特許第6783786号(P6783786)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6783786生物活性動物用飼料中における古細菌、その組成物を製造する方法、および前記組成物を用いる方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6783786
(24)【登録日】2020年10月26日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】生物活性動物用飼料中における古細菌、その組成物を製造する方法、および前記組成物を用いる方法
(51)【国際特許分類】
   A23K 10/18 20160101AFI20201102BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
   A23K10/18
   C12N1/20 E
【請求項の数】7
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2017-548087(P2017-548087)
(86)(22)【出願日】2016年3月16日
(65)【公表番号】特表2018-509161(P2018-509161A)
(43)【公表日】2018年4月5日
(86)【国際出願番号】IB2016051473
(87)【国際公開番号】WO2016147121
(87)【国際公開日】20160922
【審査請求日】2018年12月18日
(31)【優先権主張番号】15159277.1
(32)【優先日】2015年3月16日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512008613
【氏名又は名称】エコール ポリテクニーク フェデラル デ ローザンヌ (イーピーエフエル)
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】サザーランド ダンカン−ブルース
(72)【発明者】
【氏名】ツァイス マリオ ミカエル
【審査官】 門 良成
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0034198(US,A1)
【文献】 特表2013−517801(JP,A)
【文献】 カナダ国特許出願公開第02893265(CA,A1)
【文献】 米国特許第06328959(US,B1)
【文献】 特表2005−526861(JP,A)
【文献】 特表2009−531448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23K 10/00−50/00
A61K 35/74
C12N 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のメタン生成古細菌種の少なくとも1つの個体群を含有する動物用飼料組成物であって、
前記組成物は組成物1グラム当たり約10〜約10個の古細菌細胞を含有し、
標準飼育条件と比較して、前記組成物は、動物成長速度を増大し、かつ/または環境に対する動物糞便廃棄物の影響を改善することを特徴とする、動物用飼料組成物。
【請求項2】
動物飼育用飼料に用いるための請求項1に記載の動物用飼料組成物。
【請求項3】
前記メタン生成古細菌種は、メタノスファエラ・スタッドマナエ種またはメタノブレビバクター・スミシー種である、請求項1又は2に記載の動物用飼料組成物。
【請求項4】
前記組成物は固体形態であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の動物用飼料組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種のメタン生成古細菌種の少なくとも1つの個体群は、第一胃抽出物から分離されたものであることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の動物用飼料組成物。
【請求項6】
前記動物は鳥類、哺乳動物または水生動物であることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の動物用飼料組成物。
【請求項7】
前記動物用飼料組成物中の微生物細胞はすべて古細菌細胞であることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の動物用飼料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物用飼料サプリメントの分野、より具体的には、古細菌(Archaebacteria)を含有する新たな飼料組成物および前記飼料組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
80年代初頭における商業養殖の出現以来、養殖業は、世界中で非常に重要な産業となるように成長してきており、食料源として捕獲漁業を追い抜こうとしている。2006年の生産高は、788億USドルの価値を有する5170万トンであることが報告されており、7パーセント近くの年間成長率を有する。食糧農業機関(FAO)の予測によれば、現状レベルの一人当たりの消費量を維持するためには、世界的な養殖生産高は2050年までに8000万トンに達する必要があると推定されている。
【0003】
養殖業の連続的な成長は該産業に新たな課題を示した。成長する養殖業の影響に関連する環境、健康および品質の懸念事項は、著しい努力が費やされているにもかかわらず、未解決のままである。海洋環境に対する危険性および抗生物質の使用を最小限にする環境上持続可能な養殖業は、長期的な成長および発展の必須条件である。
【0004】
動物飼育(Animal farming)、特に魚類および家禽は、感染症に関連する課題が多い。これらの課題としては、病原体の感染伝播、並びに有毒な抗生物質型薬剤への大きな依存による、大規模な動物の捕獲高における頻繁な喪失が挙げられる。魚、家禽および他の飼育動物(farmed animals)は典型的には、飼育動物における過剰な抗生物質の使用は消費者にとって望ましくない、または健康によくないにもかかわらず、収益性(stock yields)を増大するために抗生物質型薬剤を投与される。養殖業では感染症の発生は頻繁に生じ、病気の伝播は飼育場内における動物の密度が高いために急速である。養殖業者は、病気の伝播を阻止する手段として、抗生物質および他の抗菌薬を投与する。この実施は魚を抗生物質および薬物に対してより耐性を示す(過度に依存する)ようにし、従って養殖業者は供与量を経時的に増大することを強いられる。さらに、抗菌剤の大量の使用は微生物における選択圧を増大し、菌耐性の自然な出現を助長する。従って、多くの場合、大量の抗生物質でさえ、養魚場の大量死を防止することができない。上記の結果として、実際に治療よりも費用効率の高い予防に重点を置くべきであることは明らかである。抗菌剤、消毒剤および殺虫剤は、原因ではなく、主にその課題の症状を処置する。さらに、動物の飼育場からの廃棄物はまた、環境に強く影響を与える。例えば、養魚場は過剰な硝酸塩(nitrate)の生成により水系を汚染する。例えば食餌からのエネルギー収率の増大による動物の成長速度のような生産物の収率および品質を増大させ、かつ環境影響を低減することができる持続可能な動物養殖技術を開発することは重大な地球規模の課題であり、恐らくより環境上持続可能な実施をもたらすであろう。
【0005】
腸内微生物叢とは、ヒトおよび動物の腸でコロニーを形成する微生物個体群を指す(非特許文献1)。前記腸内微生物叢は、300万を超える遺伝子(ヒト遺伝子より150倍多い)を有する少なくとも異なる1000種の既知の細菌を含む数十兆の微生物を含有しており、ヒトでは前記腸内微生物叢は最高2kgの重さを有し得る。動物における腸内微生物叢の役割は重要であり、また腸内微生物叢が健康に直接影響を及ぼす多くの生理学的機能に影響を与えることが、最近の科学刊行物において取り上げられている(非特許文献2〜4)。これらの利点としては、とりわけ、特定の栄養素を消化するのを助けること、病原性微生物による感染症を予防するのを助けること、または免疫系の発現および維持に重要な役割を果たすことが挙げられる。
【0006】
腸内微生物叢が成長および健康度に対して有する影響を考慮して、養殖産業におけるより良好な成長および感染に対する耐性の改善のために、魚類の腸内微生物叢組成を変更する新たなアプローチが始められている(非特許文献5)。畜産における広域抗生物質の一般的な使用は、多くの場合において必要不可欠であるが、生来の腸内微生物叢を妨害する可能性があり、動物を抗生物質耐性病原体により感染しやすくする。哺乳動物において、腸内微生物叢は、バクテロイデス門(Bacteroidetes)およびファーミキューテス門(Firmicutes)という2つの細菌の門によって占められており、それらは合わせてすべての系統発生学的な型(系統型)の90%を含む。アーキア(Archaea)はまた、腸内微生物叢において、健康な成人の大腸内のすべての嫌気性菌の最高10%を構成するメタン生成ユリアーキオータ(Euryarchaeote)およびメタノブレビバクター・スミシー(Methanobrevibacter smithii)によって最も顕著に代表され(非特許文献1および非特許文献6)、一方、メタノスファエラ・スタッドマナエ(Methanosphaera stadtmanae)は、それほど優勢ではなく、少数要素である(非特許文献7)。アーキアは、消化を支援する健康な腸内微生物叢の代謝活性を促進することができる単細胞微生物である(非特許文献8および非特許文献9)。
【0007】
現在まで、フィッシュペレット製品に組み込まれた主な生物活性成分としては、PUFA(多価不飽和脂肪酸)、油、リン脂質、タンパク質およびペプチド、繊維、炭水化物、キトサン、ビタミン類およびミネラル類、フコキサンチン(fucoxantin)、ポリフェノール類、植物ステロール類およびタウリンが挙げられる。これらの成分は高血圧症、酸化ストレス、炎症、心血管疾患、癌および他の疾患に対する抵抗力を向上することが示されている。しかしながら、80年代初頭以来、プロバイオティクス(probiotics)の使用は、生物学的防除剤としてだけでなく、食料供給源としても提案されてきた。プロバイオティック(probiotic)は、適当量において投与された場合に宿主に健康上の利益を与える生きた微生物飼料サプリメント(microbial feed supplement)である。その概念は、腸管微生物の食物に対する依存性は、動物体内のフローラを変更し、かつ有害微生物を有用微生物によって置き換えるための対策を講じることを可能にするとして、前世紀の初頭に導入された。プロバイオティクスの一般に言われている利点としては、潜在的に病原性の胃腸内微生物の低減、胃腸の不快感の軽減、免疫系の強化、皮膚の機能の改善、腸の規則性の改善、スギ花粉アレルゲンに対する抵抗力の強化、身体の病原体の低減、鼓腸および膨満の低減、DNAの保護、酸化的障害からのタンパク質および脂質の保護、ならびに抗生物質治療を受ける対象者における個々の腸管微生物叢の維持が挙げられる。
