(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1折畳工程の前記第1方向が、車両搭載時の前記ステアリングホイールの左右方向に沿う方向としていることを特徴とする請求項1に記載の運転席用エアバッグの折畳方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の運転席用エアバッグの折畳方法では、エアバッグの初期膨張時に、中央部の厚さを確保できるものの、さらに、中央部の部分的な厚さを抑えて、中央部とその周縁との広い面積で厚くし、そして、移動してくる運転者の頭部付近を好適に受け止めて保護できるようにする点で、改善の余地があった。
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、初期膨張時にエアバッグが好適に展開膨張できる運転席用エアバッグの折畳方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る運転席用エアバッグの折畳方法は、エアバッグが、
ステアリングホイールの操舵時に把持するリング部の略中央付近のボス部に、折り畳まれて収納されるとともに、
膨張用ガスを流入させて膨張した際の前記リング部側に支持される車体側壁部と、該車体側壁部の外周縁と外周縁を連結させて運転者側に配設される運転者側壁部と、を備えて構成され、
前記車体側壁部の中央付近に配設される膨張用ガスを流入させるための流入用開口の周縁を、前記ボス部側に固定される取付座、として構成され、
折畳時に、前記車体側壁部と前記運転者側壁部とを重ねて平らに展開させた初期展開状態から、前記取付座を中心とした相互に直交する第1方向と第2方向との2方向で、両縁側から幅寸法を縮小させて折畳完了体を形成する構成の運転席用エアバッグの折畳方法であって、
前記折畳完了体が、前記第1方向に沿って縮小させるように折り畳む第1折畳工程と、第1折畳工程を経た後に前記第2方向に沿って縮小させるように折り畳む第2折畳工程と、を経て形成される構成として、
前記第1折畳工程が、
前記車体側壁部と前記運転者側壁部とを重ねて平らに展開させた初期展開状態から、前記取付座を中心とした前記第1方向に沿って対向する両縁側を、それぞれ、
前記取付座近傍に重ねるように折る初期折り工程と、
前記初期折り工程での折目を、前記取付座側に接近させるように巻くロール折りをして、前記取付座近傍に、ロール折畳部を形成する初期ロール折り工程と、
両側の前記ロール折畳部を、
それぞれ、前記取付座近傍
における前記車体側壁部
を折り返した車体側折返し部と
、前記運転者側壁部
を折り返した運転者側折返し部と
、の間に、入れ込
んで内折り折畳部を形成するとともに、両側の前記運転者側折返し部を連ならせた状態の下方における前記取付座の上方で、両側の前記内折り折畳部を、並設させるように、配設させる内折り工程と、
を経て折り畳む工程とし、
前記第2折畳工程が、
前記第1折畳工程後の前記取付座を中心とした前記第2方向に沿って対向する両縁側を、それぞれ、前記取付座側に接近させるように折り畳む工程としていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る運転席用エアバッグの折畳方法では、ステアリングホイールに搭載された状態でエアバッグが膨張すると、折り畳んだ工程と略逆の工程として、第2折畳工程や第1折畳工程での折りが順次解消される。そのため、まず、初期展開膨張時には、折畳完了体が、第2折畳工程で縮小された第2方向に沿って、展開し、第1折畳工程の最終工程の内折り工程の折りを解消しようとする。しかし、内折り工程は、初期折りロールした両側の各ロール折畳部を、単に、膨張して相互に離隔する運転者側壁部と車体側壁部の間に入れ込んだ折り畳みであって、第2折畳工程の折りの解消時に、同時に折りを解消され易く、そしてさらに、第1折畳工程の内折り工程の前の工程である初期ロール折り工程のロール折畳部も、内折りの折りの解消に伴なって折りの解消を始め易い。そのため、初期膨張時に、エアバッグは、運転者側壁部における取付座の上方付近において、第2方向に沿って長く膨らみ、かつ、第1方向に沿っても、初期折りの折目間の幅寸法より狭いものの、幅広く膨らむ。そのため、初期膨張時のエアバッグは、運転者側壁部の中央付近において、部分的に突出する部位を無くし、第2方向に沿って長くして、全体的に膨らむ形状を達成できることから、運転者の頭部や顎下(首付近)が接近していても、頭部への押圧力を抑制し、かつ、顎下への侵入を抑制して、円滑に運転者の頭部を受け止めて保護することができる。勿論、初期膨張状態を経た後には、第2方向での両端付近や、第1方向に沿った両側付近も、展開膨張を完了させることから、通常位置から前方移動してくる運転者は、膨張を完了させたエアバッグの運転者側壁部により、的確に受け止められて、保護される。
【0010】
したがって、本発明に係る運転席用エアバッグの折畳方法では、初期膨張時に、エアバッグが好適に展開膨張できて、運転者の頭部付近が接近していても、頭部への押圧力を抑制し、かつ、顎下への侵入を抑制して、エアバッグが、運転者を好適に受け止めて保護することができる。
【0011】
本発明に係る折畳方法では、前記第1折畳工程の前記第1方向が、車両搭載時の前記ステアリングホイールの左右方向に沿う方向としていることが望ましい。
