(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両(1)のエンジン(E)のクランク軸(51)を回転駆動するモータとして機能するとともに、前記クランク軸(51)の回転から回生起電力を生成するジェネレータとして機能する発電電動機(70)と、
ブリッジ接続された複数のスイッチング素子(91a-91c,92a-92c)を備え、前記発電電動機(70)に接続されたインバータ(90)と、
第一の蓄電手段(46)と、
第二の蓄電手段(47)と、
前記第一の蓄電手段(46)及び前記第二の蓄電手段(47)と、前記インバータ(90)との接続状態を第一の接続態様と第二の接続態様とで切り替える切替手段(100)と、を備え、
前記第一の接続態様では、並列に接続された前記第一の蓄電手段(46)及び前記第二の蓄電手段(47)が前記インバータ(90)に接続され、かつ、前記第一の蓄電手段(46)の負極と前記第二の蓄電手段(47)の負極とがグランド(G)を介して接続され、
前記第二の接続態様では、直列に接続された前記第一の蓄電手段(46)及び前記第二の蓄電手段(47)が前記インバータ(90)に接続され、かつ、前記第一の蓄電手段(46)の負極と前記第二の蓄電手段(47)の正極とが前記グランド(G)を介して接続される、
ことを特徴とする車両用制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成では、バッテリとキャパシタとを直列に接続した場合、発電電動機に接続されたインバータを構成するスイッチング素子のうち、特に、ハイサイドアームのスイッチング素子に高電圧がかかり、そのON/OFF電圧を上げる必要がある。そのため、スイッチング素子の入れ替え等、専用部品を必要とする場合があり、従来回路の利用や他のスイッチング素子との共通化を図れず、コストが増加する場合がある。
【0005】
本発明の目的は、コストアップを抑制しつつ、
発電電動機の電力供給量を切り替えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の本発明による車両用制御装置は、
車両(1)のエンジン(E)のクランク軸(51)を回転駆動するモータとして機能するとともに、前記クランク軸(51)の回転から回生起電力を生成するジェネレータとして機能する発電電動機(70)と、
ブリッジ接続された複数のスイッチング素子(91a-91c,92a-92c)を備え、前記発電電動機(70)に接続されたインバータ(90)と、
第一の蓄電手段(46)と、
第二の蓄電手段(47)と、
前記第一の蓄電手段(46)及び前記第二の蓄電手段(47)と、前記インバータ(90)との接続状態を第一の接続態様と第二の接続態様とで切り替える切替手段(100)と、を備え、
前記第一の接続態様では、並列に接続された前記第一の蓄電手段(46)及び前記第二の蓄電手段(47)が前記インバータ(90)に接続され、かつ、前記第一の蓄電手段(46)の負極と前記第二の蓄電手段(47)の負極とがグランド(G)を介して接続され、
前記第二の接続態様では、直列に接続された前記第一の蓄電手段(46)及び前記第二の蓄電手段(47)が前記インバータ(90)に接続され、かつ、前記第一の蓄電手段(46)の負極と前記第二の蓄電手段(47)の正極とが前記グランド(G)を介して接続される、
ことを特徴とする。
【0007】
請求項2の本発明による車両用制御装置は、
前記発電電動機(70)を駆動するために前記接続状態を前記第二の接続態様とした場合、所定時間の経過後に前記接続状態を前記第一の接続態様とする、
ことを特徴とする。
【0008】
請求項3の本発明による車両用制御装置は、
前記エンジン(E)の始動を条件として、前記接続状態を前記第二の接続態様とする、
ことを特徴とする。
【0009】
請求項4の本発明による車両用制御装置は、
アクセル開度の加速側の変化量が規定値以上となったことを条件として、前記接続状態を前記第二の接続態様とする、
ことを特徴とする。
【0010】
請求項5の本発明による車両用制御装置は、
前記第一の蓄電手段(46)はバッテリであり、