【0008】
プロバイオティクスのより詳細な定義は、宿主に関連する微生物群落または周囲の微生物群落を変更することにより、飼料の使用の改善を保証することにより、またはその栄養を増強することにより、疾患に対する宿主応答を改善することにより、または周囲環境の質を向上することにより、宿主動物に有用な影響を与える微生物に関係する。この定義は、水産養殖に関しては、特に適当である。実際、腸が水を制限された世界における湿った生育地となる陸上環境とは違って、水生環境では、宿主と微生物とは生態系を共有する。従って、水生動物に対する環境は、微生物叢に対して、陸生生物(terrestrials)に関するよりもはるかに大きな影響を有し、水生媒体中の細菌は、宿主の腸内微生物叢の組成に大きな影響を及ぼす。水生動物は、宿主動物とは無関係に、それらの病原体を支援する環境に取り囲まれており、従って、日和見病原体は魚類のまわりで高濃度に達し得、一般に飼料とともに、または水を飲むことによって摂取される。さらに、母親からの固有のコロニーを形成する細菌を有する陸生生物とは違って、水生動物は、ほとんどが無菌の卵として生まれる。周囲細菌は卵の表面にコロニーを形成し、また、若い幼生は、多くの場合、発達した腸を有さず(例えば小エビ)、かつ/あるいは腸、えらまたは皮膚に微生物群落を有さない。結果として、周囲水中の細菌の特性が非常に重要であるため、周囲環境の改善は飼育される動物の健康には不可欠である。
【0009】
多くの従来技術文献が、動物用飼料における微生物添加物の使用を報告している。特許文献1は、具体的には、バチルス属(Bacillus)、乳酸桿菌、酵母菌、放線菌および光合成細菌の菌株を1つ以上の組み合わせで含有することにより、プロバイオティクスを用いた魚粉(fishmeal)を生産する方法を提供している。
【0010】
同様に、特許文献2は、基剤(basic)および配合飼料細菌を含有する水産養殖用の混合飼料を開示しており、前記配合細菌の量は材料重量の1〜10パーミルである。前記水生動物用飼料は、腸管コロニーの水生生物学的平衡を調節し、胃腸疾患を防止し、消化および吸収を助け、かつ免疫および耐病性を増強し、よって抗生物質および薬物の使用を回避するのに有用である。動物用飼料の複合細菌成分は、5〜7:2〜3:1〜2の質量比のバチルス、乳酸菌およびクロストリジウムを含有し得る。
【0011】
特許文献3は、細菌に起因する疾患による魚類の死亡を低減する方法を開示しており、前記方法は、アクセッション番号B−50481に指定された菌株C6−6、およびアクセッション番号B−50482に指定された菌株C6−8のいずれか、または双方を細菌に起因する疾患による死亡を低減するのに有効な量で前記魚類に投与することを含む。細菌株C6−6およびC6−8のいずれか、または双方を含有する魚類用の飼料も開示されている。これらの2つのエンテロバクター属菌株は、鮭科の魚における冷水病のような感染症の治療および予防または防止するためのプロバイオティックとして、個々に、互いと組み合わせて、または1つ以上の他の細菌の菌株と組み合わせて有用である。
【0012】
特許文献4は、水産養殖において病原微生物の成長を抑制し、魚類による飼料利用の効率を増大し、かつ死亡率を低減するためのプロバイオティクス細菌、特にミクソコッカス・フルブス(Myxococcus fulvus)菌株の使用に関する。
【0013】
特許文献5は、ビブリオ sp.(Vibrio sp.)に対する生物的防除のためのプロバイオティクス、具体的には病原細菌であるビブリオ sp.のクオラムセンシングシグナル分子を分解し、バイオフィルム形成を抑制する新たに分離されたバチルス菌株を開示する。該発明の目的の中で、前記菌株を含有するプロバイオティック組成物、飼料添加物、抗生剤または水質改良剤も特許請求されている。
【0014】
特許文献6は、メタン生成アーキア(methanogenic Archaea)の成長を抑制する方法、並びに反芻動物における飼料効率を増大する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】中国特許出願公開第CN103783267号
【特許文献2】中国特許出願公開第CN103875977号
【特許文献3】国際公開第2012/138477号
【特許文献4】中国特許第CN102132788号
【特許文献5】国際公開第2012105804号
【特許文献6】国際公開第2003/038109号
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】エクバーグ(Eckburg)、Science、第308巻、第1635〜1638頁、2005年
【非特許文献2】ケルヴォンスキー(Chervonsky)、Immunological reviews 第245巻):第7〜12頁、2012年
【非特許文献3】ゲウキング(Geuking)ら、Gut microbes 第5巻:第411〜418頁、2014年
【非特許文献4】フーパー(Hooper)ら、Science 第336巻:第1268〜1273頁、2012年
【非特許文献5】ナヤック(Nayak)、Fish & shellfish imm unology 第29巻:第2〜14頁、2010年
【非特許文献6】ミラーら、Applied and environmental microbiology 第51巻:第201〜202頁、1986年
【非特許文献7】リュ−レスメ(Rieu−Lesme)ら、Current microbiology 第51巻:第317〜321頁、2005年
【非特許文献8】ドリディ(Dridi)ら、PloS one 4:e70632009
【非特許文献9】サミュエル(Samuel)ら、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 第104巻:第10643〜10648頁、2007年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
飼育動物の状態を向上および改善するためのプロバイオティクスおよび動物用飼料サプリメントの分野における多くの研究にもかかわらず、寄生虫に由来する病的状態の予防のため、並びに食餌エネルギー収率の増強および糞便廃棄物の質の改善のために、別の組成物が当業において、特に水産養殖において、依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、アーキア界に属する生物、特にメタン生成古細菌(methanogenic Archaebacteria)を、特に飼育動物用の動物用飼料のための天然生物活性サプリメントとして用いることができるという発見に少なくとも部分的に基づく。本発明の一態様によれば、これらの微生物は、例えば、反芻動物のような畜牛の消化管から採取され、食餌エネルギー収率を向上し、病気を最小限にする天然に存在する生物学的経路を利用および強化し、それにより広域抗生物質治療への依存を低減するとともに、動物の糞便汚染物質によってもたらされる環境への影響を低減する目的で、プロバイオティック添加物として動物用飼料組成物内に含有され得る。確立された動物モデルを用いることにより、本発明者らは、動物用飼料中へのメタン生成アーキアの富化(enrichment)により、飼育動物の成長速度および寄生虫感染に対する免疫反応を向上する可能性を有することを試験および検証した。マウスに投与した場合、前記飼料サプリメントは、モデル動物の成長速度および腸粘膜バリア機能を増大し、前記モデル動物は原型腸内寄生虫(prototype intestinal parasite)ヘリグモソモイデス・ポリギルス(H.polygyrus)による感染に対してより耐性を示す。魚類または甲殻類のような水生動物では、言及した利点に加えて、より速い成長速度、より高い飼料の消化/吸収および飼料要求率、並びに水槽の水中の汚染物質量の減少が明らかに示され得る。従って、そのような生物活性添加物は、(i)より良好な成長速度をもたらすエネルギー利用(energy harness)を向上し、(ii)広域抗生物質治療の必要性を低減することにより感染に対する抵抗力を増大し、かつ(iii)排出物の質を向上して、環境への影響を少なくすることができることが分かった。
【0019】
従って、本発明の目的は、少なくとも1種の古細菌種の少なくとも1つの個体群を含有することを特徴とする動物飼育用飼料に用いるための生物活性食品サプリメントを提供することにある。
【0020】
好ましい実施形態において、前記生物活性食品サプリメントの少なくとも1種の古細菌種は、メタン生成古細菌種である。より好ましい実施形態において、前記メタン生成古細菌種は、メタノスファエラ・スタッドマナエ種またはメタノブレビバクター・スミシー種である。
【0021】
一実施形態において、前記生物活性食品サプリメントは、標準飼育条件と比較して、前記生物活性食品サプリメントが、動物成長速度を増大し、かつ/または寄生虫感染に対する動物罹病性を低減し、かつ/または環境に対する動物の糞便廃棄物の影響を改善することをさらに特徴とする。
【0022】
一実施形態において、前記生物活性食品サプリメントは、前記生物活性食品サプリメントが古細菌種を実質的に富化されていることをさらに特徴とする。
【0023】
本発明の別の目的は、前述したような生物活性食品サプリメントを含有する組成物を提供することにある。一実施形態において、上述の組成物は、前記組成物が固体形態であることを特徴とする。一実施形態において、前記組成物は、前記組成物が組成物1グラム当たり約10〜約10個の古細菌細胞を含有することを特徴とする。
【0024】
本発明のさらなる目的は、以前に定義したような生物活性食品サプリメントを含有する組成物を製造する方法に依拠し、前記方法は、
・ 少なくとも1種の古細菌種の少なくとも1つの個体群を得る工程と、
・ 前記少なくとも1種の古細菌種の少なくとも1つの個体群を担体と混合する工程と
を含むことを特徴とする。
【0025】
前記方法の一実施形態において、前記担体は、水溶液、油、古細菌培地および/または第一胃液(rumen fluid)を含有するか、あるいは水溶液、油、古細菌培地および/または第一胃液からなる。
【0026】
本発明の特定の実施形態において、前記方法は、前記担体が液体担体であることを特徴とし、かつ、
・ 前記液体担体と前記少なくとも1種の古細菌種の少なくとも1つの個体群とを含有する液体組成物に1%〜10%w/vの増粘剤を添加する工程と、
・ 前記液体組成物を混合して粘稠溶液を得る工程と、
・ 前記粘稠溶液を乾燥させて、固形組成物を得る工程と
をさらに含む。
【0027】
別の実施形態において、前記増粘剤は、糖、デンプン、および/またはゼラチンである。特定の実施形態において、前記少なくとも1種の古細菌種の少なくとも1つの個体群は、第一胃抽出物からの分離によって得られる。
【0028】
