特許第6783935号(P6783935)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6783935ネオジム−鉄−ボロン永久磁石材料の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6783935
(24)【登録日】2020年10月26日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】ネオジム−鉄−ボロン永久磁石材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 41/02 20060101AFI20201102BHJP
   H01F 1/057 20060101ALI20201102BHJP
   B22F 3/00 20060101ALI20201102BHJP
   B22F 9/04 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
   H01F41/02 G
   H01F1/057 170
   H01F1/057 120
   B22F3/00 F
   B22F9/04 E
   B22F9/04 C
【請求項の数】3
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2019-527538(P2019-527538)
(86)(22)【出願日】2017年12月21日
(65)【公表番号】特表2020-505754(P2020-505754A)
(43)【公表日】2020年2月20日
(86)【国際出願番号】CN2017117641
(87)【国際公開番号】WO2018113717
(87)【国際公開日】20180628
【審査請求日】2019年7月11日
(31)【優先権主張番号】201611192973.5
(32)【優先日】2016年12月21日
(33)【優先権主張国】CN
(31)【優先権主張番号】201611195651.6
(32)【優先日】2016年12月21日
(33)【優先権主張国】CN
(31)【優先権主張番号】201611192277.4
(32)【優先日】2016年12月21日
(33)【優先権主張国】CN
(31)【優先権主張番号】201611192971.6
(32)【優先日】2016年12月21日
(33)【優先権主張国】CN
(31)【優先権主張番号】201611191110.6
(32)【優先日】2016年12月21日
(33)【優先権主張国】CN
(31)【優先権主張番号】201611192264.7
(32)【優先日】2016年12月21日
(33)【優先権主張国】CN
(31)【優先権主張番号】201710624106.2
(32)【優先日】2017年7月27日
(33)【優先権主張国】CN
(31)【優先権主張番号】201710624675.7
(32)【優先日】2017年7月27日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519177448
【氏名又は名称】パオトウ リサーチ インスティチュート オブ レア アース
(73)【特許権者】
【識別番号】519178294
【氏名又は名称】ナショナル エンジニアリング リサーチ センター オブ ルイケ レア アース メタラージー アンド ファンクション マテリアルズ カンパニー リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】519177459
【氏名又は名称】パオトウ アイアン アンド スチール(グループ) カンパニー リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】519177460
【氏名又は名称】シアメン インスティチュート オブ レア−アース マテリアルズ
(73)【特許権者】
【識別番号】519177471
【氏名又は名称】パオトウ ジンシャン マグネティック マテリアル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】スン, リャンチョン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン, チャンフォン
(72)【発明者】
【氏名】チャン, チーホン
(72)【発明者】
【氏名】リウ, シアオユイ
(72)【発明者】
【氏名】リウ, シューフォン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン, ファン
(72)【発明者】
【氏名】リウ, チーシアン
(72)【発明者】
【氏名】ワン, ユイ
(72)【発明者】
【氏名】リー, チンヤー
(72)【発明者】
【氏名】ルー, フェイ
(72)【発明者】
【氏名】ロウ, シュープー
(72)【発明者】
【氏名】リー, ホイ
(72)【発明者】
【氏名】チェン, ペイシン
(72)【発明者】
【氏名】パイ, ヤン
(72)【発明者】
【氏名】チョン, ユイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン, フォン
(72)【発明者】
【氏名】チョン, ティエンツァン
(72)【発明者】
【氏名】シア, フォン
(72)【発明者】
【氏名】スン, ツァイナー
【審査官】 佐久 聖子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−219352(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0357119(US,A1)
【文献】 国際公開第2013/144995(WO,A1)
【文献】 特開昭62−177146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 41/02
B22F 3/00
B22F 9/04
H01F 1/057
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネオジム−鉄−ボロン永久磁石材料の製造方法であって、
工程1:設計に従って成分原料を配合し、溶融してから、急冷して凝固させかつネオジム−鉄−ボロン鋳片に作製する工程;
工程2:ネオジム−鉄−ボロン鋳片から、水素解砕、不均化反応、ジェットミルでの製粉を経て、平均粒子径D50は、300nm〜20μmであるネオジム−鉄−ボロン微粉を得る工程;
工程3:熱抵抗蒸発蒸着を採用し、高融点元素粒子をネオジム−鉄−ボロン微粉に蒸着する工程;及び
工程4:工程3にて得られたネオジム−鉄−ボロン微粉の配合プレス成形、真空焼結及び熱処理を経て、最終のネオジム−鉄−ボロン磁石を得る工程を含み、
工程3において、前記高融点元素粒子としてW、Mo、V、Ti、Ta、Zr、Nb、CoまたはCr元素中の少なくとも1種類の粒子を使用し、熱抵抗蒸発真空度は10Pa〜10Paであることを特徴とする、ネオジム−鉄−ボロン永久磁石材料の製造方法。
【請求項2】
工程3において、ネオジム−鉄−ボロン微粉と高融点熱抵抗線を熱抵抗蒸発蒸着装置に置き、パラメータを調整してネオジム−鉄−ボロン微粉を均一に分散させ、高融点熱抵抗線を加熱して高融点元素粒子を蒸発させ、高融点元素粒子をネオジム−鉄−ボロン微粉に蒸着し、ネオジム−鉄−ボロン微粉の温度を室温まで下げた後取り出し、
高融点熱抵抗線は、元素W、Mo、V、Ti、Ta、Zr、Nb、Co、またはCrからの少なくとも1種類の元素の純金属または合金であることを特徴とする、請求項1に記載のネオジム−鉄−ボロン永久磁石材料の製造方法。
【請求項3】
熱抵抗線はCoZr熱抵抗線であることを特徴とする、請求項2に記載のネオジム−鉄−ボロン永久磁石材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、下記の中国特許出願に基づくものである。
1、出願番号:201611192264.7、出願日:2016年12月21日;
2、出願番号:201611192971.6、出願日:2016年12月21日;
3、出願番号:201611191110.6、出願日:2016年12月21日;
4、出願番号:201611192277.4、出願日:2016年12月21日;
5、出願番号:201611192973.5、出願日:2016年12月21日;
6、出願番号:201611195651.6、出願日:2016年12月21日;
7、出願番号:201710624106.2、出願日:2017年07月27日;
