【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の側面によれば、変形可能なオブジェクトと該オブジェクトに挿入されて所定の意図される挿入位置に位置決めされるべき外部デバイスとの間の機械的な接触に起因して、該変形可能なオブジェクトに及ぼされる機械的応力を予測するための応力予測装置が提供される。本応力予測装置は:
セグメンテーション・ユニットであって、
・あらかじめ定義された撮像技法を使って識別可能でない、あらかじめ定義された目印位置におけるあらかじめ定義された二次目印特徴を含む三次元の一般参照オブジェクトを表現し、該一般参照オブジェクトの少なくとも一つの機械的性質を表現する空間分解された機械的参照データを含む一般モデル・データにアクセスし、前記撮像技法を使って取得された、前記外部デバイスの挿入に先立つ前記オブジェクトの三次元画像を表現する挿入前オブジェクト画像データにアクセスし;
・前記挿入前オブジェクト画像データおよび前記一般モデル・データを使って、前記オブジェクトおよびその空間分解された機械的性質を表現し、前記オブジェクト内の前記二次目印特徴のマッピングされた目印位置を示す関連付けられたマッピングされた目印位置データを含む、セグメント分割されたオブジェクト・モデル・データを提供するよう構成された、
セグメンテーション・ユニットと;
応力決定ユニットであって、
・前記所定の意図された挿入位置を示す挿入位置データおよび前記外部デバイスを表現するデバイス・モデル・データを受領し、
・前記セグメント分割されたオブジェクト・モデル・データ、前記デバイス・モデル・データおよび前記意図される挿入位置データを使って、前記意図される挿入位置において前記オブジェクトに挿入されるときに前記オブジェクトと前記外部デバイスとの間の機械的接触に起因して前記関連付けられたマッピングされた目印位置において前記二次目印特徴の少なくとも一つに及ぼされる機械的応力を示す予測応力情報を計算して提供するよう構成された、
応力決定ユニットとを有する。
【0007】
本発明の第一の側面の応力予測装置は、変形可能なオブジェクトと該オブジェクトに挿入されて所定の意図される挿入位置に配置されるべきデバイスとの間の機械的な接触相互作用から期待される機械的応力を予測することを許容する。本応力予測装置が、該応力予測装置への入力として提供されるオブジェクト画像データでは識別できない、本稿で二次目印特徴と呼ばれる前記オブジェクトのある種の特徴についてでさえも、挿入によって引き起こされる応力を予測することを許容することは特に有利である。そのような二次目印特徴は既知であり、三次元の一般参照オブジェクトを表現する一般モデル・データに含まれる。被験者の間で解剖学的変形があるので、本発明は、二次目印特徴がオブジェクト画像データにおいて直接可視でないときに二次目印特徴の具体的な位置における枢要領域を同定する高い確からしさを達成することを許容する。
【0008】
調査対象のオブジェクトのそのような「不可視の」特徴についての達成される応力予測は、意図される(計画される)挿入位置の好適さの評価をするための基礎をなし、よって、永久留置型デバイスの挿入中または挿入後に調査対象オブジェクトの応力に敏感な特徴に対する望まれない損傷を避ける助けとなる。このように、本応力予測装置は、変形可能なオブジェクトへのデバイスの挿入位置を計画することにおいて、非常に助けになる支援ツールをなす。本応力予測装置は、器官へのデバイスの挿入に起因する器官の諸セクションにおけるある種の機能的目印に対する応力を予測するなど、医療および生物学的な応用事例において特に有用である。しかしながら、その適用可能性は、非医療および非生物学的な応用事例にも広がる。
【0009】
調査対象の変形可能なオブジェクトの所与の位置における機械的応力とは、本稿では、該所与の位置において及ぼされる、機械物理に基づく機械的な力を示す物理量として理解される。変形可能なオブジェクトへのデバイスの挿入は、そのような機械的な力を与えることがあり、力、圧縮、張力、剪断、曲がりまたはねじりがない場合に取られるもとの位置からの変位などの、目印特徴に対する影響をもつことがある。これら種々の効果のいずれも、機械的応力を表わし、オブジェクトに挿入されるデバイスがオブジェクトに対して引き起こしうる機械的応力を決定するための適切な指標によって定量化されることができる。
【0010】
