【実施例】
【0057】
実施例1
本発明をより明確に記載し示すために、以下の実施例を詳細に提供する。しかしながら、それらの実施例は本発明を限定するものではない。本願に記載する例示的な実施形態において、畜牛の第一胃からの本発明の生物活性成分の採取および調製は、マウス用の飼料ペレットを改善するために実施される。これは、ウシ第一胃からの自然発生アーキアの分離、およびそれに続く前記アーキアのマウス飼料中への混入によって得られる。
【0058】
方法
マウス:雌C57BL/6マウスは8週齢で処置を開始した。体重を周期的に測定し、マウスの健康を注意深く監視した。
【0059】
生物活性食品サプリメントの製造:メタノスファエラ・スタッドマナエ菌株DSZM 3091およびメタノブレビバクター・スミシー菌株DSMZ 861をジャーマン コレクション オブ マイクロオーガニズムス アンド セル カルチャーズ(German Collection of Microorganisms and Cell Cultures)(DSMZ、ドイツ国ブラウンシュヴァイク)から購入した。前記菌株は双方とも、界:アーキア、門:ユリアーキオータ門(Euryarchaeota)、綱:メタノバクテリウム綱(Methanobacteria)、目:メタノバクテリウム目(Methanobacteriales)、科:メタノバクテリウム科(Methanobacteriaceae)に属する。それらの菌株を、液体培地322および119(DSMZ、ドイツ国ブラウンシュヴァイク)中で、それぞれメタン細菌の培養の特別指示および嫌気性菌の培養の特別指示(DSMZ、ドイツ国ブラウンシュヴァイク)に従って、撹拌下、2バールのH
2/CO
2(80%−20%)雰囲気下のハンゲート(hungate)チューブ内において37℃の嫌気条件下で増殖させた。
【0060】
サプリメント飼料として投与された生物活性食品サプリメント:各マウスケージに、特別に調製した飼料ペレットを不断給餌した。各メタノスファエラ・スタッドマナエおよびメタノブレビバクター・スミシー液体培養物から500mLを5日間のインキュベーション後に培養瓶から採取し、5gのアガロース/ゼラチンと合わせて混合して、固体生成物を生成した。そのアガロース/ゼラチン−生物活性食品サプリメント混合物を直径約2〜4mmの固体片に機械的に粉砕した。19kgの標準マウス飼料ペレットを、6Lの蒸留H
2O中に溶解し、後にアガロース/ゼラチン生物活性食品サプリメント混合物を追加した。完全な混合物を5分間撹拌して均質な塊を得た。この塊を0.5×1cmの小片に粉砕し、アルミニウムホイル上に広げて、21℃で一晩乾燥させた。
【0061】
ヘリグモソモイデス・ポリギルス(H.polygyrus)モデル:C57BL/6を特定病原体感染防止(SPF)条件下で飼育し維持した。すべてのマウスに、実験の開始前には標準的な飼育用飼料を与えた。1つの実験内で分析される異なる群のSPFマウス内において腸内細菌を標準化するために、すべてのマウスを寄生虫感染前に3週間にわたって同居させた(co−housed)。次に、マウスを200のヘリグモソモイデス・ポリギルス・バケリの第三期幼虫(L3 Heligmosomoides polygyrus bakeri(Hpb))に経口感染させ、同時に食餌を標準対照食または前述したような生物活性食品サプリメントを含有する実験食のいずれかに変更した。Hpb感染後、同居または敷き藁の混合(bedding mixes)は実験の残りの部分にわたって停止した。産卵を実験の全体にわたって、飽和NaClを用いた湿った糞便浮遊物の収集、およびマクマスター ワーム エッグ カウンティング チャンバー(McMaster Worm Egg Counting Chamber)(ウェーバー サイエンティフィック インターナショナル リミテッド(Weber Scientific International, Ltd)、米国ニュージャージー州ハミルトン)を用いた目視計数によって定量化した。実験の終了時に、動物を屠殺し、成虫負荷量並びに腸管のパイエル板サイズを、解剖顕微鏡を用いることにより、小腸内容物および外面の手動計数によって、それぞれ測定した。