8、出願番号:201710624675.7、出願日:2017年07月27日。
【0002】
本願発明は、前記の中国特許出願の優先権を主張し、前記の中国特許出願のすべての内容を参照によりここに援用する。
【0003】
本願発明は、希土類永久磁石材料の製造技術に関し、具体的には、ネオジム−鉄−ボロン永久磁石材料に関する。
【背景技術】
【0004】
ネオジム−鉄−ボロン永久磁石材料は、中国の希土類分野における最も注目されている希土類応用産業であり、科学技術の発展と技術の進歩により、高性能ネオジム−鉄−ボロン永久磁石材料のニーズはますます広くなっている。ネオジム−鉄−ボロンの保磁力および高温使用性を改善する汎用の方法には、少量の重希土類元素(例えば、Dy、Tbなど)を添加する方法、または、プロセスを最適化して磁石粒子を微細化する方法がある。
【0005】
現在使用されている重希土類の使用量を減らすための方法は、主に、二重合金プロセスと重希土類元素粒界拡散プロセスが含まれている。二重合金プロセスは、主合金と重希土類元素を含む補助合金とを別々に溶融し、粉砕して粉末にし、主合金磁粉と補助合金粉末とを比率で混合し、配向プレスして焼結するプロセスであるが、重希土類元素の使用量は依然として多い。重希土類元素粒界拡散プロセスは、スミアリング、スプレー、浸漬および被覆などでネオジム−鉄−ボロンの表面に重希土類元素被覆層を形成し、高温粒界拡散で重希土類元素を磁石の内部に拡散させることによって磁石の保磁力を向上させ、重希土類の使用を減らすプロセスである。しかしながら、当該プロセスは比較的に薄い磁性部品(通常は5mm未満の厚さ)を作ることに限定され、バルク磁石の製造には保磁力が有意に改善されない。
【0006】
現在、磁石の結晶粒を微細化する方法には、通常、磁石成分に微量のW、Mo、V、Ti、Ta、Zr、Nb、Co、Cr、Ga等の元素を添加することによって、磁石結晶粒の成長を抑制する方法がある。このような元素は磁石中に偏析などの偏在を生じさせる可能性があり、粒成長を抑制する効果が限定され、過剰な添加は磁石の性能に重大な影響を及ぼす可能性がある。
【0007】
従来技術において、ネオジム−鉄−ボロン磁石は、通常、物理気相蒸着法でネオジム−鉄−ボロン粉末を被覆することによって調製される。物理気相蒸着法は、マグネトロンスパッタリング、電子ビーム蒸着、および、真空誘導蒸着を含む。しかしながら、マグネトロンスパッタリング法は、材料の利用率が50%未満、電子ビーム蒸着は、電子ビーム蒸着装置が高価であり、真空および蒸発温度への要求が厳しいなどの不利な点がある。真空誘導蒸着は、材料の利用率が99%に近いが、高真空が要求される欠点があり、高融点金属の場合では温度が低すぎ、蒸発速度が遅く、そして熱効率が低いなどの欠点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願発明が解決しようとする課題は、磁石の粒界に重希土類粒子や高融点粒子を均一に分散させ、磁石の保磁力を高め、重希土類の使用量を減らし、ネオジム−鉄−ボロン磁石の保磁力を大幅に向上させることができるネオジム−鉄−ボロン永久磁石材料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明は、下記の構成を含む。
【0010】
ネオジム−鉄−ボロン磁性材料を作製し、物理気相蒸着法で重希土類粒子または高融点粒子をネオジム−鉄−ボロン磁性粉に蒸着する工程と、
【0011】
配向成形し、焼結によってオジム−鉄−ボロン磁石を製造する工程とを、
含むネオジム−鉄−ボロン永久磁石材料の製造方法。
【0012】
さらに、まず、粒子径10μm〜2mmのオジム−鉄−ボロン粗粉を作製し、蒸着し、微細化させて製粉する。
【0013】
さらに、オジム−鉄−ボロン磁石を利用してオジム−鉄−ボロン磁粉を作製し、そして粒子の蒸着を行う。
【0014】
さらに、原料を配合し、溶融してから、急冷して凝固させかつ鋳片に作製し、物理気相蒸着法によって不活性雰囲気で重希土類粒子または高融点粒子をネオジム−鉄−ボロンシートに蒸着し、ネオジム−鉄−ボロンシートを利用して破砕させて製粉する。
【0015】
さらに、所望の高融点ターゲット材を選択し、ネオジム−鉄−ボロン磁粉と高融点ターゲット材を別々に物理気相蒸着装置に入れ、物理気相蒸着装置をオンにし、物理気相蒸着で高融点粒子を分散されたネオジム−鉄−ボロン磁粉に蒸着する。
【0016】
さらに、ネオジム−鉄−ボロン磁粉を作製し、所望の重希土類ターゲット材を選択し、ネオジム−鉄−ボロン磁粉と重希土類ターゲット材を別々に物理気相蒸着装置に入れ、ネオジム−鉄−ボロン磁粉を均一に分散させるようにパラメータを調整しながら、ネオジム−鉄−ボロン磁粉を加熱し、物理気相蒸着装置をオンにし、物理気相蒸着で重希土類粒子を分散されたネオジム−鉄−ボロン磁粉に蒸着する。
【0017】
さらに、設計に従って各成分を配合し、製錬し、急冷して凝固させかつ鋳片に作製し、ネオジム−鉄−ボロン鋳片を水素解砕し、不均化反応させて、そして、ジェットミル製粉によってネオジム−鉄−ボロン微粉を得、熱抵抗蒸発法を用いて、重希土類元素粒子または高融点元素粒子を、ネオジム−鉄−ボロン微粉に蒸着させ、得られたネオジム−鉄−ボロン微粉に対して配向プラス成形、真空焼結および熱処理を経ってネオジム−鉄−ボロン磁石を得る。
【0018】
さらに、重希土類元素粒子としてDyまたはTb元素の粒子を使用し、高融点元素粒子としてW、Mo、V、Ti、Ta、Zr、Nb、Co、CrまたはGa元素の粒子を使用する。
【0019】
さらに、物理気相蒸着において、不活性雰囲気を使用し、温度は300〜500℃であり、蒸着レートは0.01〜50μm/minである。
【0020】
さらに、ネオジム−鉄−ボロン磁粉の平均粒子径D50は、300nm〜20μmである。
【0021】
従来技術に比べて、本願発明の技術効果は、下記を含む。
【0022】
1、本発明によれば、重希土類粒子又は高融点粒子を磁石の粒界に均一に分散させることによって、磁石の保磁力を向上させ、磁石の結晶粒を微細化し、重希土類の使用量を低減し、優れた残留磁束及び磁気エネルギー積を得ることができる。本発明で製造されたネオジム−鉄−ボロン磁石は、ネオジム−鉄−ボロン磁石の保磁力を著しく向上させ、磁石の結晶粒を微細化し、重希土類元素の使用量を大幅に減らし、ネオジム−鉄−ボロン磁石の製造コストを下げると共に、磁石中の酸素含有量を減らすことができる。
【0023】
2、本発明の方法により製造されたネオジム−鉄−ボロンシートを、破砕および製粉し、次いで焼結してネオジム−鉄−ボロン磁石を製造することによって、磁石の保磁力を著しく改善し、重希土類元素の使用を大幅に減少させ、磁石の製造コストを減少させ、そして磁粉の再加工による酸化を減少させることができ、このプロセスは、簡単で容易に実施できる。
【0024】
3.本発明の物理気相蒸着法によって製造されたネオジム−鉄−ボロン磁粉を被覆し、そして焼結してネオジム−鉄−ボロン磁石を製造することで、微量元素の添加量が少なく、磁石結晶粒が微細で、ネオジム−鉄−ボロン磁石の保磁力を著しく向上させ、他の磁気特性を高く維持でき、また、重希土類元素の使用を大幅に減らすか、または重希土類元素を使わず、ネオジム−鉄−ボロン磁石の製造コストを減らすことができる。
【0025】
4、本発明は、熱抵抗蒸発での蒸着によってネオジム−鉄−ボロン微粉を被覆し、次いで焼結してネオジム−鉄−ボロン磁石を製造することによって、ネオジム−鉄−ボロン磁石の保磁力を著しく改善し、磁石結晶粒を微細化させ、そして重希土類元素の使用量を減少させてネオジム−鉄−ボロン磁石の製造コストを下げる。具体的には、以下の通りである。
【0026】
(1)熱抵抗蒸発工程において、大電流の作用により金属内部抵抗から発生した高熱により直接に原料を溶融させて蒸着の目的を達成するため、合金材料の蒸着を低真空下で行うことができ、瞬間的に大量の金属気化粒子が発生し、材料利用率は100%に達し、機器のコストは低く、低電圧、高電流、高出力動作は実現でき、熱伝導と熱対流がないため、熱損失は低い。
【0027】
(2)ネオジム−鉄−ボロン微粉を熱抵抗蒸発による蒸着で被覆した後、焼結してネオジム−鉄−ボロン磁石を製造することで、磁石の保磁力を大幅に向上させ、磁石結晶粒を微細化し、重希土類元素の使用量および磁石の製造コストを低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の好ましい実施形態
