(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記端側接点では、前記中央側接点と比べて、前記第1方向の接点長さが長く、且つ、前記凹部の前記第1方向の長さも長いことを特徴とする請求項3に記載のアクチュエータ装置。
前記端側接点と前記中央側接点とで、前記凸部及び前記凹部の前記第2方向の長さが同じで、前記第2方向における前記凸部及び前記凹部の位置も同じであることを特徴とする請求項7に記載のアクチュエータ装置。
前記複数の個別接点のうちの、前記第1方向の中央部に配置された前記個別接点と、前記第1方向の端部に配置された前記個別接点との間で、前記凹凸部の形状が異なることを特徴とする請求項15〜17の何れかに記載のアクチュエータ装置。
前記複数の個別接点には、第1個別接点と、前記第1個別接点よりも、対応する前記駆動素子の前記第2電極から前記共通電極接点までの電気的経路が長い第2個別接点が含まれ、
前記第2個別接点の前記凸部の面積が、前記第1個別接点の前記凸部よりも大きいことを特徴とする請求項18に記載のアクチュエータ装置。
前記第1接点は、導電材料で形成されたベース層と、前記ベース層の上に間隔を空けて配置された、それぞれ導電材料からなる前記2つの凸部を有することを特徴とする請求項15〜21の何れかに記載のアクチュエータ装置。
前記第1接点と前記第2接点とが接触した状態で、前記配線部材と前記アクチュエータとが、非導電性接着剤で接合されていることを特徴とする請求項1〜25の何れかに記載のアクチュエータ装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態について説明する。まず、
図1を参照してインクジェットプリンタ1の概略構成について説明する。尚、
図1において記録用紙100が搬送される方向を、プリンタ1の前後方向と定義する。また、記録用紙100の幅方向をプリンタ1の左右方向と定義する。さらに、前後左右及び左右方向と直交する、
図1の紙面垂直方向をプリンタ1の上下方向と定義する。
【0011】
(プリンタの概略構成)
図1に示すように、インクジェットプリンタ1は、キャリッジ3と、インクジェットヘッド4と、搬送機構5と、制御装置6等を備えている。
【0012】
キャリッジ3は、左右方向(以下、走査方向ともいう)に延びる2本のガイドレール10,11に取り付けられている。また、キャリッジ3は、無端ベルト14を介してキャリッジ駆動モータ15と連結されている。キャリッジ3は、モータ15により駆動されて、プラテン2の記録用紙100の上を走査方向に往復移動する。
【0013】
インクジェットヘッド4は、キャリッジ3に搭載されている。インクジェットヘッド4には、ホルダ7の4色(ブラック、イエロー、シアン、マゼンタ)のインクカートリッジ17のそれぞれから、図示しないチューブによりインクが供給される。インクジェットヘッド4は、キャリッジ3とともに走査方向に移動しつつ、複数のノズル24(
図2〜
図6参照)から、プラテン2上の記録用紙100に向けてインクを吐出する。
【0014】
搬送機構5は、2つの搬送ローラ18,19によって、プラテン2上の記録用紙100を前方(以下、搬送方向ともいう)に搬送する。
【0015】
制御装置6は、PC等の外部装置から入力された印刷指令に基づいて、インクジェットヘッド4やキャリッジ駆動モータ15等を制御して、記録用紙100に画像等を印刷させる。
【0016】
(インクジェットヘッドの詳細)
次に、インクジェットヘッド4の構成について、
図2〜
図6を参照して詳細に説明する。尚、
図3、
図4では、
図2に示される保護部材23の図示は省略されている。
【0017】
本実施形態のインクジェットヘッド4は、上述した4色(ブラック、イエロー、シアン、マゼンタ)全てのインクを吐出するものである。
図2〜
図6に示すように、インクジェットヘッド4は、ノズルプレート20、流路部材21、及び、圧電アクチュエータ22を含むアクチュエータ装置25を備えている。尚、本実施形態のアクチュエータ装置25は、圧電アクチュエータ22のみを指すのではなく、圧電アクチュエータ22の上に配置される、保護部材23と、配線部材であるCOF(Chip On Film)50をも含む概念である。
【0018】
(ノズルプレート)
ノズルプレート20は、例えば、シリコン等で形成されたプレートである。ノズルプレート20には、搬送方向に配列された複数のノズル24が形成されている。即ち、前後方向が、ノズル24が配列される方向(以下、ノズル配列方向ともいう)である。
【0019】
より詳細には、
図2、
図3に示すように、ノズルプレート20には、走査方向に並ぶ4つのノズル群27が形成されている。4つのノズル群27は、互いに異なるインクを吐出する。1つのノズル群27は、左右2つのノズル列28からなる。各ノズル列28において、複数のノズル24が配列ピッチPで配列されている。また、2つのノズル列28の間では、ノズル24の位置が搬送方向にP/2ずれている。即ち、1つのノズル群27を構成する複数のノズル24は、2列の千鳥状に配列されている。
【0020】
尚、以下の説明において、インクジェットヘッド4の構成要素のうち、ブラック(K)、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)のインクにそれぞれ対応するものについては、その構成要素を示す符号の後に、どのインクに対応するかが分かるように、適宜、ブラックを示す“k”、イエローを示す“y”、シアンを示す“c”、マゼンタを示す“m”の何れかの記号を付す。例えば、ノズル群27kとは、ブラックインクを吐出するノズル群27のことを指す。
【0021】
(流路部材)
流路部材21は、シリコン単結晶の基板である。
図3〜
図6に示すように、流路部材21には、複数のノズル24とそれぞれ連通する複数の圧力室26が形成されている。各圧力室26は、走査方向に長い、矩形の平面形状を有する。複数の圧力室26は、上述した複数のノズル24の配列に応じて搬送方向に配列され、1色のインクに対して2つの圧力室列、合計8つの圧力室列を構成している。流路部材21の下面はノズルプレート20で覆われている。また、各圧力室26の走査方向外側の端部がノズル24と重なっている。
