特許第6783921号(P6783921)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6783921等速ボールジョイント用のケージの製作方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6783921
(24)【登録日】2020年10月26日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】等速ボールジョイント用のケージの製作方法
(51)【国際特許分類】
   F16D 3/20 20060101AFI20201102BHJP
   F16D 3/223 20110101ALI20201102BHJP
【FI】
   F16D3/20 J
   F16D3/223
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-501441(P2019-501441)
(86)(22)【出願日】2017年7月13日
(65)【公表番号】特表2019-520535(P2019-520535A)
(43)【公表日】2019年7月18日
(86)【国際出願番号】EP2017067710
(87)【国際公開番号】WO2018011346
(87)【国際公開日】20180118
【審査請求日】2019年3月5日
(31)【優先権主張番号】102016113139.3
(32)【優先日】2016年7月15日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】509318044
【氏名又は名称】ゲーカーエン ドライブライン ドイチュラント ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】GKN DRIVELINE DEUTSCHLAND GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ハインツ,フォルカー
(72)【発明者】
【氏名】クランチオチ,ノルベルト
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター,ヨハネス
【審査官】 藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−298167(JP,A)
【文献】 特開2010−043668(JP,A)
【文献】 特開2012−017758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 1/00−9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
等速ボールジョイント(2)用のケージ(1)の製作方法であって、
前記ケージ(1)は環状であり、
前記ケージ(1)は、周方向(3)に互いに距離を置いて配置された複数のケージ窓(4)を有し、
前記複数のケージ窓(4)は、前記等速ボールジョイント(2)の複数のボール(5)を案内するためのものであり、
前記複数のケージ窓(4)はそれぞれ、少なくとも1つの側面(6)に、軸線方向(7)に向いたボール案内面(8)を有し、
前記方法は、
(a)複数のケージ窓(4)を有するケージ(1)を設けるステップと、
(b)半径方向(10)に向いた前記ケージ(1)の外周面(11)を介して、少なくとも1つのケージ窓(4)の少なくとも1つのボール案内面(8)の第1領域(12)に、少なくとも1つの圧縮力(9)を前記半径方向(10)に加えるステップと、
(c)前記少なくとも1つのボール案内面(8)の前記第1領域(12)において前記ケージ(1)を変形させ、前記少なくとも1つのボール案内面(8)が、前記ケージ(1)の隣接する第2領域(13)に対して前記半径方向(10)の内方に変位するステップとを
少なくとも含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
ステップ(a)とステップ(b)との間、又は、ステップ(c)の後、
更なるステップ(i)において、調整用マンドレル(14)が少なくとも1つのケージ窓(4)に配置され、
少なくともステップ(c)の最中又はステップ(i)に続くアプセット加工において、
前記少なくとも1つのボール案内面(8)は、前記調整用マンドレル(14)に接するようになる
ことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であって、
ステップ(c)において、
前記少なくとも1つのボール案内面(8)が、前記ケージ(1)の隣接する前記第2領域(13)に対して前記軸線方向(7)に更に変位するように、前記少なくとも1つのボール案内面(8)の前記第1領域(12)において、前記ケージ(1)が変形される
ことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の方法であって、
前記少なくとも1つのケージ窓(4)は、互いに対向する両側面(6)のそれぞれに、ボール案内面(8)を有し、
ステップ(c)において、
両ボール案内面(8)は、前記ケージ(1)の隣接する前記第2領域(13)に対して、少なくとも半径方向(10)の内方に変位する
ことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の方法であって、
前記ボール案内面(8)の前記第1領域(12)における前記ケージ(1)の前記半径方向(10)における壁厚(15)は、ステップc)の最中において一定のままである
ことを特徴とする方法。
【請求項6】
等速ボールジョイント(2)用のケージ(1)であって、
前記ケージ(1)は環状であり、
前記ケージ(1)は、周方向(3)に互いに距離を置いて配置された複数のケージ窓(4)を有し、
前記複数のケージ窓(4)は、前記等速ボールジョイント(2)の複数のボール(5)を案内するためのものであり、
前記複数のケージ窓(4)はそれぞれ、少なくとも1つの側面(6)に、軸線方向(7)に向いたボール案内面(8)を有し、
前記ケージ(1)は、前記ボール案内面(8)の第1領域(12)において、前記ケージ(1)の回転軸線(17)を横切る断面(16)内で、最小内径(18)及び最小外径(19)を有し、
前記ケージ(1)は、前記ボール案内面(8)の前記第1領域(12)に、隣接配置されている第2領域(13)に対して半径方向(10)の内方に変位した壁部分(20)を有する
ことを特徴とするケージ(1)。
【請求項7】
請求項6に記載のケージ(1)であって、
前記最小内径(18)と、前記ケージ(1)の直接隣接配置されている第2領域(13)の内径(21)との差は、大きくとも1%である
ことを特徴とするケージ(1)。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のケージ(1)であって、
前記ケージ(1)は、第1端面(22)と第2端面(23)との間において、前記軸線方向(7)に延在し、
前記ケージ(1)は、前記軸線方向(7)において、前記ボール案内面(8)と各端面(22、23)との間に、前記周方向(3)に延在するランド(24)を有し、
少なくとも1つの前記ランド(24)の少なくとも1つの前記軸線方向(7)に延在する部分(25)が、第1領域(12)において、隣接する前記ケージ(1)の第2領域(13)に対して半径方向内方(10)に変位する
ことを特徴とするケージ(1)。
【請求項9】
請求項8に記載のケージ(1)であって、
前記ボール案内面(8)と少なくとも1つの前記端面(22、23)との間の前記ランド(24)全体が、前記第1領域(12)において、前記ケージ(1)の隣接する第2領域(13)に対して半径方向(10)の内方に変位する
ことを特徴とするケージ(1)。
【請求項10】
等速ボールジョイント(2)であって、
請求項1〜5の何れか一項に記載の方法によって製作された、請求項6〜9の何れか一項に記載のケージ(1)を有し、
前記等速ボールジョイント(2)は、等速スリップボールジョイントであり、
前記ケージ(1)は、軸線方向(7)に沿って変位可能に配置される
ことを特徴とする等速ボールジョイント(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、等速ボールジョイント用のケージの製作方法及び等速ボールジョイント用のケージ自体に関する。本明細書に記載のケージは、等速スリップボールジョイントに使用するのが好ましい。
【背景技術】
【0002】
等速スリップボールジョイント(以下、ジョイント又は等速ボールジョイントとも呼ぶ)は、特に、乗用車の、左右方向軸のエリアにおいて又は前後方向軸アセンブリにおいて使用されている。前後方向軸は、駆動力を変速装置から車軸に伝達する役割を担う。特に、この場合は、変速装置は自動車の前方領域に配置されており、前後方向軸アセンブリは、駆動力をこの変速装置から後車軸に伝達する役割を担う。このような用途の場合、等速スリップボールジョイントは、コンパクト且つ軽量でありながら、高い疲労強度を有するように構成される必要がある。
