【文献】
薬学雑誌,1980年,Vol. 100, No. 5,p. 546-552
【文献】
Nutrients,2019年 2月25日,Vol. 11, No. 483,p. 1-18
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
白麹菌(Aspergillus kawachii)の菌体抽出物中に14−デヒドロエルゴステロール及び/又はエルゴステロールを含有する請求項1に記載のアルギナーゼ1産生促進剤。
白麹菌(Aspergillus kawachii)の菌体抽出物、14−デヒドロエルゴステロール、エルゴステロールから選択される1以上の物質を有効成分とする尿素回路活性化剤。
白麹菌(Aspergillus kawachii)の菌体抽出物、14−デヒドロエルゴステロール、エルゴステロールから選択される1以上の物質を有効成分とする高アンモニア血症改善剤。
【背景技術】
【0002】
アルギナーゼは、尿素生成反応を触媒する酵素である。ヒトをはじめ哺乳類、両生類の肝臓、腎臓などに含まれ、尿素回路の一員として働き、アルギニンを分解してオルニチンと尿素を生成する。そしてヒトの場合は、尿素を窒素代謝の最終産物として排出する。また哺乳類、両生類以外にも硬骨魚類や植物、酵母、カビ類にも含まれる。さらにアルギナーゼは、鉄、コバルト、マンガンなどの2価の金属イオンによって活性化され、水銀イオン、銀イオン、クエン酸などによって不活性化される。
一般に、運動後などに増加する血中アンモニアは、肝臓で尿素合成により解毒(代謝)、排泄される。アンモニアの代謝過程は、肝細胞で尿素回路によって尿素となり、腎臓より尿中に排泄される。このため、肝臓機能の低下による尿素サイクルの活性の低下、腸内におけるアンモニアの生産が増加する場合、血中アンモニア濃度が高い値となるといわれている。従って、先天性尿素サイクル酵素欠損症及び肝機能異常の場合、高アンモニア血症を発症する場合が多い。
【0003】
尿素回路は上記のとおり、肝臓で主に機能し、アンモニアを尿素に変換する解毒機能を果たしている。この機能が低下すると、アンモニアによって肝臓細胞が傷害されて、様々な肝臓疾患を生じ、高アンモニア血症など重篤な症状を引き起こすことが知られている。高アンモニア血症の患者では、嘔気、嘔吐、意識障害、嗜眠、痙攣、呼吸障害などの症状が出現し、治療が遅れると生命の危険が生じることがある。
【0004】
体内で生成されたアンモニアは、血中を移動し、肝臓で尿素回路に入り、カルバモイルリン酸を経て、シトルリンに変換され、最終的にアルギニンから尿素が生成され解毒される。尿素回路の酵素の一つであるアルギナーゼは、アルギニンからオルニチンを生成する反応を制御する酵素である。アルギニンはアンモニア解毒作用の重要な役割を担っている。
【0005】
アルギナーゼは、複数のアイソタイプが存在する。例えば、赤血球中のアルギナーゼと肝臓由来のアルギナーゼを識別できる抗体が知られている(特許文献1)。肝臓中のアルギナーゼはアルギナーゼ1として命名分類されており、肝臓中のアルギナーゼ活性の大部分を担っている。肝臓中のアルギナーゼ1の活性が低下することで、アンモニアの解毒が遅滞し、高アンモニア血症が発症する。したがってアルギナーゼ1の活性を促進することで高アンモニア血症などの障害の予防や治療が可能となる。
【0006】
アルギナーゼの産生促進や活性化作用を有する物質として生薬 木通(モクツウ)の抽出エキス、バクモンドウエキス、アンズ果汁、ガガイモ科カモメヅル属の植物エキスなどの植物抽出物にこの作用があることが特許文献2に記載されている。また特許文献2にはスチグマステロールやオレアノール酸にアルギナーゼ1の産生促進作用があることが記載されている。さらにまた、スチグマステロールやオレアノール酸などのアルギナーゼ1産生促進作用を利用して、尿素回路活性化剤や高アンモニア血症改善剤として利用できることが記載されている。
【0007】
一方、近年細菌やカビなど微生物の培養産物に注目が集まっている。なかでも白麹と呼ばれる白色を呈する麹菌(Aspergillus kawachii)が注目されている。この白麹菌の新しい用途として、血圧上昇及び血糖上昇(特許文献3)、タイトジャンクション形成に関連する遺伝子の活性化(特許文献4)、コラゲナーゼ阻害作用(特許文献5)、ヒアルロニダーゼ阻害作用(特許文献6)、14−デヒドロエルゴステロール産生(特許文献7、8)などを例示できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、白麹菌(Aspergillus kawachii、以下「白麹菌」)の菌体抽出物を含有するアルギナーゼ1の産生促進剤に係る発明である。また本発明は、14−デヒドロエルゴステロール及び/又はエルゴステロールを有効成分として含有するアルギナーゼ1産生促進剤の発明である。
