【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るコンロッドは、制御装置が、弁室内に設けられた弁体をそれぞれ備える第一の弁および第二の弁を有し、弁体はそれぞれ復元力によって弁座に押し付け可能であり、第一の弁の第一の弁室は第一の液圧導管と流体式に接続され、第二の弁の第二の弁室は第二の液圧導管と流体式に接続されており、弁体は少なくとも第一の位置と第二の位置との間で移動可能な接続装置を介して互いに作動式に接続されており、接続装置の第一の位置では第一の弁体が、接続装置の第二の位置では第二の弁体が、接続装置によってそれぞれ復元力に抗して、対応する第一もしくは第二の弁座から持ち上げ可能であり、対応する第一もしくは第二の弁室は液圧媒体供給導管と流体式に接続可能であり、接続装置の他方の位置ではそれぞれ第一の弁体が第一の弁座に、もしくは第二の弁体が第二の弁座に載置され、液圧媒体供給導管への流体式接続を遮断することを特徴とする。
【0013】
したがって本発明に係るコンロッドの制御装置は、制御スライダの代わりに単純な球形弁を有し、復元力が負荷された、好ましくはバネ付勢された当該球形弁の例えば球形の弁体はそれぞれ、弁座に押し付けられ得、それにより対応する弁出口を遮断し、または弁座から持ち上げられ得、弁体を弁座から持ち上げることにより、対応するオイル導管のフロースルーが開放される。特に長さ調整を制御するために、制御スライダの代わりに単純な球形弁を用いることにより、対応する制御装置の寿命およびそれとともにコンロッドの寿命を有意に向上させることができる。このとき第一および/または第二の弁の弁体に作用する復元力は好ましくはそれぞれ弁バネによって形成される。
【0014】
このとき接続装置は第一の弁または第二の弁を択一的に開放するという課題を有する。
【0015】
このとき本発明の意味においてコンロッドとは、通常は往復機関に存在する、ロッド状に形成され、ピストンとクランク軸との間に設けられた接続要素であり、当該接続要素を介してピストンはクランク軸と機械的に接続されている。
【0016】
本発明の意味において往復機関とは、当該機関を用いてピストンの直線的な往復運動が軸の回転運動に変換され得るか、もしくは逆に軸の回転運動がピストンの直線的な往復運動に変換される機関である。
【0017】
本発明の意味において、簡略化して内燃機関とも称される往復内燃機関は、気体の容積変化によってピストンの直線運動が作られる往復機関であり、気体の容積変化は燃焼過程によって生じさせられる。
【0018】
このとき本発明に係るコンロッドの第一のロッド部分は好ましくは、往復機関内に本発明に係るコンロッドを機能に応じて取り付けた状態で、ピストンに向き合っているロッド部分であり、特に往復機関のピストンと結合するために設けられている。そのために第一のロッド部分は、コンロッドにおいて通常行われているように、好ましくはコンロッド軸受として形成された小さなコンロッドアイを有し、当該小さなコンロッドアイは特に、ピストンボルトを用いてピストンと結合され得るように形成されている。
【0019】
このとき本発明に係るコンロッドの第二のロッド部分は好ましくは、往復機関内に本発明に係るコンロッドを機能に応じて取り付けた状態で、クランク軸に向き合っているロッド部分であり、特にクランク軸と結合するために設けられている。そのために第二のロッド部分は好ましくは、クランク軸に取り付け可能な大きなコンロッドアイを有し、当該大きなコンロッドアイは、コンロッドにおいて通常行われているように、好ましくは同じくコンロッド軸受として形成されており、特にコンロッドを往復機関のクランク軸に固定するために形成されている。
【0020】
本発明の意味において液圧導管とは、特に管状の接続(管路)であり、当該接続(管路)は液圧媒体によって貫流されるために形成されており、以下において液圧導管という概念は、オイル導管という概念と同義的に用いられる。
【0021】
本発明の意味において液圧媒体供給導管とは液圧導管もしくはオイル導管であると理解され、当該導管は、少なくとも一つの構成要素および/または液圧媒体で充填可能な少なくとも一つの容積に液圧媒体を供給するため、すなわち構成要素および/または容積に液圧媒体を供給する、もしくは液圧媒体を構成要素および/または容積にガイドするために形成されている。このとき液圧媒体供給導管という概念は、以下においてオイル供給導管という概念と同義的に用いられる。
