特許第6783991号(P6783991)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6783991
(24)【登録日】2020年10月27日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】車両のフロアクロスメンバ構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20201102BHJP
   B60R 21/02 20060101ALI20201102BHJP
   B60R 21/0134 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
   B62D25/20 E
   B60R21/02
   B60R21/0134
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-183610(P2017-183610)
(22)【出願日】2017年9月25日
(65)【公開番号】特開2019-59267(P2019-59267A)
(43)【公開日】2019年4月18日
【審査請求日】2019年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】梅山 貴之
(72)【発明者】
【氏名】袋野 健一
(72)【発明者】
【氏名】末光 泰三
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 滋幸
【審査官】 マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−18849(JP,A)
【文献】 実開昭60−52137(JP,U)
【文献】 特開2010−126353(JP,A)
【文献】 特開平11−255154(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/20
B60R 21/0134
B60R 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向における車体下部の車外側の側部に配置されたサイドシルと、同方向における車体下部の中央部分に配置されたフロアトンネルとの間に設けられる車両のフロアクロスメンバ構造であって、
車幅方向に互いに離間した2箇所に配置され、一方が前記サイドシルに隣接し、かつ他方が前記フロアトンネルに隣接し、さらに車幅方向へ延びる自身の上面において座席のシートレールをそれぞれ下側から支持する一対の支持部と、
側面衝突が検出又は予測される前には、両支持部間において、同支持部の上面よりも低い箇所に配置される中間部と、
前記側面衝突の検出又は予測に応じ、前記中間部を、同中間部の上面の高さが両支持部の上面の高さ以下となるように上昇させる上昇機構部と
を備える車両のフロアクロスメンバ構造。
【請求項2】
前記上昇機構部は、
前記側面衝突の検出又は予測に応じて、前記中間部の上面に沿う方向へ伸張又は収縮するアクチュエータと、
前記アクチュエータの伸張又は収縮の方向を上下方向に変換して、同伸長又は収縮を前記中間部に伝達して上昇させる変換伝達部と
を備える請求項1に記載の車両のフロアクロスメンバ構造。
【請求項3】
前記アクチュエータは、ケースと、前記側面衝突の検出又は予測に応じて前記ケースから、前記中間部の前記上面に沿う方向へ突出するシャフトとを備え、
前記変換伝達部は、軸により支持され、かつ前記シャフトに連結されたレバーを備え、前記シャフトの突出動作に伴う前記軸を中心とした前記レバーの回動を利用して前記中間部を上昇させるものである請求項2に記載の車両のフロアクロスメンバ構造。
【請求項4】
前記シャフトは、前記側面衝突の検出又は予測に応じて前記ケースから車幅方向へ突出するものであり、
前記レバーを支持する前記軸は前記車両の前後方向に延びており、
前記変換伝達部は、前記中間部に対し車幅方向へスライド可能に設けられたスライダを備え、
前記レバーは前記スライダに連結されている請求項3に記載の車両のフロアクロスメンバ構造。
【請求項5】
前記中間部は、車幅方向へ延びるガイド孔を有し、
前記スライダは、前記ガイド孔に挿入されたガイドピンを備える請求項4に記載の車両のフロアクロスメンバ構造。
【請求項6】
前記レバーは、長尺状の第1腕部と、前記第1腕部に対し傾斜する長尺状の第2腕部とを備え、
前記第1腕部及び前記第2腕部は端部同士において相互に連結され、
前記軸は、前記第1腕部及び前記第2腕部の境界部分に設けられ、
前記第1腕部は、前記軸から長さ方向へ離れた箇所において前記シャフトに連結され、
前記第2腕部は、前記軸から長さ方向へ離れた箇所において前記スライダに連結されており、
前記側面衝突の検出又は予測に応じて前記シャフトが突出されて前記レバーが回動された場合には、前記第1腕部の前記シャフトとの連結部分が、前記軸よりも同シャフトの突出方向前方に位置するように、同第1腕部が傾斜した姿勢にされる請求項4又は5に記載の車両のフロアクロスメンバ構造。
【請求項7】
前記上昇機構部は、
前記側面衝突が検出又は予測される前には、前記中間部の下側で非膨張状態にされ、前記側面衝突の検出又は予測に応じ、膨張用ガスが供給されて膨張して前記中間部を上昇させるエアバッグと、
前記中間部の下側の複数箇所に配置され、前記側面衝突が検出又は予測される前には、前記中間部の前記上面に沿って延びる倒伏状態にされ、前記側面衝突が検出又は予測されたときには、前記中間部の前記上面に対し交差する起立状態にされる脚柱と
を備える請求項1に記載の車両のフロアクロスメンバ構造。
【請求項8】
各脚柱は、前記中間部に対し支軸により回動可能に支持され、
各脚柱に対しては、前記支軸を支点として前記倒伏状態から前記起立状態となる側へ回動させる付勢力が加えられており、
各脚柱は、前記側面衝突の検出又は予測に応じた前記エアバッグによる前記中間部の上昇に伴い、前記付勢力により前記倒伏状態から前記起立状態に切替えられる請求項7に記載の車両のフロアクロスメンバ構造。
【請求項9】
両支持部の上面及び前記中間部の上面は、車幅方向に延びる平面により構成されており、
