(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態に係る蓄電素子について説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0031】
なお、以下の説明及び図面中において、蓄電素子の上下方向をZ軸方向(以下、第一方向ともいう)と定義する。つまり、Z軸方向は、集電体の脚部(電極体接続部)が延びる方向、または、容器の短側面の長手方向として定義できる。
【0032】
また、2つの電極体の並び方向をY軸方向(以下、第二方向または幅方向ともいう)と定義する。つまり、Y軸方向は、容器の長側面の対向方向、容器の短側面の短手方向、または、容器の厚さ方向として定義できる。
【0033】
また、Z軸方向及びY軸方向と交差する方向をX軸方向(以下、第三方向ともいう)と定義する。つまり、X軸方向は蓄電素子の電極体の巻回軸方向、集電体もしくは電極端子の並び方向、または、容器の短側面の対向方向として定義できる。
【0034】
なお、Z軸方向を上下方向としているが、この上下方向は、鉛直方向と平行であってもよく、平行でなくてもよい。つまり、蓄電素子の使用時における姿勢に特に限定はない。
【0035】
(実施の形態)
まず、実施の形態に係る蓄電素子10の構成について、説明する。
【0036】
図1は、実施の形態に係る蓄電素子10の外観を模式的に示す斜視図である。
図2は、実施の形態に係る蓄電素子10の容器100の容器本体111を分離して蓄電素子10が備える各構成要素を示す斜視図である。
【0037】
図3は、実施の形態に係る蓄電素子10の分解斜視図である。なお、
図3では、容器100の容器本体111の図示は省略されている。
【0038】
蓄電素子10は、電極端子と、電極体と、当該電極端子及び当該電極体を電気的に接続する集電体とを備える蓄電素子である。
【0039】
具体的には、蓄電素子10は、電気を充電し、また、電気を放電することのできる二次電池であり、より具体的には、リチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池である。特に、蓄電素子10は、電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)、またはハイブリッド電気自動車(HEV)に適用される。なお、蓄電素子10は、非水電解質二次電池には限定されず、非水電解質二次電池以外の二次電池であってもよいし、キャパシタであってもよい。
【0040】
図1〜
図3に示すように、蓄電素子10は、容器100と、正極端子200と、負極端子300とを備えている。また、容器100の外方に上部絶縁部材125、135が配置
されている。さらに、容器100内方には、下部絶縁部材120、130と、正極集電体140と、負極集電体150と、2つの電極体である第一電極体161及び第二電極体162とが収容されている。
【0041】
また、蓄電素子10の容器100の内部には電解液(非水電解液)などの液体が封入されているが、当該液体の図示は省略する。なお、容器100に封入される電解液としては、蓄電素子10の性能を損なうものでなければその種類に特に制限はなく様々なものを選択することができる。
【0042】
容器100は、矩形筒状で底を備える容器本体111と、容器本体111の開口を閉塞する板状部材である蓋体110とで構成されている。また、容器100は、第一電極体161及び第二電極体162等を内部に収容後、蓋体110と容器本体111とが溶接等されることにより、内部空間を密閉する構造を有している。なお、蓋体110及び容器本体111の材質は、特に限定されないが、例えばステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金など溶接可能な金属であるのが好ましい。
【0043】
第一電極体161及び第二電極体162は、並列に配置される2つの発電要素であり、ともに、正極集電体140及び負極集電体150と電気的に接続される。なお、第一電極体161と第二電極体162とは、同一の構成を有している。
【0044】
具体的には、第一電極体161及び第二電極体162のそれぞれは、正極と負極とセパレータとを備え、電気を蓄えることができる部材である。正極は、アルミニウムまたはアルミニウム合金などからなる長尺帯状の金属箔である正極基材層上に正極活物質層が形成されたものである。また、負極は、銅または銅合金などからなる長尺帯状の金属箔である負極基材層上に負極活物質層が形成されたものである。また、セパレータは、樹脂からなる微多孔性のシートである。
【0045】
ここで、正極活物質層に用いられる正極活物質、または負極活物質層に用いられる負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出可能な正極活物質または負極活物質であれば、適宜公知の材料を使用できる。