【0022】
尚、流路部材21の上面には、後述する圧電アクチュエータ22の構成要素の1つである振動膜30が、複数の圧力室26を覆うように配置されている。振動膜30は、圧力室26を覆う絶縁性の膜であれば特には限定されない。例えば、本実施形態では、振動膜30は、シリコン基板の表面が酸化、あるいは、窒化されることにより形成された膜である。振動膜30の、各圧力室26の走査方向内側の端部(ノズル24と反対側の端部)を覆う部分には、インク供給孔30aが形成されている。
【0023】
保護部材23内のリザーバ23bから、インクが、インク供給孔30aを通じて各圧力室26へと供給される。また、後述する圧電アクチュエータ22の圧電素子31によって、圧力室26内のインクに吐出エネルギーが付与されると、圧力室26に連通するノズル24からインクの液滴が吐出される。
【0024】
(アクチュエータ装置)
流路部材21の上面には、アクチュエータ装置25が配置されている。先にも触れたが、アクチュエータ装置25は、複数の圧電素子31を含む圧電アクチュエータ22と、保護部材23と、2枚のCOF50を有する。
【0025】
圧電アクチュエータ22は、流路部材21の上面全域に配置されている。
図3、
図4に示すように、圧電アクチュエータ22は、複数の圧力室26とそれぞれ重なって配置された複数の圧電素子31を有する。複数の圧電素子31は、圧力室26の配列に従って搬送方向に配列され、8列の圧電素子列38を構成している。左側4つの圧電素子列38からは、複数の駆動接点46と2つのグランド接点47が左側に引き出され、
図2、
図3のように、接点46,47は流路部材21の左端部に配置されている。右側4つの圧電素子列からは、複数の駆動接点46と2つのグランド接点47が右側に引き出され、接点46,47は流路部材21の右端部に配置されている。圧電アクチュエータ22の詳細構成については後述する。
【0026】
保護部材23は、複数の圧電素子31を覆うように圧電アクチュエータ22の上面に配置されている。詳しくは、保護部材23は、8つの凹状保護部23aによって8つの圧電素子列38を個別に覆っている。尚、
図2に示すように、保護部材23は圧電アクチュエータ22の左右両端部は覆っておらず、駆動接点46及びグランド接点47は保護部材23から露出している。また、保護部材23は、ホルダ7の4つのインクカートリッジ17と接続される4つのリザーバ23bを有する。各リザーバ23b内のインクは、インク供給流路23c、振動膜30のインク供給孔30aを介して、各圧力室26に供給される。
【0027】
図2〜
図5に示されるCOF50は、ポリイミドフィルム等の絶縁材料からなる基板56を有する、可撓性の配線部材である。基板56にはドライバIC51が実装されている。2枚のCOF50の一端部は、それぞれ、プリンタ1の制御装置6(
図1参照)に接続されている。2枚のCOF50の他端部は、圧電アクチュエータ22の左右両端部にそれぞれ接合されている。
図4に示すように、COF50は、ドライバIC51に接続された複数の個別配線52と、グランド配線53とを有する。個別配線52の先端部には個別接点54が設けられ、個別接点54は圧電アクチュエータ22の駆動接点46と接続される。グランド配線53の先端部にはグランド接続接点55が設けられ、グランド接続接点55は、圧電アクチュエータ22のグランド接点47と接続される。ドライバIC51は、個別接点54及び駆動接点46を介して、圧電アクチュエータ22の複数の圧電素子31の各々に駆動信号を出力する。
【0028】
<圧電アクチュエータの詳細>
圧電アクチュエータ22は、流路部材21の上面に形成された上述の振動膜30と、この振動膜30の上面に配置された複数の圧電素子31を有する。尚、図面を簡素化するため、
図3、
図4では、
図5、
図6の断面図では示されている保護膜40、絶縁膜41、及び、配線保護膜43の図示は省略されている。
【0029】
図3〜
図6に示すように、複数の圧電素子31は、振動膜30の上面において、複数の圧力室26と重なって配置されている。即ち、複数の圧電素子31は、複数の圧力室26の配列に従って搬送方向に配列されている。これにより、複数の圧電素子31は、ノズル24及び圧力室26の配列に従って、1色のインクにつき2つの圧電素子列38、合計8つの圧電素子列38を構成している。尚、1色のインクに対応した2つの圧電素子列38からなる圧電素子31の群を、圧電素子群39と称する。
図3に示すように、4色のインクにそれぞれ対応した、4つの圧電素子群39k,39y,39c,39mが走査方向に並んで配置されている。
【0030】
各圧電素子31は、振動膜30の上に順に配置された、第1電極32、圧電膜33、及び、第2電極34を有する。
【0031】
図5、
図6に示すように、第1電極32は、振動膜30の圧力室26と対向する領域に形成されている。また、
図6に示すように、複数の圧電素子31の第1電極32は、圧電素子31間に配置された導電部35を介して繋がっている。言い換えれば、複数の第1電極32とそれらを繋ぐ導電部35によって、振動膜30の上面のほぼ全域を覆う共通電極36が構成されている。共通電極36は、例えば、白金(Pt)で形成されている。また、共通電極36の厚みは、例えば、0.1μmである。
【0032】
圧電膜33は、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電材料により形成される。あるいは、圧電膜33は、鉛が含有されていない非鉛系の圧電材料で形成されていてもよい。圧電膜33の厚みは、例えば、1.0〜2.0μmである。
【0033】
図3、
図4、
図6に示すように、本実施形態では、複数の圧電素子31の圧電膜33が搬送方向に繋がって、搬送方向に長い矩形状の圧電体37が構成されている。即ち、振動膜30を覆う共通電極36の上には、8つの圧力室列にそれぞれ対応した、圧電膜33からなる8つの圧電体37が配置されている。
【0034】