前記第二の蓄電手段(47)はコンデンサであり、
前記コンデンサの定格電圧は前記バッテリの公称電圧以上であり、
前記第一の接続態様によって、前記バッテリと前記コンデンサとが同電位とされる、
ことを特徴とする。
【0011】
請求項6の本発明による車両用制御装置は、
前記第一の蓄電手段(46)は、前記車両の電装部品(81)に電力を供給可能である、
ことを特徴とする。
【0012】
請求項7の本発明による車両用制御装置は、
前記第二の蓄電手段(47)はコンデンサであって、前記インバータ(90)の平滑コンデンサを兼用する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の本発明によれば、前記接続状態を切り替えることで前記
発電電動機の電力供給量を切り替えることができる。前記第二の接続態様においては、前記第一の蓄電手段及び前記第二の蓄電手段が直列に接続されるのでより大きな電力を前記
発電電動機に供給することができる。前記第二の接続態様では、前記第一の蓄電手段の負極と前記第二の蓄電手段の正極とがグランド電位となるので、前記第二の蓄電手段の負極がグランド電位となる構成よりも、グランド電位から見てハイサイドアームの前記スイッチング素子に対する電圧を低く抑えることができ、専用部品を必須としない。このため、コストアップを抑制しつつ、
発電電動機の電力供給量を切り替えることができる。
【0014】
請求項2の本発明によれば、前記第二の蓄電手段が過放電し、該第二の蓄電手段が逆充電されることを防止することができる。
【0015】
請求項3の本発明によれば、前記エンジンの始動性を向上することができる。
【0016】
請求項4の本発明によれば、前記車両の加速性能を向上することができる。
【0017】
請求項5の本発明によれば、前記第二の接続態様において、前記バッテリの公称電圧の倍の電圧を前記発電電動機に供給することができる。
【0018】
請求項6の本発明によれば、前記第一の蓄電手段を前記電装部品の電源としても利用することができる。
【0019】
請求項7の本発明によれば、部品数の増加を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明を適用した車両の一例として、スクータ型自動二輪車1の側面図を示す。車体前部と車体後部とは低床フロア部4を介して連結されている。車体フレームは、概ねダウンチューブ6とメインパイプ7とから構成されている。メインパイプ7の上方には、シート8が配置されている。
【0022】
ハンドル11は、ヘッドパイプ5に軸支されて上方に延ばされており、一方の下方側には、前輪WFを回転自在に軸支するフロントフォーク12が取り付けられている。ハンドル11の上部には、計器盤を兼ねたハンドルカバー13が取り付けられている。また、ヘッドパイプ5の前方には、自動二輪車1の制御装置としてのECU80が配設されている。
【0023】
ダウンチューブ6の後端で、メインパイプ7の立ち上がり部には、ブラケット15が突設されている。ブラケット15には、スイングユニット2のハンガーブラケット18がリンク部材16を介して揺動自在に支持されている。
【0024】
スイングユニット2の前部には、4サイクル単気筒のエンジンEが配設されている。エンジンEの後方には無段変速機10が配設されており、減速機構9の出力軸には後輪WRが軸支されている。減速機構9の上端とメインパイプ7の屈曲部との間には、リヤショックユニット3が介装されている。スイングユニット2の上方には、エンジンEから延出した吸気管19に接続される燃料噴射装置のスロットルボディ20およびエアクリーナ14が配設されている。
【0025】
図2は、
図1のA−A線断面図である。スイングユニット2は、車幅方向右側の右ケース75および車幅方向左側の左ケース76なるクランクケース74を有する。クランク軸51は、クランクケース
74に固定された軸受53、54により回転自在に支持されている。クランク軸51には、クランクピン52を介してコンロッド73が連結されている。
【0026】