機械的応力を予測するために、変形可能なオブジェクトと同じオブジェクト型の三次元の一般参照オブジェクトを表わす一般モデル・データが使われる。一般参照オブジェクトは、所与のオブジェクト型のオブジェクトであって、そのオブジェクト型に属するオブジェクトの統計的に有意な多数に共通する典型的なオブジェクト特徴をもつものである。一般参照オブジェクト(ここでは略して参照オブジェクト)は、該参照オブジェクト内にそれぞれの関連付けられたあらかじめ定義された空間的目印位置をもつあらかじめ定義された目印特徴を有する。空間的目印位置は、参照オブジェクト内の点または参照オブジェクト内の限られた広がりをもつ一次元、二次元または三次元のセクションであって、目印特徴の少なくとも一部をカバーするものを指しうる。
【0011】
具体的には、本発明によれば、一般参照オブジェクトは、あらかじめ定義された二次目印特徴を有する。二次目印特徴は、所与の撮像技法を使って視覚化できないという点で、本稿で一次目印特徴と称される他の目印特徴とは異なる。このように、二次目印特徴または一次目印特徴をなすものは、調査対象の変形可能なオブジェクトのオブジェクト画像データを取得するために使われる所与の撮像技法に依存しうる。該オブジェクト画像データは、本発明に基づく応力予測のために使われるものである。
【0012】
さらに、一般参照オブジェクトは、一般参照オブジェクトの少なくとも一つの機械的性質を表わす少なくとも一つの物理量を示す空間分解された機械的参照データを有する。本開示のコンテキストでは、該機械的性質は、一般参照オブジェクトの機械的変形性質とも呼ばれることができる。一般参照オブジェクトの機械的性質の例示的であり網羅的ではないリストは、弾性、柔軟性、弾力、圧縮強さ、硬さ、塑性および延性といった量によって与えられる。
【0013】
本発明の応力予測装置において、オブジェクトの三次元画像を表わすオブジェクト画像データは、モデル・ベースのセグメンテーションを受ける。モデルは、一般モデル・データの形で提供され、あらかじめ定義された撮像技法を使って識別可能でない、あらかじめ定義された目印位置におけるあらかじめ定義された二次目印特徴を含む参照オブジェクトを表わす。このように、セグメンテーション・ユニットによって提供されるセグメント分割されたオブジェクト・モデル・データは、オブジェクト内の二次目印特徴のマッピングされた目印位置を示す、関連付けられたマッピングされた目印位置データを含む。これらの二次目印特徴は、前記撮像技法を使って識別可能ではない。
【0014】
よって、一般モデル・データの二次目印特徴はオブジェクト画像データに「現われない」ものの、その期待される位置が、マッピングされた目印位置として決定され、調査対象オブジェクトにおけるその期待される位置における応力量が、オブジェクトおよびその空間分解された機械的性質を表わすセグメント分割されたオブジェクト・モデル・データを利用することによって、今や決定できる。このように、機械的応力の予測は、セグメント分解プロセスにおいて、空間分解された機械的性質を含むことにも基づく。
【0015】
次いで、二次目印特徴のマッピングされた目印位置が、オブジェクトと所定の意図される挿入位置において該オブジェクトに挿入されるべき外部デバイスとの間の接触に起因する機械的相互作用から期待される、オブジェクトにおける(特にマッピングされた目印位置に近い位置における)機械的応力を計算するために、応力決定ユニットによって使用される。機械的応力を計算するために、応力決定ユニットは、さらに、挿入位置データおよびデバイス・モデル・データを受け取る。
【0016】
セグメント分割されたオブジェクト・モデル・データは、オブジェクトの幾何、二次目印特徴の位置(マッピングされた目印位置の形で)およびオブジェクトの前記少なくとも一つの機械的性質(たとえば空間分解された機械的データの形で)に関する情報を含む。デバイス・モデル・データは、オブジェクトに挿入されるべきデバイスの幾何と、この外部デバイスの前記少なくとも一つの機械的性質を表わす少なくとも一つの物理量とに関する情報を含む。この機械的性質は、上述したのと同じ、変形可能性に関係した量の集合からの一つまたは複数の量によって表現されることができる。
【0017】