第2電極34は、圧電膜33の上面に配置されている。第2電極34は、圧力室26よりも一回り小さい矩形の平面形状を有し、圧力室26の中央部と重なっている。第1電極32とは違い、複数の圧電素子31の間で第2電極34は分離されている。つまり、第2電極34は、圧電素子31毎に個別に設けられた個別電極である。第2電極34は、例えば、イリジウム(Ir)や白金(Pt)で形成されている。第2電極34の厚みは、例えば、0.1μmである。
【0035】
図5、
図6に示すように、圧電アクチュエータ22は、さらに、保護膜40、絶縁膜41、配線42、及び、配線保護膜43を有する。
【0036】
図5に示すように、保護膜40は、第2電極34の中央部が配置された領域を除いて、圧電体37の表面を覆うように配置されている。保護膜40の主な目的の1つは、空気中の水分の圧電膜33への浸入防止である。保護膜40は、例えば、アルミナ(Al2O3)、酸化シリコン(SiOx)、酸化タンタル(TaOx)等の酸化物、あるいは、窒化シリコン(SiN)の窒化物などの、透水性の低い材料で形成される。
【0037】
保護膜40の上には、絶縁膜41が形成されている。絶縁膜41の材質は特に限定されないが、例えば、二酸化シリコン(SiO2)で形成される。この絶縁膜41は、第2電極34に接続される次述の配線42と、共通電極36との間の、絶縁性を高めるために設けられている。
【0038】
絶縁膜41の上には、複数の圧電素子31の第2電極34からそれぞれ引き出された複数の配線42が形成されている。配線42は、例えば、アルミニウム(Al)で形成されている。
図5に示すように、配線42の一端部は、圧電膜33の上の第2電極34の端部と重なる位置に配置され、保護膜40と絶縁膜41を貫通する貫通導電部48によって第2電極34と導通している。
【0039】
複数の圧電素子31にそれぞれ対応する複数の配線42は、左右に分かれて延びている。即ち、配線42の延びる方向(以下、配線延在方向という)がノズル配列方向と直交している。詳詳細には、
図3に示すように、4つの圧電素子群39のうち、右側2つの圧電素子群39k,39yを構成する圧電素子31からは、配線42が右方へ延び、左側2つの圧電素子群39c,39mを構成する圧電素子31からは、配線42が左方へ延びている。
【0040】
配線42の、第2電極34と反対側の端部には駆動接点46が設けられている。圧電アクチュエータ22の左端部及び右端部のそれぞれにおいて、複数の駆動接点46が搬送方向に一列に並んでいる。即ち、駆動接点46の配列方向(以下、接点配列方向ともいう)は、ノズル配列方向と平行である。本実施形態では、1色のノズル群27を構成するノズル24が、600dpi(=42μm)のピッチで配列されている。また、2色のノズル群27に対応する圧電素子31の配線42が左方又は右方に引き出さている。そのため、圧電アクチュエータ22の左端部及び右端部のそれぞれにおいて、複数の駆動接点46は、1つのノズル群27におけるノズル24の配列間隔のさらに半分、即ち、21μm程度の、非常に狭い間隔で配列されている。
【0041】
また、前後に一列に並ぶ複数の駆動接点46に対して、その配列方向の両側には2つのグランド接点47がそれぞれ配置されている。1つのグランド接点47は、1つの駆動接点46よりも接点面積が大きい。グランド接点47は、直下の保護膜40及び絶縁膜41を貫通する導通部49(
図10参照)を介して、共通電極36と接続されている。
【0042】
先にも触れたが、圧電アクチュエータ22の左端部及び右端部に配置された駆動接点46とグランド接点47は、保護部材23から露出している。また、圧電アクチュエータ22の左端部と右端部には、2枚のCOF50がそれぞれ接合される。駆動接点46は、COF50の個別接点54、個別配線52を介してドライバIC51と接続され、ドライバIC51から駆動接点46に駆動信号が供給される。グランド接点47は、COF50のグランド接続接点55と接続されることによって、グランド電位が付与される。圧電アクチュエータ22の駆動接点46とグランド接点47の構成の詳細、及び、これら接点46,47とCOF50側の接点54,55との電気的接続については、後で改めて説明する。
【0043】
図5に示すように、配線保護膜43は、複数の配線42を覆うように配置されている。配線保護膜43により、複数の配線42の間の絶縁性が高められている。また、配線保護膜43により、配線42を構成する配線材料(Al等)の酸化も抑制される。配線保護膜43は、例えば、窒化シリコン(SiNx)等で形成されている。
【0044】
尚、
図5、
図6に示すように、本実施形態では、第2電極34は、その周縁部を除いて保護膜40、絶縁膜41、配線保護膜43から露出している。即ち、保護膜40、絶縁膜41、配線保護膜43によって、圧電膜33の変形が阻害されにくい構造である。
【0045】
<圧電アクチュエータとCOFの接合部>
次に、圧電アクチュエータ22とCOF50の接合部の詳細について、
図5、
図7〜
図10を参照して説明する。
【0046】
先にも述べたが、圧電アクチュエータ22の左右方向端部には、前後に配列された複数の駆動接点46と、複数の駆動接点46の前後両側に配置された2つのグランド接点47が設けられている。一方、
図4に示すように、COF50の、圧電アクチュエータ22と接合される端部には、前後に配列された複数の個別接点54と、複数の個別接点54の前後両側に配置された2つのグランド接続接点55が設けられている。
【0047】
COF50の端部は、非導電性の熱硬化性接着剤によって圧電アクチュエータ22に接合される。この非導電性の接着剤としては、エポキシ樹脂を主成分とするものが一般に用いられる。接着剤60は、一般には、フィルム状(非導電性フィルム:NCP)、あるいは、ペースト状(非導電性ペースト:NCP)の形で使用される。
【0048】
圧電アクチュエータ22側の接点46,47と、COF50の接点54,55との間に接着剤60が配された状態で、接着剤60を加熱しながらCOF50を圧電アクチュエータ22に押し付ける。これにより、複数の駆動接点46と複数の個別接点54がそれぞれ接触し、また、2つのグランド接点47と2つのグランド接続接点55がそれぞれ接触した状態で、接着剤60が硬化する。以上より、圧電アクチュエータ22側の接点46,47とCOF50側の接点54,55の電気的接続が実現される。
