【実施例】
【0031】
続いて、本発明の生体音取得装置の実施例について説明する。以下では、本発明の生体音取得装置の実施例が適用された電子聴診器1を用いて説明を進める。
【0032】
(1)電子聴診器1の全体構成
はじめに、
図1を参照しながら、本実施例の電子聴診器1の全体構成について説明する。
図1は、本実施例の電子聴診器1の全体構成を示すブロック図である。
【0033】
図1に示すように、上述した実施形態における「生体音取得装置」の一具体例である電子聴診器1は、上述した実施形態における「取得部」の一具体例である振動センサ11と、バンドパスフィルタ12と、遮断周波数調整部13と、パワーアンプ14と、音量調整部15と、イヤフォン16とを備えている。
【0034】
振動センサ11は、生体3から発せられる生体音(例えば、呼吸音等)を取得可能なセンサである。本実施例では、振動センサ11は、生体音に起因して発生する後述する保持板223の振動(言い換えれば、変位)を検出することで、生体音を取得する。このような振動センサ11の一例として、加速度センサがあげられる。振動センサ11で取得された生体音を示す生体音信号は、バンドパスフィルタ12に出力される。バンドパスフィルタ12は、振動センサ11から入力される生体音信号のうち、所望の周波数帯域の信号成分のみを通過させるフィルタである。バンドパスフィルタ12で遮断される遮断周波数は、遮断周波数調整部13によって調整される。バンドパスフィルタ12を通過した生体音信号は、パワーアンプ14に出力される。パワーアンプ14は、生体音信号の強度を、設定されたゲインに応じて変化させる。パワーアンプ14のゲインは、音量調整部15によって調整される。パワーアンプ14を通過した生体音信号は、イヤフォン16に出力される。イヤフォン16は、生体音信号が示す生体音を音として出力する。
【0035】
振動センサ11は、電子聴診器1のチェストピース2に収容される。チェストピース2は、聴診のために生体3に押し当てられる部品である。本実施例では、チェストピース2は、振動センサ11が取得する雑音(つまり、取得対象である生体音とは異なる音であり、例えば環境音等)を低減することが可能な構造を有している。以下、チェストピース2の構造について更に説明を進める。尚、振動センサ11に加えて、バンドバスフィルタ12、遮断周波数調整部13、パワーアンプ14及び音量調整部15の少なくとも一つが、チェストピース2に収容されていてもよい。
【0036】
(2)電子聴診器1のチェストピース2の構造
続いて、
図2から
図4を参照しながら、電子聴診器1のチェストピース2の構造について説明する。
図2は、斜め上方から観察したチェストピース2の外観を示す斜視図である。
図3は、斜め下方から観察したチェストピース2の外観を示す斜視図である。
図4は、チェストピース2の断面を示す断面図である。
【0037】
図2から
図4に示すように、チェストピース2は、上述した実施形態における「第1部材」の一具体例である筐体21と、上述した実施形態における「第2部材」の一具体例である筐体22と、グリップ23とを備える。
【0038】
筐体21は、フレーム211と、複数の梁212と、フレーム213とを備える。フレーム211及び213の夫々は、円筒状又はリング状の部材である。複数の梁212の夫々は、フレーム211からフレーム213に向かって延びる梁状の(言いかえれば、棒状の)部材である。複数の梁212の夫々の一端は、フレーム211に連結され、複数の梁212の夫々の他端は、フレーム213に連結される。複数の梁212は、フレーム211及び213の周方向において同一間隔で並ぶが、異なる間隔で並んでいてもよい。フレーム213は、生体音が取得される際にユーザが掴むグリップ23に連結される。
【0039】
筐体22は、フレーム221と、複数の梁222と、保持板223とを備える。尚、
図5に、筐体22の平面図を示す。フレーム221は、円筒状又はリング状の部材である。フレーム221は、筐体21のフレーム211に直接的に接続される。但し、フレーム221は、フレーム211との間に中間部材を介して間接的に接続されてもよい。筐体21と筐体22とが接続される結果、筐体21及び22は、筐体21及び22の内部に位置する内部空間24を規定する。
