(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、車両のメーカー毎にインフレータ109のアースの取り方が異なる。上記従来技術のように、インフレータ109をプラス側電路104に繋いで静電気を逃がしたいという要望もあれば、その逆に、インフレータ109をプラス側電路104に繋がずに静電気を逃がしたいという要望もある。
【0009】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、インフレータをプラス側電路に繋がずに、そのインフレータから静電気を逃がすことのできるステアリングホイールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するステアリングホイールは、乗物のボディにアースされる芯金と、前記芯金に支持され、かつホーン装置に接続されるプラス側電路の一部を構成するバッグホルダ、締結具により前記バッグホルダに取付けられるエアバッグ、及び、自身の外周部分にフランジ部を有し、かつ前記フランジ部において前記締結具により前記バッグホルダに取付けられるインフレータを備えるエアバッグ装置とが設けられたステアリングホイールであって、前記バッグホルダを、前記エアバッグ装置の構成部材のうち、少なくとも前記フランジ部及び前記締結具から絶縁させる絶縁部材がさらに設けられ、前記フランジ部及び前記締結具のうちの少なくともフランジ部と前記芯金とが結線具により電気的に接続されている。
【0011】
上記の構成によれば、プラス側電路の一部を構成するバッグホルダは、絶縁部材により、エアバッグ装置の構成部材のうち、少なくともインフレータのフランジ部及び締結具から絶縁させられる。この構成により、インフレータ及び締結具はバッグホルダから電気的に独立させられる。また、フランジ部及び締結具のうちの少なくともフランジ部と、乗物のボディにアースされる芯金とは、結線具により電気的に接続される。そのため、エアバッグが擦れる等して静電気が発生した場合、その静電気は、インフレータのフランジ部及び締結具のうちの少なくともフランジ部、結線具及び芯金を介して乗物のボディに逃がされる。このように、インフレータがプラス側電路に繋がれることなく、そのインフレータから静電気が逃がされる。
【0012】
上記ステアリングホイールにおいて、前記エアバッグの開口部の周縁部、前記バッグホルダ及び前記フランジ部には、それぞれ挿通孔が設けられ、前記締結具は、前記エアバッグ、前記バッグホルダ及び前記フランジ部の各挿通孔に挿通されるボルトを備え、前記絶縁部材は、前記バッグホルダと前記フランジ部との間に配置される第1絶縁部を有するとともに、前記ボルトと前記バッグホルダにおける前記挿通孔の壁面との間に配置される第2絶縁部を有することが好ましい。
【0013】
上記の構成によれば、バッグホルダとフランジ部との間に配置される第1絶縁部により、バッグホルダがフランジ部から絶縁される。また、ボルトとバッグホルダにおける挿通孔の壁面との間に配置される第2絶縁部により、バッグホルダがボルトから絶縁される。このようにしてバッグホルダが、絶縁部材により、エアバッグ装置の構成部材のうち、フランジ部及び締結具から絶縁される。
【0014】
上記ステアリングホイールにおいて、前記エアバッグの内部であって、前記バッグホルダを挟んで前記フランジ部とは反対側に配置されるリングリテーナをさらに備え、前記エアバッグの開口部の周縁部は、前記リングリテーナが前記締結具により前記バッグホルダ側へ押え付けられることで、前記バッグホルダに取付けられるものであり、前記絶縁部材は、前記バッグホルダと前記エアバッグの開口部の周縁部との間に配置される第3絶縁部をさらに有することが好ましい。
【0015】
上記の構成によれば、リングリテーナが、締結具によりバッグホルダ側へ押え付けられると、エアバッグの開口部の周縁部がリングリテーナと第3絶縁部とによって挟み込まれる。このようにして、エアバッグが、自身の開口部の周縁部においてバッグホルダに取付けられる。また、上記第3絶縁部により、バッグホルダがリングリテーナから絶縁される。
【0016】
上記ステアリングホイールにおいて、前記第1絶縁部、前記第2絶縁部及び前記第3絶縁部は、同一の樹脂材料により一体に形成されていることが好ましい。
上記の構成によれば、バッグホルダのフランジ部側に位置する第1絶縁部と、同バッグホルダのリングリテーナ側(エアバッグ側)に位置する第3絶縁部とが、バッグホルダの挿通孔内の第2絶縁部によって連結される。こうした構成により、第1絶縁部、第2絶縁部及び第3絶縁部を有する絶縁部材は、バッグホルダに装着されて、バッグホルダに一体となった状態になる。そのため、バッグホルダと絶縁部材とが別々に形成されて、後で組付けられる場合に比べ、絶縁部材の装着されたバッグホルダの製造が容易となる。
