(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の好適な実施形態に係るインクジェットプリンタ1の概略構成について説明する。
図1に示すように、プリンタ1は、プラテン2、キャリッジ3、インクジェットヘッド5(以下、単にヘッド5とも称す)、ホルダ6、給紙ローラ7、排紙ローラ8、メンテナンスユニット9、ユーザインターフェース90(
図2参照)、温度取得部91(
図2参照)、スキャナユニット92(
図2参照)、及び制御装置100(
図2参照)などを備えている。尚、以下では、
図1の紙面手前側をプリンタ1の「上方」、紙面向こう側をプリンタ1の「下方」と定義する。また、
図1に示す前後方向及び左右方向を、プリンタ1の「前後方向」及び「左右方向」と定義する。以下、前後、左右、上下の各方向語を適宜使用して説明する。
【0010】
プラテン2の上面には、記録媒体である用紙Pが載置される。また、プラテン2の上方には、左右方向(走査方向)に平行に延びる2本のガイドレール15,16が設けられる。
【0011】
キャリッジ3は、2本のガイドレール15,16に取り付けられ、プラテン2と対向する領域において2本のガイドレール15,16に沿って走査方向に移動可能である。また、キャリッジ3には、駆動ベルト17が取り付けられている。駆動ベルト17は、2つのプーリ18,19に巻き掛けられた無端状のベルトである。一方のプーリ18はキャリッジ駆動モータ20(
図2参照)に連結されている。キャリッジ駆動モータ20によってプーリ18が回転駆動されることで駆動ベルト17が走行し、これにより、キャリッジ3が走査方向に往復移動する。また、このとき、キャリッジ3上に搭載されたヘッド5は、このキャリッジ3とともに走査方向に往復移動することになる。
【0012】
ホルダ6は、左右方向に並ぶ4つのカートリッジ装着部41を備えている。各カートリッジ装着部41には、インクカートリッジ42が着脱可能に装着される。4つのカートリッジ装着部41に装着される4つのインクカートリッジ42には、それぞれ、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタの4色のいずれかの色の顔料インクであって、互いに異なる色の顔料インクが貯溜されている。
【0013】
また、各カートリッジ装着部41は、互いに容量の異なる複数種類のインクカートリッジ42を選択的に装着可能である。本実施形態では、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、各カートリッジ装着部41は、小容量のインクカートリッジ42a、及び、大容量のインクカートリッジ42bを選択的に装着可能である。
【0014】
図3(a)に示すように、小容量のインクカートリッジ42aは、略直方体状の筐体43a、筐体43a内に配置され、インクを貯溜する略直方体状の貯溜室44a、及び、貯溜室44aの下部に接続された排出管45、貯溜室44aに接続された大気連通部39を備えている。
【0015】
排出管45は、貯溜室44aに貯溜されたインクを、インクカートリッジ42a外に供給するための流路を画定している。カートリッジ装着部41は、インクカートリッジ42aが装着されたときに、この排出管45と接続してインクを流通するニードル41aを備えている。
【0016】
大気連通部39は、貯溜室44aとインクカートリッジ42a外とを連通させる流路、及び、当該流路上に設けられたバルブなどを備えている。インクカートリッジ42aがカートリッジ装着部41に装着されたときに、このバルブが開くことにより、貯溜室44aが、カートリッジ装着部41に形成された大気連通流路41bを介して大気に連通する。
【0017】
また、インクカートリッジ42aは、筐体43aの外側面に配置された接点141と、筐体43a内に配置され、接点141に電気的に接続されたメモリ142とを有している。メモリ142には、インクカートリッジ42の出荷時点(出荷した年月日など)を示す出荷時点情報や、自身が小容量のインクカートリッジ42aであることを示す容量情報などが予め記憶されている。なお、容量情報は出荷時のインクカートリッジのインクの初期貯溜量であってもよい。
【0018】
カートリッジ装着部41には、インクカートリッジ42aが装着されたときに、接点141と電気的に接続する接点151が設けられている。インクカートリッジ42aの接点141と、カートリッジ装着部41の接点151とが電気的に接続されることで、制御装置100は、インクカートリッジ42aのメモリ142の記憶内容を参照することができる。また、カートリッジ装着部41には、インクカートリッジ42がカートリッジ装着部41に装着されているか否かを検知するための装着検知センサ152、及びインクカートリッジ42のインク残量が所定量未満(例えば、ニアエンプティ)になったか否かを検出するための光センサ153が設けられている。
【0019】
次に、大容量のインクカートリッジ42bについて説明する。なお、上述の小容量のインクカートリッジ42aと、大容量のインクカートリッジ42bとは、筐体及び貯溜室の構成が相違するのみで、その他の構成は同じ構成である。具体的には、
図3(b)に示すように、インクカートリッジ42bの貯溜室44bは、下側貯溜部44b1と、この下側貯溜部44b1の上側に配される上側貯溜部44b2とを有する。貯溜室44bの上下方向の幅寸法及び左右方向の幅寸法は、小容量のインクカートリッジ42aの貯溜室44aと同一である。また、下側貯溜部44b1の前後方向の幅寸法はインクカートリッジ42aの貯溜室44aと同一である。一方で、上側貯溜部44b2の前後方向の幅寸法はインクカートリッジ42aの貯溜室44aよりも長い。このため、貯溜室44bは、貯溜室44aよりも大量のインクを貯溜可能となっている。また、貯溜室44a及び貯溜室44b(下側貯溜部44b1)の底面積は、互いに同じである。インクカートリッジ42bの筐体43bは、貯溜室44bの形状に沿った形状をしている。
【0020】
また、インクカートリッジ42bは、インクカートリッジ42aと同様に、大気連通部39、排出管45、接点141及びメモリ142を有している。インクカートリッジ42bのメモリ142には、上記出荷時点情報と、自身が大容量のインクカートリッジ42bであることを示す容量情報とが予め記憶されている。また、インクカートリッジ42bにおける排出管45と貯溜室44bとの接続位置の上下方向の高さ位置は、インクカートリッジ42aにおける排出管45と貯溜室44aとの接続位置の上下方向の高さ位置と同じである。
【0021】
図1に戻って、ヘッド5は、先に触れたように、キャリッジ3に対して、着脱可能に装着されている。このヘッド5は、ヘッド本体13とサブタンク14とを含む。サブタンク14の上面には、チューブジョイント21が設けられており、当該チューブジョイント21には4本のインク供給チューブ22それぞれの一端が着脱可能に接続されている。4本のインク供給チューブ22それぞれの他端は、ホルダ6の4つのカートリッジ装着部41のニードル41aそれぞれに接続されている。カートリッジ装着部41に装着された4つのインクカートリッジ42内のインクは、この4本のインク供給チューブ22を介して、サブタンク14にそれぞれ供給される。
【0022】
ヘッド本体13は、サブタンク14の下部に取り付けられている。ヘッド本体13は、その下面に形成された複数のノズル46と、このノズル46と連通するヘッド流路48(
図5参照)を有する。ヘッド本体13は、サブタンク14からインクが供給され、複数のノズル46からインクを吐出する。複数のノズル46は、左右方向に並ぶ、4列のノズル列47を構成している。この4列のノズル列47は、イエローのインクを吐出するノズル列47Yと、マゼンタのインクを吐出するノズル列47Mと、シアンのインクを吐出するノズル列47Cと、ブラックのインクを吐出するノズル列47Kとからなる。このように、4列のノズル列47は、互いに異なる色のインクを吐出する。
