(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記酸素プラズマ処理する段階において、前記窒化物半導体層の前記主面を10分以上20分以下酸素プラズマ処理する、請求項1または2に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0013】
図1は、第1実施例における窒化物半導体装置500を上面視した概要図である。本明細書において、X方向とY方向とは互いに垂直な方向であり、Z方向はX‐Y平面に垂直な方向である。X方向、Y方向およびZ方向は、いわゆる右手系を成す。本例の窒化物半導体装置500は、窒化物半導体層としてのGaN層10を用いて形成された半導体装置である。本例のGaN層10の+Z方向の最表面は、X−Y平面と平行な面である。これをGaN層10の主面とする。GaN層10の主面は、活性部510と周辺部520とを含む。
【0014】
本例の活性部510は、縦型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)を有する。周辺部520は、X‐Y平面において活性部510を囲んで設けられる。本例の周辺部520は耐圧構造を有する。なお、図示してはいないが、GaN層10の主面には、ゲート電極にゲート電位を供給するゲートパッド、および、ソース電極にソース電位を供給するソースパッドが設けられてよい。
【0015】
縦型MOSFETのソース‐ドレイン間電圧が上昇すると、活性部510において空乏層が広がり始める。周辺部520は、ガードリングを含む耐圧構造を有する。耐圧構造は、活性部510において広がり始めた空乏層を周辺部520まで延伸させる機能を有する。これにより、活性部510における電界集中を防止することができる。よって、周辺部520が耐圧構造を有さない場合と比較して活性部510の耐圧が向上する。
【0016】
図2は、第1実施例における縦型MOSFET100および耐圧構造200の断面を示す概要図である。
図2の右側は、
図1のA‐A'線で切断した断面図であり、活性部510における縦型MOSFET100を示す。
図2の左側は、
図1のB‐B'線で切断した断面図であり、周辺部520における耐圧構造200を示す。縦型MOSFET100および耐圧構造200は、一続きのGaN層10に形成される。GaN層10は、n
+型GaN基板13とn
−型GaN層14との積層体である。
【0017】
(縦型MOSFET100)本明細書において、n
−型GaN層14の+Z方向の最表面をGaN層10の主面16と称し、n
+型GaN基板13の−Z方向の最表面をGaN層10の他の主面18と称する。
【0018】
縦型MOSFET100は、GaN層10の主面16の側においてゲート構造20を有する。ゲート構造20は、p型ウェル領域22、p
+型コンタクト領域24、n
+型ソース領域26、ゲート絶縁膜32、および、ゲート電極34を含む。ゲート絶縁膜32はGaN層10の主面16に直接接して設けられ、ゲート電極34はゲート絶縁膜32に直接接して設けられる。ソース電極36は、p
+型コンタクト領域24およびn
+型ソース領域26に直接接して設けられる。なお、GaN層10の他の主面18には、ドレイン電極38が設けられる。
【0019】
ゲート電極34に所定の正電圧が印加されると、ゲート絶縁膜32直下のp型ウェル領域22にチャネルが形成される。これにより、n
+型ソース領域26とn
−型GaN層14とが導通する。この状態で、ソース電極36とドレイン電極38とに所定の電位差が形成されると、チャネルを経由してドレイン電極38からソース電極36に電流が流れる。
【0020】
(耐圧構造200)耐圧構造200は、GaN層10の主面16側においてガードリング28と層間絶縁膜33とを有する。ガードリング28は、活性部510の四辺を囲んでn
−型GaN層14の主面16の側に設けられる。p型不純物領域であるガードリング28は、n
−型GaN層14とpn接合を形成して、活性部510の空乏層を周辺部520に延伸させる。層間絶縁膜33は、ガードリング28を除くGaN層10の主面16に直接接して設けられる。
【0021】