【0040】
複数の梁222の夫々は、フレーム221からフレーム221の中心(つまり、フレーム221が規定する円形の開口の中心)に向かって延びる梁状の(言いかえれば、棒状の)部材である。言い換えれば、複数の梁222は、フレーム221の中心から放射状に広がる。複数の梁222は、弾性を有する部材(例えば、樹脂や金属等)であることが好ましい。複数の梁222は、柔軟性を有する部材(例えば、樹脂や金属等)であることが好ましい。複数の梁222は、フレーム221及び223の周方向において同一間隔で並ぶが、異なる間隔で並んでいてもよい。複数の梁222の夫々の一端は、フレーム221に連結され、複数の梁222の夫々の他端は、保持板223に連結される。従って、複数の梁212は、保持板223を支持する。保持板223は、板状(
図2から
図3に示す例では、円板状)の部材である。保持板223の+Z側の面(つまり、内部空間24に面する面であり、以降、“裏面”と称する)には、振動センサ11が設置される。このため、振動センサ11は、内部空間24内において保持板223によって保持される。
【0041】
保持板223の−Z側の面(つまり、内部空間24に面しない面であり、以降、“表面”と称する)は、生体音が取得される際に生体の体表に押し当てられる面である。保持板223が生体の体表に押し当てられると、生体音に応じた振動が保持板223に生ずる。振動センサ11は、この保持板223の振動を検出することで、生体音を取得する。振動センサ11が取得した生体音を示す生体音信号は、グリップ23の内部の空洞等に設定された信号線を介して、上述したバンドパスフィルタ12へと出力される。
【0042】
筐体21には更に、夫々が上述した実施形態における「連絡部」の一具体例である複数の連絡孔(つまり、開口ないしは貫通孔)214が形成されている。各連絡孔214は、フレーム211、2つの梁212及びフレーム213によって囲まれている。つまり、各連絡孔214の外縁は、フレーム211、2つの梁212及びフレーム213によって規定されている。逆に言えば、フレーム211、複数の梁212及びフレーム213の形状は、複数の連絡孔214が筐体21に形成されるように設計されている。
【0043】
筐体22には更に、夫々が上述した実施形態における「連絡部」の一具体例である複数の孔(つまり、開口ないしは貫通孔)224が形成されている。各孔224は、フレーム221、2つの梁222及び保持板223によって囲まれている。つまり、各孔224の外縁は、フレーム221、2つの梁222及び保持板223によって規定されている。逆に言えば、フレーム221、2つの梁222及び保持板223の形状は、複数の孔224が筐体22に形成されるように設計されている。
【0044】
連絡孔214は、筐体21及び22の外部に位置する外部空間(つまり、チェストピース2の外部に位置する外部空間)25と、筐体21及び22の内部に位置する内部空間24とを連絡している。連絡孔214が外部空間25と内部空間24とを連絡した結果、連絡孔214を介して、外部空間25から内部空間24に対して音が伝達可能となる。例えば、連絡孔214を介して、外部空間25で生じた音(例えば、雑音)が、内部空間24にも伝達可能となる。更には、内部空間24に保持板223(特に、その裏面)が面しているがゆえに、連絡孔214を介して、外部空間25で生じた音(例えば、雑音)が、保持板223(特に、その裏面)にも伝達可能となる。つまり、連絡孔214は、外部空間25から内部空間24(更には、内部空間24に面している部材)に対して音を伝達するために筐体21に形成される。従って、本実施例における「外部空間25と内部空間24とを連絡する」ことは、「外部空間25で生じた音(例えば、雑音)を内部空間24(更には、内部空間24に面している部材)に伝達させる」ことと実質的に等価である。
【0045】
連絡孔224もまた、連絡孔214と同様に、外部空間25と内部空間24とを連絡している。従って、連絡孔214のみならず、連絡孔224を介しても、外部空間25から内部空間24に対して音が伝達可能となる。