【0062】
結果
前記生物活性食品サプリメントは未処理の野生型マウスにおいて体重増加を促進する
マウス体重に対する前記生物活性食品サプリメントの効果を試験した(
図1)。従来の飼料を、前記サプリメントを含有した1%の寒天に基づいたベヒクル、または対照として寒天に基づいたベヒクル単体と混合した。マウスを前記寒天に基づいたベヒクルおよび生物活性食品サプリメントを嫌悪する可能性について監視した。マウスは、寒天に基づいたベヒクルまたはサプリメントを含有する飼料を食べることに対して嫌悪感を示さなかった。前記生物活性サプリメントを導入した出発点においては、マウス重量に有意差はなかった。各飼料において4週間後、前記サプリメントを受容したマウスは、対照ベヒクルを受容したマウスと比較して、統計的に有意な体重増加を示した。
【0063】
生物活性食品サプリメントは粘膜免疫を促進する
マウス小腸粘膜免疫に対する前記生物活性食品サプリメントの効果を試験した(
図2)。腸は脊椎動物において病原体進入の一般的な経路であり、よって粘膜は病原体侵入を防止する重要なバリアを形成する。パイエル板、すなわち小腸内のリンパ凝集体は、固有の微生物叢を育成するためだけでなく、粘膜バリア機能に必要とされる腸内の粘膜抗体分泌細胞を生成するための準備部位である。マウス腸内のパイエル板サイズは粘膜の抗体産生および品質に直接関係しているので、本発明者らは、生物活性食品サプリメントまたは対照ベヒクルのいずれかを7週間の期間にわたって受容したマウス内のパイエル板サイズを測定した。パイエル板サイズを小さい、標準、拡大のいずれかとして格付けし、各腸について平均サイズスコアを計算した。各マウス小腸は通常は7つのパイエル板を有し、これは各群において不変であった。パイエル板の平均サイズは、対照ベヒクルを受容したマウスと比較して、生物活性食品サプリメントを受容したマウスにおいてより高かった。
【0064】
生物活性の食品サプリメントは寄生虫感染に対する耐性を増大する
天然腸内寄生虫に対する耐性における生物活性食品サプリメントの効果を試験した(
図3および
図4)。腸内寄生虫(蠕虫)は農業において共通の重荷であり、従って本発明者らは原型蠕虫感染、すなわちHpbを用いて、それらの食餌に生物活性食品サプリメントを受容したマウスの感染罹病性の変化を測定した。Hpbを標準化モデルに従って経口投与し、寄生虫の適応度(worm fitness)を感染後2週〜4週の間に糞便の虫卵の計数を実施することにより測定した。生物活性食品サプリメントを受容したマウスは、対照ベヒクルのみを受容したマウスと比較して、有意に低い虫卵の計数を有した。これは処置されたマウスにおける寄生虫耐性の増大を示す。感染後4週間において、マウスを屠殺して解剖し、腸内寄生虫負荷量、すなわち感染に対する宿主罹病性を判定するための別の重要なパラメータを測定した。生物活性食品サプリメントで処置したマウスにおいて検出された寄生虫の数は、対照ベヒクルのみを受容したマウスと比較して有意に低く、よって生物活性食品サプリメントが原型腸内寄生虫感染に対する耐性を増大したという知見を裏付けた。
【0065】
この調査は、飼育動物において成長速度および生来の耐病性を増進することができる生物活性飼料原料として本発明の生物活性食品サプリメントを用いる可能性を試験した。データは、前記サプリメントが良好に確立されたマウスモデルにおいて成長および感染耐性の双方を増進することを明らかに示しており、よって第1の重要な概念実証を提供する。前記サプリメントは動物腸内における自然発生的な生物相互作用を利用するので、前記サプリメントは、農産業における疾病管理のための現在の薬物に基づいたアプローチに対して、生理学的にも生態学的にもより安全な代替案となる。
【0066】
