特許第6783988号(P6783988)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6783988
(24)【登録日】2020年10月27日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】エアバッグ用補強液の塗布装置
(51)【国際特許分類】
   A41H 43/00 20060101AFI20201102BHJP
   D05B 81/00 20060101ALI20201102BHJP
   D06M 15/564 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
   A41H43/00 A
   D05B81/00
   D06M15/564
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-57928(P2017-57928)
(22)【出願日】2017年3月23日
(65)【公開番号】特開2018-159161(P2018-159161A)
(43)【公開日】2018年10月11日
【審査請求日】2019年4月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】田中 孔規
【審査官】 金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2016−533293(JP,A)
【文献】 特開昭58−195586(JP,A)
【文献】 特開2004−060071(JP,A)
【文献】 特開平07−255975(JP,A)
【文献】 特開2009−050364(JP,A)
【文献】 特開2013−162859(JP,A)
【文献】 特開2007−297725(JP,A)
【文献】 特開2007−008508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41H 43/00
D05B 81/00
D06M 15/564
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに上下方向に重ね合わされた複数のエアバッグ形成用の布部を縫合対象布部とし、上下動することにより前記縫合対象布部を貫通して上糸を打ち込むミシン針と、
前記縫合対象布部よりも上側に配置され、かつ前記ミシン針の上下動に同期して上下動しながら前記縫合対象布部を送る押え金とを備えるミシンに適用されるものであり、
前記縫合対象布部の送り方向における前記ミシン針よりも前方で、同ミシン針による縫合部を補強するための補強液を前記縫合対象布部に供給する補強液供給部と、
前記押え金に取付けられ、かつ同押え金と一体となって前記縫合対象布部よりも上側で作動することで、前記補強液供給部から前記縫合対象布部に供給された前記補強液を、前記縫合部の周りに押し広げるスタンプ部とを備え、
前記スタンプ部の下面は、前記送り方向に沿うように延びる平面形状に形成されているエアバッグ用補強液の塗布装置。
【請求項2】
前記補強液供給部は、前記縫合対象布部よりも上側に配置された上ノズルを通じ、前記補強液の少なくとも一部として同縫合対象布部上に滴下する上補強液を供給する上補強液供給部を備える請求項1に記載のエアバッグ用補強液の塗布装置。
【請求項3】
前記スタンプ部を前記縫合対象布部よりも上側の上スタンプ部とした場合、
前記縫合対象布部よりも下側に配置された下スタンプ部をさらに備え、
前記下スタンプ部は、前記縫合対象布部の下面に塗布するための下補強液を、前記補強液の一部として貯留する貯留部を有しており、
前記補強液供給部は、前記貯留部に前記下補強液を供給する下補強液供給部をさらに備える請求項2に記載のエアバッグ用補強液の塗布装置。
【請求項4】
互いに上下方向に重ね合わされた複数のエアバッグ形成用の布部を縫合対象布部とし、上下動することにより前記縫合対象布部を貫通して上糸を打ち込むミシン針と、
前記縫合対象布部よりも上側に配置され、かつ前記ミシン針の上下動に同期して上下動しながら前記縫合対象布部を送る押え金とを備えるミシンに適用されるものであり、
前記縫合対象布部の送り方向における前記ミシン針よりも前方で、同ミシン針による縫合部を補強するための上補強液を、前記縫合対象布部よりも上側に配置された上ノズルから滴下する上補強液供給部と、
前記押え金に取付けられ、かつ同押え金と一体となって前記縫合対象布部よりも上側で作動することで、前記上ノズルから前記縫合対象布部上に滴下された前記上補強液を、前記縫合部の周りに押し広げる上スタンプ部と、
前記縫合対象布部よりも下側に配置され、かつ前記縫合対象布部の下面に塗布されて、前記縫合部を補強するための下補強液を貯留する貯留部を有する下スタンプ部と、
前記貯留部に前記下補強液を供給する下補強液供給部と
を備え、