前記上昇機構部は、前記側面衝突の検出又は予測に応じ、前記中間部を、同中間部の上面が両支持部の上面と同一の高さとなるように上昇させるものである請求項1〜8のいずれか1項に記載の車両のフロアクロスメンバ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体下部におけるサイドシルとフロアトンネルとの間に設けられて、側面衝突時における車両の変形を抑制する車両のフロアクロスメンバ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車幅方向における車体下部の車外側の側部であって、サイドドアの直下には、車両の側面開口部を構成する強度部材の1つとして、前後方向に延びるサイドシルが配置されている。また、車幅方向における車体下部の中央部分には、前後方向に延びるフロアトンネルが配置されている。
【0003】
さらに、車体下部の剛性や強度を向上させること等を目的として、サイドシルとフロアトンネルとの間に、車幅方向に延びるフロアクロスメンバが架け渡される場合がある。
こうしたフロアクロスメンバが車体下部に適用された車両に対し、他車両等の衝突体が側方から衝突(側面衝突)すると、その衝突に伴い車両に加わった荷重の一部は、サイドシル及びフロアクロスメンバを介してフロアトンネルに伝達される。フロアトンネルは高い剛性を有しており、フロアクロスメンバの車内側への動きを規制する。そのため、サイドシルに加えられた側面衝突の荷重は、上記のように車内側への動きを規制されたフロアクロスメンバによって受け止められる。その結果、車両の変形が抑制されて、車室空間が確保され、乗員が保護される。
【0004】
上記フロアクロスメンバの一形態として、一対の支持部及び一般部を備えるものがある。一対の支持部は、車幅方向に互いに離間した2箇所に配置され、それぞれ車幅方向へ延びる上面を有する。両支持部の一方はサイドシルに隣接し、他方はフロアトンネルに隣接する。両支持部は、自身の上面において座席のシートレールをそれぞれ下側から支持する。一般部は、両支持部間において、同支持部の上面よりも低い箇所に位置する。一般部と座席との間の空間は、後席の乗員が足を置いたり、小物等を収容したりするための空間として利用される。
【0005】
こうした構成のフロアクロスメンバの構造を工夫することで、側面衝突前には座席の下方に空間を確保し、側面衝突時には車両の変形を一層抑制することのできる構造が種々考えられている。
【0006】
例えば、特許文献1では、フロアクロスメンバにおいて、車外側の支持部よりもサイドシル側の部分が、そのサイドシルよりも高い箇所まで拡張されている。この拡張部分は、サイドドア下部の車内側に位置する。そのため、側面衝突に伴いサイドドアに加わる荷重が上記拡張部分によって受け止められて、車両の変形が一層抑制される。
【0007】
また、特許文献2には、フロアクロスメンバにおける車外側の支持部の稜線部分に補強用ビードが形成されている。このビードにより、車外側の支持部の強度が高められ、側面衝突時の車両の変形を抑制する性能が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−255154号公報
【特許文献2】実開昭63−104287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、上記特許文献1では、車外側の支持部が拡張部分よりも低い箇所に位置する。そのため、側面衝突の荷重が拡張部分に伝わった場合に、フロアクロスメンバが拡張部分の上面と支持部の上面との間の段差部において変形するおそれがある。また、上記特許文献2では、一般部が車外側の支持部の上面よりも低い箇所に位置する。そのため、側面衝突の荷重が車外側の支持部に伝わった場合に、フロアクロスメンバが車外側の支持部の上面と一般部の上面との間の段差部において変形するおそれがある。従って、特許文献1及び特許文献2のいずれにおいても、フロアクロスメンバを変形しにくくすることで、車両の変形を抑制する性能を高めることが可能である。
【0010】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、側面衝突前には座席の下方に空間を確保し、側面衝突時には車両の変形を一層抑制することのできる車両のフロアクロスメンバ構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する車両のフロアクロスメンバ構造は、車幅方向における車体下部の車外側の側部に配置されたサイドシルと、同方向における車体下部の中央部分に配置されたフロアトンネルとの間に設けられる車両のフロアクロスメンバ構造であって、車幅方向に互いに離間した2箇所に配置され、一方が前記サイドシルに隣接し、かつ他方が前記フロアトンネルに隣接し、さらに車幅方向へ延びる自身の上面において座席のシートレールをそれぞれ下側から支持する一対の支持部と、側面衝突が検出又は予測される前には、両支持部間において、同支持部の上面よりも低い箇所に配置される中間部と、前記側面衝突の検出又は予測に応じ、前記中間部を、同中間部の上面の高さが両支持部の上面の高さ以下となるように上昇させる上昇機構部とを備える。
【0012】
上記の構成によれば、側面衝突が検出又は予測される前には、上昇機構部による中間部の上昇が行われない。中間部は、両支持部間において、同支持部の上面よりも低い箇所に位置する。そのため、座席と中間部との間に空間が形成され、ここに、後席の乗員の足を置いたり、小物類等を置いたりすることが可能となる。
【0013】
車両に対し、他車両等の衝突体が側方から衝突(側面衝突)すると、その側面衝突に伴い車両に加わった荷重の一部は、サイドシル及びフロアクロスメンバ構造を介してフロアトンネルに伝達される。この荷重の伝達は、支持部では、主として、車幅方向へ延びる上面を有する上部においてなされる。フロアトンネルは高い剛性を有しており、フロアクロスメンバ構造の車内側への動きを規制する。
【0014】
一方で、上記側面衝突が検出又は予測されると、上昇機構部により中間部が上昇させられる。この上昇により、中間部の上面が両支持部の上面に近づく。中間部の上面と両支持部の上面との高低差が、側面衝突が検出又は予測される前の高低差よりも小さくなる。そのため、側面衝突により車両に加わった荷重が、フロアクロスメンバ構造における車外側の支持部、中間部及び車内側の支持部を介してフロアトンネルに伝わった場合、中間部はその荷重を、側面衝突が検出又は予測される前よりも、側面衝突の荷重の伝達される支持部の上面に近い箇所で受け止める。荷重が中間部によって受け止められる分、支持部は、側面衝突が検出又は予測される前よりも車内側へ変形しにくくなり、車室空間が確保される。