左ケース76は変速室ケースを兼ねており、クランク軸51の左端部には、可動側プーリ半体60と固定側プーリ半体61とからなるベルト駆動プーリが取り付けられている。固定側プーリ半体61は、クランク軸51の左端部にナット77によって締結されている。また、可動側プーリ半体60は、クランク軸51にスプライン嵌合されて軸方向に摺動可能とされる。両プーリ半体60、61の間には、Vベルト62が巻き掛けられている。
【0027】
可動側プーリ半体60の右側では、ランププレート57がクランク軸51に固定されている。ランププレート57の外周端部に取り付けられたスライドピース58は、可動側プーリ半体60の外周端で軸方向に形成されたランププレート摺動ボス部59に係合されている。また、ランププレート57の外周部には、径方向外側に向かうにつれて可動側プーリ半体60寄りに傾斜するテーパ面が形成されており、このテーパ面と可動側プーリ半体60との間に複数のウェイトローラ63が収容されている。
【0028】
クランク軸51の回転速度が増加すると、遠心力によってウェイトローラ63が径方向外側に移動する。これにより、可動側プーリ半体60が図示左方に移動して固定側プーリ半体61に接近し、その結果、両プーリ半体60、61間に挟まれたVベルト62が径方向外側に移動してその巻き掛け径が大きくなる。スイングユニット2の後方側には、両プーリ半体60、61に対応してVベルト62の巻き掛け径が可変する被動プーリ(不図示)が設けられている。エンジンEの駆動力は、上記ベルト伝達機構によって自動調整され、不図示の遠心クラッチおよび減速機構9(
図1参照)を介して後輪WRに伝達される。
【0029】
右ケース75の内部には、発電電動機70が配設されている。発電電動機70はエンジンEの始動時や加速アシスト時にクランク軸51を回転駆動するモータとして機能するとともに、エンジンEの運転中にクランク軸51の回転から回生起電力を生成するジェネレータとして機能する。
【0030】
発電電動機70は、クランク軸51の先端テーパ部に取付ボルト120で固定されたアウタロータ71と、アウタロータ71の内側に配設されて右ケース75に取付ボルト121で固定されるステータ72とから構成されている。アウタロータ71に対して取付ボルト67で固定される送風ファン65の図示右方側には、ラジエータ68および複数のスリットが形成されたカバー部材69が取り付けられている。
【0031】
クランク軸51には、発電電動機70と軸受54との間に、スプロケット55が固定されている。スプロケット55には、不図示のカムシャフトを駆動するカムチェーンが巻き掛けられる。また、スプロケット55は、エンジンオイルを循環させるオイルポンプ(不図示)に動力を伝達するギヤ56と一体的に形成されている。
【0032】
図3は自動二輪車1の制御系の構成を示すブロック図である。ECU80はCPU等のプロセッサ、ROM、RAM等の記憶デバイス、外部デバイスとの間で信号の送信、受信を行うインタフェースを含む。ECU80には、ライダが操作するスイッチ30、各種のセンサSRが接続され、それらの検知結果に基づいて、燃料噴射装置40、点火装置41、発電電動機70、灯火器42、表示器43、リレー44等を制御する。
【0033】
スイッチ30には、例えば、自動二輪車1の主電源のON/OFFを切り替えるメインスイッチやエンジンEの始動を指示するスタータスイッチ、アイドルストップ制御を許可するか否かを指示するアイドルストップ制御許可スイッチ等が含まれる。
【0034】
センサSRには、ライダのアクセル操作を検知するスロットルセンサ31、クランク軸51の回転角を検知するクランク角センサ32、エンジンEの冷却水温度を検知する水温センサ33、自動二輪車1の車速を検知する車速センサ34、発電電動機70の回転角を検知する回転角センサ35、ライダがシート8に着座しているか否かを検知する着座センサ36等が含まれる。
【0035】
