刻tnに関連付けて、その算出した補正値(Th_ct)を記憶するように構成されている。
具体的には、エンジン試験装置Wは、今回(N+1回目)のモード走行試験において、走行モードに定義されている時刻tn毎に、その時刻tnに対応する車速目標値(vtgtn)と、その時刻tnのときに駆動しているエンジンEの回転数から算出した実速度(車速FB値(vfbtn))との差分値(vtgtn-vfbtn)に学習係数Qを乗算して求めたスロットル開度(学習値)に、前回(N回目)のモード走行試験のときに求めた補正値(Th_ct)を加算したものを、次回(N+2回目)のモード走行試験に用いる補正値(Th_ct)として算出するようにしている。また、エンジン試験装置Wは、今回(N+1回目)のモード走行試験において、算出した補正値(Th_ct)を、対応する時刻tnに関連付けて補正値データベース14に登録するよう構成されている。
【0061】
また、第1実施形態のエンジン試験装置Wは、今回(N+1回目)のモード走行試験において、FF制御演算により求めたスロットル開度(FF制御スロットル開度)及びFB制御演算により求めたスロットル開度(FB制御スロットル開度)と、補正値データベース14に登録されている、前回(N回目)のモード走行試験のときに求めた補正値(Th_ct)とを用いて、スロットル開度指令値の生成するようにしている。
【0062】
このように第1実施形態の構成によれば、モード走行試験を複数回(2回以上)行えば、2回目以降のモード走行試験において、前回のモード走行試験のときに、車速目標値と車速FB値の差分値を用いて算出した補正値の値を反映させて、エンジンEを駆動させるスロットル開度指令値を生成することができる。
また、上記の補正値演算部22は、車速目標値と車速FB値の差分値と、前回のモード走行試験のときに算出された補正値とを用いて、次回のモード走行試験に用いる補正値を生成している。この構成によれば、モード走行試験において、車速目標値と車速FB値の差分がある場合、次のモード走行試験に用いる補正値は、前回のモード走行試験のときに算出された補正値に対して、前記差分値が反映させた値に修正されるようになる(より最適な補正値になるように学習されていく)。すなわち、第1実施形態の構成によれば、モード走行試験を複数回繰り返すことにより、ユーザが面倒な数値設定等を行うことなく、エンジン試験装置W1が補正値を自動的に学習し、精度の高い補正値が生成されるようになる。その結果、第1実施形態によれば、例えば、WLTCモードでモード走行試験を行った場合においても、モード走行試験を複数回繰り返すことで、走行モードにより定義された車速と実際の車速の差が小さくなっていき、エンジンEの各種特性の評価精度を向上させることができる。
【0063】
《第2実施形態》
次に、本発明の第2実施形態のエンジン試験装置の構成について、
図6〜8を参照しながら説明する。ここで、
図6は、第2実施形態のエンジン試験装置の構成を示す模式図であり、システム管理装置からエンジン制御装置への通信処理に無駄時間が発生した状態を示した模式図である。
図7は、第2実施形態のエンジン試験装置の補正値データベースに登録される補正値と無駄時間との関係を説明するための模式図である。
図8は、第2実施形態のエンジン試験装置の構成を示す模式図であり、無駄時間が複数箇所で発生した状態を示した模式図である。
【0064】
第2実施形態のエンジン試験装置W2は、第1実施形態のエンジン試験装置W1の構成のなかの目標値生成部11の機能の一部を変形し、通信処理で発生する無駄時間(デッドタイム)を考慮した上で、EG制御装置2に送信する補正値(Th_ct)を特定するようにしている。
なお、第2実施形態は、第1実施形態と、システム管理装置1の目標値生成部11の機能の一部が異なるが、それ以外の構成は、第1実施形態と同じである。そのため、第2実施形態の説明では、第1実施形態と同じ構成(或いは相当する構成)については、同じ符号を付し、その説明を省略(或いは簡略化)する。
【0065】
具体的には、
図6に示すように、第2実施形態のエンジン試験装置W2は、第1実施形態と同様、ダイナモメータDと、ダイナモメータDとエンジンEとを連結するシャフトSと、エンジンEの駆動を制御するEG制御装置2と、ダイナモメータDの駆動を制御するDM制御装置3と、システム管理装置1とを有している。