本応力決定ユニットは、既知のデバイス幾何および既知の機械的性質をもつ外部デバイスによって引き起こされる、少なくとも前記マッピングされた目印位置における、機械的応力を計算するよう構成される。本応力決定ユニットはまた、オブジェクトと意図される挿入位置において該オブジェクトに挿入されたときの外部デバイスとの間の機械的接触に起因する前記関連付けられたマッピングされた目印位置における二次目印特徴の少なくとも一つに及ぼされる機械的応力を示す予測応力情報を提供する、すなわち出力するよう構成される。
【0018】
該応力情報データは、外部デバイスの所与の挿入点におけるオブジェクトへの仮定上の挿入によって期待される機械的応力を先験的に予測することによって、外部デバイスのオブジェクトへの挿入のコンテキストにおける合併症のリスクをさらに低減するための支援を提供する。
【0019】
下記では、本発明の第一の側面の諸実施形態が記述される。
【0020】
以下の記述は、挿入前オブジェクト画像データと挿入後オブジェクト画像データの間の区別をする。前者は応力予測のコンテキストにおいて使用されることができ、一方、後者および前者が一緒になって、挿入後の応力評価を実行するために使用されることができる。一般に、用語「挿入前」は、オブジェクトへのデバイスの挿入より前の時間または状態を指し、用語「挿入後」はデバイスのオブジェクトへの挿入後の時間または状態を指す。
【0021】
いくつかの実施形態では、挿入前および/または挿入後オブジェクト画像データは、計算機断層撮影撮像技法によって取得された計算機断層撮影(CT)データである。CTスキャンは、種々の角度から取られた複数のX線画像のコンピュータ処理された組み合わせを利用して、撮像されるオブジェクトの特定のエリアの断面(断層)画像(仮想的な「スライス」)を生成する。
【0022】
これらの実施形態のいくつかでは、一般モデル・データは、三次元の一般参照心臓を表わし、挿入前オブジェクト画像データは生体の心臓から得られた心臓画像データである。一般参照心臓は、いくつかの場合には、心臓の基礎的事実となる母集団に統計的に基づくモデル心臓である。一般参照心臓の幾何ならびに二次目印特徴の目印位置および空間分解された機械的参照データは、前記母集団に属する複数の心臓に基づく統計的な決定規則によって決定できる。基礎的事実とは、本発明の意味では、推定によって与えられたデータではなく、直接観察によって与えられたデータをいう。一般参照オブジェクトは、いくつかの場合には、諸三角形に接続された頂点の、複数コンパートメントの三角形分割されたメッシュを含む。二次目印特徴はたとえば、一般参照オブジェクトを定義するメッシュ頂点またはメッシュ三角形の詳細な部分集合として定義されることができ、あるいはまた、一般参照オブジェクトにおけるそのようなメッシュ頂点または三角形との関係で(たとえば相対メッシュとして)定義されることができる。
【0023】
一般モデル・データ内での二次目印特徴のエンコードは、二次目印の識別を許容するが、挿入前オブジェクト画像データを取得するために使われる撮像技法とは異なる、代替的な撮像技法に基づいて達成されることができる。他の場合には、心臓のような特定のオブジェクトおよび二次目印の特定の諸集合について、撮像技法に直接関係しない他の手法が使われる。ヒトの心臓の房室(AV: atrioventricular)結節ブロックという特定の場合だと、これらの伝導系目印の位置特定は、電気生理学(EP: electrophysiological)カテーテル適用前処置(pre-treatment)を介して、一般参照心臓の一般モデル・データにおいてその後エンコードするために、得られる。
【0024】
セグメント分割プロセスでは、「不可視の」二次目印は、受動的にオブジェクト画像データに適応される。最適化の各反復工程において、近隣の一次目印/メッシュ部分の空間的な変換または変形の混合が利用される。好適な空間的な変換および変形は、それ自身としては既知である。たとえば、グローバルな剛体変換を推定する、グローバルなアフィン変換を推定する、複数コンパートメントのアフィン変換を推定する、および最後に、非剛体的な変換を推定するといった段階が実行されることができる。これらの段階のすべては、コスト・エネルギー関数の最適化であり、コスト・エネルギー関数は、おおまかに言えば、外部画像エネルギーおよびモデルの内部エネルギーの和を形成する。外部画像エネルギーは、たとえば、モデルのある種の部分の画像コントラスト特徴、たとえばCT撮像データにおける心臓中隔の典型的な見え方への引き込み(attraction)を用いて定義されることができる。モデルに関する内部エネルギーは、たとえば、その硬直さ(stiffness)または統計的な平均形状に忠実になるというその所望を用いて定義される。最適化は、一次または二次の拘束されない(unconstrained)最適化を使って逐次反復的に解かれる。