【0023】
サブタンク14は、合成樹脂で成形された部材であり、
図4及び
図5に示すように水平面に沿って延在する板状の本体部分60と、この本体部分60の一端部から鉛直下方に延びてヘッド本体13に接続される連結部分61とを有する。サブタンク14には、ヘッド本体13に4色のインクをそれぞれ供給する4つの供給流路62が形成されている。なお、
図4では、図面の簡単のため、4つの供給流路62のうち1つの供給流路62についてのみ全体を図示し、残りの3つの供給流路62については、一部の図示を省略している。
【0024】
本体部分60の上面には、4本のインク供給チューブ22が接続可能なチューブジョイント21が取り付けられている。このチューブジョイント21にインク供給チューブ22が接続されることで、インクカートリッジ42に貯溜されたインクを供給流路62に供給することが可能となる。
【0025】
各供給流路62は、本体部分60に形成されたダンパー室71と、連結部分61に形成された連結流路75とを有する。ダンパー室71は、本体部分60の表面に形成された凹部であり、4色のインクにそれぞれ対応した4つのダンパー室71が、本体部分60の上面側と下面側に2つずつ設けられている。
図5に示すように、上面側のダンパー室71と下面側のダンパー室71とが背中合わせとなるように配置されている。また、本体部分60の上面に形成されたダンパー室71は、同じく本体部分60の上面に形成された溝状の流路72によってチューブジョイント21に接続されている。さらに、このダンパー室71は、本体部分60の上面に形成された流路73によって、連結流路75に接続されている。尚、図面の簡単のため、
図4では図示を省略しているが、本体部分60の下面に形成されたダンパー室71についても、本体部分60の下面に形成された流路によって、チューブジョイント21及び連結流路75に接続されている。
【0026】
本体部分60の上下両面にはそれぞれ可撓性のフィルム78,79が貼り付けられ、本体部分60に形成されたダンパー室71を含む流路が、フィルム78,79によって覆われている。また、ダンパー室71とその前後の流路72,73は、深さはほぼ同じであるが、ダンパー室71の流路幅は溝状の流路72,73よりもかなり大きくなっている。これにより、供給流路62は、ダンパー室71において局部的に容積が大きくなった流路形状を有する。ヘッド本体13でインクが消費されると、ヘッド本体13内のインクの圧力が減少するため、それに応じて、インクカートリッジ42からサブタンク14内の供給流路62にインクが供給される。その際に、供給流路62内のインクに大きな圧力変動が生じると、それがヘッド本体13まで伝わってインクの吐出に悪影響を及ぼす。しかし、供給流路62に、容積が大きく、且つ、可撓性のフィルム78,79で覆われたダンパー室71が設けられることによって、供給流路62内のインクに生じる圧力変動がダンパー室71で吸収される。
【0027】
また、
図4に示すように、本体部分60には、4つの連結流路75にそれぞれ接続された溝状の4つの排気流路74も形成されている。各排気流路74は、サブタンク14の右側面に設けられた排気部23まで延びている。4つの排気部23それぞれの先端は開口となっている。また、4つの排気部23のそれぞれの内部には、外部との連通/閉止を切り換える弁(図示省略)が設置されている。尚、排気流路74についても、図面の簡単のため、本体部分60の上面に形成された1つの排気流路74についてのみ全体を図示しており、残りの3つの排気流路74については、一部の図示を省略している。
【0028】
なお、以下では、説明の便宜上、
図5に示すように、供給流路62と、ヘッド流路48とからなる流路をヘッド内流路80と称する。また、このヘッド内流路80を含む、インク供給チューブ22のインクカートリッジ42との接続位置から複数のノズル46に至る流路全体を全インク流路85(
図1参照)と称する。
【0029】
図1に戻って、給紙ローラ7と排紙ローラ8は、搬送モータ29(
図2参照)によってそれぞれ同期して回転駆動される。給紙ローラ7と排紙ローラ8は協働して、プラテン2に載置された用紙Pを
図1に示す搬送方向に搬送する。
【0030】
そして、プリンタ1は、給紙ローラ7と排紙ローラ8によって用紙Pを搬送方向に搬送しつつ、キャリッジ3とともにヘッド5を走査方向に移動させながらインクを吐出させることにより、用紙Pに所望の画像等を印字する。即ち、本実施形態のプリンタ1は、シリアル式のインクジェットプリンタである。
【0031】
メンテナンスユニット9は、ヘッド5の吐出機能の維持、回復のためのメンテナンス動作を行うためのものであり、キャップユニット50、吸引ポンプ51、切換装置52、及び廃液タンク53等を備えている。
【0032】
キャップユニット50は、プラテン2よりも走査方向一方側(
図1の右側)の位置に配置されており、キャリッジ3がプラテン2よりも右側に移動したときにはこのキャップユニット50と上下に対向する。また、キャップユニット50は、キャップ駆動モータ24(
図2参照)により駆動されて、上下方向に昇降可能である。このキャップユニット50は、共にヘッド5に接触して装着可能な、ノズルキャップ55、及び排気キャップ56を備えている。ノズルキャップ55は、例えばゴム材料によって構成されており、ブラックキャップ部55a及びカラーキャップ部55bを有する。
【0033】
キャリッジ3がキャップユニット50と対向した状態では、ノズルキャップ55がヘッド本体13の下面と対向し、排気キャップ56がサブタンク14の4つの排気部23の下面と対向する。そして、キャリッジ3とキャップユニット50とが対向した状態でキャップユニット50が上昇すると、キャップユニット50がヘッド本体13及びサブタンク14に装着される。このとき、ブラックキャップ部55aによりノズル列47Kに属する全てのノズル46が覆われ、カラーキャップ部55bにより、3列のノズル列47Y,47M,47Cに属する全てのノズル46が共通に覆われる。また、このとき、排気キャップ56が4つの排気部23に接続されて、これら排気部23の先端の開口を共通に覆う。また、排気キャップ56には、4つの排気部23内の弁をそれぞれ開閉する4本の棒状の開閉部材27が取り付けられている。詳細な説明は省略するが、排気キャップ56が4つの排気部23に接続された状態で、4本の棒状の開閉部材27は、排気モータ28(
図2参照)によって上下に駆動され、下方から排気部23内に挿入されることによって内部の弁を駆動する。
【0034】
ノズルキャップ55のブラックキャップ部55a及びカラーキャップ部55b、並びに、排気キャップ56は、それぞれ、切換装置52を介して吸引ポンプ51に接続されている。切換装置52は、吸引ポンプ51の連通先を、ブラックキャップ部55a、カラーキャップ部55b、及び排気キャップ56の間で選択的に切り換える。廃液タンク53は、吸引ポンプ51の切換装置52とは反対側に接続されている。
【0035】
そして、プリンタ1では、制御装置100の制御により、メンテナンス動作として、吸引パージ及び排気パージをメンテナンスユニット9に行わせることができる。
【0036】
吸引パージは、ノズル46からインクを強制的に排出させるパージである。ノズル列47Kに属するノズル46からブラックのインクを強制的に排出させる吸引パージを行う際には、ノズルキャップ55でノズル46を覆った状態で、ブラックキャップ部55aを吸引ポンプ51と連通させたうえで、吸引ポンプ51を駆動させる。これにより、ブラックキャップ部55a内が負圧となることで、インクカートリッジ42からノズル46に向かう方向の移送圧力が、全インク流路85内及びインクカートリッジ42内のインクに付与され、その結果として、ノズル46からブラックのインクが強制的に排出される。
