(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6783757
(24)【登録日】2020年10月26日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】患者に患者固有医療を提供するコンピューターネットワークシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 34/10 20160101AFI20201102BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20201102BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20201102BHJP
【FI】
A61B34/10
G06T1/00 290B
G06T7/00 612
【請求項の数】17
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-525342(P2017-525342)
(86)(22)【出願日】2015年11月12日
(65)【公表番号】特表2017-535337(P2017-535337A)
(43)【公表日】2017年11月30日
(86)【国際出願番号】US2015060479
(87)【国際公開番号】WO2016077646
(87)【国際公開日】20160519
【審査請求日】2017年7月7日
【審判番号】不服2019-5946(P2019-5946/J1)
【審判請求日】2019年5月8日
(31)【優先権主張番号】62/078,881
(32)【優先日】2014年11月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510102122
【氏名又は名称】マテリアライズ・ナムローゼ・フエンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】MATERIALISE NV
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ギーブレン,ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】ウィリックス−スピートジェンス,ロエル
【合議体】
【審判長】
林 茂樹
【審判官】
倉橋 紀夫
【審判官】
宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】
特表2014−529314号公報(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に患者固有医療機器を提供するためのコンピューターネットワークシステムであって、
上記コンピューターネットワークシステムは、ケアプロバイダーシステムと、自動セグメンテーションポータルと、サービスプロバイダーシステムとを備えており、
上記ケアプロバイダーシステムは、患者スキャニング機器と、第1コンピューター機器とを備え、
上記患者スキャニング機器が取得した上記患者の生体構造の画像データを、上記第1コンピューター機器が上記自動セグメンテーションポータルへアップロードし、
上記自動セグメンテーションポータルは、ソフトウエアサービス部と治療計画立案モジュールとを備え、
上記ソフトウエアサービス部が上記画像データの第1回目のセグメンテーションを行い、
上記治療計画立案モジュールが上記第1回目のセグメンテーションの結果に基づいて初期治療計画を作成し、
上記コンピューターネットワークシステムは、ケアプロバイダーシステムによる上記初期治療計画の上記自動セグメンテーションポータルからの受領及びその承認を可能にし、
上記コンピューターネットワークシステムは、承認された上記初期治療計画の上記サービスプロバイダーシステムへの転送を可能にし、
上記サービスプロバイダーシステムは、セグメンテーションとモデル作成のソフトウエアを備える第2コンピューター機器を備え、
上記第2コンピューター機器は、上記画像データの第2回目のセグメンテーションを行い、
上記第2回目のセグメンテーションは、上記第1回目のセグメンテーションよりも正確であり、
上記第2コンピューター機器は、上記第2回目のセグメンテーションの結果に基づいて、医療機器の設計し、または、機器ライブラリから患者に適合した少なくとも1つの医療機器を選択し、
上記コンピューターネットワークシステムは、ケアプロバイダーシステムが、上記サービスプロバイダーシステムから、上記医療機器を受領することを可能にする、
コンピューターネットワークシステム。
【請求項2】
上記患者固有医療機器は、付加製造を用いて製造される、請求項1に記載のコンピューターネットワークシステム。
【請求項3】
上記画像データの上記第1回目のセグメンテーションは、自動セグメンテーションを含んでいる、請求項2に記載のコンピューターネットワークシステム。
【請求項4】
上記第2回目のセグメンテーションは、手動セグメンテーションを含んでいる、請求項3に記載のコンピューターネットワークシステム。
【請求項5】
上記自動セグメンテーションは、上記画像データの濃淡値データの閾値化を含んでいる、請求項3に記載のコンピューターネットワークシステム。
【請求項6】
上記自動セグメンテーションは、統計情報に基づくセグメンテーションテクニックを含んでいる、請求項3に記載のコンピューターネットワークシステム。
【請求項7】
上記初期治療計画は、上記画像データが上記自動セグメンテーションポータルにアップロードされてから10分未満で作成される、請求項3に記載のコンピューターネットワークシステム。
【請求項8】
上記自動セグメンテーションは、上記患者固有医療機器の設計に要求される品質と正確さを欠く、請求項3に記載のコンピューターネットワークシステム。
【請求項9】
上記自動セグメンテーションは、身体構造上の目印となる点の同定に限定される、請求項3に記載のコンピューターネットワークシステム。