本発明のさらなる目的は、上記の方法によって得られた動物飼育用飼料として使用するための組成物に依拠する。
【0029】
本発明のさらなる目的は、飼育動物の成長速度を増大する方法、飼育動物の寄生虫感染に対する罹病性を低減する方法、および環境に対する飼育動物の糞便廃棄物の影響を改善する方法に関係する。これらの方法の各々は、上述した生物活性食品サプリメントまたは組成物を飼育動物に提供する工程を含む。
【0030】
本発明のさらなる目的は、動物飼育用飼料に用いるための生物活性食品サプリメントの製造において用いるためのメタン生成古細菌種の個体群に関係する。
【0031】
本発明の好ましい実施形態において、上述した生物活性食品サプリメント、組成物、方法および個体群において言及された前記飼育動物は、鳥、哺乳動物または水生動物である。
【0032】
すでに述べたように、本発明に従った食品サプリメントは動物飼育に有利に用いられ得る。しかしながら、本発明はこの使用法に限定されない。前記食品サプリメントはまた、ペット、捕獲動物または人間に投与されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】生物活性食品サプリメントが未処理(naive)の野生型マウスにおいて体重増加を促進することを示す図である。6週齢の特定病原体感染防止条件下で飼育した(Specific−pathogen−free(SPF) housed)雌のC57BL/6マウス(n=6)に、前記生物活性食品サプリメントを含有する穀物に基づいた食餌または未処置の対照を7週間にわたって与え、体重を測定した。実験の開始時、前記群の間において体重に有意差はなかった。体重は、生物活性食品サプリメントを受容して4週間後のマウスにおいて、未処置のマウスと比較して有意に上昇した。補給されたマウスの体重は実験の残りの間に上昇し続けた。
図2】生物活性食品サプリメントが未処理の野生型マウスにおいてパイエル板サイズを助長することを示す図である。6週齢のSPF飼育雌C57BL/6マウス(n=6)に前記生物活性食品サプリメントを含有する穀物に基づいた食餌または未処置の対照を7週間にわたって与え、次にマウスを解剖して、腸管のパイエル板を大きさに基づいて採点した。生物活性食品サプリメントを含有する食餌を受容したマウスは明らかにより大きなパイエル板を有した。
図3】生物活性食品サプリメントが腸内寄生虫ヘリグモソモイデス・ポリギルス(H.polygyrus)に対する耐性を増大することを示す図である。6週齢のSPF飼育雌C57BL/6マウス(n=6,4)に、前記生物活性食品サプリメントを含有する穀物に基づいた食餌または未処置の対照を与えた。次に、マウスを強制経口投与によって200感染単位のヘリグモソモイデス・ポリギルスに感染させ、その感染力を感染後2〜6週間にわたって、糞便の寄生虫卵の計数を測定することにより判定した。それらの食餌において前記生物活性食品サプリメントで処置されたマウスは、未処置の群と比較して、糞便1グラム当たりの寄生虫卵の数が有意に低下した。
図4】生物活性食品サプリメントがマウス中の腸内寄生虫負荷量を低減することを示す図である。6週齢のSPF飼育雌C57BL/6マウス(n=4−6)に、前記生物活性食品サプリメントを含有する穀物に基づいた食餌または未処置の対照を与えた。次に、マウスを強制経口投与によって200感染単位のヘリグモソモイデス・ポリギルスに感染させ、感染後6週間に、解剖して腸管腔内の寄生虫の目視計数を実施することにより、成体寄生虫負荷量を測定した。寄生虫負荷量は、未処置の群と比較して、前記生物活性食品サプリメントで処置したマウスにおいて明らかに低減した。
図5】3つの異なる病原性ビブリオ菌に対するアーキアの増殖抑制効果を測定するインビトロのアッセイを示す図である。パネルa:マリンアガー(Marine Agar)上のビブリオ・ハーベイ(V.harveyi) BB120、パネルb:マリンアガー上のビブリオ・カンベリー(V.campbellii) LMG21363、パネルc:マリンアガー上のビブリオ・パラヘモリティカス(V.parahaemolyticus) PV1、パネルd:ナイン ソルツ アガー上のビブリオ・ハーベイ(V.harveyi) BB120、パネルe:ナイン ソルツ アガー上のビブリオ・カンベリー(V.campbellii) LMG21363、パネルf:ナイン ソルツ アガー上のビブリオ・パラヘモリティカス(V.parahaemolyticus) PV1。
図6】48時間にわたって病原性ビブリオ・ハーベイ BB120に曝露されたアルテミア・ノープリウス幼生(Artemia nauplii)の生存率(%)に対する古細菌(Archaeabacteria)の効果を評価するためのインビボでのチャレンジ試験の結果を示す図である。値は平均値±平均値の標準誤差(n=5)を表わす。異なる文字で示されたバーは有意に異なる(一元配置分散分析、p≦0.05)。
図7】3つの実験群:対照、低用量サプリメント飼料および高用量サプリメント飼料に対する4か月と2週間にわたる体重増加曲線を示す図である。データポイントは各群の検体の組の平均体重に対応し、標準偏差エラーバーを有する。
図8】3つの実験群における水中の魚の廃棄汚染物質の分析を示す図である。A)3回の反復(replicates)の平均リン酸イオン(phosphate)濃度。示されたリン酸イオン値は、実験前の水中で測定された濃度を引いた後に得られ、水槽中の魚の体重の合計1mg当たりのmg/lでのリン酸イオンとして与えられる。B)3回の反復の平均亜硝酸イオン(nitrites)濃度。示された値は、水槽中の魚の体重の合計の1mg当たりのmg/lでの亜硝酸イオンとして与えられる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本開示は、この開示の一部をなす添付図面に関連して示された以下の詳細な説明を参照することにより、より容易に理解され得る。この開示は、本願に記載および/または図示された特定の条件またはパラメータに限定されるものではなく、かつ本願に用いられる用語は、特定の実施形態をほんの一例として説明するためのものであり、特許請求される開示を限定することは意図していないことが理解されるべきである。
【0035】
本願および添付された特許請求の範囲において用いられる場合、単数形「a」「and」および「the」は、文脈が明らかに他に規定していない限り、複数の指示対象を含む。よって、例えば、「組成物(a composition)」への言及は複数の組成物を含み、「プロバイオティック(a probiotic)」への言及は、1つ以上のプロバイオティクス(probiotics)への言及を含む等である。
【0036】
また、「または」の使用は、特に明記しない限り「および/または」を意味する。同様に、「備える(comprise)」、「備える(comprises)」、「備える(comprising)」、「含む(include)」、「含む(includes)」および「含む(including)」は互いに置き換え可能であり、限定するようには意図されない。様々な実施形態の説明が「備える(comprising)」という用語を用いる場合、当業者には、いくつかの特定の場合に代わりに「〜から本質的になる(consisting essentially of)」または「〜からなる(consisting of)」という語を用いて実施形態を記載できることが分かるということがさらに理解されるべきである。
【0037】
本開示の枠組みにおいて、時に単に「サプリメント」とも称される「生物活性食品サプリメント(bioactive food supplement)」は、活性薬剤を含有する任意の種類の食品サプリメントである。「活性薬剤」並びに「生物活性化合物」という表現は、生物学的に活性である、すなわち、生物、組織または細胞に対して効果を有する任意の化学的または生物学的存在を指す。前記表現は、本願では、生物学的または化学的事象を変更する、抑制する、活性化する、または他の場合にはそれらの事象に影響を与える任意の化合物を指すために用いられる。具体的には、本発明に従った活性薬剤または生物活性化合物は、プロバイオティックとして、すなわち宿主に関連する微生物群落または周囲微生物群落を変更することにより、飼料の改善された使用を保証することにより、またはその栄養を増強することにより、疾患に対する宿主応答を改善することにより、または周囲環境の質を向上することにより、宿主動物に有益な影響を与えることによって、実質的に作用する。より詳細には、本発明の枠組みにおいて、前記生物活性食品サプリメントを特徴づける生物活性化合物は、少なくとも1種の古細菌種の少なくとも1つの個体群を含有する。
【0038】
本願に用いられる「個体群」という用語は、時間および空間によって規定された同一種の生物個体の群に関連する。しかしながら、前記用語はまた、群落、すなわち任意の数の種を含み得る特定の生態的地位に生息する生物の群としても意図され得る。このような状況では、「個体群」という用語は「混合種個体群」とも称される。当業者には明らかであるように、商業的に入手可能な代替案が想定されない場合には、生物活性食品サプリメントに含有させるための古細菌種の個体群を、系列希釈法、線条接種法、混釈平板/塗抹平板法、集積培養法、選択培地を利用する方法、鑑別培地を利用する方法などを含む任意の一般的な分離方法によって得ることができる。
【0039】
本発明に従った好ましい実施形態において、前記生物活性食品サプリメントの活性薬剤は、メタン生成古細菌種、すなわち酸素欠乏状態において代謝副生物としてメタンを生成する古細菌種である。メタン細菌(Methanogens)は、自然界において広く分布し、氾濫した土壌、堆積物、沈澱汚泥消化槽(sewage−sludge digestors)または特定の動物の消化器官のような様々な恒久的な酸素欠乏環境において見つけることができる多様な偏性嫌気性生物の群である。すべての既知のメタン細菌はアーキアに属し、酸素に対して非常に感受性が高い。メタン細菌の顕著な特徴は、C−1化合物(例えば、CO、メタノール、ホルマート、またはN−メチル基)のメタン(CH)への還元である。メタン細菌は、無気呼吸の他の形態によって生成された過剰な水素および発酵産物を除去するという嫌気性環境における重大な生態学的役割を果たす。メタン生成アーキアはまた、それらの多くが細菌であるメタンの酸化からエネルギーを導き出す生物を有する生態系において、前記メタン生成アーキアが多くの場合そのような環境においてメタンの主な供給源であり、一次生産者としての役割を果たすことができるために、極めて重要な役割を果たす。メタン細菌はまた、有機炭素を重大な温室効果ガスでもあるメタンに分解する炭素循環における重要な役割を行使する。メタン生成はまた、ヒトおよび他の動物、特に反芻動物の腸内においても生じる。第一胃において、メタン細菌を含む嫌気性生物は、セルロースを動物によって使用可能な形態に消化する。これらの微生物なしでは、畜牛のような動物は草を消費することができないであろう。メタン生成の有用な生成物は腸によって吸収され、一方、メタンは動物によって放出される。