【0015】
上記車両のフロアクロスメンバ構造において、前記上昇機構部は、前記側面衝突の検出又は予測に応じて、前記中間部の上面に沿う方向へ伸張又は収縮するアクチュエータと、前記アクチュエータの伸張又は収縮の方向を上下方向に変換して、同伸長又は収縮を前記中間部に伝達して上昇させる変換伝達部とを備えることが好ましい。
【0016】
上記の構成によれば、側面衝突が検出又は予測されると、上昇機構部におけるアクチュエータが中間部の上面に沿う方向へ伸張又は収縮する。アクチュエータの伸張又は収縮は、変換伝達部により、伸張又は収縮の方向を上下方向に変換されて中間部に伝達される。このような簡単な構成でありながら、中間部を、その上面の高さが両支持部の上面の高さ以下となるように上昇させることが可能である。
【0017】
上記車両のフロアクロスメンバ構造において、前記アクチュエータは、ケースと、前記側面衝突の検出又は予測に応じて前記ケースから、前記中間部の前記上面に沿う方向へ突出するシャフトとを備え、前記変換伝達部は、軸により支持され、かつ前記シャフトに連結されたレバーを備え、前記シャフトの突出動作に伴う前記軸を中心とした前記レバーの回動を利用して前記中間部を上昇させるものであることが好ましい。
【0018】
上記の構成によれば、側面衝突が検出又は予測されると、アクチュエータでは、シャフトがケースから、中間部の上面に沿う方向へ突出される。この突出により、アクチュエータが伸張させられる。シャフトの突出動作は、同シャフトに連結されたレバーに伝達され、同レバーが軸を中心として回動させられる。このレバーの回動が利用されて、中間部が上昇させられる。
【0019】
上記車両のフロアクロスメンバ構造において、前記シャフトは、前記側面衝突の検出又は予測に応じて前記ケースから車幅方向へ突出するものであり、前記レバーを支持する前記軸は前記車両の前後方向に延びており、前記変換伝達部は、前記中間部に対し車幅方向へスライド可能に設けられたスライダを備え、前記レバーは前記スライダに連結されていることが好ましい。
【0020】
上記の構成によれば、側面衝突の検出又は予測に応じてシャフトがケースから車幅方向へ突出されて、レバーが、車両の前後方向に延びる軸を中心として回動させられると、そのレバーのスライダとの連結部分は軸の回りを旋回する。この旋回に伴い、レバーのスライダとの連結部分の車幅方向における位置と、上下方向における位置とが変化する。この変化に伴い、スライダが、中間部に対し車幅方向へスライドしながら上昇する。その結果、中間部が車幅方向へ移動することなく上昇させられる。
【0021】
上記車両のフロアクロスメンバ構造において、前記中間部は、車幅方向へ延びるガイド孔を有し、前記スライダは、前記ガイド孔に挿入されたガイドピンを備えることが好ましい。
【0022】
上記の構成によれば、スライダにおけるガイドピンは、中間部に対しては車幅方向に延びるガイド孔内で同方向へ移動することを許容され、それ以外の方向へ移動することを規制される。このガイド孔に沿ったガイドピンの移動を通じ、中間部に対するスライダの車幅方向へのスライドが許容される。従って、側面衝突の検出又は予測に応じてシャフトがケースから車幅方向へ突出されて、レバーが回動させられると、スライダが、中間部に対し車幅方向へスライドしながら上昇する。
【0023】
上記車両のフロアクロスメンバ構造において、前記レバーは、長尺状の第1腕部と、前記第1腕部に対し傾斜する長尺状の第2腕部とを備え、前記第1腕部及び前記第2腕部は端部同士において相互に連結され、前記軸は、前記第1腕部及び前記第2腕部の境界部分に設けられ、前記第1腕部は、前記軸から長さ方向へ離れた箇所において前記シャフトに連結され、前記第2腕部は、前記軸から長さ方向へ離れた箇所において前記スライダに連結されており、前記側面衝突の検出又は予測に応じて前記シャフトが突出されて前記レバーが回動された場合には、前記第1腕部の前記シャフトとの連結部分が、前記軸よりも同シャフトの突出方向前方に位置するように、同第1腕部が傾斜した姿勢にされることが好ましい。
【0024】
上記の構成によれば、側面衝突の検出又は予測に応じてシャフトがケースから突出されてレバーが回動されると、第1腕部のシャフトとの連結部分が、軸よりも同シャフトの突出方向前方に位置するように、同第1腕部が傾斜した姿勢にされる。この状態から、シャフトを後退させるためには、レバーを上記回動方向とは反対方向へ回動させて、第1腕部のシャフトとの連結部分を、軸よりもケース側へ移動させる必要がある。しかし、レバーには、中間部等の荷重が加わっている。そのため、レバーは上記反対方向へ回動しにくい。シャフトは、ケースから突出された状態に保持され、中間部が上昇した位置に保持される。
【0025】
上記車両のフロアクロスメンバ構造において、前記上昇機構部は、前記側面衝突が検出又は予測される前には、前記中間部の下側で非膨張状態にされ、前記側面衝突の検出又は予測に応じ、膨張用ガスが供給されて膨張して前記中間部を上昇させるエアバッグと、前記中間部の下側の複数箇所に配置され、前記側面衝突が検出又は予測される前には、前記中間部の前記上面に沿って延びる倒伏状態にされ、前記側面衝突が検出又は予測されたときには、前記中間部の前記上面に対し交差する起立状態にされる脚柱とを備えることが好ましい。
【0026】
上記の構成によれば、側面衝突が検出又は予測される前には、エアバッグが中間部の下側で非膨張状態にされる。そのため、中間部はエアバッグによって上昇させられず、両支持部間において、同支持部の上面よりも低い箇所に位置する。また、このときには、脚柱は、中間部の上面に沿って延びる倒伏状態にされる。そのため、脚柱は、中間部が両支持部の上面よりも低い箇所に配置されることに対する障害となりにくい。
【0027】