図3は、第1実施例における窒化物半導体装置500の製造フロー600を示す図である。本例の製造フロー600では、活性部510においてゲート絶縁膜32を形成する段階(S40)の直前に、活性部510における主面16をプラズマ処理する(S30)。また、周辺部520において層間絶縁膜33を形成する段階(S60)の直前に、周辺部520における主面16をプラズマ処理する(S30)。段階S10〜S70は、それぞれ
図4A〜4Gに対応する。本例では、段階S10〜S70の順に各段階を実行する。以下、各段階について説明する。
【0022】
図4Aは、n
−型GaN層14を形成する段階(S10)を示す図である。本例において、n
+型GaN基板13はn
+型GaNの単結晶基板であり、n型不純物濃度は1E+19cm
−3〜1E+20cm
−3程度である。n
−型GaN層14は、n
+型GaN基板13の+Z方向にエピタキシャル形成されたGaN層である。本例においては1200V耐圧を想定し、n
+型GaN基板13との厚みは100μm〜300μmとし、n
−型GaN層14の厚みは10μmとした。また、n
−型GaN層14のn型不純物濃度を1E+16cm
−3程度とした。n
−型GaN層14は、トリメチルガリウム(TMG)、アンモニア(NH
3)および適切なキャリアガスを用いてMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)により形成することができる。
【0023】
図4Bは、p型及びn型不純物をドーピングする段階(S20)を示す図である。p型不純物領域は、p型ウェル領域22、p
+型コンタクト領域24およびガードリング28を指す。n型不純物領域は、n
+型ソース領域26を指す。本例では、p型ウェル領域22、p
+型コンタクト領域24およびガードリング28を形成するべく、パターニングしたレジストマスクを介してMgイオンを各々、180keVで5E+14cm
−2、45keVで2E+15cm
−2および45keVで2E+15cm
−2注入する。また、n
+型ソース領域26を形成するべく、パターニングしたレジストマスクを介してSiイオンを45keVで5E+15cm
−2注入する。p型ウェル領域22、p
+型コンタクト領域24、n
+型ソース領域26およびガードリング28の不純物濃度はそれぞれ、1E+17cm
−3、4E+19cm
−3、1E+20cm
−3および4E+19cm
−3であってよい。なお、イオン注入後に、主面16に直接接してSiO
2のキャップ層を設けて、その後、GaN層10を活性化アニールしてよい。アニール後にキャップ層は除去する。
【0024】
図4Cは、活性部510および周辺部520の主面16をプラズマ処理する段階(S30)を示す図である。GaN層10の主面16では、Ga原子に酸素原子(O)およびヒドロキシ基(OH)等が自然付着している。GaN層10の主面16を酸素プラズマ処理することにより、Ga原子に自然付着した酸素原子およびヒドロキシ基を除去することができる。
【0025】
図4Dは、活性部510および周辺部520に層間絶縁膜33‐1を形成する段階(S40)を示す図である。本例のゲート絶縁膜32および層間絶縁膜33‐1は、SiO
2(酸化シリコン)膜である。ただし、他の例において、ゲート絶縁膜32および層間絶縁膜33‐1は、Al
2O
3(酸化アルミニウム)膜またはSi
3N
4(窒化シリコン)膜であってもよい。なお、ゲート絶縁膜32および層間絶縁膜33‐1は、必ずしも上述の通りのストイキオメトリックな絶縁膜でなくてもよい。
【0026】
本例では、酸素プラズマ処理の後に、GaN層10の主面16に直接接して酸化絶縁膜としてのSiO
2膜を形成する。また、プラズマ処理する段階(S30)と層間絶縁膜33‐1を形成する段階とは、同じチャンバ内において連続して行われる。これにより、GaN層10の主面16に化学的に安定な酸化ガリウム面が形成されるので、周辺部520をプラズマ処理しない場合と比較してGaN層10と層間絶縁膜33‐1との間における界面準位密度を下げることができる。これにより、周辺部520において、空乏層の広がりの偏りが生じにくくなる。よって、耐圧が出ないという問題を解決することができる。
【0027】
また本例では、プラズマ処理(S30)と層間絶縁膜33‐1の形成(S40)とを連続的に行うので、周辺部520の主面16に不純物が吸着することを防ぐことができる。さらに本例では、プラズマ処理(S30)と層間絶縁膜33‐1の形成(S40)とにおいて酸素ガスを連続的に用いることができるので、S30およびS40において酸素ガスを連続的に用いない場合と比較して、装置構成およびプロセスフローが簡単になるメリットがある。