【0022】
復元力であって、当該復元力に抗して第一の弁および第二の弁の弁体がそれぞれ対応する第一の弁座もしくは第二の弁座から持ち上げ可能である復元力は、好ましくはそれぞれ、相応に形成されるとともに、好適に選択されたばね力を有して選択された弁バネによって与えられる。
【0023】
コンロッドの長さ調整装置は、基本的に任意のやり方で実施され得る。本発明の一の変化形態において長さ調整装置は、両のロッド部分の一方がガイド体として形成されており、他方のロッド部分がガイド体内で移動可能なピストン要素として形成されているように実施され、特にピストン要素の第一の端面とガイド体との間に第一の高圧室が延在し、ピストン要素の第二の端面とガイド体との間に第二の高圧室が延在し、第一の高圧室内に第一の液圧導管が出口を有し、第二の高圧室内に第二の液圧導管が出口を有する。このように形成されたコンロッドにより、特に簡単なやり方で長さ調整可能なコンロッド、特に液圧式に長さ調整可能なコンロッドが実現される。
【0024】
このように形成された本発明に係るコンロッドの長さ調整を行うために、制御装置には、好ましくは圧力が印加された液圧媒体が、特に液圧媒体供給導管を介して供給され得る。制御装置を介して、両の高圧室の一つとそれぞれ接続されている両の液圧導管の一つはそれぞれ、液圧媒体供給導管と流体式に接続させられ得る。
【0025】
制御装置の状態に応じて、特に制御装置の接続装置の位置に応じて、第一の液圧導管およびそれとともに第一の高圧室が液圧媒体供給導管と流体式に接続されているか、あるいは第二の液圧導管およびそれとともに第二の高圧室が液圧媒体供給導管と流体式に接続されている。
【0026】
両の高圧室のいずれの高圧室内に高い圧力がかかっているかに応じて、コンロッドの両のロッド部分は伸縮自在に互いに離れ、あるいは近づけられ、それによりコンロッドの長さは増大または減少する。
【0027】
このとき液圧媒体という概念は、以下において作動媒体という概念と同義的に用いられる。
【0028】
本発明に係るコンロッドの一の有利な構成において接続装置は、第一の位置と第二の位置との間で移動可能な少なくとも一つの接続要素を有し、第一の弁体と第二の弁体は接続要素を介して互いに作動式に接続されている。
【0029】
好ましくは接続要素がコントロールシリンダ内で移動可能なコントロールピストンに固定式に結合されていることが行われ、当該コントロールピストンは制御室に隣接し、当該制御室内に、好ましくはオイル供給導管と流体式に接続された制御管路が出口を有している。制御室に圧力を印加することによりコントロールピストンは、伸縮バネによって形成される復元力に抗して動かされる。
【0030】
これにより内燃機関内の本発明に係るコンロッドの機能に応じた使用状態において、コントロールピストンおよびそれとともに接続要素は、液圧媒体供給導管内に印加されるオイル圧力を介して動かされ得る。当然ながらこれは、オイル圧力が伸縮バネの復元力を克服するのに十分である場合においてのみ可能である。このとき制御装置は好ましくは、コントロールピストンの応答挙動が、伸縮バネのバネ力を介して少なくとも一定の限界内で相応に調整され得るように形成されている。
【0031】
本発明に係るコンロッドを備える内燃機関の特に簡単な一の構成において、コンロッドの長さ調整を制御するために、特にコントロールピストンを動かし、それにより制御装置を作動させるために、大きなコンロッドアイにおいてコンロッド軸受を潤滑に動かすための、この領域に供給される潤滑オイルもしくはエンジンオイルが利用され得、潤滑オイルはそのために好ましくは、制御装置の液圧媒体供給導管を介して供給され得る。
【0032】
すなわち上記のやり方で形成された本発明に係るコンロッドは特に、コンロッドの長さ調整を制御するために、内燃機関内で印加されるオイル圧力を利用し尽くすことを可能にし、それにより付加的なオイル圧力生成装置は必要なくなる。通常、内燃機関の動作時に生じるオイル圧力は、このためにも適している。
【0033】
本発明に係るコンロッドのさらなる有利な構成において、弁体と接続装置、特に弁体と接続要素は分離された構成部材であり、接続装置、特に接続要素は第一の位置において第二の弁体から離間しており、第二の位置において第一の弁体から離間している。これによりストロークが大きい場合、常に一方の弁のみが開放されており、それぞれ他方の弁は閉鎖されていることが保証される。ストロークが比較的小さい場合、基本的に両の弁が開放されていてもよい。