これに対し、側面衝突が検出又は予測されると、エアバッグが膨張用ガスの供給を受けて膨張し、中間部を上昇させる。このような簡単な構成でありながら、中間部を、その上面の高さが両支持部の上面の高さ以下となるように上昇させることが可能である。また、このときには、脚柱は中間部の上面に対し交差する起立状態にされる。この起立状態の脚柱により、中間部が上昇させられた位置から下降することを規制される。
【0028】
上記車両のフロアクロスメンバ構造において、各脚柱は、前記中間部に対し支軸により回動可能に支持され、各脚柱に対しては、前記支軸を支点として前記倒伏状態から前記起立状態となる側へ回動させる付勢力が加えられており、各脚柱は、前記側面衝突の検出又は予測に応じた前記エアバッグによる前記中間部の上昇に伴い、前記付勢力により前記倒伏状態から前記起立状態に切替えられることが好ましい。
【0029】
上記の構成によれば、側面衝突が検出又は予測される前には、脚柱が倒伏状態にされる。側面衝突の検出又は予測に応じてエアバッグが膨張させられて、中間部が上昇させられると、脚柱が回動付勢力により倒伏状態から起立状態に切替えられる。従って、この切替えのために特別なアクチュエータを用いたり、そのアクチュエータを制御したりしなくてもすむ。
【0030】
上記車両のフロアクロスメンバ構造において、両支持部の上面及び前記中間部の上面は、車幅方向に延びる平面により構成されており、前記上昇機構部は、前記側面衝突の検出又は予測に応じ、前記中間部を、同中間部の上面が両支持部の上面と同一の高さとなるように上昇させるものであることが好ましい。
【0031】
ここで、支持部の上面と中間部の上面との間に高低差(段差部)があると、側面衝突の荷重が加わった場合、その段差部において支持部が変形しようとする。
この点、上記の構成によれば、側面衝突の検出又は予測に応じ、中間部が上昇機構部により上昇させられて、中間部の上面が両支持部の上面と同じ高さに揃えられる。フロアクロスメンバ構造は、両支持部の上面と中間部の上面との間に段差部のない状態、又はそれに近い状態となる。そのため、側面衝突により車両に対し側方から荷重が加わると、その荷重は、上面の高さが揃えられた支持部及び中間部を介してフロアトンネルに伝達される。従って、支持部は、自身の上面と中間部の上面との間に段差部がある場合に比べると変形しにくい。その結果、車両の変形が効果的に抑制される。
【発明の効果】
【0032】
上記車両のフロアクロスメンバ構造によれば、側面衝突前には座席の下方に空間を確保し、側面衝突時には車両の変形を一層抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】車両のフロアクロスメンバ構造を車体下部に適用した第1実施形態において、同構造及びその周辺部分を示す部分断面図。
図2図1におけるフロアクロスメンバ構造を拡大して示す部分断面図。
図3】第1実施形態において、車体下部におけるフロアクロスメンバ構造、及びその周辺箇所を示す部分平面図。
図4】第1実施形態における中間部(補助板部)のガイド孔と、スライダのガイドピンとの関係を示す部分平面図。
図5】第1実施形態におけるアクチュエータが作動する前の上昇機構部の状態を示す部分断面図。
図6図5における6−6線に沿った部分断面図。
図7】第1実施形態におけるアクチュエータが作動する途中の上昇機構部の状態を示す部分断面図。
図8図7における8−8線に沿った部分断面部。
図9】第1実施形態におけるアクチュエータが作動を完了したときの上昇機構部の状態を示す部分断面図。
図10図9における10−10線に沿った部分断面図。
図11】第2実施形態における上昇機構部が作動する前のフロアクロスメンバ構造の状態を示す部分断面図。
図12】第2実施形態における上昇機構部が作動を完了したときのフロアクロスメンバ構造の状態を示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(第1実施形態)
以下、車両のフロアクロスメンバ構造を具体化した第1実施形態について、図1図10を参照して説明する。
【0035】
なお、以下の記載においては、車両の前進方向を前方とし、後進方向を後方として説明する。また、車室の車幅方向における中央部を基準とし、その中央部に近づく側を「車内側」とし、中央部から遠ざかる側を「車外側」とする。
【0036】
図1図3は、車両10における車体11の下部構造を示している。この下部構造の底部は、フロアパネル12によって構成されている。車幅方向におけるフロアパネル12の両側部であって、両サイドドア13(図1では一方のみ図示)の直下には、車両10の側面開口部を構成する強度部材の1つとして、サイドシル14がそれぞれ配置されている。両サイドシル14は、車両10の前後方向に延びている。また、車幅方向におけるフロアパネル12の中央部分には、前後方向に延びるフロアトンネル15(図1及び図3では一部のみ図示)が形成されている。フロアトンネル15は、フロアパネル12から上方へ突出している。
【0037】
さらに、車体11の剛性及び強度の向上等を目的として、フロアパネル12上の複数箇所には、フロアクロスメンバ構造20が設けられている。フロアクロスメンバ構造20は、運転席の下方の前後方向へ互いに離間した2箇所に設けられるとともに、助手席の下方の前後方向へ互いに離間した2箇所に設けられている。運転席の下方における前後一対のフロアクロスメンバ構造20も、助手席の下方における前後一対のフロアクロスメンバ構造20も同一の構成を有している。ただし、助手席の下方におけるフロアクロスメンバ構造20の構成部材と、運転席の下方におけるフロアクロスメンバ構造20の構成部材との位置関係は、フロアトンネル15を挟んで線対称の関係にある。なお、運転席及び助手席を区別する必要がない場合には、両者を「座席16」というものとする。各座席16は、互いに車幅方向に離間した状態でそれぞれ前後方向へ延びる一対のシートレール17に対し前後位置調整可能に取付けられている。
【0038】
各フロアクロスメンバ構造20の一部は、フロアクロスメンバ本体21によって構成されている。各フロアクロスメンバ本体21は、一般的にフロアクロスメンバと呼ばれているものと同様の構成を有している。各フロアクロスメンバ本体21は、車幅方向に延びる長尺状の一般部22と、一般部22の車外側に隣接する支持部23と、一般部22の車内側に隣接する支持部24とを備えている。各支持部23の上面23aと、各支持部24の上面24aとはいずれも平面によって構成されており、互いに同じ高さに位置している。両上面23a,24aは、一般部22において平面によって構成された上面22aよりも高い箇所に位置している。