前記生物活性食品サプリメントを受容したマウスにおいて観察された体重増加の増進は、メタン生成アーキアが細菌との生化学的共生に関与して複雑な食餌の炭水化物を消化し、それによりエネルギー収率を増大するという報告と一致している。前記データはまた、前記生物活性食品サプリメントが、主として腸管内腔および/または粘液において、その有益な効果を及ぼすという証拠も提供する。第一に、体重増加の増進は、腸内における食餌エネルギー収率の増大に起因する可能性が最も高い。第二に、リンパ組織(パイエル板)に関連する腸の発達の増強は、腸管の微小環境における局所的な変化に起因する。第3に、耐性の増大は腸内に局限された感染に対して観察された。動物の腸を標的とすることによって、大部分の宿主組織に浸透する抗生物質とは対照的に、前記サプリメントは封じ込められる/局限される。
【0067】
粘膜バリアは病原体侵入の防止に重要な役割を果たすだけでなく、腸を越えて広がる宿主免疫系に対して甚大な影響を有する固有の微生物叢の育成においても重要な役割を有する。従って、腸の恒常性の増進によって、前記生物活性食品サプリメントが全体的な免疫系の健康を向上することができ、よって様々な組織(上皮表面、呼吸器系、魚のえらなど)において免疫耐性を増大することが予想され得る。
【0068】
実施例2
インビトロでの病原性ビブリオ菌の成長およびインビボでのこれらの病原性ビブリオ菌の毒性に対する本発明の生物活性サプリメントの効果を評価した。具体的には、本発明者らは、インビトロで3つの選択した病原体に対する前記生物活性サプリメントの拮抗活性を評価するためには培養に依存した方法を用い、かつインビボで選択した病原体ビブリオ・ハーベイ(V.harveyi) BB120に対する古細菌の保護効果を評価するためにはノトバイオートの(gnotobiotic)ブラインシュリンプアルテミア系を用いた。
【0069】
細菌株および調製
病原性菌株ビブリオ・カンベリー LMG21363、ビブリオ・ハーベイ BB120およびビブリオ・パラヘモリティカス PV1を試験に用いた。すべての菌株は20%の滅菌グリセロールを有するマリンブロス(Marine Broth) 2216(ディフコ ラボラトリーズ(Difco Laboratories)、米国ミシガン州デトロイト)中において−80℃で保存した。前記病原性ビブリオ菌を最初はマリンアガー(ディフコ ラボラトリーズ、米国ミシガン州デトロイト)上において28℃で24時間増殖させ、次に連続振盪しながら28℃でインキュベーとすることにより、マリンブロス中で対数期まで増殖させた。本発明の凍結乾燥させた組成物を10
11CFU g
−1の古細菌濃度で調製した。
【0070】
ブラインシュリンプ幼生の無菌孵化
無菌幼生を脱殻(decapsulation)および孵化後に得た。手短かに言うと、米国ユタ州のグレートソールトレイク(Great Salt Lake)由来の2.5gのアルテミア・フランシスカナのシスト(Artemia franciscana cysts)(EGタイプ、バッチ 21452、INVE アクアカルチャー(INVE Aquaculture)、ベルギー国デンデルモンデ)を89mLの蒸留水中で1時間にわたって水和させた。3.3mLのNaOH(32%)および50mLのNaOCl(50%)を用いた脱殻によって、無菌のシストおよび幼生を得た。反応中に、0.22μmで濾過したエアレーションを提供した。操作はすべてラミナーフローフード下で実施し、器具はすべて121℃で20分間にわたってオートクレーブ滅菌した。脱殻は10g/LのNa
2S
2O
3を50mL添加することにより約2分後に停止させた。次に、エアレーションを終了し、濾過して(0.2μm)、35g/Lのインスタントオーシャン合成海塩(instant ocean synthetic sea salt)(アクアリウム システムズ(Aquarium Systems)、フランス国サールブール(Sarrebourg))を含有するオートクレーブ滅菌された人工海水(FAASW)で脱殻したシストを洗浄した。次に、FAASWを収容し、かつエアレーション入口および出口上に0.22μmの空気濾過を備えた1Lのガラス瓶中に前記シストを懸濁した。前記瓶を28℃で約2000ルクスの一定照明下に配置した。第2期(この時期に幼生は細菌を摂取し始める)に達した出現した幼生を収集した。
【0071】
インビトロのプレートアッセイ