【請求項10】
上記患者固有医療機器は、人工膝関節全置換術に関する、請求項9に記載のコンピューターネットワークシステム。
【請求項11】
上記身体構造上の目印となる点は、股関節位置、足関節の踝、大腿骨の上顆、大腿遠位の最前部位、顆の最後部位、脛骨棘位置、脛骨プラトーの最末梢部位、脛骨の後部ノッチ、脛骨の結節粗面の内の4点以上を含む、請求項10に記載のコンピューターネットワークシステム。
【請求項12】
上記患者の生体構造は、ボリュームレンダリングを用いて視覚化される、請求項11に記載のコンピューターネットワークシステム。
【請求項13】
上記手動セグメンテーションは、上記自動セグメンテーションの微調整を含む、請求項4に記載のコンピューターネットワークシステム。
【請求項14】
承認された上記初期治療計画の上記サービスプロバイダーシステムへの上記転送は、上記患者固有医療機器に関係する上記サービスプロバイダーシステムへの最初のデータ転送を含む、請求項13に記載のコンピューターネットワークシステム。
【請求項15】
上記初期治療計画の承認の前に、作成された上記初期治療計画の編集をさらに含む、請求項1に記載のコンピューターネットワークシステム。
【請求項16】
作成された上記初期治療計画は、患者固有器具の予備設計を含み、
作成された上記初期治療計画の編集は、上記患者固有器具の形状の調整を含む、請求項15に記載のコンピューターネットワークシステム。
【請求項17】
上記サービスプロバイダーシステムは、承認された患者固有機器の、上記患者の生体構造の接触面との絡み合いを向上させるために上記患者固有機器を修正する、請求項16に記載のコンピューターネットワークシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は外科治療及び外科治療機器に関する。より具体的には、本出願は画像のセグメンテーションに対して2ステップアプローチを用いて、より効率的に外科治療計画を作成することで、患者固有の外科治療を向上させるシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、成功裏に患者固有の医療を実施するには、当該患者の生体構造についての入手可能な3次元情報の存在が必要である。この3次元情報は、通常、患者の医療画像から抽出される。これらの医療画像とは、CT画像、MRI画像、超音波画像、又は他の手段による画像である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この医療画像は、セグメンテーションと呼ばれるプロセスを用いて3次元モデルに変換される。セグメンテーションは、マニュアルプロセスでも自動プロセスでも可能であるが、自動プロセスはしばしば、患者固有の外科治療手順の立案に対しては不十分な、精度の低い3次元モデルを作成する。なぜなら、自動のセグメンテーションは一般的には用いられておらず、患者固有の外科治療手順の立案時間はかなり長くなり、調整と、立案に関わるチーム又は種々の人々からの入力とに、しばしば数週間を要する。患者固有医療の立案の改良が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
1つの実施形態では、患者固有の医療を患者に提供する方法が与えられている。この方法は、患者の生体構造の画像データの取得と、画像データの自動セグメンテーションポータルへのアップロードとを含む。この方法はさらに、自動セグメンテーションポータルから初期治療計画を入手することを含んでいてもよい。この初期治療計画は、自動セグメンテーションポータルによって実施される、画像データの第1回目のセグメンテーションに基づいて作成される。作成された治療計画が承認された場合には、承認された治療計画はサービスプロバイダーに転送される。この方法はさらに、サービスプロバイダーから医療機器を受け取ることを含んでいてもよい。この医療機器は、機器ライブラリ又は製造された患者固有の機器の中から少なくとも1つ選択された、患者に適合した医療機器を含んでいる。この医療機器は、画像データの第2回目のセグメンテーションに基づいており、画像データの第2回目のセグメンテーションは、画像データの第1回目のセグメンテーションよりも正確である。この方法はさらに、受領した医療機器を使用する患者に対して、患者固有の治療を提供することを含んでいてもよい。
【0005】
(優先権の主張)
本出願は、2014年11月12日に出願された米国特許出願62/078,881号について優先権を主張する。これにより、その開示全体は参照によって組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】患者固有の医療の立案についての従来方法を示すフローチャートである。
【
図2】ここで開示される1又はそれ以上の実施形態を実施するために好適なコンピューターネットワーク環境を示すブロック図である。
【
図3】
図2に示されたケアプロバイダーシステムのより詳細な図である。
【
図4】
図2に示された自動セグメンテーションポータルのより詳細な図である。
【
図5】
図2に示されたサービスプロバイダーシステムのより詳細な図である。
【
図6】付加製造技術を用いて医療機器を製造する一般的な工程を示している。
【
図7】1又はそれ以上の実施形態について、患者固有医療の立案方法を示すフローチャートである。
【
図8】1又はそれ以上の実施形態について、患者固有の医療の立案の他の方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