本発明において、アルギナーゼ1とは、アルギニンを分解してオルニチンと尿素を生成する酵素であって、主として肝臓中に存在するアイソタイプであり、アルギナーゼ−Iとも標記される。本願明細書においてはARG−1と略記する場合がある。
【0014】
白麹菌の菌体抽出物は、ARG−1産生促進作用を有する物質の一つとして、抽出物中に、14−デヒドロエルゴステロール(以下「14−DHE」と略記する)及び/又はエルゴステロールを含有している。
【0015】
14−DHEは以下の構造式の化合物である。
【0017】
エルゴステロールは以下の構造式の化合物である。
【0019】
14−DHE及びエルゴステロールは、下記に示す白麹菌の菌体から抽出して得ることができる。あるいは化学的に合成してもよい。
【0020】
本発明において、白麹菌は、食品や酒類の醸造に用いるものであれば使用可能である。また、独立行政法人理化学研究所バイオリソース研究センター(BRC)に保管されているバイオリソースなどの微生物の保存分譲株であってもよい。このBRC分譲株としては、Aspergillus kawachii NBRC4308株(独立行政法人理化学研究所バイオリソース研究センター)を例示できる。
また市販されている種菌は、秋田今野商店、樋口松之助商店、日本醸造工業社などから入手することができる。
【0021】
白麹菌の培養は、麹菌の培養に通常用いられる培養方法であれば、固体培養、液体培養のいずれの方法でも採用できるが、菌体を回収するためには、液体培養が好ましい。
液体培養の培地は、白麹菌の生育に適した組成であれば、どのような組成でもよく、天然培地、合成培地のいずれであってもよい。
【0022】
固体培地としては、蒸煮穀類(例えば、米、小麦、大麦、ライ麦、トウモロコシ、アワ、ヒエなどの種子、糠又はふすま)などの天然培地や、寒天培地などの合成培地が挙げられる。上記のような天然培地の場合には、培地中の水分含量を約50〜60%に維持することが望ましい。
【0023】
液体培地に含まれる窒素源としては、例えば麦芽エキス、酵母エキス、肉エキス、大豆、カゼイン又は大豆蛋白、蛋白加水分解物、ペプトン、コーンスティープリカー、無機窒素類、例えばアンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウムなどが挙げられる。とりわけ、麦芽エキス、酵母エキス、大豆蛋白、カゼイン、蛋白加水分解物などの窒素源を含む培地が好ましい。
【0024】
培地に含まれる炭素源としては、グルコース、マルトース、ショ糖、乳糖、デンプンなどの糖類が挙げられる。
【0025】
無機塩としては、リン酸塩、マグネシウム塩、鉄塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩、銅塩、マンガン塩、コバルト塩などが挙げられる。
【0026】
培養方法は、固体培養であれば、静置培養であるか、あるいは、ふすまなどの蒸煮穀類を培地とする場合には、通気のために定期的に培地をかき混ぜて培養を行うことができる。液体培養の場合には、条件制御可能な醗酵槽を用いて、例えば攪拌培養、通気培養、振盪培養などを挙げることができる。培養は、好気的条件で行われる。攪拌速度や通気量は、培養条件に応じて適宜選択される。
【0027】
菌体又は胞子の初期接種量は、例えば10
3個/ml〜10
10個/ml、好ましくは10
4個/ml〜10
7個/ml、より好ましくは10
4個/ml〜10
6個/mlである。
【0028】
培養温度は、微生物菌種に適した温度を選択する。温度は、通常15〜45℃、好ましくは20〜40℃、より好ましくは20〜35℃である。固体培養の場合には、醗酵熱が発生するため、必要に応じて、適当な手段で冷却し、適温に保持することが必要である。
【0029】
培養時間は、通常、1日〜15日であり、これより長い時間であってもよいが、菌の生育が定常状態に達した段階で培養を終了してよい。
本発明で用いる培地は麦芽エキスを含むことが好ましい。麦芽エキスは、麦、特に大麦の種子を発芽させ、場合により焙煎した後、それを水などの溶媒により抽出して得られる抽出物であり、マルトース、グルコース、フルクトースなどの還元糖を多く含み、その他ペプチド、アミノ酸、プリン、ビタミンなどを含むことが知られている。培地には、麦芽エキスの他に、マルトース、グルコース、ショ糖、乳糖などの糖やデンプン、あるいは酵母エキスを含有していてもよい。また、培地は液状のものを使用し、液体培養とすると、培養の制御が比較的容易である。
【0030】