【0046】
そして、第一電極体161及び第二電極体162は、正極と負極との間にセパレータが挟み込まれるように層状に配置されたものが巻き回されて形成されている。なお、
図2及び
図3では、第一電極体161及び第二電極体162の形状としては長円形状を示したが、円形状または楕円形状でもよい。また、第一電極体161及び第二電極体162の形状は巻回型に限らず、平板状極板を積層した形状でもよい。
【0047】
なお、第一電極体161及び第二電極体162のそれぞれは、正極集電体140と接続された正極側端部と、負極集電体150と接続された負極側端部とを有している。
【0048】
正極側端部は、正極の活物質層非形成部が積層されて束ねられた電極体の正極側の端部であり、負極側端部は、負極の活物質層非形成部が積層されて束ねられた電極体の負極側の端部である。
【0049】
なお、正極の活物質層非形成部とは、正極のうち正極活物質が塗工されず正極基材層が露出した部分である。負極の活物質層非形成部とは、負極のうち負極活物質が塗工されず負極基材層が露出した部分である。
【0050】
また、本実施の形態では、第一電極体161及び第二電極体162は、絶縁性のフィルムによって結束されている。
【0051】
以上のように、蓄電素子10は、複数の電極体(本実施の形態では2つの電極体)を有しているため、同一体積(容積)の容器100に単数の電極体を用いる場合に比べ、以下の点で好ましい。
【0052】
つまり、複数の電極体を用いることで、単数の電極体を用いる場合に比べ、容器100のコーナー部のデッドスペースが減り、電極体の占める割合が向上するため、蓄電素子10の蓄電容量アップにつながる。
【0053】
また、特に、高入出力(ハイレート)用の電極体では、高容量タイプの電極体に比べて、金属箔上の活物質の量を減らす必要があり、電極体中での金属箔やセパレータの割合が高まる。このため、単数の電極体を用いた場合は電極の巻き数が多くなるため硬くて柔軟性が低く容器100に挿入しづらくなる。しかし、複数の電極体が用いられる場合、1つの電極体における巻き数を少なくすることができ、その結果、柔軟性が高い電極体が実現される。
【0054】
正極集電体140は、第一電極体161及び第二電極体162の正極側に配置され、正極端子200と第一電極体161及び第二電極体162の正極とに電気的に接続される導電性と剛性とを備えた部材である。なお、正極集電体140は、第一電極体161及び第二電極体162の正極基材層と同様、アルミニウムまたはアルミニウム合金などで形成されている。
【0055】
具体的には、正極集電体140は、第一電極体161及び第二電極体162の正極側端部に溶接等によって接合されることで、第一電極体161及び第二電極体162の正極と接続される。また、正極集電体140には、開口部140aが形成されており、開口部140aに、後述する正極端子200の接続部210が挿入されてかしめられることで、正極集電体140と正極端子200とが接続される。
【0056】
負極集電体150は、第一電極体161及び第二電極体162の負極側に配置され、負極端子300と第一電極体161及び第二電極体162の負極とに電気的に接続される導電性と剛性とを備えた部材である。なお、負極集電体150は、第一電極体161及び第二電極体162の負極基材層と同様、銅または銅合金などで形成されている。
【0057】
具体的には、負極集電体150は、第一電極体161及び第二電極体162の負極側端部に溶接等によって接合されることで、第一電極体161及び第二電極体162の負極と接続される。また、負極集電体150には、開口部150aが形成されており、開口部150aに、後述する負極端子300の接続部310が挿入されてかしめられることで、負極集電体150と負極端子300とが接続される。
【0058】
下部絶縁部材120及び上部絶縁部材125は、容器100の蓋体110に固定され、正極集電体140と容器100とを絶縁する絶縁性の樹脂などで形成されたパッキンである。なお、下部絶縁部材120には、後述する正極端子200の接続部210が挿入される開口部120aが形成されており、上部絶縁部材125には、接続部210が挿入される開口部125aが形成されている。
【0059】
下部絶縁部材130及び上部絶縁部材135は、容器100の蓋体110に固定され、負極集電体150と容器100とを絶縁する絶縁性の樹脂などで形成されたパッキンである。なお、下部絶縁部材130には、後述する負極端子300の接続部310が挿入される開口部130aが形成されており、上部絶縁部材135には、接続部310が挿入される開口部125aが形成されている。
【0060】