【0046】
(3)振動センサ11が取得する雑音の低減効果
次に、本実施例の電子聴診器1が享受可能な技術的効果(つまり、振動センサ11が取得する雑音の低減効果)について、
図6を参照して説明する。
図6は、連絡孔214を介して外部空間25から内部空間24に伝達される雑音と、連絡孔224を介して外部空間25から内部空間24に伝達される雑音とが相殺される様子を示す概念図である。
【0047】
図6に示すように、生体3からは、取得すべき生体音と共に雑音(例えば、環境音であり、特に、外部空間25で生じた雑音)が保持板223に伝達される。このため、仮に何らの対策も施さなければ(具体的には、連絡孔214及び224が形成されなければ)、保持板223は、生体音のみならず雑音によっても振動してしまう。その結果、生体音に混じって多くの雑音が振動センサ11によって取得されてしまる。このため、生体音に基づく診断等を正確に行えなくなってしまうおそれがある。
【0048】
しかるに本実施例では、既に説明したように、筐体21に連絡孔214が形成されており、且つ、筐体22に連絡孔224が形成されている。このため、
図6に示すように、外部空間25で生じた雑音は、連絡孔214を介して(つまり、電子聴診器1を介して)保持板223に伝達される。更に、外部空間25で生じた雑音は、連絡孔224を介して(つまり、生体3を介して)保持板223に伝達される(或いは、一部の雑音は連絡孔224を介することなく保持板223に伝達される)。ここで、連絡孔224を介して保持板223に伝達される雑音は、連絡孔214を介して保持板223に伝達される雑音と比較して、生体3の内部を介して伝達されることに起因して、その位相が反転している。このため、保持板223上において、連絡孔214を介して伝達される雑音と、連絡孔224を介して伝達される雑音とが相殺し合う。その結果、雑音に起因する保持板223の振動が弱められる。従って、振動センサ11が取得する雑音は小さくなる。
【0049】
更に、外部空間25で生じた雑音は、連絡孔214及び224の夫々を介して、内部空間24にも伝達される。このため、内部空間24においても、連絡孔214を介して伝達される雑音と、連絡孔224を介して伝達される雑音とが相殺し合う。このため、内部空間24内を伝搬する雑音自体も弱められる。このため、内部空間24を介して保持板223に到達する雑音に起因する保持板223の振動が弱められる。従って、振動センサ11が取得する雑音は小さくなる。
【0050】
一方で、生体音については、保持板223の表面に伝達される。このため、雑音とは異なって、生体音は、保持板223上で相殺されることはない。つまり、生体音は、振動センサ11で取得される。この結果、振動センサ11では、雑音が低減された状態で、好適に生体音を取得することが可能となる。
【0051】
このような雑音の低減効果を具体的に検証するために、本願発明者は、外部スピーカーからホワイトノイズを出力した状態で保持板223を生体3に押し当てた時に取得される雑音を測定する実験を行った。実験によって得られた雑音の強度(つまり、振動センサ11の振動の強度であり、実質的には、振動センサ11の加速度)が
図7に示されている。具体的には、
図7において、点線は、上述したチェスとピース2に代えて連絡孔214及び224が形成されていないチェストピース2a(
図8(a)及び
図8(b)参照)を備える第1比較例の電子聴診器によって取得された周辺雑音の強度を、周波数別に示す。更に、
図7において、実線は、連絡孔214及び224の全てを有する本実施例の生体音取得装置1によって取得された周辺雑音の強度を、周波数別に示す。
【0052】
図7に示すように、第1比較例の電子聴診器によって取得された雑音の強度と比較して、本実施例の生体音取得装置によって取得された雑音の強度(つまり、振動の強度であり、加速度)が小さくなることが実証された。つまり、連絡孔214を筐体21に形成し且つ連絡孔224を筐体22に形成することで、振動センサ11が取得する雑音を効果的に低減可能であることが実証された。尚、第1比較例の電子聴診器によって取得された雑音の強度が大きくなる理由は、連絡孔214及び224が形成されていないがゆえに、外部空間25で生じた雑音が、内部空間24や保持板223において相殺されないからであると推定される。