前記上スタンプ部の下面は、前記送り方向に沿うように延びる平面形状に形成されているエアバッグ用補強液の塗布装置。
【請求項5】
前記貯留部は、複数の凹部と、隣り合う前記凹部を連通する連通部とを備えている請求項4に記載のエアバッグ用補強液の塗布装置。
【請求項6】
前記下スタンプ部は前記上スタンプ部の下方に配置されている請求項3〜5のいずれか一項に記載のエアバッグ用補強液の塗布装置。
【請求項7】
前記下スタンプ部のうち、少なくとも前記貯留部は、弾性材料からなる下弾性部により構成されている請求項に記載のエアバッグ用補強液の塗布装置。
【請求項8】
前記上スタンプ部のうち、少なくとも前記上補強液を押し広げる箇所は、弾性材料からなる上弾性部により構成されている請求項に記載のエアバッグ用補強液の塗布装置。
【請求項9】
前記上ノズルは、前記縫合対象布部の送り方向における前記上スタンプ部の後部に取付けられている請求項3〜のいずれか1項に記載のエアバッグ用補強液の塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグの縫合部に補強液を塗布するエアバッグ用補強液の塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の布部を縫合することにより形成されたエアバッグでは、膨張用ガスにより展開及び膨張する際に布部が引張られ、縫合部に過大な負荷が加わり、目ずれが発生するおそれがある。目ずれとは、布部における経糸と緯糸との相互の拘束により本来維持されるべき初期形状が崩れ、織り目がずれて外観を損ねた様態のことである。そして、縫合部の縫い目を高温で高圧の膨張用ガスが流れることで目ずれが拡大するおそれがある。
【0003】
そこで、縫合部を補強することが行なわれる。補強の態様としては、布部のうち、膨張用ガスの触れる側の面をシリコーン等でコーティングするもの、リボン状(帯状)の補強布を布部に重ねて縫合を行なうもの等が一般的である。
【0004】
しかし、上記いずれの補強の態様でも、折り畳んで収納した際のエアバッグの嵩が大きくなる。そこで、嵩が大きくなるのを抑制しつつ目ずれの拡大を抑制すべく、縫合部及び周辺部分にのみ補強液を塗布する技術が考えられている。例えば、特許文献1には、ミシンに、ミシン針の動きに倣って連動し、その縫い目に沿って塗布し得るチャックを設け、このチャックに塗布用のチョーク状の固形物を固定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−60071号公報(図6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記従来の技術では、チャックがミシン針とは別に動いており、ミシン針の動きに倣って連動させる専用の機構が別途必要となり、塗布装置が複雑になるという問題がある。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、簡単な構成で縫合部及び周辺部分に補強液を塗布することのできるエアバッグ用補強液の塗布装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するエアバッグ用補強液の塗布装置は、互いに上下方向に重ね合わされた複数のエアバッグ形成用の布部を縫合対象布部とし、上下動することにより前記縫合対象布部を貫通して上糸を打ち込むミシン針と、前記縫合対象布部よりも上側に配置され、かつ前記ミシン針の上下動に同期して上下動しながら前記縫合対象布部を送る押え金とを備えるミシンに適用されるものであり、前記縫合対象布部の送り方向における前記ミシン針よりも前方で、同ミシン針による縫合部を補強するための補強液を前記縫合対象布部に供給する補強液供給部と、前記押え金に取付けられ、かつ同押え金と一体となって前記縫合対象布部よりも上側で作動することで、前記補強液供給部から前記縫合対象布部に供給された前記補強液を、前記縫合部の周りに押し広げるスタンプ部とを備える。
【0009】
上記の構成によれば、互いに上下方向に重ね合わされた複数のエアバッグ形成用の布部が、ミシンによる縫合対象布部とされる。ミシンのミシン針が上下動されることで、同ミシン針が縫合対象布部に貫通されて、同縫合対象布部に上糸が打ち込まれる。また、縫合対象布部よりも上側に配置された押え金が、ミシン針の上下動に同期して上下動しながら縫合対象布部を送る。
【0010】
一方で、塗布装置では、縫合対象布部の送り方向におけるミシン針の前方で、補強液供給部から、補強液が同縫合対象布部に供給される。また、スタンプ部が押え金と一体となって縫合対象布部よりも上側で、ミシン針の上下動に同期して、上下動しながら縫合対象布部の送り方向における前方及び後方へ移動する。このスタンプ部により、補強液供給部から縫合対象布部に供給された上記補強液が、ミシン針が上下動する毎に縫合部の周りに押し広げられる。
【0011】