正極端子200は、第一電極体161の正極及び第二電極体162の正極に電気的に接続された電極端子であり、負極端子300は、第一電極体161の負極及び第二電極体162の負極に電気的に接続された電極端子である。正極端子200及び負極端子300は、第一電極体161及び第二電極体162の上方に配置された蓋体110に取り付けられている。
【0061】
正極端子200には、
図3に示すように、正極端子200と正極集電体140とを電気的に接続する接続部210が設けられている。
【0062】
接続部210は、正極集電体140の開口部140aに挿入されて、正極集電体140に接続される部材であり、例えばリベットである。つまり、接続部210は、上部絶縁部材125の開口部125aと、蓋体110の貫通孔110aと、下部絶縁部材120の開口部120aと、正極集電体140の開口部140aとに挿入されて、かしめられる。これにより、正極端子200は、上部絶縁部材125、下部絶縁部材120、及び正極集電体140とともに蓋体110に固定される。
【0063】
また同様に、負極端子300には、負極端子300と負極集電体150とを電気的に接続する接続部310が設けられている。接続部310は、負極集電体150の開口部150aに挿入されて、負極集電体150に接続される部材であり、例えばリベットである。つまり、接続部310は、上部絶縁部材135の開口部135aと、蓋体110の貫通孔110bと、下部絶縁部材130の開口部130aと、負極集電体150の開口部150aとに挿入されて、かしめられる。これにより、負極端子300は、上部絶縁部材135、下部絶縁部材130、及び負極集電体150とともに蓋体110に固定される。
【0064】
次に、本実施の形態に係る蓄電素子10の特徴である、正極集電体140及び負極集電体150の構成について、詳細に説明する。なお、正極集電体140と負極集電体150とは、同様の構成を有するため、以下では正極集電体140についての説明を行い、負極集電体150についての説明は省略する。つまり、以下に説明される正極集電体140の構造上の特徴は、負極集電体150についても適用される。
【0065】
図4は、実施の形態に係る正極集電体140の構成を示す第1の斜視図である。具体的には、
図4は、
図3に示される正極集電体140を手前側の斜め上方から見た場合の斜視図である。
【0066】
図5は、実施の形態に係る正極集電体140の構成を示す第2の斜視図である。具体的には、
図5は、
図3に示される正極集電体140を奥側の斜め下方から見た場合の斜視図である。
【0067】
図6は、実施の形態に係る正極集電体140を側方(X軸方向プラス側)から見た場合の側面図である。
【0068】
これらの図に示すように、正極集電体140は、端子接続部141と、複数の脚部(本実施の形態では、外側脚部142、143及び内側脚部144、145の4つの脚部)と、連結部148とを有している。これら複数の脚部のそれぞれは、少なくとも1つの電極体に接続される電極体接続部の一例である。特に、内側脚部144及び145は、連結部148によって端子接続部141と連結される2つの電極体接続部の一例である。
【0069】
具体的には、アルミニウム合金等を素材とする所定の形状の板材に対し、折り曲げ加工、絞り加工、しごき加工、捩じり加工等の加工を施すことで、端子接続部141、複数の脚部(142〜145)、及び、連結部148を一体に備える正極集電体140が作製される。
【0070】
端子接続部141は、正極端子200と電気的に接続される部材であり、本実施の形態では、略矩形状かつ平板状の部材である。端子接続部141には開口部140aが形成されている。正極端子200の接続部210が開口部140aに挿入されてかしめられることで正極端子200と端子接続部141とが電気的及び機械的に接続される。
【0071】
開口部140aは、端子接続部141に形成された円形状の貫通孔であり、具体的には、接続部210の外形に対応した形状を有している。なお、開口部140aの形状は、円形状には限定されず、楕円形状や四角形状などであってもかまわないが、接続部210の外形状に対応した形状であるのが好ましい。また、開口部140aは、接続部210が挿入される形状であれば貫通孔でなくともよく、半円形状または矩形状に切り欠かれることで形成された切り欠き部などであってもかまわない。
【0072】
なお、本実施の形態では、例えば
図4に示されるように、正極集電体140には、開口部140aに加え、略矩形の開口が形成されている。これは、例えば下部絶縁部材120の裏側(正極集電体140側)の突出部を収容するための開口であり、正極集電体140に必須の要素ではない。
【0073】