【0025】
最も単純な場合は、二次目印が、頂点または三角形のメッシュを定義し、一般モデル・データに含まれるメッシュ・データの部分集合の形で詳細を定義する、というものである。
【0026】
種々の実施形態において、種々の型の外部デバイスが使用できる。他の実施形態は、種々のデバイスを表わす種々の事前決定されたデバイス・モデル・データを含む集合からのデバイス型選択を許容し、いくつかの変形では、応力決定に先立ってデバイス・サイズ評価(sizing)を実施するためのユーザー入力を許容するようにも構成される。
【0027】
生体の心臓に典型的に挿入される外部デバイスの例はステントである。ステントは、解剖学的な血管または管の管腔に挿入されるよう構成されたチューブとして定義できる。いくつかのステントは、ひとたび血管内に挿入されたらその半径を増すよう構成される。心臓の好適なセクションへのステントの挿入は、ステントおよび心臓の幾何ならびにそれぞれの機械的特性に依存して、応力を生じることがある。
【0028】
これらの実施形態のいくつかでは、デバイス・モデル・データは、前記外部デバイスとしてのバルーン拡張型ステントを表わす/含む。これらの実施形態では、応力決定ユニットは、マッピングされた位置における機械的応力を、挿入位置において拡張状態になったバルーン拡張型ステントが放射状に取り巻く組織に対して加える動径方向の力を示す事前決定されたバルーン力値を使って計算するよう構成される。拡張状態の幾何は可変であり、ステントの幾何および挿入位置におけるオブジェクトならびにそれぞれの機械的特性に依存する。つまり、同じステントが、挿入されるオブジェクトまたは所与のオブジェクト内の挿入位置に依存して、異なる拡張状態を呈することがありうる。ステントの展開された状態は、必ずしも、完全に展開されたステントを表わすのではない。それは、その幾何および機械的性質に依存する。展開された状態は、ステントの挿入前の展開と完全に展開されたステントの展開との間の中間的な展開を含んでいてもよい。
【0029】
他の実施形態では、デバイス・モデル・データは、前記外部デバイスとしての自己拡張型ステントを表わす。これらの実施形態では、応力決定ユニットは、マッピングされた位置における機械的応力を、挿入位置において拡張状態になった自己拡張型ステントが放射状に取り巻く組織に対して加える動径方向の力を示す事前決定された拡張力値を使って計算するよう構成される。ここでもまた、拡張状態は、必ずしも、完全に展開されたステントを表わすのではない。これらの実施形態のいくつかでは、事前決定されたバルーン力値または拡張力値は、ステントのそれぞれのポジションにバルーン力または拡張力の大きさを関係付ける力曲線の形で与えられる。
【0030】
型にかかわりなくステントは、いくつかの実施形態では、ステントに取り付けられた心膜弁(pericardial valve)を有していてもよい。
【0031】
好ましい実施形態では、応力決定ユニットは、機械的応力を、特に挿入後状態のオブジェクトのシミュレーションの形の、有限要素法を使って、計算するよう構成される。有限要素法(FEM)は、研究対象の領域またはオブジェクト全体を、有限要素と呼ばれる、より小さく、より簡単な部分に分割することによって、境界値問題に対する近似解を見出すために使われる数値的技法である。これらの有限要素をモデル化する簡単な式が、次いで、研究対象の領域またはオブジェクト全体をモデル化する、より大きな連立方程式にまとめられる。次いで、FEMは、変分学からの変分法を使って、関連する誤差関数を最小化することにより解を近似する。いくつかの実施形態、特に挿入後状態のオブジェクトのシミュレーションに関わる実施形態では、応力決定ユニットは、オブジェクトの三次元モデルを定義するメッシュ・データを含むオブジェクト・モデル・データを使って、有限要素法を使って、マッピングされた位置における機械的応力を計算するよう構成される。
【0032】