このように、押え金がミシン針に同期して上下動しながら縫合対象布部を送るミシンにあって、押え金にスタンプ部が取付けられることで、そのスタンプ部が作動させられる。そのため、スタンプ部を駆動する専用の機構を別途設けなくてもすみ、塗布装置の構成が簡単になる。
【0012】
上記エアバッグ用補強液の塗布装置において、前記補強液供給部は、前記縫合対象布部よりも上側に配置された上ノズルを通じ、前記補強液の少なくとも一部として同縫合対象布部上に滴下する上補強液を供給する上補強液供給部を備えることが好ましい。
【0013】
上記の構成によれば、塗布装置では、縫合対象布部の送り方向におけるミシン針よりも前方で、縫合対象布部よりも上側に配置された上ノズルから上補強液が、補強液の少なくとも一部として縫合対象布部上に滴下される。この滴下された上補強液は、縫合対象布部よりも上側で作動するスタンプ部によって、ミシン針が上下動する毎に縫合対象布部の上面に直接押されて、縫合部の周りに押し広げられる。
【0014】
上記エアバッグ用補強液の塗布装置において、前記スタンプ部を前記縫合対象布部よりも上側の上スタンプ部とした場合、前記縫合対象布部よりも下側に配置された下スタンプ部をさらに備え、前記下スタンプ部は、前記縫合対象布部の下面に塗布するための下補強液を、前記補強液の一部として貯留する貯留部を有しており、前記補強液供給部は、前記貯留部に前記下補強液を供給する下補強液供給部をさらに備えることが好ましい。
【0015】
上記の構成によれば、上補強液供給部の上ノズルから縫合対象布部上に滴下された上補強液が上スタンプ部により押し広げられることに加え、下補強液供給部から供給されて下スタンプ部の貯留部に貯留された下補強液が、縫合対象布部の下面に塗布される。縫合対象布部が押え金によって送られることで、下補強液が縫合部の周りに帯状に塗布される。
【0016】
上記課題を解決するエアバッグ用補強液の塗布装置は、互いに上下方向に重ね合わされた複数のエアバッグ形成用の布部を縫合対象布部とし、上下動することにより前記縫合対象布部を貫通して上糸を打ち込むミシン針と、前記縫合対象布部よりも上側に配置され、かつ前記ミシン針の上下動に同期して上下動しながら前記縫合対象布部を送る押え金とを備えるミシンに適用されるものであり、前記縫合対象布部の送り方向における前記ミシン針よりも前方で、同ミシン針による縫合部を補強するための上補強液を、前記縫合対象布部よりも上側に配置された上ノズルから滴下する上補強液供給部と、前記押え金に取付けられ、かつ同押え金と一体となって前記縫合対象布部よりも上側で作動することで、前記上ノズルから前記縫合対象布部上に滴下された前記上補強液を、前記縫合部の周りに押し広げる上スタンプ部と、前記縫合対象布部よりも下側に配置され、かつ前記縫合対象布部の下面に塗布されて、前記縫合部を補強するための下補強液を貯留する貯留部を有する下スタンプ部と、前記貯留部に前記下補強液を供給する下補強液供給部とを備える。
【0017】
上記の構成によれば、塗布装置では、押え金に取付けられた上スタンプ部が、同押え金と一体となって縫合対象布部よりも上側で、ミシン針の上下動に同期して、上下動しながら縫合対象布部の送り方向における前方及び後方へ移動する。
【0018】
一方で、上記送り方向におけるミシン針よりも前方で、縫合対象布部よりも上側に配置された上ノズルから上補強液が縫合対象布部上に滴下される。この滴下された上補強液は、ミシン針が上下動する毎に上スタンプ部によって縫合対象布部の上面に直接押されて、縫合部の周りに押し広げられる。
【0019】
このように、押え金がミシン針に同期して上下動しながら縫合対象布部を送るミシンにあって、押え金に上スタンプ部が取付けられることで、その上スタンプ部が作動させられる。そのため、上スタンプ部を駆動する専用の機構を別途設けなくてもすみ、塗布装置の構成が簡単になる。
【0020】
また、下補強液供給部から供給されて下スタンプ部の貯留部に貯留された下補強液が、縫合対象布部の下面に塗布される。縫合対象布部が押え金によって送られることで、下補強液が縫合部の周りに帯状に塗布される。
【0021】
上記エアバッグ用補強液の塗布装置において、前記下スタンプ部は前記上スタンプ部の下方に配置されていることが好ましい。
上記の構成によれば、上下動しながら縫合対象布部の送り方向における前方及び後方へ移動する上スタンプ部によって縫合対象布部が下スタンプ部に押付けられる。そのため、縫合対象布部が、下スタンプ部の貯留部に貯留された下補強液に接触し、同縫合対象布部の下面に下補強液が塗布される。
【0022】
上記エアバッグ用補強液の塗布装置において、前記下スタンプ部のうち、少なくとも前記貯留部は、弾性材料からなる下弾性部により構成されていることが好ましい。
上記の構成によれば、上スタンプ部によって縫合対象布部が下スタンプ部に押付けられるときに、下弾性部が弾性変形することで、縫合対象布部が、下スタンプ部の貯留部に貯留された下補強液に接触させられるとともに、押付けに伴い異音が発生することが抑制される。
【0023】