【0017】
なお、上記のような絶縁部材が一体となったバッグホルダは、例えば、インサート成形により形成することが可能である。すなわち、バッグホルダがインサートとされて金型内に装填され、その金型内に溶融樹脂が注入及び硬化される。すると、バッグホルダをその厚み方向の両側から第1絶縁部及び第3絶縁部によって挟み込み、かつそれらの第1絶縁部及び第3絶縁部をバッグホルダの挿通孔内の第2絶縁部によって連結した絶縁部材が、バッグホルダに装着された状態で形成される。
【0018】
上記ステアリングホイールにおいて、前記リングリテーナは、前記エアバッグの開口部の周縁部を前記バッグホルダ側へ押え付ける環状の押え部を有しており、前記第3絶縁部は、前記バッグホルダにおいて、前記押え部により前記エアバッグの開口部の周縁部が押え付けられる環状部分を少なくとも含む箇所に設けられていることが好ましい。
【0019】
上記の構成によれば、締結具が締付けられると、リングリテーナにおける環状の押え部が、エアバッグにおける開口部の周縁部を伴って、バッグホルダ側へ押される。開口部の上記周縁部は、絶縁部材の第3絶縁部に押え付けられる。
【0020】
ここで、仮に、第3絶縁部がバッグホルダの挿通孔の周辺部分にのみ設けられると、開口部の上記周縁部は、第3絶縁部に接触した箇所のみ(挿通孔の周辺部分のみ)においてバッグホルダに取付けられる。開口部の上記周縁部のうち挿通孔から離れた箇所は、リングリテーナの押え部によって押え付けられず、バッグホルダに取付けられない。そのため、エアバッグが展開及び膨張したときに、開口部の上記周縁部のバッグホルダに対する取付け箇所(挿通孔の周辺部分)に対し、応力が集中して加わる。
【0021】
この点、上記の構成では、第3絶縁部は、バッグホルダにおいて、押え部によりエアバッグの開口部の周縁部が押え付けられる環状部分に設けられていて、開口部の周縁部のうち、第3絶縁部に接触する箇所の面積が多くなる。開口部の周縁部の全体が第3絶縁部に押え付けられてバッグホルダに取付けられる。そのため、エアバッグが展開及び膨張したときには、開口部の上記周縁部に対しては、応力が分散された状態で加わる。
【0022】
上記ステアリングホイールにおいて、前記第1絶縁部は、前記バッグホルダにおいて、前記フランジ部が押え付けられる環状部分を少なくとも含む箇所に設けられていることが好ましい。
【0023】
上記の構成によれば、締結具が締付けられると、インフレータのフランジ部がバッグホルダ側へ押される。フランジ部は、絶縁部材の第1絶縁部に押え付けられる。
ここで、仮に、第1絶縁部がバッグホルダの挿通孔の周辺部分にのみ設けられると、同バッグホルダとフランジ部との間に、第1絶縁部の設けられていない箇所が生ずる。この箇所では、バッグホルダとフランジ部との間に隙間が生ずる。インフレータが作動して、エアバッグを展開及び膨張させるためのガスを発生した場合、そのガスの一部が上記隙間を通じてエアバッグから漏れ出るおそれがある。
【0024】
この点、上記の構成では、第1絶縁部は、バッグホルダにおいて、フランジ部が押え付けられる環状部分を少なくとも含む箇所に設けられていて、バッグホルダとフランジ部との間に隙間が生じにくい。従って、ガスがエアバッグから漏れ出ることが抑制される。
【発明の効果】
【0025】
上記ステアリングホイールによれば、インフレータをプラス側電路に繋がずに、そのインフレータから静電気を逃がすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、車両用のステアリングホイールに具体化した一実施形態について、
図1〜
図11を参照して説明する。
図1に示すように、車両10内の運転席11の前方には、同車両10を操舵する際に運転者Dによって操作される操舵装置12が設けられている。操舵装置12は、ステアリングコラム14と、ステアリングコラム14の後側に回転操作可能に配置されたステアリングホイール15とを備えている。ステアリングコラム14内には、ステアリングホイール15の回転をステアリングギヤボックス(図示略)に伝達するステアリングシャフト16が配置されている。ステアリングシャフト16は、後側ほど高くなるように傾斜した状態で配置されている。
【0028】
本実施形態では、ステアリングホイール15の各部について説明する際には、ステアリングシャフト16の軸線L1を基準とする。この軸線L1に沿う方向をステアリングホイール15の「前後方向」といい、軸線L1に直交する面に沿う方向のうち、ステアリングホイール15の起立する方向を「上下方向」というものとする。従って、ステアリングホイール15の前後方向及び上下方向は、車両の前後方向(水平方向)及び上下方向(鉛直方向)に対し若干傾いていることとなる。