【0040】
メタン生成アーキア種のリストは、メタノバクテリウム・ブライアンティイ(Methanobacterium bryantii)、メタノバクテリウム・フォルミクム(Methanobacterium formicum)、メタノブレビバクター・アルボリフィリカス(Methanobrevibacter arboriphilicus)、メタノブレビバクター・ゴットシャルキイ(Methanobrevibacter gottschalkii)、メタノブレビバクター・ルミナンチウム(Methanobrevibacter ruminantium)、メタノブレビバクター・スミシー(Methanobrevibacter smithii)、メタノコッカス・チュングシンゲンシス(Methanococcus chunghsingensis)、メタノコッカス・ブルトニイ(Methanococcus burtonii)、メタノコッカス・アエオリクス(Methanococcus aeolicus)、メタノコッカス・デルタエ(Methanococcus deltae)、メタノコッカス・ヤンナスキイ(Methanococcus jannaschii)、メタノコッカス・マリパルディス(Methanococcus maripaludis)、メタノコッカス・ファンニーリイ(Methanococcus vannielii)、メタノコーパスクラム・ラブレアナム(Methanocorpusculum labreanum)、メタノクレウス・ブルゲンシス(Methanoculleus bourgensis)、メタノクレウス・マリスニグリ(Methanoculleus marisnigri)、メタノフローレンス・スロルダレンミレンシス(Methanoflorens stordalenmirensis)、メタノフォリス・リミナタンス(Methanofollis liminatans)、メタノゲニウム・カリアシ(Methanogenium cariaci)、メタノゲニウム・フリギダム(Methanogenium frigidum)、メタノゲニウム・オルガノフィラム(Methanogenium organophilum)、メタノゲニウム・ウォルフェイ(Methanogenium wolfei)、メタノミクロビウム・モービレ(Methanomicrobium mobile)、メタノパイラス・カンドレリ(Methanopyrus kandleri)、メタノレグラ・ボーネイ(Methanoregula boonei)、メタノセータ・コンシーリイ(Methanosaeta concilii)、メタノセータ・サーモフィラ(Methanosaeta thermophila)、メタノサルシナ・アセチボランス(Methanosarcina acetivorans)、メタノサルシナ・バーケリー(Methanosarcina barkeri)、メタノサルシナ・マゼイ(Methanosarcina mazei)、メタノスファエラ・スタッドマナエ(Methanosphaera stadtmanae)、メタノスピリラム・ヒュンゲイテイ(Methanospirillium hungatei)、メタノサーモバクター・デフルビイ(Methanothermobacter defluvii)、メタノサーモバクター・サームオートトロフィカス(Methanothermobacter thermautotrophicus)、メタノサーモバクター・サーモフレクサス(Methanothermobacter thermoflexus)、メタノサーモバクター・ウォルフェイ(Methanothermobacter wolfei)、およびメタノスリクス・ソクンゲニイ(Methanothrix sochngenii)を含む。一実施形態において、活性薬剤として本発明の生物活性の食品サプリメントに用いられる古細菌種は、メタノスファエラ・スタッドマナエ種および/またはメタノブレビバクター・スミシー種である。
【0041】
本発明の生物活性食品サプリメントは、少なくとも1種の古細菌種の少なくとも1つの個体群を含有することを特徴とする。しかしながら、いくつかの他の薬剤、特に他の種類のプロバイオティクスが前記サプリメント中に存在することができる。これは、後で詳述するように、前記古細菌個体群が、いくつかの微生物の混合物(一般に微生物叢と称される)が存在し得る畜牛の第一胃抽出物から得られた場合に特に当てはまる。必ずしもこの理論に縛られるものではないが、本発明者らによってなされたいくつかの観察は、古細菌個体群が有益な共生関係を維持し、特により多くの種類の嫌気性微生物を含む複雑な個体群の保存の点から、所謂「アーキア関連微生物叢」(すなわち、例えば嫌気性/発酵プロバイオティクスを含む古細菌(Archaeabacteria)と、選択された環境における共生的なつながり(symbiotic tie)を通常確立する微生物の集合)の適当な環境上の成長/増殖条件を促進することを示唆している。本発明に従った古細菌を富化した食品サプリメントにおける2つ以上のプロバイオティック間の平衡は、おそらく飼育動物に対する本発明のサプリメントの認められた好ましい効果の重要な特徴の1つである。
【0042】
従って、本発明のいくつかの好ましい実施形態において、前記生物活性食品サプリメントは、前記生物活性食品サプリメントが古細菌種を実質的に富化されていることを特徴とする。本願で用いられる場合、「実質的に富化されている」とは、本発明のサプリメント内におけるアーキア細胞の個体群が、微生物プロバイオティック細胞の合計の少なくとも1%、好ましくは微生物プロバイオティック細胞の合計の約2〜約10%であることを意味する。この富化は、好ましくはプロバイオティック微生物の2つ以上の微生物個体群が前記組成物中に存在する場合に上述した有益な効果を有する。いくつかの実施形態において、前記サプリメント中に存在する微生物細胞の15、20、30、40、50、60、70、80、90、最高100%のようなより高い割合がアーキア細胞である、すなわち、前記生物活性食品サプリメントは、プロバイオティック微生物を含む他の微生物を含有しない。
【0043】
述べたように、本発明の生物活性食品サプリメントはプロバイオティックとして作用する。特に、本発明の生物活性食品サプリメントの1つの目的は、飼育動物の生理機能の特定の態様、並びに前記改善された生理機能に関連した状態が周辺環境に及ぼす結果的な影響を促進および/または増強することである。背景部分で説明したように、これは、飼育動物(この場合、例えば魚、ウナギまたは甲殻類のような水生動物)が、それらが養殖される環境と非常に緊密な関係を有する水産養殖に特に当てはまる。しかしながら、本発明に従った飼育動物はまた、鶏、家禽、ダチョウなどの鳥類、または、例えば畜牛、羊、ブタ、馬、げっ歯類などのような家畜化された動物としての哺乳動物であり得、また場合により霊長類およびヒトであり得る。従って、前記生物活性食品サプリメントは、飼育条件が標準飼育条件と比較して有利に向上されるように、前記生物活性食品サプリメントが生理学的動物パラメータに好ましい影響を与えることによって、前記生理学的動物パラメータに作用することを特徴とする。具体的には、本発明の生物活性食品サプリメントは、動物成長速度の増大、および/または寄生虫感染に対する動物罹病性の低減、および/または、環境への動物糞便廃棄物の影響の改善を有用にもたらす。本発明のサプリメントのこれらの有用な特性は、以下で実施例部分において詳述するように、前記サプリメントを適当な期間にわたって与えられた哺乳動物モデルおよび水生動物モデルの双方において示され、よって前述の有利な特徴を支持する。従って、加えて、本発明の1つの目的は、動物成長速度を増大する方法、寄生虫感染に対する動物罹病性を低減する方法、または環境に対する動物糞便廃棄物の影響を改善する方法を提供することであり、前記方法は、前記生物活性食品サプリメント、または前記生物活性食品サプリメントを含有する組成物を飼育動物に投与する工程を含む。
【0044】
従って、上記のことについて、本発明の一態様によれば、本発明の生物活性食品サプリメントを含有することを特徴とする組成物も提供される。本開示の枠組みにおいて、「組成物」という用語は、「調合物」という用語と区別なく用いられる。本願に用いられる「組成物」は、特定の方法で調製され、かつ特定の目的に用いられる原料または化合物の混合物を指す。その概念はまた、活性薬剤を含む異なる化合物が組み合わせられて最終生成物を生成するプロセスと明らかに関係している。通常、原料は、それが用いられる場合、最終生成物(すなわち最終組成物)に特有の特性を与えるので、前記原料は、例えばこれらが単独で用いられる場合にその成分から得ることができない効果の達成、それらの成分の任意の潜在的な相乗作用を促進するより高度の有効性のような最終組成物の特性を得るために特定の処方に従って混合され、取扱特性および/またはエンドユーザに対する安全性などを向上する。
【0045】
本発明の組成物は、様々な形態であってもよく、好ましい形態は、通常、意図した投与モードおよび/または意図した用途に依存する。組成物は、通常、活性薬剤のための少なくとも1種の許容可能な担体(場合により希釈手段としても作用し得る)、賦形剤などを含有する。本願で用いられる場合、「許容可能な担体」とは、活性薬剤のための送達手段としても、必要により分散手段としても作用する任意の薬剤である。前記用語は、エンドユーザに対して、この場合は飼育動物に対して、生理学的に適合性である任意かつ全ての溶媒、液体希釈剤、吸収遅延剤などを含むが、食品ペレットに予め構成されるような固体担体も含む。適当な担体の例は、当業においてよく知られており、水溶液(例えば、塩化ナトリウム溶液、リン酸緩衝塩化ナトリウム溶液など)、水、魚油のような油、油/水エマルションのようなエマルション、様々な種類の湿潤剤などを含む。
【0046】
本開示に従った組成物は液体形態で提供され得る。液体組成物は、担体が液体担体であり、かつ任意の別の付加的な賦形剤の存在にもかかわらず液体形態を維持する組成物である。液体調合物としては、例えば、水溶液、非極性溶液、またはエマルションが挙げられる。「水溶液」とは溶媒が実質的に水からなる溶液である。本開示の枠組みにおいて、「水性」という用語は、水に属すること、水に関係すること、水に類似すること、または水中に溶解されていることを意味する。前記表現はまた、例えば、シロップ(すなわち飽和水/糖類溶液)などのような高度に濃厚かつ/または粘稠な溶液を含み、そのような溶液中において水含量は、例えば、全溶液重量の5%未満の重量である。「非極性溶液」は、溶媒が非極性化合物である溶液である。非極性溶媒は、低い誘電率を有し、かつ水と混和しない化合物であることが意図される。非極性溶液は、例えば油を含み得る。「油」は、周囲温度において粘稠な液体であり、疎水性および親油性の双方である任意の非極性化学物質である。本発明に従った特に適当な油は魚油である。「エマルション」は、通常は不混和性の(混和不能な)2種以上の流体の混合物である。エマルションは、コロイドと呼ばれる物質の系のより一般的なクラスの一部である。コロイドおよびエマルションという用語は時に区別なく用いられるが、本開示の枠組みにおいて、エマルションという用語は、分散相および連続相の双方が例えば液体のような流体である場合に用いられる。エマルションでは、一方の流体(「分散相」)は他方(「連続相」)の中に分散されている。