上記エアバッグ用補強液の塗布装置において、前記上スタンプ部のうち、少なくとも前記上補強液を押し広げる箇所は、弾性材料からなる上弾性部により構成されていることが好ましい。
【0024】
上記の構成によれば、上スタンプ部は、上弾性部において縫合対象布部を下スタンプ部に押付ける。このとき、上弾性部が弾性変形することで、上補強液が縫合対象布部の上面に直接押されて、縫合部の周りに押し広げられる。また、下弾性部に加え上弾性部が弾性変形することで、上スタンプ部の押付けに伴う異音の発生がより一層抑制される。
【0025】
上記エアバッグ用補強液の塗布装置において、前記上ノズルは、前記縫合対象布部の送り方向における前記上スタンプ部の後部に取付けられていることが好ましい。
上記の構成によれば、上ノズルは、上スタンプ部とともに、押え金と一体となって縫合対象布部よりも上側で、ミシン針の上下動に同期して、上下動しながら縫合対象布部の送り方向における前方及び後方へ移動する。この際、上ノズルは上補強液を、上記送り方向における上スタンプ部の後部に滴下する。この上補強液は、滴下の直後に上スタンプ部によって押し広げられる。
【発明の効果】
【0026】
上記エアバッグ用補強液の塗布装置によれば、簡単な構成で縫合部及び周辺部分に補強液を塗布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】一実施形態におけるエアバッグ装置の概略構成を示す断面図。
図2】一実施形態におけるミシン及び塗布装置の概略構成を示す部分断面図。
図3】一実施形態におけるエアバッグの縫合部を、上補強塗膜及び下補強塗膜とともに模式的に示す部分断面図。
図4】一実施形態におけるエアバッグの上側の布部に上補強液が塗布された状態を示す部分斜視図。
図5】一実施形態におけるエアバッグの下側の布部に下補強液が塗布された状態を示す部分斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、エアバッグ用補強液の塗布装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、車両のステアリングホイールに搭載される運転席用エアバッグ装置(以下、単に「エアバッグ装置」という)10の概略構成を示している。エアバッグ装置10は、エアバッグ11と、そのエアバッグ11に膨張用ガスを供給するインフレータ17とを備えている。
【0029】
エアバッグ11の外殻部分は、一対の布部12,13によって構成されている。両布部12,13としては、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維等によって形成された織布が適しているが、これ以外の繊維で形成されたものが用いられてもよい。また、両布部12,13の織成態様は、通常は平織りとされるが、それ以外の態様、例えば斜文織り、朱子織り等でもよい。
【0030】
両布部12,13は、それらの周縁部に設けられた縫合部14によって相互に結合されている。なお、図1中の符合15は、エアバッグ11が展開及び膨張するときに緊張状態となることで、エアバッグ11の過度の膨張を規制してその形状を適正に整えるためのテザーである。また、符合16は、インフレータ17から噴出された膨張用ガスを整流する整流布である。
【0031】
このエアバッグ装置10では、車両に衝撃が加わると、インフレータ17から膨張用ガスを噴出させて、エアバッグ11をステアリングホイールから車両後方へ向けて展開及び膨張させることにより、運転席に着座した乗員を拘束し、その乗員に加わる衝撃を緩和する。
【0032】
上記エアバッグ装置10では、エアバッグ11の外形形状を作っている縫合部14に対し特に、膨張用ガスの高い負荷が加わる。この縫合部14は、図3に示すように、上側の布部12の上面に形成された上補強塗膜56、及び下側の布部13の下面に形成された下補強塗膜57によって補強される。上補強塗膜56及び下補強塗膜57を形成するために、図2に示すように、上補強液34及び下補強液38を塗布する塗布装置30が用いられている。この塗布装置30は、エアバッグ11を縫製するミシン20に取付けられている。
【0033】
図2に示すように、ミシン20は、上下方向に重ね合わされた布部12,13が載置されるベッド部28を備えている。ベッド部28の一部は、針板(図示略)によって構成されている。ミシン20においてベッド部28よりも下方には、同ミシン20の各種可動部分を駆動する機構が配置されている。
【0034】
ミシン20は、さらに、ミシン針21及び押え金22を備えている。ミシン針21は、モータ等によって上下方向に往復駆動される針棒(図示略)の下端に取付けられている。
針板の下方には、釜(図示略)が配置されている。釜のボビンケース内には、下糸24(図3参照)を巻かれたボビンが収容されている。釜は、ミシン針21の上下動により、両布部12,13よりも下側で上糸23に形成されたループに、ボビンから引き出した下糸24を通して絡ませる役割を担っている。