【0029】
なお、
図3〜
図5、
図10及び
図11では、便宜上、ステアリングホイール15の前後方向が水平方向に合致し、同ステアリングホイール15の上下方向が鉛直方向に合致した状態で図示されている。絶縁部材51の変形例を示す
図12、及び従来技術を示す
図13についても同様である。
【0030】
図2に示すように、ステアリングホイール15は、リング部(ハンドル部、リム部と呼ばれることもある)17、パッド部18及びスポーク部19を備えている。リング部17は、運転者Dによって把持されて回転操作される部分であり、上記軸線L1を中心とした略円環状をなしている。パッド部18は、リング部17によって囲まれた空間に配置されている。スポーク部19は、リング部17及びパッド部18の間の複数箇所に設けられている。ステアリングホイール15は、中央部分にエアバッグ装置(エアバッグモジュール)30を備えている。上記パッド部18は、エアバッグ装置30の一部を構成している。
【0031】
図3に示すように、ステアリングホイール15の骨格部分は芯金22によって構成されている。芯金22は、鉄、アルミニウム、マグネシウム又はそれらの合金等によって形成されている。芯金22は、車両10のボディにアースされている(グランドGNDに接続されている)。芯金22は、上記ステアリングシャフト16の後端部に対し、一体回転可能に取付けられている。
【0032】
図3〜
図5に示すように、芯金22において、ステアリングシャフト16の周囲の複数箇所には、それぞれ貫通孔22aを有する保持部22bが設けられている。各保持部22bの前側にはクリップ23が配置されている。クリップ23は、導電性を有するばね鋼等の金属からなる線材を所定形状に屈曲させることによって形成されており、その一部において芯金22の前面に接触している。各クリップ23の一部は、貫通孔22aの前方近傍に位置している。
【0033】
車両10にはホーン装置24が設けられている。ホーン装置24を、エアバッグ装置30に対する押圧操作により作動させるための複数(上記貫通孔22aと同数)のホーンスイッチ機構40が設けられている。各ホーンスイッチ機構40は、互いに同一の構成を有しており、各保持部22bにおいて、スナップフィット構造にて芯金22に装着されている。そして、これらのホーンスイッチ機構40を介してエアバッグ装置30が芯金22に支持されている。このように、各ホーンスイッチ機構40は、エアバッグ装置30の支持機能と、ホーン装置24のスイッチ機能とを兼ね備えている。さらに、各ホーンスイッチ機構40は、エアバッグ装置30を利用してステアリングホイール15の振動を抑制、すなわち、制振する機能も有している。
【0034】
次に、エアバッグ装置30及びホーンスイッチ機構40の各々について説明する。
<エアバッグ装置30>
図3に示すように、エアバッグ装置30は、上記パッド部18に加え、バッグホルダ31、インフレータ32、エアバッグ33、リングリテーナ34及び締結具Fを備えている。
【0035】
パッド部18は、後面が意匠面をなす外皮部18aと、その外皮部18aの前側に設けられた収容壁部18bとを有している。外皮部18aと収容壁部18bとバッグホルダ31とによって囲まれる空間は、主としてエアバッグ33を収容するためのバッグ収容空間xを構成している。外皮部18aのバッグ収容空間xを形成する部位には、エアバッグ33が展開及び膨張するときに押し破られる薄肉部18cが形成されている。
【0036】
パッド部18の複数箇所には、ホーンスイッチ機構40を支持するためのスイッチ支持部18dがそれぞれ形成されている。各スイッチ支持部18dは、パッド部18の外皮部18aから前側へ延びるように、収容壁部18bと一体に形成されている。
【0037】
図3、
図6及び
図10に示すように、バッグホルダ31は、導電性を有する金属板をプレス加工することにより形成されている。バッグホルダ31は、複数のホーンスイッチ機構40を介して芯金22に支持される。詳細については後述する。
【0038】
バッグホルダ31の周縁部の複数箇所には、それぞれスリット状の係止孔31aが形成されており、ここに上記収容壁部18bの前端部に設けられた係止爪(図示略)が挿通されて係止されている。バッグホルダ31の中心部には、円形状の開口部31bが形成されている。バッグホルダ31において、開口部31bの周縁部近傍の複数箇所には、挿通孔31cが形成されている。バッグホルダ31には、インフレータ32及びエアバッグ33が取付けられている。
【0039】
より詳しくは、
図3及び