ここに開示される実施形態は、患者固有の医療の立案と提供についてのより効率的なプロセスを可能とするシステムと方法とに関連する。具体的には、発明者らは現状のプロセスにおける特定の未解決の非効率な点について認識し、これらの非効率な点を大きく改善する治療計画立案プロセスの間の画像のセグメンテーションに対する、2ステップアプローチを考案した。第1ステップでは、自動セグメンテーション方法が第1の仮セグメンテーションを作成するために用いられる。最初に自動セグメンテーション方法を用いることで、初期治療計画立案に第3者(例えば、3次元セグメンテーションの専門家)を参加させる必要を取り除くことができる。代わりにケアプロバイダーは、補助なしにこの観点での立案プロセスを実施することができる。このような自動セグメンテーションの品質と正確さは、患者固有の機器を設計するために十分であるかも知れないが、一般的に治療計画立案には十分である。第2ステップでは、治療計画立案が承認された場合、セグメンテーションは手動で微調整されるか、或いはより演算集約型の自動セグメンテーション方法を用いて完結される。このように、第2ステップの間、サービスプロバイダーはセグメンテーションが機器の設計にとって十分となるまで、その品質と正確さとを向上させることができる。
【0008】
図1は、患者固有の医療の立案についての従来方法を示すフローチャートである。一般的にこれらの患者固有の医療は、当該患者の生体構造についての3次元情報の有効性に依存している。このプロセスはブロック102から始まり、そこでは当該患者の生体機構に関する医用画像データが取得される。この医用画像データは種々の異なる画像技術を用いて取得される。これらの画像技術は、x線、MRI、CTスキャン、超音波等を含んでいる。画像データが取得されると、次にプロセスはブロック104に移動する。そこでは取得された画像データは、画像のセグメンテーションのためにサービスプロバイダーに送られる。ここでのサービスプロバイダーとは、3次元機器の設計に関するサービスを提供すると共に、ケアプロバイダーが患者に対して患者固有の医療サービスを提供することを可能とする、個人又は主体を意味する。サービスプロバイダーは、患者固有の医療機器の設計又は/及び製造をする医療機器製造会社を含んでいいてもよい。サービスプロバイダーはまた、患者固有のケアの提供に適した患者固有のインプラントや器具や他の機器の作成又は/及び製造が可能なケアプロバイダーに関係する会社又は主体を含んでいてもよい。
【0009】
画像データが画像のセグメンテーションのためにサービスプロバイダーに送られた後、次にプロセスはブロック106に移動する。ここでは、画像のセグメンテーションはサービスプロバイダーによって実施される。上述のように画像のセグメンテーションは、医療画像を仮想の3次元モデルに変換し、それは後に、付加製造技術を用いて患者固有の機器の製造に用いられる。次にプロセスはブロック108に移動し、ここでサービスプロバイダーは初期治療計画も作成する。この初期治療計画は、インプラントの選択、インプラントの配置及び/又は方位案、患者固有の機器の設計、又は患者に対して患者固有の機器を提供するための他の計画である。初期治療計画は、ケアプロバイダーに返送される。一般的に初期治療計画は、患者固有の及び/又は患者に適合した機器を効果的に利用する初期治療計画を作成するために受領された画像データに、大きく依存する。
【0010】
次に、ブロック110では、ケアプロバイダーが、サービスプロバイダーから提供された初期治療計画を見直す。見直しの一部としてケアプロバイダーは、治療計画を適合及び/又は微調整する。最終的にケアプロバイダーは、初期計画(おそらく、微調整又は適合されたものとして)を承認するか、又はケアプロバイダーは初期計画を拒絶する。初期計画が拒絶された場合には、それは2回目の設計/承認のためにサービスプロバイダーに返送される。ケアプロバイダーが計画に満足した場合には、その計画は承認される。次にプロセスはブロック112に移動し、そこでは計画はサービスプロバイダーに返送され、サービスプロバイダーは患者固有の医療の準備を始める。この準備は、患者の治療において用いられる身体構造モデル、患者固有の器具、患者固有のインプラントの設計と製造、又は患者に適合した規制の機器の選択を含んでいてもよい。次にプロセスはブロック114に移動する。そこで、サービスプロバイダーによって選択及び/又は製造された機器は、ケアプロバイダーに出荷される。ケアプロバイダーが製造及び/又は選択された機器を受け取ると、次にプロセスは、ケアプロバイダーによって治療が患者に提供されるブロック116に移動する。
【0011】
発明者らは、この従来のプロセスが物流上の大きな問題を有していることに気付いた。すなわち、計画の見直しを効率的な方法ですることについて、ケアプロバイダーやサービスプロバイダーには限られた能力しかない。ケアプロバイダー(例えば、整形外科医のような)は、往々にして、見直しのためには限られた時間しか許容されない、大変多忙で融通の利かないスケジュールを有している。その結果、サービスプロバイダーがケアプロバイダーに予備/初期計画を提供したとき、ケアプロバイダーは、初期計画について見直したり、コメントしたり、改訂したり及び/又は承認したりするのに、しばしば数日又は数週間を要する。加えて、もしケアプロバイダーが、計画には変更が必要であると判断した場合には、同様のフィードバックループが再び行われなくてはならず、さらに数日及び/又は数週の遅延が追加される可能性がある。サービスプロバイダーの効率もまた、過度に長いフィードバックループにより悪化する。特にキャパシティプランニングにおいては、サービスプロバイダーは、治療計画の承認において長い待機時間を負担することになる。
【0012】
実際の計画承認プロセスは極めて短い(時にはほんの5分から10分の見直し時間を要求する)が、ケアプロバイダーのスケジュールの柔軟性の欠如は、プロジェクトが進むにつれてスケジュール調整が必要となることを回避するために、サービスプロバイダーが全体のスケジュールに長期の遅延を組み込むことをしばしば要求する。このような長いフィードバックループの結末は、患者へのケアの提供が著しく遅れることである。このような遅延は、患者が患者固有の医療を待つことを余儀なくさせるため、ケアの質に影響を与える。これらの遅延はまた、結局のところ、患者固有プロセスを完成させるために必要となるリードタイムが、患者及び/又は外科医に患者固有の選択を避けさせる原因となるため、ケアの質に影響を与える。これらの物流上の問題の幾つかを回避するために努力がなされてきているが、だれもこの分野で満足を得ていない。例えば特定のケースでは、ケアプロバイダー及びサービスプロバイダーは、迅速な治療を提供するための努力をする。このようなケースにおいては、ケアプロバイダーは、初期計画が得られると、それを出来るだけ早く承認するように努力する。しかしながらこのようなケースでは、サービスプロバイダーは、通常の長いリードタイムと迅速化されたリードタイムとの両者が効率的に成し遂げられるように、そのキャパシティプランニングに追加の調整を行う必要がある。