【0039】
各フロアクロスメンバ本体21は、サイドシル14とフロアトンネル15との間に架け渡されている。各フロアクロスメンバ本体21を前後方向に沿って切断した場合の断面形状は、ハット形状をなしている。
【0040】
フロアクロスメンバ本体21毎の一対の支持部23,24は、座席16毎の上記シートレール17を下側から支持する機能を担っている。
車外側の各支持部23は、サイドシル14に対し車内側に隣接し、車内側の各支持部24は、フロアトンネル15に対し隣接している。各フロアクロスメンバ本体21の周縁部にはフランジ部(図示略)が形成されており、このフランジ部においてフロアクロスメンバ本体21が、フロアパネル12、サイドシル14、フロアトンネル15等に対し、溶接等の固定手段によって接合されている。
【0041】
各フロアクロスメンバ構造20は、上記フロアクロスメンバ本体21に加え、中間部25と一対の上昇機構部30とを備えている。
図4図6に示すように、各中間部25は、中間板部26及び一対の補助板部27を備えている(図2参照)。中間板部26は、車幅方向の寸法が前後方向の寸法に比べて大きな長尺状をなしている。前後方向における一般部22、支持部23,24及び中間板部26の各寸法を幅とすると、各中間板部26は、両支持部23,24及び一般部22と同程度の幅を有している(図3参照)。中間板部26の上面25aは、車幅方向に延びる平面によって構成されている。
【0042】
一対の補助板部27は、各中間板部26の下側であって、車幅方向における両端部に固定されている。各補助板部27には、一対のガイド孔28が形成されている。補助板部27毎の両ガイド孔28は、互いに前後方向に離間した状態で車幅方向に延びている。
【0043】
各上昇機構部30は、側面衝突が検出される前には、中間部25を図5において実線で示す初期位置に保持し、同側面衝突が検出されると、中間部25を、同図5において二点鎖線で示す上昇位置まで移動させるための機構である。中間部25の初期位置は、同中間部25の上面25aが、両支持部23,24の上面23a,24aよりも低くなる箇所に設定されている(図2参照)。第1実施形態では、初期位置は、上面25aが両上面23a,24aと一般部22の上面22aとの中間の高さとなる箇所に設定されている。これに対し、上昇位置は、上面25aと両上面23a,24aとの高低差が、上記初期位置での高低差よりも小さくなる箇所に設定されている。すなわち、上昇位置は初期位置よりも高い位置に設定されている。第1実施形態では、上昇位置は、上面25aが両上面23a,24aと同一又はそれに近い高さとなる箇所に設定されている。
【0044】
図9及び図10に示すように、各上昇機構部30は、アクチュエータ31及び変換伝達部35を備えている。
アクチュエータ31としては、中間部25の上面25aに沿う方向へ伸張するものが用いられている。第1実施形態では、アクチュエータ31として、車幅方向に延びる姿勢で配置されて一般部22に固定されたケース32と、ケース32に対し車幅方向へ出没するシャフト33とを備え、車幅方向に伸長するものが用いられている。同一のフロアクロスメンバ構造20における一対のアクチュエータ31は、シャフト33がケース32から、車幅方向のうち、互いに反対方向(支持部23,24に向かう方向)へ突出するように配置されている(図2参照)。
【0045】
こうしたアクチュエータ31としては、例えば、電磁力を利用して、電気エネルギーを機械的運動に変換することで、シャフト33をケース32に対し出没させるように構成した電磁ソレノイドを用いることができる。電磁ソレノイドは、シャフト33をケース32内へ没入させる方向へ付勢するばね(図示略)を備えている。電磁ソレノイドは、これに対する通電を停止されて非励磁状態にされると、シャフト33をばねで押圧してケース32内に没入させる。これに対し、電磁ソレノイドは、通電によって励磁されると、ばねに抗してシャフト33をケース32から突出させる。このようにアクチュエータ31では、電磁ソレノイドに対する通電及び通電停止に応じてシャフト33がケース32に対し出没させられる。
【0046】
各シャフト33の先端部には、前後方向へ延びるピン34が挿通されている。ピン34の前後方向における両端部分はシャフト33から露出している。
各変換伝達部35は、上記アクチュエータ31の伸張の方向を上下方向に変換して、同伸張を中間部25に伝達して上昇させるためのものであり、スライダ36及びレバー40を備えている。
【0047】
各スライダ36は、上記補助板部27に対し車幅方向へスライド可能に装着されている。各スライダ36は、本体板部37と、一対のガイドピン38と、一対の支持片39とを備えて構成されている。本体板部37は、上記補助板部27の下側に重ねられた状態で配置されている。両ガイドピン38は、前後方向におけるガイド孔28の寸法(幅)よりも僅かに小径に形成された円柱状をなしている。両ガイドピン38は、互いに前後方向に離間した状態で本体板部37から上方へ突出しており、対応するガイド孔28に挿入されている。両支持片39は、本体板部37の前後方向に互いに離間した箇所から下方へ突出している。
【0048】
各レバー40は、それぞれ長尺状をなす一対の第1腕部41と、長尺状をなし、かつ両第1腕部41に対し鈍角で傾斜する単一の第2腕部42と、両第1腕部41及び第2腕部42を連結する連結部43とを備えている。連結部43は、前後方向へ延びる円柱状をなしている。両第1腕部41は、上記連結部43の前後方向における両端部分から径方向外方へ延びている。第2腕部42は、上記連結部43の前後方向における中間部分から、同連結部43の径方向のうち両第1腕部41とは異なる方向へ延びている。各第1腕部41の一方の端部と、第2腕部42の一方の端部とは、連結部43を介して相互に連結されている。
【0049】
連結部43には、前後方向に延びる軸44が回動可能に挿通されている。軸44は、側面衝突の有無に拘らずケース32との位置関係が変化しないように、他の部材、例えば、フロアパネル12、フロアクロスメンバ本体21等に固定されている。
【0050】