培養により得られた菌体は、適切なろ過や分離方法を用いて培地から回収する。抽出物を得るために水又はエタノール、あるいは水とエタノールの混合溶液によって抽出することが好ましい。菌体を浸漬するエタノールと水を含む浸漬液中のエタノールの濃度は20(w/w)%以上、特に30(w/w)%以上、とりわけ40(w/w)%以上であることが好ましく、かつ95(w/w)%以下、特に90(w/w)%以下、とりわけ80(w/w)%以下であることが好ましい。浸漬液は、水とエタノールとからなるエタノール水溶液であってもよい。エタノールと水を含む浸漬液に浸漬して抽出する場合は1時間以上、特に6時間以上、とりわけ12時間以上、さらには24時間以上の時間をかけて行うことが好ましい。
【0031】
エタノールと水を含む浸漬液に浸漬した菌体は、フィルタープレス等の分離手段を用いて、抽出液と菌体を分離したのち、抽出液を回収する。次いで抽出液中に含有されるエタノール及び水を、ロータリーエバポレーターや真空乾燥機等の乾燥手段を用いて除去し、白麹菌の菌体の抽出物を得る。上記に記載の方法により得られる白麹菌抽出物には、14−DHEを10ng/mg以上、より好ましくは50ng/mg以上、特に好ましくは100ng/mg以上含有する。
この白麹菌の菌体抽出物は、そのままあるいは適宜適切な溶媒や倍散剤等に希釈して製剤化することでARG−1活性化剤とすることができる。
【0032】
白麹菌の菌体抽出物中、あるいは菌体中には、14−DHE及び/又はエルゴステロールが含有されている。14−DHE又はエルゴステロールを選択的に回収し、これをARG−1活性剤とすることができる。
14−DHE又はエルゴステロールの選択的回収は特許文献7に開示された方法に従って実施することができる。
回収には、菌体を、約10〜20%(質量/体積)水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ水で煮沸処理するか、あるいは、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール中で超音波発生装置、ダイノミル、フレンチプレス等の菌体破壊装置で菌体を破壊処理するか、あるいは、イソプロパノールに一晩以上浸漬した後に超音波発生装置、ダイノミル、フレンチプレス等の菌体破壊装置で菌体を破壊処理する、などの手段によって抽出液を回収し、その後、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等のn−アルカン溶媒との分配を行ってn−アルカン溶媒画分を回収する。いずれの方法であっても、14−DHE又はエルゴステロールを回収可能であるが、イソプロパノールに約10〜24時間浸漬した後、超音波発生装置、ダイノミル、フレンチプレス等の菌体破壊装置で菌体を破壊処理することを含む手段が好ましい。
【0033】
上記の画分はさらに、必要に応じて濃縮した後に、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーにかけて精製するか、あるいは、結晶化などの公知の手法によって、14−DHE及び/又はエルゴステロールを含むARG−1産生促進活性を選択的に精製又は濃縮することができる。
濃縮あるいは分離精製したARG−1産生促進活性物質又は産生促進活性画分、あるいは14−DHEはそのまま、あるいは適切な分散媒に分散して、製剤化することで本発明のARG−1活性剤とすることができる。また薬学的に許容される担体を配合することができる。薬学的に許容される担体としては、例えば油性成分、滑沢剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤などが挙げられる。また、甘味剤、酸味剤、香味剤、着色剤、色素等の添加物を適宜、適量含有してもよい。
【0034】
油性成分としては、各種脂肪酸エステル、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール等が例示される。滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、フマル酸ステアリルナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール(マクロゴール)、タルク等が例示できる。
【0035】
結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ゼラチン、デンプン、デキストリン、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、トラガント、精製ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ポリビニルアルコール(部分けん化物)、エチルセルロース、プルラン、ポリエチレングリコール(マクロゴール)等が例示できる。