図7に示すように、インフレータ32の外殻部分は、ケース32aによって構成されている。ケース32aの内部には、エアバッグ33を展開及び膨張させるためのガスを発生するガス発生剤(図示略)が収容されている。ケース32aの略円筒状をなす外周壁には、複数のガス噴出孔32bが形成されている。ケース32aの外周壁であって、上記ガス噴出孔32bよりも前方には、フランジ部32cが形成されている。フランジ部32cにおいて、バッグホルダ31の上記挿通孔31cの前方となる複数箇所には、それぞれ挿通孔32dが形成されている。
【0040】
そして、ケース32aのフランジ部32cよりも後側部分がバッグ収容空間x側に突出するように、インフレータ32が前側からバッグホルダ31の開口部31bに挿入されている。フランジ部32cが、開口部31bの周縁部の前側に配置されている。
【0041】
図3及び
図10に示すようにエアバッグ33は、強度が高く、かつ可撓性を有する織布等の布によって形成されている。エアバッグ33は、自身の前部に開口部33aを有している。エアバッグ33のうち、少なくとも開口部33aの周縁部を除く大部分は、展開及び膨張可能に折り畳まれている。エアバッグ33における開口部33aの周縁部は、バッグホルダ31における開口部31bの周縁部の後側に配置されている。エアバッグ33の開口部33aの周縁部において、バッグホルダ31の各挿通孔31cの後方となる複数箇所には、挿通孔33bが形成されている。
【0042】
エアバッグ33を上記開口部33aの周縁部においてバッグホルダ31に取付けるために、リングリテーナ34が用いられている。
図9及び
図10に示すように、リングリテーナ34は、自身の前端部に押え部34aを有している。押え部34aは、バッグホルダ31の開口部31bと同等の円形状の開口部34bを、自身の中心部分に有しており、環状をなしている。リングリテーナ34は、押え部34aが開口部33aの周縁部の後側に位置するように、エアバッグ33内に配置されている。押え部34aは、バッグホルダ31の各挿通孔31cの後方となる複数箇所に、締結具Fの一部を構成するボルト35を有している。
【0043】
そして、リングリテーナ34の複数のボルト35は、エアバッグ33、バッグホルダ31及びインフレータ32の各挿通孔33b,31c,32dに対し、後側から挿通されている。さらに、挿通後の各ボルト35に前側からナット36が締付けられている。ナット36は、上記ボルト35とともに締結具Fを構成している。上記締結具Fの締結により、エアバッグ33がリングリテーナ34を介してバッグホルダ31に取付けられている。より詳しくは、リングリテーナ34が、締結具Fによりバッグホルダ31側へ押え付けられることにより、エアバッグ33の開口部33aの周縁部がリングリテーナ34の押え部34aとバッグホルダ31とによって挟み込まれている。このようにして、エアバッグ33が、自身の開口部33aの周縁部においてバッグホルダ31に取付けられている。また、上記締結具Fの締結により、インフレータ32がフランジ部32cにおいてバッグホルダ31に取付けられている。
【0044】
図4及び
図8に示すように、バッグホルダ31の周縁部の複数箇所には、ホーンスイッチ機構40を取付けるための取付部31dが形成されている。各取付部31dは、上述したパッド部18のスイッチ支持部18dの前方となる箇所に位置している(
図3参照)。各取付部31dには円形の取付孔31eが形成されている。
【0045】
図3に示すように、車両10に搭載されたバッテリ(図示略)にはプラス側電路38及びマイナス側電路が接続されている。プラス側電路38はホーン装置24に接続されている。バッグホルダ31は、このプラス側電路38の一部を構成している。バッグホルダ31には、その一部を前方へ切り起こしてなる被接続部31fが形成されている。プラス側電路38の他の一部は、この被接続部31fに接続されたハーネス37によって構成されている。また、プラス側電路38の他の一部は、ハーネス37とホーン装置24とを繋ぐスパイラルケーブル(図示略)によって構成されている。
【0046】
<ホーンスイッチ機構40>
図4及び
図5に示すように、各ホーンスイッチ機構40は、スナップピン41、コンタクトホルダ42、可動側接点部43、ピンホルダ44、ダンパホルダ45、弾性部材46、支持補助部材47及び付勢部材を備えている。次に、ホーンスイッチ機構40の各構成部材について簡単に説明する。
【0047】