【0012】
このような構成では、エアバッグの膨張初期に、第2方向に沿った両側を長く展開させることができ、第1方向がステアリングホイールの左右方向に沿う方向であれば、第2方向は前後方向となり、第2方向の後方側、すなわち、エアバッグの後端側を、ステアリングホイールのリング部の後部と、その部位に接近している運転者の腹部と、の間に、円滑に進入させることができる。そのため、運転者がステアリングホイールに接近していても、リング部の後部と腹部との間に、円滑にエアバッグの後端が進入し、その後、エアバッグの後端側が、リング部の後部に支持された状態で、厚く膨らんで、前進移動する運転者の腹部を的確に受け止めて保護することができる。
【0013】
また、本発明に係る折畳方法では、前記エアバッグが、前記車体側壁部の内周面側の前記取付座の周縁に、前記エアバッグ内に流入する膨張用ガスを前記第2方向に沿った両側に流し可能な流出口を有した整流部材を、配設させていることが望ましい。
【0014】
このような構成では、整流部材により、膨張初期のエアバッグ内の膨張用ガスが、第2方向に沿った両側に流れることから、膨張初期に、膨張用ガスの流れを利用して、エアバッグを、安定して、第2方向に沿って長く展開膨張させることができ、本発明の作用・効果をより円滑かつ安定して達成することができる。
【0015】
この場合、前記整流部材は、両側の前記流出口から流出する流量より少なくして、前記第1方向に沿って膨張用ガスを流出可能な補助流出口、を備えて構成されていることが望ましい。
【0016】
このような構成では、整流部材の補助流出口から、第1方向に沿って膨張用ガスがエアバッグ内に流出されることから、初期膨張を経た後の第1方向に沿う両側への展開が迅速に行われ、エアバッグは、円滑に展開膨張を完了させることができる。
【0017】
また、本発明に係る折畳方法では、前記エアバッグが、前記取付座の周縁と前記運転者側壁部との間の離隔距離を規制可能な4本のテザーを備え、
前記各テザーにおける前記取付座側の元部が、前記第1方向と前記第2方向との間のエリアの前記取付座の周縁に、それぞれ、配設されていることが望ましい。
【0018】
このような構成では、膨張完了時のエアバッグが、テザーにより、運転者側壁部の車体側壁部からの離隔距離を規制されることから、部分的に運転者側に突出することを抑制できる。そして、各テザーが、車体側壁部と連結される元部を、第1方向と第2方向との間のエリアの取付座の周縁に、配設させており、整流部材の第2方向に沿って流出口から流出される膨張用ガスや、あるいは、整流部材の第1方向に沿って補助流出口から流出される膨張用ガスと、干渉し難いことから、整流部材から流出する膨張用ガスの流れを阻害せず、整流部材の安定した整流効果を確保できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、第1実施形態の運転席用エアバッグ10を使用するエアバッグ装置Mは、
図1,2に示すように、ステアリングホイールWに搭載され、ステアリングホイールWは、ステアリングホイール本体1と、ステアリングホイール本体1の中央のボス部Bの上部に配置されるエアバッグ装置Mと、を備えて構成される。ステアリングホイール本体1は、操舵時に把持する円環状のリング部Rと、リング部Rの中央に配置されてステアリングシャフトSSに締結されるボス部Bと、ボス部Bとリング部Rとを連結する4本のスポーク部Sと、を備えて構成される。
【0021】
なお、本明細書では、特に断らない限り、上下方向は、ステアリングシャフトSSの軸方向に沿った上下方向が対応し、前後方向は、車両の直進操舵時のステアリングシャフトSSの軸方向と直交した前後方向YDが対応し、左右方向は、車両の直進操舵時のステアリングシャフトSSの軸方向と直交した左右方向XDが対応するものである。
【0022】
ステアリングホイール本体1は、
図1,2に示すように、リング部R、ボス部B、スポーク部Sの各部を連結するように配置されて、アルミニウム合金等の金属製の芯金2を備えて構成される。芯金2のリング部Rの部位と各スポーク部Sのリング部R側の部位とには、合成樹脂製の被覆層5が被覆されている。芯金2のボス部Bの部位には、ステアリングシャフトSSを挿入させてナットN止めするための鋼製のボス3が配設されている。また、ステアリングホイール本体1の下部には、ボス部Bの下方を覆う合成樹脂製のロアカバー7が配設されている。
【0023】
運転席用エアバッグ装置Mは、
図2に示すように、折り畳まれて収納されるエアバッグ10、エアバッグ10に膨張用ガスを供給するインフレーター77、折り畳んだエアバッグ10の上方を覆うエアバッグカバー83、エアバッグ10とインフレーター77とを収納保持するとともにエアバッグカバー83を保持するケース79、及び、インフレーター77とともにエアバッグ10をケース79に取り付けるためのリテーナ75、を備えて構成される。
【0024】
リテーナ75は、四角環状の板金製として、エアバッグ10の後述する流入用開口14の周縁の取付座13を押えて、エアバッグ10をケース79に取り付けるとともに、インフレーター77をケース79に取り付けるように、四隅に、ケース79にナット止めされるボルト75a(
図8のA参照)を備えて構成されている。
【0025】