【0036】
崩壊剤としては、カルボキシメチルセルロースカルシウム(カルメロースカルシウム)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(クロスカルメロースナトリウム)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋型カルボキシメチルセルロースナトリウム(クロスカルメロースナトリウム)、粉末セルロース、セルロースまたはその誘導体、架橋型ポリビニルピロリドン(クロスポピドン)、デンプン、カルボキシメチルスターチ、ヒドロキシプロピルスターチ、寒天等が例示できる。
【0037】
賦形剤としては、結晶セルロース、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム等の多糖類、α化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、コーンスターチ、ポテトスターチ等のスターチ及びその誘導体、ショ糖、グルコース、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、ラクチトール、トレハロース、パラチノース、パラチニット(還元パラチノース)、マンニトール、マルチトール、ラクチトール、乳糖、果糖、粉末還元麦芽糖水飴等の糖類および糖アルコール類、粉末セルロース、部分α化デンプン、エチルセルロース等のセルロース及びその誘導体、軽質無水ケイ酸、酸化チタン、水酸化アルミニウムゲル、合成ケイ酸アルミニウム、三ケイ酸アルミニウム、二酸化ケイ素、カオリン、カカオ脂、クエン酸またはその塩、ステアリン酸またはその塩、リン酸水素カルシウム、リン酸水素ナトリウムなどが例示できる。
【0038】
甘味料としては、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、サッカリンナトリウム、スクラロース、ステビア、ソーマチン等が例示される。酸味料としては、クエン酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸等が例示される。香味剤としては、メントール、カンフル、ボルネオール、リモネン等のモノテルペン類、各種香料等が例示できる。
【0039】
本発明のアルギナーゼ1産生促進剤に係る各種製剤の剤型は、特に限定されるものではなく、投与形態に応じて適宜選択され得る。経口投与の場合、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、細粒剤、シロップ剤、徐放性錠、タブレット、咀嚼錠剤またはドロップ剤等が挙げられる。
【実施例】
【0040】
以下に、実施例を挙げて、本発明について更に詳細に説明する。
【0041】
実施例1:白麹菌体の抽出物の製造例
(1)麹エキスの調製
白麹(Aspergillus kawachii NBRC4308)をポテトデキストロース寒天培地(Difco、BD社)に植菌し、25℃で7日間静置培養した。0.01%のTween 20を含む麦芽エキス培地(Difco Malt Extract Broth、BD社)に胞子を形成した菌体を懸濁し、フィルター濾過を行なったものを胞子溶液とした。オートクレーブ滅菌後の麦芽エキス培地50mLを容量200mLのバッフル付三角フラスコに入れ、そこに1.0×105胞子/mLの濃度になるように胞子溶液を添加し、30℃、120rpmで20時間振盪培養を行ったものを前培養液とした。
【0042】
次に5Lジャーファーメンター(丸菱バイオエンジ社)に麦芽エキス培地3.5Lを張り、オートクレーブ滅菌処理した後、前培養液の全量50mLを添加し、30℃、120rpmの条件で96時間培養を行なった。その後、培養した菌体を回収し、エタノールにて一晩浸漬後、ボルテックスで1分間攪拌を行い、遠心分離して得た上清をドライアップしたものを麹エキスとした。
【0043】
(2)麹エキス中の14−DHEの単離と確認
上記(1)で得られた麹エキスをエタノールで10mg/mLに希釈し、次いでエタノール/アセトニトリルで1mg/mLに希釈し、さらに0.22μm径のPTFE膜で濾過したものをHPLCサンプルとした。これをDevelosil C30−UG−3(10×250mm、野村化学社)を用いた高速液体クロマトグラフィー(アセトニトリル/イソプロパノール=99/1)に供して分析した。麹エキス中の14−DHEピークを確認し、麹エキス1mg中に14−DHEが54μg含まれることを確認した。
【0044】
(3)麹エキス中のエルゴステロールの単離と確認