【0047】
本発明に従った1つの特定の実施形態において、本発明の生物活性食品サプリメントを含有する組成物は、固体形態で、すなわち担体が固体担体であるか、または液体担体(または液体組成物)の含有量および/または液体担体(または液体組成物)中へのさらなる賦形剤の存在が非流体組成物を生成するようなものである調合物の形で、提供される。これはまた、とりわけ半固形組成物、凍結乾燥組成物、パテ様の調合物、ゲル様の材料、複合ヒドロゲルなどを含む。本願で用いられる場合、「ゲル」という用語は、流体によるその全体体積にわたって拡張した非流体コロイド状ネットワークまたはポリマーネットワークを指す。ゲルは、液体媒体の体積に広がり、表面張力効果によって前記液体媒体を捕える(ensnares)固体三次元ネットワークである。内部ネットワーク構造は、物理的結合(物理的ゲル)または化学的結合(化学ゲル)に由来し得る。本願で用いられる場合、「ヒドロゲル」という用語は、膨潤剤が水溶液であるゲルを指す。ヒドロゲルは、架橋ポリマー鎖のネットワークから構成された巨大分子ポリマーゲルである。前記ヒドロゲルは、親水性単量体から合成され、時に水が分散媒であるコロイド状ゲルとして見られる。ヒドロゲルは、高度に吸収性の(90%以上の水溶液を含有することができる)天然または合成ポリマーネットワークである。それらの特性の結果として、ヒドロゲルは典型的な堅固だが弾性のある機械的性質を発現する。
【0048】
固形組成物はまた、述べたように、液体担体または液体組成物への特定の賦形剤の添加によって生成することもできる。このアプローチは、本発明の場合のように、活性薬剤が液体溶液中に既に含有されている場合に特に有利である。本発明の一実施形態において、実際には、古細菌(実際のところ本発明の活性薬剤)は、液体培地(「ブロス」とも称される)において培養される。固形組成物を動物飼育に用いることを意図する場合には、増粘剤の添加によって、そのような液体培地を凝固させるか、または濃密化することができる。「増粘剤」または「シックナー」は、その他の特性を実質的に変えることなく、液体の粘度を増大させることができる物質である。シックナーはまた、生成物の安定性を増大する他の原料またはエマルションの懸濁を向上し得る。食品シックナーは、しばしば多糖類(デンプン、植物ガムおよびペクチン)またはタンパク質のいずれかに基づく。このカテゴリは、クズウコン、コーンスターチ、カタクリデンプン、ジャガイモデンプン、サゴ、タピオカおよびそれらのデンプン誘導体としてのデンプンを含む。食品シックナーとして用いられる植物ガムとしては、アルギニン(alginin)およびそれらの塩(例えばアルギン酸(E400)、アルギン酸ナトリウム(E401)、アルギン酸カリウム(E402)、アルギン酸アンモニウム(E403)、アルギン酸カルシウム(E404))、グアーガム、ローカストビーンガムおよびキサンタンガムが挙げられる。食品シックナーとして用いられるタンパク質としては、コラーゲン、卵白、ファーセレランおよびゼラチンが挙げられる。糖としては、アガロース、トレハロース、ショ糖、グルコース、マンニトールおよびカラギーナンが挙げられる。いくつかの増粘剤は、ゲルを形成して、弱い凝集性内部構造を形成するコロイド混合物として液相中に溶解するゲル化剤(gelling agents)(ゲル化剤(gellants))である。典型的なゲル化剤としては、例えば、天然ガム(natural gums)、デンプン、ペクチン、寒天、ゼラチンが挙げられる。様々なシックナーは、味、透明度、および化学的および物理的条件に対するそれらの反応における相違により、程度の差はあるが、所与の用途に適し得る。本発明の好ましい実施形態において、飼料組成物に含まれる増粘剤は、糖、ゼラチンおよび/またはデンプンから選択される。
【0049】
組成物は通常、特定の必要性により、例えば、有機酸またはそれらの塩;アスコルビン酸のような酸化防止剤;低分子量(約10個未満の残基)(ポリ)ペプチド、例えばポリアルギニンまたはトリペプチド;ダイズのような植物性供給源由来のもののようなタンパク質;グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸、リジン、メチオニン、トリプトファンまたはアルギニンのようなアミノ酸;単糖類、二糖類、およびセルロースもしくはその誘導体、グルコース、マンノースまたはデキストリンを含む他の炭水化物;マンニトールまたはソルビトールのような糖アルコール;ビタミン;ダイズ油のような油;脂肪酸;リン脂質および/またはナトリウムのようなイオンなどの他の成分を含有する。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態において、固形組成物はまた、固形調合物の利点(保管、正確な供与、および真空包装の容易さなど)をすべて維持しながら、鶏およびブタのような飼育動物に対して簡単でオンデマンドの送達手段を得るために、飲料水のような水中に後で可溶化されることも考えられる。
【0051】
前記調合物の形態とは無関係に、本発明の組成物の1つの重要な態様は、プロバイオティックに特有の生理学的効果を発揮するために考えられる、そのアーキア細胞含有量である。本発明の好ましい実施形態において、前記組成物は、前記組成物が組成物1グラム当たり約10〜約10個の古細菌細胞を含有することを特徴とする。これに基づき、用量は、動物の種類、その食餌、その重量などのようないくつかのパラメータに従って最適化され得る。いずれにせよ上記の濃度範囲は限定的なものではなく、本開示の枠組みにおいて、より低い、またはより高い範囲が想定され得る。1つのシナリオにおいて、本発明の生物活性食品サプリメントは、例えば、飼育動物用の予め形成された飼料または商業的に入手可能な飼料と混合することができ、混合の際に最終的な動物用飼料の1グラム当たり約10〜約10個の古細菌細胞を維持することが好ましい実施形態と見なされる。
【0052】
本発明のさらなる態様は、本発明に従った組成物を製造する方法、並びに前記方法によって得られた組成物に依拠する。概して言えば、本発明によれば、動物用飼料として適当な組成物を製造する方法は、少なくとも1種の古細菌種の少なくとも1つの個体群を得る工程と、前記少なくとも1種の古細菌種の少なくとも1つの個体群を適当な担体と混合する工程とを含む。必要により、前記担体は、液体調合物または固体調合物を得ることができるように、液体担体または固体担体であり得る。
【0053】
当業者には明らかなように、少なくとも1種の古細菌種の個体群は、分離された古細菌菌株(それらの凍結乾燥された形態を含む)の取引における購入、ペレット化工程を有するか、または有さない、適当な培養液(例えば、ライプニッツ インスティテュート DSMZ−ジャーマン コレクション オブ マイクロオーガニズムス アンド セル カルチャーズ ゲーエムベーハー((Leibniz Institute DSMZ−German Collection of Microorganisms and Cell Cultures GmbH)からのメタノスファエラ メディウム I(Methanosphaera Medium I)またはメタノバクテリウム メディウム(Methanobacterium Medium))中における古細菌の培養のような、任意の既知の方法によって得ることができる。加えて、またはこれに代わって、古細菌は、例えば畜牛の第一胃抽出物からの分離のように、他の供給源から得ることができる。第一胃抽出物は、該抽出物が完璧な培養条件下、すなわち乳牛第一胃内の嫌気条件下において微生物(特にメタン生成アーキア)を養う栄養素を含有するため、古細菌に対して完璧な培地となる。所定の実験手順によって、大量の第一胃抽出物を1日当たり1頭の乳牛から抽出することができる。これは場合により(例えば、酸素および/または極端な温度への曝露によって)殺菌され得、それらから得られた第一胃液は、嫌気性の制御された実験条件下で古細菌を培養するための基剤として用いられ得る。さらに、乳牛のメタン生成微生物叢の高い機能的可能性は、畜牛から死後に容易に得られた場合にも保たれ、ひいては鶏、ブタおよび魚類のような飼育動物に対して植物に基づいた食餌のより良好な消化および免疫系の活性化を促進するために利用され得る。例えば、乳牛の死後の嫌気性第一胃微生物叢は、メタン生成アーキアに富んだ第一胃液を採取するために、第一胃から機械的圧搾によって抽出され得る。これをメッシュフィルターで濾過し、おそらく最終的には適当な凍結保護物質(糖、デンプン、ゼラチンなど)を用いて所定の凍結乾燥または噴霧乾燥法によって保存することができる。
【0054】
少なくとも1種の古細菌種の個体群が得られたならば、これは液体または固体のいずれかの担体と混合される。特定の態様において、特に液体組成物が想定される場合には、前記担体は、微生物が培養されていた同一の培養液、および/または抽出過程(例えば第一胃抽出物の圧搾)後に第一胃抽出物から得られた第一胃液であることも可能である。
【0055】
本発明の特定の実施形態において、液体のものから出発する固形組成物を得るために、付加的な工程を実施することができる。本発明に従った特定の方法は、前記液体担体と前記少なくとも1種の古細菌種の少なくとも1つの個体群とを含有する液体組成物への1%〜10%w/vの増粘剤の添加と、そのように得られた液体組成物/シックナーを、前記液体組成物を加熱しながら、または加熱しないで、任意の適当な手段(例えば撹拌器)によって混合して、粘稠溶液を得ることと、前記粘稠溶液を乾燥させて固形組成物を得ることとを予見する。前記固形組成物は、この後で、スティック、ブロック、ペレット、粒剤、(マイクロ)球体などを得るために、最も好都合な方法で賦形され得る。
【0056】
以下の節をより明確にするために、「パイエル板」は、それが結合組織被膜によって取り囲まれていないこと以外は、構造がリンパ節に類似している概ね卵型のリンパ組織結節である。パイエル板は、扁桃腺および虫垂のリンパ組織を含むリンパ小節として知られている非被包性(non−encapsulated)リンパ組織のクラスに属する。小襞細胞(M細胞)として知られている特別な上皮細胞がパイエル板の腸管腔に面する側面を覆っており、一方、外側は多くのリンパ球系細胞およびリンパ管を含んでいる。パイエル板の機能は、回腸において病原性微生物を分析し、それらに応答することである。腸内の微生物からの抗原は各パイエル板の表面を覆うM細胞によるエンドサイトーシスによって吸収される。これらの抗原はリンパ組織に渡され、そこで前記抗原はマクロファージによって吸収され、Tリンパ球およびBリンパ球に提示される。危険な病原性抗原が提示されると、リンパ球は、病原体に特異的な抗体を生成し、病原体を殺す細胞傷害性リンパ球に変わり、リンパ管を介してリンパ節へ移動して、免疫系の他の細胞に警告することによって免疫反応を引き起こす。次に、身体は、病原体が腸を越えて広がり得る前に、病原体に対して完全な全身免疫反応を準備する。パイエル板は、それらを取り囲む組織が炎症を起こすと、リンパ系の他の要素のように、炎症を起こしたり、または潰瘍化したりする可能性があり、これはパイエル板が毒素および外来細菌を通すようにさせる。