複数の脚部(外側脚部142、143及び内側脚部144、145)のそれぞれは、Z軸方向に長尺状の部材である。これら複数の脚部のうち、2つの脚部(内側脚部144及び145)は、Y軸方向に並んで配置され、かつ、連結部148によって端子接続部141と連結されている。内側脚部144及び145は、連結部148から、端子接続部141とは反対側に延設されている。言い換えると、内側脚部144及び145は、連結部148から、端子接続部141とは反対側に突出して設けられている。
【0074】
連結部148は、端子接続部141の端部から延設されている。具体的には、連結部148は、端子接続部141のX軸方向プラス側の端部からZ軸方向マイナス側に延設されている。
【0075】
他の電極体接続部(外側脚部142及び143のそれぞれ)は、端子接続部141から延設されており、かつ、連結部148に接続された内側脚部144及び145と、Y軸方向に並んで配置されている。なお、他の電極体接続部として、外側脚部142及び143のいずれか1つのみが正極集電体140に備えられてもよい。
【0076】
ここで、第一電極体161及び第二電極体162の正極側端部は、例えば
図3に示されるように、X軸方向に沿った側面を有している。つまり、長尺状かつ平板状の4つの脚部のそれぞれは、第一電極体161または第二電極体162との接合の精度の向上のために、例えば接合面がX軸方向に平行となる姿勢(厚み方向がX軸方向と直交する姿勢)であることが好ましい。
【0077】
本実施の形態では、外側脚部142及び143のそれぞれは、板状の端子接続部141におけるX軸方向に平行な辺から延設されている。つまり、外側脚部142及び143のそれぞれは、端子接続部141から延設された長尺状の部分がX軸方向に平行な辺に沿って略90°折り曲られることで形成されている。その結果、外側脚部142及び143のそれぞれは、接合面がX軸方向に平行な姿勢となっている。
【0078】
しかし、内側脚部144及び145は、端子接続部141のY軸方向に平行な辺141aから延設された連結部148に連なって設けられている。
【0079】
つまり、連結部148を、端子接続部141との接続部分においてY軸方向に平行な辺141aに沿って略90°折り曲げる工程(第一曲げ工程)のみでは、内側脚部144及び145の接合面はY軸方向に平行な状態である。
【0080】
従って、上記第一曲げ工程の前もしくは後または同時に、内側脚部144及び145それぞれの接合面がX軸と平行になるように、連結部148に対して内側脚部144及び145を略90°曲げて絞る工程(第二曲げ工程)が必要となる。
【0081】
なお、例えば内側脚部144を長手方向の途中の位置でねじることで、内側脚部144の接合面をX軸方向と平行にすることも可能である。しかしながら、この場合、内側脚部144の第一電極体161との接合可能な長さが短くなり、かつ、第一電極体161と端子接続部141との間における、無駄な空間が増加する。このことは、第二電極体162と接合される内側脚部145についても同じである。
【0082】
そのため、端子接続部141に比較的に近い位置で、内側脚部144及び145の接合面をX軸方向と平行とさせるための折り曲げを行うことが望まれる。
【0083】
そこで、例えば
図7に示す正極集電体540のような構造が考えられる。
【0084】
図7は、比較例に係る正極集電体540の部分拡大図である。
【0085】
図7に示す正極集電体540は、端子接続部541と、Z軸方向に長尺状の内側脚部544及び545と、端子接続部541と内側脚部544及び545とを連結する連結部548とを備える。
【0086】
図7に示す正極集電体540では、連結部548のY軸方向の両端に脚部(内側脚部544及び545)が接続されている。また、連結部548のY軸方向の両端をZ軸方向に平行な曲げ線に沿って略90°折り曲げられており、これにより、X軸に平行な接合面を有する内側脚部544及び545が形成されている。
【0087】
しかしながら、この場合、連結部548には、略90°折り曲げられることに起因する割れ等の破損を防止するために、
図7に示すように、Y軸方向の両端のZ軸方向に平行な辺のそれぞれに、応力集中を逃す半円筒状の切り欠き548aが設けられる。切り欠き548aは、当該辺からY軸方向に窪んだ形状に形成される。
【0088】
これにより、連結部548には、延設方向(端子接続部541から内側脚部544及び545に向かう方向)において、その前後より断面積が小さい部分が存在する。これは、電気抵抗の増加及び強度の低下等の問題を生じさせる。
【0089】
そこで、本実施の形態に係る正極集電体140では、
図4〜
図6に示すように、連結部148の端子接続部141との接続部分の近傍から、連結部148のY軸方向の両端を徐々に折り曲げていく。具体的には、内側脚部144、145に近づくに従って(
図4〜