【0049】
尚、グランド接点47とグランド接続接点55は、複数の圧電素子31の共通電極36と導通する接点である。複数の圧電素子31が同時に駆動されたときには、共通電極36には、一時的に大きな電流が流れることがある。その場合に、共通電極36に繋がる経路の長さの違いによって、複数の圧電素子31の間で、グランド接点47から共通電極36に至る経路における電圧降下の差が大きくなり、変位量の差も大きくなる。上記現象を抑制するためには、グランド接点47とグランド接続接点55の接続抵抗を小さく抑え、共通電極36の経路抵抗を極力小さくことが好ましい。この観点から、
図4、
図9に示すように、グランド接点47の接点面積は駆動接点46よりも大きい。即ち、グランド接点47の左右方向長さL0は駆動接点46の長さ(L1,L2)よりも長く、前後方向の幅W0も駆動接点の46の幅(W1,W2)よりも大きい。また、COF50側のグランド接続接点55の接点面積も個別接点54よりも大きい。
【0050】
また、本実施形態では、接着剤60による接点間の接合力を高めるため、圧電アクチュエータ22側の駆動接点46とグランド接点47のそれぞれの表面に凹凸部70,71が設けられている。
【0051】
まず、駆動接点46の凹凸部70について説明する。
図7〜
図10に示すように、駆動接点46は、第2電極34に繋がる配線42の先端部に設けられたベース層58と、ベース層58の上に配置された4つの凸部63を有する。4つの凸部63は、駆動接点46の配列方向と直交する左右方向において間隔を空けて並んで配置されている。また、左右方向に隣接する2つの凸部63の間には凹部64が形成されている。即ち、駆動接点46には、4つの凸部63と3つの凹部64とからなる、凹凸部70が形成されている。
【0052】
グランド接点47も、駆動接点46と同様に凹凸部71を有する。
図9、
図10に示すように、グランド接点47は、配線42と同じく絶縁膜41の上に形成されたベース層59と、ベース層59の上に配置された4つの凸部65を有する。ベース層59は、その下の保護膜40及び絶縁膜41を貫通する貫通導電部61を介して共通電極36と導通している。4つの凸部65は、左右方向において互いに間隔を空けて並んで配置されている。左右方向に隣接する2つの凸部65の間には凹部66が形成されている。即ち、グランド接点47には、4つの凸部65と3つの凹部66とからなる、凹凸部71が形成されている。
【0053】
駆動接点46に凹凸部70が形成されていると、駆動接点46とCOF50側の個別接点54とを接着剤60で接合したときに、
図8、
図10(a)のように接着剤60が凹部64内に入り込んだ状態で硬化する。これにより、駆動接点46と個別接点54の間の接合力が高まる。グランド接点47についても同様であり、
図10(b)のように凹部66内に接着剤60が入り込むことによって、グランド接点47とCOF50側のグランド接続接点55との接合力が高まる。
【0054】
尚、本実施形態では、駆動接点46のベース層58とグランド接点47のベース層59は、共に、配線42と同じ材料(例えば、アルミニウム(Al))で形成されている。一方、駆動接点46の凸部63とグランド接点47の凸部65は、配線42とは異なる材料(例えば、金(Au))で形成されている。後の製造工程の説明でも述べるが、配線42とベース層58,59は同じ工程で形成されるのに対して、凸部63、65は、配線42の形成工程とは別の工程で形成される。
【0055】
配線42などの他の膜の形成と一緒に凸部を形成する場合には、凸部の高さは、必然的に、上記膜の必要膜厚範囲内に制約されてしまう。これに対して、本実施形態では、他の膜形成の制約を受けずに凸部63,65の高さを自由に設定できる。凸部63,65を高くすることで、接着剤60の層に凸部63,65が深く押し込まれ、凸部63,65の周囲に多くの接着剤60が付着した構造となるため、接合力が高まる。
【0056】
ところで、前後方向に並ぶ複数の接点46,47と接合されたCOF50は、様々な要因によって収縮し、この収縮によって接点間の接合部に力が作用する。例えば、後の製造工程の説明でも述べるが、COF50の接合時には、接着剤60を加熱硬化させるためにCOF50は加熱される。この加熱時に、ポリイミドフィルム等からなるCOF50の基板56が大きく熱収縮する。また、上記の製造段階ほどではないが、通常のプリンタ使用時においても、インクジェットヘッド4周囲の環境温度や環境湿度の変化によっても、OCF50の基板56が収縮する。COF50が収縮したときには、COF50の縁に近い部分ほど収縮による変位が大きくなる。従って、COF50の端部に位置する接合部では、中央部よりも大きな力が作用する。
【0057】
そこで、本実施形態では、前後方向の端部に位置する接合部の接合力を高めるため、前後に並ぶ複数の接点46,47のうち、中央部に位置する接点と端部に位置する接点とで凹凸部の形状が異なっている。具体的には、端部に位置する接点では、中央部に位置する接点と比べて、凹部の面積が大きくなっている。凹部の面積が大きいほど、接点に対する接着剤60の付着面積が大きくなり、接合力が高くなる。
【0058】
まず、複数の駆動接点46のうち、前後方向中央部に配置された駆動接点46と、前後方向の端部に配置された駆動接点46との間で、凹凸部70の形状が異なっている。尚、以下の説明において、中央部の駆動接点46と端部の駆動接点46を区別する場合は、中央部に配置された駆動接点46を「駆動接点461」と呼び、端部に配置された駆動接点46を「駆動接点462」と呼ぶ。
【0059】
図7に示すように、中央側の駆動接点461において、凸部631の左右方向の長さをLa1とし、凹部641の左右方向の長さ、即ち、凸部631の配列間隔をLb1とする。また、