インフレーター77は、上部に複数のガス吐出口77bを備えた円柱状の本体部77aと、本体部77aの外周面から突出するフランジ部77cと、を備えて構成される。フランジ部77cには、リテーナ75の各ボルト75aを貫通させる図示しない貫通孔が形成されている。
【0026】
ケース79は、
図1,2に示すように、略直方体形状の板金製とし、ステアリングホイールWのボス部Bの上部に配置されて、折り畳まれたエアバッグ10を収納する収納部位を構成し、略長方形状の底壁部79aには、インフレーター77の本体部77aを下方から挿入可能な円形に開口した挿通孔79bが形成されるとともに、その周囲に、リテーナ75のボルト75aを貫通させる4つの貫通孔79cが形成されている。底壁部79aの外周縁から上方に延びる側壁部79dの上端には、外方へ延びる取付片79eが形成され、取付片79eには、図示しないホーンスイッチ機構の取付基板が取り付けられ、図示しない取付基板を利用して、ケース79がステアリングホイールWの芯金2に取付固定され、エアバッグ装置Mが、ステアリングシャフトSSに装着済みのステアリングホイール本体1のボス部Bの上部に搭載されることとなる。また、ケース79の側壁部79dには、リベット81等を利用してエアバッグカバー83の側壁部85が取り付けられている。
【0027】
エアバッグカバー83は、合成樹脂製として、収納したエアバッグ10の上方を覆う天井壁部84と、天井壁部84の外周縁付近から下方へ延びる略四角筒形状の側壁部85と、を備えて構成されている。天井壁部84には、膨張するエアバッグ10に押されて前後両側に開く2枚の扉部84a,84aが形成されている。
【0028】
エアバッグ10は、ポリアミドやポリエステル等の織糸を織った布材から形成され、
図1,2の二点鎖線に示すように、膨張完了形状を、上方から見て円形として、側方から見て球状に近い略楕円球状とするように構成されて、
図2,7,12に示すように、外周壁11が、ステアリングホイール本体1側(リング部R側)の車体側壁部12と、運転者D側の運転者側壁部18と、を備えて構成されている。
【0029】
車体側壁部12と運転者側壁部18とは、
図2〜7に示すように、相互に、同一の外形の円形として構成され、外周縁12a,18a相互を縫合して、エアバッグ10の外周壁11が形成されている。
【0030】
車体側壁部12の中央には、膨張用ガスを流入させるように円形に開口する流入用開口14が配設されている。流入用開口14の周縁は、エアバッグ10をボス部B側のケース79の底壁部79aに取り付けるための取付座13を構成しており、取付座13には、リテーナ75の各ボルト75aを貫通させる取付孔13aが形成されている(
図3,5参照)。車体側壁部12の前部側の左右には、膨張用ガスを排気可能なベントホール20が開口されている(
図1,3,7参照)。
【0031】
エアバッグ10内には、
図2〜6に示すように、車体側壁部12と運転者側壁部18との膨張時の離隔距離を規制するように、車体側壁部12(取付座13付近)と運転者側壁部18とを連結する四本のテザー22(A,B,C,D)が配設されている。また、流入用開口14を経て流入する膨張用ガスを前後両側に流す整流部材24が配設されている。整流部材24には、前後両側に膨張用ガスを流す流出口25(F,B)の他、流出口25F,25Bより流出する膨張用ガスの流量を少なくするものの、左右両側に、膨張用ガスを流す円形に開口した補助流出口26(L,R)が形成されている。
【0032】
エアバッグ10の構成部材としては、
図7に示すように、車体側壁部12を構成する略円板状の車体側用部材31、運転者側壁部18を構成する略円板状の運転者側用部材33、補強布34(D,U)、テザー22を構成するためのテザー用部材36,38、及び、整流部材24を構成するための整流用部材40、を具備し、それぞれ、ポリアミドやポリエステル等の織糸を織った布材から形成されている。
【0033】
補強布34Dは、円環状として、車体側壁部12の取付座13の補強を図るもので、取付座13と同様に、流入用開口14と取付孔13aとを備えて構成されている。補強布34Uは、円板状として、運転者側壁部18におけるテザー用部材38との縫合部位を補強するために、配設される。
【0034】
テザー用部材36は、車体側壁部12の内周面側に配設されるもので、取付座13付近に縫合される基部36aと、テザー22A,22B,22C,22Dのそれぞれの下部側を形成する腕部36d(L,R),36e(L,R)と、を備えて構成されている。基部36aは、補強布34D等とともに、縫合糸28により、取付座13に重ねて縫合される中央部36bと、中央部36bの前後両側から前後に突出する略長方形板状の張出部36c(F,B)と、を備えて構成されている。中央部36bは、取付座13と同様に、流入用開口14と取付孔13aとを備えて構成されている。
【0035】
前後の張出部36c(F,B)は、取付座13の前後の部位で、縫合糸28の縫合により、車体側壁部12に対して結合され、それぞれ、左右の両縁から、腕部36d(L,R),36e(L,R)を突設させている。これらの腕部36d(L,R),36e(L,R)は、テザー用部材38の後述する腕部38b,38c,38d,38eと結合されて、テザー22A,22B,22C,22Dを形成している。そのため、各テザー22A,22B,22C,22Dにおける車体側壁部12への結合部位である元部22bは、張出部36c(F,B)の縫合糸28による略長方形状の縫合部位(結合部位)15,16における各腕部36d(L,R),36e(L,R)に近い部位、すなわち、結合部位15,16の左右の短辺部位15a,15b,16a,16bとなる。