以下に例示的な実施形態を参照して本発明を詳細に説明する。しかし、例示的な実施形態は多様な形態で実施でき、本明細書に記載された実施形態に限定されるものであると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本発明の開示が徹底的かつ完全となるように提供され、かつ、例示的な実施形態の要旨を、全面的に当業者に伝えられるものである。
【0029】
本発明は、ネオジム−鉄−ボロン磁石、ネオジム−鉄−ボロンシート、ネオジム−鉄−ボロン磁粉、ネオジム−鉄−ボロン微粉の製造に適用できる。
【0030】
実施形態1:
低含有量の重希土類を含有する高保磁力ネオジム−鉄−ボロン磁石の製造方法は、具体的な工程が次のとおりである。
【0031】
工程1:ネオジム−鉄−ボロン磁粉を作製し、物理気相蒸着法で微量な重希土類粒子または高融点粒子を、ネオジム−鉄−ボロン磁粉に蒸着する工程。
【0032】
原料を配合し、溶融してから、急冷して凝固させかつ鋳片に作製し、破砕させて製粉し、物理気相蒸着法によって重希土類粒子をネオジム−鉄−ボロンシートに被覆し、配合成形する。物理気相蒸着は、不活性雰囲気で行い、温度が300〜500℃であり、蒸着レートが0.01〜50μm/minである。
【0033】
工程2:焼結によってネオジム−鉄−ボロン磁石を製造する工程。
磁石の粒界に重希土類粒子、高融点粒子を均一に分散させ、磁石の保磁力を向上させ、磁石の結晶粒を微細化し、重希土類の使用量を低減し、優れた残留磁束及び磁気エネルギー積を得ることができる。
【0034】
焼結によってネオジム−鉄−ボロン磁石を製造する形態1
【0035】
工程11:原料を配合し、溶融してから、急冷して凝固させかつ鋳片に作製し、破砕させて製粉し、1〜20μmのネオジム−鉄−ボロン磁粉を製造する工程。
【0036】
工程12:所望の重希土類ターゲット材を選択し、ネオジム−鉄−ボロン合金磁粉と重希土類ターゲット材を別々に物理気相蒸着装置に入れる工程。
【0037】
重希土類ターゲット材は、Dy、TbまたはDy−Tbから選ばれる少なくとも1種の純金属、合金または酸化物である。
【0038】
工程13:不活性雰囲気(アルゴン、アルゴン、ヘリウムまたは真空)でネオジム−鉄−ボロン磁粉に対して重希土類元素(DyまたはTb)粒子を物理気相蒸着する工程。
【0039】
真空度が2.0×10−2Paより高いまで真空排気し、0.2〜1.0Paになるように不活性ガス(アルゴン、アルゴンまたはヘリウム)を充填し、パラメータを調整してネオジム−鉄−ボロン磁粉を均一に分散させると共に磁粉を加熱温度300〜500℃で加熱し、分散されたネオジム−鉄−ボロン磁粉にターゲット粒子を蒸着する。粒子蒸着レートは0.01〜50μm/minである。
【0040】
物理気相蒸着は、マグネトロンスパッタ蒸着、イオンプレーティング蒸着、および、蒸発源蒸着を含む。
【0041】
工程14:物理気相蒸着を停止し、ネオジム−鉄−ボロン磁粉温度を室温まで下げた後、磁粉を取り出す工程。
【0042】
工程15:得られた磁粉から、配合プレス成型、真空焼結、および、焼き戻し処理を経って最終のネオジム−鉄−ボロン磁石を得る工程。
【0043】
焼結によってネオジム−鉄−ボロン磁石を製造する形態2
【0044】
工程21:原料を配合し、溶融してから、急冷して凝固させかつ鋳片に作製し、破砕させて製粉し、1〜20μmのネオジム−鉄−ボロン磁粉を製造する工程;
【0045】
工程22:所望の高融点ターゲット材を選択し、ネオジム−鉄−ボロン合金磁粉と高融点ターゲット材を別々に物理気相蒸着装置に入れる工程;
【0046】
高融点ターゲット材は、W、Mo、V、Ti、Ta、Zr、Nb、Co、Cr、Gaなどの元素の少なくとも1種類の純金属、合金または酸化物である。
【0047】
工程23:不活性雰囲気において高融点元素(W、Mo、V、Ti、Ta、Zr、Nb、Co、CrまたはGa)粒子をネオジム−鉄−ボロン磁粉に蒸着する工程。
【0048】
真空度が2.0×10−2Paより高いまで真空排気して、0.2〜1.0Paになるように不活性ガス(アルゴン、アルゴン、ヘリウムまたは真空)を充填する。ネオジム−鉄−ボロン磁粉を均一に分散させると共に磁粉を加熱温度300〜500℃で加熱する。分散されたネオジム−鉄−ボロン磁粉にターゲット材粒子を蒸着する。粒子蒸着レートは0.01〜50μm/minである。
【0049】
物理気相蒸着は、マグネトロンスパッタ蒸着、イオンプレーティング蒸着、蒸発源蒸着を含む。
【0050】
工程24:物理気相蒸着を停止し、ネオジム−鉄−ボロン磁粉温度を室温まで下げた後、磁粉を取り出す工程。
【0051】
工程25:得られた磁粉に対し、配合プレス成型、真空焼結、および、焼き戻し処理を経って最終のネオジム−鉄−ボロン磁石を得る工程。
【0052】
実施例1:
(1)原料を配合し、溶融してから、急冷して凝固させかつ鋳片に作製し、ディスクミルで破砕し、ボールミルで製粉し、平均粒子径3.5μmのネオジム−鉄−ボロン合金磁粉を得た。
【0053】
(2)工程(1)にて得られた磁粉を物理気相蒸着した。
【0054】
Dy金属ターゲット材を選択し、2.0×10−2Paまで真空排気し、0.2Paになるようにアルゴンを充填し、磁粉を380℃に加熱し、マグネトロンスパッタリングを用いて、Dy粒子の蒸着速度を0.01μm/minになるようにスパッタリングパワーを調整し、ネオジム−鉄−ボロン磁粉の温度を室温まで下げた後、磁粉を取り出した。
【0055】
(3)工程(2)にて得られた磁粉に対し、配合成形、焼結、熱処理を行い、最終の磁石を得た。
【0056】
本実施例で作製した磁石の磁気エネルギー積と保磁力を磁気特性測定装置で試験し、従来法で作製した磁石と比較した結果を表1に示した。
【0057】
表1
【0058】
実施例2:
(1)原料を配合し、溶融してから、急冷して凝固させかつ鋳片に作製し、水素解砕し、ジェットミルで製粉し、平均粒子径4.1μmのネオジム−鉄−ボロン合金磁粉を得た。
【0059】
(2)工程(1)にて得られた磁粉を物理気相蒸着した。
【0060】
Tb金属ターゲット材を選択し、5.0×10−3Paまで真空排気し、0.5Paになるようにヘリウムを充填し、磁粉を420℃に加熱し、イオンプレーティング(ターゲット材から分離した原子は、ほとんどがイオン状態であり、より高いエネルギーを示す。ネオジム−鉄−ボロン磁粉の表面への結合はより優れしい。)を用いて、Tb粒子の蒸着速度を50μm/minになるようにアルゴン発射源電流を調整し、ネオジム−鉄−ボロン磁粉の温度を室温まで下げた後、磁粉を取り出した。
【0061】
(3)工程(2)にて得られた磁粉に対して、配合成形、焼結、熱処理を行い、最終のネオジム−鉄−ボロン磁石を得た。
【0062】
本実施例で作製した磁石の磁気エネルギー積と保磁力を磁気特性測定装置で試験し、従来法で作製した磁石と比較した結果を表2に示した。
【0063】
表2
【0064】
実施例3:
(1)原料を配合し、溶融してから、急冷して凝固させかつ鋳片に作製し、水素解砕し、ジェットミルで製粉し、平均粒子径3.7μmのネオジム−鉄−ボロン合金磁粉を得た。
【0065】
(2)工程(1)にて得られた磁粉を物理気相蒸着した。
【0066】
CoZr金属ターゲット材を選択し、9.0×10−4Paまで真空排気し、磁粉を300℃に加熱し、蒸発蒸着を使用して、蒸着ボート熱源電力を調整してCoZr原子をガス化蒸発させ、蒸着レートが3μm/minであり、ネオジム−鉄−ボロン磁粉の温度を室温まで下げた後、磁粉を取り出した。
【0067】
(3)工程(2)にて得られた磁粉に対して、配合成形、焼結、熱処理を行い、最終のネオジム−鉄−ボロン磁石を得た。
【0068】
本実施例で作製した磁石の磁気エネルギー積と保磁力を磁気特性測定装置で試験し、従来法で作製した磁石と比較した結果を表3に示した。
【0069】
表3
【0070】
実施例4:
(1)原料を配合し、溶融してから、急冷して凝固させかつ鋳片に作製し、水素解砕し、ジェットミルで製粉し、平均粒子径4.3μmのネオジム−鉄−ボロン合金磁粉を得た。
【0071】
(2)工程(1)にて得られた磁粉を物理気相蒸着した。
【0072】
Dyターゲット材とMoターゲット材を選択し、3.0×10−2Paまで真空排気し、0.3Paになるまでアルゴンを充填し、磁粉を500℃に加熱し、マグネトロンスパッタリングを使用して両種類のターゲット材に対して同時にスパッタリングし、粒子蒸着レートを0.2μm/minになるようにスパッタリング出力を調整し、ネオジム−鉄−ボロン磁粉の温度を室温まで下げた後、磁粉を取り出した。
【0073】
(3)工程(2)にて得られた磁粉に対して、配合成形、焼結、熱処理を行い、最終のネオジム−鉄−ボロン磁石を得た。