図6における下方に行くに従って)、X軸方向に平行な部分の長さが長くなるように連結部148のY軸方向の両端が曲げ絞り加工される。
【0090】
つまり、第二曲げ工程は、以下のように説明される。連結部148の外側面149のY軸方向の幅が内側脚部144及び145に近づくに従って狭くなるように、連結部148のY軸方向の両端を、第一電極体161及び第二電極体162の方向に曲げ絞る(例えば、金型を用いてプレスする)。
【0091】
その結果、例えば
図6に示すように、連結部148の、第一電極体161及び第二電極体162とは反対側の側面である外側面149に、全体として下方に行くほど間隔を狭める一対の曲げ線147が形成され得る。
【0092】
すなわち、連結部148は、
図6に示すように、外側面149の、端子接続部141の端部との接続部分におけるY軸方向の幅D1が、内側脚部144及び145との接続部分におけるY軸方向の幅D2よりも広い略台形状となるように形成されている。なお、略台形状には、完全な台形の形状も含まれる。
【0093】
また、曲げ線147は、説明の便宜上、
図6では明確な実線で図示されているが、曲げ線147は、外観上、明確な線として認識される必要はない。
【0094】
このように、本実施の形態では、連結部148は外側面149が略台形状になるように形成されている。具体的には、外側面149は、端子接続部141の端部との接続部分の幅(D1)が広く、内側脚部144及び145との接続部分における幅(D2)が狭い略台形状である。
【0095】
つまり、連結部148と内側脚部144及び145との間の曲げ線147の端部に割れ等の防止(応力集中の緩和)のための切り欠きを設けることなく、X軸に平行な接合面を有する内側脚部144及び145が無理なく形成されている。従って、連結部148には、切り欠きを設けることによる断面積の小さい部分が存在せず、これにより、信頼性の高い正極集電体140を得ることができる。
【0096】
より詳細には、本実施の形態の正極集電体140では、例えば
図4に示すように、連結部148の断面積Saは、連結部148のいずれの位置であっても、内側脚部144及び145の断面積の合計(2Sb)以上である。
【0097】
言い換えると、内側脚部144及び145と、端子接続部141との間において、内側脚部144及び145の断面積の合計(2Sb)よりも小さい断面積の部分は存在しない。
【0098】
従って、連結部148には、端子接続部141と内側脚部144及び145との間において高抵抗となる箇所が存在しない。そのため、端子接続部141と内側脚部144及び145との間に大電流が流れる場合における正極集電体140の信頼性がより向上される。
【0099】
なお、連結部148の断面積Saは、Y軸方向(幅方向)に平行かつ外側面149に直交する断面の面積である。また、内側脚部144及び145それぞれの断面積Sbは、Z軸方向に直交する断面(幅方向に平行な断面)の面積である。
【0100】
また、本実施の形態において、内側脚部144及び145のそれぞれの断面積はともにSbであるとしたが、内側脚部144の断面積と、内側脚部145の断面積とは異なっていてもよい。
【0101】
例えば、内側脚部144の断面積がSb1であり、内側脚部145の断面積がSb2(≠Sb1)である場合を想定する。この場合、正極集電体140において、連結部148の断面積Saは、連結部148のいずれの位置であっても、内側脚部144及び145の断面積の合計(Sb1+Sb2)以上である。
【0102】
また、連結部148は、
図4〜
図6に示されるように、端子接続部141の端部の辺141aの一部から延設されている。具体的には、連結部148は、端子接続部141の端部である、板状の端子接続部141におけるY軸方向(幅方向)に平行な辺141aの一部から延設されている。
【0103】
つまり、Y軸方向の幅が比較的に広い端子接続部141において、内側脚部144及び145のY軸方向の位置が、第一電極体161及び第二電極体162との接続に適した位置となるように、連結部148が設けられている。
【0104】
本実施の形態では、連結部148の外側面149の、端子接続部141の端部との接続部分におけるY軸方向の幅D1(
図6参照)は、端子接続部141の端部の辺141aの幅よりも小さい。また、連結部148は、端子接続部141の端部の辺141aにおける幅方向の中央部分に設けられている。
【0105】
このように、本実施の形態に係る正極集電体140によれば、例えば、端子接続部141における電気抵抗を低減させ、かつ、1以上の電極体との接続に適した位置に、連結部148と内側脚部144及び145とを備えることができる。
【0106】
また、本実施の形態に係る正極集電体140は、端子接続部141から延設され、内側脚部144及び145とY軸方向に並んで配置されたZ軸方向に長尺状の他の脚部(外側脚部142及び143)を有する。