【0036】
これらの元部22b(短辺部位15a,15b,16a,16b)は、整流部材24の流出口25F,25Bや補助流出口26L,26Rから流出される膨張用ガスの流れを阻害しないように、前後方向YDや左右方向XDの膨張用ガスの流れ方向からずれて、すなわち、流入用開口14を中心とし前後方向YDや左右方向XDからずれて、流入用開口14を中心とした斜め方向とし、さらに、整流部材24から前後方向YDに離れた位置に配置されている。具体的には、
図3,5に示すように、左前のテザー22Aの元部22bは、流入用開口14を中心とした斜め左前方向として、整流部材24の前方側とし、さらに、取付座13の左縁13b側付近にずれて配設されている。右前のテザー22Bの元部22bは、流入用開口14を中心とした斜め右前方向として、整流部材24の前方側とし、さらに、取付座13の右縁13c側付近にずれて配設されている。左後のテザー22Cの元部22bは、流入用開口14を中心とした斜め左後方向として、整流部材24の後方側とし、さらに、取付座13の左縁13b側付近にずれて配設されている。右後のテザー22Dの元部22bは、流入用開口14を中心とした斜め右後方向として、整流部材24の後方側とし、さらに、取付座13の右縁13c側付近にずれて配設されている。
【0037】
テザー用部材38は、運転者側壁部18の中央18cの内周面側に縫合される円板状の基部38aと、基部38aから前後左右の方向から斜めにずらした放射状の4方向に延びる腕部38b,38c,38d,38eと、を備えて構成されている。これらの腕部38b,38c,38d,38eは、それぞれ、テザー用部材36の腕部36d(L,R),36e(L,R)と結合されて、テザー22A,22B,22C,22Dを形成している。そのため、各テザー22A,22B,22C,22Dにおける運転者側壁部18への結合部位である先端部22aは、基部38aの縫合糸28による円環状の縫合部位(結合部位)19における各腕部36d(L,R),36e(L,R)に近い部位、すなわち、円環状の縫合部位19の略4分の1ずつの円弧部19a,19b,19c,19dとしている。なお、基部38aは、二枚の補強布34Uを重ねられて、縫合糸28により、運転者側壁部18の中央18cに縫合されている。
【0038】
整流用部材40は、補強布34Dとともに、取付座13に縫合される基部41と、基部41から左右に延びる腕部42L,42Rと、を備えて構成されている。基部41は、取付座13と同様に、流入用開口14と取付孔13aとを備えて構成されている。左右の腕部42L,42Rには、それぞれ、小径の円形に開口した補助流出口26L,26Rが配設されている。整流用部材40は、基部41を取付座13に結合された状態で、腕部42L,42Rの先端42a相互を結合(縫合)されて、前後両側に流出口25F,25Bを設けた筒状の整流部材24を形成する。
【0039】
このエアバッグ10の製造は、流入用開口14や取付孔13aを設けない状態として、車体側壁部12のエアバッグ10の内周面側の部位に、補強布34D,テザー用部材36の中央部36b、整流用部材40の基部41、及び、補強布34Dを重ねて、縫合糸28による円環状の縫合部位29を設けて、流入用開口14の部位の周縁に、それらを共縫いし、また、テザー用部材36の張出部36c(F,B)を、縫合糸28による略長方形状の縫合部位15,16を設けて、車体側壁部12に縫合する。そして、孔開け加工により、流入用開口14と取付孔13aとを形成する。なお、ベントホール20,20は、この孔開け加工時に形成してもよいし、予め、形成しておいてもよい。
【0040】
一方、運転者側壁部18側では、補強布34U,34Uの間に、テザー用部材38の基部38aを配置させ、円環状の縫合部位19を設けて、補強布34U,34Uとともに、基部38aをエアバッグ10の内周面側となる運転者側壁部18の中央18cに縫合すれば、
図6に示す状態となる。
【0041】
その後、車体側壁部12と運転者側壁部18との外周面側を合わせて、車体側壁部12と運転者側壁部18との外周縁12a,18a相互を縫合し、流入用開口14を利用して、裏返し、そして、流入用開口14から引き出して、テザー用部材36,38の腕部36dL,38b相互、腕部36dR,38c相互、腕部36eL,38d、及び、腕部36eR,38e相互を、縫合により結合させて、テザー22A,22B,22C,22Dを形成するとともに、整流用部材40の腕部42L,42Rの先端42a相互を、縫合により結合させて、それらの縫合部位を流入用開口14からエアバッグ10内に入れれば、エアバッグ10の製造を完了することができる。
【0042】
製造したエアバッグ10は、エアバッグ装置Mに組み付ける際、つぎのような第1折畳工程と第2折畳工程とを備えた折畳工程を経た後の折畳完了体65として、エアバッグ装置Mに組み付ける。
【0043】
なお、折畳工程の折り畳み前には、予め、リテーナ75の各ボルト75a(
図8のA参照)を取付孔13aから突出させるようにエアバッグ10内にリテーナ75を入れておいて、折り畳む。
【0044】
第1実施形態の折畳工程は、