【0074】
本実施例で作製した磁石の磁気エネルギー積と保磁力を磁気特性測定装置で試験し、従来法で作製した磁石と比較した結果を表4に示した。
【0075】
表4
【0076】
実施形態2:
磁石の粒界に重希土類粒子又は高融点粒子を均一に分散させることによって、磁石の保磁力を向上させ、磁石の結晶粒を微細化し、重希土類の使用量を低減し、優れた残留磁束及び磁気エネルギー積を得ることができる低含有量の重希土類を含有する高保磁力ネオジム−鉄−ボロン磁石の製造方法。
【0077】
具体的な工程は以下の通りである。
【0078】
工程1:ネオジム−鉄−ボロン粗粉を作製し、物理気相蒸着法で微量の重希土類粒子または高融点粒子をネオジム−鉄−ボロン粗粉に蒸着する工程。
【0079】
原料を配合し、溶融してから、急冷して凝固させかつ鋳片に作製し、粗破碎し、ネオジム−鉄−ボロン粗粉を得た。物理気相蒸着において、不活性雰囲気(アルゴン、ヘリウムまたは真空)を用い、温度は300〜500℃であり、蒸着レートは、0.01〜50μm/minである。
【0080】
工程2:微細化して製粉し、配合成形を行い、焼結してネオジム−鉄−ボロン磁石を製造する工程。
【0081】
形態1:重希土類粒子の蒸着
【0082】
工程11:原料を配合し、溶融してから、急冷して凝固させかつ鋳片に作製し、粗破碎してネオジム−鉄−ボロン粗粉を製造する工程。
【0083】
ネオジム−鉄−ボロン粗粉の粒子径は、10μm〜2mmであり、粗破碎は、機械的破砕または水素解砕である。
【0084】
工程12:所望の重希土類ターゲット材を選択し、ネオジム−鉄−ボロン粗粉と重希土類ターゲット材を別々に物理気相蒸着装置に入れる工程。
【0085】
重希土類ターゲット材として、Dy、Tb純金属、または、Dy−Tb合金、または、Dy、Tbの酸化物を選択する。物理気相蒸着として、マグネトロンスパッタリング蒸着、イオンプレーティング蒸着、または、蒸発源蒸着を採用する。
【0086】
工程13:真空度が2.0×10−2Paより高いまで真空排気し、0.2〜1.0Paになるまでアルゴンを充填する工程。
【0087】
工程14:ネオジム−鉄−ボロン粗粉を均一に分散させるようにパラメータを調整しながら、300〜500℃に加熱する工程。
【0088】
工程15:物理気相蒸着装置をオンにし、ターゲット粒子を分散されたネオジム−鉄−ボロン粗粉に蒸着し、粒子蒸着レートは0.01〜50μm/minである工程。
【0089】
工程16:物理気相蒸着を停止し、ネオジム−鉄−ボロン粗粉の温度を室温まで下げた後取り出す工程。
【0090】
工程17:得られたネオジム−鉄−ボロン粗粉を微細化して製粉し、配合プレス成形、真空焼結、焼き戻し処理を行い、最終のネオジム−鉄−ボロン磁石を得る工程。
【0091】
実施形態2:高融点粒子の蒸着
工程21:原料を配合し、溶融してから、急冷して凝固させかつ鋳片に作製し、粗破碎してネオジム−鉄−ボロン粗粉を作製する工程。
【0092】
ネオジム−鉄−ボロン粗粉の粒子径は10μm〜2mmであり、粗破碎は、機械的破砕または水素解砕を採用する。
【0093】
工程22:所望の高融点ターゲット材を選択し、ネオジム−鉄−ボロン粗粉と高融点ターゲット材を別々に物理気相蒸着装置に入れる工程。
【0094】
高融点ターゲット材として、W、Mo、V、Ti、Ta、Zr、Nb、Co、Cr、Ga等の元素の少なくとも1種類の純金属、合金または酸化物を選択する。物理気相蒸着として、マグネトロンスパッタリング蒸着、イオンプレーティング蒸着、または、蒸発源蒸着を選択する。
【0095】
工程23:真空度が2.0×10−2Paより高くなるまで真空排気し、0.2〜1.0Paになるまでアルゴンを充填する工程。
【0096】
工程24:パラメータを調整してネオジム−鉄−ボロン粗粉を均一に分散させながら、300〜500℃に加熱する工程。
【0097】
工程25:物理気相蒸着装置をオンにし、ターゲット粒子を分散されたネオジム−鉄−ボロン粗粉に蒸着する工程。
【0098】
粒子蒸着レートは0.01〜50μm/minである。
【0099】
工程26:物理気相蒸着を停止し、ネオジム−鉄−ボロン粗粉の温度を室温まで下げた後取り出す工程。
【0100】
工程27:得られたネオジム−鉄−ボロン粗粉を、微細化して製粉し、配合プレス成形、真空焼結、焼き戻し処理を行い、最終のネオジム−鉄−ボロン磁石を得る工程。
【0101】
実施例5:
(1)原料を配合し、溶融してから、急冷して凝固させかつ鋳片に作製し、ディスクミルで粗破砕した。
【0102】
(2)得られたネオジム−鉄−ボロン粗粉を物理気相蒸着した。
【0103】
Dy金属ターゲット材を選択し、2.0×10−2Paまで真空排気し、0.2Paになるまでアルゴンを充填し、マグネトロンスパッタリングを採用し、スパッタリングパワーを調整してDy粒子の蒸着レートを0.01μm/minとした。
【0104】
(3)得られたネオジム−鉄−ボロン粗粉をボールミルで製粉し、配合成形、焼結、熱処理を行い、最終の磁石を得た。
【0105】
本実施例で作製した磁石の磁気エネルギー積と保磁力を磁気特性測定装置で試験し、従来法で作製した磁石と比較した結果を表5に示した。
【0106】
表5
【0107】
実施例6:
(1)原料を配合し、溶融してから、急冷して凝固させかつ鋳片に作製し、水素解砕した。
【0108】
(2)水素解砕して得られたネオジム−鉄−ボロン粗粉を物理気相蒸着した。
【0109】
Tb金属ターゲット材を選択し、5.0×10−3Paまで真空排気し、0.5Paになるまでヘリウムを充填した。
【0110】
ネオジム−鉄−ボロン粗粉を300℃に加熱し、イオンプレーティングを採用し、アルゴン発射源電流を調整してTb粒子の蒸着レートを50μm/minとした。
【0111】
(3)得られたネオジム−鉄−ボロン粗粉に対して、ジェットミル粉砕、配合成形、焼結、熱処理を行い、最終の磁石を得た。
【0112】
本実施例で作製した磁石の磁気エネルギー積と保磁力を磁気特性測定装置で試験し、従来法で作製した磁石と比較した結果を表6に示した。
【0113】
表6
【0114】
実施例7:
(1)原料を配合し、溶融してから、急冷して凝固させかつ鋳片に作製し、水素解砕した。
【0115】
(2)水素解砕して得られたネオジム−鉄−ボロン粗粉を物理気相蒸着した。
【0116】
CoZr金属ターゲット材を選択し、9.0×10−4Paまで真空排気し、ネオジム−鉄−ボロン粗粉を500℃に加熱し、蒸発蒸着を採用し、蒸着ボート熱源電力を調整してCoZr原子をガス化蒸発させ、蒸着レートは、3μm/minであった。
【0117】
(3)得られたネオジム−鉄−ボロン粗粉に対して、ジェットミル粉砕、配合成形、焼結、熱処理を行い、最終の磁石を得た。
【0118】
本実施例で作製した磁石の磁気エネルギー積と保磁力を磁気特性測定装置で試験し、従来法で作製した磁石と比較した結果を表7に示した。
【0119】
表7
【0120】
実施例8:
(1)原料を配合し、溶融してから、急冷して凝固させかつ鋳片に作製し、水素解砕した。
【0121】
(2)水素解砕して得られたネオジム−鉄−ボロン粗粉を物理気相蒸着した。
【0122】
Dyターゲット材、Moターゲット材を選択し、3.0×10−2Paまで真空排気し、0.3Paになるまでアルゴンを充填し、ネオジム−鉄−ボロン粗粉を420℃に加熱し、マグネトロンスパッタリングを採用し、両種類のターゲット材に対してスパッタリングし、スパッタリングパワーを調整して粒子蒸着レートを0.2μm/minとした。
【0123】
(3)得られたネオジム−鉄−ボロン粗粉に対して、ジェットミル粉砕、配合成形、焼結、熱処理を行い、最終の磁石を得た。
【0124】
本実施例で作製した磁石の磁気エネルギー積と保磁力を磁気特性測定装置で試験し、従来法で作製した磁石と比較した結果を表8に示した。
【0125】
表8
【0126】
実施形態3:
低含有量の重希土類を含有する高保磁力ネオジム−鉄−ボロン磁石の製造方法は、具体的な工程が以下の通りである。
【0127】
工程1:原料を配合し、溶融してから、急冷して凝固させかつ鋳片に作製する工程。
【0128】
工程2:物理気相蒸着法を採用し、不活性雰囲気でターゲット粒子(微量の重希土類粒子または高融点粒子)をネオジム−鉄−ボロンシートに蒸着する工程。
【0129】
物理気相蒸着のターゲット粒子として重希土類元素DyまたはTb粒子、あるいは、高融点元素のW、Mo、V、Ti、Ta、Zr、Nb、Co、Cr、Ga粒子からの一種または複数種の粒子を選択する。不活性雰囲気は、アルゴンまたはヘリウムまたは真空である。
【0130】