【0035】
押え金22は、ベッド部28よりも上側に配置されている。ミシン20は、往復揺動することで針板の開口部から出没する送り歯(図示略)を備えている。押え金22は、ミシン針21の上下動に同期して上下動しながら両布部12,13を、上記送り歯と協働して、同図2において矢印Aで示す方向へ、縫いピッチずつ送る。
【0036】
なお、図2中の符合27は、両布部12,13を縫合するときに、それらの布部12,13が浮かないように押えて、押え金22による布部12,13の送りを補助する布押えである。
【0037】
上糸23及び下糸24としては、上記両布部12,13と同様の繊維からなる糸が用いられる。
塗布装置30は、補強液供給部として、上補強液供給部31及び下補強液供給部35を備えている。上補強液供給部31は、針状をなす中空の上ノズル32を備えている。上ノズル32は、両布部12,13の送り方向におけるミシン針21よりも前方(図2の左方)であり、かつベッド部28よりも上側に配置されている。上ノズル32は、上チューブ33を介してポンプ(図示略)に接続されている。
【0038】
下補強液供給部35は、針状をなす中空の下ノズル36を備えている。下ノズル36は、両布部12,13の送り方向におけるミシン針21よりも前方に配置されている。下ノズル36は、下チューブ37を介してポンプ(図示略)に接続されている。
【0039】
塗布装置30は、スタンプ部として、上スタンプ部41及び下スタンプ部51を備えている。上スタンプ部41は、両布部12,13の送り方向におけるミシン針21よりも前方であり、かつベッド部28よりも上側に配置されている。上スタンプ部41の骨格部分は、上下方向に延びる縦壁部42と、縦壁部42の下端から上記送り方向における前方へ延びる横壁部43とを備えている。上スタンプ部41は、縦壁部42において、ボルト及びナット等の締結具によって押え金22に取付けられている。横壁部43よりも下側には、ゴム、エラストマー等の弾性材料からなる上弾性部44が、上スタンプ部41の一部として配置され、接着等の固定手段によって同横壁部43に固定されている。
【0040】
横壁部43の縦壁部42との境界部分には、布部12,13の送り方向における前方ほど高くなるように傾斜した取付孔45が形成されている。上述した上ノズル32がこの取付孔45に挿通された状態で上スタンプ部41に取付けられている。上ノズル32の下端部は、縦壁部42及び横壁部43よりも下方へ僅かに露出しており、吐出口を構成している。なお、この上ノズル32は、吐出口が取付孔45の下端と重なる箇所、又は同取付孔45内の箇所に位置するように取付けられてもよい。
【0041】
下スタンプ部51は、両布部12,13の送り方向におけるミシン針21よりも前方であり、かつ両布部12,13よりも下側に配置されている。本実施形態では、下スタンプ部51は、ベッド部28において、上記上スタンプ部41の下方に形成された取付凹部26に嵌合により装着されている。下スタンプ部51の全体は、上記上弾性部44と同様に、ゴム、エラストマー等の弾性材料からなる下弾性部52によって構成されている。下弾性部52には、下補強液38を貯留する貯留部54が形成されている。貯留部54は、下弾性部52の上面において開口する複数の凹部53と、隣り合う凹部53を連通させる連通孔55とを備えている。そして、上述した下ノズル36は、その先端部の吐出口が貯留部54内に位置するように、又は同貯留部54に面するように下弾性部52に挿通されている。この場合、下ノズル36の配置態様は、ミシン20の各種機構に対し干渉しないといった条件を満たせば、特に制限を受けない。例えば、下ノズル36は、布部12,13の送り方向に対し傾斜した状態で配置されてもよいし、水平方向に延びる姿勢で配置されてもよい。いずれにしても、下ノズル36は針状をなしていて細長いため、他の形状をなしている場合よりも配置しやすい。
【0042】
なお、図3図5に示すように、上補強液34としては、上側の布部12に対し、縫合部14を含む所定幅の帯状に上補強塗膜56を形成するものが用いられる。また、下補強液38としては、下側の布部13に対し、縫合部14を含む所定幅の帯状に下補強塗膜57を形成するものが用いられる。より具体的には、上糸23、下糸24及び両布部12,13のそれぞれを構成する繊維に対する接着性(濡れ性)を有する接着性塗料が上補強液34及び下補強液38として用いられる。接着性塗料の形態は、取り扱い性、環境問題等の観点から、溶剤レスであるエマルション(液体中に他の液体が微粒となって分散及び浮遊しているもの)が望ましい。
【0043】
この接着性塗料におけるベース樹脂は、上記のように、両布部12,13、上糸23及び下糸24のいずれに対しても接着性(濡れ性)を有するものであれば、特に限定されない。ただし、両布部12,13がポリアミド繊維やポリエステル繊維によって形成されている場合には、ポリアミド系、エステル系、ウレタン系、エポキシ系等の各樹脂(ポリマー)が上記ベース樹脂として適している。