【0053】
尚、振動センサ11に代えて生体音を音として直接的に検出するマイクロフォンを備える第2比較例の電子聴診器では、外部空間25で生じた雑音が連絡孔214を介して内部空間24に伝達されると、当該雑音は、連絡孔224を介して伝達される雑音と相殺される前に、マイクロフォンによって音として直接的に検出されてしまう可能性がある。同様に、外部空間25で生じた雑音が連絡孔224を介して内部空間24に伝達されると、当該雑音は、連絡孔214を介して伝達される雑音と相殺される前に、マイクロフォンによって音として直接的に検出されてしまう可能性がある。このため、第2比較例の電子聴診器では、筐体21及び22に夫々連絡孔214及び224が形成されると、マイクロフォンが取得する雑音の低減効果が薄れる可能性がある。しかるに、振動センサ11を備える本実施例の電子聴診器1では、雑音が振動センサ11によって音として直接的に検出されることはない。つまり、本実施例の電子聴診器1では、雑音が保持板223の振動に一旦変換された後に、保持板223の振動が雑音を示すパラメータとして振動センサ11によって検出されることになる。このため、雑音が保持板223の振動に変換される際に(或いは、前に)、連絡孔214を介して伝達される雑音(或いは、当該雑音に起因した振動)と、連絡孔224を介して伝達される雑音(或いは、当該雑音に起因した振動)とは、内部空間24や保持板223において適切に相殺し合う。従って、本実施例の電子聴診器1では、振動センサ11が取得する雑音の低減効果が相対的に高くなる。
【0054】
尚、外部空間25で生じた雑音を連絡孔214及び224を介して内部空間24に伝達することで雑音の低減効果が得られることを考慮すれば、連絡孔214及び224の夫々は、相対的に大きいことが好ましい。尚、本願発明者等の実験によって、連絡孔214及び224の夫々が大きくなればなるほど、雑音の低減効果が大きくなることが確認されている。従って、連絡孔214及び224の夫々は、雑音の低減効果が適切に得られるような適切な大きさを有することが好ましい。
【0055】
このような連絡孔214の大きさに関して、本実施例では、連絡孔214の外縁を規定する梁213は、梁状の部材である。このため、連絡孔214の外縁が面状の部材によって規定される場合と比較して、相対的に大きな連絡孔214が形成可能という点で有益である。連絡孔224の大きさについても同様である。但し、振動センサ11が取得する雑音の低減効果は、任意の大きさの連絡孔214及び224が任意の数だけ夫々筐体21及び22に形成されている限りは享受可能である。このため、筐体21は、少なくとも一つの孔214が形成されている限りはどのような構造を有していてもよい。同様に、筐体22は、少なくとも一つの孔224が形成されている限りはどのような構造を有していてもよい。
【0056】
また、梁222が梁状の部材である(更には、弾性や柔軟性を有する部材である)ことに関連して、本実施例では、生体音を取得するために保持板223が生体に押し当てられた際に、保持板223と接触する生体の体表の凹凸や傾き等に応じて、複数の梁222が柔軟に変形する。その結果、このような複数の梁222によって支持される保持板223(更には、保持板223が保持する振動センサ11)は、生体の体表の凹凸や傾き等に応じた適切な姿勢を維持することができる。尚、保持板223を生体の体表に押し当てたときに当該体表への接触圧がある程度必要であることから、複数の梁222は、保持板223が生体の体表に押し当てられた場合に生体の体表に対して反力を付与することが可能な状態で保持板223を支持していることが好ましい。
【0057】
(4)変形例
(4−1)第1変形例