図9に示すように、端側の駆動接点462においては、凸部632の左右方向の長さをLa2とし、凹部642の左右方向の長さをLb2とする。ここで、端側の凹部642の長さLb2は、中央側の凹部641の長さLb1よりも長くなっている。尚、前後方向については、凸部631と凸部632の幅は等しく、凹部641と凹部642の幅も等しい。以上より、端側の駆動接点462の凹部642の面積が、中央側の駆動接点461の凹部641の面積よりも大きくなっている。
【0060】
また、凸部631の長さLa1と凸部632の長さLa2は同じである。即ち、凸部631と凸部632とで上面の面積は同じである。凸部63の面積が異なっていると、駆動接点46と個別接点54の間の接続抵抗も異なってくる。そして、複数の圧電素子31の間で上記接続抵抗が異なっていると、接続抵抗に応じて第2電極34に印加される駆動信号の波形が変化し、複数の圧電素子31の間の駆動特性が異なってしまう。この観点からは、中央側の駆動接点461と端側の駆動接点462との間で、凸部63の面積は同じであることが好ましい。
【0061】
凹部642の左右方向長さが凹部641よりも長くなる一方で、凸部63の左右方向長さについては同じであることから、端側の駆動接点462の左右方向長さL2は、中央側の駆動接点461の長さL1よりも長くなっている。尚、本実施形態では駆動接点46のベース層58と配線42が一体であるため、駆動接点46の長さを規定するには、ベース層58と配線42との境界を定める必要がある。ここでは、
図8に示すように、COF50の個別接点54の端の位置を、駆動接点46と配線42の境界Bと定める。つまり、
図8において、個別接点54の左端よりも右側に配置されている部分が駆動接点46となる。
【0062】
また、前後方向については、中央側の駆動接点461の幅W1と端側の駆動接点462の幅W2は等しい。
【0063】
さらに、本実施形態では、複数の駆動接点46と、駆動接点46よりも前後方向外側に位置するグランド接点47との間でも、凹凸部の形状が異なっている。
【0064】
図9、
図10に示すように、グランド接点47の凹部66の左右方向長さLb0は、駆動接点46の凹部64の左右方向長さ(Lb1,Lb2)よりも長くなっている。また、グランド接点47の凹部66の前後方向の幅は、駆動接点46の凹部の幅よりも大きい。従って、グランド接点47の凹部66の面積は、駆動接点46の凹部64の面積よりも大きい。
【0065】
また、グランド接点47の凸部65の左右方向長さLa0も、駆動接点46の凸部63の長さ(La1,La2)よりも長くなっている。即ち、グランド接点47の凸部65の上面の面積は、駆動接点46の凸部63よりも大きい。これにより、グランド接点47とグランド接続接点55の接続抵抗が小さくなり、共通電極36に繋がる経路の抵抗を小さく抑えることができる。
【0066】
次に、上述したインクジェットヘッド4の製造工程について、
図11、
図12を参照して説明する。以下の説明項目(a)〜(i)と、
図11,
図12の(a)〜(i)はそれぞれ対応している。
【0067】
(a)流路部材21となるシリコン単結晶基板の表面に、酸化処理又は窒化処理を行って振動膜30を形成する。
(b)振動膜30の上に、第1電極32(共通電極36)、圧電膜33、及び、第2電極34を、それぞれ成膜とエッチングで形成し、圧電素子31を形成する。
(c)圧電膜33を覆うように、保護膜40及び絶縁膜41を成膜し、エッチングでパターニングする。
【0068】
(d)絶縁膜41の上に、アルミニウム(Al)等からなる配線42を形成する。具体的には、絶縁膜41の上にAl膜を成膜してから、このAl膜をエッチングでパターニングすることによって行う。また、上記のパターニングでは、配線42とともに駆動接点46のベース層58も形成する。また、
図11では示されていないが、グランド接点47のベース層59(
図9、
図10参照)も形成する。
(e)配線42の上に配線保護膜43を成膜し、パターニングする。
(f)ベース層58の上に、金(Au)等からなる凸部63をメッキで形成する。また、
図11では示されていないが、ベース層59の上に、同じく金(Au)等からなる凸部65をメッキで形成する。これにより、凸部63と凹部64を有する駆動接点46と、凸部65と凹部66を有するグランド接点47(
図9、
図10参照)が形成される。
【0069】
(g)圧電アクチュエータ22の上に、圧電素子31を覆うように保護部材23を接合する。
(h)流路部材21を研磨によって適切な厚みまで薄くした後、エッチングで圧力室26を形成する。
【0070】
(i)圧電アクチュエータ22の駆動接点46及びグランド接点47が配置された端部に、接着剤60でCOF50を接合する。具体的には、まず、圧電アクチュエータ22とCOF50との間に、接着剤60(NCF又はNCP)を配置する。また、圧電アクチュエータ22の端部の前後方向中央部において、アクチュエータ22とCOF50の位置を合わせる。この状態で、COF50の上面に当てたヒータプレート67によって、COF50を押し付ける。
【0071】
ヒータプレート67によってCOF50が押し付けられると、圧電アクチュエータ22側の接点46,47と、COF50側の接点54,55の間で接着剤60が加熱されながら圧縮される。これにより、
図8、
図10に示すように、接着剤60が外に押し出されるとともに、圧電アクチュエータ22側の接点46,47の凸部63,65とCOF50側の接点54,55とが接触する。また、接着剤60の一部は凹部64,66内に入り込む。この状態で接着剤60が硬化することにより、圧電アクチュエータ22側の接点46,47とCOF50側の接点54,55がそれぞれ導通した状態で、COF50が圧電アクチュエータ22に機械的に接合される。
【0072】
ここで、本実施形態では、前後方向に並ぶ複数の接点46,47のうちの、中央側の接点と端側の接点の間で、凹凸部の形状が異なっている。具体的には、
図7〜