FEMシミュレーションを使ってTAVIアプリケーションにおける応力を決定するために典型的に使われる境界条件は、たとえば、血圧と大動脈基部のような挿入位置の周囲の組織壁の内部エネルギーとの間の平衡をもつ挿入前状態を含む。バルーン拡張型TAVIデバイスについては、追加的な境界条件は、外力がバルーンによってステントの表面に加えられ、よって組織への接触を介して力が大動脈に加えられる、挿入後状態である。自己拡張型デバイスについては、圧縮されたステント内にある内部弾性エネルギーが蓄積されており、それがその後、展開の間に解放され、上記のような対応する力につながる。典型的には、製造業者はデバイス試験からの曲線を有しており、それがこの拡張についての情報を与える。FEMシミュレーションへのさらなる制約条件は、デバイスおよび組織の機械的性質である。
【0033】
いくつかの実施形態では、一般モデル・データは、事前決定された一次目印位置に関連付けられており、前記あらかじめ定義された撮像技法を使ってオブジェクト画像データにおいて識別可能である一次目印特徴を含む、あらかじめ定義されたセグメンテーション・スキームに従って異なる区別可能なオブジェクト・セグメントに空間的にセグメント分割された三次元の一般参照オブジェクトを表わす。これらの実施形態では、セグメンテーション・ユニットは好ましくは、前記マッピングされた目印位置を、一次目印位置を使って決定するよう構成される。
【0034】
生体の心臓に対して計算機断層撮影撮像技法を使うことによって、結果として得られるオブジェクト画像データから、いくつかの解剖学的領域が識別できる。本願の応力予測装置のいくつかの実施形態では、一次目印特徴は、複数コンパートメントの三角形分割されたメッシュによって囲まれる複数の解剖学的領域を含む。それらの解剖学的領域は、いくつかの場合には、左右の心室、左右の心房、左心室を囲む心筋ならびに大動脈、肺動脈および肺静脈の脈幹である。
【0035】
他方、やはり生体の心臓に対して計算機断層撮影撮像技法を参照するに、心臓画像データ上でコントラスト特徴を生成しないため結果として得られるオブジェクト画像データにおいて識別できない他の構造がある。本稿で二次目印特徴と称されるこれらの構造の例は、心臓の伝導系(conductive system)に属する構造である。いくつかの実施形態では、二次目印特徴は、房室(AV)結節、ヒス束および左もしくは右の束枝の一部のうちの少なくとも一つを含む一般参照心臓の心臓伝導系の少なくとも一部を含む。これらは、計算機断層撮影撮像技法を使って生体の心臓において識別可能ではない。本発明の応力予測装置は、これらの「不可視」な二次目印特徴についても、応力予測をすることを許容する。
【0036】
いくつかの実施形態では、応力予測装置は、追加的な挿入後応力評価機能を有する。これらの実施形態では、
・セグメンテーション・ユニットは、さらに、外部デバイスが所与の現在の挿入位置に位置された状態で三次元オブジェクトから前記撮像技法を使って取得された、挿入後オブジェクト画像データを受領するよう構成され;
・前記挿入後オブジェクト画像データおよび前記セグメント分割された挿入前オブジェクト・モデル・データまたは前記挿入後オブジェクト画像データおよび前記一般モデル・データのいずれかを使って、外部デバイスの現在の挿入位置を示す挿入位置データと、挿入後状態でのオブジェクト内の二次目印特徴のマッピングされた挿入後位置を示す関連付けられたマッピングされた挿入後目印位置データを含むセグメント分割された挿入後オブジェクト・モデル・データとを提供し;応力決定ユニットはさらに、前記挿入位置データ、前記セグメント分割された挿入前オブジェクト・モデル・データおよび前記セグメント分割された挿入後オブジェクト・モデル・データを使って、挿入後応力情報を計算し、提供するよう構成され、前記挿入後応力情報は、前記オブジェクトと現在の挿入位置において前記オブジェクトに挿入された前記外部デバイスとの間の機械的接触によって前記二次目印特徴のうちの少なくとも一つに及ぼされる機械的な挿入後応力を示す。
【0037】
応力評価機能は、ひとたび現在の挿入位置においてデバイスがオブジェクトに挿入された後に、デバイスの挿入によって生じるオブジェクトに対する機械的応力の追加的な評価を許容する。このタスクを実行するために、セグメンテーション・ユニットは、さらに、外部デバイスが現在の挿入位置に位置された状態で三次元オブジェクトから前記撮像技法を使って取得された、挿入後オブジェクト画像データを受領するよう構成され;さらに、外部デバイスが現在の挿入にある挿入後状態での三次元オブジェクトおよびその空間分解された機械的属性を表わすセグメント分割された挿入後オブジェクト・モデル・データを提供するよう構成される。これは、挿入後オブジェクト画像データを使って実行される。例解用の例として、一般オブジェクト・モデル・データを使ってセグメント分割された挿入前オブジェクト・モデル・データが、前記オブジェクトのある種の諸位置にリンクされている頂点からなる変形されたメッシュ・トポロジーを表わす、セグメント分割された挿入前オブジェクト・モデル・データを決定することを許容する。オブジェクトの、可能性としては適応された、ただし同じトポロジーをもつ変形可能なモデルを使って、挿入後オブジェクト画像データが提供され、セグメント分割される。