スナップピン41は、導電性を有する金属材料によって形成されている。スナップピン41は、前後方向に延びる軸部41aを有している。スナップピン41は、この軸部41aにおいてバッグホルダ31の取付孔31eに挿通されている。軸部41aの前端面から後方へ僅かに離れた箇所には、環状の係止溝41bが形成されている。軸部41aにおいて、その前端面と係止溝41bとによって挟まれた部分は、同軸部41aの支持部41cを構成している。軸部41aの後端外周部には鍔部41dが形成されている。スナップピン41の後端部、すなわち軸部41aの後端部及び鍔部41dは、固定側接点部41eを構成している。
【0048】
コンタクトホルダ42は、絶縁性を有する樹脂材料により形成されている。コンタクトホルダ42は、後端が閉塞された筒状の周壁部42aを有しており、上記鍔部41dを含むスナップピン41の後部を覆っている。
【0049】
可動側接点部43は、導電性を有する帯状のばね鋼をプレス加工することにより形成されている。可動側接点部43は、コンタクトホルダ42の周壁部42aの径方向に延びる本体部43aと、その本体部43aの両端から前方へ延びる一対の側部43bとを備えている。本体部43aの長さ方向における複数箇所には、前側へ突出する複数の接触突部43cがそれぞれ形成されている。各側部43bが周壁部42aの内壁面に係合されることで、可動側接点部43がコンタクトホルダ42に装着されている。また、各側部43bがバッグホルダ31に接触されており、この接触により、可動側接点部43がバッグホルダ31に導通されている。
【0050】
ピンホルダ44は、絶縁性を有する樹脂材料によって形成されている。ピンホルダ44の主要部は、前後両端が開放された筒状部44aによって構成されている。筒状部44aは、スナップピン41の軸部41aに前後方向へ摺動可能に被せられている。筒状部44aの外周部には、円環状の受け部44bが形成されている。ピンホルダ44の後部は、コンタクトホルダ42によって覆われている。
【0051】
ダンパホルダ45は、絶縁性を有する樹脂材料によって形成されている。ダンパホルダ45は、ピンホルダ44の一部を覆った状態でコンタクトホルダ42に取付けられている。ダンパホルダ45は、上記コンタクトホルダ42によって覆われている。
【0052】
弾性部材46は、ゴム(例えば、EPDM、シリコンゴム等)、エラストマー等の弾性材料によって円環状に形成されている。弾性部材46は、ピンホルダ44とダンパホルダ45との間に配置されている。弾性部材46は、コンタクトホルダ42によって覆われている。弾性部材46は、ダイナミックダンパのばねとして利用されている。そして、弾性部材46の大きさ(径方向及び前後方向の各寸法等)をチューニングすることで、ダイナミックダンパにおける上下方向や左右方向の共振周波数が、ステアリングホイール15の上下方向や左右方向の振動について、狙いとする制振の周波数、換言すると、制振したい周波数に設定されている。
【0053】
支持補助部材47は、絶縁性を有する樹脂材料によって形成されている。支持補助部材47は、円環板状をなす受け部47aを備えている。支持補助部材47は、スナップピン41に脱落不能に装着されている。
【0054】
付勢部材は、スナップピン41の軸部41a、ピンホルダ44の筒状部44aのうち受け部44bよりも前側部分、支持補助部材47のうち受け部47aよりも後側部分のそれぞれの周りに巻回されたコイルばね48によって構成されている。コイルばね48は、両受け部44b,47aの間に圧縮させられた状態で配置されており、ピンホルダ44を後方へ付勢し、支持補助部材47を前方へ付勢している。
【0055】
このようにして、複数の単体部品、すなわち、スナップピン41、コンタクトホルダ42、可動側接点部43、ピンホルダ44、ダンパホルダ45、弾性部材46、支持補助部材47及びコイルばね48がユニット化されて、アセンブリとされたホーンスイッチ機構40が構成されている。そのため、ホーンスイッチ機構40の取付けや交換の際に、ユニット化されたホーンスイッチ機構40を1つの集合体として扱うことが可能である。
【0056】
エアバッグ装置30は、複数のホーンスイッチ機構40を介して芯金22に組付けられている。この組付けに際しては、ホーンスイッチ機構40毎のスナップピン41が芯金22において対応する保持部22bの貫通孔22aに後方から挿入される。この挿入の過程で、クリップ23において、貫通孔22aの前方に位置する部分が、支持部41cと、コイルばね48によって前方へ付勢された支持補助部材47とによって前後から挟み込まれる。スナップピン41が、貫通孔22aへの挿通に伴いクリップ23の弾性によって芯金22に係止される構造は、スナップフィット構造と呼ばれる。
【0057】
さらに、本実施形態では、