【0044】
これらのうち、塗膜耐久性の観点から耐加水分解性を有する水性のポリエーテル変性ウレタン及びカーボネート変性ウレタンが望ましい。滑脱抵抗力増大効果及び耐加水分解性、さらには生産性の観点からは、架橋剤が添加されて、硬化時間の短いカーボネート変性ウレタンが望ましい。ここで、カーボネート変性ウレタンとは、ポリカーボネート鎖を有する又は主体のポリウレタンのことをいう。ポリカーボネート鎖以外に他の官能基を有していてもよいが、その場合でも、塗膜耐久性の観点から耐加水分解性を有するものが望ましい。また、これらの変性ウレタンは、通常、末端COO−がトリエチルアミン等のアミン類で封鎖されたものを使用することが、塗料のポットライフ確保の見地から望ましい。また、上記架橋剤としては、COO−と縮合反応可能なものなら限定されない。例えば、オキサゾリンや両末端が水酸基及びアミノ基のいずれかである、グリコール類、アミノアルコール類、ジアミン類を架橋剤として挙げることができる。
【0045】
なお、上記接着性塗料には、塗装性の観点から消泡剤、増粘剤等が適宜添加されたり、上補強塗膜56及び下補強塗膜57のそれぞれの外観の観点から着色剤等の副資材が適宜添加されたりしてもよい。
【0046】
次に、上記のように構成された本実施形態の作用及び効果について説明する。
ミシン20でエアバッグ11を縫製する場合には、図2に示すように、互いに上下方向に重ね合わされた布部12,13が縫合対象布部とされてベッド部28上に載置される。ミシン針21は、下動することにより、両布部12,13を貫通して上糸23を両布部12,13に打ち込む。ミシン針21は上動することにより、両布部12,13から上方へ抜け出る。このとき、ミシン針21と上糸23との間の摩擦力よりも、上糸23と両布部12,13との間の摩擦力の方が大きい。そのため、ミシン針21が下動から上動に切り替わるときに、針板よりも下側で上糸23がたるんでループを形成する。同時に、ミシン針21の上下動に連動して回転する釜が、剣先により、ループになった上糸23をすくう。そして、釜が回転し、剣先が所定の位置を過ぎた位置で天秤が上昇することによって、上糸23のループに釜をくぐらせる。ボビンケースから出ている下糸24が、図3に示すように上糸23と絡み合って、布部12の上面及び布部13の下面のそれぞれに縫い目25が形成される。この縫い目25が連続して形成されることで、図4及び図5に示すように、両布部12,13の周縁部同士を結合する縫合部14が形成される。
【0047】
また、図2に示すように、押え金22が、ミシン針21の上下動に同期して上下動しながら両布部12,13を、送り歯と協働して、送り方向前方(図2の矢印Aで示す方向)へ、縫いピッチずつ送る。
【0048】
すなわち、ミシン針21が両布部12,13に貫通されるときには、押え金22による両布部12,13の送りが停止される。ミシン針21が両布部12,13から抜け出た状態で、押え金22及び送り歯によって両布部12,13が縫いピッチずつ送られる。
【0049】
一方で、塗布装置30では、上ノズル32及び上スタンプ部41が、押え金22と一体となって、布部12,13の送り方向におけるミシン針21よりも前方であって、両布部12,13よりも上側で、ミシン針21の上下動に同期して、上下動しながら上記送り方向における前方及び後方へ移動する。この際、上ノズル32は上補強液34を、上記送り方向における上スタンプ部41の後部から布部12上に滴下する。この滴下された上補強液34は、ミシン針21が上下動する毎に、上スタンプ部41の上弾性部44によって布部12の上面に直接押されて、縫合部14の周りに押し広げられる。このとき、上弾性部44が弾性変形することで、上補強液34が、布部12に直接押されて、縫合部14の周りに押し広げられる。
【0050】
ここで、上スタンプ部41に代えて、刷毛を用いて上補強液34を縫合部14及び周辺部分に塗布することも考えられる。しかし、ミシン針21による縫合時に縫い皺が発生し、両布部12,13が上記送り方向に波打った場合、山の部分に塗布することができても、谷の部分に刷毛が届かず塗布することができないおそれがある。上補強液34が塗布されない箇所には、上補強塗膜56が形成されず、形成された箇所よりも強度が低くなる。補強の度合いが上記送り方向にばらつく。反対に、刷毛を過大な力で、上記送り方向における押え金22よりも前方で押付けると、押え金22による両布部12,13の適正な送りに支障が出るおそれがある。
【0051】
この点、本実施形態では、縫い皺を有する縫合部14が上スタンプ部41によって押される。縫い皺が潰されて、縫合部14及び周辺部分が平らな状態にされる。そのため、上補強液34は、上記送り方向に途切れることなく連続した状態で帯状に適切に押し広げられる。このように、縫い皺の発生のおそれのある縫合部14及び周辺部分に対し、上補強液34を安定して塗布することができる。
【0052】