図8〜11に示すように、車体側壁部12と運転者側壁部18とを重ねて平らに展開させた初期展開状態から、取付座13を中心とした相互に直交する第1方向と第2方向との2方向で、両縁側から幅寸法を縮小させて、折畳完了体65を形成する工程としている。第1実施形態の場合、折畳完了体65は、第1方向D1を左右方向XDとし、第2方向D2を前後方向YDとして、第1方向D1に沿って縮小させるように折り畳む第1折畳工程と、第1折畳工程を経た後に第2方向D2に沿って縮小させるように折り畳む第2折畳工程と、を経て形成されている。
【0045】
第1折畳工程は、取付座13を中心とした第1方向D1の両側を、それぞれ、初期折り工程、初期ロール折り工程、及び、内折り工程を経て、折り畳む工程としている。
【0046】
初期折り工程は、
図8のA,Bに示すように、車体側壁部12と運転者側壁部18とを重ねて平らに展開させた初期展開体50を形成した初期展開状態から、取付座13を中心とした第1方向D1の左右方向XDに沿って対向する両縁10b,10cの少なくとも一方を、例えば、まず、左縁10bを、車体側壁部12の取付座13近傍に重ねるように折って、折目53aを付けた折重部53(L)を形成する工程としている。
【0047】
初期ロール折り工程は、
図8のB,Cに示すように、初期折り工程での折目53aを、取付座13側に接近させるように、車体側壁部12の側で巻くロール折りをして、取付座13近傍に、ロール折畳部56(L)を形成する工程である。
【0048】
内折り工程は、
図9のA,Bに示すように、初期ロール折り工程のロール折畳部56(L)を、取付座13近傍の車体側壁部12と運転者側壁部18との間に入れ込む工程としている。すなわち、取付座13の左縁13b側の上方に、取付座13近傍の車体側壁部12を折り返した車体側折返し部60と取付座13近傍の運転者側壁部18を折り返した運転者側折返し部61との間にロール折畳部56Lを収納させて内折り折畳部59(L)、を配設させる工程としている。
【0049】
そして、同様に、第1方向D1としての左右方向XDの反対側の右縁10c側においても、左右対称的に、初期折り工程、初期ロール折り工程、及び、内折り工程の折畳工程を行って、
図9のCに示すように、取付座13の右縁13c側の上方にも内折り折畳部59(R)を設けて、内折り体58を形成する。
この内折り体58では、両側のロール折畳部56L,56Rを、それぞれ、取付座13近傍における車体側壁部12を折り返した車体側折返し部60と、運転者側壁部18を折り返した運転者側折返し部61と、の間に、入れ込んで内折り折畳部59L,59Rを形成するとともに、両側の運転者側折返し部61,61を連ならせた状態の下方における取付座13の上方で、両側の内折り折畳部59L,59Rを、並設させるように、配設させて、形成されている。
【0050】
なお、図例では、第1折畳工程の初期折り工程、初期ロール折り工程、及び、内折り工程を、エアバッグ10における第1方向D1としての左右方向XDの片側の左縁10b側を、初期折り工程、初期ロール折り工程、及び、内折り工程により、折り畳み、ついで、右縁10c側を、左右対称的に、初期折り工程、初期ロール折り工程、及び、内折り工程により、折り畳んだ場合を例示したが、先に、右縁10c側を折り畳み、ついで、左縁10b側を折り畳んでもよく、あるいは、左右両縁10b,10c側を同時に折り畳んでもよい。
【0051】
第2折畳工程は、
図10のA〜C、
図11のA〜Cに示すように、第1折畳工程後の取付座13を中心とした第2方向D2の前後方向YDに沿って対向する両縁10d,10e側を、それぞれ、取付座13側に接近させるように折り畳み、折り畳んだ折畳部66(F,B)を、取付座13の上方の運転者側壁部18の上面側に配置させる工程としている。
【0052】
実施形態の場合、第2折畳工程では、第1折畳工程を経た後の左右両側に内折り折畳部59L,59Rを設けた内折り体58の前後の縁58a,58bの内の例えば、後縁58b側(エアバッグ10の後縁10e側)を、
図10のA〜Cに示すように、取付座13側に接近させるように、車体側壁部12の側でロール折りして、ロール折畳部66Bを形成し、ついで、前縁58a側(エアバッグ10の前縁10d側)も、取付座13側に接近させるように、車体側壁部12の側でロール折りして、
図11のAに示すように、ロール折畳部66Fを形成する。ついで、
図11のB,Cに示すように、ロール折畳部66F,66Bを、取付座13の上方の運転者側壁部18の上面側に配置させれば、折畳完了体65を形成することができ、第2折畳工程を終了させることができて、エアバッグ10の折畳工程を完了させることができる。
【0053】
なお、図例では、第2折畳工程を、エアバッグ10における第2方向D2としての前後方向YDの片側の後縁10e側を、折り畳み、ついで、前縁10d側を、前後対称的に、折り畳んだ場合を例示したが、先に、前縁10d側を折り畳み、ついで、後縁10e側を折り畳んでもよく、あるいは、前後両縁10d,10e側を同時に折り畳んでもよい。
【0054】