図10に示すようにバッグホルダ31を、上記エアバッグ装置30の構成部材のうち、少なくともフランジ部32c及び締結具Fから絶縁させる絶縁部材51が設けられている。絶縁部材51は、第1絶縁部51a、複数の第2絶縁部51b、第3絶縁部51c及び第4絶縁部51dを備えている。これらの第1〜第4絶縁部51a〜51dは、同一の樹脂材料を用いて一体に形成されている。
【0058】
図6、
図7及び
図10に示すように、第1絶縁部51aは、バッグホルダ31とインフレータ32のフランジ部32cとの間に配置されている。第1絶縁部51aは、バッグホルダ31において、フランジ部32cが押え付けられる環状部分に設けられている。各第2絶縁部51bは、ボルト35の軸部とバッグホルダ31における挿通孔31cの壁面との間に配置されており、前後両端が開放された円管状をなしている。
図8〜
図10に示すように、第3絶縁部51cは、バッグホルダ31とエアバッグ33の開口部33aの周縁部との間に配置されている。第3絶縁部51cは、バッグホルダ31において、リングリテーナ34の押え部34aによりエアバッグ33の開口部33aの周縁部が押え付けられる環状部分に設けられている。第4絶縁部51dは、バッグホルダ31における開口部31bの壁面に沿って配置されており、前後両端が開放された円筒状をなしている。第2絶縁部51bは、挿通孔31c内に位置していて第1絶縁部51a及び第3絶縁部51cに繋がっている。また、第4絶縁部51dは、開口部31b内に位置していて第1絶縁部51a及び第3絶縁部51cに繋がっている。
【0059】
こうした構成により、第1絶縁部51a、第2絶縁部51b、第3絶縁部51c及び第4絶縁部51dを有する絶縁部材51が、バッグホルダ31に脱落不能に装着された状態、表現を変えると、バッグホルダ31に一体となった状態になっている。
【0060】
また、
図4及び
図10に示すように、フランジ部32c及び締結具Fと、芯金22とが、タブ52、アース線53、金具55及びボルト56を備えた結線具57により電気的に接続されている。
【0061】
より詳しくは、タブ52は、導電性を有し、かつ挿通孔52aを有する金属板によって構成されている。このタブ52は、自身の挿通孔52aを、インフレータ32のフランジ部32cにおける特定の挿通孔32dに合致させた状態で、そのフランジ部32cとナット36との間に配置されている。そして、フランジ部32cの特定の挿通孔32dに挿通されたボルト35が、タブ52の挿通孔52aにも挿通されている。このボルト35にナット36が締付けられることにより、タブ52がフランジ部32cに押え付けられている。
【0062】
一方、金具55は導電性を有する金属材料によって形成されており、芯金22において上記タブ52に接近した箇所に配置され、ボルト56によって同芯金22に取付けられている。タブ52及び金具55はアース線53によって接続されている。
【0063】
次に、上記のようにして構成された本実施形態の作用及び効果について、状況毎に分けて説明する。
<製造時>
上記ステアリングホイール15において、絶縁部材51が装着されたバッグホルダ31は、例えば、インサート成形により形成される。すなわち、予め製作されたバッグホルダ31がインサートとされて金型内に装填される。その金型内であって、バッグホルダ31における開口部31bの周縁部の周りのキャビティに溶融樹脂が注入される。注入された溶融樹脂が硬化することで、上記開口部31bの周縁部の周りに絶縁部材51が形成される。
【0064】
こうして形成された絶縁部材51は、複数の第2絶縁部51b及び1つの第4絶縁部51dによって、第1絶縁部51a及び第3絶縁部51cを連結した状態でバッグホルダ31に装着されている。そのため、バッグホルダ31と絶縁部材51とを別々に形成した場合には、その後に、絶縁部材51をバッグホルダ31に組付ける作業が必要となるが、上記のように、絶縁部材51がバッグホルダ31に装着された状態で形成される本実施形態では、そうした絶縁部材51を組付ける作業が不要であり、製造が容易となる。
【0065】
<通常時(非衝突時)>
車両10に対し、前面衝突(前突)等による前方からの衝撃が加わらないとき(通常時)には、
図3に示すようにエアバッグ装置30では、インフレータ32のガス噴出孔32bからガスが噴出されず、エアバッグ33が折り畳まれた状態に維持される。
【0066】
プラス側電路38の一部を構成する導電性のバッグホルダ31は、絶縁部材51により、エアバッグ装置30の構成部材のうち、少なくともインフレータ32のフランジ部32c及び締結具Fから絶縁されている。
【0067】
具体的には、