【0013】
これらの問題点を認識した上で発明者らは、上述した長いフィードバックループを低減及び/又は排除することができる、画像のセグメンテーションの2ステップアプローチを開発した。この新しい2ステップアプローチは、ケアプロバイダーとサービスプロバイダーとの安全な電子通信と可能とするコンピューターネットワーク環境に於いて実施される。
図2は、ここで開示された1又はそれ以上の実施形態を実施するために好適なコンピューターネットワーク環境200を示すブロック図である。コンピューターネットワーク環境200は、コンピューターネットワーク202を含んでいても良い。いくつかの実施形態では、コンピューターネットワークは、例えばインターネットのような広域ネットワークである。コンピューターネットワーク202はまた、種々のネットワークノードに接続するプライベートネットワークでもよい。コンピューターネットワーク202はまた、コミュニケーションが例えばインターネットのような大型外部ネットワークから保護されながら行われるローカルエリアネットワークでもよい。或いはコンピューターネットワーク202は、プライベートネットワークと公衆ネットワークとのコンビネーションや、広域ネットワークとローカルエリアネットワークとのコンビネーションであってもよい。
【0014】
コンピューターネットワーク環境200は、ケアプロバイダーシステム204も含んでいる。このケアプロバイダーシステム204は、一般的に患者に医療を提供するためにケアプロバイダーによって使用される種々のコンピューター機器(以下の
図3においてより詳細に説明される)を含んでいる。ケアプロバイダーシステム204は、それが例えば医用画像データのような情報をネットワーク202に接続されている他の主体と通信できるように、ネットワーク202に接続されていてもよい。ケアプロバイダーシステム204は、ファイヤーウォールや他のネットワークセキュリティー装置を含む、種々のセキュリティープロトコルやセキュリティ機器を通して保護される。ケアプロバイダーシステム204はさらに、コンピューターネットワーク202に接続されていないコンポーネント及び/又は機器を含んでいてもよい。
【0015】
コンピューターネットワーク環境200は、サービスプロバイダーシステム208も含んでいてよい。以下、
図4と関連付ながらより詳細に説明されるように、サービスプロバイダーシステムは、サービスプロバイダーが患者固有医療に関連したサービスを提供することを可能とする1又はそれ以上のコンピューター機器を含んでいてもよい。ケアプロバイダーシステム204と同様に、サービスプロバイダーシステム208は、患者固有医療で用いられる患者固有医療機器の設計、製造及び/又は選択に用いられる、種々の異なるタイプのコンピューターシステムを含んでいてもよい。サービスプロバイダーシステム208は、コンピューターネットワーク202に接続されている特定のコンポーネントを含んでいても良く、またコンピューターネットワーク202に接続されていない特定のコンポーネントを含んでいてもよい。さらに、サービスプロバイダーシステムはまた、種々のネットワークセキュリティー装置及び器具を用い、ネットワーク202を介しての侵入からも守られている。
【0016】
コンピューターネットワーク環境200はまた、自動セグメンテーションポータル206を含んでいてもよい。自動セグメンテーションポータル206は、以下で
図5と関連付ながらより詳細に説明されるが、自動セグメンテーション及び初期立案サービスを提供する分散システムの一部を形成してもよい。種々の実施形態において自動セグメンテーションポータルは、一般的にケアプロバイダー、より詳細にはケアプロバイダーシステム208から医用画像データを受領することができるように構成されている。自動セグメンテーションポータル206は患者固有医療を提供するために、自動セグメンテーションと初期立案とを実施することで、受領した画像データを処理する。自動セグメンテーションポータル206は、一般的に、サーバーサイド又はクラウドベースのアプリケーション技術を用いるウェブベースの形をとる。しかしながら当業者は、自動セグメンテーションポータル206が、ネットワーク202上のサービスプロバイダーシステム208又はケアプロバイダーシステム204の何れかと同じ位置に位置してもよいことを理解できるであろう。このような実施形態では自動セグメンテーションポータル206は、サービスプロバイダー、及びケアプロバイダーの一方、又は両方によって管理される。
【0017】
図3は、
図2に示されたケアプロバイダーシステム204のより詳細な図である。ここに示されるように、ケアプロバイダーシステム204は、患者スキャニング機器302を含んでいる。患者スキャニング機器302は、MRI機器、x線スキャナ−、超音波機、又は患者の生体構造の画像を取り込むことができる他の機器を含む、種々のタイプの患者スキャニング機器の何れかとすることができる。患者スキャニング機器302は、データストレージ304に連動可能に接続され及び/又はデータストレージ304とデータ通信が可能な状態である。データストレージ304は、患者スキャニング機器302に統合されていてもよい。或いはデータストレージは、効率的な保管、及び多数の撮像手段からの画像へのアクセスを提供する画像保管通信システム(PACS)の形をとることができる。患者スキャニング機器302を用いることで、ケアプロバイダーは当該患者の生体構造の画像を入手すると共に、それらの画像をデータストレージ304に保管する。