【0003】
等速スリップボールジョイントは、例えば、特許文献1又は特許文献2から公知である。また、これら特許文献には、これらジョイントの更に可能な用途及び一般的な要件も記載されている。これらは、本願明細書において、説明目的のために使用され得る。
【0004】
ケージを有する等速スリップボールジョイントは、回転軸線と外側ボールトラックとを有する少なくとも1つの外側ジョイント部分と、内側ボールトラックを有する内側ジョイント部分とを備える。また、等速スリップボールジョイントは複数のトルク伝達ボールと前述のケージとを備えるが、この複数のトルク伝達ボールは、それぞれの場合において、互いに割り当てられた外側ボールトラック及び内側ボールトラック内を案内されるものであり、ケージには、複数のケージ窓が設けられており、それぞれが1つ又は複数のボールを収容する。
【0005】
各トルク伝達ボールは、特にボールケージによって等速面内に保持され、外側ボールトラックと内側ボールトラックとの対のうち前記各ボールに対応するものによって案内される。特に、取り付け領域及び作動領域において、ボールトラックはジョイントの回転軸線に沿って延在し、回転軸線から(半径方向に)一定の距離をおいた所に位置する。特に、1つ又は2つのボールが各ケージ窓に配置される。等速スリップボールジョイントは、少なくとも6個又は6+2n(n=1、2、3、…)個のボールを有することが好ましい。ケージは、外側ジョイント部分の回転軸線に沿って軸線方向に、ボールと共に移動する。
【0006】
特に、外側ボールトラック、内側ボールトラック、又は、その両方の、少なくとも個々のトラックは、中心軸線に対して斜めに延びている、又は、該中心軸線に対してトラック傾斜角で延びている。これは、ボールが軸線方向ばかりでなく、周方向にも、ボールトラックに沿って移動することを意味する。
【0007】
特に、大量生産の分野(自動車等)においては、全ての部品を軽量化、低コスト化、又はその両方を実現したいという要望がある。同時に、使用中の等速ボールジョイント及びその組込み品には、高い疲労強度が確保されなければならない。
【0008】
いくつかの種類の等速スリップボールジョイントを試験したところ、ケージ内の、ボールと接触している複数ゾーンの領域で、ケージ表面の剥落が発生し得ることが判明した。その要因は、このような種類の等速スリップボールジョイントの場合、構造設計の理由により、ボールがケージの内周面の極めて近くを移動し、その結果として、ケージのボール案内面のその部分に高い応力が加わるためであることが確認された。ケージの損傷が発生すると、ジョイントの耐用寿命の短縮を引き起こし得る。
【0009】
この移動する挙動に適合するようにケージ窓を設けることによって、上記の現象を減らす試みが行われた。すなわち、打ち抜き後、ケージの腎臓形状等を有するケージ窓が、調整プロセスにかけられる。このプロセスでは、調整用マンドレルがケージ窓内に配置され、その後、軸線方向に作用する圧縮力によってケージ全体がアプセットされる。ケージのこのアプセットにより、ケージの材料流動が引き起こされ、これにより、ケージ窓のボール案内面が半径方向内方に拡張される。このプロセスにおいて、軸線方向に向いたケージの両側面に配置されているボール案内面の領域において、ケージの材料が半径方向内方に変位される。ただし、内周面のこの張り出しは、相対的に無制御に発生する材料流動の故に、構造設計の点から規定不能である。特に、この場合、ケージの外周面はダイによって保持されているので、材料の変位は半径方向内方にのみ発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2005/057035(A1)号
【特許文献2】国際公開第2014/121832(A1)号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記に基づき、本発明の目的は、従来技術に関して説明した諸問題を少なくとも部分的に解決することである。特に、ケージの製作方法であって、ケージのボール案内面の領域において構造を規定可能な再成形を行える方法を提供することを目的とする。作動中の等速スリップボールジョイントの稼働能力は保証されるものとし、等速スリップボールジョイントの寿命は増大されるものとする。更に、特に本方法によって製作され且つ適切に再成形されたケージ案内面を有する、ケージが提案されるものとする。