上述したように、振動センサ11を保持する保持板223は、複数の梁222によって支持されている。この場合、保持板223は、複数の梁222のバネ定数(或いは、弾性係数)と保持板223の質量とで定まる共振周波数で共振する可能性がある。保持板223が共振すると、共振に起因した振動が振動センサ11によって検出されるがゆえに、振動センサ11は、共振に起因した雑音を取得してしまう。
【0058】
そこで、第1変形例では、保持板223の共振を防止する(つまり、保持板223が共振する可能性を小さくする)ための対策が電子聴診器1(特に、チェストピース2)に施される。以下、保持板223の共振を防止するための第1の対策から第3の対策について順に説明する。
【0059】
(4−1−1)保持板223の共振を防止するための第1の対策
保持板223の共振を防止するための第1の対策として、複数の梁222のうちの少なくとも2つの梁222の固有振動数を異ならしめる対策が採用可能である。この場合、筐体22は、固有振動数が互いに異なる少なくとも2つの梁222を備える。その結果、複数の梁222の固有振動数が全て同一である場合と比較して、保持板223が共振する可能性が小さくなる。つまり、保持板223の共振が適切に防止される。
【0060】
第1の対策が施された筐体22の一例として、
図9(a)に示すように、幅(つまり、延伸方向に直交する方向に沿ったサイズ)が互いに異なる少なくとも2つの梁222a−1及び222a−2を備える筐体22aがあげられる。第1の対策が施された筐体22の一例として、
図9(b)に示すように、長さ(つまり、延伸方向に沿ったサイズ)が互いに異なる少なくとも2つの梁222b−1及び222b−2を備える筐体22aがあげられる。第1の対策が施された筐体22の一例として、図示しないものの、厚さが互いに異なる少なくとも2つの梁222c−1及び222c−2を備える筐体22cがあげられる。第1の対策が施された筐体22の一例として、図示しないものの、弾性係数が互いに異なる少なくとも2つの梁222d−1及び222d−2を備える筐体22dがあげられる。
【0061】
(4−1−2)保持板223の共振を防止するための第2の対策
本願発明者等の実験によれば、複数の梁222の全てが均一幅で直線状に延びる場合に保持板223が共振しやすくなることが判明している。そこで、保持板223の共振を防止するための第2の対策として、複数の梁222のうちの少なくとも一つの形状を、均一幅で直線状に延びる形状とは異なる形状にする対策が採用可能である。この場合、筐体22は、均一幅で直線状に延びる形状とは異なる形状を有する少なくとも一つの梁222を備える。その結果、複数の梁222の全てが均一幅で且つ直線状に延びる場合と比較して、保持板223が共振する可能性が小さくなる。つまり、保持板223の共振が適切に防止される。
【0062】
第2の対策が施された筐体22の一例として、
図10(a)に示すように、曲線状に延びる少なくとも一つの梁222eを備える筐体22eがあげられる。第2の対策が施された筐体22の一例として、
図10(b)に示すように、幅が変化しながら延びる少なくとも一つの梁222fを備える筐体22fがあげられる。第2の対策が施された筐体22の一例として、
図10(c)に示すように、曲線状に延びながら分岐する少なくとも一つの梁222gを備える筐体22gがあげられる。第2の対策が施された筐体22の一例として、
図10(d)に示すように、直線状に延びながら分岐する少なくとも一つの梁222hを備える筐体22hがあげられる。
【0063】
(4−1−3)保持板223の共振を防止するための第3の対策
本願発明者等の実験によれば、複数の梁222が等角度に(つまり、等間隔に)並ぶように分布する場合に保持板223が共振しやすくなることが判明している。そこで、保持板223の共振を防止するための第3の対策として、第1の梁222と当該第1の梁222に隣接する第2の梁222との間の間隔(つまり、第1の梁222と第2の梁222とがなす角度)と、第2の梁222と当該第2の梁222に隣接する第3の梁222との間の間隔(つまり、第2の梁222と第3の梁222とがなす角度)とを異ならしめる対策が採用可能である。例えば、