【0018】
ケアプロバイダーシステム204はまた、1つ又はそれ以上のネットワーク接続されたコンピューター機器を含んでいてもよい。これらのネットワーク接続されたコンピューター機器306は、患者スキャニング機器302及びデータストレージ304の何れか又はその両方に統合されていてもよい。或いはネットワーク接続されたコンピューター機器306は、患者スキャニング機器302及び/又はデータストレージ304とのデータ通信が可能な別個の機器であってもよい。ネットワーク接続されたコンピューター機器306はコンピューターネットワーク202に接続されていてもよい。ネットワーク接続されたコンピューター機器306を用いることでケアプロバイダーは、データストレージ304から画像データを取り出し、そして画像データを自動セグメンテーションポータル206に転送することができる。
【0019】
図4は、
図2に示した自動セグメンテーションポータル206のより詳細な図である。上述のように自動セグメンテーションポータル206は、コンピューターネットワーク202を介してアクセス可能なネットワークベースサーバー上で実施されるソフトウエアの形をとることもできる。自動セグメンテーションポータル206は、自動セグメンテーションポータル206によって受け取られた医療画像の仮セグメンテーションを提供するために用いられるソフトウエアサービス402を含んでいてもよい。仮セグメンテーションサービス402は、プロバイダー固有のストレージ406にアップロードされた画像データを受け取り、最少の使用者とのやり取り及び最少の待ち時間しか要求しない、当該医用画像データの自動セグメンテーションを実施するように構成されていてもよい。一般的に仮セグメンテーションソフトウエアサービス402は、画像のセグメンテーションを10分未満、多くの場合は5分未満で実施し、幾つかの場合には2分未満で実施する。
【0020】
仮セグメンテーションサービス402によって実施される自動セグメンテーションは、種々の自動セグメンテーションテクニックを用いて完結される。一つの実施形態では自動セグメンテーションは、受け取られた医用画像の濃淡値データを閾値化することに依存している。他の実施形態ではモーフィング技術が用いられる。さらに他の実施形態では、アクティブシェイプモデルが3次元モデルを作成するために用いられる。さらに他の実施形態ではアクティブアピアランスモデルが用いられる。幾つかの実施形態では自動セグメンテーションは、複数枚の2次元画像薄片を作成するために、少なくとも関連する生体構造を画像化することにより実施される。画像薄片は患者の身体構造において延伸する軸に直交しながら取得され、画像薄片の各々は単独の骨単体を含んでいる。骨単体は患者の骨の輪郭を示す閉じられた境界として画像薄片の中に見て取られる。骨単体情報は骨の境界を抽出するために患者固有ではない統計に基づく見取り図と併せられると共に、軟骨接合部分も併せられる。併せられた情報は、その後患者の骨の3次元モデルとして出力される。
【0021】
一般的に自動セグメンテーション法は、患者の生体構造に合う及び/又は適合する患者固有機器の最終設計のために十分な精度を有するモデルを作成しない。例えば濃淡値データを用いるテクニックに関して、ノイズや視覚的な乱れがアウトプットにおける正確さや他の不具合をもたらす。統計に基づく見取り図を用いることも同様に信頼性を欠く。骨増殖症や局所軟骨損傷のような患者固有の特質は、典型的には一般化された患者集団から収集された統計値を用いてではモデル化されないためである。しかしながらこの自動セグメンテーションの品質と正確さは、患者固有機器の実際の設計に対して十分ではないものの、それは治療計画立案モジュール404が、ケアプロバイダーが見直しと承認とをする予備の又は初期の治療計画を作成するために用いられるのには十分な品質を提供する。
【0022】
このようにして自動画像セグメンテーションが完結したとき、治療計画立案モジュール404は患者固有医療における初期外科治療計画の作成のために、画像セグメンテーションによって作成された3次元モデルを利用する。計画はプロバイダー固有のストレージ406に保管されるか、又は評価や計画承認のために直ちにケアプロバイダーに戻される。ケアプロバイダーは、治療計画立案モジュール404を用いて計画の修正又は調整を行う。幾つかの例では、計画は予備の機器設計を含んでいてもよい。それらの設計もまた、治療計画立案モジュール404を用いてケアプロバイダーによって修正可能であってもよい。好ましくはソフトウエアサービス402と治療計画立案モジュール404とは、数分程度でセグメンテーションと立案プロセスとを実施する。予備のセグメンテーションと立案とが素早く実施されるので、ケアプロバイダーが数日ではなく数分程度で計画承認に至ることが可能となる。
【0023】
上述の通り自動セグメンテーションポータル206はまた、プロバイダー固有のストレージ406を含んでいてもよい。プロバイダー固有のストレージ406は、その各々が特定の承認されたケアプロバイダーからのみアクセス可能なプロバイダー固有のストレージ領域に分割されている、サーバーベースのストレージの形をとることができる。このようにして、自動セグメンテーションポータル206は、患者のデータや他のケアプロバイダー固有の情報を十分に安全で機密保持された状態に保ちながら、多くの異なるケアプロバイダーに対して利用可能となっている。
【0024】
自動セグメンテーションポータル206は、ケアプロバイダーシステム204内のネットワーク接続されたコンピューター機器306を介してケアプロバイダーがアクセス可能なウェブベースサービスとして記載されているが、治療計画立案モジュール404での予備セグメンテーション402のためのソフトウエアサービスが、ケアプロバイダーの現場においてクライアント側アプリケーションとして実施されるようにしてもよい。しかしながら多くの医療施設は、厳格なソフトウエアセキュリティ方針を有しているため、クライアントの現場における実施は多くの場合において実際的ではない。