病原性ビブリオ菌の各々のアリコート(50μL)を、一般的な成育寒天(マリンアガー、MA)および小エビ飼料を添加したミニマル寒天上で平板培養した(plated)。後者の寒天は、殺菌前に500mg/Lの小エビ飼料(クレヴェテック(Crevetec) PL500、クレヴェテック(Crevetec)、ベルギー国)を補給したナイン ソルツ アガー(Nine Salts agar:NSA)からなった。平板培養後、前記プレートを乾燥するまで無菌条件下で開放したままにした。次に、本発明の組成物を、100mg/L(=107 CFU/mL)で各増殖培地(すなわちマリンブロスまたはナイン ソルツ溶液(Nine Salts Solution))中に懸濁し、50μLアリコートを前記寒天プレートの中心に配置された滅菌接種ディスク上に移した。各プレートをパラフィルムで密閉し、28℃のインキュベータ内に配置した。病原性ビブリオの増殖を48時間にわたって監視し、スポットしたディスクのまわりにおけるクリアゾーンの出現を判定した。
【0072】
接種した寒天プレートの各々において、病原体の増殖を明らかに観察することができた。しかしながら、前記プレートのいずれも、
図5に見られるようなアーキアをスポットしたディスクのまわりで増殖阻害を示すクリアゾーンを示さなかった。
【0073】
インビボのチャレンジアッセイ
この実験では、本発明の組成物の使用による、選択した病原体ビブリオ・ハーベイ BB120による攻撃(challenge)に対するアルテミア・ノープリウス幼生の保護を評価した。無菌状態で孵化させたアルテミアを孵化瓶から100μmの滅菌した篩上で収集し、FAASWで洗浄した。アルテミアを10mLのFAASWを収容した滅菌した50mL試験管に2アルテミア/mL(=1試験管当たり20匹のアルテミア・ノープリウス幼生)の濃度で移した。オートクレーブ滅菌したエロモナス・ハイドロフィラ LVS3をアルテミア・ノープリウス幼生用の飼料として各試験管において107CFU/mLで添加した。該アッセイは以下の処置からなった(1処置当たりn=5):
− 中立対照(neutral control)(アーキアまたはビブリオ・ハーベイ BB120の添加なし)
− 陽性対照(古細菌のみ添加)
− 陰性対照(ビブリオ・ハーベイ BB120のみ添加)
− 試験(アーキアの添加+ビブリオ・ハーベイ BB120の添加)
アーキアおよび病原性ビブリオ・ハーベイ BB120を107細胞/mL(これはプロバイオティックの場合には100mg/Lに相当する)の濃度で添加した。前記アルテミアの生存率を48時間後に測定した。48時間後、病原性ビブリオの数を、TCBS培地上で希釈釈平板培養(dilution plating)し、そのプレートを28℃で48時間にわたってインキュベートすることによって、前記試験処置(=古細菌の添加+ビブリオ・ハーベイ BB120の添加)において測定した。
【0074】
異なる処置を行ったアルテミア・ノープリウス幼生の生存率に対する古細菌の効果を
図6に与える。非攻撃の(unchallenged)アルテミア・ノープリウス幼生は、ほぼ90%の平均生存率を示し、ビブリオ・ハーベイ BB120で攻撃したアルテミア・ノープリウス幼生は平均35%の有意に低い生存率を示した。これらは、48時間のビブリオ・ハーベイの攻撃によるノトバイオートのアルテミア攻撃系に対する正常な結果である。古細菌単体の投与は平均64%の生存率をもたらし、これは非攻撃の対照より有意に低かった。古細菌を病原性ビブリオ・ハーベイ BB120で攻撃したアルテミア・ノープリウス幼生に投与した場合、生存率は、前記病原体で攻撃したが前記生成物で処置しなかったノープリウス幼生と比較して、有意に高かった。
【0075】
古細菌による処置におけるアルテミア・ノープリウス幼生は、非攻撃の対照処置におけるアルテミア・ノープリウス幼生よりも活発であり、より大きいように思われたことがさらに観察された。
【0076】
試験の初めに、攻撃として添加した病原体の濃度は、平均7.0×10
6 CFU mL