【0012】
これは、請求項1に記載の特徴による方法と、請求項6の特徴によるケージとによって、実現される。有利な実施形態は、従属請求項の主題である。特許請求の範囲に個々に提示されている特徴は、技術的に有意な方法で互いに組み合わせ可能であり、本発明の各実施形態の更なる変形例を示している各図の詳細及び説明からの本質的な説明内容によって補足され得る。
【0013】
等速ボールジョイント用のケージの製作方法が提案される。前記ケージは環状であり、周方向に互いに距離を置いて配置された複数のケージ窓を有する。前記複数のケージ窓は、等速ボールジョイントの複数のボールを案内するためのものである。前記複数のケージ窓はそれぞれ、少なくとも1つの側面に、軸線方向に向いたボール案内面を有する。本方法は、少なくとも以下のステップを含む。
(a)複数のケージ窓を有するケージを設けるステップ
(b)半径方向に向いたケージの外周面を介して、少なくとも1つのケージ窓の少なくとも1つのボール案内面の第1領域に、少なくとも1つの圧縮力を加えるステップ
(c)前記少なくとも1つのボール案内面の前記第1領域において前記ケージを変形させ、前記少なくとも1つのボール案内面が、前記ケージの隣接する第2領域に対して前記半径方向の内方に変位するステップ
【0014】
特に、ケージは、(ステップ(a)において)(少なくとも部分的に又は大部分が)球状に(例えばボール状に)形成された外周面を有する。少なくとも1つの側周領域において、外周面は円錐状に形成され得る。
【0015】
好ましくは、ケージは、(ステップ(a)において)(少なくとも部分的に又は大部分が)球状に形成された内周面を有する。少なくとも1つの側周領域において、内周面は円錐状に形成され得る。
【0016】
ステップ(a)において、例えば腎臓形状の、特に打ち抜かれた、ケージ窓を有するケージが設けられる。ステップ(b)において、半径方向に向いたケージ外周面は、(好ましくは全ての)1つ又は複数のボール案内面の特に第1領域(のみ)において、圧縮力を受ける。ステップ(c)において、この圧縮力の結果として、ケージは、この第1領域において(塑性的に)変形する。このプロセスにおいて、第1領域は、周方向に隣接配置されている第2領域に対して半径方向内方に変位する。
【0017】
ステップc)の後、ケージは、再成形された第1領域は別として、全ての領域に、特に、(この方法によって実質的に変化しなかった)一様に球状に形成されている外周面、又は、(この方法によって実質的に変化しなかった)一様に球状に形成されている内周面を有する。
【0018】
これら他の領域に対して、再成形された第1領域は、何れの場合も、半径方向内方に変位又はオフセットするように配置される。
【0019】
圧縮力は、外周面上では、特に半径方向に作用する。特に、圧縮力は、外周面上においては、軸線方向にも作用する。特に、圧縮力は、ケージの両端面には一切(または、ほんの僅かしか)作用しない。
【0020】
特に、保持力がさらにケージに対して作用するが、これら保持力がケージに加わる箇所において、(塑性)変形は(事実上)生じない。
【0021】
特に、ケージの(塑性)変形は、ボール案内面の第1領域にのみ発生する。
【0022】
特に、ステップ(a)とステップ(b)との間、又は、ステップ(c)の後、更なるステップ(i)において、調整用マンドレルが、少なくとも1つのケージ窓内に、特に各ケージ窓内に、配置される。少なくともステップ(c)の最中(おそらくステップ(b)の最中又はステップ(i)に続くアプセット加工においても)、少なくとも1つのボール案内面は、(それぞれの)調整用マンドレルに接するようになる。
【0023】
このアプセット加工は、ケージの両端面を介して軸線方向に作用する圧縮力を加えることを含む。
【0024】
このアプセット加工においては、ケージ窓の互いに対向するボール案内面の間の距離が縮まるように、少なくとも1つのボール案内面が軸線方向に変位し得る。
【0025】
少なくとも1つのボール案内面が調整用マンドレルに接するようになれば、アプセット加工が続行可能となる。それにより、各ボール案内面が(第1領域において)調整用マンドレルによって固定されつつ、各ボール案内面に隣接して位置する(第2)領域が軸線方向に更に変位する。