図4に基づいて説明したようなクラウドベースでのソリューションを用いることで、典型的にケアプロバイダーは、ネットワーク接続されたコンピューター機器に追加のソフトウエアを要求されない。むしろ、自動セグメンテーションポータル206は標準のウエブブラウザを用いてアクセス可能である。
【0025】
幾つかの実施形態において自動セグメンテーションポータル206は、さらにいっそう効率的なケアプロバイダーのリソースの利用を生み出す使用事例を可能とする。例えば幾つかの実施形態においては、自動セグメンテーションポータル206はケアプロバイダーのスタッフ(治療する内科医師や外科医師以外)が画像データをアップロードし、自動セグメンテーションと治療計画立案プロセスとを開始することが可能なように構成されていてもよい。これらを実施するにあたり、ケアプロバイダーの現場のアシスタント、看護師、又は他の従業員は、複数の事例に対して画像データをアップロードすることを承認される。これらの事例のそれぞれは、ソフトウエアサービス402によってセグメントされ、治療計画が治療計画立案モジュール404によって作成されると共に、プロバイダー固有のストレージ406に保管される。一度すべての事例が保管されると、ケアプロバイダーと関係の有る外科医師又は内科医師は、一度にまとめて治療計画を閲覧し、見直し、そして承認することができる。このプロセスは外科医師が、それぞれの事例を個別に扱うために彼又は彼女のスケジュールの中で時間を削る必要があるのではなく、むしろ外科医に彼又は彼女の都合が良いときに事例群に対応することを可能にする。
【0026】
初期治療計画が自動セグメンテーションポータル206で承認されているときには、その時点で事例データの全てがサービスプロバイダーに利用可能となる。この事例データは、医療画像、自動セグメンテーション、承認された治療計画、及び場合によっては追加の事例固有情報を含む。事例データを利用することでサービスプロバイダーは、自動セグメンテーションが患者固有機器の設計のために十分な品質と正確さとを持つように、自動セグメンテーションの品質と正確さを向上させるべく、手動で自動セグメンテーションを微調整することができる。幾つかの実施形態では、サービスプロバイダーは、手動セグメンテーション処理を利用するよりむしろ、必要とされる品質と正確さとを得るために、計算集約型の自動セグメンテーション法を利用することができる。この計算集約型の自動セグメンテーション法は、典型的には自動セグメンテーションポータル206では使用に適さない場合がある。なぜなら計算集約型テクニックに必要とされる時間は、ケアプロバイダーが一区切りの時間で画像データをアップロードし初期治療計画を承認するのには長すぎるためである。
【0027】
次に
図5に移る。
図2に示したサービスプロバイダーシステムのより詳細な図が示されている。先に述べたようにサービスプロバイダーシステム208は一般的に、一群のコンピューター機器及び製造プラットフォームの形をとる。それはサービスプロバイダーが高品質のセグメンテーション、機器設計、製造、及び業務達成を行うことを可能とする。図に示されるようにサービスプロバイダーシステム208は、セグメンテーションとモデル作成のソフトウエア502を含んでいてもよい。セグメンテーションとモデル作成のソフトウエアは、例えばパーソナルコンピューターやタブレットのような汎用のコンピューター機器で実施されてもよい。セグメンテーションとモデル作成のソフトウエアは、一般的にサービスプロバイダーが患者固有医療の提供において用いられる患者固有医療機器の設計を可能とするような、十分な品質と正確さを有する3次元モデルを作成することを可能とする。このソフトウエア502は、例えば、Mimics Innovation Suite from Materialise N.V. (Leuven, Belgium)のような、民生の市販品であってもよい。或いは、セグメンテーションとモデル作成のソフトウエア502はカスタマイズされてもよく、また専用の画素セグメンテーション及び3次元モデル作成ソフトウエアであってもよい。
【0028】
サービスプロバイダーシステム208はまた、付加製造プラットフォーム504を含んでいてもよい。付加製造プラットフォーム504は、ケアプロバイダーによって患者固有医療を提供するために用いられる患者固有医療機器及び患者固有医療を製造するために使用される。付加製造プラットフォーム504は、典型的には3次元プリンター、制御コンピューター、及び3次元プリンターを使用して3次元物体を製造するために使用される、3次元物体の設計を受け取ることが可能なように設計された制御ソフトウエアを含んでいる。3次元プリンターは、種々の既知の3次元プリント技術を備える何れのものであってもよい。それは、立体リソグラフィー、選択的レーザー焼結、選択的レーザー溶融、溶融体積成形、又は他の幾つかの3次元プリント技術を含むが、それに限定されるものではない。サービスプロバイダーシステム208はさらに、出荷機能506を含んでいてもよい。出荷機能506は一般的に、適切な機器が患者固有医療を提供する際に利用されるように、外科医療計画において必要とされる機器がケアプロバイダーに出荷されることを可能にする。
【0029】
好ましくは
図2〜5に関連付けながら説明したシステムを利用して、サービスプロバイダーは、外科治療計画の承認におけるケアプロバイダーからのタイムリーな反応に依存しない実施手順を策定することができる。事例がサービスプロバイダーに送付されるのは、初期計画がケアプロバイダーに承認された後である。そして情報が受領されたときには、サービスプロバイダーは一般的に、必要な機器を設計、製造、選択、そして、ケアプロバイダーに出荷するために必要とされるすべての情報を手にする。さらに、従来の患者固有医療に存在するフィードバックループを取り除くことで、サービスプロバイダーは、効率的なキャパシティプランニングを実施すること、及び患者固有医療機器の製造に対する改善されたリードタイムを達成することについて、はるかに良好な状況にある。
【0030】
