(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記コアの一端側の周面全周と前記第2の樹脂部材の内面との間に密着配置され、前記コアと前記第2の樹脂部材との隙間を封じる円環状の第3のシール部材を備えた請求項1または請求項2に記載の電磁弁装置。
前記コアの軸方向一端側に外周側に突出したフランジ部を備え、前記ボビン体の一端側の表面と、前記フランジ部との間に第3のシール部材が配置されている請求項3に記載の電磁弁装置。
前記ケースの内径が、軸方向一端側が他端側に対し小径となっており、前記第1のシール部材がこの小径部の内面に密着している請求項1から請求項4のいずれかに記載の電磁弁装置。
前記コアの外径が、軸方向他端側が小径となっており、前記第2のシール部材がこの小径部の外周部に配置されている請求項1から請求項5のいずれかにに記載の電磁弁装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動変速機に使用されるオン・オフタイプの電磁弁装置は、油中で使用されることを前提としているため、ケースと樹脂部材との間に隙間が存在し、装置内部の油の漏洩、及び外部からの油や水などの液体の浸入を防ぐ構造になっていない。また、従来技術の電磁弁装置は、樹脂製のボビン体に金属製のコアをインサート成型して固定していたため、インサートされる樹脂部材と金属部材の界面から、油の漏洩や外部からの油や水の浸入がある。そのため、大気中などの防油性や防水性を要求される環境においては使用できず、用途が自動変速機に限定される問題がある。
【0006】
本発明は、ケース内部からの油漏れや外部からの油や水の浸入がなく、防油性及び防水性に優れ、大気中など様々な環境で使用することができる電磁弁装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電磁弁装置は、次のような構成を有することを特徴とする。
(1)軸方向一端側から他端側に延びる貫通孔を有する円筒状のコア。
(2)前記貫通孔内に軸方向に移動可能に挿入され、軸方向他端側が前記コアから突出するプランジャピン。
(3)内側に前記コアを支持して軸方向に延びる貫通空間と、外周面に前記貫通空間の中心軸を基準として周方向に延びる凹溝部と、を有する円筒状ボビン体を備えた第1の樹脂部材。
(4)前記ボビン体の凹溝部に巻かれたコイル。
(5)前記コイルの周面、前記ボビン体の周面及び前記コアの他端側の周面を覆う第2の樹脂部材。
(6)前記第2の樹脂部材を覆い、内部に前記コア、プランジャピン、ボビン体及びコイルを収容し、軸方向他端側が開口した円筒状のケース。
(7)前記第2の樹脂部材の周面全周に設けられた周方向の溝と、この溝に嵌め込まれて前記第2の樹脂部材と前記ケースとの隙間を封じる円環状の第1のシール部材。
(8)前記コアの他端側の周面全周に設けられた周方向の溝と、この溝に嵌め込まれて前記コアと前記ボビン体との隙間を封じる円環状の第2のシール部材。
【0008】
本発明において、以下の構成とすると良い。
(1)前記第1の樹脂部材が、前記ケースの軸方向他端側の開口部から突出して設けられたノズル部を備え、
前記ノズル部の内部に軸方向に延びる中空部が設けられ、
前記ノズル部の中空部内に、前記コアの軸方向他端側が嵌め込まれ、
前記ノズル部の中空部の内周と前記コアの軸方向他端側の外周の間に前記第2のシール部材が配置される。
(2)前記コアの一端側の周面全周と前記第2の樹脂部材の内面との間に密着配置され、前記コアと前記第2の樹脂部材との隙間を封じる円環状の第3のシール部材を備える。
(3)前記コアの軸方向一端側に外周側に突出したフランジ部を備え、前記ボビン体の一端側の表面と、前記フランジ部との間に第3のシール部材が配置される。
(4)前記ケースの内径が、軸方向一端側が他端側に対し小径となっており、前記第1のシール部材がこの小径部の内面に密着する。
(5)前記コアの外径が、軸方向他端側が小径となっており、前記第2のシール部材がこの小径部の外周部に配置される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ケース内面と樹脂部材の隙間を塞ぐ第1のシール部材11と、コアと樹脂製ボビン体の境界面を塞ぐ第2のシール部材12とにより、電磁弁内部の油をケース外に漏らすことを効果的に防止することが可能になり、漏油性及び防水性に優れた電磁弁装置を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[1.第1実施形態]