【0026】
好適な一実施形態によると、ステップ(c)において又はステップ(i)に続くアプセット加工において、少なくとも1つのボール案内面が、ケージの隣接する第2領域に対して軸線方向に(更に)変位するように、この少なくとも1つのボール案内面の第1領域においてケージが変形される。この理由は、特に、このアプセット加工中、第1領域は調整用マンドレルに突き当たり、第2領域は軸線方向内方に更に変位するからである。軸線方向へのこの変形は、ボール窓の、軸線方向に互いに対向するボール案内面同士が、互いから所定の距離に位置することを特に保証する。
【0027】
別の実施形態によると、ステップ(c)の後、又は、ステップ(i)の後、又は、ステップ(i)に続くアプセット加工の後、ケージ案内面の機械加工が(フライス加工等により)行われる。この機械加工によって必要な距離が厳密に設定される。
【0028】
好適な一実施形態によると、少なくとも1つのケージ窓は、互いに対向する両側面のそれぞれに、ボール案内面を有する。また、ステップ(c)において、両ボール案内面は、ケージの、(周方向において第1領域に)隣接する第2領域に対して、少なくとも半径方向内方に変位する。
【0029】
特に、ケージ案内面の第1領域における(特に半径方向に測定された)ケージの壁厚は、ステップ(c)の最中において、且つ、特にステップ(i)に続くアプセット加工中において、一定のままである。したがって、好ましくは、ケージ案内面の第1領域内への材料流動が一切発生せず、代わりに、第1領域に存在する材料は、隣接する第2領域に対して少なくとも半径方向に変位する。
【0030】
特に本明細書に新規記載の方法によって製作される等速ボールジョイント用のケージを更に提案する。
【0031】
このケージは環状であり、等速ボールジョイントの複数のボールを案内するための、周方向に互いに距離を置いて配置された複数のケージ窓を有する。前記複数のケージ窓はそれぞれ、少なくとも1つの側面に、軸線方向に向いたボール案内面を有する。前記ケージは、ボール案内面の第1領域において、ケージの回転軸線を横切る断面内で、最小内径及び最小外径を有する。
【0032】
特に、ケージは、ボール案内面の第1領域に、隣接配置されている第2領域に対して半径方向内方に変位した壁領域を有する。
【0033】
特に、(未成形の第1領域における)最小内径と、ケージの(直接)隣接配置されている第2領域の内径との差は、大きくとも3.0%であり、特に大きくとも1.0%である。特に、(未成形の第1領域における)最小内径と、ケージの(直接)隣接配置されている第2領域の内径との差は、少なくとも0.3%であり、特に少なくとも0.5%である。
【0034】
特に、(未成形の第1領域における)最小外径と、ケージの(直接)隣接配置されている第2領域の内径との差は、大きくとも3.0%であり、特に大きくとも1.0%である。特に、(未成形の第1領域における)最小外径と、ケージの(直接)隣接配置されている第2領域の内径との差は、少なくとも0.3%であり、特に少なくとも0.5%である。
【0035】
特に、ケージは、第1端面と第2端面との間において、軸線方向に延在する。ここで、ケージは、軸線方向において、ボール案内面と各端面との間に、周方向に延在するランドを有する。少なくとも1つのランドの少なくとも1つの軸線方向に延在する部分が、第1領域において、ケージの(周方向に、又は、軸線方向に端面側に向かって、又は、その両方において)隣接する(第2)領域に対して、半径方向内方に変位する。特に、ランド全体(すなわち、軸線方向において、ボール案内面と少なくとも1つの端面との間)は、第1領域において、ケージの(周方向に)隣接する第2領域に対して、半径方向内方に変位する。
【0036】
新たに提案された本方法によって製作される、又は、前述のように構成される、又は、その両方に該当するケージを有する等速ボールジョイントを更に提案する。当該等速ボールジョイントは、好ましくは等速スリップボールジョイントであり、ケージは、外側ジョイント部分、又は、内側ジョイント部分、又は、その両方に対して、軸線方向に沿って変位可能に配置される。
【0037】
この新たな方法に関する記述は、新たなケージ及び新たなジョイントにも等しく適用され、逆の場合も同様に適用される。
【0038】
したがって、更に、上記のシャフトアセンブリを少なくとも1つ備えた自動車も提案する。
【0039】