【0038】
挿入前および挿入後の両方のオブジェクト・モデルは、同一のメッシュ・トポロジーを介して、自然に定義された対応をもつ。これらの対応を与えられてたとえば最小二乗式(全頂点を通じた平均)に実行できる位置合わせにより、両方のオブジェクト・モデルは同じ座標系になり、変位データが推定できる。変位データは、デバイス挿入前後のメッシュ変形に関するデータである。
【0039】
挿入後オブジェクト画像データを使って決定された挿入後応力情報は、いくつかの実施形態では、挿入後オブジェクト画像データを利用することなく計算される予測応力情報を改善するために使われる。挿入前および挿入後オブジェクト画像データの比較は、セグメント分割されたオブジェクト・モデル・データおよびデバイス・モデル・データだけを使って実行される、予測された機械的応力の精度を改善するために使用できるフィードバックを許容し、よって、第二の側面のいくつかの実施形態では、予測応力情報の計算を洗練するために使用される。より具体的には、応力予測装置の追加的な挿入後応力評価機能のこの利点は、オブジェクトの機械的性質および上述したような境界条件が、挿入後画像データを使って、患者固有の仕方で、あるいはさらには一般的な仕方で、洗練されることができる、ということである。挿入後状態は、可能性としては完全に展開されていないがそれでも挿入されているデバイスを含む、第二の平衡状態に対応する。この洗練は、上述したパラメータ、条件および制約条件をチューニングすることを許容するフィードバック・ループと同様であり、術前状態で始まり、挿入後オブジェクト画像データにおいて観察可能な所与の挿入および変位をもつ、処置後状態に到達する。
【0040】
挿入後画像データのみが利用可能である場合、所与の事例において、決定された挿入後応力情報を使って、将来の事例のための応力予測の改善のための有用な情報が達成されることもできる。
【0041】
しかしながら、上記の諸セクションで記載された応力評価能力、すなわち挿入後応力情報の決定は、応力予測を利用することなく、単独で使われることもできる。これは、本発明の第二の側面として次に記載される。
【0042】
このように、本発明の第二の側面によれば、変形可能なオブジェクトと該オブジェクトに挿入されて所与の挿入位置に位置される外部デバイスとの間の機械的な接触によって引き起こされる挿入後の機械的応力を評価するための応力評価装置が提供される。本応力評価装置は:
セグメンテーション・ユニットであって、
・あらかじめ定義された撮像技法を使って識別可能でない、あらかじめ定義された目印位置におけるあらかじめ定義された二次目印特徴を含む三次元の一般参照オブジェクトを表現し、該一般参照オブジェクトの少なくとも一つの機械的性質を表現する空間分解された機械的参照データを含む一般モデル・データにアクセスし;
・それぞれ前記撮像技法を使って取得された、それぞれ前記外部デバイスの挿入に先立つ前記オブジェクトの三次元画像を表現しているおよび前記外部デバイスが前記所与の現在の挿入位置に位置されている、挿入前オブジェクト画像データおよび挿入後オブジェクト画像データにアクセスし;
・前記挿入前オブジェクト画像データおよび前記一般モデル・データを使って、挿入前状態の前記オブジェクトおよびその空間分解された機械的性質を表現し、前記オブジェクト内の前記二次目印特徴のマッピングされた挿入前位置を示す関連付けられたマッピングされた挿入前目印位置データを含む、セグメント分割された挿入前オブジェクト・モデル・データを提供し;
・前記挿入後オブジェクト画像データおよび前記セグメント分割された挿入前オブジェクト・モデル・データまたは前記挿入後オブジェクト画像データおよび前記一般モデル・データのいずれかを使って、外部デバイスの現在の挿入位置を示す挿入位置データと、挿入後状態でのオブジェクト内の二次目印特徴のマッピングされた挿入後位置を示す関連付けられたマッピングされた挿入後目印位置データを含むセグメント分割された挿入後オブジェクト・モデル・データとを提供するよう構成された、