【0034】
本発明に係るコンロッドのさらなる有利な構成において、接続要素は軸方向に移動可能な接続ロッドとして形成されている。
【0035】
このとき接続要素は好ましくは、コンロッドの長手方向中心平面に平行に、またはコンロッドの長手方向中心平面内に設けられており、特にコンロッドの長手方向中心平面に平行に、またはコンロッドの長手方向中心平面内で軸方向に移動可能であり、コンロッドの長手方向中心平面は好適にコンロッドの揺動平面と一致する。
これに対して一の代替的な構成において接続要素、特に接続ロッドはコンロッドの長手方向中心平面に対して垂直に設けられており、特に長手方向中心平面に垂直に、またはコンロッドの長手方向中心平面に対して垂直な平面内で軸方向に移動可能である。
【0036】
本発明に係るコンロッドのさらなる有利な構成において、接続要素はコンロッドの長手軸線に対して垂直に設けられた、軸方向に移動可能な接続ロッドとして形成されている。
【0037】
このとき接続要素は特に、コンロッドの長手軸線に対して垂直に設けられるとともに、コンロッドのガイド内で軸方向に移動可能な接続ロッドとして形成されていてよい。接続要素は第一の弁または第二の弁を択一的に開放するという課題を有する。
【0038】
接続装置もしくはコントロールピストンの位置に応じて、それぞれ制御装置の第一の弁または第二の弁が開放されており、それにより液圧媒体供給導管はコンロッド内で、第一の高圧室と第二の高圧室のいずれかと流体式に接続されている。したがって個々の対応する高圧室から、圧力をかけられた液圧媒体が液圧媒体供給導管を介して排出され得る。特に同時に、内燃機関内でコンロッドのリフト運動の間に、コンロッドの加速の結果として作用する質量力ゆえに、および燃焼過程の結果としてコンロッドに作用する力を介して、吸引作用が生じ、当該吸引作用は、本来は閉鎖されている他方の弁が吸引作用のために開放される(吸引作用のために弁体が弁座から持ち上がる)大きさであり、それによりそれぞれ他方の高圧室が液圧媒体で充填される。当該高圧室の充填が増大するにつれて、他方の高圧室から排出される液圧媒体が増加する。これによりコンロッドの長さが変化する。コンロッド、特に制御装置の構成に応じて、および内燃機関の運転状態に応じて、コンロッドの最大可能な長さ変化が達成されるまで、コンロッドの複数のストロークが必要であってよい。
【0039】
本発明に係るコンロッドの特に有利な構成において、接続要素、好ましくは接続ロッドは、移動軸線に沿って移動可能であり、移動軸線は好ましくはコンロッドの長手軸線に対して垂直に延在せず、特にコンロッドの長手軸線に対する垂直平面と共に角αを成し、当該角αに関して、0°<α<=90°の関係式が当てはまる。当該関係式を言葉で表すと、0°小なり角α小なりイコール90°となる。
【0040】
したがって接続要素の移動軸線は特に好ましくは、コンロッドの長手軸線に対する垂直平面に対して傾斜した状態で形成されている。移動軸線はこれにより、実際上コンロッドの長手軸線に垂直な位置(角αはほぼ0°)から、コンロッドの長手軸線に平行な位置(角α=90°)まで移動するように設けられていてよい。傾斜した構成により、角を好適に選択することで液圧導管内の液圧媒体コラムと、制御装置の構成要素、特に接続要素の慣性力が有する妨げとなる影響が補償される。液圧媒体供給導管は本発明の一の変化形態では、大きなコンロッドアイのコンロッド軸受(液圧媒体供給導管は好適に取り出し孔を介して、コンロッド軸受もしくは当該コンロッド軸受内に実施された溝内に出口を有する)と、制御装置との間に延在する。これにより制御装置を制御する際、故障もしくは機能不全は回避され得る。液圧媒体として例えばエンジンオイルが用いられ得る。また当該構成により、回転速度が大きい場合に生じる、長さ調整の構成要素に及ぼされる妨げとなる影響は最小化され得る。当該構成要素に対する例は弁要素およびその他の調整メカニズムであって、回転速度が大きい場合に生じる慣性力によってその作用が妨げられるものである。
【0041】