【0037】
同様に、ノズル列47Y,47M,47Cに属するノズル46からカラーのインクを強制的に排出させる吸引パージを行う際には、ノズルキャップ55でノズル46を覆った状態で、カラーキャップ部55bを吸引ポンプ51と連通させたうえで、吸引ポンプ51を駆動させる。
【0038】
排気パージは、サブタンク14の供給流路62内等で成長した気泡等のエアを、ヘッド本体13に移動してしまう前に排気部23から排気するパージである。この排気パージを行う際には、排気キャップ56が排気部23に接続され、且つ、開閉部材27により排気部23内の弁が開放された状態で、切換装置52により吸引ポンプ51を排気キャップ56に連通させてから吸引ポンプ51を駆動させる。これにより、排気部23に負圧を生じて、4つの供給流路62のエアを、排気部23から同時に排気することができる。
【0039】
吸引パージや排気パージによって、ヘッド5から排出されたインクは、吸引ポンプ51に接続された廃液タンク53に送られる。
【0040】
ユーザインターフェース90は、ユーザに対する情報の出力、及び、ユーザから情報を取得ためのインターフェースであり、本実施形態では、
図2に示すように、操作キー90a及びディスプレイ90bを備えている。操作キー90aは、ユーザからの入力を受け付けて、制御装置100に出力する。ディスプレイ90bは、制御装置100からの指示に従い、種々の情報を表示する。
【0041】
温度取得部91は、カートリッジ装着部41近傍に配置された温度センサを有しており、インクカートリッジ42の温度に関するパラメータを取得する。なお、温度取得部91は、温度センサがインクカートリッジ42の温度を直接計測できるのであれば、温度センサの計測結果を上記パラメータとしてもよい。また、温度センサがインクカートリッジ42の周囲温度やインクジェットプリンタ1内の内部温度しか計測できない場合には、計測した周囲温度や内部温度から推測したインクカートリッジ42の温度を上記パラメータとしてもよい。また、温度取得部91は、インクカートリッジ42の温度に連動して変動するパラメータを、インクカートリッジ42の温度に関するパラメータとして取得してもよい。温度取得部91は、以上のようにして取得したパラメータを、制御装置100に出力する。
【0042】
スキャナユニット92は、CCDやCIS等を有し、制御装置100からの指示に従い、用紙Pに印刷された画像を読み取って、当該画像に係る画像データを生成する。また、スキャナユニット92は、制御装置100からの指示に従い、用紙Pに印刷されたテストパターンを読み取り、読み取ったテストパターンに基づいて、ノズル46のインクの吐出状態(不吐出ノズルの存否など)を解析する。
【0043】
制御装置100は、
図2に示すように、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、制御回路104、バス105等を含む。ROM102には、CPU101が実行するプログラム、各種固定データ等が記憶されている。RAM103には、プログラム実行時に必要なデータ(画像データ等)が一時的に記憶される。制御回路104には、ヘッド5、キャリッジ駆動モータ20、キャップユニット50を昇降させるキャップ駆動モータ24等、プリンタ1の様々な装置あるいは駆動部と接続されている。また、制御回路104は、PC等の外部装置31と接続されている。CPU101は、外部装置31から送信された印刷指令に基づいて、ヘッド5やキャリッジ駆動モータ20等を、制御回路104を介して制御して、用紙Pに画像等を印刷させる。また、CPU101は、吸引ポンプ51及び切換装置52等を、制御回路104を介して制御して、吸引パージや排気パージを実行させる。
【0044】
なお、本実施形態では、制御装置100は、単一のCPUにより各処理を実行するように構成されているが、複数のCPU、単一のASIC(application specific integrated circuit)、複数のASIC、あるいは、CPUと特定のASICの組み合わせにより各処理を実行するように構成されていてもよい。
【0045】
ここで、本実施形態のインクジェットプリンタ1では、CPU101の制御によりメンテナンスユニット9に行わせることが可能な吸引パージとして、大きく分類して、メンテナンスパージ、ユーザパージ、及び初期導入パージの3種類がある。以下、これらのパージについて説明する。
【0046】
メンテナンスパージ、及びユーザパージは、ヘッド5内の異物、気泡、乾燥により高粘度化したインク等をノズル46から排出させて、ノズル46の吐出特性を回復させることを目的としたパージである。メンテナンスパージは、前回の画像記録動作の後、一定期間経過したときに行われる定期的なパージや、電源が投入された直後(初回の電源投入直後を除く)に行われるパージを含む。
【0047】
一方で、ユーザパージは、メンテナンスパージと比べて、吸引ポンプ51により全インク流路85のインクに対して付与される移送圧力(吸引圧力)が強いパージである。具体的には、本実施形態において、ユーザパージは、メンテナンスパージと比べて、吸引ポンプ51の回転速度が速く、且つ吸引ポンプ51の駆動時間(顔料インクに対して移送圧力を付与する圧力付与時間)も長い。このため、ヘッド5内のインクの増粘度合が大きく、メンテナンスパージではノズル46の吐出特性が回復できない場合でも、ユーザパージを行うことで、ノズル46の吐出特性を回復することができる。
【0048】
なお、本実施形態では、ユーザパージには、弱パージ、中パージ、及び強パージの3種類がある。中パージは弱パージと比べて、吸引ポンプ51の回転速度が速い条件、及び、吸引ポンプ51の駆動時間が長い条件の少なくとも何れか一方の条件を満たすパージである。また、強パージは中パージと比べて、吸引ポンプ51の回転速度が速い条件、及び、吸引ポンプ51の駆動時間が長い条件の少なくとも何れか一方の条件を満たすパージである。従って、強パージ、中パージ、及び弱パージの順に、ノズル46から排出されるインクの量が多くなる。
【0049】
以上のユーザパージは、ユーザによるユーザインターフェース90の操作に応じて実行される。例えば、CPU101は、ユーザインターフェース90を介したユーザ操作等に基づき、ヘッド5やキャリッジ駆動モータ20等を制御して、不吐出ノズルチェック用(ノズル抜けチェック用)のテストパターンを用紙Pに印刷する。その後、CPU101は、ユーザインターフェース90を介して、そのテストパターンの印刷結果をユーザにL1〜L4の4段階で評価させる。L1〜L4は、テストパターンの印刷結果において不吐出ノズルの数が少ない順に、L1、L2、L3、L4となる。CPU101は、テストパターンの印刷結果がL1であるとユーザに評価された場合には、ユーザパージをメンテナンスユニット9に行わせない。一方で、CPU101は、テストパターンの印刷結果がL2であるとユーザに評価された場合には弱パージを、L3であるとユーザに評価された場合には中パージを、L4であるとユーザに評価された場合には強パージを、それぞれメンテナンスユニット9に行わせる。以上のように、テストパターンのユーザ評価に従ってユーザパージを行うことで、確実にノズル46の吐出特性を回復することができる。
【0050】
次に、初期導入パージを説明するに先立って、工場出荷時のプリンタ1の状態について説明する。工場出荷時には、インクカートリッジ42は各カートリッジ装着部41に装着されておらず、プリンタ1とともに同じ収容箱に同梱されている。
【0051】
また、工場出荷時においては、ヘッド5の機能保全を図る目的で、ヘッド内流路80等に、保存液が充填される。ここで、保存液として、例えば、顔料インクを用いると、下記の点で問題となる。顔料インクに用いられる色材は、経時により凝集することがある。このため、ヘッド5のヘッド内流路80内に、顔料インクを長期間充填しておくと、吐出不良を招く可能性がある。