しかも、上スタンプ部41による上補強液34の押し広げは、押え金22が両布部12,13を送るときに行なわれる。そのため、上スタンプ部41の動作は、押え金22による両布部12,13の送りやミシン針21の上下動の支障となりにくい。
【0053】
このように、押え金22がミシン針21に同期して上下動しながら両布部12,13を送るミシン20にあって、本実施形態では、押え金22に上スタンプ部41を取付けることで、その押え金22を利用して上スタンプ部41を作動させるようにしている。そのため、従来の塗布装置とは異なり、上スタンプ部41を駆動する専用の機構を別途設けなくてもすみ、塗布装置30の構成を簡単にすることができる。
【0054】
さらに、本実施形態では、下スタンプ部51の貯留部54に貯留された下補強液38が、布部13の下面に塗布される。すなわち、上下動しながら布部12,13の送り方向における前方及び後方へ移動する上スタンプ部41の上弾性部44によって、両布部12,13が下スタンプ部51の下弾性部52に押付けられる。このとき、上弾性部44に加え下弾性部52が弾性変形することで、布部13が、貯留部54内の下補強液38に接触し、同布部13の下面に下補強液38が塗布される。しかも、貯留部54内には下補強液38が下ノズル36から供給(補充)される。
【0055】
また、上弾性部44及び下弾性部52がともに弾性変形することで、上スタンプ部41の押付けに伴い異音が発生することが抑制される。
また、縫合部14に縫い皺があっても、上述したように、上スタンプ部41によって潰されて平らな状態にされる。そのため、下補強液38を、布部13の下面に安定して塗布することができる。
【0056】
そして、両布部12,13が押え金22及び送り歯によって送られることで、下補強液38が布部13の下面であって、縫合部14の周りに帯状に塗布される。
上記のように塗布された上補強液34が加熱硬化されることで、図4に示す上補強塗膜56が形成され、下補強液38が加熱硬化されることで、図5に示す下補強塗膜57が形成される。加熱手段としては、通常の熱風加熱、マイクロ波加熱等が挙げられるが、局部的な加熱が可能な赤外線加熱が望ましい。これは、省エネルギーになるとともに、硬化を、縫製及び塗布と同期させて行なうことが容易なためである。
【0057】
上記上補強塗膜56及び下補強塗膜57により、両布部12,13、上糸23及び下糸24の各繊維が固められ、縫合部14及び周辺部分の強度が上下両側から高められる。そのため、縫合部14の膨張用ガスによる目ずれの拡大を抑制することができる。
【0058】
なお、上補強塗膜56及び下補強塗膜57の各塗布幅は、縫合部14を含んだ状態で、同縫合部14を補強する効果を奏することを条件に、可及的に狭いことが望ましい。
本実施形態によると、上記以外にも、次の効果が得られる。
【0059】
・縫合部14及び周辺部分にのみ上補強液34及び下補強液38が塗布されるので、全面に塗布される場合に比べ、エアバッグ11が折り畳まれたときの嵩を小さくすることができ、エアバッグ11の搭載性向上に寄与することができる。
【0060】
・エアバッグ11の縫製と略同時に上補強液34及び下補強液38を塗布することができ、塗布を縫製とは別の工程で行なう場合に比べ、生産性を高めることができる。
・下スタンプ部51に代えて、下補強液38をスプレーすることにより布部13に塗布し、下補強塗膜57を形成することも考えられる。しかし、ベッド部28よりも下方に多くの機構が組込まれて、他の装置等を組込むスペースが僅かしかないミシン20にスプレー塗布装置を組込むことは難しい。たとえ組込むことができても、その組込み箇所は、ミシン針21から遠ざかった箇所となる。この場合には、別の問題が生ずる。それは、エアバッグ11には湾曲した縫合部14が多いことから、ミシン針21から遠ざかった箇所でスプレー塗布すると、縫合部14から外れた箇所に下補強液38が塗布されるおそれがある。従って、スプレー塗布装置を採用することは現実的でない。
【0061】
この点、本実施形態では、下補強液供給部35において下補強液38を吐出する部分が、針状をなす中空の下ノズル36によって構成されている。この下ノズル36は、上記スプレー塗布装置に比べると小型である。また、下スタンプ部51は、下補強液38を貯留する貯留部54を有する構成のため、小型で薄く構成することができる。これらの下ノズル36及び下スタンプ部51の設置に要するスペースは小さい。そのため、下ノズル36及び下スタンプ部51を、両布部12,13の送り方向におけるミシン針21よりも前方近傍に配置することができる。
【0062】
この効果は、上補強液供給部31における上ノズル32でも同様に得られる。すなわち、針状をなす中空の上ノズル32の設置に要するスペースは小さい。そのため、両布部12,13の送り方向におけるミシン針21よりも前方近傍には、余剰スペースが少ないが、ここに上ノズル32を配置することができる。
【0063】