【0107】
これにより、複数の電極体(第一電極体161及び第二電極体162)のそれぞれを、2つの脚部で挟むように、正極集電体140を配置することができる。
【0108】
ここで、
図7に示す比較例における正極集電体540では、内側脚部544及び545の根元部分にも切り欠き546が設けられている。つまり、内側脚部544及び545の形成のための折り曲げの際に、内側脚部544及び545の根元部分に割れ等が発生しないように、これら根元部分に切り欠き546が設けられている。
【0109】
一方で、本実施の形態の正極集電体140では、
図4〜
図6に示されるように、内側脚部144及び145の根元部分には切り欠きは存在しない。
【0110】
具体的には、例えば
図6から分かるように、これら根元部分(内側脚部144及び145と連結部148との接続部分)の外形は、側面視においてなだらかな曲線で構成されている。これにより、これら根元部分における応力集中が緩和される。従って、本実施の形態に係る正極集電体140には、比較例における正極集電体540のような切り欠き546は不要である。
【0111】
このように、内側脚部144及び145には切り欠きが存在しないため、切り欠きが存在することにより断面積が削減された部分を有しない。そのため、内側脚部144及び145において、電気抵抗の増加及び強度の低下等の問題は生じない。
【0112】
また、本実施の形態では、蓄電素子10は、2つの電極体(第一電極体161、第二電極体162)を備え、内側脚部144は、第一電極体161に接続され、内側脚部145は、第二電極体162に接続されている。つまり、2つの電極体(第一電極体161及び第二電極体162)と正極端子200との電気的な接続が、1つの部材(正極集電体140)によって賄われている。
【0113】
また、端子接続部141と、内側脚部144及び145とを連結する連結部148は、第一電極体161及び第二電極体162の並び方向(Y軸方向)において、第一電極体161及び第二電極体162の間に位置する。
【0114】
これにより、例えば、第一電極体161及び第二電極体162のそれぞれと、正極端子200との間における電気抵抗等の条件が均一化される。また、例えば、第一電極体161及び第二電極体162が、正極集電体140によってバランスよく支持される。
【0115】
以上、本発明に係る蓄電素子について、実施の形態に基づいて説明した。しかしながら、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を上記実施の形態に施したものも、あるいは、上記説明された複数の構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【0116】
例えば、正極集電体140に対し、2つの脚部(内側脚部144及び145)と接続された連結部148を補強するための加工が施されてもよい。
【0117】
図8は、ビード部を有する正極集電体140の外観を示す斜視図である。
【0118】
図8に示す正極集電体140の連結部148は、ビード部149aを有している。ビード部149aは、連結部148の強度を高めるために、連結部148に形成された補強部である。
【0119】
ビード部149aは、連結部148の厚み方向に突出して形成されている。具体的には、ビード部149aは、連結部148の中央部分において上下方向(Z軸方向)に延び、かつ、正極集電体140の内側(X軸方向マイナス側)に突出するように形成されている。つまり、ビード部149aは、外側面149から陥凹状に設けられ、かつ、連結部148の内側(X軸方向マイナス側)の面から突出する部分によって形成されている。
【0120】
なお、ビード部149aは、連結部148の内側(X軸方向マイナス側)の面に陥凹状に設けられ、かつ、外側面149から突出する部分によって形成されてもよい。また、ビード部149aは、一方の面から突出し、かつ、他方の面は平面形状である構成でもかまわない。
【0121】
このように、正極集電体140は、連結部148にビード部149aが形成されているため、正極集電体140の強度を向上させることができる。これにより、正極集電体140を備える蓄電素子10の耐振動性または耐衝撃性を向上させることができる。
【0122】
また、本実施の形態において、連結部148に形成される一対の曲げ線147は、
図6では、内側に凸の曲線であるが、外側に凸の曲線であってもよい。また、一対の曲げ線147のそれぞれが直線で構成されていてもよい。
【0123】
つまり、一対の曲げ線147は、全体として下方に行くほど間隔を狭めるように形成されていればよく、例えば、上下方向の一部に、その直上によりも間隔が広がっている区間が含まれていてもよい。