【実施例】
【0057】
実施例1
本発明をより明確に記載し示すために、以下の実施例を詳細に提供する。しかしながら、それらの実施例は本発明を限定するものではない。本願に記載する例示的な実施形態において、畜牛の第一胃からの本発明の生物活性成分の採取および調製は、マウス用の飼料ペレットを改善するために実施される。これは、ウシ第一胃からの自然発生アーキアの分離、およびそれに続く前記アーキアのマウス飼料中への混入によって得られる。
【0058】
方法
マウス:雌C57BL/6マウスは8週齢で処置を開始した。体重を周期的に測定し、マウスの健康を注意深く監視した。
【0059】
生物活性食品サプリメントの製造:メタノスファエラ・スタッドマナエ菌株DSZM 3091およびメタノブレビバクター・スミシー菌株DSMZ 861をジャーマン コレクション オブ マイクロオーガニズムス アンド セル カルチャーズ(German Collection of Microorganisms and Cell Cultures)(DSMZ、ドイツ国ブラウンシュヴァイク)から購入した。前記菌株は双方とも、界:アーキア、門:ユリアーキオータ門(Euryarchaeota)、綱:メタノバクテリウム綱(Methanobacteria)、目:メタノバクテリウム目(Methanobacteriales)、科:メタノバクテリウム科(Methanobacteriaceae)に属する。それらの菌株を、液体培地322および119(DSMZ、ドイツ国ブラウンシュヴァイク)中で、それぞれメタン細菌の培養の特別指示および嫌気性菌の培養の特別指示(DSMZ、ドイツ国ブラウンシュヴァイク)に従って、撹拌下、2バールのH/CO(80%−20%)雰囲気下のハンゲート(hungate)チューブ内において37℃の嫌気条件下で増殖させた。
【0060】
サプリメント飼料として投与された生物活性食品サプリメント:各マウスケージに、特別に調製した飼料ペレットを不断給餌した。各メタノスファエラ・スタッドマナエおよびメタノブレビバクター・スミシー液体培養物から500mLを5日間のインキュベーション後に培養瓶から採取し、5gのアガロース/ゼラチンと合わせて混合して、固体生成物を生成した。そのアガロース/ゼラチン−生物活性食品サプリメント混合物を直径約2〜4mmの固体片に機械的に粉砕した。19kgの標準マウス飼料ペレットを、6Lの蒸留HO中に溶解し、後にアガロース/ゼラチン生物活性食品サプリメント混合物を追加した。完全な混合物を5分間撹拌して均質な塊を得た。この塊を0.5×1cmの小片に粉砕し、アルミニウムホイル上に広げて、21℃で一晩乾燥させた。
【0061】
ヘリグモソモイデス・ポリギルス(H.polygyrus)モデル:C57BL/6を特定病原体感染防止(SPF)条件下で飼育し維持した。すべてのマウスに、実験の開始前には標準的な飼育用飼料を与えた。1つの実験内で分析される異なる群のSPFマウス内において腸内細菌を標準化するために、すべてのマウスを寄生虫感染前に3週間にわたって同居させた(co−housed)。次に、マウスを200のヘリグモソモイデス・ポリギルス・バケリの第三期幼虫(L3 Heligmosomoides polygyrus bakeri(Hpb))に経口感染させ、同時に食餌を標準対照食または前述したような生物活性食品サプリメントを含有する実験食のいずれかに変更した。Hpb感染後、同居または敷き藁の混合(bedding mixes)は実験の残りの部分にわたって停止した。産卵を実験の全体にわたって、飽和NaClを用いた湿った糞便浮遊物の収集、およびマクマスター ワーム エッグ カウンティング チャンバー(McMaster Worm Egg Counting Chamber)(ウェーバー サイエンティフィック インターナショナル リミテッド(Weber Scientific International, Ltd)、米国ニュージャージー州ハミルトン)を用いた目視計数によって定量化した。実験の終了時に、動物を屠殺し、成虫負荷量並びに腸管のパイエル板サイズを、解剖顕微鏡を用いることにより、小腸内容物および外面の手動計数によって、それぞれ測定した。
【0062】
結果
前記生物活性食品サプリメントは未処理の野生型マウスにおいて体重増加を促進する
マウス体重に対する前記生物活性食品サプリメントの効果を試験した(図1)。従来の飼料を、前記サプリメントを含有した1%の寒天に基づいたベヒクル、または対照として寒天に基づいたベヒクル単体と混合した。マウスを前記寒天に基づいたベヒクルおよび生物活性食品サプリメントを嫌悪する可能性について監視した。マウスは、寒天に基づいたベヒクルまたはサプリメントを含有する飼料を食べることに対して嫌悪感を示さなかった。前記生物活性サプリメントを導入した出発点においては、マウス重量に有意差はなかった。各飼料において4週間後、前記サプリメントを受容したマウスは、対照ベヒクルを受容したマウスと比較して、統計的に有意な体重増加を示した。
【0063】
生物活性食品サプリメントは粘膜免疫を促進する
マウス小腸粘膜免疫に対する前記生物活性食品サプリメントの効果を試験した(図2)。腸は脊椎動物において病原体進入の一般的な経路であり、よって粘膜は病原体侵入を防止する重要なバリアを形成する。パイエル板、すなわち小腸内のリンパ凝集体は、固有の微生物叢を育成するためだけでなく、粘膜バリア機能に必要とされる腸内の粘膜抗体分泌細胞を生成するための準備部位である。マウス腸内のパイエル板サイズは粘膜の抗体産生および品質に直接関係しているので、本発明者らは、生物活性食品サプリメントまたは対照ベヒクルのいずれかを7週間の期間にわたって受容したマウス内のパイエル板サイズを測定した。パイエル板サイズを小さい、標準、拡大のいずれかとして格付けし、各腸について平均サイズスコアを計算した。各マウス小腸は通常は7つのパイエル板を有し、これは各群において不変であった。パイエル板の平均サイズは、対照ベヒクルを受容したマウスと比較して、生物活性食品サプリメントを受容したマウスにおいてより高かった。
【0064】
生物活性の食品サプリメントは寄生虫感染に対する耐性を増大する
天然腸内寄生虫に対する耐性における生物活性食品サプリメントの効果を試験した(図3および図4)。腸内寄生虫(蠕虫)は農業において共通の重荷であり、従って本発明者らは原型蠕虫感染、すなわちHpbを用いて、それらの食餌に生物活性食品サプリメントを受容したマウスの感染罹病性の変化を測定した。Hpbを標準化モデルに従って経口投与し、寄生虫の適応度(worm fitness)を感染後2週〜4週の間に糞便の虫卵の計数を実施することにより測定した。生物活性食品サプリメントを受容したマウスは、対照ベヒクルのみを受容したマウスと比較して、有意に低い虫卵の計数を有した。これは処置されたマウスにおける寄生虫耐性の増大を示す。感染後4週間において、マウスを屠殺して解剖し、腸内寄生虫負荷量、すなわち感染に対する宿主罹病性を判定するための別の重要なパラメータを測定した。生物活性食品サプリメントで処置したマウスにおいて検出された寄生虫の数は、対照ベヒクルのみを受容したマウスと比較して有意に低く、よって生物活性食品サプリメントが原型腸内寄生虫感染に対する耐性を増大したという知見を裏付けた。
【0065】
この調査は、飼育動物において成長速度および生来の耐病性を増進することができる生物活性飼料原料として本発明の生物活性食品サプリメントを用いる可能性を試験した。データは、前記サプリメントが良好に確立されたマウスモデルにおいて成長および感染耐性の双方を増進することを明らかに示しており、よって第1の重要な概念実証を提供する。前記サプリメントは動物腸内における自然発生的な生物相互作用を利用するので、前記サプリメントは、農産業における疾病管理のための現在の薬物に基づいたアプローチに対して、生理学的にも生態学的にもより安全な代替案となる。
【0066】
前記生物活性食品サプリメントを受容したマウスにおいて観察された体重増加の増進は、メタン生成アーキアが細菌との生化学的共生に関与して複雑な食餌の炭水化物を消化し、それによりエネルギー収率を増大するという報告と一致している。前記データはまた、前記生物活性食品サプリメントが、主として腸管内腔および/または粘液において、その有益な効果を及ぼすという証拠も提供する。第一に、体重増加の増進は、腸内における食餌エネルギー収率の増大に起因する可能性が最も高い。第二に、リンパ組織(パイエル板)に関連する腸の発達の増強は、腸管の微小環境における局所的な変化に起因する。第3に、耐性の増大は腸内に局限された感染に対して観察された。動物の腸を標的とすることによって、大部分の宿主組織に浸透する抗生物質とは対照的に、前記サプリメントは封じ込められる/局限される。
【0067】
粘膜バリアは病原体侵入の防止に重要な役割を果たすだけでなく、腸を越えて広がる宿主免疫系に対して甚大な影響を有する固有の微生物叢の育成においても重要な役割を有する。従って、腸の恒常性の増進によって、前記生物活性食品サプリメントが全体的な免疫系の健康を向上することができ、よって様々な組織(上皮表面、呼吸器系、魚のえらなど)において免疫耐性を増大することが予想され得る。
【0068】
実施例2
インビトロでの病原性ビブリオ菌の成長およびインビボでのこれらの病原性ビブリオ菌の毒性に対する本発明の生物活性サプリメントの効果を評価した。具体的には、本発明者らは、インビトロで3つの選択した病原体に対する前記生物活性サプリメントの拮抗活性を評価するためには培養に依存した方法を用い、かつインビボで選択した病原体ビブリオ・ハーベイ(V.harveyi) BB120に対する古細菌の保護効果を評価するためにはノトバイオートの(gnotobiotic)ブラインシュリンプアルテミア系を用いた。
【0069】
細菌株および調製
病原性菌株ビブリオ・カンベリー LMG21363、ビブリオ・ハーベイ BB120およびビブリオ・パラヘモリティカス PV1を試験に用いた。すべての菌株は20%の滅菌グリセロールを有するマリンブロス(Marine Broth) 2216(ディフコ ラボラトリーズ(Difco Laboratories)、米国ミシガン州デトロイト)中において−80℃で保存した。前記病原性ビブリオ菌を最初はマリンアガー(ディフコ ラボラトリーズ、米国ミシガン州デトロイト)上において28℃で24時間増殖させ、次に連続振盪しながら28℃でインキュベーとすることにより、マリンブロス中で対数期まで増殖させた。本発明の凍結乾燥させた組成物を1011CFU g−1の古細菌濃度で調製した。
【0070】
ブラインシュリンプ幼生の無菌孵化