【0052】
そこで、本実施形態において、保存液として、インクと比べて顔料の色材の量が少ない、又は含まない液体を用いる。この保存液は、インクと比べて色材が少ない分、インクよりもかなり安価である。また、保存液は、ヘッド内流路80内への充填時において、ヘッド内流路80の細部まで導入しやすくなるように、界面活性剤が添加されてインクよりも表面張力が低くなっている。
【0053】
初期導入パージは、工場出荷後に、ユーザによって、当該ヘッド5が搭載されたプリンタ1の電源が初めて投入され、且つ、インクカートリッジ42がカートリッジ装着部41に装着されたときに、ヘッド5のヘッド内流路80に充填された保存液をノズル46から排出しつつ、インクカートリッジ42からヘッド内流路80にインクを導入することを目的として行われる。
【0054】
この初期導入パージでは、インクが全く充填されていないヘッド内流路80に対して、インクカートリッジ42からインクを導入する必要がある。このため、初期導入パージは、メンテナンスパージやユーザパージと比べて、吸引ポンプ51の駆動時間(吸引時間)は長い。
【0055】
ここで、本願発明者は、ブラックの顔料インクを貯溜するインクカートリッジ42が、カートリッジ装着部41に装着される前において長時間静置状態にされていた場合、通常の初期導入パージを行ったとしても、ブラックの顔料インクがヘッド内流路80内に適切に導入されず、結果として、ヘッド5においてインクの吐出不良が生じ得ることを知見した。以下、具体的に説明する。
【0056】
顔料インクでは、顔料が溶媒中に分散された状態で存在しており、長時間静置状態にあると比重の大きい顔料がインクカートリッジ42の底部に沈降する。このときの顔料の沈降量は、イエロー、シアン、マゼンタのカラーの顔料インクを貯溜するインクカートリッジ42よりもブラックの顔料インクを貯溜するインクカートリッジ42の方が多い。これは、ブラックの顔料インクの方が、カラーの顔料インクよりも、顔料粒子の粒子径が大きくて重く、且つその顔料粒子の量が多いことに起因する。
【0057】
以上のように、ブラックの顔料インクを貯溜するインクカートリッジ42においては、長時間静置状態にあると、インクカートリッジ42の底部に顔料が多量に沈降する。その結果として、インクカートリッジ42の底部において顔料インクの顔料濃度が局所的に高くなり、その粘度も高くなる、この増粘した顔料インクにより、通常の初期導入パージを行ったとしても、インクカートリッジ42内の顔料インクが、ヘッド内流路80の途中(例えばインク供給チューブ22の途中)までしか導入されず、ヘッド内流路80の末端のノズル46まで顔料インクが導入されない問題が生じる。
【0058】
そこで、本実施形態では、この問題を解決すべく、CPU101は、ブラックの顔料インクに係る初期導入パージとして、通常初期導入パージと、増粘インク用初期導入パージの2種類をメンテナンスユニット9に実行させることが可能である。
【0059】
通常初期導入パージは、インクカートリッジ42の底部に沈降している顔料の沈降量が所定量未満の場合において、インクカートリッジ42内のインクをヘッド内流路80のノズル46まで導入することが可能な初期導入パージである。なお、この通常初期導入パージでは、CPU101は、ヘッド内流路80内の液体とともに、ヘッド内流路80内に滞留するエアもノズル46から排出可能な負圧が、ブラックキャップ部55a内に生じるように吸引ポンプ51を制御する。具体的には、CPU101は、通常初期導入パージでは、
図6に示すように、増粘インク用初期導入パージよりも、ブラックキャップ部55a内に高い負圧が生じるように吸引ポンプ51を制御する。これにより、通常初期導入パージの際には、ヘッド内流路80内の液体は、速い流速で流動することになるため、ヘッド内流路80内に滞留するエアも効率良くノズル46から排出することができる。
【0060】
なお、詳細な説明は省略するが、カラーの顔料インクに係る初期導入パージとしては、カラーの顔料インクは、ブラックの顔料インクよりも顔料が沈降し難いため、この通常初期導入パージと同様な初期導入パージのみメンテナンスユニット9に実行させることが可能にされている。
【0061】
一方で、増粘インク用初期導入パージは、インクカートリッジ42の底部に沈降している顔料の沈降量が所定量以上であり、通常初期導入パージではインクをヘッド内流路80内に適切に導入することができない場合に実行されるパージである。即ち、増粘インク用初期導入パージは、インクカートリッジ42に沈降している顔料の沈降量が所定量以上の場合において、通常初期導入パージと比較して多くの顔料インクをノズル46から排出させることが可能なパージである。
【0062】
この増粘インク用初期導入パージでは、CPU101は、通常初期導入パージのときと比較して、顔料インクに対して付与する移送圧力(吸引ポンプ51の吸引圧力)が弱く、即ち、ブラックキャップ部55a内に生じる負圧のピークが低くなるように、吸引ポンプ51の回転速度を制御する。この理由は、以下の通りである。
【0063】
上述したように、増粘インク用初期導入パージを行う際においては、インクカートリッジ42の底部において顔料インクの顔料濃度が局所的に高くなっており、その粘度も高い。このため、増粘インク用初期導入パージにおいて、顔料インクに対して付与する移送圧力を、通常初期導入パージのときと同じにした場合、顔料インクの粘度が高いため圧力損失が大きくなる。また、単位時間あたりに吸引ポンプ51により吸引される流体の量の方が、単位時間あたりにインクカートリッジ42からノズル46に向かって移送される顔料インクの移送量よりも多くなるため、ブラックキャップ部55a内の負圧が上昇し続けることになる。加えて、増粘インク用初期導入パージは、吸引対象となる、沈降しているインク(粘度の高いインク)の量が多いため、通常初期導入パージよりも吸引ポンプ51の駆動時間を長くする必要がある。その結果として、ブラックキャップ部55a内の負圧が著しく高くなり、ブラックキャップ部55aが変形してブラックキャップ部55a内の密閉性が損なわれて、パージを正常に実行できなくなる可能性がある。
【0064】
以上の理由により、増粘インク用初期導入パージにおいては、通常初期導入パージのときと比較して、顔料インクに対して付与する移送圧力を弱くする。これにより、増粘インク用初期導入パージにおける、全インク流路85内の顔料インクの流速を遅くすることができるため、圧力損失を小さくすることができる。加えて、単位時間あたりに吸引ポンプ51により吸引される流体の量と、単位時間あたりにインクカートリッジ42からノズル46に向かって移送される顔料インクの移送量との差を小さくすることができるため、ブラックキャップ部55a内の負圧が著しく上昇することを抑制することができる。その結果として、インクカートリッジ42内において、顔料の沈降により局所的に顔料濃度が高くなった顔料インクを、ノズル46からより効率良く、且つ、確実に排出することが可能となる。なお、本実施形態では、
図6に示すように、増粘インク用初期導入パージにおいてブラックキャップ部55a内に生じる負圧のピークは、ユーザパージの弱パージのときの負圧のピークよりも小さい。
【0065】
また、本実施形態においては、CPU101は、増粘インク用初期導入パージにおいて、このパージ開始時から所定時間経過後に、吸引ポンプ51の回転速度が下がるように吸引ポンプ51を制御する。具体的には、CPU101は、パージ開始時から所定時間経過するまでは、ブラックキャップ部55a内の負圧を上昇させるために速い回転速度で吸引ポンプ51を駆動し、所定時間経過後は、ブラックキャップ部55a内の負圧を上昇させずに維持するために、吸引ポンプ51の回転速度を下げて駆動する。これにより、ブラックキャップ部55a内の負圧が高くなり過ぎることを確実に抑制することができる。