図11に示す例で言えば、梁222i−1と梁222i−2との間の間隔D1(つまり、角度θ1)と、梁222i−2と梁222i−3との間の間隔D2(つまり、角度θ2)とが異なっている。その結果、複数の梁222が等角度に分布する場合と比較して、保持板223が共振する可能性が小さくなる。つまり、保持板223の共振が適切に防止される。
【0064】
(4−2)第2変形例
上述した説明では、筐体22には、外部空間25の雑音を内部空間24に伝達するための連絡孔224が形成されている。しかしながら、
図12(a)及び
図12(b)に示すように、第2変形例の筐体22jには、連絡孔224に代えて(或いは、加えて)、外部空間25の雑音を内部空間24に伝達するための隔壁部225が形成されている。隔壁部225の厚さは、筐体22jのうち隔壁部225以外の部分(例えば、梁222)の厚さよりも薄い。このため、連絡孔224に加えて又は代えて隔壁部225が形成されている場合であっても、隔壁部225が形成されていない場合と比較すれば、外部空間25の雑音は、隔壁部225を介して内部空間24に伝達されやすい。従って、上述した効果と同様の効果が享受可能である。尚、筐体21についても同様に、連絡孔214に代えて(或いは、加えて)、外部空間25の雑音を内部空間24に伝達するための相対的に薄い隔壁部が形成されていてもよい。
【0065】
尚、隔壁部225が形成される場合には、保持板223は、隔壁部225によって支持されていてもよい。この場合、
図12(a)に示すように、筐体22jは、複数の梁222を備えていなくてもよい。もちろん、
図12(b)に示すように、筐体22jは、複数の梁222を備えていてもよい。
【0066】
(4−3)第3変形例
上述した説明では、保持板223(更には、保持板223によって保持される振動センサ11)は、同一平面(例えば、XY平面)に沿って延びる梁222によって支持されている。しかしながら、
図13に示すように、第3変形例のチェストピース2kでは、保持板223は、同一平面(例えば、XY平面)に沿って延びる梁222に加えて、当該平面に交差する所定方向(例えば、Z方向)に沿って伸縮可能なスプリング26kによって支持される。この場合、スプリング26kの一端が保持板223(或いは、振動センサ11)に連結され、スプリング26kの他端が筐体21のフレーム213(或いは、梁212ないしは筐体22が備えるその他の部材)に連結される。
【0067】
このような第3変形例のチェストピース2kでは、生体音を取得するために保持板223が生体に押し当てられた際に、保持板223(更には、保持223が保持する振動センサ11)は、生体の体表の凹凸や傾き等に応じた適切な姿勢をより効率的に維持することができる。
【0068】
尚、スプリング26kは、Z方向(つまり、梁222が保持板223を支持する平面であるXY平面に交差する方向)に沿って保持板223を支持することがその機能である。このため、チェストピース2kは、スプリング26kに加えて又は代えて、Z方向に沿って保持板223を支持する支持部を備えていてもよい。このような支持部の一例として、弾性及び柔軟性を有する部材(例えば、樹脂や金属等)があげられる。この場合、支持部は、梁222と同様の梁状の部材であってもよい。或いは、支持部は、保持板223に接触することなく保持板223を支持してもよい。例えば、支持部は、電磁力や静電力等を用いて保持板223を支持してもよい。
【0069】
逆に言えば、梁222についても同様に、チェストピース2k(或いは、上述したチェストピース2)は、梁222に加えて又は代えて、XY平面に沿って保持板223を支持する支持部を備えていてもよい。これは、第3変形例に限らず、上述した実施例全般に適用可能である。このような支持部の一例として、保持部223に接触して保持部223を支持する部材(例えば、スプリング)や、保持部223に接触することなく保持部223を支持する部材があげられる。
【0070】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う生体音取得装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。