セグメンテーション・ユニットと;
応力決定ユニットであって、
・前記挿入位置データ、前記セグメント分割された挿入後オブジェクト・モデル・データおよび前記セグメント分割された挿入前オブジェクト・モデル・データを使って、前記オブジェクトと、前記現在の挿入位置において前記オブジェクトに挿入された前記外部デバイスとの間の機械的接触によって前記二次目印特徴のうちの少なくとも一つに及ぼされる機械的な挿入後応力を示す挿入後応力情報データを計算し、提供するよう構成された、
応力決定ユニットとを有する。
【0043】
要するに、本発明の第二の側面に基づく(挿入後の)応力評価のために、セグメンテーション・ユニットは一般モデル・データおよび挿入前および挿入後の画像データを使って挿入前オブジェクト・モデルおよび挿入後オブジェクト・モデルを決定し、それらが、挿入後の応力情報を決定する際に応力決定ユニットのための入力をなす。
【0044】
第二の側面の実施形態のいくつかでは、セグメント分割された挿入後オブジェクト・モデル・データは、挿入後オブジェクト画像データおよびセグメント分割された挿入前オブジェクト・モデル・データのみを使って決定され、提供される。この側面の他の実施形態では、セグメント分割された挿入後オブジェクト・モデル・データは、挿入後オブジェクト画像データおよび一般モデル・データのみを使って決定され、提供される。
【0045】
第二の側面の応力評価装置は、オブジェクトと挿入位置において該オブジェクトに挿入された外部デバイスとの間の機械的接触によって二次目印特徴のうちの少なくとも一つに及ぼされる機械的な挿入後応力を示す挿入後応力情報の決定を許容するという利点をもつ。説明したように、そのような機械的な応力は、挿入されるデバイスの存在に起因する二次目印特徴の変位によって引き起こされる。
【0046】
それ以外の点では、第二の側面の応力評価装置は、本発明の第一の側面の応力予測装置の実施形態の利点および任意的なさらなる特徴を共有する。
【0047】
第一および第二の側面の装置の記載される実施形態は、追加的な好ましい実施形態において、リスク評価機能によってさらに拡張されることができる。そのような追加的な好ましい実施形態は、リスク評価ユニットを有する。リスク評価ユニットは、前記二次目印特徴のうちの少なくとも一つの外傷性破壊のリスクを示す外傷リスク指標を、前記応力情報データおよび事前決定された応力外傷基準を使って決定するよう構成される。そのようなリスク基準は、ある実施形態では、特に応力分布の空間分解された形の、よって挿入後状態を記述する変形されたオブジェクト・メッシュ・トポロジーの諸位置にリンクされる、決定された応力情報を使って実現される。同様に、やはり統計的な分布に基づいていてもよい、オブジェクト内の二次目印特徴のマッピングされた挿入前位置を示す決定されたマッピングされた挿入前目印位置データは、位置合わせされた挿入後オブジェクト・モデル・データにおいて位置特定されることができる。オブジェクト・メッシュ・トポロジーに基づくこれら二つの種類の情報の重ね合わせは、高い応力レベルと敏感な二次目印特徴の高い可能性とが符合するセクションを識別することを許容する。この一致は、二次目印特徴の外傷性破壊の高いリスクを含意する。いくつかの変形では、患者履歴のような外部要因が、外傷リスク指標を定義する関数に含められる。全体的なリスク関数は、複雑さに依存して、教師付きの仕方で機械によって学習されてもよく、あるいは単に応力に確からしさを加えたもの(stress plus likelihood)の表示であってもよい。
【0048】
本発明の第三の側面によれば、変形可能なオブジェクトと該オブジェクトに挿入されて所定の意図される挿入位置に位置されるべき外部デバイスとの間の機械的な接触に起因して、該変形可能なオブジェクトに及ぼされる機械的応力を予測する方法が提供される。本方法は:
・あらかじめ定義された撮像技法を使って識別可能でない、あらかじめ定義された目印位置におけるあらかじめ定義された二次目印特徴を含む三次元の一般参照オブジェクトを表現し、該一般参照オブジェクトの少なくとも一つの機械的性質を表現する空間分解された機械的参照データを含む一般モデル・データを提供し;
・前記撮像技法を使って取得された、前記外部デバイスの挿入に先立つ前記オブジェクトの三次元画像を表現する挿入前オブジェクト画像データを受領し;