図10に示すように、バッグホルダ31とフランジ部32cとの間に配置された第1絶縁部51aにより、バッグホルダ31がフランジ部32cから絶縁される。また、ボルト35とバッグホルダ31における挿通孔31cの壁面との間に配置された第2絶縁部51bにより、バッグホルダ31がボルト35から絶縁される。このようにして、バッグホルダ31が、絶縁部材51により、フランジ部32c及び締結具Fのいずれからも絶縁される。表現を変えると、インフレータ32及び締結具Fは、バッグホルダ31から電気的に独立させられる。
【0068】
また、バッグホルダ31とエアバッグ33の開口部33aの周縁部との間に配置された第3絶縁部51cにより、バッグホルダ31がリングリテーナ34から絶縁される。
一方、
図4及び
図10に示すように、フランジ部32c及び締結具Fと、車両10のボディにアースされた芯金22とは、結線具57により電気的に接続されている。
【0069】
そのため、エアバッグ33が擦れる等して静電気が発生した場合、その静電気は、インフレータ32のフランジ部32c、締結具F、タブ52、アース線53、金具55(ボルト56)及び芯金22を介して車両10のボディに逃がされる。このように、インフレータ32が、プラス側電路38の一部を構成するバッグホルダ31に繋がれることなく、そのインフレータ32から静電気が逃がされる。その結果、本実施形態によっても、従来技術と同様に、静電気がインフレータ32に蓄えられるのを抑制することができる。
【0070】
<エアバッグ装置30の非押下げ時>
図4及び
図5に示すように、上記通常時において、エアバッグ装置30が押下げられない場合には、コイルばね48の後方へ向かう付勢力が、受け部44bにおいてピンホルダ44に伝達される。後方へ付勢されたピンホルダ44は、クリップ23によって芯金22に係止されスナップピン41の鍔部41dに接触し、それ以上後方へ移動することを規制される。
【0071】
また、上記付勢力は、ダンパホルダ45を介して、バッグホルダ31及びコンタクトホルダ42に伝達される。コンタクトホルダ42に伝達された付勢力は、スイッチ支持部18dに伝達される。このようにして付勢力が伝達されたエアバッグ装置30は、芯金22から後方へ遠ざけられる。
【0072】
これに伴い、コンタクトホルダ42に取付けられた可動側接点部43も後方へ付勢され、接触突部43cが、スナップピン41の後端部の固定側接点部41eから後方へ離間する。可動側接点部43及びスナップピン41が導通を遮断された状態となり、ホーン装置24が作動しない。
【0073】
上記通常時であって、車両10の高速走行中や車載エンジンのアイドリング中に、ステアリングホイール15に対し、上下方向や左右方向の振動が伝わると、この振動は、芯金22及び各ホーンスイッチ機構40を介してエアバッグ装置30に伝わる。より具体的には、上記振動は、スナップピン41、ピンホルダ44、弾性部材46及びダンパホルダ45を介して、コンタクトホルダ42及びバッグホルダ31に伝達される。
【0074】
上記のように振動が伝わると、その振動に応じて、エアバッグ装置30がダイナミックダンパのダンパマスとして機能する。また、弾性部材46は、ステアリングホイール15の振動の狙いとする周波数と同一又は近い共振周波数で弾性変形しながら、エアバッグ装置30を伴って上下方向や左右方向へ振動(共振)することで、ダイナミックダンパのばねとして機能する。この共振により、ステアリングホイール15の振動エネルギーが吸収され、同ステアリングホイール15の上下方向や左右方向の各振動が抑制(制振)される。
【0075】
<エアバッグ装置30の押下げ時>
一方、上記通常時において、ホーン装置24の作動のためにエアバッグ装置30が押下げられると、同エアバッグ装置30に加えられた力が、少なくとも1つのホーンスイッチ機構40におけるコンタクトホルダ42を介して可動側接点部43及びダンパホルダ45に伝達される。この力により、ダンパホルダ45が前方へ押圧されて前方へ移動させられる。ダンパホルダ45の動きは、受け部44bを介してピンホルダ44に伝達される。この力の伝達により、ピンホルダ44がコイルばね48に抗して、スナップピン41の軸部41aに沿って前方へスライドさせられる。また、コンタクトホルダ42と一緒に可動側接点部43が前方へ移動する。
【0076】
そして、
図11に示すように、可動側接点部43の複数の接触突部43cの少なくとも1つが、スナップピン41の固定側接点部41eに接触すると、車両10のボディにアースされた芯金22とバッグホルダ31とが、クリップ23、スナップピン41及び可動側接点部43を介して導通される。この導通により、ホーンスイッチ機構40が閉成し、バッグホルダ31に電気的に接続されたホーン装置24が作動する。
【0077】
<エアバッグ装置30の作動時>
前突等により車両10に対し前方から衝撃が加わると、慣性により運転者Dが前傾しようとする。一方、