本発明の一の簡単な実施において接続要素は、コンロッドの長手軸線に対して平行または同軸的に設けられていてよく、それは角αが90°であることに相当する。しかしながら特に良好な結果は、角αが30°と60°の間、好ましくは40°と50°の間であるときに得られる。
【0042】
本発明の一の変化形態では、移動軸線はオイル合力に平行であるか、オイル合力と一致して設けられている。このときオイル合力とは、大きなコンロッドアイ内の取り出し箇所と、制御装置に対する液圧媒体コラムの作用点との間の液圧媒体コラムであると理解され、本発明の一の変化形態では大きなコンロッドアイ内の取り出し箇所(取り出し孔の場合は孔の中心)と、液圧媒体コラムが制御装置に作用する位置とを結ぶ線がオイル合力に近似する。オイル合力という概念は、オイル以外の他の液圧媒体の使用を排除しない。以下においてオイルコラムという概念は、液圧媒体コラムという概念と同義的に用いられる。移動軸線がオイル合力に平行であるか、オイル合力と一致して形成されることにより、コンロッド軸受内の取り出し部と作用点との間の液圧媒体コラムの慣性力と、制御装置の質量力とは補償され得る。付加的に制御装置の材料および重量は、上記の補償が特に効果的に働くように最適化され得る。これらの実施により、液圧媒体の慣性力の影響のほか、およそ3000回転/分以降の大きな回転速度において制御装置の構成要素に作用するさらなる力も可能な限り低減される。
【0043】
このようにオイル合力に関する接続要素の移動軸線の構成は、オイルコラムおよび接続要素の振動運動の位相を平準化させる。振動の振幅は、接続要素の質量を適合させることにより、接続要素の慣性力がオイルコラムの慣性力(特に接続要素に作用する力)と等価であるように釣り合わせられ得る。このとき接続要素の伸縮バネの、コンロッドの長手軸線に対して平行な力成分は、小さなコンロッドアイの方向に作用する。したがって言い換えると本発明により、接続要素の移動軸線はオイル合力に対して平行に設けられ、接続要素の質量はオイル合力の質量に適合させられる。このとき質量適合は、(特に大きな回転速度では)オイル合力、すなわち供給管路内にある液圧媒体の基本質量または加速質量に合わせられ得る。
【0044】
上記のように液圧媒体供給導管は通常、大きなコンロッドアイに配設されたコンロッド軸受を起点とする。このとき内燃機関の運転中に特にこの領域内で、非常に大きな加速力が生じ得る。したがって本発明の一の変化形態において液圧媒体供給導管は、大きなコンロッドアイの円周角が40°から320°である領域内にある、コンロッド軸受の領域を起点とし、0°によりコンロッドの長手軸線と大きなコンロッドアイとの交点であって、小さなコンロッドアイへの最小の距離を有する交点が規定されている。特に好適な結果が得られるのは、液圧媒体供給導管が、円周角がおよそ315°である領域内で大きなコンロッドアイを起点とするときである。当該構成は、角αが30°から60°の領域内で選択されると特に有利である。角αが90°の領域内で選択される場合、液圧媒体供給導管が135°と225°の間、特に180°の領域内に起点を有すると好適である。
【0045】
すなわち本発明に係るコンロッドの一の有利な構成において液圧媒体供給導管は、コンロッド軸受の一の領域を起点とし、当該領域は、大きなコンロッドアイの円周角が40°と320°の間、好ましくはおよそ315°である領域内にあり、0°によりコンロッドの長手軸線と大きなコンロッドアイとの交点であって、小さなコンロッドアイへの最小の距離を有する交点が規定されている。
【0046】
これによりオイルコラムの慣性力による妨げとなる影響は最小化され得、より短い孔が用いられ得る。コンロッド軸受の320°と40°の間の領域は、コンロッドの作動中に燃焼力により特に圧力の負荷を受けており、当該領域内の孔と空隙部と溝は大きなコンロッドアイにおける弱化、極端な場合は軸受の損傷を生じさせかねないため、この危険は、当該領域の外に孔を設けることにより低減される。
【0047】
本発明の簡単かつ場所を節約する一の実施の変化形態において、第一の弁体の第一のリフト軸線が移動ロッド、すなわち接続ロッドの長手軸線と同軸的に形成されており、第一の弁は接続ロッドの第一の端部領域内に設けられていることが行われている。
【0048】