図10に示すように、複数の駆動接点46のうちの、端側の駆動接点462の凹部642の面積が、中央側の駆動接点461の凹部641の面積よりも大きくなっている。また、駆動接点46よりも外側に位置するグランド接点47の凹部66の面積は、駆動接点46の凹部64の面積よりも大きくなっている。このように、前後方向の端部に配置された接点の凹部が大きくなっていることで、これらの凹部内に接着剤60が流れ込んだときの接合力が高くなる。従って、接合時の加熱などによりCOF50が収縮したときに、特に大きな力が作用しやすい端部において、COF50の剥離や位置ずれを防止できる。
【0073】
また、特に、本実施形態では、圧電アクチュエータ22の接点46,47とCOF50の接点54,55とが、非導電性の接着剤60で接合されている。非導電性接着剤による接合では、アクチュエータ側22の接点46,47とCOF50側の接点54,55とが確実に接触している必要がある。つまり、COF50の剥離が発生すると、それは接続不良に直結する。この観点から、特に剥離等が生じやすい端部において、接点間の接合力が高くなる凹凸部を採用することが好ましいと言える。
【0074】
図8、
図10に示すように、接点46,47の凸部63,65は、接点配列方向と直交する左右方向に並んでいる。この構成では、接点46,47に凸部63,65を設けつつも、接点46,47の配列方向の幅を小さくすることができる。特に、駆動接点46の幅を小さくすることで、駆動接点46の配列間隔を小さくすることができる。
【0075】
上記の構成において、前後方向中央部の駆動接点461と端部の駆動接点462との間で凹部64の面積を異ならせる場合、駆動接点46の前後方向の幅が大きくならないように、凹部64の左右方向の長さを異ならせるのがよい。また、本実施形態では、中央側の駆動接点461と端側の駆動接点462とで、接点自体の前後方向の幅も同じである。これにより、端側の駆動接点462の凹部642の面積を大きくしつつも、全ての駆動接点46について幅を小さくし、駆動接点46の配列間隔を小さくすることができる。
【0076】
また、本実施形態では、端側の駆動接点462の凹部642の左右方向長さが長くなるのに伴って、駆動接点462の左右方向長さが、中央側の駆動接点461よりも長くなっている。別の言い方をすれば、凸部63については、中央側の駆動接点46と端側の駆動接点46とで左右方向の長さが同じになっている。これにより、先にも述べたように、複数の圧電素子31の間での、駆動接点46とCOF50側の個別接点54との接続抵抗の差を小さくできる。
【0077】
凹凸部は、圧電アクチュエータ側22の接点46,47とCOF50側の接点54,55の何れに設けられてもよいが、本実施形態では、特に、圧電アクチュエータ22側の接点46,47に凹凸部が形成されている。この場合は、圧電アクチュエータ22を形成する一連の成膜・パターニング工程の中で凹凸部も一緒に作り込むことができ、凹凸部の形成が容易である。
【0078】
また、本実施形態では、600dpiのノズル群27の2つ分の駆動接点46が、圧電アクチュエータ22の端部に、21μmという非常に小さな間隔で配列されている。これに対応して、COF50の個別接点54も同じ間隔で配列されている。この場合に、駆動接点46又は個別接点54に複数の凸部を形成しようとすると、接点のパターニング以上の高精細なパターニングが必要となる。しかし、COF50上のパターニングに関する現在の技術水準では、21μmよりもさらに小さなファインピッチのパターニングを行うことは難しい。それに比べると、シリコン基板上に上記のファインピッチを形成する技術は確立されていることから、圧電アクチュエータ22側の接点46,47に凹凸部を形成する方が容易である。
【0079】
以上説明した実施形態において、インクジェットヘッド4が本発明の「液体吐出装置」に相当する。圧電アクチュエータ22が本発明の「アクチュエータ」に相当する。前後方向、即ち、ノズル配列方向及び接点配列方向が、本発明の「第1方向」に相当する。左右方向、即ち、接点46が配置される圧電アクチュエータ22の上面と平行で、且つ、接点配列方向と直交する配線延在方向が、本発明の「第2方向」に相当する。CCOF50が本発明の「配線部材」に相当する。圧電アクチュエータ22側の駆動接点46とグランド接点47が本発明の「第1接点」に相当する。駆動接点46が本発明の「個別接点」、グランド接続接点55が本発明の「共通電極接点」に相当する。COF50側の個別接点54とグランド接続接点55が本発明の「第2接点」に相当する。
【0080】
本発明の「中央側接点」及び「端側接点」については、次の2通りの捉え方がある。複数の駆動接点46に着目すれば、複数の駆動接点46のうちの、前後方向中央部に位置する駆動接点461が本発明の「中央側接点」に相当し、端部に位置する駆動接点462が本発明の「端側接点」に相当する。一方、駆動接点46とグランド接点47の関係に着目すれば、駆動接点461,462を含む複数の駆動接点46のそれぞれが、本発明の「中央側接点」に相当し、複数の駆動接点46よりも端側に位置するグランド接点47が、本発明の「端側接点」に相当する。
【0081】
次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0082】
1]前記実施形態では、圧電アクチュエータ22の駆動接点46とグランド接点47の両方において、凹凸部が形成されているが、駆動接点46にのみ凹凸部が形成されていてもよい。グランド接点47は、接点面積が大きいためにその周囲を取り囲む接着剤60の量が多く、凹凸部が無くても高い接合力が実現される場合がある。また、グランド接点47は複数存在するため、万が一、1つのグランド接点47においてCOF50の剥離が生じても、他のグランド接点47において導通が確保されていれば、圧電素子31の駆動に大きな支障は生じない。
【0083】
2]前記実施形態では、圧電膜33の上に、保護膜40、絶縁膜41、及び、配線保護膜43の3層の絶縁性の膜が形成されているが、これらの膜は適宜省略可能である。例えば、第2電極34に接続される配線が、金(Au)などの安定性の高い材料で形成されている場合は、絶縁膜41や保護膜43が設けられていなくてもよい。
【0084】
3]1つの接点に設けられる凸部、凹部の数は限定されない。但し、凹部から逆に接着剤60が流れ出さないようにするためには、1つの凹部を両側から挟むように、少なくとも2つの凸部が設けられる必要がある。