【0028】
図4Eは、活性部510の主面16を再度プラズマ処理する段階(S50)を示す図である。本例では、段階(S40)において、活性部510の層間絶縁膜33‐1を既知のフォトリソグラフィー技術を用いて除去する。その後、活性部510を酸素プラズマ処理する。これにより、
図4C(S30)の例と同様に、活性部510の主面16におけるGa原子に自然付着した酸素原子等を除去することができる。なお、周辺部520の主面16は、層間絶縁膜33‐1により保護されているので酸素プラズマに曝されない。
【0029】
本例では、活性部510をプラズマ処理する段階(S50)と周辺部520をプラズマ処理する段階(S30)とは異なるタイミングで行われる。このとき、活性部510をプラズマ処理する時間は、周辺部520をプラズマ処理する時間よりも長くしてよい。
【0030】
これにより、デバイス特性にとって重要な活性部510は最適時間でプラズマ処理する。これにより、デバイスの信頼性を担保することができる。最適時間とは、界面準位密度が低下する十分な時間と言い換えてよく、本例において15分程度であってよい。これに対して、耐圧向上効果を目的とする周辺部520では、所定の効果が得られれば十分である場合がある。そこで、周辺部520のプラズマ処理時間を活性部510のプラズマ処理時間よりも短縮してよい。これにより、窒化物半導体装置500の製造工程時間を短縮することができる。
【0031】
図4Fは、活性部510にゲート絶縁膜32を形成し、周辺部520に層間絶縁膜33‐2を形成する段階(S60)を示す図である。ゲート絶縁膜32は、層間絶縁膜33‐1と同じ材料であってよい。本例では、酸素プラズマ処理の後に、同じチャンバ内において連続して、SiO
2膜を形成する。したがって、活性部510において界面準位密度を低減することができる。これにより、チャネルの移動度が低下するという問題を解決することができる。また、
図4D(S40)と同様に、不純物の吸着防止の効果、および、装置構成およびプロセスフローが簡単になるという効果を得ることができる。
【0032】
図4Gは、ゲート電極34、ソース電極36及びドレイン電極38を形成する段階(S70)を示す図である。S70では、ゲート絶縁膜32および層間絶縁膜33のパターニングと、ゲート電極34およびソース電極36の形成とを行う。次に、活性部510および周辺部520の他の主面18に直接接してドレイン電極38を形成する。ゲート電極34は、ポリシリコンであってよい。ソース電極36およびドレイン電極38は、Ti(チタン)およびAl(アルミニウム)の積層体であってよい。この場合、TiがAlよりも他の主面18側に配置される。これにより、窒化物半導体装置500が完成する。
【0033】
図5Aは、GaN層10の主面16をプラズマ処理する前の状態を示す概念図である。プラズマ処理する前は、GaN層10の主面16におけるGa原子の結合は不完全である。部分的にGaとOとが結合していたり、GaとOHとが結合していたり、中にはGaが未結合であったりと、結合状態が安定していない。
図5Bは、GaN層10の主面16をプラズマ処理した後の状態を示す概念図である。
図5Bは、プラズマ処理する段階(S30およびS50)の直後の状態に対応する。プラズマ処理は、
図5Aに示すような不完全なGaの結合を除去して、
図5Bに示すように主面16に安定なGa−O結合が形成する。これにより、主面16と主面16に直接接して設けられる絶縁膜との間における界面準位密度が低下すると考えられる。
【0034】
図6は、プラズマ処理時間と界面準位密度との関係を示す実験結果である。横軸は、プラズマ処理をする時間(分)を示す。縦軸は、主面に直接接して設けられたSiO
2膜と主面16との界面準位密度(cm
−2eV
−1)を示す。各プラズマ処理時間におけるエラーバーは、同一処理時間の複数の試料における界面準位密度を示す。また、塗りつぶした菱形は、同一処理時間の複数の試料における平均値を示す。
【0035】
本実験では、後述の製造装置300を用いる。GaN層10を300℃に加熱して主面16をプラズマ処理した後に、同一チャンバにて連続して、c面(すなわち、GaN層10の(0001)面)である主面16にSiO