・上ノズル32、下ノズル36及び下スタンプ部51を、両布部12,13の送り方向におけるミシン針21の前方近傍に配置している。そのため、ミシン針21により両布部12,13が縫合された直後に上補強液34及び下補強液38を塗布することができる。ミシン針21により両布部12,13が縫合される前に上補強液34及び下補強液38が塗布されると、それらの付着が原因でミシン針21の上下動や、ミシン針21の駆動機構の作動に支障が出るおそれがあるが、本実施形態ではそういった問題は起こりにくい。
【0064】
・上ノズル32を、その吐出口が上スタンプ部41の下部に位置するように、同上スタンプ部41に取付けている。そのため、吐出口を両布部12,13の上方近傍に位置させ、縫合部14又はその近くに上補強液34を滴下することができる。
【0065】
なお、上記実施形態は、これを以下のように変更した変形例として実施することもできる。
<エアバッグ11について>
・3以上の布部が縫合対象布部とされてもよい。
【0066】
・複数の布部は、1枚の基布を折り線に沿って折って上下方向に重ね合わせたものであってもよいし、互いに独立した複数枚の基布を上下方向に重ね合わせたものであってもよい。
【0067】
・補強液の塗布の対象とされる縫合部14は、複数の布部12,13のうち、周縁部とは異なる箇所に形成されるものであってもよい。
・塗布装置30による上補強液34及び下補強液38の塗布の対象となるエアバッグ11は、反転型及び反転レス型のいずれのタイプであってもよい。
【0068】
反転型のエアバッグ11とは、その製造時において複数の布部12,13の周縁部に縫合部14を形成した後、布部12,13の表裏を反転させるものを示しており、縫合部14がエアバッグ11の内側に隠れる構成となっている。このような反転型のエアバッグ11は、主に運転席用エアバッグ装置(図1参照)、助手席用エアバッグ装置で使用される。
【0069】
反転レス型のエアバッグ11とは、その製造時において、周縁部に縫合部14を形成した後に布部12,13の表裏を反転させないものを示し、縫合部14がエアバッグ11の外側に露出される構成となっている。このような反転レス型のエアバッグ11は、例えば、サイドエアバッグ装置で使用される。
【0070】
<塗布装置30について>
・上ノズル32は、ミシン針21と、上スタンプ部41における横壁部43及び上弾性部44との間であることを条件に、上スタンプ部41とは異なる箇所に取付けられてもよい。この場合、上ノズル32は上下動してもよいし、しなくてもよい。
【0071】
・上補強液供給部31は、上補強液34を滴下とは異なる態様で上側の布部12に供給するものであってもよい。
・上スタンプ部41は、ボルト及びナットとは異なる締結具や、締結とは異なる取付け手段によって押え金22に取付けられてもよい。
【0072】
・下スタンプ部51及び下補強液供給部35が省略されて、布部13に対する下補強液38の塗布が省略されてもよい。
この場合であっても、布部12,13の両方に補強液を塗布する場合ほどではないものの、縫合部14を補強する効果は得られる。
【0073】
・下スタンプ部51は、下弾性部52と、その下側に配置された硬質の部材とを備えるものであってもよい。この場合、上スタンプ部41の下方に下スタンプ部51が配置されていることを条件に、上弾性部44及び下弾性部52の一方が省略されてもよい。この場合であっても、上弾性部44及び下弾性部52のうち、省略されていないものが、弾性変形することで、上補強液34を上側の布部12に押し広げるとともに、下補強液38を下側の布部13の下面に塗布することができる。
【0074】
また、上スタンプ部41の押付けに伴う異音の発生を抑制する効果も得られる。
・下スタンプ部51が上スタンプ部41の下方とは異なる箇所に配置されてもよい。この場合であっても、貯留部54に貯留された下補強液38を布部13の下面に接触させて塗布することは可能である。
【0075】
・下スタンプ部51における貯留部54の構成が、上記実施形態とは異なるものに変更されてもよい。例えば、貯留部54が、両布部12,13の送り方向に延び、かつ隣り合うものが互いに連通された複数の溝によって構成されてもよい。
【0076】
・下スタンプ部51が、貯留部54に加え、下補強液38の貯留に直接関わらない、他の部分を有する構成に変更されてもよい。この場合、下スタンプ部51の該当する部分は、弾性材料によって形成されてもよいし、硬質の材料によって形成されてもよい。
【符号の説明】
【0077】
12,13…布部(縫合対象布部)、14…縫合部、20…ミシン、21…ミシン針、22…押え金、23…上糸、30…塗布装置、31…上補強液供給部(補強液供給部)、32…上ノズル、34…上補強液(補強液)、35…下補強液供給部(補強液供給部)、38…下補強液(補強液)、41…上スタンプ部(スタンプ部)、44…上弾性部、51…下スタンプ部(スタンプ部)、52…下弾性部、54…貯留部。
図1
図2
図3
図4
図5