自動二輪車1は、信号待ち等の停車時に所定条件を満たすとエンジンEを一旦停止させるアイドルストップ制御が実行されてもよい。ECU80はアイドルストップ制御許可スイッチや着座センサ36の検知結果によりアイドルストップ制御を実行するか否かを判定してもよい。アイドルストップを開始する所定条件は、例えば、アイドルストップ制御許可スイッチがオン(許可)で、かつ着座スセンサ36でライダの着座が検知され、車速センサ34で検知される車速が所定値(例えば、5km/h)以下で、かつクランク角センサ32で検知されるエンジン回転数が所定値(例えば、2000rpm)以下で、かつスロットルセンサ31で検知されるスロットル開度が所定値(例えば、5度)以下の状態において所定時間が経過した場合である。アイドルストップ後のエンジンEの再始動条件は、例えば、スロットル開度が所定値以上の場合である。
【0036】
燃料噴射装置40はエンジンEの吸入空気に燃料を噴射する。点火装置41はエンジンE内の混合気を点火する。灯火器42は例えばヘッドライトである。表示器43はメータ、各種インジケータ等、ライダに情報を表示する装置である。リレー44は例えばエンジンEを始動する際にONにされるスタータリレーである。
【0037】
図4を参照して発電電動機70及びその駆動回路について説明する。本実施形態の場合、発電電動機70は三相巻線が巻きまわされたステータを備える三相ブラシレスモータ発電機である。発電電動機70にはこれを駆動するインバータ90が接続されている。インバータ90
はブリッジ接続された複数のスイッチング素子91a〜91c(総称するときはスイッチング素子91という。)及びスイッチング素子92a〜92c(総称するときはスイッチング素子92という。)を備え、全波整流ブリッジ回路を構成する。
【0038】
スイッチング素子91及び92は、本実施形態の場合、N型のMOSFETであり、ドレインD、ソースS、ゲートG及び寄生ダイオードDiを有する。スイッチング素子91aとスイッチング素子92aの組は、ハイ側の配線90aとロー側の配線90bとの間で直列に接続されて、レグを構成する。スイッチング素子91bとスイッチング素子92bの組及びスイッチング素子91cとスイッチング素子92cの組も同様であり、それぞれレグを構成する。このようにインバータ90は、スイッチング素子91をハイサイドアーム、スイッチング素子92をローサイドアームとする、並列接続された3組のレグを有しており、スイッチング素子91とスイッチング素子92との各接続点に、発電電動機70の対応する相のコイルが接続されている。
【0039】
配線90aと配線90bとの間には、直列に接続された平滑コンデンサ93及びスイッチング素子94が設けられている。スイッチング素子94は、本実施形態の場合、スイッチング素子91及び92と同様にMOSFETである。スイッチング素子94は、例えば、発電電動機70をジェネレータとして機能させる場合にONとされ、平滑コンデンサ93によって発電電圧が平滑化される。
【0040】
スイッチング素子91、92及び94の各ゲートGにはECU80から送出される制御信号が入力され、これら各素子のON/OFF制御が実行される。
【0041】
自動二輪車1は、その主電源として蓄電素子46を備える。蓄電素子46は本実施形態の場合、公称電圧が12Vの鉛バッテリである。蓄電素子46は、モータとして機能させる場合の発電電動機70、ECU80、負荷81等、自動二輪車1の各電気部品に電力を供給する。負荷81は例えば灯火器42等の、自動二輪車1の電装部品が含まれる。蓄電素子46の正極は、配線112b及びリレー110を介してインバータ90の配線90aに接続されている。蓄電素子46の負極はグランドに接続されている。ECU80及び負荷81は、ヒューズ113a、スイッチ111及びヒューズ113bを介して蓄電素子46に並列に接続されている。なお、ECU80と切替回路100を有するドライバーには蓄電素子46の電圧を変換して供給するコンバータ等が設けられる。スイッチ111は、ライダが操作するメインスイッチ、或いは、メインスイッチに連動してON/OFFされるリレースイッチである。スイッチ111がONの状態で、エンジンEの始動操作が行われると、ECU80はリレー110を制御して接点110b側をONとし、エンジンEの始動後には接点110a側をONとする。
【0042】