【0066】
次に、増粘インク用初期導入パージにおける、吸引ポンプ51の駆動時間の設定方法について説明する。増粘インク用初期導入パージでは、上述したように、顔料インクに対して付与する移送圧力が通常初期導入パージと比べて弱いため、CPU101は、吸引ポンプ51の駆動時間を通常初期導入パージよりも長くする。
【0067】
また、この増粘インク用初期導入パージでは、顔料の沈降量が多いときほど、吸引ポンプ51の駆動時間を長くすべく、CPU101は、インクカートリッジ42の出荷時点から現在の時点までの経過期間、インクカートリッジ42の温度、及び、インクカートリッジ42の容量を設定パラメータとして、吸引ポンプ51の駆動時間を設定する。
【0068】
具体的には、インクカートリッジ42内に沈降する顔料の沈降量は、当該インクカートリッジ42が静置状態に置かれていた期間が長いほど多くなる。そこで、CPU101は、ユーザインターフェース90を介してユーザから入力された現在の時刻情報と、インクカートリッジ42のメモリ142に記憶された出荷時点情報とを取得する。そして、取得した現在の時刻情報及び出荷時点情報に基づき、インクカートリッジ42の出荷時点から現在の時点までの経過期間が長いほど、CPU101は、増粘インク用初期導入パージにける吸引ポンプ51の駆動時間を長くする。即ち、インクカートリッジ42の温度が同じであり、且つ、インクカートリッジ42の容量が同じ条件下では、インクカートリッジ42の出荷時点から現在の時点までの経過期間が長いほど、吸引ポンプ51の駆動時間を長くする。
【0069】
なお、インクカートリッジ42が、出荷時点から現在の時点までの間にユーザにより加振されていた場合、想定される沈降量よりも実際の沈降量が少なく、吸引ポンプ51の駆動時間を長くすることで無駄にインクがノズル46から排出される場合もあり得る。しかしながら、本実施形態では、インクカートリッジ42内における局所的に顔料濃度が高い顔料インクを確実にノズル46から排出することを主目的としている。このため、出荷時点から現在の時点までの間にユーザによりインクカートリッジ42が加振されていない場合を想定して、吸引ポンプ51の駆動時間を設定することで、増粘インク用初期導入パージ後において、不吐出ノズルが発生する可能性を低減している。
【0070】
また、顔料インクは、インクカートリッジ42の温度が高いほど、粘度が低くなるため、顔料の沈降が促進される。そこで、本実施形態では、CPU101は、インクカートリッジ42が出荷時点から現在の時点までの温度が、温度取得部91が現在取得しているパラメータに基づいて求まる温度であったと想定して、その温度が高いほど、CPU101は、増粘インク用初期導入パージにおける吸引ポンプ51の駆動時間を長くする。即ち、インクカートリッジ42の出荷時点から現在の時点までの経過期間が同じであり、且つ、インクカートリッジ42の容量が同じ条件下では、インクカートリッジ42の温度が高いほど、吸引ポンプ51の駆動時間を長くする。なお、インクカートリッジ42の出荷時点から現在の時点までの実際の温度を取得することができるならば、その取得した温度に基づいて、吸引ポンプ51の駆動時間を設定してもよい。
【0071】
また、上述したように、カートリッジ装着部41には、容量の異なる2種類のインクカートリッジ42を選択的に装着可能である。大容量のインクカートリッジ42bは、小容量のインクカートリッジ42aと比べて、顔料インクの量が多いため、その分だけ顔料の量も多い。また、小容量のインクカートリッジ42aと大容量のインクカートリッジ42bとは、底面積が同じである。従って、大容量のインクカートリッジ42bの方が、小容量のインクカートリッジ42aと比べて、顔料が多量に沈降し易く、顔料の沈降に起因して顔料濃度が高くなった顔料インクが底面から高い位置まで存在することになる。そこで、本実施形態では、CPU101は、インクカートリッジ42のメモリ142に記憶された容量情報を読み出し、当該容量情報が大容量のインクカートリッジ42bを示している場合には、小容量のインクカートリッジ42aを示している場合と比べて、増粘インク用初期導入パージにおける吸引ポンプ51の駆動時間を長くする。即ち、インクカートリッジ42の温度が同じであり、且つ、インクカートリッジ42の出荷時点から現在の時点までの経過期間が同じ条件下では、インクカートリッジ42が大容量のインクカートリッジ42bのときの方が、インクカートリッジ42が小容量のインクカートリッジ42aのときよりも吸引ポンプ51の駆動時間を長くする。
【0072】
以上のように、CPU101が、現在の時刻情報及び出荷時点情報、容量情報、並びに温度取得部91から取得したパラメータに基づいて、増粘インク用初期導入パージにおける吸引ポンプ51の駆動時間を設定することで、インクカートリッジ42内における局所的に顔料濃度が高い顔料インクを確実にノズル46から排出することができる。
【0073】
以上説明した増粘インク用初期導入パージは、CPU101が、インクカートリッジ42内における顔料の沈降量に関する沈降情報を取得し、当該沈降情報に基づいて、インクカートリッジ42内における顔料の沈降量が所定量以上であると判断した場合にのみ実行される。
【0074】
具体的には、CPU101は、メンテナンスユニット9に初期導入パージを行わせるときに、まず、通常初期導入パージをメンテナンスユニット9に実行させる。その後、CPU101は、ヘッド5やキャリッジ駆動モータ20等を制御して、上述した不吐出ノズルチェック用のテストパターンを用紙Pに印刷する。そしてCPU101は、ユーザインターフェース90を介して、そのテストパターンの印刷結果をユーザにL1〜L4の4段階で評価させ、そのユーザの評価情報を、上記沈降情報として取得する。このように、通常初期導入パージの後に用紙Pに印刷されたテストパターンを見て、ユーザが沈降情報(評価情報)を入力することができるため、沈降情報の信頼性をより高めることができる。変形例として、外部装置31が備えるユーザインターフェースを介してユーザが評価情報(沈降情報)を入力し、CPU101は、外部装置31からその評価情報を取得するように構成されていてもよい。
【0075】
ここで、インクカートリッジ42内における顔料の沈降量が所定量未満である場合には、通常初期導入パージを行った後に印刷したテストパターンの印刷結果に対するユーザの評価は、L1〜L4の何れともなり得る可能性がある。これは、通常初期導入パージが正常に動作し、且つ、ヘッド内流路80にエアが残留していない場合には不吐出ノズルが発生する可能性が低くユーザの評価がL1となる可能性が高い。一方で、通常初期導入パージが正常に動作していない場合や、ヘッド内流路80にエアが多量に残留している場合には、不吐出ノズルが多数発生し、その結果、ユーザの評価がL2〜L4となる可能性もあり得るためである。
【0076】
一方で、インクカートリッジ42内における顔料の沈降量が所定量以上である場合には、通常初期導入パージを行ったとしてもヘッド内流路80の末端であるノズル46まで顔料インクが導入されていない可能性が高く、この後に印刷されたテストパターンの印刷結果に対するユーザの評価はL4となる可能性が、他のL1〜L3となる可能性よりも著しく高い。
【0077】
また、上述したように、インクカートリッジ42内に沈降する顔料の沈降量は、当該インクカートリッジ42が静置状態に置かれていた期間が長いほど多くなる。このため、インクカートリッジ42の出荷時点から現在の時点までの経過期間が所定期間(例えば、6か月)未満である場合には、テストパターンの印刷結果に対するユーザの評価がL4のときでも、インクカートリッジ42内に沈降する顔料の沈降量が所定量未満である可能性が高い。そこで、CPU101は、ユーザインターフェース90を介してユーザから入力された現在の時刻情報と、インクカートリッジ42のメモリ142から読み出した出荷時点情報を、上記沈降情報として取得する。