[1−1.構成]
本発明の第1実施形態について、
図1及び
図2を参照して説明する。本実施形態において軸とは、円筒状コア1の長手方向に沿った中心軸をいい、単に周方向あるいは軸方向と言った場合は、中心軸の周方向あるいは中心軸の軸方向を示す。軸方向一端側が図中上方を、軸方向他端側が図中下方を示す。
【0012】
本実施形態の電磁弁装置は、軸方向一端側から他端側に延びる貫通孔1aを有する円筒状のコア1を備える。コア1の貫通孔1a内には、軸方向に移動可能にプランジャピン2が挿入される。プランジャピン2の軸方向他端側がコア1から突出する。コア1の軸方向一端側には、コイル5の励磁により軸方向他端側に吸着される吸着プレート2aが固定され、この吸着プレート2aの中心に、プランジャピン2の軸方向一端側が取り付けられている。
【0013】
コア1の外側には、円筒状のボビン体4を備えた第1の樹脂部材3が設けられる。ボビン体4は、その中心部に軸方向に延びる貫通空間4aを有し、この貫通空間4aの内側にコア1が支持される。ボビン体4の外周面には、貫通空間4aの中心軸を基準として周方向に延びる凹溝部4bが設けられる。この凹溝部4bにコイル5が巻かれる。第1の樹脂部材3には、ケース8の軸方向他端側の開口部から突出してノズル部6が設けられる。ノズル部6の内部には軸方向一端側から他端側に向かって軸方向に延びる中空部6aが設けられ、この中空部6a内の軸方向一端側には、コア1の軸方向他端側が嵌め込まれる。
【0014】
コイル5の周面、ボビン体4の周面及びコア1の他端側の周面外側には、これらを覆う第2の樹脂部材7が設けられる。第2の樹脂部材7の外側には、軸方向他端側が開口した円筒状のケース8が設けられる。ケース8は、開口部である軸方向他端側の外径が大きく、底側である軸方向一端側の外径が一段小さくなっている。ケース8は、第2の樹脂部材7を覆い、内部にコア1、プランジャピン2、ボビン体4及びコイル5を収容する。
【0015】
ケース8の開口部には、開口部を塞ぐように円形の金属板9が嵌め込まれる。金属板9の中央にはコア1の軸方向他端側を挿入する開口部が設けられ、この開口部の軸方向一端側の縁に、コア1の軸方向他端側の外周に設けられた段部8aが当たることで、コア1と金属板9が位置決めされる。金属板9における開口部の周囲には、等間隔で複数の穴が設けられ、この穴内に樹脂が充填された状態で、金属板9は第1の樹脂部材3にインサート成型により固定される。
【0016】
金属板9の外周部は第1の樹脂部材3および第2の樹脂部材7の外周面よりも周方向外側にフランジ状に突出する。ケース8の開口部の内周面には、金属板9の外周が入り込む段部8aが設けられ、ケース8の開口部の縁が金属板9の外周を抱え込むように加締められ、ケース8と金属板9が固定される。
【0017】
第2の樹脂部材7の周面全周には、周方向に延びる溝10が設けられる。この溝10内には、第2の樹脂部材7とケース8との隙間を封じる円環状の第1のシール部材11が嵌め込まれる。ケース8の内径が、軸方向一端側が他端側に対し小径となっており、第1のシール部材11がこの小径部の内面に密着する。第1のシール部材11としては、例えば、O−リングが使用できるが、他の形状のシール部材であっても良い。後述する第2のシール部材12および第3のシール部材13も同様である。
【0018】
コア1の他端側の外周面の全周には、周方向に延びる溝10が設けられる。この溝10内には、円環状の第2のシール部材12が嵌め込まれる。コア1の外径は軸方向他端側が小径となっており、この小径部の外周部に第2のシール部材12が配置される。第2のシール部材12は、ノズル部6の中空部6aの内周とコア1の軸方向他端側の外周との間に密着して配置され、コア1とボビン体4との隙間を封じる。
【0019】
コア1の軸方向一端側の周面全周には、外周側に突出したフランジ部1bが設けられる。このフランジ部1bの軸方向他端側の表面と、第2の樹脂部材7に設けられたボビン体4の一端側表面との間に、円環状の第3のシール部材13が配置される。この第3のシール部材13は、コア1と第2の樹脂部材7との隙間を封じる。