自動二輪車1は、蓄電素子46とは別に、モータとして機能させる場合の発電電動機70の補助的な電源として機能する蓄電素子47を備える。蓄電素子47は本実施形態の場合、コンデンサであって、例えば、リチウムイオンキャパシタ、導電性高分子コンデンサ、電気二重層キャパシタ等を利用できる。コンデンサの定格電圧は蓄電素子46の公称電圧(ここでは12V)以上である。
【0043】
切替回路100は、蓄電素子46及び47と、インバータ90との接続状態を切り替える回路である。本実施形態の場合、切替回路100は複数のスイッチング素子101〜103を備える。本実施形態の場合、スイッチング素子101〜103はスイッチング素子91及び92と同様にMOSFETである。スイッチング素子101とスイッチング素子102は配線112bとグランドの間に直列に接続されている。蓄電素子47の正極は、スイッチング素子101とスイッチング素子102との接続点に接続され、負極が配線90bに接続されている。スイッチング素子103は、蓄電素子47の負極とグランドGに接続され、ソースSが蓄電素子47の負極に、ドレインDがグランドGに接続されている。
【0044】
スイッチング素子101〜103のON/OFFを切り替えることにより、蓄電素子46及び47と、インバータ90との接続状態を、大別すると二つの接続態様に切り替えることができる。スイッチング素子101〜103の各ゲートGにはECU80から送出される制御信号が入力され、これら各素子のON/OFF制御が実行される。
【0045】
接続態様の一つは並列接続態様である。この接続態様では、並列に接続された蓄電素子46及び47がインバータ90に並列に接続され、かつ、蓄電素子46及び47の各負極がグランドGを介して接続される。なお、この場合、各負極はグランドGに直接接続されてもよいし、スイッチや抵抗を介して接続されてもよい。接続態様の他の一つは直列接続態様である。この接続態様では、直列に接続された蓄電素子46及び47がインバータ90に並列に接続され、かつ、蓄電素子46の負極と蓄電素子47の正極とがグランドGを介して接続される。なお、この場合、蓄電素子46の負極と蓄電素子47の正極はグランドGに直接接続されてもよいし、スイッチや抵抗を介して接続されてもよい。
【0046】
図5は並列接続態様の例を示している。スイッチング素子101がON、スイッチング素子102及び103がOFFとされる。この接続態様の場合、蓄電素子46で蓄電素子47を充電することができ、太線矢印はその場合の電流の流れを例示している。スイッチング素子103では寄生ダイオードDiを電流が流れる。蓄電素子47が蓄電素子46と同電位に充電される。蓄電素子47の容量は蓄電素子46によって数十msで満充電できる程度の容量であってもよい。この接続態様は、また、蓄電素子46の電圧(ここでは12V)で発電電動機70を駆動することもできる。
【0047】
図6は並列接続態様の別の例を示している。スイッチング素子101及びスイッチング素子103がON、スイッチング素子102がOFFとされる。この接続態様の場合、発電電動機70をジェネレータとして機能させて蓄電素子46及び47を充電することができ、太線矢印はその場合の電流の流れを例示している。
【0048】
図7は直列接続態様の例を示している。スイッチング素子101及び103がOFF、スイッチング素子102がONとされる。この接続態様の場合、直列に接続された蓄電素子46及び47の電圧で発電電動機70を駆動することができ、発電電動機70により大きな電力を供給できる。本実施形態の場合、
図5の並列接続態様において蓄電素子47が充電されると、蓄電素子47の電位が蓄電素子46の電位と同電位とされ、これを直列に接続することで、蓄電素子46の二倍の電位差の電圧を発電電動機70に供給できる。
【0049】
このとき、蓄電素子46の負極と蓄電素子47の正極とがグランドに接続されているので、蓄電素子46の正極は+12V、蓄電素子47の負極は−12Vである。したがって、インバータ90には、−12V〜+12Vの電圧が印加される。同じ電位差(24V)で、0V〜24Vの電圧をインバータ90に印加する構成では、ハイサイドアームを構成するスイッチング素子91に高電圧がかかり、そのON/OFFに必要なゲートGの電圧が高くなる。そのため、高いゲート電圧を得る為の専用部品を必要とする場合があり、インバータ90を新規に設計、製造しなければならない場合がある。これはコストアップの要因となる。