【0124】
また、本実施の形態の正極集電体140は、4つの脚部(142〜145)を有するとした。しかし、本実施の形態の正極集電体140は少なくとも2つの脚部を備えればよい。
【0125】
具体的には、正極集電体140は、連結部148によって端子接続部141と連結される2つの電極体接続部(本実施の形態に係る内側脚部144及び145)を有し、他の電極体接続部を有しなくてもよい。
【0126】
つまり、正極集電体140に、他の脚部がない場合であっても、連結部148に接続された2つの脚部を形成するための折り曲げを、切り欠きを備えずに無理なく行わせることができるという効果は奏される。
【0127】
また、正極集電体140が、電極体接続部として、内側脚部144及び145のみを有する場合、1つの電極体の正極側端部を、内側脚部144及び145で挟むように正極集電体140を配置してもよい。
【0128】
つまり、蓄電素子10が備える電極体の数は複数である必要はなく、少なくとも1つの電極体を備えればよい。つまり、蓄電素子10が備える電極体の数は“1”であってもよい。
【0129】
また、上記実施の形態では、正極集電体140の連結部148は、Y軸方向において、隣り合う2つの電極体(161及び162)の間に配置されるとしたが、連結部148の位置は、いずれかの電極体の側方などでもよい。つまり、端子接続部141のY軸方向に平行な辺141aのどの位置に連結部148が配置されていてもよい。
【0130】
また、上記実施の形態では、正極集電体140と正極端子200とは、接続部210をかしめることで接続されているとしたが、正極集電体140と正極端子200との接続の手法はかしめには限定されず、どのような手法が採用されてもよい。
【0131】
また、上記実施の形態では、負極集電体150は、正極集電体140と同様の構成を有していることとしたが、上記構成を有するのは正極集電体140のみであってもよい。または、負極集電体150のみが上記構成を有してもよい。
【0132】
(変形例)
上記実施の形態に係る正極集電体140では、曲げ等の加工時における割れ防止(応力集中の緩和)のための切り欠きを有しないことで、切り欠きが存在することによる電気抵抗の増加等の問題が生じないとした。
【0133】
しかし、正極集電体140は、例えば、電気抵抗の増加等の問題を生じさせない態様で、曲げ等の加工時における割れ防止(応力集中の緩和)のための切り欠きを備えてもよい。そこで、実施の形態の変形例として、上記実施の形態に係る正極集電体140と共通する特徴を有し、かつ、割れ防止(応力集中の緩和)のための切り欠き(切欠部)を有する集電体について、
図9〜
図17を用いて説明する。
【0134】
なお、以下で説明する正極集電体240は、実施の形態に係る蓄電素子10(例えば
図2参照)において、正極集電体140に置き換えて用いることができる部材である。また、X軸方向プラス側を正面として以下の説明を行う。
【0135】
図9は、変形例に係る正極集電体240の正面図である。
図10は、変形例に係る正極集電体240の背面図である。
図11は、変形例に係る正極集電体240の平面図である。
図12は、変形例に係る正極集電体240の底面図である。
図13は、変形例に係る正極集電体240の第1の側面図である。
図14は、変形例に係る正極集電体240の第2の側面図である。なお、
図13では、Y軸方向プラス側から見た場合の正極集電体240を図示し、
図14では、Y軸方向マイナス側から見た場合の正極集電体240を図示している。
【0136】
図15は、変形例に係る正極集電体240の第1の斜視図である。
図16は、変形例に係る正極集電体240の第2の斜視図である。
図17は、変形例に係る正極集電体240の部分断面図である。なお、
図17では、
図9に示されるB−B部分におけるA−A線拡大断面図が示されている。
【0137】
これら
図9〜
図17に示すように、本変形例に係る正極集電体240は、端子接続部241と、複数の脚部(本変形例では、外側脚部242、243及び内側脚部244、245の4つの脚部)と、連結部248とを有している。
【0138】
端子接続部241は、正極端子200と電気的に接続される部材であり、開口部240aが形成されている。正極端子200の接続部210が開口部240aに挿入されてかしめられることで正極端子200と端子接続部241とが電気的及び機械的に接続される。
【0139】
複数の脚部(外側脚部242、243及び内側脚部244、245)のそれぞれは、Z軸方向に長尺状の部材である。これら複数の脚部のうち、2つの脚部(内側脚部244及び245)は、Y軸方向に並んで配置され、かつ、連結部248によって端子接続部241と連結されている。内側脚部244及び245は、連結部248から、端子接続部241とは反対側に延設されている。