さらに簡単に製造され、かつ場所を節約する一の実施において、第二の弁体の第二のリフト軸線が接続ロッドの長手軸線と同軸的に形成されており、第二の弁は接続ロッドの第二の端部領域内に設けられており、好ましくは第一および第二の弁の弁座は互いに背を向けていることが行われていてよい。したがって弁体のリフト軸線と接続ロッドの長手軸線はコンロッドの長手軸線に対して垂直に設けられている。
【0049】
しかしながら例えば4000回転/分を上回る大きな回転速度を有する内燃機関に対しては、第一の弁体の第一のリフト軸線が接続ロッドの長手軸線と同軸的に延在せず、第一のリフト軸線が、接続ロッドの長手軸線に対しておよそ90°+/−60°の第一の角を成すように傾斜して設けられていると有利であり得る。これにより回転速度が大きい場合、質量力の結果として第一の弁体が第一の弁座から持ち上がることが回避され得る。
【0050】
このとき第一の弁体と接続ロッドとの間に、少なくとも一つの好ましくはロッド状の第一の伝達要素が軸方向に移動可能に設けられていてよく、好ましくは伝達要素の移動軸線は第一の弁体の第一のリフト軸線に対して同軸的に設けられている。これにより特に簡単なやり方で接続要素の軸方向移動は、対応する第一の弁体の第一のリフト軸線に沿ったリフト移動、すなわち第一のリフト軸線に沿った第一の弁体のリフトに変換される。
【0051】
例えば8800回転/分までのより大きな回転速度を有する内燃機関は、第二の弁体の第二のリフト軸線も、接続ロッドの長手軸線に対しておよそ90°+/−60°の第二の角を成すように傾斜して設けられているとき作動され得る。これは第一の弁体の場合に見られたように、回転速度が非常に大きい場合、質量力の結果として第二の弁体が第二の弁座から持ち上がることを同じく回避する。
【0052】
すなわち好ましくは特に3000回転/分を上回る回転速度を有する内燃機関に取り付けられるべきコンロッドにおいて、少なくとも一つのリフト軸線、すなわち第一の弁体の第一のリフト軸線および/または第二の弁体の第二のリフト軸線は、接続ロッドの長手軸線に対しておよそ90°+/−60°の角を成すように傾斜して設けられている。
【0053】
比較的大きな回転速度に対して、特におよそ4000回転/分からおよそ8800回転/分までの回転速度において、第一のリフト軸線および第二のリフト軸線、すなわち両のリフト軸線がそれぞれ、接続ロッドの長手軸線に対しておよそ90°+/−60°の角を成すように傾斜して設けられていると特に有利である。
【0054】
このとき同様に第二の弁体と接続ロッドとの間に、少なくとも一つの好ましくはロッド状の第二の伝達要素が軸方向に移動可能に設けられていてよく、好ましくは第二の伝達要素の第二の移動軸線は、第二の弁体の第二のリフト軸線に対して同軸的に設けられている。これにより相応に特に簡単なやり方で接続要素の軸方向移動は、対応する第二の弁体の第二のリフト軸線に沿ったリフト移動、すなわち第二のリフト軸線に沿った第二の弁体のリフトに変換される。
【0055】
簡単なやり方で接続ロッドの作動力を第一の弁もしくは第二の弁へと偏向させられるように、すなわち軸方向のスライド移動を、対応する弁体のリフト移動に変換させられるように、第一の伝達要素と接続ロッドとの間および/または第二の伝達要素と接続ロッドとの間に、少なくとも一つの好ましくは球状の偏向要素が設けられており、特に好ましくは偏向要素が、接続ロッドおよび第一もしくは第二の伝達要素の受容孔を結合するとともに、0°より大きい角を成すように当該受容孔に対して傾斜した偏向孔内に設けられていると有利である。接続ロッドはこれにより、少なくとも一つの偏向要素および少なくとも一つの伝達要素を介して、対応する第一もしくは第二の弁の弁体に間接的に作用する。偏向要素を用いることには、接続ロッドが非常に小さい厚さで形成され得るという有利点があるが、それは厚さが弁体のストロークに影響を及ぼさないためである。
【0056】
接続ロッドと伝達要素の間に設けられた偏向要素に対して代替的に、接続ロッドが少なくとも一つの位置において第一もしくは第二の伝達要素に直接的に作用することが行われてもよい。
【0057】
このとき接続要素の少なくとも一つの端部、特に接続ロッドの少なくとも一つの端部、および/または第一および/または第二の伝達要素の少なくとも一つの端部は、円錐状または球状に形成されている。この場合接続ロッドの厚さは、制御すべき弁体の最大可能なストロークに影響を及ぼす。接続ロッドの厚さは、少なくとも弁体のストロークの2倍の大きさであるべきである。この場合、別個の偏向要素は省略され得る。