・前記挿入前オブジェクト画像データおよび前記一般モデル・データを使って、前記オブジェクトおよびその空間分解された機械的性質を表現し、前記オブジェクト内の前記二次目印特徴のマッピングされた目印位置を示す関連付けられたマッピングされた目印位置データを含む、セグメント分割されたオブジェクト・モデル・データを提供し;
・前記所定の意図された挿入位置を示す挿入位置データを受領し;
・前記外部デバイスを表現するデバイス・モデル・データを受領し;
・前記セグメント分割されたオブジェクト・モデル・データ、前記デバイス・モデル・データおよび前記意図される挿入位置データを使って、前記オブジェクトと前記意図される挿入位置において前記オブジェクトに挿入されるときの前記外部デバイスとの間の機械的接触によって前記関連付けられたマッピングされた目印位置において前記二次目印特徴の少なくとも一つに及ぼされる機械的応力を示す予測応力情報データを計算して提供することを含む。
【0049】
本発明の第三の側面の方法およびその実施形態は、第一の側面の応力予測装置およびその実施形態の任意のものの利点を共有する。
【0050】
本発明の第四の側面によれば、変形可能なオブジェクトと該オブジェクトに挿入されて所与の現在の挿入位置に位置決めされた外部デバイスとの間の機械的な接触によって引き起こされる挿入後の機械的応力を評価する応力評価方法が提供される。本方法は:
・あらかじめ定義された撮像技法を使って識別可能でない、あらかじめ定義された目印位置におけるあらかじめ定義された二次目印特徴を含む三次元の一般参照オブジェクトを表現し、該一般参照オブジェクトの少なくとも一つの機械的性質を表現する空間分解された機械的参照データを含む一般モデル・データを提供し;
・それぞれ前記撮像技法を使って取得された、それぞれ前記外部デバイスの挿入に先立つ前記オブジェクトの三次元画像を表現しているおよび前記外部デバイスが前記所与の現在の挿入位置に位置されている、挿入前オブジェクト画像データおよび挿入後オブジェクト画像データを提供し;
・前記挿入前オブジェクト画像データおよび前記一般モデル・データを使って、挿入前状態の前記オブジェクトおよびその空間分解された機械的性質を表現し、前記オブジェクト内の前記二次目印特徴のマッピングされた挿入前位置を示す関連付けられたマッピングされた挿入前目印位置データを含む、セグメント分割された挿入前オブジェクト・モデル・データを提供し;
・前記挿入後オブジェクト画像データおよび前記セグメント分割された挿入前オブジェクト・モデル・データまたは前記挿入後オブジェクト画像データおよび前記一般モデル・データのいずれかを使って、外部デバイスの現在の挿入位置を示す挿入位置データと、挿入後状態でのオブジェクト内の二次目印特徴のマッピングされた挿入後位置を示す関連付けられたマッピングされた挿入後目印位置データを含むセグメント分割された挿入後オブジェクト・モデル・データとを提供し
・前記挿入位置データ、前記セグメント分割された挿入後オブジェクト・モデル・データおよび前記セグメント分割された挿入前オブジェクト・モデル・データを使って、前記オブジェクトと、前記挿入位置において前記オブジェクトに挿入された前記外部デバイスとの間の機械的接触によって前記二次目印特徴のうちの少なくとも一つに及ぼされる機械的な挿入後応力を示す挿入後応力情報データを計算することを含む。
【0051】
本発明の第四の側面の方法およびその実施形態は、第二の側面の応力評価装置およびその実施形態の任意のものの利点および任意的な追加的特徴を共有する。
【0052】
本発明の第五の側面は、コンピュータのプロセッサによって実行されたときに第三の側面の方法もしくはそのいずれかの実施形態を実行するためまたは第四の側面の方法もしくはそのいずれかの実施形態を実行するための実行可能コードを含むコンピュータ・プログラムによって形成される。
【0053】
請求項1の応力予測装置、請求項10の応力評価装置、請求項12の応力を予測する方法、請求項13の応力を評価する方法および請求項14のコンピュータ・プログラムが、特に従属請求項で定義されるような、同様のおよび/または同一の好ましい実施形態をもつことが理解される。
【0054】
本発明の好ましい実施形態は、従属請求項または上記の実施形態の、それぞれの独立請求項との任意の組み合わせであることもできることが理解される。
【0055】
本発明のこれらおよび他の側面は、以下に述べる実施形態から明白であり、明快にされるであろう。