2膜を形成した。本実験では、プラズマ処理時間を0分(プラズマ処理無し)、7分、15分、20分および30分とした。各処理時間の複数の試料における界面準位密度を測定した。
【0036】
界面準位密度の測定はC‐V法により評価した。まず、測定に際して、GaN層10の他の主面18に直接接してAl層を形成し、SiO
2膜に直径400μmのAl電極を形成した。その後、Al層とAl電極とをLCRメータに接続して、LCRの入力信号の周波数を100Hz(低周波数)から1MHz(高周波数)として室温で容量とコンダクタンスを測定した。その後、コンダクタンス法を用いて界面準位密度を評価した。
【0037】
本実験において、0分(プラズマ処理無し)と比較して、主面16を5分以上30分以下プラズマ処理した試料では界面準位密度が1/2以下に低下した。つまり、プラズマ処理することで、界面準位密度が低下する効果が確認された。本実験ではGaN層10の加熱温度を300℃としたが、加熱温度を100℃〜450℃の間で変化させても、プラズマ処理時間に対する界面準位密度の変化はほぼ同様の振る舞いであると予測される。
【0038】
プラズマ処理時間を長くするにつれて界面準位密度は低下した。本実験結果では15分プラズマ処理したときに界面準位密度が最小となった。さらに、プラズマ処理時間を長くすると界面準位密度は上昇し、さらに長い時間においては界面準位密度が後飽和する傾向が見られた。この結果を踏まえて、界面準位密度を減少させるべく、GaN層10の主面16をプラズマ処理する時間は10分以上20分以下であってよく、さらに好ましくは15分程度であってよい。
【0039】
また、GaN層10の主面16を20分より長くプラズマ処理してもよい。プラズマ処理時間が20分よりも長くなると、界面準位密度は所定の値に漸近する。そこで、あえてプラズマ処理時間を20分よりも長くすることにより、異なるデバイス間の界面準位密度の差異を最小化することができる。これにより、デバイス間の特性の差異を小さくすることができる。
【0040】
なお、上記実験において主面16はc面としたが、主面16はGaNのm面(すなわち、(1−100)面。なお、1のバーを−1で表す。)であってもよい。m面のプラズマ処理前の界面準位密度は、c面の場合よりも低い。この理由は、m面においては主面16に露出ているGa原子の密度がc面よりも少ないからであると予想している。それゆえ、主面16をm面とすることにより、c面の場合よりもより短いプラズマ処理時間で界面準位密度を低下させることができる。
【0041】
図7は、第1実施例における窒化物半導体装置500の製造装置300の概要を示す図である。製造装置300は、反応チャンバ310、温度調節部330、真空装置340、マイクロ波発生器350、導波路352、および、プラズマ発生チャンバ354を有する。
【0042】
反応チャンバ310は、内部にAlからなるペデスタル312を有する。GaN層10はペデスタル312上において静電吸着を利用して固定されてよい。ペデスタル312内部にはヒーター320が設けられる。温度調節部330はヒーター320の温度を100℃〜450℃で制御してよい。真空装置340は、反応チャンバ310内の気体を排気口314から吸引する。真空装置340は、反応チャンバ310内の気圧を200Pa〜300Paに制御してよい。
【0043】
マイクロ波発生器350は、導波路352を介してプラズマ発生チャンバ354に接続している。マイクロ波発生器350は、導入口356からプラズマ発生チャンバ354に導入されるO
2(酸素)をプラズマ化する。プラズマ化されたO
2は反応チャンバ310内部へ進む(
図7のラジカル酸素)。これにより、
図4C(S30)および
図4E(S50)で述べたように、GaN層10の主面16をO
2プラズマ処理することができる。
【0044】
導入口316から反応チャンバ310へは、TEOS(Tetraethyl Orthosilicate)ガスが導入される。反応チャンバ310内において、TEOSはO
2プラズマと反応する。これにより、
図4D(S40)および
図4F(S60)で述べたように、GaN層10の主面16にSiO
2膜を堆積することができる。なお、TEOSの代替として、SiH
4(モノシラン)またはCH