【0050】
一方、本実施形態の構成によると、インバータ90には−12V〜+12Vの電圧が印加されるので、グランド電位から見てハイサイドアームのスイッチング素子91に対する電圧を低く抑えることができ、専用部品を必須としない。このため、コストアップを抑制しつつ、
発電電動機の電力供給量を切り替えることができる。
【0051】
<制御例>
ECU80による切替回路100の切替制御例について
図8を参照して説明する。
図8は自動二輪車1のメインスイッチがONとされた場合に実行される処理例を示しており、特に、エンジンEを始動する場合の処理を例示している。
【0052】
S1では切替回路100を
図5の並列接続態様に制御する。これにより蓄電素子47を蓄電素子46で充電できる。自動二輪車1の停車中に蓄電素子47は放電して空になっている場合が想定される。そこで本実施形態では、まず、蓄電素子47を充電するようにしている。
【0053】
S2ではスタータスイッチがONとされたか否かを判定する。ONとされた場合、S3へ進む。S3では切替回路100を
図7の直列接続態様に制御する。これにより、発電電動機70に対してより大きな電力を供給可能となる。なお、スタータスイッチがONとされたときに蓄電素子47の充電量が不十分な場合がある。その場合、蓄電素子47の充電量が規定量に達するまで、S1の並列接続態様を維持してもよい。蓄電素子47の充電量が規定量に達したか否かは、並列接続態様の経過時間が規定時間に達したか否かを基準としてもよいし、蓄電素子47の充電量を検知するセンサを設け、そのセンサの検知結果を基準としてもよい。
【0054】
S4ではインバータ90を制御して発電電動機70を回転駆動しつつ、エンジンEを始動する。発電電動機70にはより大きな電力が供給されるので、エンジンEをよりスムーズに始動させることが可能となる。特に本実施形態のように単気筒エンジンでは、エンジンEが圧縮工程で停止していて始動する場合、クランク軸51の回転により大きなトルクが必要となる。しかし、蓄電素子46の電圧の倍の電圧を発電電動機70に印加することで、エンジンEの始動性を向上できる。S4ではまた、インバータ90による発電電動機70の駆動開始からの時間を計時する。これは蓄電素子47の放電時間の計時である。
【0055】
S5ではエンジンEの始動に成功したか否かを判定する。エンジンEの始動に成功したか否かは例えばクランク角センサ32の検知結果から判定することができる。始動に成功したと判定した場合はS6へ進み、始動していないと判定した場合はS7へ進む。S7ではS4で計時を開始した蓄電素子47の放電時間が規定時間に達したか否かを判定する。規定時間に達した場合はS1へ戻り、切替回路100を
図5の並列接続態様に制御する。これにより、蓄電素子47が過放電することを防止でき、その逆充電や劣化を回避することができる。規定時間は、例えば、コンマ数秒(例えば数十ms〜数百ms)から1秒の範囲内の時間とすることができる。規定時間に達していない場合はS5へ戻ってエンジンEの始動を待つ。
【0056】
S6では切替回路100を
図6の並列接続態様に制御する。発電電動機70はジェネレータとして機能させ、その発電により蓄電素子46を充電しつつ、負荷81に電力を供給することができる。以上により一回の処理が終了する。
【0057】
なお、
図8の制御例はアイドルストップ制御後にエンジンEを再始動する場合にも適用できる。この場合、例えば、アイドルストップ制御中はS1の処理を行い、S2の始動操作の判定に代えて、再始動条件の成立判定(例えば加速操作があるか否か)を行えばよく、他の処理は同様である。
【0058】
図9は自動二輪車1のエンジンEの始動後における切替回路100の切替制御例を示しており、主に走行中での制御例である。ライダが急加速操作を行った場合に直列接続態様とし、自動二輪車1の加速をアシストする。この処理はエンジンEの回転数が規定回転数以上の場合に実行することができる。規定回転数は、遠心クラッチが接続するエンジン回転数より低くてもよいし、高くてもよい。つまり、エンジンEの駆動中であれば、自動二輪車1が停止していてもよいし、車速が出ている状態であってもよい。