両第1腕部41において、上記軸44から同第1腕部41の長さ方向へ離れた箇所には、同方向へ延びる長孔46がそれぞれ形成されている。そして、上記シャフト33の先端部分が両第1腕部41間に配置され、ピン34の両端部分が第1腕部41毎の長孔46に挿通されている。このピン34により、両第1腕部41は、上記軸44から長さ方向へ離れた箇所において、シャフト33の先端部に連結されている。
【0051】
第2腕部42において、上記軸44から同第2腕部42の長さ方向へ離れた箇所、第1実施形態では、第2腕部42の長さ方向であって上記軸44とは反対側の端部は、スライダ36における両支持片39間に配置されている。そして、両支持片39と、第2腕部42の上記端部とに対し、前後方向に延びるピン47が挿通されている。このピン47により、第2腕部42の上記端部が両支持片39に連結されている。
【0052】
なお、シャフト33が図9に示すように、最大量突出されてレバー40が回動を完了した場合には、各第1腕部41のシャフト33との連結部分(ピン34)が、軸44よりもシャフト33の突出方向前方に位置するように、各第1腕部41が上側ほどケース32に近づくように傾斜した姿勢にされる。
【0053】
フロアクロスメンバ構造20は、さらに図2に示す衝突センサ51及び制御装置52を備えている。衝突センサ51及び制御装置52の組み合わせは、4つのフロアクロスメンバ構造20に共通するものとして、車体11に1組設けられている。衝突センサ51は、車両10に対し、他車両等の衝突体が側方から衝突(側面衝突)した場合に、その側面衝突を検出する。制御装置52は、衝突センサ51からの信号に基づき、全てのアクチュエータ31の作動を制御する。
【0054】
次に、上記のように構成された第1実施形態の作用及び効果について説明する。
図5図10は、各フロアクロスメンバ構造20における車外側の上昇機構部30の動作を示している。車内側の上昇機構部30の動作については図示及び説明をしないが、同車内側の上昇機構部30の各構成部材は、車外側の上昇機構部30における各構成部材と同様の動作を行う。ただし、車内側の上昇機構部30の各構成部材は、車外側の上昇機構部30の構成部材とは異なる方向へ動作する場合がある。
【0055】
制御装置52は、衝突センサ51によって側面衝突が検出されたかどうかを監視する。制御装置52は、衝突センサ51によって側面衝突が検出されないと、アクチュエータ31に対する通電を停止する。この通電停止により、電磁ソレノイドが非励磁状態にされると、図5及び図6に示すように、ばねによって押圧されたシャフト33の多くがケース32内に没入され続ける。シャフト33の先端部のピン34は、両第1腕部41における長孔46の下端部に位置している。ピン34が軸44よりもケース32側に位置し、両第1腕部41は、ピン34に近づくほど(車内側ほど)低くなるように傾斜した状態となる。第2腕部42のピン47は、軸44と同じ又はそれに近い高さで、最寄りの支持部23に最も接近している。各スライダ36の両ガイドピン38は、ガイド孔28において最寄りの支持部23に近い側の端部に位置している。
【0056】
各上昇機構部30による中間部25の上昇が行われず、各中間部25は、初期位置に保持される。初期位置では、各中間部25の上面25aは、両支持部23,24間において、両上面23a,24aよりも低い箇所に位置する(図2参照)。そのため、各座席16と各中間部25との間に、後席の乗員の足を置いたり、小物類等を置いたりすることが可能な大きさ、特に高さを有する空間S1が形成される。
【0057】
車両10に対し、他車両等の衝突体が側方から衝突(側面衝突)すると、その側面衝突により車両10に加わった荷重の一部は、サイドシル14及びフロアクロスメンバ本体21を介してフロアトンネル15に伝達される(図1参照)。この荷重の伝達は、支持部23,24では、主として、車幅方向へ延びる上面23a,24aを有する上部においてなされる。フロアトンネル15は高い剛性を有しており、フロアクロスメンバ本体21の車内側への動きを規制する。
【0058】
一方で、衝突センサ51によって側面衝突が検出されると、制御装置52は、フロアトンネル15を境として、車幅方向のうち側面衝突の荷重が加わった側の全て(4つ)のアクチュエータ31に対し通電する(図3参照)。この通電により、アクチュエータ31毎の電磁ソレノイドが励磁されると、ばねに抗してシャフト33がケース32から、車幅方向のうち最寄りの支持部23,24側へ向けて突出され、各アクチュエータ31が車幅方向へ伸長させられる。各アクチュエータ31の伸張は、変換伝達部35により、伸張の方向を上下方向に変換されて中間部25に伝達される。
【0059】
例えば、車外側のアクチュエータ31では、図5及び図6に示すように、各シャフト33の突出動作が、ピン34及び長孔46を介して、各レバー40の両第1腕部41に伝達される。そのため、各レバー40は軸44を支点として、両第1腕部41が最寄りの支持部23に近づき、かつ第2腕部42が同支持部23から遠ざかる側(図5では時計回り方向)へ回動させられる。このとき、各ピン34は、各第1腕部41における長孔46内を移動する。ピン34の長孔46内の位置が変化することで、軸44を支点としたレバー40の回動が行われる。
【0060】
各レバー40の回動が利用されて、中間部25が上昇させられる。すなわち、各レバー40の回動に伴い、各ピン47が各軸44の周りを旋回する。この旋回に伴い、各ピン47の車幅方向における位置と、上下方向における位置とが変化する。
【0061】
ここで、各スライダ36における一対のガイドピン38は、中間部25(補助板部27)における一対のガイド孔28内で車幅方向へのみ移動することを許容され、それ以外の方向へ移動することを規制される。両ガイド孔28における両ガイドピン38の移動を通じ、中間部25に対するスライダ36の車幅方向へのスライドが許容される。
【0062】
従って、側面衝突の検出に応じてシャフト33がケース32から車幅方向へ突出されて、レバー40が、軸44を中心として回動させられると、スライダ36が、中間部25に対し車幅方向のうち最寄りの支持部23から遠ざかる側へスライドしながら上昇する。両ガイドピン38は、車幅方向におけるガイド孔28の支持部23側の端部から中間部分に移動する。その結果、中間部25が車幅方向へ移動することなく上昇させられる。この上昇により、中間部25の上面25aが両支持部23,24の上面23a,24aに近づく。