−1であった(表1参照)。古細菌のみによる処置では、試験の開始時および終了時のいずれにおいても、ビブリオ菌の存在を検出することはできなかった。試験の終了時、古細菌が攻撃と組み合わされて添加された場合の前記病原体の濃度は、平均7.5×10
6 CFU mL
−1であった。
【0077】
【表1】
表1.病原性ビブリオ・ハーベイ BB120に曝露したアルテミア・ノープリウス幼生の生存率に対する古細菌の効果を評価するための、アルテミア・ノープリウス幼生を用いたインビボの試験の開始時および終了時における水中の(TCBS寒天上で計数された)ビブリオ・ハーベイ BB120の濃度。
【0078】
前記結果から、古細菌は既知の水産養殖病原体ビブリオ・ハーベイ BB120で攻撃したアルテミア・ノープリウス幼生に有意の保護を与えると結論付けることができる。インビトロのプレート試験においてクリアゾーンが存在しなかったこと、およびインビボのチャレンジ試験中にビブリオ・ハーベイ BB120の数が減少しなかったことから、この保護が前記病原体に対するプロバイオティックの直接的な抗菌効果によるものであったと結論付けることはできない。しかしながら、古細菌のみに曝露されたインビボ試験からのアルテミアが、対照処置からの(すなわち、LVS3のみを給餌された)アルテミア・ノープリウス幼生よりも大きく、より活発であるように思われたことが(定性的に)観察された。これは、古細菌が試験中にアルテミア・ノープリウス幼生の発育および成長を支援し、結果として耐病性も支援した可能性があることを示している。
【0079】
実施例3
魚の栄養摂取、成長、糞便汚染物質および腸内微生物叢の変化における本発明の生物活性サプリメントの効果を示すために、草食性アンシストルス・ドリコプテルス ナマズ(Ancistrus dolichopterus catfish)に対していくつかの実験を行った。
【0080】
方法
魚:
若い同胞アンシストルス・ドリコプテルス ナマズ(実験の開始時において1月齢)を用いた。前記稚魚の腸は、魚の腸の微生物コロニー形成を均質な方法で増進するために、最初にそれらの父親に由来する糞便を接種された。魚を自律水濾過システムを有する50リットルの水槽中で維持した。4分の1の水を毎週交換した。魚の健康および正常な挙動を周期的に確認した。
【0081】
標準および生物活性飼料の製造:
魚には、野菜(湿重量の合計の75%に相当するホウレンソウの葉、キュウリ、ズッキーニ、グリンピースおよびジャガイモ)、白大豆ペースト(15%湿重量)および魚肉(10%湿重量)から構成された手製飼料を与えた。これらの原料を刻んで混合してペーストを形成し、予め加熱した寒天を添加して、完全に混合した。最終的なペーストをビニール袋に注ぎ、平らにして、−20℃で冷凍した。小片を切断し、解凍して秤量し、前記魚に与えた。
【0082】
前記生物活性飼料サプリメントの効果を試験するために、飼料1グラム当たり10
6個の古細菌細胞の最終濃度で低用量の生物活性飼料サプリメントを含む一群の手製飼料(低用量補給飼料(Low dose supplemented feed)と称する)を調製した。飼料1グラム当たり10
8個の古細菌細胞の最終濃度で高用量の生物活性飼料サプリメントを含む一群の手製飼料(高用量補給飼料(High dose supplemented feed)と称する)も調製した。
【0083】
アンシストルス ナマズ稚魚を、1群当たり20検体を有する3つの実験群に分割し、以下のように1週当たり6日間不断給餌した。
【0084】
1.対照:生物活性飼料サプリメントを含まない標準手製飼料
2.低用量サプリメント:低用量のサプリメントを有する手製飼料
3.高用量サプリメント:高用量のサプリメントを有する手製飼料
魚をこれらの給餌条件下で4か月と3週間にわたって維持した。
【0085】
魚の体重増加:
食餌実験の1日目に、1群当たり20匹の魚を5mg単位で秤量した。魚を4か月と2週間の期間中に6時点で続いて秤量した。
【0086】
飼料要求率(Feed conversion ratio:FCR):