ケージ窓を押圧すること、又は、ケージ窓の内方にオフセットした部分を形成することによる、本願明細書に説明されているケージの半径方向の調整は、以下の利点のうちの少なくとも1つを特にもたらし得る。
− 従来技術に比べて一層大きな窓面積。これにより、ボールは窓内の中心を走行する。これは、耐用寿命の延長を可能にする。
− 確実且つ管理可能な再成形工程。
− 動作中のボールの下により多くの材料があること。これにより、強度が向上し得る。
【0040】
以下においては、本発明及び本技術分野について、図面に基づきより詳細に説明する。図示されている例示的実施形態によって本発明は制約されないことに注意されたい。特に、明示的に特段の記載がなされていない限り、図面に説明されている本質的内容の部分的側面を抽出し、本願明細書、図面、その両方からの知見及び他の構成部分と組み合わせることも可能である。同じ参照符号は同一の物体を示す。したがって、場合によっては、他の図からの説明が補足的に使用され得る。以下の図は、何れの場合も模式的に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】公知のケージを斜視図で示す。
図2図1に示されているケージの断面を示す。
図3】ケージのための公知の調整方法を示す。
図4図3に示されている調整方法によって製作されたケージを断面図で示す。
図5図4に示されているケージを斜視図で示す。
図6】本方法によって製作されたケージを断面図で示す。
図7図6の詳細を示す。
図8図6及び図7に示されているケージを斜視図で示す。
図9】ケージの実施形態の別の変形例を斜視図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
ケージ1を備えた等速スリップボールジョイント2は、これらの図に示されていない。これに関しては、冒頭で言及した、ケージ1を有する等速スリップボールジョイント2が示されている特許文献2を参照されたい。
【0043】
図1は、公知のケージ1を斜視図で示す。ケージ1は環状であり、回転軸線17と複数のケージ窓4とを有する。これらケージ窓4は、周方向3に互いに距離を置いて配置され、等速ボールジョイント2の複数のボール5を案内することを目的とする。各ケージ窓4は、軸線方向7に向いたボール案内面8を両側面6のそれぞれに有する。ケージ1は、球状に(例えばボール状に)形成された外周面11と、球状に形成された内周面28とを有する。
【0044】
ケージ1は、第1端面22と第2端面23との間において、軸線方向7に延在する。また、軸線方向7において、ボール案内面8と、端面22、23との間に、周方向3に延在するランド24を有する。
【0045】
図2は、図1に示されているケージ1の断面16を示す。ボール5は、ケージ窓4に配置され、ボール案内面8において、特に、内周面28の近くの接点26において、ケージ1に接触する。ケージ1は、少なくともケージ案内面8の領域においては、半径方向10の壁厚15を有する。
【0046】
図3は、ケージ1用の公知の調整方法を示す。ケージ窓4(ここでは腎臓形状で示す)がケージ1に打ち抜かれた後、調整プロセスが実施される。このプロセスにおいて、調整用マンドレル14がケージ窓4内に配置され、その後、軸線方向7に作用する圧縮力9によってケージ1全体がアプセットされる。ケージ1のこのアプセットにより、ケージ1内の材料流動が引き起こされ、それにより、ケージ窓4のボール案内面8が半径方向10内方に拡張する(図4を参照)。更に、互いに対向するボール案内面8の間の距離27をアプセット加工によって厳密に設定できる。
【0047】
図4は、図3に示されている調整方法によって製作されたケージ1を断面図16で示す。図5は、図4に示されているケージ1を斜視図で示す。以下においては、図4及び図5を一緒に説明する。
【0048】
この調整方法は、軸線方向7に向き合うケージ1の各側面6に配置されているボール案内面8の第1領域12において、ケージ1の材料が半径方向10内方に変位するという効果を有する。内周面28のこの張り出しは、相対的に無制御な材料流動の発生によるため、構造設計の点からは規定することができない。この調整方法の結果として、ボール案内面8の第1領域12における壁厚15が(半径方向10内方に)増大する。それに対応して、ケージ1は、ボール案内面8の第1領域12において、最小内径18を有する。第1領域12に隣接する第2領域13においては、より大きな内径21を有する。
【0049】