【0066】
また、
図6では、システム管理装置1とEG制御装置2との間に、通信の無駄時間DTが発生しているケースを例示している。
そして、図示するように、システム管理装置1とEG制御装置2との間に、無駄時間DT(Δt)が発生すると、符号s3で示す「スロットル開度指令値」、符号s5で示す「回転数FB値」、符号s7で示す「補正値(Th_c)」が、無駄時間DT(Δt)分だけ遅れて伝わるようになる。
【0067】
そのため、システム管理装置1は、EG制御装置2から送信される「時刻tnにおける車速目標値vtgtnに対して算出された補正値(Th_ct)」を受信するのが、無駄時間DT(Δt)分だけ遅延し、補正値データベース14には、遅延した無駄時間DT(Δt)分だけずれて保存されていく。
【0068】
具体的には、
図7に示すように、補正値データベース14には、「時刻tnにおける車速目標値vtgtnに対応する補正値(Th_ct)」が、無駄時間DT(Δt)分だけずれて保存されている。例えば、図示するように、「時刻t1における車速目標値vtgtnに対応する補正値(Th_c4)」は、「時刻t1」から「Δt」経過している無駄時刻(無駄時間加算時刻(t1+Δt))が登録されているレコードのフィールド14cに登録されている。また、「時刻t2における車速目標値vtgtnに対応する補正値(Th_c4)」は、「時刻t2」から「Δt」経過している時刻(無駄時間加算時刻(t2+Δt))が登録されているレコードのフィールド14cに登録されている。
【0069】
そのため、第2実施形態では、上述した
図5のS100〜S101において、以下の処理を行う。
【0070】
具体的には、第2実施形態では、S100において、システム管理装置1の目標値生成部11は、補正値データベース14にアクセスし、「時刻tn(例えば、t1)」に対応する車速目標値である「vtgtn(例えば、vtg1)」を読み出すと共に、「時刻tn(例えば、時刻t1)」から「Δt」経過している「時刻tn+Δt(例えば、時刻t1+Δt)」に対応付けて登録されている「補正値(Th_cn(例えば、Th_c4))」を読み出す。すなわち、目標値生成部11は、補正値データベース14から、時刻(tn)に関連付けられている車速目標値(vtgtn)と、時刻(tn)に所定の無駄時間Δtを加算した「無駄時間加算時刻(tn+Δt)」に関連付けられている補正値を読み出すようになっている。
そして、第2実施形態では、S101において、システム管理装置1の目標値生成部11は、通信処理部13を介して、EG制御装置2に対して、読み出した車速目標値である「vtn(例えば、vtg1)」」及び補正値である「Th_ct((例えば、Th_c4))」を送信する。
【0071】
なお、
図8に示すように、エンジン試験装置W2の各構成部間で行われる通信処理の複数カ所で無断時間(DT1(Δt1)、DT2(Δt2)、DT3(Δt3)、DT4(Δt4))が発生することがある。
このような場合は、無断時間(DT1、DT2、DT3、DT4)の合計時間(Δt=Δt1+Δt2+Δt3+Δt4)を算出し、システム管理装置1の目標値生成部11に、合計時間(Δt)を設定することにより対応できるようになっている。
【0072】
このように、第2実施形態では、上記の構成を採用することにより、エンジン試験装置W1の各構成部間の通信処理に無駄時間(DT、DT1、DT2、DT3、DT4)が発生する場合であっても、「時刻tn(例えば、t1)」の車速目標値に対応している正確な「補正値Th_cn」を用いて、スロットル開度指令値を生成することができる。そのため、第2実施形態では、エンジンEのモード走行試験を行った場合に、エンジンEの各種特性を正確に計測できる。
【0073】
以上説明したように、本実施形態(第1実施形態、第2実施形態)によれば、世界的に共通の走行モードでエンジンのモード走行試験を行った場合においても、エンジンの各種特性を正確に計測できるエンジン試験装置を提供することができる。
【0074】
なお、本発明は、上述した実施形態(第1実施形態、第2実施形態)に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々の変更が可能である。