【0078】
そして、CPU101は、沈降情報として取得した、ユーザ評価情報、現在の時刻情報、及び出荷時点情報に基づき、テストパターンの印刷結果に対するユーザの評価がL4であり、且つ、インクカートリッジ42の出荷時点から現在の時点までの経過期間が所定期間以上である場合には、インクカートリッジ42内に沈降する顔料の沈降量が所定量以上であると判断し、それ以外の場合には、インクカートリッジ42内に沈降する顔料の沈降量が所定量未満であると判断する。そして、CPU101は、インクカートリッジ42内に沈降する顔料の沈降量が所定量以上であると判断した場合に、増粘インク用初期導入パージをメンテナンスユニット9に実行させる。以上のように、沈降情報として、ユーザ評価情報、現在の時刻情報、及び出荷時点情報を取得して、インクカートリッジ42内に沈降する顔料の沈降量が所定量以上であるか否かを判断することで、増粘インク用初期導入パージを適切に行うことが可能となる。
【0079】
なお、インクカートリッジ42が、出荷時点から現在の時点までの間にユーザにより加振されていた場合、テストパターンの印刷結果に対するユーザの評価がL4であり、且つ、インクカートリッジ42の出荷時点から現在の時点までの経過期間が所定期間以上である場合でも、インクカートリッジ42内に沈降する顔料の実際の沈降量は所定量未満である可能性がある。従って、この場合、増粘インク用初期導入パージが不必要に実行されることになる。しかしながら、本実施形態では、インクカートリッジ42内における局所的に顔料濃度が高い顔料インクを確実にノズル46から排出することを主目的としている。このため、出荷時点から現在の時点までの間にユーザによりインクカートリッジ42が加振されていない場合を想定して、インクカートリッジ42内に沈降する顔料の沈降量が所定量以上であるか否かを判断することで、増粘インク用初期導入パージ後において、不吐出ノズルが発生する可能性を低減している。
【0080】
以上説明したように、本実施形態では、2種類の初期導入パージ、3種類のユーザパージ、及び1種類のメンテナンスパージの計6種類の吸引パージを実行可能である。ROM102には、これら6種類の吸引パージに対応する6種類の制御プログラムが記憶されている。CPU101は、各種類の吸引パージを行うときには、対応する制御プログラムをROM102から読み出して実行する。換言すれば、本実施形態では、6種類の制御プログラムに対応した6種類の吸引パージ(以下、第1〜第6パージと称す)を実行可能である。上記2種類の初期導入パージ、3種類のユーザパージ、及び1種類のメンテナンスパージは、それぞれ、これら第1〜第6パージの何れか1つのパージに対応している。具体的には、
図7に示すように、第1パージは通常初期導入パージに、第2パージは増粘インク用初期導入パージに、第3パージはユーザパージの弱パージに、第4パージはユーザパージの中パージに、第5パージはユーザパージの強パージに、第6パージはメンテナンスパージに、それぞれ対応する。
【0081】
(インクジェットプリンタの動作)
次に、ユーザによってプリンタ1の電源が投入されたときのプリンタ1の処理動作の一例について、
図8を参照しつつ説明する。なお、以下では、ブラックの顔料インクに係る吸引パージの処理動作について説明し、カラーの顔料インクに係る吸引パージの処理動作については説明を省略する。
【0082】
まず、ユーザによってプリンタ1の電源が投入される(S1)と、ユーザインターフェース90を介して現在の時刻をユーザから取得して設定する(S2)。次に、CPU101は、装着検知センサ152からの検出結果に基づいて、インクカートリッジ42がカートリッジ装着部41に装着されているか否かを判断する(S3)。インクカートリッジ42がカートリッジ装着部41に装着されていないと判断した場合(S3:NO)には、CPU101は、インクカートリッジ42を複数回加振した後にカートリッジ装着部41に装着することをユーザに促す画面をディスプレイ90bに表示させて、S3の処理に戻る。
【0083】
一方で、インクカートリッジ42がカートリッジ装着部41に装着されたと判断した場合(S3:YES)には、CPU101は、RAM103を参照して、キャリッジ3に搭載されているヘッド5のヘッド内流路80にインクを初期導入済みであるか否かを判断する(S4)。詳細には、RAM103には、初期導入済みであるか否かを示す導入フラグが記憶されている。CPU101は、この導入フラグがオンのときには初期導入済みであると判断する。一方で、導入フラグがオフのときには初期導入済みではない(未導入)と判断する。
【0084】
そして、初期導入済みではないと判断した場合(S4:NO)には、インクカートリッジ42からヘッド内流路80へのインクの初期導入を行うと判断して、まず、メンテナンスユニット9に排気パージを実行させる(S5:排気処理)。具体的には、CPU101は、排気キャップ56が排気部23に接続され、且つ、開閉部材27により排気部23内の弁が開放された状態で、切換装置52により吸引ポンプ51を排気キャップ56に連通させてから吸引ポンプ51を駆動させる。この排気パージを実行することにより、4色の顔料インクそれぞれに対応する4つのヘッド内流路80内のエアがヘッド内流路80外に排気されるため、これらヘッド内流路80内に存在するエアにより、インクの吐出特性が悪化することを抑制することができる。
【0085】
次に、CPU101は、ブラックの顔料インクを貯溜するインクカートリッジ42からヘッド内流路80にインクを導入すべく、通常初期導入パージ(第1パージ)をメンテナンスユニット9に行わせる(S6:第1パージ処理)。具体的には、CPU101は、ノズルキャップ55でノズル46を覆った状態で、ブラックキャップ部55aを吸引ポンプ51と連通させたうえで、吸引ポンプ51を駆動させる。このとき、CPU101は、RAM103に記憶されている導入フラグをオフからオンに切り替える。また、図示は省略しているが、この後、CPU101は、カラーの顔料インクを貯溜する3つのインクカートリッジ42から、3つのヘッド内流路80にインクを導入する、初期導入パージもメンテナンスユニット9に行わせる。
【0086】
次に、CPU101は、ヘッド5、キャリッジ駆動モータ20等を制御して、不吐出ノズルチェック用のテストパターンを用紙Pに印刷する(S7:パターン印刷処理)。この後、CPU101は、テストパターンの印刷結果をユーザにL1〜L4の4段階で評価させるための評価画面をディスプレイ90bに表示させ(S8)、操作キー90aを介してユーザからユーザ評価情報を取得するまで待機する(S9)。
【0087】
そして、CPU101は、ユーザ評価情報を取得した場合(S9:YES)には、そのユーザ評価情報が示す、テストパターンの印刷結果に対するユーザの評価がL1であるか否かを判断する(S10)。ユーザの評価がL1であると判断した場合(S10:YES)には、CPU101は、不吐出ノズルが発生していないと判断して、本処理動作を終了する。
【0088】
一方で、ユーザの評価がL1ではないと判断した場合(S10:NO)には、CPU101は、テストパターンの印刷結果に対するユーザの評価がL4であるか否かを判断する(S11)。ユーザの評価がL4ではないと判断した場合(S11:NO)には、CPU101は、ユーザの評価がL2のときは第3パージを、ユーザの評価がL3のときは第4パージをメンテナンスユニット9に行わせて(S12)、本処理動作を終了する
【0089】