【0059】
S11では、スロットルセンサ31の検知結果からアクセル開度の加速側の変化量を演算する。S12ではS11で演算した変化量が規定値以上であるか否かを判定する。規定値以上であると判定した場合、急加速が要求されたと判断してS13へ進む。規定値未満の場合は一回の処理を終了する。
【0060】
S13では切替回路100を
図7の直列接続態様に制御する。これにより、発電電動機70に対してより大きな電力を供給可能となる。S14ではインバータ90を制御して発電電動機70を回転駆動しつつ、エンジンEの出力をアップして加速する。これにより、自動二輪車1の加速性能が一時的に向上し、ドライバビリティを向上できる。また、蓄電素子47の放電時間の計時を開始する。
【0061】
S15では蓄電素子47の放電時間が規定時間に達したか否かを判定する。規定時間に達した場合はS16へ進み、切替回路100を
図6の並列接続態様に制御する。これにより、蓄電素子47が逆充電されることを防止でき、その劣化を回避することができる。規定時間は、蓄電素子47の容量を大きくした場合、例えば、コンマ数秒(例えば0.1秒)から数秒の範囲内の時間とすることができる。以上により一回の処理を終了する。
【0062】
なお、本実施形態の場合、
図8のS6の処理によりエンジンEの始動後は基本的に切替回路100が
図6の並列接続態様に維持され、蓄電素子46及び47が充電される。したがって、S13の処理において切替回路100を
図7の直列接続態様へ切り替えるにあたり、
図8のS1のように蓄電素子47を充電することはしていない。
図8のS1のように蓄電素子47を充電する処理を行ってもよいが、この処理を省略する方が加速操作に対する反応がよくなりドライバビリティを向上できる。一方、S13の処理において切替回路100を
図7の直列接続態様へ切り替えるにあたり、蓄電素子47の蓄電量を確認し、十分な充電量が確認できた場合に切り替えてもよい。その場合、蓄電素子47の充電量を検知するセンサを設け、そのセンサの検知結果を基準としてもよい。
【0063】
<他の実施形態>
平滑コンデンサ93と蓄電素子47とを兼用してもよい。これにより部品数の増加を抑制することができる。
図10はその一例を示す回路図である。上記実施形態の回路と異なる点について説明する。
【0064】
図10の例の切替回路100は、複数のスイッチング素子104〜107を備える。本実施形態の場合、スイッチング素子104〜107はスイッチング素子91及び92と同様にMOSFETである。スイッチング素子104は、配線90aと蓄電素子47の正極との間に位置してこれらに接続されている。スイッチング素子106は、配線90bと蓄電素子47の負極との間に位置してこれらに接続されている。配線90bにはダイオード114が設けられている。
【0065】
スイッチング素子105は蓄電素子47の正極と配線90cとの間に位置してこれらに接続されている。配線90cはグランドに接続されている。スイッチング素子107は蓄電素子47の負極と配線90cとの間に位置してこれらに接続されている。スイッチング素子104〜107のON/OFFを切り替えることにより、蓄電素子46及び47と、インバータ90との接続状態を切り替えることができる。
【0066】
図5の並列接続態様(蓄電素子46による蓄電素子47の充電)と等価な回路とする場合、スイッチング素子104をONとし、スイッチング素子105〜107をOFFとする。
図6の並列接続態様(発電電動機70による蓄電素子46及び47の充電)と等価な回路とする場合、スイッチング素子104、107をONとし、スイッチング素子105、106をOFFとする。
図7の直列接続態様と等価な回路とする場合、スイッチング素子105及び106をONとし、スイッチング素子104及び107をOFFとする。
【0067】
本発明は上記実施の形態に制限されるものではなく、本発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、本発明の範囲を公にするために、以下の請求項を添付する。