エアバッグ10を折り畳んで折畳完了体65を形成した後には、折り崩れしないように、エアバッグ10(折畳完了体65)を所定の折り崩れ防止材によって包む。ついで、リテーナ75の各ボルト75aを貫通孔79cから突出させるように、ケース79内の底壁部79a上にエアバッグ10を収納し、さらに、インフレーター77の本体部77aを下方から底壁部79aの挿通孔79bに挿入させて、フランジ部77cにリテーナ75の各ボルト75aを貫通させ、各ボルト75aに図示しないナットを締結すれば、収納部位としてのケース79に、エアバッグ10とインフレーター77とを収納し、かつ、リテーナ75を利用して、エアバッグ10とインフレーター77とを取り付けることができる。さらに、ケース79にエアバッグカバー83を被せて、リベット81等を利用して側壁部79d,85相互を連結して、ケース79にエアバッグカバー83を取り付け、さらに、ケース79の取付片79eに、図示しないホーンスイッチ機構を組み付ければ、エアバッグ装置Mを組み立てることができる。そして、エアバッグ装置Mの車両への搭載は、予め、ステアリングシャフトSSに締結したステアリングホイール本体1に対して、ホーンスイッチ機構の図示しない取付基板を利用して、エアバッグ装置Mを取り付ければ、エアバッグ装置Mを車両に搭載することができる。
【0055】
そして、第1実施形態の運転席用エアバッグ装置Mでは、膨張用ガスGが流入用開口14を経てエアバッグ10に流入するように作動すると、膨張用ガスGにより、エアバッグ10が膨張し、エアバッグカバー83の扉部84a,84aを押し開いて、エアバッグ10が、
図2の二点鎖線に示すように、収納部位としてのケース79から突出して、リング部Rの上面PR側を覆うように、膨張を完了させる。
【0056】
その際、第1実施形態では、ステアリングホイールWに搭載された状態でエアバッグ10が膨張すると、折り畳んだ工程と略逆の工程として、第2折畳工程や第1折畳工程での折りが順次解消される。そのため、まず、初期展開膨張時には、
図12のA,Bや
図13のA,Bに示すように、折畳完了体65が、第2折畳工程で縮小された第2方向D2(前後方向YD)に沿って、展開し、第1折畳工程の最終工程の内折り工程の折りを解消しようとする。しかし、内折り工程は、初期折りロールした両側の各ロール折畳部56L,56Rを、単に、膨張して相互に離隔する運転者側壁部18と車体側壁部12の間に入れ込んだ折り畳みであって、第2折畳工程の折りの解消時に、
図14のA〜Dに示すように、同時に折りを解消され易く、そしてさらに、第1折畳工程の内折り工程の前の工程である初期ロール折り工程のロール折畳部56L,56Rも、内折りの折りの解消に伴なって折りの解消を始め易い。そのため、初期膨張時に、エアバッグ10は、運転者側壁部18における取付座13の上方付近において、第2方向D2(前後方向YD)に沿って長く膨らみ、かつ、第1方向D1(左右方向XD)に沿っても、初期折りの折目53a,53a間の幅寸法WX(
図8のB参照)より狭いものの、幅広く膨らむ。そのため、初期膨張時のエアバッグ10は、運転者側壁部18の中央18c付近において、部分的に突出する部位を無くし(
図12のB,C参照)、第2方向D2(前後方向YD)に沿って長くして、全体的に膨らむ形状を達成できることから、運転者Dの頭部DHや顎下(首付近)DJが接近していても、頭部DHへの押圧力を抑制し、かつ、顎下DJへの侵入を抑制して、円滑に運転者Dの頭部DHを受け止めて保護することができる。勿論、初期膨張状態を経た後には、第2方向D2(前後方向YD)での両端付近や、第1方向D1(左右方向XD)に沿った両側付近も、展開膨張を完了させることから、通常位置から前方移動してくる運転者Dは、膨張を完了させたエアバッグ10の運転者側壁部18により、的確に受け止められて、保護される。
【0057】
したがって、第1実施形態の運転席用エアバッグ10の折畳方法では、初期膨張時に、エアバッグ10が好適に展開膨張できて、運転者Dの頭部DH付近が接近していても、頭部DHへの押圧力を抑制し、かつ、顎下DJへの侵入を抑制して、エアバッグ10が、運転者Dを好適に受け止めて保護することができる。
【0058】
また、第1実施形態の折畳方法では、第1折畳工程の第1方向D1が、車両搭載時のステアリングホイールWの左右方向XDに沿う方向としている。
【0059】
そのため、第1実施形態では、エアバッグ10の膨張初期に、第2方向D2に沿った両側を長く展開させることができ、第1方向D1がステアリングホイールWの左右方向XDに沿う方向であれば、第2方向D2は前後方向YDとなり、第2方向D2の後方側、すなわち、エアバッグ10の後端(後縁)10e側を、ステアリングホイールWのリング部Rの後部RBと、その部位に接近している運転者Dの腹部DBと、の間に、円滑に進入させることができる(
図12のB,C参照)。その結果、運転者DがステアリングホイールWに接近していても、リング部Rの後部RBと腹部DBとの間に、円滑にエアバッグ10の後端10eが進入し、そして、後端10e側が、リング部Rの後部RBに支持された状態で、厚く膨らみ、前進移動する運転者Dの腹部DBを的確に受け止めて保護することができる。
【0060】
また、第1実施形態では、エアバッグ10が、車体側壁部12の内周面側の取付座13の周縁に、エアバッグ10内に流入する膨張用ガスGを第2方向D2に沿った両側に流し可能な流出口25F,25Bを有した整流部材24を、配設させている。
【0061】
そのため、第1実施形態では、整流部材24により、膨張初期のエアバッグ10内の膨張用ガスGが、第2方向D2(前後方向YD)に沿った前後両側に流れることから、膨張初期に、膨張用ガスGの流れを利用して、エアバッグ10を、安定して、第2方向D2に沿って長く展開膨張させることができ、本発明の作用・効果をより円滑かつ安定して達成することができる。