工程3:さらに破碎して製粉し、焼結してネオジム−鉄−ボロン磁石を製造する工程。
【0131】
実施形態1:微量の重希土類粒子の蒸着
【0132】
工程11:原料を配合し、溶融してから、急冷して凝固させかつ鋳片に作製する工程。
【0133】
工程12:所望の重希土類ターゲット材を選択する工程。
【0134】
工程13:ネオジム−鉄−ボロン合金シートと重希土類ターゲット材を別々に物理気相蒸着装置に入れる工程。
【0135】
重希土類ターゲット材は、Dy、TbまたはDy−Tbの少なくとも1種類の純金属、合金または酸化物である。
【0136】
工程14:真空度が2.0×10−2Paより高いまで真空排気し、0.2〜1.0Paになるまでアルゴンを充填する工程。
【0137】
工程15:パラメータを調整し、ネオジム−鉄−ボロンシートを加熱温度300〜500℃で加熱する工程。
【0138】
工程16:物理気相蒸着装置をオンにし、利用物理気相蒸着でターゲット粒子をネオジム−鉄−ボロンシートに蒸着する工程。
【0139】
物理気相蒸着は、マグネトロンスパッタリング蒸着、イオンプレーティング蒸着および蒸発源蒸着を含む。粒子蒸着レートは0.01〜50μm/minである。
【0140】
工程17:物理気相蒸着を停止し、ネオジム−鉄−ボロンシートの温度を室温まで下げた後取り出す工程。
【0141】
工程18:製造したネオジム−鉄−ボロンシートを破碎して製粉し、配合プレス成形、真空焼結、焼戻し熱処理を行い、最終のネオジム−鉄−ボロン磁石を得る工程。
【0142】
実施形態2:高融点粒子の蒸着
【0143】
工程21:原料を配合し、溶融してから、急冷して凝固させかつ鋳片に作製する工程。
【0144】
工程22:所望の高融点ターゲット材を選択する工程。
【0145】
工程23:ネオジム−鉄−ボロン合金シートと高融点ターゲット材を別々に物理気相蒸着装置に入れる工程。
【0146】
高融点ターゲット材は、W、Mo、V、Ti、Ta、Zr、Nb、Co、Cr、Ga等の元素の少なくとも1種類の純金属、合金または酸化物である。
【0147】
工程24:真空度が2.0×10−2Paより高いまで真空排気し、0.2〜1.0Paになるまでアルゴンを充填する。
【0148】
工程25:パラメータを調整し、ネオジム−鉄−ボロンシートを加熱温度300〜500℃で加熱する。
【0149】
工程26:物理気相蒸着装置をオンにし、物理気相蒸着でターゲット粒子をネオジム−鉄−ボロンシートに蒸着する工程。
【0150】
物理気相蒸着は、マグネトロンスパッタリング蒸着、イオンプレーティング蒸着および蒸発源蒸着を含む。粒子蒸着レートは0.01〜50μm/minである。
【0151】
工程27:物理気相蒸着を停止し、ネオジム−鉄−ボロンシートの温度を室温まで下げた後取り出す工程。
【0152】
工程28:製造したネオジム−鉄−ボロンシートを破碎して製粉し、配合プレス成形、真空焼結、焼き戻し熱処理を行い、最終のネオジム−鉄−ボロン磁石を得る工程。
【0153】
実施例9:
(1)原料を配合し、溶融してから、急冷して凝固させかつ鋳片に作製しネオジム−鉄−ボロンシートを製造した。
【0154】
(2)得られたネオジム−鉄−ボロンシートを物理気相蒸着した。
【0155】
Dy金属ターゲット材を選択し、2.0×10−2Paまで真空排気し、0.2Paになるまでアルゴンを充填し、マグネトロンスパッタリングを採用し、スパッタリングパワーを調整して、Dy粒子蒸着レートを0.01μm/minとした。
【0156】
(3)得られたネオジム−鉄−ボロンシートをディスクミルで破砕し、ボールミルで製粉し、配合成形、焼結、熱処理を行い、最終の磁石を得た。
【0157】
本実施例で作製した磁石の磁気エネルギー積と保磁力を磁気特性測定装置で試験し、従来法で作製した磁石と比較した結果を表9に示した。
【0158】
表9
【0159】
実施例10:
(1)原料を配合し、溶融してから、急冷して凝固させかつ鋳片に作製し、ネオジム−鉄−ボロンシートを製造した。
【0160】
(2)得られたネオジム−鉄−ボロンシートを物理気相蒸着した。
【0161】
Tb金属ターゲット材を選択し、5.0×10−3Paまで真空排気し、0.5Paになるまでヘリウムを充填し、ネオジム−鉄−ボロンシートを300℃に加熱し、イオンプレーティングを採用し、アルゴン発射源電流を調整し、Tb粒子蒸着レートを50μm/minとした。
【0162】
(3)得られたネオジム−鉄−ボロンシートに対して、水素解砕、ジェットミル粉砕、配合成形、焼結、熱処理を行い、最終の磁石を得た。
【0163】
本実施例で作製した磁石の磁気エネルギー積と保磁力を磁気特性測定装置で試験し、従来法で作製した磁石と比較した結果を表10に示した。
【0164】
表10
【0165】
実施例11:
(1)原料を配合し、溶融してから、急冷して凝固させかつ鋳片に作製し、ネオジム−鉄−ボロンシートを製造した。
【0166】
(2)得られたネオジム−鉄−ボロンシートを物理気相蒸着した。
【0167】
CoZr金属ターゲット材を選択し、9.0×10−4Paまで真空排気し、ネオジム−鉄−ボロンシートを500℃に加熱した。
【0168】
蒸発蒸着を採用し、蒸着ボート熱源電力を調整し、CoZr原子をガス化蒸発させ、蒸着レートは、3μm/minであった。
【0169】
(3)得られたネオジム−鉄−ボロンシートを水素解砕し、ジェットミル、配合成形、焼結、熱処理を行い、最終の磁石を得た。
【0170】
本実施例で作製した磁石の磁気エネルギー積と保磁力を磁気特性測定装置で試験し、従来法で作製した磁石と比較した結果を表11に示した。
【0171】
表11
【0172】
実施例12:
(1)原料を配合し、溶融してから、急冷して凝固させかつ鋳片に作製し、ネオジム−鉄−ボロンシートを製造した。
【0173】
(2)得られたネオジム−鉄−ボロンシートを物理気相蒸着した。
【0174】
Dyターゲット材、Moターゲット材を選択し、3.0×10−2Paまで真空排気し、0.3Paになるまでアルゴンを充填し、ネオジム−鉄−ボロンシートを420℃に加熱し、マグネトロンスパッタリングを採用し、両種類のターゲット材に対して同時にスパッタリングし、スパッタリングパワーを調整して粒子蒸着レートを0.2μm/minとした。
【0175】
(3)得られたネオジム−鉄−ボロンシートに対して、水素解砕、ジェットミル、配合成形、焼結、熱処理を行い、最終の磁石を得た。
【0176】
本実施例で作製した磁石の磁気エネルギー積と保磁力を磁気特性測定装置で試験し、従来法で作製した磁石と比較した結果を表12に示した。
【0177】
表12
【0178】
実施形態4:
ネオジム−鉄−ボロンシートの製造方法は、具体的に下記の工程を含む。
【0179】
工程1:設計に従って成分原料を配合し、溶融してから、急冷して凝固させかつ鋳片に作製する工程;
【0180】
工程2:物理気相蒸着法でターゲット粒子をネオジム−鉄−ボロンシートに蒸着する工程。
【0181】
物理気相蒸着として、マグネトロンスパッタリング蒸着、イオンプレーティング蒸着または蒸発源蒸着を採用する。物理気相蒸着は、不活性雰囲気で温度300〜500℃、蒸着レート0.01〜50μm/minで行う。不活性雰囲気は、アルゴン、ヘリウム、または、真空である。
【0182】
形態1:
工程11:設計に従って成分原料を配合し、溶融してから、急冷して凝固させかつ鋳片に作製する工程;
【0183】
工程12:ネオジム−鉄−ボロン合金シートと重希土類ターゲット材を別々に物理気相蒸着装置に入れる工程;
【0184】
重希土類ターゲット材は、Dy、TbまたはDy−Tbの少なくとも1種類の純金属、合金または酸化物である。
【0185】
工程13:真空度が2.0×10−2Paより高いまで真空排気し、0.2〜1.0Paになるまでアルゴンを充填する工程;
【0186】
工程14:ネオジム−鉄−ボロンシートを加熱温度300〜500℃で加熱する工程;
【0187】
工程15:物理気相蒸着装置をオンにし、物理気相蒸着で重希土類粒子をネオジム−鉄−ボロンシートに蒸着する工程;
【0188】
物理気相蒸着は、マグネトロンスパッタリング蒸着、イオンプレーティング蒸着および蒸発源蒸着を含む。重希土類粒子蒸着レートは、0.01〜50μm/minである。
【0189】
工程16:物理気相蒸着を停止し、ネオジム−鉄−ボロンシートの温度を室温まで下げた後取り出す工程。
【0190】
形態2:
工程21:設計に従って成分原料を配合し、溶融してから、急冷して凝固させかつ鋳片に作製する工程;
【0191】
工程22:ネオジム−鉄−ボロン合金シートと高融点ターゲット材を別々に物理気相蒸着装置に入れる工程;