一方で、ユーザの評価がL4であると判断した場合(S11:YES)には、CPU101は、RAM103を参照して、増粘インク用初期導入パージを実行済みか否かを判断する(S13)。詳細には、RAM103には、増粘インク用初期導入パージを実行済みか否かを示す増粘インク用初期導入フラグが記憶されている。CPU101は、この増粘インク用初期導入フラグがオンのときには増粘インク用初期導入パージを実行済みと判断する。一方で、増粘インク用初期導入フラグがオフのときには増粘インク用初期導入パージを実行済みではないと判断する。
【0090】
増粘インク用初期導入パージを実行済みと判断した場合(S13:YES)には、CPU101は、先に実行した増粘インク用初期導入パージにより、ヘッド内流路80の末端であるノズル46付近まで顔料インクが既に導入されていると判断して、テストパターンの印刷結果がL4であるとするユーザの評価に応じて、第5パージをメンテナンスユニット9に行わせて(S12)、本処理動作を終了する
【0091】
一方で、増粘インク用初期導入パージを実行済みではないと判断した場合(S13:NO)には、CPU101は、S2で取得した現在の時刻情報と、インクカートリッジ42のメモリ142から取得した出荷時点情報とに基づいて、出荷時点から現在の時点までの経過期間が所定期間以上であるか否かを判断する(S14)。出荷時点から現在の時点までの経過期間が所定期間未満であると判断した場合(S14:NO)には、CPU101は、インクカートリッジ42内に沈降する顔料の沈降量が所定量未満であると判断して、テストパターンの印刷結果がL4であるとするユーザの評価に応じて、第5パージをメンテナンスユニット9に行わせて(S12)、本処理動作を終了する
【0092】
一方で、出荷時点から現在の時点までの経過期間が所定期間以上であると判断した場合(S14:YES)には、CPU101は、インクカートリッジ42内に沈降する顔料の沈降量が所定量以上であると判断する。そして、CPU101は、増粘インク用初期導入パージ時における吸引ポンプ51の駆動時間を、インクカートリッジ42のメモリ142に記憶された容量情報及び出荷時点情報、及び、S2で取得した現在の時刻情報、並びに温度取得部91から取得したパラメータに基づいて設定する(S15)。
【0093】
この後、CPU101は、メンテナンスユニット9に増粘インク用初期導入パージ(第2パージ)を実行させる(S16:第2パージ処理)。具体的には、CPU101は、ノズルキャップ55でノズル46を覆った状態で、ブラックキャップ部55aを吸引ポンプ51と連通させたうえで、吸引ポンプ51を上記S15で設定した駆動時間だけ駆動させる。このとき、CPU101は、RAM103に記憶されている増粘インク用初期導入フラグをオフからオンに切り替える。
【0094】
ところで、S16の処理で行われる増粘インク用初期導入パージでは、通常初期導入パージと比較して、全インク流路85内の顔料インクに対して付与される移送圧力(吸引ポンプ51の吸引力)が弱い。このため増粘インク用初期導入パージを行ったとしても、全インク流路85内での液体の流速は遅く、その結果、ヘッド内流路80内に多量のエアが残留する虞がある。そこで、本実施形態では、S16の処理の後、CPU101は、メンテナンスユニット9に、弱パージに対応する第3パージを実行させる(S17)。これにより、ヘッド内流路80内の顔料インクとともにヘッド内流路80内に残留するエアをノズル46から排出することができ、その結果として、インクの吐出特性が悪化することを抑制することができる。なお、この増粘インク用初期導入パージ後に行うパージとして、中パージに対応する第4パージや強パージに対応する第5パージを行った場合でも、ヘッド内流路80内に残留するエアをノズル46から排出することができる。しかしながら、このパージはヘッド内流路80内に残留するエアを低減することを主目的としているため、これら第4パージや第5パージを行うとインクが不必要にノズル46から排出される可能性がある。従って、増粘インク用初期導入パージ後に行うユーザパージとしては、第3パージを採用することが最適である。このS17の処理が終了すると、S7の処理に戻る。
【0095】
一方で、S4の処理で、初期導入済みであると判断した場合(S4:YES)には、CPU101は、メンテナンスユニット9に排気パージを行わせ(S18)、この後、メンテナンスユニット9にメンテナンスパージ(第6パージ)を行わせる(S19)。この排気パージ及びメンテナンスパージにより、ノズル46の吐出特性が回復される。以上、プリンタ1の動作について説明した。
【0096】
以上、本実施形態によると、インクカートリッジ42内の顔料の沈降量が所定量以上である場合でも、増粘インク用初期導入パージをメンテナンスユニット9に実行させることで、インクカートリッジ42内において、顔料の沈降により局所的に顔料濃度が高くなった顔料インクをノズル46から排出することができ、且つ、ヘッド内流路80内に顔料インクを円滑に導入することができる。その結果として、ヘッド5においてインクの吐出不良が生じることを抑制することができる。また、インクカートリッジ42内の顔料の沈降量が所定量未満であるような場合には、通常初期導入パージのみが実行されるため、インクの消費量を抑制することができる。
【0097】
また、本実施形態では、通常初期導入パージの前に、メンテナンスユニット9に排気パージを行わせている。この排気パージによりエアが4つのヘッド内流路80内からそれぞれから排気されることで、4つのインクカートリッジ42から、4つの全インク流路85内にそれぞれ多少顔料インクが導入されることになる。このとき、ブラックの顔料インクを貯溜するインクカートリッジ42における顔料の沈降量が所定量以上である場合、ブラックの顔料インクの全インク流路85への導入量と、カラーの顔料インクの全インク流路85への導入量と差が生じることになる。このため、この後、カラーの顔料インクに係る初期導入パージと、ブラックの顔料インクに係る初期導入パージとを同様な処理で行った場合には、カラーの顔料インクについては全インク流路85全体に導入される一方で、ブラックの顔料インクについては全インク流路85の末端であるノズル46まで導入されない場合が生じ得る。しかしながら、本実施形態では、このような場合でも、増粘インク用初期導入パージを実行することで、ブラックの顔料インクについてもノズル46まで導入することができる。
【0098】
加えて、インクカートリッジ42における、インクカートリッジ42bのニードル41aが接続される排出管45は、貯溜室44a,44bの下部に接続されているため、増粘インク用初期導入パージのときに、貯溜室44a,44bの下部付近にある顔料濃度が高い顔料インクを効率良くノズル46から排出させることができる。
【0099】
以上説明した実施形態において、インクカートリッジ42が「タンク」に相当し、メンテナンスユニット9が「パージ機構」に相当する。ユーザインターフェース90が「ユーザ情報取得部」に相当し、スキャナユニット92が「画像解析手段」に相当する。ブラックキャップ部55aが「吸引キャップ」に相当する。サブタンク14及び排気部23が「流路構造体」に相当する。排出管45が液体排出口に相当する。ノズル列47Kに属するノズル46が「第1ノズル」に相当し、ノズル列47Y,47M,47Cに属するノズル46が「第2ノズル」に相当する。ブラックの顔料インクが「第1顔料インク」に相当し、ブラックの顔料インクを貯溜するインクカートリッジ42が「第1タンク」に相当し、ブラックの顔料インクを貯溜するインクカートリッジ42からインクが供給される供給流路62が第1液体流路に相当する。また、カラーの顔料インクが「第2顔料インク」に相当し、カラーの顔料インクを貯溜するインクカートリッジ42が「第2タンク」に相当し、カラーの顔料インクを貯溜するインクカートリッジ42からインクが供給される供給流路62が第2液体流路に相当する。
【0100】
次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。
【0101】