【0085】
4]接点46,47に形成される凹凸部の形状は、前記実施形態で挙げたものには限られない。例えば、次のような構成を採用することができる。
【0086】
(1)
図13に示すように、駆動接点46Aが、ベース層58の上に間隔を空けて配置された4つの中間層80を有する。4つの凸部63Aは、4つの中間層80の上にそれぞれ配置されている。この構成では、各凸部63Aとベース層58との間に中間層80が介在することにより、凸部63Aの実質的な高さを高くすることができる。凸部63Aの高さが高くなることにより、凸部63Aが接着剤60に深く食い込み、また、凸部63Aの側面と接着剤60との接触面積が大きくなることから、接合力が高まる。
【0087】
(2)前記実施形態では、駆動接点46のベース層58の上に別の材料により凸部63を形成しているが、ベース層58の上面にエッチング等で凹凸部を形成することも可能である。但し、ベース層58の厚みが薄い場合には、大きな凹凸部を形成することは難しい。その場合には、接点よりも下側にある、一定以上の厚みを有する別の膜に凹凸面を形成し、その上に接点を配置することによって、接点に凹凸部を形成してもよい。この場合は、接点の厚みが小さい場合でも、接点に大きな凹凸部を形成することができる。
【0088】
例えば、
図14(a)では、圧電素子31の圧電膜33(
図5、
図6参照)と同じ材料で形成された圧電部分81が、振動膜30の上において、圧電アクチュエータ22Bの、COF50との接合領域まで延びている。圧電部分81は、圧電素子31の圧電膜33と一緒に成膜されるものである。圧電素子31を機能させるために圧電膜33をある程度の厚みとする必要があることから、圧電部分81も一定以上の厚み(例えば、1μm)を有する。従って、圧電部分81にある程度の大きさの凹凸面81aを形成することができる。そこで、圧電部分81の上記接合領域に配置された部分にエッチング等で凹凸面81aが形成され、この凹凸面81aを覆うように駆動接点46Bが配置されている。これにより、駆動接点46Bには凸部63Bと凹部64Bとが形成されている。
【0089】
また、圧電素子が配置される膜である振動膜に凹凸面を形成してもよい。
図14(b)では、振動膜30Cが、圧電アクチュエータ22Cの、COF50との接合領域まで延びている。振動膜30Cは、圧電素子の変形によって撓む膜であり、撓みが繰り返し生じても簡単に破損することがないように、ある程度の厚み(例えば、1μm)となっている。従って、振動膜30Cについても、ある程度の大きさの凹凸面30Aaを形成可能である。そこで、振動膜30Cの上記接合領域に配置された部分にエッチングで凹凸面30Aaが形成され、上記凹凸面30Aaを覆うように駆動接点46Cが配置されている。これにより、駆動接点46Cには凸部63Cと凹部64Cとが形成されている。
【0090】
5]前記実施形態では、
図7、
図9のように、中央側の駆動接点461と端側の駆動接点462とで、凸部63の面積(前後方向の幅)が同じとなっているが、下記理由により、凸部の面積を異ならせてもよい。
【0091】
複数の圧電素子31を有する圧電アクチュエータにおいて、圧電素子31の第1電極32とグランド接点47との距離が遠いほど、共通電極36に繋がる経路の抵抗が大きくなり、この経路での電圧降下も大きくなる。このことは、圧電素子31とグランド接点47との距離によって、圧電素子31の駆動時における放電特性が異なることを意味し、素子の特性差につながる。そこで、上記の特性差の要因となる共通電極36の経路抵抗の差を、個別電極である第2電極34に至る経路の抵抗で調整し、圧電素子31に接続される経路全体の合成抵抗での差を小さくする。即ち、第2電極34に繋がる駆動接点の間で、凸部の面積を異ならせることにより、第2電極34に至る経路の抵抗を意図的に異ならせる。
【0092】
具体的には、複数の駆動接点46Dのうち、対応する圧電素子31とグランド接点47までの電気的経路が長い接点では、凸部の面積を大きくして第1電極34に至る経路の抵抗を小さくする。
【0093】
例えば、
図2〜
図4のように、グランド接点47が前後方向の端に位置している場合、中央側の駆動接点に対応する圧電素子31とグランド接点47までの電気的経路が、端側の駆動接点に対応する圧電素子31とグランド接点47までの電気的経路よりも長くなっている。そこで、この場合には、
図15に示すように、中央側の駆動接点461Dの凸部631Dの上面の面積を、端側の駆動接点462Dの凸部632Dの面積よりも大きくする。尚、
図15において、端側の駆動接点462Dが、本発明の「第1個別接点」に相当し、中央側の駆動接点461Dが、本発明の「第2個別接点」に相当する。
【0094】
また、前記電気的経路が長いものほど、凸部の面積が順に大きくなっていてもよい。
図16では、複数の駆動接点46Eについて、前後方向における中央側に位置するものほど、凸部63Eの上面の面積が大きくなっている。
【0095】
6]前記実施形態では、中央側の接点と端側の接点の間で、凹部の左右方向の長さが異なっているが、凹部の前後方向の幅が異なっていてもよい。
【0096】
図17では、各駆動接点46Fの凸部63Fと凹部64Fが共に、前後方向に接点幅全域に延びている。つまり、前後方向における凸部63Fの幅及び凹部64Fの幅が、駆動接点46Fの幅に等しい。また、中央側の駆動接点461Fと端側の駆動接点462Fとで左右方向の接点長さは同じであり、左右方向における凸部63Fの長さと凹部64Fの長さも、中央側と端側で同じである。その上で、端側の駆動接点462Fの凹部642Fの前後方向の幅(=接点幅W2)が、中央側の駆動接点461Fの凹部641Fの前後方向の幅(=接点幅W1)よりも大きくなっている。
【0097】
端側の駆動接点462Fにおいて、凹部642Fの前後方向の幅を大きくすることによっても、凹部642Fの面積は大きくなり、この凹部642Fに接着剤が流れ込んだときの接合力が高くなる。また、前記実施形態のように、左右方向(接点の長さ方向)に凹部を長くするよりも、