無菌幼生を脱殻(decapsulation)および孵化後に得た。手短かに言うと、米国ユタ州のグレートソールトレイク(Great Salt Lake)由来の2.5gのアルテミア・フランシスカナのシスト(Artemia franciscana cysts)(EGタイプ、バッチ 21452、INVE アクアカルチャー(INVE Aquaculture)、ベルギー国デンデルモンデ)を89mLの蒸留水中で1時間にわたって水和させた。3.3mLのNaOH(32%)および50mLのNaOCl(50%)を用いた脱殻によって、無菌のシストおよび幼生を得た。反応中に、0.22μmで濾過したエアレーションを提供した。操作はすべてラミナーフローフード下で実施し、器具はすべて121℃で20分間にわたってオートクレーブ滅菌した。脱殻は10g/LのNaを50mL添加することにより約2分後に停止させた。次に、エアレーションを終了し、濾過して(0.2μm)、35g/Lのインスタントオーシャン合成海塩(instant ocean synthetic sea salt)(アクアリウム システムズ(Aquarium Systems)、フランス国サールブール(Sarrebourg))を含有するオートクレーブ滅菌された人工海水(FAASW)で脱殻したシストを洗浄した。次に、FAASWを収容し、かつエアレーション入口および出口上に0.22μmの空気濾過を備えた1Lのガラス瓶中に前記シストを懸濁した。前記瓶を28℃で約2000ルクスの一定照明下に配置した。第2期(この時期に幼生は細菌を摂取し始める)に達した出現した幼生を収集した。
【0071】
インビトロのプレートアッセイ
病原性ビブリオ菌の各々のアリコート(50μL)を、一般的な成育寒天(マリンアガー、MA)および小エビ飼料を添加したミニマル寒天上で平板培養した(plated)。後者の寒天は、殺菌前に500mg/Lの小エビ飼料(クレヴェテック(Crevetec) PL500、クレヴェテック(Crevetec)、ベルギー国)を補給したナイン ソルツ アガー(Nine Salts agar:NSA)からなった。平板培養後、前記プレートを乾燥するまで無菌条件下で開放したままにした。次に、本発明の組成物を、100mg/L(=107 CFU/mL)で各増殖培地(すなわちマリンブロスまたはナイン ソルツ溶液(Nine Salts Solution))中に懸濁し、50μLアリコートを前記寒天プレートの中心に配置された滅菌接種ディスク上に移した。各プレートをパラフィルムで密閉し、28℃のインキュベータ内に配置した。病原性ビブリオの増殖を48時間にわたって監視し、スポットしたディスクのまわりにおけるクリアゾーンの出現を判定した。
【0072】
接種した寒天プレートの各々において、病原体の増殖を明らかに観察することができた。しかしながら、前記プレートのいずれも、図5に見られるようなアーキアをスポットしたディスクのまわりで増殖阻害を示すクリアゾーンを示さなかった。
【0073】
インビボのチャレンジアッセイ
この実験では、本発明の組成物の使用による、選択した病原体ビブリオ・ハーベイ BB120による攻撃(challenge)に対するアルテミア・ノープリウス幼生の保護を評価した。無菌状態で孵化させたアルテミアを孵化瓶から100μmの滅菌した篩上で収集し、FAASWで洗浄した。アルテミアを10mLのFAASWを収容した滅菌した50mL試験管に2アルテミア/mL(=1試験管当たり20匹のアルテミア・ノープリウス幼生)の濃度で移した。オートクレーブ滅菌したエロモナス・ハイドロフィラ LVS3をアルテミア・ノープリウス幼生用の飼料として各試験管において107CFU/mLで添加した。該アッセイは以下の処置からなった(1処置当たりn=5):
− 中立対照(neutral control)(アーキアまたはビブリオ・ハーベイ BB120の添加なし)
− 陽性対照(古細菌のみ添加)
− 陰性対照(ビブリオ・ハーベイ BB120のみ添加)
− 試験(アーキアの添加+ビブリオ・ハーベイ BB120の添加)
アーキアおよび病原性ビブリオ・ハーベイ BB120を107細胞/mL(これはプロバイオティックの場合には100mg/Lに相当する)の濃度で添加した。前記アルテミアの生存率を48時間後に測定した。48時間後、病原性ビブリオの数を、TCBS培地上で希釈釈平板培養(dilution plating)し、そのプレートを28℃で48時間にわたってインキュベートすることによって、前記試験処置(=古細菌の添加+ビブリオ・ハーベイ BB120の添加)において測定した。
【0074】
異なる処置を行ったアルテミア・ノープリウス幼生の生存率に対する古細菌の効果を図6に与える。非攻撃の(unchallenged)アルテミア・ノープリウス幼生は、ほぼ90%の平均生存率を示し、ビブリオ・ハーベイ BB120で攻撃したアルテミア・ノープリウス幼生は平均35%の有意に低い生存率を示した。これらは、48時間のビブリオ・ハーベイの攻撃によるノトバイオートのアルテミア攻撃系に対する正常な結果である。古細菌単体の投与は平均64%の生存率をもたらし、これは非攻撃の対照より有意に低かった。古細菌を病原性ビブリオ・ハーベイ BB120で攻撃したアルテミア・ノープリウス幼生に投与した場合、生存率は、前記病原体で攻撃したが前記生成物で処置しなかったノープリウス幼生と比較して、有意に高かった。
【0075】
古細菌による処置におけるアルテミア・ノープリウス幼生は、非攻撃の対照処置におけるアルテミア・ノープリウス幼生よりも活発であり、より大きいように思われたことがさらに観察された。
【0076】
試験の初めに、攻撃として添加した病原体の濃度は、平均7.0×10 CFU mL−1であった(表1参照)。古細菌のみによる処置では、試験の開始時および終了時のいずれにおいても、ビブリオ菌の存在を検出することはできなかった。試験の終了時、古細菌が攻撃と組み合わされて添加された場合の前記病原体の濃度は、平均7.5×10 CFU mL−1であった。
【0077】
【表1】
表1.病原性ビブリオ・ハーベイ BB120に曝露したアルテミア・ノープリウス幼生の生存率に対する古細菌の効果を評価するための、アルテミア・ノープリウス幼生を用いたインビボの試験の開始時および終了時における水中の(TCBS寒天上で計数された)ビブリオ・ハーベイ BB120の濃度。
【0078】
前記結果から、古細菌は既知の水産養殖病原体ビブリオ・ハーベイ BB120で攻撃したアルテミア・ノープリウス幼生に有意の保護を与えると結論付けることができる。インビトロのプレート試験においてクリアゾーンが存在しなかったこと、およびインビボのチャレンジ試験中にビブリオ・ハーベイ BB120の数が減少しなかったことから、この保護が前記病原体に対するプロバイオティックの直接的な抗菌効果によるものであったと結論付けることはできない。しかしながら、古細菌のみに曝露されたインビボ試験からのアルテミアが、対照処置からの(すなわち、LVS3のみを給餌された)アルテミア・ノープリウス幼生よりも大きく、より活発であるように思われたことが(定性的に)観察された。これは、古細菌が試験中にアルテミア・ノープリウス幼生の発育および成長を支援し、結果として耐病性も支援した可能性があることを示している。
【0079】
実施例3
魚の栄養摂取、成長、糞便汚染物質および腸内微生物叢の変化における本発明の生物活性サプリメントの効果を示すために、草食性アンシストルス・ドリコプテルス ナマズ(Ancistrus dolichopterus catfish)に対していくつかの実験を行った。
【0080】
方法
魚:
若い同胞アンシストルス・ドリコプテルス ナマズ(実験の開始時において1月齢)を用いた。前記稚魚の腸は、魚の腸の微生物コロニー形成を均質な方法で増進するために、最初にそれらの父親に由来する糞便を接種された。魚を自律水濾過システムを有する50リットルの水槽中で維持した。4分の1の水を毎週交換した。魚の健康および正常な挙動を周期的に確認した。
【0081】
標準および生物活性飼料の製造:
魚には、野菜(湿重量の合計の75%に相当するホウレンソウの葉、キュウリ、ズッキーニ、グリンピースおよびジャガイモ)、白大豆ペースト(15%湿重量)および魚肉(10%湿重量)から構成された手製飼料を与えた。これらの原料を刻んで混合してペーストを形成し、予め加熱した寒天を添加して、完全に混合した。最終的なペーストをビニール袋に注ぎ、平らにして、−20℃で冷凍した。小片を切断し、解凍して秤量し、前記魚に与えた。
【0082】
前記生物活性飼料サプリメントの効果を試験するために、飼料1グラム当たり10個の古細菌細胞の最終濃度で低用量の生物活性飼料サプリメントを含む一群の手製飼料(低用量補給飼料(Low dose supplemented feed)と称する)を調製した。飼料1グラム当たり10個の古細菌細胞の最終濃度で高用量の生物活性飼料サプリメントを含む一群の手製飼料(高用量補給飼料(High dose supplemented feed)と称する)も調製した。
【0083】
アンシストルス ナマズ稚魚を、1群当たり20検体を有する3つの実験群に分割し、以下のように1週当たり6日間不断給餌した。
【0084】
1.対照:生物活性飼料サプリメントを含まない標準手製飼料
2.低用量サプリメント:低用量のサプリメントを有する手製飼料
3.高用量サプリメント:高用量のサプリメントを有する手製飼料
魚をこれらの給餌条件下で4か月と3週間にわたって維持した。
【0085】
魚の体重増加:
食餌実験の1日目に、1群当たり20匹の魚を5mg単位で秤量した。魚を4か月と2週間の期間中に6時点で続いて秤量した。
【0086】
飼料要求率(Feed conversion ratio:FCR):
食餌実験の開始後4か月に、3つの実験群の各々の8検体を個々に秤量し、低減された濾水循環(0.5 l/時間)を備えた個々の3リットル水槽内に配置した。4日間にわたり、各魚に正確に秤量した量のそれらの各飼料を朝に与えた。一日の飼料重量は約100mgであった。5日目の朝、各魚を秤量し、水槽の底の残留飼料を秤量し、また糞便を収集して秤量した。毎日の飼料重量を合計し、次いで残留飼料の重量を引くことにより、4日間に摂取された飼料の合計を計算した。5日目の朝における魚の体重から最初の魚の体重を引くことにより、4日間における魚の体重増加量を計算した。FCRは、4日間に摂取された飼料の重量を同一期間にわたる魚の体重増加量で割ったものによって得られる。FCRはUSAIDテクニカカルブリテン#07に示された規則に従って計算した。
【0087】
水槽水質測定:
食餌実験開始後3か月と3週間、かつその日の給餌セッション後6時間に、前記3つの実験群の各々の8検体をそれらの水槽から取り出し、3つの小さな3リットル水槽内に、群ごとに1つの水槽に配置した。これらの3つの水槽には、3つの群に対して均質な初期水質を保証するために、同一の貯水器に由来する清浄水を予め充填した。初期の水の試料を水質のその後の分析のために保存した。前記魚は30時間にわたって飼料を受容しなかった。30時間後、各実験群の水槽の水500mLを水質パラメータを測定するために収集し、一方、前記魚はそれらの元の各水槽に戻した。光度計AL450(アクアリティック(Aqualytic))および各キットを用いて、以下の水パラメータ、すなわちリン酸イオン(phosphates)、亜硝酸イオン(nitrites)、pH、導電率(conductivity)を測定した。最終リン酸イオン値および亜硝酸イオン値は、初期の水に対して測定された値を引いた後に得られた。1つの実験群当たり8匹の魚を秤量し、最終リン酸イオン値および亜硝酸イオン値を、その水槽内の魚1グラム当たりに対して与えた。この完全な手順を、同一組の魚で、7日間隔で、合計で3回反復した。