上述の実施形態では、CPU101は、ユーザ評価情報、現在の時刻情報、及び出荷時点情報を沈降情報として取得していたが、ユーザ評価情報のみ取得してもよく、現在の時刻情報及び出荷時点情報のみを取得してもよい。また、沈降情報はこれらに限定されず、インクカートリッジ42内の顔料の沈降量に関する情報であればよい。例えば、インクカートリッジ42内の顔料の沈降量を直接検出することが可能なセンサを設け、このセンサの検知結果を沈降量としてもよい。加えて、温度取得部91から取得したインクカートリッジ42の温度に関するパラメータや、インクカートリッジ42のメモリ142に記憶された容量情報を沈降情報としてもよい。また、ユーザインターフェース90を介してユーザから取得する沈降情報は、テストパターンの印刷結果に対するユーザ評価である必要はない。
【0102】
また、上述の実施形態では、通常初期導入パージの後に用紙Pに印刷されたテストパターンに対して、ユーザインターフェース90を介して入力されたユーザ評価情報を沈降情報として取得していたが、当該テストパターンをスキャナユニット92に解析させ、その解析結果を沈降情報として取得してもよい。以下、この変形例に係るプリンタ1の処理動作の一例について、
図9を参照しつつ説明する。
【0103】
本変形例では、
図9に示すように、S7の処理で不吐出ノズルチェック用のテストパターンを用紙Pに印刷した後において、CPU101は、当該テストパターンをスキャナユニット92に解析させる(S50)。このスキャナユニット92によるテストパターンの解析においても、そのテストパターンの印刷結果をL1〜L4の4段階で評価させる。この後、CPU101は、スキャナユニット92からテストパターンの解析結果を取得し(S51)、その解析結果のテストパターンの印刷結果に対する評価がL1であるか否かを判断する(S52)。評価がL1であると判断した場合(S52:YES)には、本処理動作を終了する。
【0104】
一方で、評価がL1ではないと判断した場合(S52:NO)には、CPU101は、解析結果のテストパターンの印刷結果に対する評価がL4であるか否かを判断する(S53)。評価がL4ではないと判断した場合(S53:NO)には、CPU101は、解析結果の評価に応じて、第3パージ及び第4パージの何れかをメンテナンスユニット9に行わせて(S54)、本処理動作を終了する。一方で、評価がL4であると判断した場合(S53:YES)には、S13の処理に移る。以上、本変形例では、通常初期導入パージの後に用紙Pに印刷されたテストパターンに対するスキャナユニット92の解析結果を、沈降情報として取得することができるため、沈降情報の信頼性をより高めることができる。
【0105】
また、その他の変更形態として、上述の実施形態では、インクカートリッジ42からヘッド内流路80にインクを導入する初期導入を行うときに、CPU101は、まず、通常初期導入パージをメンテナンスユニット9に行わせていたが、この通常初期導入パージを行う前に、取得した沈降情報に基づいてインクカートリッジ42に沈降する顔料の沈降量が所定量以上であると判断することができる場合には、メンテナンスユニット9に通常初期導入パージをさせずに増粘インク用初期導入パージを最初から実行させてもよい。つまり、CPU101は、初期導入パージを行う前に、インクカートリッジ42に沈降する顔料の沈降量が所定量以上か否かを判断する。そして、インクカートリッジ42に沈降する顔料の沈降量が所定量以上であると判断した場合に増粘インク用初期導入パージを、インクカートリッジ42に沈降する顔料の沈降量が所定量未満であると判断した場合に通常初期導入パージを、それぞれメンテナンスユニット9に選択的に実行させてもよい。また、カラーの顔料インクについても、インクカートリッジ42が長時間静置状態にあると、多少なりとも顔料が沈降するため、初期導入パージとして、通常初期導入パージに加えて、増粘インク用導入パージも実行可能にされていてもよい。増粘インク用導入パージのときの吸引ポンプ51の駆動時間については、インクカートリッジ42の出荷時点から現在の時点までの経過期間、インクカートリッジ42の温度、及び、インクカートリッジ42の容量の3つの設定パラメータとして設定していたが、いずれか1つの設定パラメータに基づいて設定してもよく、これら3つ設定パラメータ以外のパラメータに基づいて設定してもよい。
【0106】
また、キャップユニット50が有するノズルキャップは、ノズル列47K,47Y,47M,47Cに属する全てのノズル46を共通に覆うキャップであってもよい。この場合、吸引パージにおいて、ノズル列47K,47Y,47M,47Cに属する全てのノズル46から同時にインクを排出させることができる。なお、この構成の場合、ブラックの顔料インクを貯溜するインクカートリッジ42における顔料の沈降量が所定量以上のときには、初期導入パージの際において、ブラックの顔料インクの全インク流路85への導入量と、カラーの顔料インクの全インク流路85への導入量と差が生じることになる。しかしながら、このようなときでも、増粘インク用初期導入パージを実行することで、ブラックの顔料インクについても全インク流路85の末端であるノズル46まで導入することができる。
【0107】
また、出荷時において、ヘッド内流路80の全流路に保存液が充填されている必要はなく、例えば、ダンパー室71及びこのダンパー室71よりもインクカートリッジ42側の流路に保存液が充填されていなくてもよい。また、出荷時において、ヘッド内流路80に保存液が充填されていなくてもよい。
【0108】
また、排気パージを行うための排気流路74は必須ではない。但し、排気流路74がない場合は、ヘッド内流路80に存在するエアを全て、吸引パージのみによって、ヘッド内流路80の末端のノズル46から抜く必要がある。
【0109】
加えて、カートリッジ装着部41は、互いに容量が異なる3種類以上のインクカートリッジ42を選択的に装着可能にされていてもよい。また、カートリッジ装着部41に選択的に装着される、小容量のインクカートリッジ42aと大容量のインクカートリッジ42bとは、底面積は同じであったが、底面積は互いに異なっていてもよい。この場合でも、インクカートリッジ42bの方が、インクカートリッジ42aよりも底部に沈降する顔料の沈降量が多いことには変わりがない。なお、インクカートリッジ42の容量が同じ場合には、底面積が小さくなるほど、顔料の沈降に起因して顔料濃度が高くなった顔料インクが底面から高い位置まで存在することになる。
【0110】
また、インクカートリッジが装着されるカートリッジ装着部がキャリッジに搭載された、いわゆるオンキャリッジタイプのプリンタにも適用することができる。インクカートリッジ42の排出管45は、貯溜室44a,44bの下部に接続されていなくてもよく、例えば、貯溜室44a,44bの中部に接続されていてもよい。
【0111】
また、上述の実施形態では、ノズル46から顔料インクを排出させるパージは、吸引パージであったが、プリンタ1が、インクカートリッジ42内の顔料インクに正圧を付与する正圧付与部を備え、この正圧付与部によってインクカートリッジ42内の顔料インクに正圧を付与することによって、ノズル46から顔料インクを排出させる正圧パージであってもよい。
【0112】
加えて、上述の実施形態では、インクの供給源であるタンクは、インクカートリッジであったが、これに限定されるものではなく、例えば、可撓性を有する樹脂からなるパウチ式のインク収容袋であってもよい。このインク収容袋には、インク供給チューブ22を接続可能なキャップが設けられており、インク供給チューブ22をこのキャップに接続したときにインク収容袋内のインクがインク供給チューブ22に流通可能となる。
【0113】
また、本発明は、インクジェットヘッドを固定した状態で、搬送機構により搬送される用紙に画像を印刷する、所謂ライン式のインクジェットプリンタにも適用されうる。