【実施例】
【0025】
試験の原料となる石炭灰として、下表1に示すようなL値およびメチレンブルー(MB)吸着量が異なる4種類の石炭灰A〜Dを用意した。なお、メチレンブルー吸着量は、セメント協会標準試験方法 JCAS I-61:2008フライアッシュのメチレンブルー吸着量 試験方法に準拠して測定した。また、L値は、色彩色差計(ミノルタ社製,型式:CR210)を用いて測定した。
そして、各々の石炭灰A〜Dを、メッシュ状の下部電極上に層厚3cmで均一に広げ、この下部電極の8cm上方に金網状の上部電極を配置し、メッシュ状の下部電極がプラス、金網状の上部電極がマイナスになるように荷電した。
【0026】
【表1】
【0027】
次いで、下部のプラス電極に、振幅0.9mmの振動を付加しつつメッシュから上方に向けて加熱した流動化エアを噴出させるとともに、上方のマイナス電極に引き寄せられた石炭灰に含まれる未燃分を、上部のマイナス電極上から空気と共に吸引する静電分離工程を実施した。
【0028】
この際に、
図4〜
図7に示すように、各々の石炭灰A〜Dに対して、プラス電極側から噴出させる流動化エアの電極面積1m
2あたりの量を0.00〜1.60m
3/minの範囲で、マイナス電極側から吸引する吸引エア量を電極1m
2当たり0.5〜5.0m
3/minの範囲で、および電極間の電界強度を0.00〜0.51kV/mmの範囲で、それぞれ変化させた場合について実施した。
【0029】
次いで、上記静電分離工程において未燃分の多くが除去された改質灰に対して、汎用の分級機を用いて分級工程を実施した。この際にも、45μmふるい残分(%)の値を0.0〜13.1%の範囲で変化させた場合に付いて行った。
【0030】
このようにして石炭灰A〜Dから得られた各種の分級後の改質灰を用いて、普通ポルトランドセメント95重量%、上記改質灰5%を混合してセメントを試製した。
そして、活性度指数については、JIS A 6201「コンクリート用フライアッシュ」に準拠して、材齢28日と材齢91日に於いて試験を行った。
【0031】
また、空気量は、表2のコンクリート配合で、コンクリートを製造し、空気量はJIS A 1128「フレッシュコンクリートの空気量の圧入による試験方法―空気室圧力方法」に準拠して測定した。
【0032】
【表2】
【0033】
さらに、黒斑の有無は、JIS R 5201「セメントの物理試験方法」に準拠してモルタルを製造し、4×4×16cmの強度試験用型枠に充填し、120秒振動バイブレーターを掛けたときの表面に浮く黒斑の有無を目視観察した。
【0034】
図4〜
図7は、本発明の実施例1〜80および比較例1〜16に使用した石炭灰の炭種およびL値、静電分離工程における流動化エア量、電極1m
2当たりの吸引エア量および電界強度、並びに分級工程における45μm以下の割合と、各々の試験結果である活性度指数(AI)、空気変動量および黒斑の有無を示すものである。
【0035】
図7の比較例1〜16の結果に見られるように、分級工程において45μmふるい残分が10%を超えた場合あるいは静電分離工程における電極1m
2当たりの吸引エア量が4.2m
3/minを超えた場合には、いずれもフライアッシュII種規格の活性度指数を満足するフライアッシュを製造することができなかった。
【0036】
これに対して、
図4〜
図6の実施例1〜80の結果に示すように、少なくとも分級工程において45μmふるい残分が10%以下であって、かつ静電分離工程における電極1m
2当たりの吸引エア量が4.2m
3/min以下である場合には、いずれも活性度指数がフライアッシュII種規格の基準以上であるフライアッシュを製造することができた。
【0037】
また、
図5の実施例23〜51と、
図4の実施例1〜22および
図6の実施例52〜80との対比から、石炭灰のメチレンブルー吸着量が1mg/g以上である場合や、静電分離工程における電極1m
2当たりの吸引エア量が2.7m
3/minに充たない場合に、空気変動量が1.0%を超えてしまうことが判った。
【0038】
さらに、
図5の実施例29〜31、39、42,43、46〜48および
図6の実施例52〜80に見られるように、石炭灰として、明るさを示すL値が46に満たないものを用いた場合や、静電分離工程における電界強度が0.3kV/mm未満である場合、または流動化エアの供給量が電極面積1m
2あたり0.5〜1.5m
3/minの範囲から逸脱した場合に、上記セメントの硬化体の表面に黒斑が発生してしまうことが判った。
【0039】
したがって、
図4の実施例1〜22に見られるように、原料となる石炭灰として、明るさを示すL値が46以上であってメチレンブルー吸着量が1mg/g以下のものを用い、静電分離工程における電界強度を0.3kV/mm以上に保持して、流動化エアの供給量を電極面積1m
2あたり0.5〜1.5m
3/minの範囲にするとともに、吸引エア量を電極1m
2当たり2.7〜4.2m
3/minの範囲とし、この静電分離工程を経た改質灰を45μmふるい残分が10%以下になるように分級することにより、未燃分を含む石炭灰からセメントやコンクリートの混和材として使用可能なフライアッシュII種規格の基準値を超えるとともに、空気変動量が小さくて硬化体の表面に黒斑が発生することがないフライアッシュを製造することができる。