【0088】
微生物叢メタバーコーディング:
食餌実験の開始後3か月に、対照群の5検体および高用量補給群の5検体を、水を循環させていない、清浄水で充填した個々の3リットル水槽内に配置した。2時間後、糞便を各検体について個々に収集し、パワーソイル DNA アイソレーションキット(PowerSoil DNA isolation kit)(モビオ(MoBio))のDNA抽出管内に直接配置した。DNA抽出後、原核生物(細菌およびアーキア)16S 超可変領域V3−V4を、タカハシら(PLoS One, DOI:10.1371/journal.pone.0105592、2014年)によって公開されたプライマー Pro341F/Pro805R(イルミナ アダプタ配列(illumina adapter sequences)を除く)を用いたPCRによって増幅した。10のPCR産物をハイピュア PCR プロダクト ピュアリフィケイション キット(High Pure PCR Product Purification Kit)(ロシュ(Roche))を用いて精製した。TruSeqナノDNAライブラリ調製キット(TruSeq Nano DNA Library Preparation Kit)(イルミナ(illumina))を用いて、10試料の各々についてライブラリを調製した。前記ライブラリをリアルタイム定量的PCRによって定量し、等モル量でプールした。そのライブラリのプールを、MiSeq試薬ナノキットV2(500サイクル)を用いて、MiSeq イルミナ装置上において、ペアードエンド、2×250−bpサイクル ランでシーケンスした。ペアードエンドリードは、イルミナ(illumina)のリアルタイム分析ソフトウェア(Real−Time Analysis software)(v 1.17.28)を用いて、品質について制御された。集められたリードを、ベーススペース イルミナ プラットフォーム(BaseSpace illumina platform)(バージョン1.0.1.0、2016年)において実行されるようなイルミナの16Sメタゲノミクス分析パイプライン(16S Metagenomics analysis pipeline)を用いて分析した。
【0089】
結果
前記生物活性サプリメントは、アンシストルス ナマズの成長速度を増進する:
腸内微生物叢は飼料消化および栄養素の同化において中心的な役割を果たし、また草食動物では、それらのエネルギーに乏しい植物食餌から栄養素を抽出するために、高度に特殊化した微生物群が発達している。飼料に有用な微生物を補うことにより、栄養素の同化を向上し、成長速度を増進することができる。
【0090】
前記生物活性サプリメントを与えられたアンシストルス ナマズは、対照群と比較して、体重増加として表わされた、より高い成長速度を示した(図7)。しかしながら、成長速度の差は、対照と高用量補給飼料との間においてのみ有意である。よって、栄養反応および成長反応は、飼料中のサプリメントの用量を条件とする。
【0091】
前記生物活性サプリメントは、アンシストルス ナマズにおいて飼料要求率を向上する:
有用な微生物の添加によって腸内微生物叢の機能を向上することにより、成長期間中における加速的な成長および体重増加がもたらされ得る。飼料質量を体重増加量に変換する効率を評価する飼料要求率(FCR)を、4給餌日にわたって1つの実験群当たり8検体について計算した(表2)。FCR値は対照群については24〜207、低用量補給飼料については19.9〜196.7、また高用量補給飼料については6.5〜139に及んだ。アンシストルス ナマズは、特にそれらの高度に発達した強い骨格およびそれらの草食性食餌のために成長が遅いので、これらの値は、高度に生産的な養殖魚と比較して、相対的に上昇した。FCRの結果は、対照と比較して、高用量補給飼料を与えた魚において有意な増大を示している(t検定、両側法:t−stat=2.4178、df=9.69、P=0.0369)。低用量補給飼料を与えた魚においても、対照と比較して、わずかなFCR増大が観察された(t検定、両側法:t−stat=1.575、df=12、P=0.141)。よって、アンシストルス ナマズにおけるFCR改善は、古細菌を含有する前記生物活性サプリメントの用量に依存し、また、高用量補給飼料のみが対照と比較して有意な改善を示した。
【0092】
【表2】
表2:3つの実験群に対する飼料要求率(FCR)のデータおよび結果:対照、低用量補給飼料、および高用量補給飼料。
【0093】
前記生物活性サプリメントは、アンシストルス ナマズにおいて糞便の量を低減する:
飼料用生物活性サプリメントによって引き起こされた消化および栄養素同化の向上は、摂取飼料重量当たりの糞便生成重量を低減する。FCRの計算に関する同一のデータを用いて、実験5日目に生成された糞便を秤量することにより、摂取飼料重量当たりの糞便重量の比率を計算した(表3)。その結果は、前記生物活性サプリメントを与えた魚は対照よりも低量の糞便を生成することを示している。独立した試料のt検定は、低用量補給飼料および高用量補給飼料の双方が、摂取飼料重量当たりの糞便重量の有意な低減をもたらしたこと示している(低用量:t−stat=2.227、df=12、P=0.023; 高用量:t−stat=3.761、df=12、P=0.0014)。この結果は、前記生物活性サプリメントが、糞便の単純な低減により、おそらく糞便汚染物質の量を低減するであろうことを示唆している。
【0094】
【表3】
表3:摂取飼料重量×100当たりの糞便重量として表わした、FCR実験の4給餌日の間に生成された糞便重量。魚検体および摂取飼料重量の合計は表1におけるのと同一である。
【0095】
前記生物活性サプリメントはアンシストルス ナマズの廃棄汚染物質を低減する:
動物の糞便は亜硝酸塩およびリン酸塩汚染物質の供給源である。大量の亜硝酸イオンおよびリン酸イオンの存在は、環境に対して悪影響を有する水質汚濁を示す。糞便中の汚染物質の低減に対する前記生物活性のサプリメントの効果を草食性ナマズのアンシストルス・ドリコプテルス(Ancitrus dolichopterus)において試験した。水質パラメータの測定の結果(図8)は、リン酸イオンおよび亜硝酸イオンの濃度が、対照群の魚を収容した水槽の水と比較して、前記生物活性サプリメント(高用量補給飼料または低用量補給飼料のいずれか)を与えた魚を収容した水槽の水において有意により低かったことを示している(2つの独立した試料のt検定:対照におけるリン酸イオン対低用量補給飼料におけるリン酸イオン、t−stat=6.478、df=2、P=0.0115;対照におけるリン酸イオン対高用量補給飼料におけるリン酸イオン、t−stat=6.298、df=2、P=0.012;対照における亜硝酸イオン対低用量補給飼料における亜硝酸イオン、t−stat=24.779、df=2、P=0.0008;対照における亜硝酸イオン対高用量補給飼料における亜硝酸イオン、t−stat=29.86、df=2、P=0.0006)。2つの実験用量の生物活性飼料サプリメント(高用量または低用量の実験飼料)の間に有意差は観察されなかった。
【0096】
出発水のpHは7.76〜7.91であった。実験の終了時、対照群における水のpHは7.57〜7.67の範囲にあったが、低用量補給飼料および高用量補給飼料では、水のpHは7.59〜7.85の範囲にあった。実験の終了時、水の導電率(μS/cm)は、低用量補給飼料による群(275〜277μS/cm)、または高用量補給飼料による群(270〜274μS/cm)と比較して、対照群(280〜283μS/cm)においてより高かった。これらの結果は、前記生物活性サプリメントを与えた魚と比較して、対照において若干の水の酸性化および導電率の増大を示している。
【0097】
前記生物活性サプリメントは、アンシストルス ナマズの微生物叢を変更する:
この実験は、新鮮な糞便において測定される、アンシストルス・ドリコプテルス ナマズにおける生物活性プロバイオティックxによって誘発された微生物叢の変化を特徴づけることを目的としている。対照群の5検体および高用量補給飼料の5検体の新鮮な糞便を収集し、それらの微生物叢をメタバーコーディングした。高品質ペアードエンドリードの数は、1検体当たり48’500〜57’200に及んだ。メタバーコード分析の結果は、対照と比較して、前記生物活性サプリメントを与えた魚において微生物叢が著しく変更されることを示している。これは、表4に示した、対照群対高用量補給飼料群におけるより多く存在する6種類の細菌の度数(frequency)の有意な変化において観察することができる(対照群と高用量群と間の多変量分散分析(MANOVA)試験:ピライの対数和(Pillai Trace) t−stat=0.984、F=29.98、df1=6、df2=3、P=0.009)。微生物叢の変更はまた、試料中に見られる細菌属およびアカイア(Achaea)属の多様性によって評価することができ、前記多様性は、高用量補給飼料群(範囲:1試料当たり179〜267属)におけるよりも対照群(範囲:1試料当たり246〜313属)においてより高い。一方向(単一因子)分散分析(ANOVA)分析は、この差が有意であることを示している(群内:SS=7272、df=8、MS=909; 群間 SS=10112.4、df=1、MS=10112.4、F=11.125、P=0.0103)。別の重要な差異は、高用量補給飼料群の魚の微生物叢では、前記生物活性サプリメントを構成するアカイア種(Achaea species)が系統的に存在し、対照群の魚の微生物叢(すべての指定されたリードの0〜0.004%にわたる)と比較して、より高い存在量を有する(すべての指定されたリードの0.005〜0.225%にわたる)ことである。t検定によれば、この差異は有意である(t−stat=2.532、df=7、P=0.019)。
【0098】
実施例に示した前記サプリメントの有利な特性を考慮すると、前記生物活性食品サプリメントの使用は、特に、免疫系、並びに消化性能に関する利点の観点からだけでなく、特に動物飼育に起因する重要な汚染物質である硝酸塩の含有量に関する糞便廃棄物の質の改善に関する利点の観点からも、飼育動物に影響を有し得ると言える。
【0099】
【表4】
表4.対照群の5匹の魚および高用量補給飼料群の5匹の魚についての、対照群中に見られた最も多く存在する6種類の細菌の度数の変化。数値は、リードの総数に対する所与の種類の細菌に起因するリードのパーセンテージを表わす。
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