【0063】
図7及び図8は、各ピン34が各軸44の下方に位置するまで、各シャフト33が各ケース32から突出することで、各レバー40が回動させられた状態を示している。両第1腕部41が垂直状態となり、これに伴い、第1腕部41毎の長孔46も、軸44の下方で垂直状態となり、両ピン34が両長孔46の上端部に位置する。また、各レバー40の上記回動により、第2腕部42は、ピン47が軸44よりも高く、かつ最寄りの支持部23側に位置するように、表現を変えると,支持部23に近づくに従い高くなるように傾斜した状態となる。各ピン47は、中間部25が初期位置にあるときの位置よりも高く、しかも、支持部23から遠ざかった箇所に位置する。両ガイドピン38は、両ガイド孔28の長さ方向(車幅方向)における中間部分に位置する。中間部25の上面25aは、初期位置と、支持部23,24の上面23a,24aとの中間の高さに位置する。このときの中間部25の位置を、中間位置というものとする。
【0064】
図9及び図10は、各ピン34が各軸44の下方よりも最寄りの支持部23に近づいた箇所まで、各シャフト33が各ケース32から突出することで、各レバー40がさらに回動させられた状態を示している。両第1腕部41は、下側ほど最寄りの支持部23に近づくように傾斜した状態となる。各ピン34は、両長孔46の下端部に位置する。また、各レバー40の上記回動により、各第2腕部42は、各ピン47が各軸44の上方に位置する垂直状態となる。両ガイドピン38が、両ガイド孔28のうち、最寄りの支持部23から遠い側の端部まで移動することで、各ピン47は中間部25が上記中間位置にあるときの位置よりも高く、しかも、支持部23からさらに遠ざかった箇所に位置する。各中間部25が上昇位置まで移動させられる。上昇位置では、各中間部25の上面25aは、両支持部23,24の上面23a,24aと同じ高さ、又はそれに近い高さに位置する。
【0065】
このような簡単な構成でありながら、中間部25の上面25aと支持部23,24の上面23a,24aとの高低差が、側面衝突が検出される前の高低差よりも小さくなる(0又は略0になる)。そのため、側面衝突により車両10に加わった荷重が、サイドシル14、フロアクロスメンバ構造20における車外側の支持部23、中間部25及び車内側の支持部24を介してフロアトンネル15に伝わった場合、中間部25はその荷重を、側面衝突が検出される前よりも、側面衝突の荷重の伝達される支持部23の上面23aに近い箇所で受け止める。従って、荷重が中間部25によって受け止められる分、支持部23,24は、側面衝突が検出される前よりも、車内側へ変形しにくくなる。その結果、車両10の変形を抑制して、車室空間を確保することができる。
【0066】
ここで、上面25aと上面23a,24aとの間に高低差(段差部)があると、側面衝突の荷重が加わった場合、支持部23,24は、その段差部において変形しようとする。
この点、第1実施形態では、側面衝突が検出された場合、各中間部25が上昇機構部30により上昇させられることで、上面25aが上面23a,24aと同じ高さに揃えられる。各フロアクロスメンバ構造20は、中間部25の上面25aと各支持部23,24の上面23a,24aとの間に段差部のない状態、又はそれに近い状態となる。そのため、側面衝突により車両10に対し側方から荷重が加わると、その荷重は、上面23a,24a,25aの高さが揃えられた支持部23,24及び中間部25を介してフロアトンネル15に伝達される。従って、支持部23,24は、自身の上面23a,24aと中間部25の上面25aとの間に段差部がある場合に比べると変形しにくい。その結果、車両10の変形を効果的に抑制することができる。
【0067】
なお、側面衝突の検出に応じて各シャフト33が各ケース32から突出されて各レバー40が上記のように回動されると、両第1腕部41の各シャフト33との連結部分(ピン34)が、各軸44よりも同シャフト33の突出方向前方に位置するように、同第1腕部41が傾斜した姿勢にされる。この状態から、各シャフト33を後退させるためには、各レバー40を上記回動方向とは反対方向へ回動させて、各ピン34を、各軸44よりもケース32側へ移動させる必要がある。しかし、各レバー40には、第2腕部42を介して中間部25等の荷重が加わっている。そのため、レバー40は上記反対方向へ回動しにくい。各シャフト33は、各ケース32から突出された状態に保持され、各中間部25が上昇対置に保持される。
【0068】
(第2実施形態)
次に、車両10のフロアクロスメンバ構造20の第2実施形態について、図11及び図12を参照して説明する。
【0069】
第2実施形態では、第1実施形態における上昇機構部30とは異なる構成を有する上昇機構部60が採用されている。
詳しくは、フロアクロスメンバ構造20毎の上昇機構部60は、エアバッグ61、ガス発生器62及び一対の脚柱63を備えている。エアバッグ61は、側面衝突が検出される前には、図11に示すように非膨張状態にされ、中間部25の下側に配置されている。
【0070】
ガス発生器62は長尺状をなし、自身の一方の端部にガス噴出部62aを有している。ガス発生器62の内部には、膨張用ガスを発生するガス発生剤(図示略)が収容されているが、ガス発生剤に代えて、高圧の膨張用ガスが充填されてもよい。ガス発生器62は、全体が、エアバッグ61の内部に配置されることが好ましいが、ガス噴出部62aを含む一部のみが、エアバッグ61の内部に配置され、残部がエアバッグ61の外部に配置されてもよい。
【0071】
両脚柱63は、中間部25の下側の複数箇所、第2実施形態では、車幅方向における中間部25の両端部に配置されている。両脚柱63は、それぞれヒンジ65により同中間部25に取付けられている。各脚柱63は、中間部25に対し、ヒンジ65において前後方向へ延びる支軸64により回動可能に支持されている。各脚柱63は、図11に示すように、側面衝突が検出される前には、中間部25の上面25aに沿う方向のうち、車幅方向に延びる倒伏状態にされる。各脚柱63は、図12に示すように、側面衝突が検出されたときには、中間部25の上面25aに対し直交した起立状態となる。
【0072】