食餌実験の開始後4か月に、3つの実験群の各々の8検体を個々に秤量し、低減された濾水循環(0.5 l/時間)を備えた個々の3リットル水槽内に配置した。4日間にわたり、各魚に正確に秤量した量のそれらの各飼料を朝に与えた。一日の飼料重量は約100mgであった。5日目の朝、各魚を秤量し、水槽の底の残留飼料を秤量し、また糞便を収集して秤量した。毎日の飼料重量を合計し、次いで残留飼料の重量を引くことにより、4日間に摂取された飼料の合計を計算した。5日目の朝における魚の体重から最初の魚の体重を引くことにより、4日間における魚の体重増加量を計算した。FCRは、4日間に摂取された飼料の重量を同一期間にわたる魚の体重増加量で割ったものによって得られる。FCRはUSAIDテクニカカルブリテン#07に示された規則に従って計算した。
【0087】
水槽水質測定:
食餌実験開始後3か月と3週間、かつその日の給餌セッション後6時間に、前記3つの実験群の各々の8検体をそれらの水槽から取り出し、3つの小さな3リットル水槽内に、群ごとに1つの水槽に配置した。これらの3つの水槽には、3つの群に対して均質な初期水質を保証するために、同一の貯水器に由来する清浄水を予め充填した。初期の水の試料を水質のその後の分析のために保存した。前記魚は30時間にわたって飼料を受容しなかった。30時間後、各実験群の水槽の水500mLを水質パラメータを測定するために収集し、一方、前記魚はそれらの元の各水槽に戻した。光度計AL450(アクアリティック(Aqualytic))および各キットを用いて、以下の水パラメータ、すなわちリン酸イオン(phosphates)、亜硝酸イオン(nitrites)、pH、導電率(conductivity)を測定した。最終リン酸イオン値および亜硝酸イオン値は、初期の水に対して測定された値を引いた後に得られた。1つの実験群当たり8匹の魚を秤量し、最終リン酸イオン値および亜硝酸イオン値を、その水槽内の魚1グラム当たりに対して与えた。この完全な手順を、同一組の魚で、7日間隔で、合計で3回反復した。
【0088】
微生物叢メタバーコーディング:
食餌実験の開始後3か月に、対照群の5検体および高用量補給群の5検体を、水を循環させていない、清浄水で充填した個々の3リットル水槽内に配置した。2時間後、糞便を各検体について個々に収集し、パワーソイル DNA アイソレーションキット(PowerSoil DNA isolation kit)(モビオ(MoBio))のDNA抽出管内に直接配置した。DNA抽出後、原核生物(細菌およびアーキア)16S 超可変領域V3−V4を、タカハシら(PLoS One, DOI:10.1371/journal.pone.0105592、2014年)によって公開されたプライマー Pro341F/Pro805R(イルミナ アダプタ配列(illumina adapter sequences)を除く)を用いたPCRによって増幅した。10のPCR産物をハイピュア PCR プロダクト ピュアリフィケイション キット(High Pure PCR Product Purification Kit)(ロシュ(Roche))を用いて精製した。TruSeqナノDNAライブラリ調製キット(TruSeq Nano DNA Library Preparation Kit)(イルミナ(illumina))を用いて、10試料の各々についてライブラリを調製した。前記ライブラリをリアルタイム定量的PCRによって定量し、等モル量でプールした。そのライブラリのプールを、MiSeq試薬ナノキットV2(500サイクル)を用いて、MiSeq イルミナ装置上において、ペアードエンド、2×250−bpサイクル ランでシーケンスした。ペアードエンドリードは、イルミナ(illumina)のリアルタイム分析ソフトウェア(Real−Time Analysis software)(v 1.17.28)を用いて、品質について制御された。集められたリードを、ベーススペース イルミナ プラットフォーム(BaseSpace illumina platform)(バージョン1.0.1.0、2016年)において実行されるようなイルミナの16Sメタゲノミクス分析パイプライン(16S Metagenomics analysis pipeline)を用いて分析した。
【0089】
結果