これにより例えば球によって形成された弁体は、簡単に、かつ抵抗が少ない状態で偏向させられ得る。
【0058】
接続ロッドの厚さとは、ストロークが接続ロッドと同軸的に延在しない少なくとも一つの弁を備える制御装置において、当該ストロークに平行な方向における接続ロッドの直径であると理解される。これは丸い断面を備える接続ロッドにも、n角形の断面を備える接続ロッドにも当てはまる。
【0059】
ストロークが両方とも接続ロッドと同軸的に延在する弁を備える制御装置において、接続ロッドの厚さは好ましくは接続ロッドの最大直径である。
【0060】
本発明の簡単かつ場所を節約する一の実施の変化形態において、第一の弁体の第一のリフト軸線が接続要素の移動軸線および/またはコンロッドの長手軸線に対して垂直に形成されており、第一の弁は接続要素の第一の端部領域内に設けられていることが行われている。
【0061】
さらに簡単に製造され、かつ場所を節約する一の実施において、第二の弁体の第二のリフト軸線が接続要素の移動軸線および/またはコンロッドの長手軸線に対して垂直に形成されており、第二の弁は接続要素の第二の端部領域内に設けられていることが行われていてよい。弁体のリフト軸線はこれにより、接続要素の移動軸線に対して垂直な平面内および/またはコンロッドの長手軸線に対して垂直な平面内に設けられている。これにより第一もしくは第二の弁体の第一および第二のリフト軸線は、互いに離間した平面内にあり、両の平面の距離は好適に接続要素の長さよりも大きい。
【0062】
本発明の一の変化形態において、第一の弁体の第一のリフト軸線および/または第二の弁体の第二のリフト軸線は、クランク軸線に対して平行に延在するように形成されている。さらなる変化形態において、接続要素の移動軸線もクランク軸線に対して平行に延在するように形成されていてよく、すなわちコンロッドの長手方向中心平面もしくは揺動平面に対して垂直に設けられていてよい。これにより弁体の慣性力が弁体プレストレスのバネ方向に作用し、弁がそれにより意図せずに開くことが防止される。付加的に弁体は、弁が慣性の影響により意図せずに開くことが防止されるように形成されていてよく、および/またはガイドされ得る。
【0063】
制御圧力が小さい場合の接続要素の安定した位置は、接続要素が伸縮バネの力に抗して移動可能であるとき実現され、好ましくはコンロッドの長手軸線に平行な向きを有する復元力の力成分は、小さなコンロッドアイの方向に作用する。このようなやり方で内燃機関の回転速度が非常に大きい場合でも、長さ調整の確実な制御が保証され得る。
【0064】
本発明のさらなる実施において、コントロールシリンダがその外周に、好ましくは周回する環状溝によって形成された環状室を有することが行われてよく、当該環状室は制御室または高圧室と流体式に接続されている。これによりコントロールピストン、およびそれとともに移動装置が、特定の作動領域において、例えば両の弁のいずれかが開放された際の圧力衝撃によって意図せずに移動することが防止され得るが、それは環状室の充填によってコントロールピストンが動かなくなる、もしくはブロックされるためである。
【0065】
コンロッドの制御装置が移動軸線方向に移動可能に支承された少なくとも一つの部分を有するコンロッドであって、移動軸線が好ましくはコンロッドの揺動平面内、および特に
コンロッドの長手軸線に対して垂直に設けられているコンロッドにおいて、本発明ではさらに、制御装置の往復移動する少なくとも一つの部分が少なくとも一つの浮揚体を有するか、少なくとも部分的に浮揚体として形成されていることが行われてよい。
【0066】
制御装置の往復移動する部分もしくは一方向に移動可能に支承された部分は、好ましくはコントロールピストンおよび/または接続装置、特に接続要素である。
【0067】
本発明の特に有利な一の実施において、接続装置が少なくとも一つの浮揚体を有するか、少なくとも部分的に浮揚体として形成されていることが行われている。このとき接続ロッドは例えば中空式に実施されていてよく、それによりそれ自体で浮遊体を形成し得る。これに対して代替的または付加的に、少なくとも一つの弁体が少なくとも一つの浮揚体を有するか、少なくとも部分的に浮揚体として形成されていることが行われてよい。
【0068】