各支軸64には、ねじりコイルばね等の付勢部材(図示略)が装着されており、この付勢部材により、各脚柱63が、支軸64を支点として上記倒伏状態から起立状態となる側へ回動するように付勢されている。各脚柱63は、側面衝突が検出される前には倒伏状態にされ、側面衝突の検出に応じたエアバッグ61による中間部25の上昇に伴い、付勢部材の回動付勢力により倒伏状態から起立状態に切替えられる。
【0073】
衝突センサ51からの信号に基づき制御装置52が制御する対象は、アクチュエータ31からガス発生器62に変更されている。
なお、上昇機構部60は、付勢部材によって回動付勢された両脚柱63が起立状態を越えて回動するのを規制する規制部(図示略)を備えている。また、上昇機構部60は、中間部25が支持部23,24の上面23a,24aよりも高い箇所へ上昇するのを規制する規制部(図示略)を備えている。
【0074】
上記以外の構成は第1実施形態と同様である。そのため、第1実施形態で説明したものと同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
次に、第2実施形態の作用及び効果について説明する。
【0075】
衝突センサ51によって側面衝突が検出されないと、制御装置52は、ガス発生器62に対し、これを作動させるための信号を出力しない。図11に示すように、ガス発生器62のガス噴出部62aから膨張用ガスが噴出されず、エアバッグ61が非膨張状態にされる。そのため、中間部25はエアバッグ61によって上昇させられず、初期位置に保持される。初期位置では、中間部25は、両支持部23,24間において、上面25aが上面23a,24aよりも低い箇所に位置し、座席16の下方に空間S1が確保される。また、このときには、両脚柱63は、中間部25の上面25aに沿う方向のうち車幅方向に延びる倒伏状態となる。そのため、両脚柱63は、中間部25の上面25aが上面23a,24aよりも低い箇所に配置されることに対する障害となりにくい。
【0076】
これに対し、衝突センサ51によって側面衝突が検出されると、制御装置52は、図12に示すように、ガス発生器62に対し、これを作動させるための信号を出力する。この信号に応じ、ガス発生器62のガス噴出部62aから膨張用ガスが噴出されて、エアバッグ61に供給される。この膨張用ガスによりエアバッグ61は膨張し、中間部25を押し上げる。中間部25は、上昇位置まで上昇する。ただし、中間部25の上昇位置を越える過剰な上昇は、上記規制部(図示略)によって規制される。このような簡単な構成でありながら、中間部25を、その上面25aの高さが支持部23,24の上面23a,24aの高さ以下となるように上昇させることができる。
【0077】
また、このときには、各脚柱63は、付勢部材の回動付勢力により、エアバッグ61の膨張及び中間部25の上昇に連動して、倒伏状態から起立状態に切替えられる。従って、この切替えのために、特別なアクチュエータを用いたり、そのアクチュエータを制御したりしなくてもすむ。そして、起立状態の両脚柱63により、中間部25が上昇させられた位置から下降することを規制される。
【0078】
第2実施形態によると、上記以外にも、次の効果が得られる。
・ガス発生器62から膨張用ガスをエアバッグ61に供給してこれを膨張させて、中間部25を初期位置から上昇位置へ上昇させるようにしている。そのため、駆動源として他の方式(例えば、電磁式等)のものを用いて中間部25を上昇させる場合と比較して、迅速な駆動が可能である。また、ガス発生器62には、低廉で、動作信頼性が高いといった利点もある。
【0079】
なお、上述した各実施形態は、これを以下のように変更した変形例として実施することもできる。
<第1実施形態に関する事項>
・各アクチュエータ31は、中間部25の上面25aに沿う方向のうち、車幅方向とは異なる方向へ伸長又は収縮するものであってもよい。
【0080】
・各アクチュエータ31として、中間部25の上面25aに沿う方向へ伸長するものに代えて収縮するものが用いられてもよい。
また、アクチュエータ31として、油圧や空気圧を利用してシャフト33をケース32に対し出没させるものが用いられてもよい。
【0081】
さらに、アクチュエータ31として、火薬式のガス発生器が用いられてもよい。このタイプのアクチュエータ31は、制御装置52からの作動信号に応じて内蔵の火薬を着火及び燃焼させて膨張用ガスを発生させる。アクチュエータ31は、この膨張用ガスにより作動して、中間部25の上面25aに沿う方向へ伸長又は収縮する。
【0082】
・補助板部27が省略され、ガイド孔28が中間板部26に直接設けられてもよい。
・各補助板部27におけるガイド孔28の数が1又は3以上に変更されてもよい。
<第2実施形態に関する事項>
・各脚柱63は、倒伏状態のとき、中間部25の上面25aに沿う方向のうち、車幅方向とは異なる方向に延びる姿勢にされてもよい。
【0083】
・1つの中間部25につき3つ以上の脚柱63が用いられてもよい。
・中間部25が上昇されたときに、各脚柱63が同中間部25の上面25aに対し、直交とは異なる形態で交差する状態を起立状態としてもよい。
【0084】
・各脚柱63が、付勢部材に代えてアクチュエータによって倒伏状態から起立状態に切替えられてもよい。
<第1実施形態及び第2実施形態に共通する事項>
・側面衝突が検出に代えて予測された場合に、上昇機構部30,60を作動させて、中間部25を上昇させるようにしてもよい。
【0085】
検出装置としては、例えば、側面衝突を予知(予測)する衝突予知センサ(プリクラッシュセンサ)が用いられてもよい。
この場合、制御装置52は、衝突予知センサの検出信号に基づき側面衝突の確率が予め設定されたしきい値を越えていると、側面衝突を予測する。
【符号の説明】
【0086】
10…車両、11…車体、14…サイドシル、15…フロアトンネル、16…座席、17…シートレール、20…フロアクロスメンバ構造、22a,23a,24a,25a…上面、23,24…支持部、25…中間部、28…ガイド孔、30,60…上昇機構部、31…アクチュエータ、32…ケース、33…シャフト、35…変換伝達部、36…スライダ、38…ガイドピン、40…レバー、41…第1腕部、42…第2腕部、44…軸、61…エアバッグ、63…脚柱、64…支軸、S1…空間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12