前記生物活性サプリメントは、アンシストルス ナマズの成長速度を増進する:
腸内微生物叢は飼料消化および栄養素の同化において中心的な役割を果たし、また草食動物では、それらのエネルギーに乏しい植物食餌から栄養素を抽出するために、高度に特殊化した微生物群が発達している。飼料に有用な微生物を補うことにより、栄養素の同化を向上し、成長速度を増進することができる。
【0090】
前記生物活性サプリメントを与えられたアンシストルス ナマズは、対照群と比較して、体重増加として表わされた、より高い成長速度を示した(
図7)。しかしながら、成長速度の差は、対照と高用量補給飼料との間においてのみ有意である。よって、栄養反応および成長反応は、飼料中のサプリメントの用量を条件とする。
【0091】
前記生物活性サプリメントは、アンシストルス ナマズにおいて飼料要求率を向上する:
有用な微生物の添加によって腸内微生物叢の機能を向上することにより、成長期間中における加速的な成長および体重増加がもたらされ得る。飼料質量を体重増加量に変換する効率を評価する飼料要求率(FCR)を、4給餌日にわたって1つの実験群当たり8検体について計算した(表2)。FCR値は対照群については24〜207、低用量補給飼料については19.9〜196.7、また高用量補給飼料については6.5〜139に及んだ。アンシストルス ナマズは、特にそれらの高度に発達した強い骨格およびそれらの草食性食餌のために成長が遅いので、これらの値は、高度に生産的な養殖魚と比較して、相対的に上昇した。FCRの結果は、対照と比較して、高用量補給飼料を与えた魚において有意な増大を示している(t検定、両側法:t−stat=2.4178、df=9.69、P=0.0369)。低用量補給飼料を与えた魚においても、対照と比較して、わずかなFCR増大が観察された(t検定、両側法:t−stat=1.575、df=12、P=0.141)。よって、アンシストルス ナマズにおけるFCR改善は、古細菌を含有する前記生物活性サプリメントの用量に依存し、また、高用量補給飼料のみが対照と比較して有意な改善を示した。
【0092】
【表2】
表2:3つの実験群に対する飼料要求率(FCR)のデータおよび結果:対照、低用量補給飼料、および高用量補給飼料。
【0093】
前記生物活性サプリメントは、アンシストルス ナマズにおいて糞便の量を低減する:
飼料用生物活性サプリメントによって引き起こされた消化および栄養素同化の向上は、摂取飼料重量当たりの糞便生成重量を低減する。FCRの計算に関する同一のデータを用いて、実験5日目に生成された糞便を秤量することにより、摂取飼料重量当たりの糞便重量の比率を計算した(表3)。その結果は、前記生物活性サプリメントを与えた魚は対照よりも低量の糞便を生成することを示している。独立した試料のt検定は、低用量補給飼料および高用量補給飼料の双方が、摂取飼料重量当たりの糞便重量の有意な低減をもたらしたこと示している(低用量:t−stat=2.227、df=12、P=0.023; 高用量:t−stat=3.761、df=12、P=0.0014)。この結果は、前記生物活性サプリメントが、糞便の単純な低減により、おそらく糞便汚染物質の量を低減するであろうことを示唆している。
【0094】
【表3】
表3:摂取飼料重量×100当たりの糞便重量として表わした、FCR実験の4給餌日の間に生成された糞便重量。魚検体および摂取飼料重量の合計は表1におけるのと同一である。
【0095】
前記生物活性サプリメントはアンシストルス ナマズの廃棄汚染物質を低減する:
動物の糞便は亜硝酸塩およびリン酸塩汚染物質の供給源である。大量の亜硝酸イオンおよびリン酸イオンの存在は、環境に対して悪影響を有する水質汚濁を示す。糞便中の汚染物質の低減に対する前記生物活性のサプリメントの効果を草食性ナマズのアンシストルス・ドリコプテルス(Ancitrus dolichopterus)において試験した。水質パラメータの測定の結果(