【0192】
高融点ターゲット材は、W、Mo、V、Ti、Ta、Zr、Nb、Co、Cr、Ga等の元素の少なくとも1種類の純金属、合金または酸化物である。
【0193】
工程23:真空度が2.0×10−2Paより高いまで真空排気し、0.2〜1.0Paになるまでアルゴンを充填する工程;
【0194】
工程24:ネオジム−鉄−ボロンシートを加熱温度300〜500℃で加熱する工程;
【0195】
工程25:物理気相蒸着装置をオンにし、物理気相蒸着で高融点粒子をネオジム−鉄−ボロンシートに蒸着する工程;
【0196】
物理気相蒸着は、マグネトロンスパッタリング蒸着、イオンプレーティング蒸着および蒸発源蒸着を含む。高融点粒子蒸着レートは、0.01〜50μm/minである。
【0197】
工程26:物理気相蒸着を停止し、ネオジム−鉄−ボロンシートの温度を室温まで下げた後取り出す工程。
【0198】
実施形態1と実施形態2とを同時に実施してネオジム−鉄−ボロンシートに対して物理気相蒸着を行ってもよい。
【0199】
実施例13:
(1)原料を配合し、溶融してから、急冷して凝固させかつ鋳片に作製し、ネオジム−鉄−ボロンシートを製造した。
【0200】
(2)得られたネオジム−鉄−ボロンシートを物理気相蒸着した。
【0201】
Dy金属ターゲット材を選択し、2.0×10−2Paまで真空排気し、0.2Paになるまでアルゴンを充填し、マグネトロンスパッタリングを採用し、スパッタリングパワーを調整して、Dy粒子蒸着レートを0.01μm/minとした。
【0202】
(3)得られたネオジム−鉄−ボロンシートをディスクミルで破砕し、ボールミルで製粉し、配合成形、焼結、熱処理を行い、最終の磁石を得た。
【0203】
本実施例で作製した磁石の磁気エネルギー積と保磁力を磁気特性測定装置で試験し、従来法で作製した磁石と比較した結果を表13に示した。
【0204】
表13
【0205】
実施例14:
(1)原料を配合し、溶融してから、急冷して凝固させかつ鋳片に作製し、ネオジム−鉄−ボロンシートを製造した。
【0206】
(2)得られたネオジム−鉄−ボロンシートを物理気相蒸着した。
【0207】
Tb金属ターゲット材を選択し、5.0×10−3Paまで真空排気し、0.5Paになるまでヘリウムを充填し、ネオジム−鉄−ボロンシートを300℃に加熱し、イオンプレーティングを採用し、アルゴン発射源電流を調整してTb粒子蒸着レートを50μm/minとした。
【0208】
(3)得られたネオジム−鉄−ボロンシートを、水素解砕し、ジェットミル、配合成形、焼結、熱処理を行い、最終の磁石を得た。
【0209】
本実施例で作製した磁石の磁気エネルギー積と保磁力を磁気特性測定装置で試験し、従来法で作製した磁石と比較した結果を表14に示した。
【0210】
表14
【0211】
実施例15:
(1)原料を配合し、溶融してから、急冷して凝固させかつ鋳片に作製し、ネオジム−鉄−ボロンシートを製造した。
【0212】
(2)得られたネオジム−鉄−ボロンシートを物理気相蒸着した。
【0213】
CoZr金属ターゲット材を選択し、9.0×10−4Paまで真空排気し、ネオジム−鉄−ボロンシートを、500℃に加熱した。
【0214】
蒸発蒸着を採用し、蒸着ボート熱源電力を調整し、CoZr原子をガス化蒸発させ、蒸着レートは、3μm/minであった。
【0215】
(3)得られたネオジム−鉄−ボロンシートを、水素解砕し、ジェットミル、配合成形、焼結、熱処理を行い、最終の磁石を得た。
【0216】
本実施例で作製した磁石の磁気エネルギー積と保磁力を磁気特性測定装置で試験し、従来法で作製した磁石と比較した結果を表15に示した。
【0217】
表15
【0218】
実施例16:
(1)原料を配合し、溶融してから、急冷して凝固させかつ鋳片に作製し、ネオジム−鉄−ボロンシートを製造した。
【0219】
(2)得られたネオジム−鉄−ボロンシートを物理気相蒸着した。
【0220】
Dyターゲット材、Moターゲット材を選択し、3.0×10−2Paまで真空排気し、0.3Paになるまでアルゴンを充填した。
【0221】
ネオジム−鉄−ボロンシートを420℃に加熱し、マグネトロンスパッタリングを採用し、両種類のターゲット材に対して同時にスパッタリングし、スパッタリングパワーを調整して粒子蒸着レートを、0.2μm/minとした。
【0222】
(3)前記の工程で得られたネオジム−鉄−ボロンシートを、水素解砕し、ジェットミル、配合成形、焼結、熱処理を行い、最終の磁石を得た。
【0223】
本実施例で作製した磁石の磁気エネルギー積と保磁力を磁気特性測定装置で試験し、従来法で作製した磁石と比較した結果を表16に示した。
【0224】
表16
【0225】
実施形態5:
ネオジム−鉄−ボロン磁粉の製造方法は、具体的には下記の工程を含む:
【0226】
工程1:1μm〜2mmのネオジム−鉄−ボロン磁粉を製造する工程;
【0227】
溶融、キャスティングした後、ネオジム−鉄−ボロン磁石を機械的破砕、水素解砕、または、ジェットミルで破碎してネオジム−鉄−ボロン磁粉を製造する。
【0228】
工程2:所望の高融点ターゲット材を選択し、ネオジム−鉄−ボロン磁粉と高融点ターゲット材を別々に物理气相蒸着装置に入れる工程;
【0229】
高融点ターゲット材は、W、Mo、V、Ti、Ta、Zr、Nb、Co、Cr、Gaからの少なくとも1種類の純金属、合金、または、酸化物である。
【0230】
工程3:真空度が2.0×10−2Paより高いまで真空排気し、0.2〜1.0Paになるまでアルゴンを充填する工程;
【0231】
工程4:パラメータを調整し、ネオジム−鉄−ボロン磁粉を均一に分散させながら、ネオジム−鉄−ボロン磁粉を加熱温度300〜500℃で加熱する工程;
【0232】
工程5:物理気相蒸着装置をオンにし、物理気相蒸着で高融点粒子を分散したネオジム−鉄−ボロン磁粉に蒸着する工程;
【0233】
物理気相蒸着は、マグネトロンスパッタ蒸着、イオンプレーティング蒸着、蒸発源蒸着を含む。高融点粒子の蒸着レートは0.01〜50μm/minである。高融点粒子は、W、Mo、V、Ti、Ta、Zr、Nb、Co、CrまたはGa元素の粒子である。
【0234】
工程6:物理気相蒸着を停止し、ネオジム−鉄−ボロン磁粉温度を室温まで下げた後、磁粉を取り出す工程。
【0235】
実施例17:
(1)原料を配合し、溶融してから、急冷して凝固させかつ鋳片に作製し、ディスクミルで破砕し、ボールミルで製粉し、平均粒子径3.5μmのネオジム−鉄−ボロン磁粉を製造した。
【0236】
(2)得られた磁粉を物理気相蒸着で被覆した。
【0237】
Ti金属ターゲット材を選択し、2.0×10−2Paまで真空排気し、0.2Paになるまでアルゴンを充填し、磁粉を380℃に加熱し、マグネトロンスパッタリングを採用し、スパッタリングパワーを調整してTi粒子の蒸着レートを0.01μm/minとし、ネオジム−鉄−ボロン被覆磁粉の温度を室温に下げた後、磁粉を取り出した。
【0238】
得られた磁粉を、配合成形、焼結、熱処理を行い、最終のネオジム−鉄−ボロン磁石を得た。本実施例で作製した磁石の磁気エネルギー積と保磁力を磁気特性測定装置で試験し、従来法で作製したTi添加量が同じである磁石と比較した結果を、表17に示した。
【0239】
表17
【0240】
実施例18:
(1)原料を配合し、溶融してから、急冷して凝固させかつ鋳片に作製し、水素解砕し、ジェットミルで製粉し、平均粒子径4.1μmのネオジム−鉄−ボロン磁粉を製造した。
【0241】
(2)得られた磁粉を物理気相蒸着で被覆した。
【0242】
Mo金属ターゲット材を選択し、5.0×10−3Paまで真空排気し、0.5Paまでアルゴンを充填し、磁粉を420℃に加熱し、マグネトロンスパッタリングを採用し、スパッタリングパワーを調整してMo粒子の蒸着レートを50μm/minとし、ネオジム−鉄−ボロン被覆磁粉の温度を室温まで下げた後、磁粉を取り出した。
【0243】
得られた磁粉を、配合成形、焼結、熱処理を行い、最終のネオジム−鉄−ボロン磁石を得た。本実施例で作製した磁石の磁気エネルギー積と保磁力を磁気特性測定装置で試験し、従来法で作製したMoの添加量が同じである磁石と比較した結果を、表18に示した。
【0244】
表18
【0245】
実施例19:
(1)原料を配合し、溶融してから、急冷して凝固させかつ鋳片に作製し、水素解砕し、ネオジム−鉄−ボロン磁粉を得た。
【0246】
(2)得られた磁粉を物理気相蒸着で被覆した。
【0247】