【0020】
ノズル部6は、内部に軸方向に繋がる中空部6aを有する略円筒状である。ノズル部6の軸方向一端側には、プランジャピン2を挿入するピン受入部6bが中空部6aに設けられる。ノズル部6には、中空部6aと連通する第1ポート6cと第2ポート6dが設けられる。ノズル部6の中空部6aの軸方向他端側には、プランジャピン2によって駆動されて第1ポート6cと第2ポート6d間を開閉する球状の弁体6eが収容される。弁体6eは、中空部6a内に挿入されたコイルばね6fによって軸方向一端側に押圧される。コイルばね6fに抗してコイル5が励磁され、プランジャピン2が下方に移動されると弁体6eが軸方向他端側に移動し、弁が解放される。
本発明の電磁弁装置は、次のような構成を有することを特徴とする。(1)磁性材から構成された有底筒状のケースであって、軸方向一方側が開口し、この開口に臨む周縁が内側に折り曲げられた加締め部を有するケースと、(2)ケースの内部に筒状ケースと同軸に配置され、軸方向一方側から他方側に貫通する貫通穴を有し、両端が開口する筒状のコイルボビンと、(3)前記コイルボビンの外周に巻かれたコイルと、(4)磁性材から構成され、前記コイルボビンの内側に前記コイルボビンと同軸に配置され、軸方向に貫通する貫通穴を有する筒状のステータコアと、(5)磁性材から構成され、前記貫通穴の内部において、前記ステータコアと同軸に且つ軸方向に移動可能に配置されたプランジャと、(6)磁性材から構成され、前記ケースの底面と前記ステータコアとの間に配置される円環状コアと、(7)前記コイルの励磁により前記プランジャの軸方向移動により開閉動作する弁と、(8)前記円環状コア及び前記ステータコアが、前記ケースの底部と前記加締め部との間に挟み込まれて固定され、(9)更に、前記円環状コアにおける前記ステータコアに向き合う面には、前記ステータコアの端部が係合する段部が設けられ、(10)前記円環状コアは、前記段部に係合するステータコアの端部により径方向の位置決めがなされている。
【0021】
ノズル部6の軸方向他端側の外径は、金属板9から軸方向他端側で1段小径となっており、その小径部よりも軸方向他端側で更に1段小径となっている。2段階に小径となったノズル部6の各段の外周には、電磁弁装置を自動変速機のバルブボディなどに取り付けた場合に、ノズル部6とバルブボディの密封性を確保するO−リングなどのシール部材6hが、それぞれ設けられる。
【0022】
[1−2.作用]
(1)電磁弁装置の製作方法
本実施形態の電磁弁装置を製作するには、次のようにする。
【0023】
(a) 第1の樹脂部材3に金属板9をインサート成型し、両者を固定した後、第1の樹脂部材3に設けられたボビン体4の外周の凹溝部4bにコイル5を巻き付ける。
【0024】
(b) モールド成形法により、第2の樹脂部材7によってボビン体4とコア1の周囲を覆うように成形し、第2の樹脂部材7、ボビン体4およびコア1を固定する。第2の樹脂部材7の周面の溝10に第1のシール部材11を嵌め込む。
【0025】
(c) コア1の軸方向他端側の外周に設けられた溝10に第2のシール部材12を嵌め込むと共に、コア1の軸方向一端側に設けられたフランジ部1bの軸方向他端側に第3のシール部材13を嵌め込む。第2のシール部材12と第3のシール部材13を嵌め込んだコア1を、ボビン体4の貫通空間4aの内部に軸方向一端側から挿入する。
【0026】
(d) コア1、ボビン体4および第2の樹脂部材7が固定された状態で、軸方向一端側からコア1の貫通孔1aにプランジャピン2を挿入し、プランジャピン2の軸方向一端に吸着プレート2aを取り付ける。
【0027】
(e) コア1、ボビン体4、第2の樹脂部材7およびプランジャピン2からなる部品を軸方向他端側からケース8に挿入し、金属板9の外周の縁をケース8の開口部内周の段部8aに押し当て位置決めした状態で、ケース8の開口部の縁を内側に加締めて金属板9を固定する。この時、ケース8の内周面と第2の樹脂部材7との隙間は、第1のシール部材によって塞がれる。
【0028】
(f) ノズル部6の中空部6a内に、第1ポート6cの軸方向他端側から弁体6eおよびコイルばね6fを挿入し、第1ポート6cの軸方向他端側にリング状のキャップ6gをはめ込んで、弁体6eおよびコイルばね6fの外れ止めとする。
【0029】
(2)シール機能