【0062】
この場合、第1実施形態では、整流部材24が、両側の流出口25F,25Bから流出する流量より少なくして、第1方向D1に沿って膨張用ガスGを流出可能な補助流出口26L,26R、を備えて構成されている。
【0063】
そのため、第1実施形態では、整流部材24の補助流出口26L,26Rから、第1方向D1の左右方向XDに沿って膨張用ガスGがエアバッグ10内に流出されることから、初期膨張を経た後の第1方向D1に沿う左右両側への展開が迅速に行われ、エアバッグ10は、円滑に展開膨張を完了させることができる。
【0064】
また、第1実施形態では、エアバッグ10が、取付座13の周縁と運転者側壁部18との間の離隔距離を規制可能な4本のテザー22A,22B,22C,22Dを備えて、各テザー22(A,B,C,D)における取付座13側の元部22bが、第1方向D1と第2方向D2との間のエリアの取付座13の周縁に、それぞれ、配設されている。具体的には、左前のテザー22Aの元部22bは、流入用開口14を中心とした斜め左前方向として、整流部材24の前方側とし、さらに、取付座13の左縁13b側付近にずれて配設されている。右前のテザー22Bの元部22bは、流入用開口14を中心とした斜め右前方向として、整流部材24の前方側とし、さらに、取付座13の右縁13c側付近にずれて配設されている。左後のテザー22Cの元部22bは、流入用開口14を中心とした斜め左後方向として、整流部材24の後方側とし、さらに、取付座13の左縁13b側付近にずれて配設されている。右後のテザー22Dの元部22bは、流入用開口14を中心とした斜め右後方向として、整流部材24の後方側とし、さらに、取付座13の右縁13c側付近にずれて配設されている。
【0065】
そのため、第1実施形態では、膨張完了時のエアバッグ10が、テザー22(A,B,C,D)により、運転者側壁部18の車体側壁部12からの離隔距離を規制されることから、部分的に運転者D側に突出することを抑制できる。そして、各テザー22(A,B,C,D)が、車体側壁部12と連結される元部22bを、第1方向D1と第2方向D2との間のエリアの取付座13の周縁に、配設させており、整流部材24の第2方向D2に沿って流出口25F,25Bから流出される膨張用ガスGや、あるいは、整流部材24の第1方向D1に沿って補助流出口26L,26Rから流出される膨張用ガスGと、干渉し難いことから、整流部材24から流出する膨張用ガスGの流れを阻害せず、整流部材24の安定した整流効果を確保できる。
【0066】
なお、第1実施形態では、前後方向YDを第2方向D2として、エアバッグ10の膨張初期に、前後方向YDに長く延ばして、運転者側壁部18の中央18c付近を、前後方向YDに幅広く、かつ、左右方向XDも極力幅広く膨らむようにして、接近している運転者Dの顎下DJへの侵入を抑制しつつ頭部DHを的確に受け止める構成とした。
【0067】
しかし、エアバッグの膨張初期に、接近している運転者Dの顎下DJへの侵入を抑制しつつ頭部DHを的確に受け止める構成としては、
図16〜19に示す第2実施形態のように、エアバッグ10Aを折り畳んでもよい。
【0068】
このエアバッグ10Aは、第1実施形態のエアバッグ10と略同様な構成としているものの、
図15に示すように、整流部材24Aが、エアバッグ10の整流部材24を、流入用開口14を中心として、90°回転させて配設させて、左右方向XDに沿って流出口25(L,R)から膨張用ガスを流出させる構成としている。また、
図16のA〜Cや
図17のA〜Cに示すように、第1折畳工程で折り畳んでエアバッグ10Aを縮小させる第1方向D1を、前後方向YDとし、
図18のA〜Cや
図19のA〜Cに示すように、第2折畳工程で折り畳んで縮小させる第2方向D2を左右方向XDとしている点が、第1実施形態と異なっている。
【0069】
具体的には、第2実施形態のエアバッグ10Aは、初期膨張時に、第2方向D2に沿って長く膨らませる方向を左右方向XDとして、第1実施形態のエアバッグ10の膨張形態を、流入用開口14を中心として90°回転させた構成としている。
【0070】
すなわち、第2実施形態では、第1折畳工程として、
図16のA,Bに示すように、エアバッグ10Aの車体側壁部12と運転者側壁部18とを重ねて平らに展開させた初期展開状態から、取付座13を中心とした第1方向D1としての前後方向YDに沿って対向する両縁10d,10e側を、例えば、前縁10d側を、初期折り工程において、車体側壁部12の取付座13近傍に重ねるように折り、ついで、
図16のB,Cに示すように、初期ロール折り工程において、初期折り工程で折り重ねた折重部53(F)の折目53aを、取付座13側に接近させるように、車体側壁部12の側で巻くロール折りをして、取付座13近傍に、ロール折畳部56(F)を形成する。ついで、
図17のA,Bに示すように、内折り工程において、ロール折畳部56Fを、取付座13近傍の車体側壁部12と運転者側壁部18との間に入れ込む。同様に、後縁10e側も、初期折り工程、初期ロール折り工程、及び、内折り工程を経て、
図17のCに示すように、取付座13の上方に、内折り折畳部59(F,B)を設けた内折り体58Aを形成する。