CoZr金属ターゲット材を選択し、9.0×10−4Paまで真空排気し、磁粉を300℃に加熱し、蒸発蒸着を採用し、蒸着ボート熱源電力を調整してCoZr原子をガス化蒸発させ、蒸着レートは、3μm/minであり、ネオジム−鉄−ボロン被覆磁粉の温度を室温まで下げた後、磁粉を取り出した。
【0248】
(3)得られた磁粉を、ジェットミルで平均粒子径3.7μmのネオジム−鉄−ボロン磁粉を製造した。
【0249】
製造したネオジム−鉄−ボロン磁粉に対して、配合成形、焼結、熱処理を行い、最終のネオジム−鉄−ボロン磁石を得た。本実施例で作製した磁石の磁気エネルギー積と保磁力を磁気特性測定装置で試験し、従来法で作製したCoZrの添加量が同じである磁石と比較した結果を、表19に示した。
【0250】
表19
【0251】
実施形態6:
重希土類を用いるネオジム−鉄−ボロン磁粉の製造方法は、具体的に下記の工程を含む。
【0252】
工程1:1μm〜2mmのネオジム−鉄−ボロン磁粉を製造する工程;
【0253】
溶融、キャスティングした後、ネオジム−鉄−ボロン磁石を機械的破砕、水素解砕またはジェットミルによって破碎してネオジム−鉄−ボロン磁粉を製造する。
【0254】
工程2:所望の重希土類ターゲット材を選択し、ネオジム−鉄−ボロン磁粉と重希土類ターゲット材を別々に物理気相蒸着装置に入れる工程;
【0255】
重希土類ターゲット材は、Dy、TbまたはDy−Tbの純金属、合金または酸化物である。
【0256】
工程3:真空度が2.0×10−2Paより高いまで真空排気し、0.2〜1.0Paになるまでアルゴンを充填する工程;
【0257】
工程4:パラメータを調整してネオジム−鉄−ボロン磁粉を均一に分散させながら、磁粉を加熱温度300〜500℃で加熱する工程;
【0258】
工程5:物理気相蒸着装置をオンにし、物理気相蒸着で重希土類粒子を分散したネオジム−鉄−ボロン磁粉に蒸着する工程;
【0259】
物理気相蒸着は、マグネトロンスパッタリング蒸着、イオンプレーティング蒸着および蒸発源蒸着を含む。重希土類粒子の蒸着レートは、0.01〜50μm/minである。
【0260】
工程6:物理気相蒸着を停止し、ネオジム−鉄−ボロン磁粉温度を室温まで下げた後、磁粉を取り出す工程。
【0261】
実施例20:
(1)原料を配合し、溶融してから、急冷して凝固させかつ鋳片に作製し、ディスクミルで破砕し、ボールミルで製粉し、平均粒子径3.5μmのネオジム−鉄−ボロン磁粉を得た。
【0262】
(2)得られた磁粉を物理気相蒸着で被覆した。
【0263】
Dy金属ターゲット材を選択し、2.0×10−2Paまで真空排気し、0.2Paになるまでアルゴンを充填し、磁粉を380℃に加熱し、マグネトロンスパッタリングを採用し、スパッタリングパワーを調整してDy粒子の蒸着レートを0.01μm/minとし、ネオジム−鉄−ボロン被覆磁粉の温度を室温まで下げた後、磁粉を取り出した。
【0264】
(3)得られた磁粉を、配合成形、焼結、熱処理を行い、最終の磁石を得た。
【0265】
本実施例で作製した磁石の磁気エネルギー積と保磁力を磁気特性測定装置で試験し、従来法で作製した磁石と比較した結果を、表20に示した。
【0266】
表20
【0267】
実施例21:
(1)原料を配合し、溶融してから、急冷して凝固させかつ鋳片に作製し、水素解砕し、ジェットミルで製粉し、平均粒子径4.1μmのネオジム−鉄−ボロン磁粉を得た。
【0268】
(2)得られた磁粉を物理気相蒸着で被覆した。
【0269】
Tb金属ターゲット材を選択し、5.0×10−3Paまで真空排気し、0.5Paになるまでヘリウムを充填し、磁粉を420℃に加熱し、イオンプレーティング(ターゲット材から分離した原子は、ほとんどがイオン状態であり、より高いエネルギーを示す。ネオジム−鉄−ボロン磁粉の表面への結合はより優れた)を採用し、アルゴン発射源電流を調整してTb粒子の蒸着レートを50μm/minとし、ネオジム−鉄−ボロン被覆磁粉の温度を室温まで下げた後、磁粉を取り出した。
【0270】
(3)得られた磁粉を、配合成形、焼結、熱処理を行い、最終のネオジム−鉄−ボロン磁石を得た。
【0271】
本実施例で作製した磁石の磁気エネルギー積と保磁力を磁気特性測定装置で試験し、従来法で作製した磁石と比較した結果を表21に示した。
【0272】
表21
【0273】
実施例22:
(1)原料を配合し、溶融してから、急冷して凝固させかつ鋳片に作製し、水素解砕し、ネオジム−鉄−ボロン磁粉を得た。
【0274】
(2)得られた磁粉を物理気相蒸着で被覆した。
【0275】
DyTb金属ターゲット材を選択し、9.0×10−4Paまで真空排気し、磁粉を300℃に加熱し、蒸発蒸着を採用し、蒸着ボート熱源電力を調整してDyTb原子を気化蒸発させ、蒸着レートが3μm/minであり、ネオジム−鉄−ボロン被覆磁粉の温度を室温まで下げた後、磁粉を取り出した。
【0276】
(3)得られた磁粉を、ジェットミルで平均粒子径3.7μmのネオジム−鉄−ボロン磁粉を製造した。
【0277】
(4)製造したネオジム−鉄−ボロン磁粉に対して、配合成形、焼結、熱処理を行い、最終のネオジム−鉄−ボロン磁石を得た。
【0278】
本実施例で作製した磁石の磁気エネルギー積と保磁力を磁気特性測定装置で試験し、従来法で作製した磁石と比較した結果を表22に示した。
【0279】
表22
【0280】
実施例23:
(1)原料を配合し、溶融してから、急冷して凝固させかつ鋳片に作製し、水素解砕し、ジェットミルで製粉し、平均粒子径4.3μmのネオジム−鉄−ボロン合金磁粉を得た。
【0281】
(2)得られた磁粉を物理気相蒸着で被覆した。
【0282】
Dyターゲット材を選択し、3.0×10−2Paまで真空排気し、0.3Paになるまでアルゴンを充填し、磁粉を500℃に加熱し、マグネトロンスパッタリングを採用し、スパッタリングパワーを調整してDy粒子の蒸着レートを0.2μm/minとし、ネオジム−鉄−ボロン被覆磁粉の温度を室温まで下げた後、磁粉を取り出した。
【0283】
(3)工程(2)にて得られた磁粉を、配合成形、焼結、熱処理を行い、最終のネオジム−鉄−ボロン磁石を得た。
【0284】
本実施例で作製した磁石の磁気エネルギー積と保磁力を磁気特性測定装置で試験し、従来法で作製した磁石と比較した結果を表23に示した。
【0285】
表23
【0286】
実施形態7:
低含有量の重希土類を含有する高保磁力ネオジム−鉄−ボロン磁石の製造方法は、具体的に下記の工程を含む:
【0287】
工程1:設計に従って成分原料を配合し、溶融してから、急冷して凝固させかつ鋳片に作製する工程;
【0288】
工程2:ネオジム−鉄−ボロン鋳片から、水素解砕、不均化反応、ジェットミルでの製粉を経って、ネオジム−鉄−ボロン微粉を得、ネオジム−鉄−ボロン微粉の平均粒子径D50は、300nm〜20μmである工程;
【0289】
工程3:熱抵抗蒸発蒸着を採用し、重希土類元素粒子または高融点元素粒子をネオジム−鉄−ボロン微粉に蒸着する工程;
【0290】
重希土類元素粒子としてDyまたはTb元素の粒子を採用し、高融点元素粒子としてW、Mo、V、Ti、Ta、Zr、Nb、Co、CrまたはGa元素の粒子を採用する。
【0291】
熱抵抗蒸発蒸着において、ネオジム−鉄−ボロン微粉と重希土類熱抵抗線とを別々に熱抵抗蒸発蒸着装置に置き、熱抵抗蒸発真空度は10Pa〜10Paであり、パラメータを調整してネオジム−鉄−ボロン微粉を均一に分散させ、重希土類熱抵抗線を加熱することで重希土類元素粒子を蒸発させ、重希土類元素粒子をネオジム−鉄−ボロン微粉に蒸着し、ネオジム−鉄−ボロン微粉の温度を室温まで下げた後取り出した。重希土類熱抵抗線において、重希土類元素は、Dy、Tbからの少なくとも1種類の元素の純金属または合金である。
【0292】
熱抵抗蒸発蒸着において、ネオジム−鉄−ボロン微粉と高融点熱抵抗線を熱抵抗蒸発蒸着装置に置き、熱抵抗蒸発真空度は10Pa〜10Paであり、パラメータを調整してネオジム−鉄−ボロン微粉を均一に分散させ、高融点熱抵抗線を加熱して高融点元素粒子を蒸発させ、高融点元素粒子をネオジム−鉄−ボロン微粉に蒸着し、ネオジム−鉄−ボロン微粉の温度を室温まで下げた後取り出した。高融点熱抵抗線は、元素W、Mo、V、Ti、Ta、Zr、Nb、Co、CrまたはGaからの少なくとも1種類の元素の純金属または合金である。
【0293】
工程4:得られたネオジム−鉄−ボロン微粉を配合プレス成形、真空焼結、熱処理を経って、最終のネオジム−鉄−ボロン磁石を得る工程。
【0294】
実施例24:
(1)原料を配合し、溶融してから、急冷して凝固させかつ鋳片に作製し、ネオジム−鉄−ボロン鋳片を得た。
【0295】
(2)ネオジム−鉄−ボロン鋳片に対して、水素解砕、不均化反応、ジェットミルでの製粉を経って、平均粒子径D50が400nmであるネオジム−鉄−ボロン微粉を得た。