上述のように患者固有機器は、より一般的には3次元プリンターや付加製造技術を使用して製造される。
図6は装置を使用しての医療を、付加製造技術を用いながら作成する工程を示している。図に示されるように、ブロック605において目的物のデジタル表現がデザインされる。例えば、3次元成形ソフトウエアである。例えば、2次元又は3次元データ(例えばソフトウエア502によって作成されたセグメンテーションされた画像)は、3次元対象物のデジタル表現をデザインするために用いられる。ブロック610では、例えば付加製造機器504の一部であるような付加製造機器へ情報を提供しながら、付加製造機器は受領した情報に従って製造プロセスを開始する。ブロック615では、付加製造機器が、例えば液状樹脂(例えば立体リソグラフィー用途向け)、粉体(焼結用途向け)、熱可可塑性物質(溶融堆積成形向け)、又は幾つかの他の適切な3次元印刷用物質のような適切な物質を使用して3次元対象物の製造を続ける。さらに、ステップ620で、3次元対象物は完成される。これらの適切な物質は、フォトポリマー樹脂、ポリウレタン、メチルメタクリレート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー、ポリマー−セラミック複合材料のような吸収性物質などを含むが、これらに限定されるものではない。市販の物質の例としては、次の物がある。DSM Somos(登録商標)の一連の物資である7100, 8100, 9100, 9420, 10100, 11100, 12110, 14120及び15100(DSM Somos製);ABSplus−P430, ABSi, ABS−ESD7, ABS−M30, ABS−M30i, PC−ABS, PC ISO, PC, ULTEM 9085, PPSF及びPPSU物質(Stratasys製);系列の物資であるAccura Plastic, DuraForm, CastForm, Laserform及びVisiJet(3D−Systems製);PA系列の物質であるPrimeCast及びPrimePart materials及びAlumide及びCarbonMide(EOS GmbH製)。3−Systems製のVisiJet系列の物質はinclude Visijet Flex, Visijet Tough, Visijet Clear, Visijet HiTemp, Visijet e−stone, Visijet Black, Visijet Jewel, Visijet FTI等を含む。他の物質の例としては、例えば、Objet Fullcure, Objet Veroclear, Objet Digital Materials, Objet Duruswhite, Objet Tangoblack, Objet Tangoplus, Objet Tangoblackplusなどの対象物質を含む。物質の他の例としては、Renshape製の5000及び7800シリーズを含む。
【0031】
図2〜5に関連付ながら説明したシステムと組み合わせた付加製造プロセスを使用することで、患者固有医療機器又は器具は、患者固有医療の提供における使用に対して、効率的かつ迅速に設計され、製造され、そして提供される。しかしながら当業者は、これらの構成は単なる例であり、他の形式のシステムや構成もここでの開示と同様に発明の方法を実施するために使用されることを認識するであろう。次に
図7に移る。この図には、1又はそれ以上の実施形態について、患者固有医療の立案方法を示すフローチャートが表されている。フローチャートでは種々のステップが、その特定のステップを実施する集団又は主体に基づいて3つのカラムの内の1つに、垂直方向に位置付けられている。
図7は、それぞれのステップを実施する集団の1つの図を提供するが、ある実施形態では、あるステップは
図7に示された主体とは異なる主体によって実施されうることが認識されるべきである。
【0032】
プロセスは、ケアプロバイダーが、該当患者の生体構造の画像を取得するブロック702から開始する。上述の通り画像の取得は、患者スキャニング機器302のような患者スキャニング機器によって実施され、それらの画像は例えばデータストレージ304のようなデータストレージに保管される。次にプロセスは、取得された画像データがセグメンテーションのためにアップロードされるブロック704に移動する。アップロードは
図3に関連付ながら上述したコンピューター機器306のようなネットワーク接続されたコンピューター機器によって実施される。プロセスは次にブロック706に移動する。そこでは仮セグメンテーションがアップロードされた画像データに対して実施され、その後ブロック708で初期治療計画が作成される。図に示すように仮セグメンテーションと初期治療計画は、インターネットブラウザを介してアクセス可能なネットワークサービスとして実施される、自動セグメンテーションポータル206によって実施される。しかしながら上述の通り、仮セグメンテーションと初期治療計画は、ケアプロバイダーのもとにあるローカルにインストールされたコンピューターソフトウエアによって実施されてもよい。
【0033】
次にプロセスはブロック710に移動し、そこでは、ケアプロバイダーが治療計画を見直すと共にそれを承認する。治療計画が承認された場合、プロセスはブロック712に移動する。そこではサービスプロバイダーは、医療画像や承認された計画などのような関連するデータを受領し、患者固有医療機器の設計に利用するのに十分な品質と正確さとを有するセグメンテーションを実施する。次にプロセスは判断ブロック714に移動する。そこではサービスプロバイダーは、承認された治療計画を実施するために患者固有機器が必要か否かを判断する。幾つかの事例では、患者の生体構造及び/又は病状は患者固有機器を必要とせず、代わりに患者の生体構造及び/又は病状に最良に適合するように、異なる形状及び/又は大きさを有するインプラントのライブラリから、既製の機器を選択することで良いとされる。もし、サービスプロバイダーが患者固有機器は必要とされないと判断した場合、プロセスは後にブロック722でケアプロバイダーに提供されることになる既製の機器が選択される、ブロック716に移動する。サービスプロバイダーが判断ブロック714で、患者固有機器が外科治療計画から必要とさる判断した場合には、プロセスは患者固有機器が設計されるブロック718に移動する。次に、プロセスはブロック720に移動し、そこでは設計された機器が設計に従って製造される。そしてその後、ブロック722でケアプロバイダーに提供される。機器がケアプロバイダーに提供されると、プロセスはブロック724に移動し、そこでケアプロバイダーは、外科治療計画に従って患者固有医療を実施する。