7NSi(メチルアミノシラン)を用いてもよい。
【0045】
図8は、製造装置300におけるO
2プラズマ処理期間とSiO
2膜形成期間とを説明する図である。横軸は時間を示し、縦軸はガスの種類を示す。プラズマ処理は、時刻T1で開始され時刻T2まで続く。間隔を空けずに、SiO
2膜形成が、時刻T2で開始され時刻T3まで続く。
【0046】
本例では、時刻T1から時刻T3まで連続的に反応チャンバ310に流量90sccmでO
2ガスを供給する。また、時刻T2から時刻T3まで反応チャンバ310に流量2sccmでTEOSガスを供給する。これにより、時刻T1から時刻T2まではO
2プラズマ処理期間となり、時刻T2から時刻T3まではSiO
2膜形成期間となる。
【0047】
(第1変形例)第1変形例として、
図4C(S30)および
図4E(S50)におけるプラズマ処理する段階は、GaN層10の主面16を窒素プラズマ処理する段階であってよい。例えば、導入口356からプラズマ発生チャンバ354にN
2ガスを導入することで、窒素プラズマを生成することができる。これにより、主面16のGa原子に自然付着したO原子を除去することができる。第1変形例において、
図4D(S40)および
図4F(S60)におけるゲート絶縁膜32および層間絶縁膜33を形成する段階は、GaN層10の主面16に直接接して窒化絶縁膜を形成する段階であってよい。導入口316から反応チャンバ310へSiH
4も導入し、反応チャンバ310内において、SiH
4をN
2プラズマと反応させる。これにより、窒化絶縁膜としてのSi
3N
4膜を形成することができる。ただし上述のように、Si
3N
4膜の通りのストイキオメトリックな組成でなくてもよい。
【0048】
第1変形例では、プラズマ処理(
図4C(S30)および
図4E(S50))と絶縁膜形成(
図4D(S40)および
図4F(S60))とを連続的に行うので、主面16に不純物が吸着することを防ぐことができる。また、自然付着したO原子除去と不純物吸着防止とにより、両者が無い場合と比較して界面準位密度を低減することができる。さらに、プラズマ処理(
図4C(S30)および
図4E(S50))と絶縁膜形成(
図4D(S40)および
図4F(S60))とにおいてN
2(窒素)ガスを連続的に用いることができるので、プラズマ処理と絶縁膜形成とにおいてN
2ガスを連続的に用いない場合と比較して、装置構成およびプロセスフローが簡単になるメリットがある。
【0049】
(第2変形例)第2変形例として、絶縁膜形成(
図4D(S40)および
図4F(S60))をALD(Atomic layer deposition)により成膜してもよい。例えば、TMA(Trimethylaluminium)ガスをチャンバ内に導入し、次にパージを行い、その次にH
2O(水)ガスを導入し、最後に再度パージを行う。この1サイクルのプロセスにより、約1ÅのAl
2O
3層を堆積することができる。ALDを採用すると、絶縁膜の厚みをÅオーダーで精密に制御することができる。なお、第2変形例において、プラズマ処理と絶縁膜形成とは異なるチャンバで行ってよい。ただし、GaN層10を大気暴露しないように、ロードロックチャンバを介してGaN層10を異なるチャンバに受け渡す。
【0050】
図9は、第2実施例における窒化物半導体装置500の製造装置400の概要を示す図である。本例の製造装置400は、絶縁膜形成部460、受渡部470およびプラズマ処理部480を有する。絶縁膜形成部460は、製造装置300と同じ構成である。受渡部470は、ロードロックチャンバ430である。プラズマ処理部480は、反応チャンバ410、マイクロ波発生器450、導波路452、および、プラズマ発生チャンバ454を有する。
【0051】
プラズマ処理部480では、GaN層10の主面16を希ガスプラズマ処理する。プラズマ処理部480は、絶縁膜形成を目的とするシリコン含有ガス等を流さないという点で、絶縁膜形成部460の構成と異なる。プラズマ処理部480におけるペデスタル412、排気口414、ヒーター420、真空装置440、マイクロ波発生器450、導波路452および導入口456の機能は、絶縁膜形成部460の同一名称部材と同じ機能を有する。
【0052】