【0296】
(3)ネオジム−鉄−ボロン微粉とDy熱抵抗線とを別々に熱抵抗蒸発蒸着装置に置き、真空度は、10Paであり、パラメータを設定してネオジム−鉄−ボロン微粉を均一に分散させ、熱抵抗線を加熱して蒸発させ、Dy粒子をネオジム−鉄−ボロン微粉に蒸着させ、ネオジム−鉄−ボロン微粉の温度を室温まで下げた後取り出した。
【0297】
(4)得られたネオジム−鉄−ボロン微粉に対して、配合成形、焼結、熱処理を行い、最終の磁石を得た。本実施例で作製した磁石の磁気エネルギー積と保磁力を磁気特性測定装置で試験し、従来法で作製した磁石と比較した結果を表24に示した。
【0298】
表24
【0299】
実施例25:
(1)原料を配合し、溶融してから、急冷して凝固させかつ鋳片に作製し、ネオジム−鉄−ボロン鋳片を得た。
【0300】
(2)ネオジム−鉄−ボロン鋳片を水素解砕、不均化反応、ジェットミルでの製粉を経って、平均粒子径D50が800nmであるネオジム−鉄−ボロン微粉を得た。
【0301】
(3)ネオジム−鉄−ボロン微粉とTb熱抵抗線とを別々に熱抵抗蒸発蒸着装置に置き、真空度は、10Paであり、パラメータを設定してネオジム−鉄−ボロン微粉を均一に分散させ、熱抵抗線を加熱して蒸発させ、Tb粒子をネオジム−鉄−ボロン微粉に蒸着させ、ネオジム−鉄−ボロン微粉の温度を室温まで下げた後取り出した。
【0302】
(4)得られたネオジム−鉄−ボロン微粉を、配合成形、焼結、熱処理を行い、最終の磁石を得た。本実施例で作製した磁石の磁気エネルギー積と保磁力を磁気特性測定装置で試験し、従来法で作製した磁石と比較した結果を表25に示した。
【0303】
表25
【0304】
実施例26:
(1)原料を配合し、溶融してから、急冷して凝固させかつ鋳片に作製し、ネオジム−鉄−ボロン鋳片を得た。
【0305】
(2)ネオジム−鉄−ボロン鋳片に対して、水素解砕、不均化反応、ジェットミルでの製粉を経って、平均粒子径D50が1μmであるネオジム−鉄−ボロン微粉を得た。
【0306】
(3)ネオジム−鉄−ボロン微粉とCoZr熱抵抗線とを別々に熱抵抗蒸発蒸着装置に置き、真空度は10Paであり、パラメータを設定してネオジム−鉄−ボロン微粉を均一に分散させ、熱抵抗線を加熱して蒸発させ、CoZr粒子をネオジム−鉄−ボロン微粉に蒸着させ、ネオジム−鉄−ボロン微粉の温度を室温まで下げた後取り出した。
【0307】
(4)得られたネオジム−鉄−ボロン微粉に対して、配合成形、焼結、熱処理を行い、最終の磁石を得た。本実施例で作製した磁石の磁気エネルギー積と保磁力を磁気特性測定装置で試験し、従来法で作製した磁石と比較した結果を表26に示した。
【0308】
表26
【0309】
実施形態8:
ネオジム−鉄−ボロン微粉の製造方法は、具体的に下記の工程を含む:
【0310】
工程1:設計に従って成分原料を配合し、溶融してから、急冷して凝固させかつ鋳片に作製する工程;
【0311】
工程2:ネオジム−鉄−ボロン鋳片を水素解砕、不均化反応、ジェットミルでの製粉を経って、ネオジム−鉄−ボロン微粉を得、ネオジム−鉄−ボロン微粉の平均粒子径D50は300nm〜20μmである工程;
【0312】
工程3:熱抵抗蒸発蒸着法を採用し、重希土類元素粒子または高融点元素粒子をネオジム−鉄−ボロン微粉に蒸着させる工程;
【0313】
高融点粒子は、W、Mo、V、Ti、Ta、Zr、Nb、Co、CrまたはGa元素の粒子であり、重希土類粒子は、元素DyまたはTbの粒子である。
【0314】
熱抵抗蒸発蒸着において、ネオジム−鉄−ボロン微粉と重希土類熱抵抗線とを、別々に熱抵抗蒸発蒸着装置に置き、熱抵抗蒸発の真空度は、10Pa〜10Paであり、パラメータを調整してネオジム−鉄−ボロン微粉を均一に分散させ、重希土類熱抵抗線を加熱して重希土類元素粒子を蒸発させ、重希土類元素粒子をネオジム−鉄−ボロン微粉に蒸着させ、ネオジム−鉄−ボロン微粉の温度を室温まで下げた後取り出した。重希土類熱抵抗線において、重希土類元素は、Dy、Tbの少なくとも1種類の元素の純金属または合金である。
【0315】
熱抵抗蒸発蒸着において、ネオジム−鉄−ボロン微粉と高融点熱抵抗線とを別々に熱抵抗蒸発蒸着装置に置き、熱抵抗蒸発の真空度は、10Pa〜10Paであり、パラメータを調整してネオジム−鉄−ボロン微粉を均一に分散させ、高融点熱抵抗線を加熱して高融点元素粒子を蒸発させ、高融点元素粒子をネオジム−鉄−ボロン微粉に蒸着させ、ネオジム−鉄−ボロン微粉の温度を室温まで下げた後取り出す。高融点熱抵抗線は、元素W、Mo、V、Ti、Ta、Zr、Nb、Co、CrまたはGaからの少なくとも1種類の元素の純金属または合金である。
【0316】
工程4:ネオジム−鉄−ボロン微粉の温度を室温まで下げた後、微粉を取り出す工程。
【0317】
実施例27:
(1)原料を配合し、溶融してから、急冷して凝固させかつ鋳片に作製し、水素解砕し、不均化反応させ、ジェットミルで製粉し、平均粒子径D50が400nmであるネオジム−鉄−ボロン微粉を得た。
【0318】
(2)ネオジム−鉄−ボロン微粉とDyTb熱抵抗線を別々に熱抵抗蒸発蒸着装置に置き、真空度は10Paであり、パラメータを設定してネオジム−鉄−ボロン微粉を均一に分散させ、熱抵抗線を加熱して蒸発させ、DyまたはTb粒子をネオジム−鉄−ボロン微粉に蒸着させ、被覆微粉の温度を室温まで下げた後、ネオジム−鉄−ボロン微粉を取り出した。
【0319】
(3)得られた微粉を、配合成形、焼結、熱処理を行い、最終のネオジム−鉄−ボロン磁石を得た。本実施例で作製した磁石の磁気エネルギー積と保磁力を磁気特性測定装置で試験し、従来法で作製したDyTb添加量が同じである磁石と比較した結果を、表27に示した。
【0320】
表27
【0321】
実施例28:
(1)原料を配合し、溶融してから、急冷して凝固させかつ鋳片に作製し、水素解砕し、不均化反応、ジェットミルで製粉し、平均粒子径D50が800nmであるネオジム−鉄−ボロン微粉を得た。
【0322】
(2)ネオジム−鉄−ボロン微粉とTb熱抵抗線とを別々に熱抵抗蒸発蒸着装置に置き、真空度は、10Paであり、パラメータを設定してネオジム−鉄−ボロン微粉を均一に分散させ、熱抵抗線を加熱して蒸発させ、Tb粒子をネオジム−鉄−ボロン微粉に蒸着させ、被覆微粉の温度を室温まで下げた後、ネオジム−鉄−ボロン微粉を取り出した。
【0323】
(3)得られた微粉に対して、配合成形、焼結、熱処理を行い、最終のネオジム−鉄−ボロン磁石を得た。本実施例で作製した磁石の磁気エネルギー積と保磁力を磁気特性測定装置で試験し、従来法で作製したTb添加量が同じである磁石と比較した結果を、表28に示した。
【0324】
表28
【0325】
実施例29:
(1)原料を配合し、溶融してから、急冷して凝固させかつ鋳片に作製し、水素解砕し、不均化反応させ、ジェットミルで製粉し、平均粒子径D50が1μmであるネオジム−鉄−ボロン微粉を得た。
【0326】
(2)ネオジム−鉄−ボロン微粉とCoZr熱抵抗線とを、別々に熱抵抗蒸発蒸着装置に置き、真空度は、10Paであり、パラメータを設定してネオジム−鉄−ボロン微粉を均一に分散させ、熱抵抗線を加熱して蒸発させ、CoZr粒子をネオジム−鉄−ボロン微粉に蒸着させ、被覆微粉の温度を室温まで下げた後、ネオジム−鉄−ボロン微粉を取り出した。
【0327】
(3)製造したネオジム−鉄−ボロン微粉を、配合成形、焼結、熱処理を行い、最終のネオジム−鉄−ボロン磁石を得た。本実施例で作製した磁石の磁気エネルギー積と保磁力を磁気特性測定装置で試験し、従来法で作製したCoZr添加量が同じである磁石と比較した結果を、表29に示した。
【0328】
表29
【0329】
本発明で使用される用語は説明的なかつ例示的ものであり、本発明に限定させるものではない。本発明は、その趣旨を逸脱せずに様々な形で実施することができる。前記の実施例は、その詳細に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって定義される要旨で広く解釈されるべきである。したがって、特許請求の範囲またはその均等的な範囲内にあるすべての変更および修正は、添付の特許請求の範囲によって網羅されることが意図されている。
【産業上の利用可能性】
【0330】
本発明は、重希土類粒子または高融点粒子を、磁石の粒界に均一に分散させることによって、保磁力が増大し、磁石結晶粒が微細化され、重希土類使用量が減少し、ネオジム−鉄−ボロン磁石の保磁力が著しく改善され、そして重希土類元素の使用量が大幅に減少し、磁石内の酸素含有量を低減しながら、ネオジム−鉄−ボロン磁石の製造コストを低減する。