作動媒体内で浮遊する浮揚体は好ましくは作動させるオイル、例えばエンジンオイル、すなわち作動媒体であって当該作動媒体によって制御装置が作動可能である作動媒体よりも小さい密度を有し、制御装置は往復機関内のコンロッドの機能に応じた使用状態において、好ましくは往復機関内でガイドされる潤滑オイルもしくはエンジンオイルによって作動可能である。浮揚体は中空体または例えばポリスチロールから成る密閉気孔型発泡体として形成されていてよい。このとき浮揚体は好ましくは、往復移動する部分に固定式に結合されているか、当該往復移動する部分と一体的に形成されている。
【0069】
往復移動する部分と固定式に結合された、または当該往復移動する部分と一体的に形成された浮揚体によって、加速される質量は低減され得、媒体における物体の静的浮力は、当該物体が押しのけている媒体の重力の大きさに等しいというアルキメデスの原理が応用される。
【0070】
上記の全ての対策はシステム全体の密度と、クランク軸の回転の結果として横加速度が作用する質量が大幅に低減され得ることに寄与する。このようにしてコンロッドの長さ調整の可能性が制限されることなしに、7000回転/分を大幅に上回る回転速度が実現される。
【0071】
制御装置の少なくとも一つの往復移動する部分は好ましくは、シリンダ内に移動可能に支承されたコントロールピストンによって形成されており、当該コントロールピストンの第一の端面は、オイルもしくは作動媒体を供給可能である制御室に隣接し、当該コントロールピストンの第二の端面は、伸縮バネを有するバネ室に隣接する。このとき本発明の好適な一の実施において、少なくとも一つの浮揚体がコントロールピストンの第一の端面の領域内および/または第二の端面の領域内に設けられていることが行われ、コントロールピストンは好ましくは制御室とバネ室との間に所定の漏出を有する。
【0072】
加速された質量の大幅な低減は特に、第一の端面の領域内にも、バネ室に隣接する第二の端面の領域内にもそれぞれ浮揚体が設けられているとき、実現され得る。そのためにバネ室がオイルで満たされることが必要であるが、基本的にバネ室を氾濫させる必要はなく、浮揚体を用いて質量力を低減すべき場合に浮揚機能との関連においてのみバネ室がオイルで満たされる必要がある。この点は、すなわちバネ室を氾濫させることは、コントロールピストンが制御室とバネ室との間に所定の漏出を有する場合、特に少ないコストで実現され、バネ室は好ましくは貯蔵室と流体式に接続されており、当該貯蔵室は例えば、コンロッドの制御装置と同じロッド部分に設けられていてよい。
【0073】
本発明の意味において漏出とは、印加された圧力の結果として、細い割目および間隙を介して、もしくは細い割目および間隙を貫通して、オイルもしくは液圧媒体が溢れ出ることと理解される。
【0074】
所定の漏出とは、構成上意識的に行われ、もしくは形成された漏出であると理解され、そのために協働する部材の寸法、特に部材同士の許容誤差もしくは嵌め合いは、所定の漏出が調整される、すなわち印加された圧力の結果として、細い割目および間隙を介してオイルもしくは液圧媒体が溢れ出るように選択されている。
【0075】
貯蔵室が絞り弁を介してクランクハウジングと接続されている場合、クランクハウジング室内へのオイルの戻り流れが妨げられることなく実現される。
【0076】
このように、コントロールピストンの往復移動により貯蔵室から、および/または漏出を介して、常に十分なオイルが吸引され得るために、コントロールピストンのバネ室は常にオイルで満たされている。このとき絞り弁はコントロールピストンの移動を減衰させ得、それによりコントロールピストンは戻って来る衝撃波があった場合、これに対する感受性が小さくなっている。
【0077】
コールドスタートの場合、圧縮が大きいことが望まれる。しかしながらエンジンの冷温状態では潤滑オイル回路内のオイル圧力が高く、それによりコンロッドが短縮されることが想定されるが、これは圧縮を大きくしたいと望むことと対立する。この問題を回避するために本発明では、接続装置および/またはコントロールピストンが少なくとも一つのサーモ素子を有することが行われていてよい。
【0078】
このとき接続装置の接続要素が、好ましくはコンロッドの長手軸線に対して垂直に設けられるとともに、軸方向に移動可能な接続ロッドとして形成されており、当該接続ロッドは、好ましくはコントロールピストンの領域内で軸方向に分割されていると特に有利であり、サーモ素子は第一の接続ロッド部分と第二の接続ロッド部分との間、特に好ましくは第一の接続ロッド部分とコントロールピストンとの間に設けられている。