【0034】
幾つかの実施形態では、自動セグメンテーションポータル206によって実施される自動セグメンテーションは、患者の生体構造の完全な3次元モデルの提供ではなく、初期治療計画の作成のために必要とされる身体構造上の目印となる点の同定に限定される。例えばこれらの目印となる点は人工膝関節全置換(TKA)処置において利用される。TKA処置においては、目印となる点は、股関節位置、足関節の両踝、大腿骨の上顆、大腿遠位の最前部位、両顆の最後部位、脛骨棘位置、脛骨プラトーの最末梢部位、脛骨の後部ノッチ、脛骨の結節粗面、又は患者の生体構造のいくつかの他の位置である。これらの実施形態では、視覚化はボリュームレンダリングを用いて行われてもよい。
図8は初期治療計画がこの実施の形態に則って作成される際のプロセスを示すフローチャートである。
【0035】
プロセスはケアプロバイダーが当該患者の生体構造の画像を取得するブロック802から始まる。プロセスは次に、取得された画像データが処理のために自動セグメンテーションポータルにアップロードされるブロック804に移動する。プロセスは、目印の同定が行われるブロック806に続き、同定された身体構造の目印位置に基づいて、ブロック808において初期治療計画が作成される。次にプロセスは、ケアプロバイダーが作成された治療計画を見直し、及び承認し、関連する事例情報がサービスプロバイダーに送付されるブロック810に移動する。ブロック812では、サービスプロバイダーが受領した画像データに表面のセグメンテーションを実施する。その後プロセスは判断ブロック814に移動し、そこではサービスプロバイダーが、承認された計画が患者固有機器を必要とするか否かを判断する。もし必要でなければ、プロセスは機器ライブラリから既製の機器が選択されるブロック816に移動し、選択された機器はケアプロバイダーブロック822に提供される。判断ブロックで計画を実施するためには患者固有機器が必要であると判断された場合には、プロセスは代わりに患者固有機器が設計されるブロック818に移動し、その後設計された機器が製造されるブロック820に移動する。機器が製造されると、プロセスはブロック822に移動し、そこで製造された機器がケアプロバイダーに提供される。プロセスは、ケアプロバイダーがサービスプロバイダーから受領した機器を使用して患者固有医療を提供するブロック824で終了する。
【0036】
ここに開示される種々の実施形態は、コンピューターとコンピューター制御システムの利用を含む。当業者は、多くの異なるタイプのコンピューター機器、汎用及び/又は特定用途用のコンピューターシステム環境又は構成の、何れも又は何れかを含む、を使用してこれらの実施形態が実施可能であることを容易に認識するであろう。上述の実施形態との関係で使用に適する周知のコンピューターシステム、環境及び/又は構成の例としては、パーソナルコンピューター、サーバーコンピューター、ハンドヘルド又はラップトップ機器、マルチプロセッサシステム、マイクロプロセッサに基づくシステム、プログラムが可能な家庭用電化製品、ネットワークパソコン、ミニコンピューター、メインフレームコンピューター、上記システム又は機器の何れかを含む分散コンピューティング環境等々を含むが、それらに限定されるものではない。これらの機器は蓄積された指示を有していてもよく、コンピューターデバイスのマイクロプロセッサによって実行される場合、それらの指示は、当該指示を実施するためにコンピューターデバイスに特定の動作を実行させる。ここでは、指示とは、システムにおいて情報を処理するために、コンピューターによって実行されるステップを意味する。指示は、ソフトウエア、ファームウエア又はハードウエアの中で実行され、またシステムのコンポーネントによって実行される、あらゆるタイプのプログラムされたステップを含む。
【0037】
マイクロプロセッサは、ペンティアム(登録商標)プロセッサ、ペンティアム(登録商標)プロプロセッサ、8051プロセッサ、MIPS(登録商標)プロセッサ、パワーPC(登録商標)プロセッサ、又はアルファ(登録商標)のような、あらゆる従来型の汎用の単独又はマルチチップマイクロプロセッサであってよい。加えて、マイクロプロセッサは、デジタルシグナルプロセッサ又はグラフィックプロセッサのような、あらゆる従来型の特定用途用マイクロプロセッサであってもよい。このようなマイクロプロセッサは通常は、従来型のアドレスライン、従来型のデータライン、及び、1つ又はそれ以上の従来型のコントロールラインを有している。
【0038】
ここに開示されている本発明の態様と実施形態は、ソフトウエア、ファームウエア、ハードウエア又はそのあらゆる組み合わせを作成するために、標準的なプログラミング又はエンジニアリング技術を使用して、方法、装置又は製品(article of manufacture)として実施される。ここで使用される「製品(article of manufacture)」との文言は、光学記憶機器のようなハードウエア又は非一時的コンピューター読取可能媒体、及び揮発若しくは不揮発記憶機器、又は信号や搬送波などのような一時的コンピューター読取可能媒体において実行されるコードやロジックを意味する。そのようなハードウエアとしては、フィールドプログラマブルゲートアレー(FPGAs)、特定用途向け集積回路(ASICs)、複雑プログラマブルロジックデバイス(CPLDs)、プログラマブル論理制御装置 (PLAs)を含むが、それらに限定されるものではない。