図8)は、リン酸イオンおよび亜硝酸イオンの濃度が、対照群の魚を収容した水槽の水と比較して、前記生物活性サプリメント(高用量補給飼料または低用量補給飼料のいずれか)を与えた魚を収容した水槽の水において有意により低かったことを示している(2つの独立した試料のt検定:対照におけるリン酸イオン対低用量補給飼料におけるリン酸イオン、t−stat=6.478、df=2、P=0.0115;対照におけるリン酸イオン対高用量補給飼料におけるリン酸イオン、t−stat=6.298、df=2、P=0.012;対照における亜硝酸イオン対低用量補給飼料における亜硝酸イオン、t−stat=24.779、df=2、P=0.0008;対照における亜硝酸イオン対高用量補給飼料における亜硝酸イオン、t−stat=29.86、df=2、P=0.0006)。2つの実験用量の生物活性飼料サプリメント(高用量または低用量の実験飼料)の間に有意差は観察されなかった。
【0096】
出発水のpHは7.76〜7.91であった。実験の終了時、対照群における水のpHは7.57〜7.67の範囲にあったが、低用量補給飼料および高用量補給飼料では、水のpHは7.59〜7.85の範囲にあった。実験の終了時、水の導電率(μS/cm)は、低用量補給飼料による群(275〜277μS/cm)、または高用量補給飼料による群(270〜274μS/cm)と比較して、対照群(280〜283μS/cm)においてより高かった。これらの結果は、前記生物活性サプリメントを与えた魚と比較して、対照において若干の水の酸性化および導電率の増大を示している。
【0097】
前記生物活性サプリメントは、アンシストルス ナマズの微生物叢を変更する:
この実験は、新鮮な糞便において測定される、アンシストルス・ドリコプテルス ナマズにおける生物活性プロバイオティックxによって誘発された微生物叢の変化を特徴づけることを目的としている。対照群の5検体および高用量補給飼料の5検体の新鮮な糞便を収集し、それらの微生物叢をメタバーコーディングした。高品質ペアードエンドリードの数は、1検体当たり48’500〜57’200に及んだ。メタバーコード分析の結果は、対照と比較して、前記生物活性サプリメントを与えた魚において微生物叢が著しく変更されることを示している。これは、表4に示した、対照群対高用量補給飼料群におけるより多く存在する6種類の細菌の度数(frequency)の有意な変化において観察することができる(対照群と高用量群と間の多変量分散分析(MANOVA)試験:ピライの対数和(Pillai Trace) t−stat=0.984、F=29.98、df1=6、df2=3、P=0.009)。微生物叢の変更はまた、試料中に見られる細菌属およびアカイア(Achaea)属の多様性によって評価することができ、前記多様性は、高用量補給飼料群(範囲:1試料当たり179〜267属)におけるよりも対照群(範囲:1試料当たり246〜313属)においてより高い。一方向(単一因子)分散分析(ANOVA)分析は、この差が有意であることを示している(群内:SS=7272、df=8、MS=909; 群間 SS=10112.4、df=1、MS=10112.4、F=11.125、P=0.0103)。別の重要な差異は、高用量補給飼料群の魚の微生物叢では、前記生物活性サプリメントを構成するアカイア種(Achaea species)が系統的に存在し、対照群の魚の微生物叢(すべての指定されたリードの0〜0.004%にわたる)と比較して、より高い存在量を有する(すべての指定されたリードの0.005〜0.225%にわたる)ことである。t検定によれば、この差異は有意である(t−stat=2.532、df=7、P=0.019)。
【0098】
実施例に示した前記サプリメントの有利な特性を考慮すると、前記生物活性食品サプリメントの使用は、特に、免疫系、並びに消化性能に関する利点の観点からだけでなく、特に動物飼育に起因する重要な汚染物質である硝酸塩の含有量に関する糞便廃棄物の質の改善に関する利点の観点からも、飼育動物に影響を有し得ると言える。
【0099】
【表4】
表4.対照群の5匹の魚および高用量補給飼料群の5匹の魚についての、対照群中に見られた最も多く存在する6種類の細菌の度数の変化。数値は、リードの総数に対する所与の種類の細菌に起因するリードのパーセンテージを表わす。