【0079】
サーモ素子は冷温状態では、高温状態におけるよりも取り付け長さが短くなる。例えば膨張材料としてオイル、ワックス、固形パラフィン、または金属を有する感温性膨張材料素子を備えるこのようなサーモ素子は、例えば内燃機関のサーモスタット弁にも用いられる。
【0080】
冷温状態においてサーモ素子は、冷温の潤滑オイル回路内の高い制御圧力を補償し、そのためにコンロッドが短縮されること、およびそれとともにコールドスタートにおいて圧縮が低下することが回避される。サーモ素子の膨張材料が収縮することにより、接続要素の長さは短縮されており、そのために第一の弁の開放は抑制されるとともに第一の高圧室内の圧力は保持される。動作温度に到達するとサーモ素子内の膨張材料は膨張し、それにより接続要素は第一の弁を作動させるために必要な通常の長さに達する。こうして所望の圧縮値はエンジン特性マップによる制御に応じて調整され得る。例えば低負荷領域に対しては、大きな圧縮が調整され、高負荷領域に対しては小さな圧縮が調整される。
【0081】
内燃機関は通常、停止の直前に部分負荷で、かつ圧縮を大きくして作動される。エンジンが停止されるとき、コールドスタートにとって望ましい大きな圧縮が調整される。
【0082】
比較的長い休止時間の後、オイルが第一の高圧室からピストンの重量によって押し出されることを回避するために、第一のロッド部分と第二のロッド部分との間にコンロッドの延長方向に作用するバネ要素が設けられていてよく、当該バネ要素は好ましくは皿バネとして形成されている。バネ要素によりコンロッドの第二のロッド部分は、当該第二のロッド部分の上方位置に保たれる。
【0083】
コンロッドの長さを調整する際、場合によっては液圧システム内に衝撃波が生じることがあり、当該衝撃波は制御装置の望ましくない調整を行わせるとともに、車両のオイルシステムにおいて不利な影響または損傷を生じさせる。これを回避するために本発明の特に好適な一の実施において、第一のオイル導管内もしくは第一の液圧導管内に少なくとも一つの第一の絞り装置が設けられ、および/または第二のオイル導管内に少なくとも一つの第二の絞り装置が設けられていることが行われる。絞り装置によって、戻って来る衝撃波を回避すること、または少なくとも害のない大きさに抑制することができる。このとき両のオイル導管の一つにおいて、あるいは両のオイル導管内にそれぞれ一つの絞り装置が設けられていてよい。
【0084】
絞り装置があるにもかかわらず高圧室を迅速に充填することができるように、本発明のさらなる実施において、第一の絞り装置および/または第二の絞り装置が第一のバイパス導管もしくは第二のバイパス導管によって迂回可能であり、好ましくは第一のバイパス導管および/または第二のバイパス導管内に第一のバイパス弁もしくは第二のバイパス弁が設けられていることが行われていてよい。第一のバイパス弁もしくは第二のバイパス弁は、個々の高圧室の方向に開く逆止弁として形成されていてよい。
【0085】
本発明のさらなる実施の変化形態では、制御装置が弁体および接続装置と共にモジュールとして形成され、ハウジング内に設けられており、当該ハウジングはユニットとして第一または第二のロッド部分の対応する凹所に押し込み可能である。接続要素の移動軸線の実施もしくは配置に応じてユニットは、コンロッドの長手軸線の方向に、もしくはコンロッドの長手軸線に対して平行に凹所に押し込まれ得る。このときハウジングおよび凹所は、好ましくは概ねシリンダ状に実施されている。場合によりモジュール内部へのオイル供給部が設けられる場合、周回する溝と、当該溝に付属するとともに凹所内に出口を有するオイル供給開口部とによって確保され得る。
【0086】
上記の特徴およびさらなる特徴は、請求項および詳細な説明のほか、図面からも明らかであり、個々の特徴はそれぞれ本発明を構成する際、単独で、またはサブコンビネーションとして複数について実現されていてよく、有利であるとともにそれ自体保護対象となる実施を表し得、当該実施に対しても技術的に有意義である限り、保護が請求される。
【0087】
以下において本発明を、図面に表示されている限定的でない実施の形態に基づいてより詳しく説明する。図面に示すのは以下の通りである。