【0140】
他の脚部(外側脚部242及び243のそれぞれ)は、端子接続部241から延設されており、かつ、連結部248に接続された内側脚部244及び245と、Y軸方向に並んで配置されている。
【0141】
連結部248は、端子接続部241の端部から延設されている。具体的には、連結部248は、端子接続部241のX軸方向プラス側の端部の辺241aであって、Y軸方向に平行な辺241aからZ軸方向マイナス側に延設されている。
【0142】
また、連結部248は、例えば
図9に示すように、外側面249の、端子接続部241の端部との接続部分におけるY軸方向の幅D3が、内側脚部244及び245との接続部分におけるY軸方向の幅D4よりも広い略台形状となるように形成されている。すなわち、上記実施の形態に係る正極集電体140と同じく。内側脚部244及び245の姿勢が、電極体との接続に適した姿勢に無理なく整えられている。
【0143】
具体的には、連結部248の外側面249のY軸方向の幅が内側脚部244及び245に近づくに従って狭くなるように、連結部248のY軸方向の両端を、内側(X軸方向マイナス側)に曲げ絞る(例えば、金型を用いてプレスする)。これにより、連結部248は略台形状に形成される。また、このように曲げ絞られることで、連結部248と内側脚部244及び245のそれぞれとの厚み方向は互いに異なっている。本変形例では、連結部248の厚み方向はX軸方向であり、内側脚部244及び245のそれぞれの厚み方向はY軸方向である。
【0144】
厚み方向が互いに異なる連結部248と内側脚部244及び245とは、
図12に示すように、湾曲部248aによって接続されている。なお、上記実施の形態に係る正極集電体140においても、例えば
図4に示される連結部148の断面(断面積Saを表す、斜線を付した領域)の形状からわかるように、厚み方向が互いに異なる連結部148と内側脚部144及び145とは、湾曲部によって接続されている。
【0145】
このように、本変形例に係る正極集電体240の基本的な構造は、上記実施の形態に係る正極集電体140と共通している。つまり、本変形例に係る正極集電体240は、正極端子200と電気的に接続される端子接続部241と、1以上の電極体に接続される2つの脚部(内側脚部244及び245)と、端子接続部241の端部から延設され、端子接続部241と内側脚部244及び245とを連結する連結部248とを有している。また、連結部248は、端子接続部241の当該端部との接続部分における幅が、内側脚部244及び245との接続部分における幅よりも広い略台形状となるように形成されている。
【0146】
本変形例に係る正極集電体240は、上記構成に加え、端子接続部241の端部の辺241aにおける、連結部248との接続部分の側方の位置に、切欠部241bが形成されている。
【0147】
具体的には、切欠部241bは、例えば
図11に示されるように、平面視において、端子接続部241の端部の辺241aから、端子接続部241における正極端子200との接続部分(つまり、開口部240a)に向けて窪むように形成された部分である。
【0148】
すなわち、内側脚部244及び245と正極端子200とを結ぶ方向(本変形例ではX軸方向)において、その前後より断面積が小さくなる部分を存在させない態様で、端子接続部241に切欠部241bが設けられている。より詳細には、端子接続部241には、連結部248との接続部分の両側のそれぞれに、切欠部241bが設けられている。
【0149】
これにより、正極集電体240を作製する際に行われる、連結部248を、端子接続部241との接続部分においてY軸方向に平行な辺241aに沿って略90°折り曲げる工程(第一曲げ工程)が容易化される。また、第一曲げ工程において、当該接続部分における応力集中が緩和され、その結果、割れ等の破損の可能性が低減される。さらに、第一曲げ工程)の容易化または破損の発生の抑制等の効果を、電気抵抗の増加及び強度の低下等の問題を生じさせることなく得ることができる。
【0150】
なお、切欠部241bは、端子接続部241の端部を実際に切り欠いて(切削して)形成される必要はない。例えば、端子接続部241の全体形状を形成するためのプレス加工によって、切欠部241bが形成されてもよい。
【0151】
また、本変形例に係る正極集電体240は、
図8に示す正極集電体140と同様に、連結部248に凸部249aが設けられており、これにより、連結部248の強度が向上されている。その結果、正極集電体240を備える蓄電素子10の耐振動性または耐衝撃性を向上させることができる。
【0152】
また、本変形例に係る正極集電体240が有する各種の特徴は、第一電極体161及び第二電極体162の少なくとも一方の負極に接続される集電体に備えられてもよい。