図3におけるエアバッグ装置30では、前記衝撃に応じインフレータ32が作動させられ、ガス噴出孔32bからガスが噴出される。このガスがエアバッグ33に供給されることで、同エアバッグ33が折り状態を解消(展開)しながら膨張する。このエアバッグ33により、パッド部18の外皮部18aに加わる押圧力が増大していくと、同外皮部18aが薄肉部18cにおいて破断される。破断により生じた開口を通じてエアバッグ33が後方へ向けて引き続き展開及び膨張する。前突の衝撃により前傾しようとする運転者Dの前方に、展開及び膨張したエアバッグ33が介在し、運転者Dの前傾を拘束し、運転者Dを衝撃から保護する。
【0078】
ここで、仮に、
図10における第1絶縁部51aがバッグホルダ31の挿通孔31cの周辺部分にのみ設けられると、同バッグホルダ31とフランジ部32cとの間であって、インフレータ32のケース32aの周りで、第1絶縁部51aの設けられていない箇所が生ずる。この箇所では、バッグホルダ31とフランジ部32cとの間に隙間が生ずる。インフレータ32からのガスの一部が上記隙間を通じてエアバッグ33から漏れ出るおそれがある。
【0079】
しかし、本実施形態では、第1絶縁部51aは、
図6及び
図7に示すように、バッグホルダ31において、フランジ部32cが押え付けられる環状部分に設けられている。そのため、インフレータ32のケース32aは、バッグホルダ31とフランジ部32cとの間では、周りを環状の第1絶縁部51aによって囲まれる。ケース32aの周りで、バッグホルダ31とフランジ部32cとの間に隙間が生ずることが起こりにくい。従って、ガスがエアバッグ33から漏れ出るのを抑制することができる。
【0080】
また、仮に、
図10における第3絶縁部51cがバッグホルダ31の各挿通孔31cの周辺部分にのみ設けられると、エアバッグ33における開口部33aの上記周縁部は、第3絶縁部51cに接触した箇所のみ(各挿通孔31cの周辺部分のみ)においてバッグホルダ31に取付けられる。開口部33aの上記周縁部のうち各挿通孔31cから離れた箇所は、リングリテーナ34の押え部34aによって押え付けられず、バッグホルダ31に取付けられない。そのため、エアバッグ33が後方へ向けて展開及び膨張したときに、開口部33aの上記周縁部のバッグホルダ31に対する取付け箇所(各挿通孔31cの周辺部分)に対し、応力が集中して加わる。
【0081】
この点、本実施形態では、
図8及び
図9に示すように、第3絶縁部51cは、バッグホルダ31において、押え部34aにより開口部33aの周縁部が押え付けられる環状部分に設けられていて、開口部33aの周縁部のうち、第3絶縁部51cに接触する箇所の面積が多くなる。開口部33aの周縁部の全体が第3絶縁部51cに押え付けられてバッグホルダ31に取付けられる。そのため、エアバッグ33が後方へ向けて展開及び膨張したときには、開口部33aの上記周縁部に対し、応力が分散された状態で加わる。従って、開口部33aの周縁部に対し部分的に過大な力が加わるのを抑制することができる。
【0082】
なお、上記実施形態は、これを以下のように変更した変形例として実施することもできる。
<絶縁部材51について>
・
図12に示すように、絶縁部材51が第1絶縁部51a及び第2絶縁部51bのみによって構成されてもよい。このようにしても、バッグホルダ31を、エアバッグ装置30の構成部材のうち、少なくともフランジ部32c及び締結具Fから絶縁させることが可能である。
【0083】
また、この場合には、バッグホルダ31と絶縁部材51とを別々に形成した後、絶縁部材51をバッグホルダ31に組付けることができる。バッグホルダ31をインサートとして絶縁部材51をインサート成形しなくてもすむ。
【0084】
・第1絶縁部51aは、バッグホルダ31において、フランジ部32cが押え付けられる環状部分よりも広い箇所に設けられてもよい。
・第3絶縁部51cは、バッグホルダ31において、リングリテーナ34の押え部34aによりエアバッグ33の開口部33aの周縁部が押え付けられる環状部分よりも広い箇所に設けられてもよい。
【0085】
<結線具57の接続箇所について>
・結線具57におけるタブ52が、絶縁部材51の第1絶縁部51aとフランジ部32cとの間に配置されてもよい。
【0086】
・フランジ部32c及び締結具Fのうちのフランジ部32cのみが結線具57により芯金22に対し電気的に接続されてもよい。例えば、タブ52とナット36との間に、非導電性の材料からなるワッシャ、スペーサ等が介在された場合がこれに該当する。
【0087】
<その他>
・上記ステアリングホイールは、車両以外の乗物、例えば、航空機、船舶等における操舵装置のステアリングホイールに適用することもできる。