本例のプラズマ処理部480は、導入口456からプラズマ発生チャンバ454にAr(アルゴン)ガスを導入し、Arをプラズマ化する。プラズマ化されたArは反応チャンバ410内部へ進む。これにより、GaN層10の主面16をArプラズマ処理することができ、Ga原子に自然付着したO原子を除去することができる。
【0053】
プラズマ処理されたGaN層10は、ロードロックチャンバ430を介して絶縁膜形成部460の反応チャンバ310に搬入される。その後、反応チャンバ310内においてGaN層10の主面16に絶縁膜が形成される。本例では、SiO
2膜が形成される。これにより、絶縁膜形成(
図4D(S40)および
図4F(S60))と同様にSiO
2膜を形成することができる。
【0054】
本例では、プラズマ処理と絶縁膜形成とを別途のチャンバにて行う。しかしながら、ロードロックチャンバ430を介してGaN層10を引き渡すので、大気等に暴露されること無くプラズマ処理と絶縁膜形成とを行うことができる。これにより、主面16に不純物が吸着することを防ぐことができる。また、自然付着したO原子を除去し、不純物吸着を防止するので、両者が無い場合と比較して界面準位密度を低減することができる。
【0055】
また本例では、プラズマ処理にはArガスを用い、絶縁膜形成にはO
2ガスを用いる。つまり、プラズマ処理に用いるプラズマガスと絶縁膜形成に用いるプラズマガスとが異なる。それゆえ、絶縁膜形成に用いるプラズマガスはO
2ガスでもN
2ガスでもよいので、絶縁膜はSiO
2膜およびSi
3N
4膜のいずれでもよい。このように、第1実施例および第1変形例と比較して、絶縁膜の種類の自由度が向上する。
【0056】
図10は、第3実施例における窒化物半導体装置500の製造フロー620を示す図である。本例においても、段階S10〜S70の順に各段階を実行する。本例では、段階(S32)に示す様に、活性部510および周辺部520を同時にプラズマ処理する。その後、段階(S42)に示す様に、活性部510および周辺部520に同時に絶縁膜を形成する。このとき、活性部510に設けられた絶縁膜はゲート絶縁膜32として機能し、周辺部520に設けられた絶縁膜は層間絶縁膜33の一部として機能する。更にその後、段階(S62)に示す様に、周辺部520に層間絶縁膜33の他の一部を積み増すことにより層間絶縁膜33を完成させる。この点において、第1実施例と異なる。他の点は、第1実施例と同じであるので説明を省略する。
【0057】
図11は、活性部510および周辺部520の主面16をプラズマ処理する段階(S32)を示す図である。本例では、活性部510および周辺部520の主面16を、同時に同じ時間だけプラズマ処理する。これにより、活性部510と周辺部520とを個別にプラズマ処理する第1実施例と比較して、プラズマ処理に要する時間を短縮することができる。
【0058】
図12は、活性部510にゲート絶縁膜32を形成し、周辺部520に層間絶縁膜33‐1を形成する段階(S42)を示す図である。本例のゲート絶縁膜32および層間絶縁膜33‐1は、ともにSiO
2膜である。なお、層間絶縁膜33‐1は最終的に完成する層間絶縁膜33の一部である。
【0059】
図13は、周辺部520に層間絶縁膜33‐2を形成する段階(S62)を示す図である。段階(S62)では、活性部510には層間絶縁膜33‐2を設けない。例えば、活性部510および周辺部520に層間絶縁膜33‐2を形成した後、活性部510上の層間絶縁膜33‐2のみをエッチング除去する。これにより、周辺部520のみに層間絶縁膜33‐2を設けることができる。なお、本例の層間絶縁膜33‐2はSiO
2膜である。
【0060】
なお、本明細書において、nまたはpは、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nまたはpの右肩に記載した+または−について、+はそれが記載されていないものよりもキャリア濃度が高く、−はそれが記載されていないものよりもキャリア濃度が低いことを意味する。また、Eは10のべき乗を意味し、例えば1E+16は、1×10
16を意味する。
【0061】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0062】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順序で実施することが必須であることを意味するものではない。