半径方向10内方へボール案内面8が拡張することにより、内周面28に近いボール案内面8の領域における(早期の)損傷を防止できるという効果が得られる。
【0050】
図6は、本方法によって製作されたケージ1を断面図で示す。図7は、図6の詳細を示す。図8は、図6及び図7に示されているケージ1を斜視図で示す。以下においては、図6図8を一緒に説明する。
【0051】
ケージ1は環状であり、ケージ窓4を複数有する。これらケージ窓4は、周方向3に互いに距離を置いて配置され、等速ボールジョイント2の複数のボール5を案内することを目的とする。各ケージ窓4は、軸線方向7に向いたボール案内面8を各側面6に有する。半径方向10に向いたケージ1の外周面11を介して、ケージ窓4のボール案内面8の第1領域12に圧縮力9を加えることによって、ケージ1は第1領域12において変形する。これにより、各ボール案内面8は、それぞれ隣接するケージ1の第2領域13に対して半径方向10内方に変位する。
【0052】
ここでも、ケージ1は球状に形成された外周面11と球状に形成された内周面28とを有する。
【0053】
ボール案内面8の第1領域12における(半径方向10に測定された)ケージ1の壁厚15は、本方法のステップc)の最中において、且つ、特にステップ(i)に続くアプセット加工中において、一定のままである。したがって、ボール案内面8の第1領域12内への材料流動は発生せず、代わりに、第1領域12に存在する材料は、隣接する第2領域13に対して半径方向10に変位する。
【0054】
ステップc)の後、ケージ1は、ボール案内面8の第1領域12において、ケージ1の回転軸線17を横切る断面16内で、最小内径18及び最小外径19を有する。最小内径18は、ケージ1の直接隣接配置されている第2領域13の内径21とは異なる。最小外径19についても、(ケージ1の直接隣接配置されている第2領域13の外径との比較において)同様のことが言える。
【0055】
ケージ1は、第1端面22と第2端面23との間において、軸線方向7に延在する。ここで、ケージ1は、軸線方向7において、ボール案内面8と各端面22、23との間に、周方向3に延在するランド24を有する。ランド24の少なくとも1つの軸線方向7に延在する部分25が、第1領域12において、ケージ1の(周方向3に、又は、軸線方向7に端面22、23側に向かって、又は、その両方において)隣接する第2領域13に対して半径方向10内方に変位する(ここで、部分25は、軸線方向7にランド24全体にわたって延在する)。
【0056】
ボール案内面8同士の間の軸線方向7の距離27は、ステップc)によって、又は、アプセット加工によって、直接設定可能である。このアプセット加工は、ステップ(i)の後、おそらくはステップc)の後に行われる。距離27は、ステップc)の後、又は、アプセット加工の後、機械加工によっても設定され得る。
【0057】
図9は、ケージ1の実施形態の別の変形例を斜視図で示す。図8に関する記述を参照されたい。ここで、図8に示されているケージ1との違いは、ランド24の軸線方向7に延在する部分25のみが、第1領域12において、ケージ1の周方向3に隣接する第2領域13に対して半径方向10内方に変位し、更には端面22、23に向かって軸線方向7に変位していることである。ここで、図8の実施形態の変形例に比べ、部分25は、軸線方向7にケージ窓4から端面22、23まで延在しているだけであり、ランド24は、端面22、23自体において半径方向10内方に変位していない。
【0058】
本方法は、ボール案内面8を半径方向10に更に内方に配置できるように、ケージ1の再成形を複数の部分領域において定めることを可能にする。この変位により、ボール5とボール案内面8との接点26が内周面28からより遠い距離に配置されるので、等速ボールジョイントの動作中におけるケージ1の損傷が防止される。
【符号の説明】
【0059】
1 ケージ
2 等速ボールジョイント
3 周方向
4 ケージ窓
5 ボール
6 側面
7 軸線方向
8 ボール案内面
9 圧縮力
10 半径方向
11 外周面
12 第1領域
13 第2領域
14 調整用マンドレル
15 壁厚
16 断面
17 回転軸線
18 最小内径
19 最小外径
20 壁部分
21 内径
22 第1端面
23 第2端面
24 ランド
25 部分
26 接点
27 距離
28 内周面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9