上記(1)で得られた麹エキスをエタノールで0.2mg/mLに希釈し、次いでエタノール/アセトニトリルで1mg/mLに希釈し、さらに0.22μm径のPTFE膜で濾過したものをHPLCサンプルとした。これをDevelosil−ODS−UG−5(10×250mm、野村化学社)を用いた高速液体クロマトグラフィー(アセトニトリル/イソプロパノール=99/1)に供して分析した。麹エキス中のエルゴステロールピークを確認し、麹エキス1mg中にエルゴステロールが3.5μg含まれることを確認した。
【0045】
実施例2: 白麹菌の菌体抽出物のARG−1産生促進作用測定試験
1)試験方法
実施例1で調製した白麹菌の菌体抽出物を用いてARG−1の産生促進作用を試験した。
細胞培養及びARG−1産生促進作用測定方法
1.ヒト新生児ケラチノサイト(Thermo Fisher Scientific)を10000cells/cm
2の細胞密度で12 well plateに播種し、EpiLife(登録商標) Medium with 60μM Calcium(Thermo Fisher Scientific)にHumedia−KG2増殖添加剤(倉敷紡績社)を添加した培地で2日間培養した。
2.培養終了後、白麹菌の菌体抽出物を下記の表1に示す量を添加し(n=3)、2日間培養した。
3.培養後に細胞をT−PER Buffer(Thermo Fisher Scientific)で溶解し、溶解液の蛋白質濃度をBCA protein assay kit(Thermo Fisher Scientific)で定法に従って測定し、ウェスタンブロッティング用の試験試料を調製した。
4.試験試料当たり1.5μgの蛋白質をXV PANTERA Gel 5〜20 %(DRC)で電気泳動後、トランスブロット(登録商標) Turboシステム(Bio−rad)で、トランスブロット(登録商標) Turbo PVDF 転写パックを使い、2.5A 7minの条件でメンブレンに転写した。
5.この転写メンブレンについて、Starting Block Blocking Buffer(Thermo Fisher Scientific)によりブロッキングを行った。
6.1次抗体「Arginase I抗体(8C9):(Santa Cruz Biotechnology)」を1000倍希釈、または「β−Actin抗体(C4)(Santa Cruz Biotechnology)」、2次抗体「Goat anti−Mouse IgG(H+L) Secondary Antibody,HRP(Thermo Fisher Scientific)」を10000倍希釈で反応させた。
7.その後、「ECL prime Western Blotting Detection Reagent(GE Healthcare Life Sciences)」を用いて、LAS−4000mini(富士フイルム社)で検出を行った。
8.検出したバンドの発光強度はImage J(NIH)を用いて数値化した。
9.検出したARG−1の各バンドのintensityを各β−actinのintensityで補正した数値について、無処理またはvehicle処理に対する比を算出した。
【0046】
2)試験結果
試験結果を下記表1及び
図1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
表1及び
図1に示すように白麹菌の菌体抽出物は、12.5μg/mlの添加によってアルギナーゼ1の産生を顕著に促進した。この効果は添加量に依存していた。
【0049】
実施例3:白麹菌の菌体抽出物より得た14−DHEのARG−1産生促進作用測定試験
1)試験方法
実施例1で得た精製14−DHEを用いてARG−1の産生促進作用を試験した。なお測定方法は、白麹菌の菌体の試験と同一の条件で行った。また14−DHEの添加量は、培養液当たり6.25μM、25μMとした。
【0050】
2)試験結果
試験結果を下記表2及び
図2に示した。
【0051】
【表2】
【0052】
表2及び
図2に示すように、14−DHEは、濃度依存的にアルギナーゼ1産生を促進した。
【0053】
実施例4:エルゴステロールのARG−1産生促進作用測定試験
1)試験方法
エルゴステロール(東京化成工業社)を用いてARG−1の産生促進作用を試験した。なお測定方法は、白麹菌の菌体の試験と同一の条件で行った。またエルゴステロールの添加量は、培養液当たり25μM、100μMとした。
【0054】
2)試験結果
試験結果を下記表3及び
図3に示した。
【表3】
【0055】
表3及び
図3に示すようにエルゴステロールは、25μg/mlの添加によってアルギナーゼ1の産生を顕著に促進した。この効果は添加量に依存していた。