図17のように、接点配列方向に凹部を大きくする方が、COF50を引き剥がす方向の力に対する強度が高まる。
【0098】
また、
図17では、端側の駆動接点462Fと中央側の駆動接点461Fとで、凸部63F及び凹部64Fの左右方向長さが同じで、凸部63F及び凹部64Fの位置も同じである。つまり、端側の駆動接点462Fと中央側の駆動接点461Fとで左右方向における凹凸のパターンが同じである。従って、全体のパターンが単純なものとなるため、エッチングやメッキでパターンを形成するのが容易になり、パターンの形成精度も高くなる。さらに、端側の駆動接点462Fと中央側の駆動接点461Fとで、左右方向の接点長さも同じであり、接点のパターニングがさらに容易になる。
【0099】
図17の形態の変形例として、
図18では、複数の駆動接点46G(461G,462G)が配置される、圧電アクチュエータ22Gの端部に、前後方向に連続的に延びるアクチュエータ凸部83とアクチュエータ凹部84が形成されている。アクチュエータ凸部83とアクチュエータ凹部84は、例えば、上述の
図14(a)、(b)と同様の考えで、圧電膜や振動膜に前後方向に長い溝を形成することによって実現できる。アクチュエータ凸部83とアクチュエータ凹部84の上に複数の駆動接点46Gが形成されることで、各駆動接点46Gに凸部63Gと凹部64Gが形成される。この形態では、連続して延びるアクチュエータ凸部83とアクチュエータ凹部84を形成してから、その上に複数の駆動接点46Gを形成するだけで、各接点46Gに凸部63Gと凹部64Gを簡単に形成できる。また、各接点毎に凸部と凹部を形成する場合と比べて、精度よく凹凸パターンを形成できる。
【0100】
7]
図19に示すように、駆動接点46Hにおいて、接点の配列方向である前後方向に複数の凸部63Hが並んでいてもよい。この場合には、端側の駆動接点46Hと中央側の駆動接点46Hとで、凸部63Hの大きさや間隔を異ならせて、凹部の面積を異ならせればよい。但し、この形態では、接点幅が大きくなるのを抑えるために、凸部63H及び凹部64Hの左右方向の幅をあまり大きくすることはできない。そのため、前記実施形態の
図7,
図9や、先の形態の
図17の構成と比べると、COFの剥離に対する強度はやや劣る。
【0101】
8]
図20に示すように、駆動接点46Iのうちの端側の駆動接点462Iと中央側の駆動接点461Iで、凸部63Iの数が異なり、凹部64Iの数も異なっていてもよい。
図20では、端側の凹部642Iの数が3つで、中央側の凹部641Iの数(2つ)よりも多いものの、端側と中央側とで凹部64Iの底面の総和自体は同じである。しかし、凹部64Iの数が多いと、その分、接着剤が凸部63Iの側面にも付着して接触面積が増えることから、凹部64Iの数が多いほど接合力は高くなる。
【0102】
9]端側の接点と中央側の接点とで、凸部及び凹部の位置を異ならせてもよい。例えば、
図21では、中央側の駆動接点461Jと端側の駆動接点462Jのそれぞれに、同じ形状の凸部63Jが8つ形成されている。8つの凸部63Jは、左右方向に2列に配列されている。8つの凸部63Jの左右方向における間には、6つの凹部64Jが形成されている。但し、中央側の駆動接点461Jでは、2列の間で凸部63Jの左右方向位置が一致しているのに対して、端側の駆動接点462Jでは、2列の間で凸部63Jの位置がずれている。これにより、中央側の駆動接点461Jと端側の駆動接点462Jとの間で、6つの凹部64Jの位置もずれることになる。
【0103】
上記構成では、中央側と端側で、凹部64Jの面積が同じでその数も同じである。しかし、端側では8つの凸部63Jが千鳥状に配列されることで、8つの凸部63Jの間に、6つの凹部64Jを含む複雑形状の空間が形成される。そのため、この空間に接着剤が入り込むことによって接合力が高くなる。
【0104】
10]前記実施形態では、
図2〜
図4のように、複数の駆動接点46が同じ姿勢で前後方向に配列されているが、
図22の圧電アクチュエータ22Kでは、複数の駆動接点46Kが、左右方向の一方側(図の右側)に向けて放射状に広がるように配置されている。また、COF50Kの複数の個別接点54Kも、左右方向の前記一方側に向けて、放射状に広がるように配置されている。
【0105】
COFの加熱接合時に、接着剤が硬化する前に、COFの収縮によって、COF側の個別接点の位置が駆動接点に対して全体的にずれる場合がある。この点、
図22のように、駆動接点46Kと個別接点54が共に、同じ方向に広がる放射状に配置されていると、COF50Kの収縮によって複数の個別接点54Kの位置が変化しても、COF50Kの左右方向位置を微調整することで、複数の個別接点54Kを複数の駆動接点46Kとそれぞれ重ならせることができる。
【0106】
11]
図23のように、圧電アクチュエータの駆動接点46Lと接続される、COF50Lの個別接点54Lに、凸部63Lと凹部64Lが形成されてもよい。
【0107】
12]前記実施形態では、圧電アクチュエータとCOFとが非導電性接着剤で接合されているが、導電粒子を含む導電性接着剤(ACF又はACP)で接合されてもよい。
【0108】
13]1つのインクジェットヘッド4における、駆動接点、及び、グランド接点の配置は、前記実施形態の構成(
図2〜
図4参照)には限られない。例えば、全ての圧電素子の配線が一方向に引き出され、圧電アクチュエータの一端部に全ての駆動接点が一列に配列されてもよい。また、全ての圧電素子の配線が中央に引き出され、圧電アクチュエータの中央部において全ての駆動接点が一列に配列されてもよい。また、グランド接点の数は2つに限られず、1つであってもよいし、3つ以上あってもよい。
【0109】
以上説明した実施形態は、本発明を、記録用紙にインクを吐出して画像等を印刷するインクジェットヘッドに適用したものであるが、本発明は、液体吐出以外の用途で用いられるアクチュエータ装置全般にも適用可能である。また、アクチュエータは、複数の圧電素子からなる圧電アクチュエータにも限られない。例えば、駆動素子として、電流を流したときの発熱を利用して対象を駆動する、発熱体を有するアクチュエータであってもよい。