すなわち、この内折り体58Aでも、両側のロール折畳部56F,56Bを、それぞれ、取付座13近傍における車体側壁部12を折り返した車体側折返し部60と、運転者側壁部18を折り返した運転者側折返し部61と、の間に、入れ込んで内折り折畳部59F,59Bを形成するとともに、両側の運転者側折返し部61,61を連ならせた状態の下方における取付座13の上方で、両側の内折り折畳部59F,59Bを、並設させるように、配設させて、形成されている。
【0071】
そして、第2折畳工程では、
図18のA,Bに示すように、内折り体58Aの左右の縁58c,58dの内の例えば、左縁58c側(エアバッグ10Aの左縁10b側)を、
図18のA〜Cに示すように、取付座13側に接近させるように、車体側壁部12の側でロール折りして、ロール折畳部66Lを形成し、ついで、右縁58d側(エアバッグ10Aの右縁10c側)も、取付座13側に接近させるように、車体側壁部12の側でロール折りして、
図19のAに示すように、ロール折畳部66Rを形成する。ついで、
図19のB,Cに示すように、ロール折畳部66L,66Rを、取付座13の上方の運転者側壁部18の上面側に配置させれば、折畳完了体65Aを形成することができて、第2折畳工程を終了させることができて、エアバッグ10Aの折畳工程を完了させることができる。
【0072】
そして、第1実施形態と同様に、エアバッグ装置Mとしてエアバッグ10Aを組み付けてステアリングホイールWに搭載する。
【0073】
ステアリングホイールWに搭載されたエアバッグ10Aが膨張する際には、第1実施形態のエアバッグ10の挙動と90°ずれた形態となるものの、膨張初期に、運転者が接近していても、運転者の顎下への侵入を抑制しつつ頭部を的確に受け止めることができる。
【0074】
すなわち、エアバッグ10Aの初期展開膨張時には、折畳完了体65Aが、第2折畳工程で縮小された第2方向D2としての左右方向XDに沿って、展開し、第1折畳工程の最終工程の内折り工程の折りを解消しようとする。しかし、内折り工程は、初期折りロールした前後両側の各ロール折畳部56F,56Bを、単に、膨張して相互に離隔する運転者側壁部18と車体側壁部12の間に入れ込んだ折り畳みであって(
図17のB,C参照)、第2折畳工程の折りの解消時に、同時に折りを解消され易く、そしてさらに、第1折畳工程の内折り工程の前の工程である初期ロール折り工程のロール折畳部56F,56Bも、内折りの折りの解消に伴なって折りの解消を始め易い。そのため、
図20のA〜Cに示すように、初期膨張時に、エアバッグ10Aは、運転者側壁部18における取付座13の上方付近において、第2方向D2としての左右方向XDに沿って長く膨らみ、かつ、第1方向D1の前後方向YDに沿っても、初期折りの折目53a,53a間の幅寸法WY(
図16のB参照)より狭いものの、幅広く膨らむ。そのため、運転者側壁部18の中央18c付近において、部分的に突出する部位を無くし、第2方向D2としての左右方向XDに沿って長くして、全体的に膨らむ形状を達成できることから、運転者の頭部や顎下(首付近)が接近していても、頭部への押圧力を抑制し、かつ、顎下への侵入を抑制して、円滑に運転者の頭部を受け止めて保護することができる。勿論、初期膨張状態を経た後には、第2方向D2での左右両縁10b,10c付近や、第1方向D1に沿った両縁10d,10e付近も、展開膨張を完了させることから、通常位置から前方移動してくる運転者は、膨張を完了させたエアバッグの運転者側壁部により、的確に受け止められて、保護される。
【0075】
したがって、第2実施形態でも、初期膨張時に、エアバッグ10Aが好適に展開膨張できて、運転者の頭部付近が接近していても、頭部への押圧力を抑制し、かつ、顎下への侵入を抑制して、エアバッグ10Aが、運転者の頭部を受け止めて保護することができる。
【0076】
なお、第1,2実施形態では、第2折畳工程の折り畳みを、内折り体58,58Aの両縁58a,58b,58c,58dを、車体側壁部12の側でロール折りして、取付座13の上方の運転者側壁部18に載せる工程としたが、この折り畳みに限定されず、運転者側壁部18の側でロール折りしたり、蛇腹折りしてもよく、さらに、第1折畳工程の初期折り工程と初期ロール折り工程との二工程で、第2折畳工程を構成してもよい。さらにまた、内折り体58,58Aにおける第2方向D2に沿った取付座13の両側では、それぞれ、別々の折り方として、折畳完了体を形成してもよい。
【0077】
また、第1,2実施形態では、初期折り工程において、第1方向に沿って対向する両縁を、車体側壁部12の側に折り、また、初期ロール折り工程においても、初期折り工程での折目53aを、車体側壁部12の側で巻くようにしたが、それぞれ、運転者側壁部18の側に折ったり、運転者側壁部18の側で巻いてもよい。さらに、初期折り工程の折る側と初期ロール折り工程での巻く側を、異ならせてもよい。例えば、初期折り工程では、運転者側壁部18の側に折って、初期ロール折り工程では、車体側壁部12の側で巻くロール折りを行ってもよく、あるいは逆の、初期折り工程では、車体側壁部12の側に折って、初期ロール折り工程では、運転者側壁部18の側で巻くロール折りを行ってもよい。但し、第1,2実施形態のように、初期折り工程と初期ロール折り工程とにおいて、共に、車体側壁部12の側で行う折畳方法は、初期ロール折り工程や初期折り工程で折った折りの解消時、他の方法に比べて、折りを解消する部位の運転者側への突出を抑制し易いことから、好ましい。