本実施形態の電磁弁装置では、
図2に示すように、第1のシール部材11、第2のシール部材12および第3のシール部材13が設けられ、これらのシール部材により電磁弁装置内部から外部に油が漏れることを防止するとともに、外部から水などが浸入することも防止する。
【0030】
第1のシール部材11は、第2の樹脂部材7とケース8との隙間を封じる。そのため、
図2のAに示すように、ケース8の開口部と第2の樹脂部材7との隙間や、
図2のBに示す金属板9と第1の樹脂部材3の界面を経由して、油や水が電磁弁装置内に浸入することを防止する。
【0031】
第2のシール部材12は、コア1の外周面と第1の樹脂部材3の内周面の間に設けられる。そのため、
図2のCに示すように、バルブボディからノズル部6を経由して侵入した油が、コア1とボビン体4との隙間に入り込むことを防止する。また、
図2のDに示すように、ケース8の開口部とノズル部6の隙間、およびノズル部6の内周面とコア1の外周面の隙間を通って、外部の水がノズル内部やバルブボディに浸入することも防止する。
【0032】
第3のシール部材13は、コア1の軸方向一端側と第2の樹脂部材7との間に設けられる。そのため、
図2のEに示すように、コア1の内周面とプランジャピン2の隙間を通って、ノズル側から侵入する油がコア1とボビン体4との隙間に入り込むことを防止する。
【0033】
[1−3.効果]
本実施形態によれば、次のような効果が発揮される。
【0034】
(1)従来は、ボビン体4の成型時にインサート成型していたコア1を、成型後のボビン体4に挿入することで、シール部材をコア1の外周に配置することが可能となる。これにより、電磁弁装置の外部と内部を遮断し、気密構造化され、油や水の漏洩及び浸入を防止することができる。その結果、電磁弁装置の使用場所が油中使用を前提とした自動変速機に限定されることがなくなり、電磁弁装置の用途が広がる。
(2)ノズル部6の内部に軸方向に延びる中空部6aが設けられ、ノズル部6の中空部6a内に、コア1の軸方向他端側が嵌め込まれ、ノズル部6の中空部6aの内周とコア1の軸方向他端側の外周の間に第2のシール部材12が配置されているので、ケース8から突出している樹脂製ノズルにおいて、円筒状コア1とノズル内面との隙間からの浸入を防止できる。
(3)コア1の一端側の周面全周と第2の樹脂部材7の内面との間に密着配置され、コア1と第2の樹脂部材7との隙間を封じる円環状の第3のシール部材13を備えているので、コア1とプランジャピン2との軸方向他端側からの浸入が防止される。
(4)コア1の軸方向一端側に外周側に突出したフランジ部1bを備え、ボビン体4の一端側の表面と、フランジ部1bとの間に第3のシール部材13が配置され、フランジとボビン体4によって第3のシール材13が挟み込まれるので、シール材の位置決めが容易にできる。
(5)ケース8の内径が、軸方向一端側が他端側に対し小径となっており、第1のシール部材11がこの小径部の内面に密着しているので、ケース8を大径部側から樹脂部材にかぶせることができ、ケース8の嵌め込み作業が容易である。
(6)コア1の外径が、軸方向他端側が小径となっており、第2のシール部材12がこの小径部の外周部に配置されているので、コア1をノズル部6に嵌め込む作業が容易である。
【0035】
[2.他の実施形態]
本発明は、以上の実施形態に限定されるものではない。以上の実施形態は例として提示したものであって、その他の様々な形態で実施されることが可能である。発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲、要旨、その均等の範囲に含まれる。以下、その一例を示す。
【0036】
(1)ケース8と内部の各部材の固定は、金属板9とケース8の加締め加工によらず、ねじ込み、圧入、ねじ止めなどの他の構造でもよい。
【0037】
(2)第1実施形態は、第1の樹脂部材3の一部にノズル部6を設けたが、ボビン体4を有する第1の樹脂部材3とノズル部6が別体に構成され、両者を加締めやねじ止めで固定してもよい。
【0038】
(3)第2の樹脂部材7によってコイル5や第1の樹脂部材3を覆う方法としては、第1実施形態のインサート成型以外に、別々に成型した樹脂部材を嵌め合わせて固定してもよい。
【0039】
(4)ノズル部6がノーマルハイタイプの電磁弁装置にも適用できる。