(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記認証処理部が、ユーザ認証処理のためのユーザによる独自の操作なしにユーザ認証処理を実行することが可能な認証方式を含むことを特徴とする請求項1に記載の処理装置。
前記認証処理部が、前記ユーザ操作部における、前記要認証処理の実行に関するユーザ操作の開始を受けて、ユーザ認証処理を開始することを特徴とする請求項1または2に記載の処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態としての処理システムの全体構成図である。
【0027】
この処理システム100は、複数台のノート型パーソナルコンピュータ(以下、「ノートPC」と略記する)10と、1台の複合機20とを備えている。そして、それら各ノートPC10と複合機20は、無線LAN(Local Area Network)等の通信回線101を介して互いに通信可能となっている。
【0028】
各ノートPC10では、プリント出力を指示するプリントジョブが生成され、複合機20に向けて送信される。このプリントジョブには、送信元のノートPC10を使用しているユーザのユーザIDも含まれている。
【0029】
また、複合機20は、スキャナ20Aやプリンタ20Bなどを備えていて、スキャナとしての機能、プリンタとしての機能、さらにそれらを組み合わせたコピー機としての機能など、複合的な複数の機能を備えている。
【0030】
また、この複合機20には、この複合機20の使用権限を有するユーザのユーザID一覧が記憶されている。また、ここには、各ユーザの顔の画像分析により得られた、顔の特徴を表わす特徴量も、各ユーザIDに対応づけられて記憶されている。
【0031】
この複合機20では、ノートPC10からプリントジョブを受信すると、そのプリントジョブに含まれているユーザIDを参照して、この複合機20の使用権限を有するユーザが送信したプリントジョブか否かを判定し、この複合機20の使用権限を有するユーザが送信したプリントジョブの場合はそのプリントジョブをこの複合機20内に記憶しておく。そして、ユーザがこの複合機20の元に来てユーザ認証を行ない、この複合機20の使用権限のあるユーザであったときは、ユーザ操作に従って、記憶しておいたそのユーザのプリントジョブに基づくプリント出力を行なう。あるいは、複合機20の元に来たユーザがその複合機20の使用権限のあるユーザであったときは、そのユーザのプリントジョブの有無にかかわらず、ユーザ操作に従って、コピー処理、すなわち、スキャナ20Aで原稿を読み取ってその読取りにより得られた画像データに基づくプリント出力を実行する。また、この複合機20では、スキャナ20Aでの読取により得られた画像データをユーザのノートPC10に送信する処理も行われる。
【0032】
この複合機20には、顔認証カメラ21、ICカードリーダ22、およびタッチパネル式のUI(ユーザインタフェース)23が備えられている。
【0033】
この複合機20は、認証なしでも実行可能な処理と、認証に成功してからでないと実行不能な処理を有する。具体的には、ここで説明している実施形態の場合、スキャナ20Aを使って原稿を読み込み、その読込みにより得られた画像データをノートPC10の送信する処理(以下、この処理を「スキャン処理」と称する)は、認証なしに実行可能な処理とされている。これは、この複合機20に通信回線101を介して接続されているノートPCは10は、複合機20の使用権限のあるユーザにのみ割り当てられていることや、このスキャン処理では用紙を消費することもないため、複合機20の元へ来たユーザに認証処理を行なわないままスキャン処理を実行させても差し支えないからである。
【0034】
一方、この複合機20を使ってプリント出力を行ない、あるいは原稿のコピーを行なうときは、それらの処理の実行に先だって認証処理を行ない、その認証に成功する(そのユーザが複合機20の使用権限のあるユーザであることを複合機が確認する)必要がある。
【0035】
ここでは、認証に成功しないと実行されない処理を「要認証処理」と称し、その要認証処理を実行する権限のあるユーザを「有権ユーザ」と称する。
【0036】
ここで、本実施形態の複合機20には、顔認証カメラ21とICカードリーダ22が備えられている。顔認証カメラ21は、顔認証用にユーザの顔を撮影する。そして、この複合機20の内部では、その撮影した顔画像を分析してそのユーザの顔の特徴量を算出し、この複合機20内に記憶されている、この複合機20の要認証処理の使用権限を有する有権ユーザの顔の特徴量と比較して、今回撮影したユーザが有権ユーザであるか否かを判定する。この顔の撮影画像に基づく認証処理は、認証処理のための独自のユーザ操作なしに行われる認証処理である。
【0037】
ただし、顔の撮影画像に基づく認証処理は、有権ユーザであれば認証が確実に成功するとは限らず、認証に失敗する場合も有り得る。そこで、この複合機20では、顔の撮影画像による認証に失敗したとき、UI23の表示画面上への表示により、ユーザに向けて、そのユーザが所持しているICカードをICカードリーダ23にかざすように依頼する。ユーザが所持しているICカードには、そのユーザを特定するユーザIDが記憶されている。ユーザが、その依頼に応じて自分のICカードをICカードリーダ23にかざすと、ICカードリーダ23は、そのICカードからユーザIDを受信する。そして、複合機20は、その受信したユーザIDと複合機20に記憶されている有権ユーザのユーザIDとを比較して、そのICカードをかざしたユーザが有権ユーザであるか否かを判定する。
【0038】
顔の撮影画像に基づく認証に成功すると、あるいは、顔の撮影画像に基づく認証には失敗してもICカードをかざしたことによる認証に成功すると、そのユーザは、この複合機20での「要認証処理」を実行(プリント機能やコピー機能を使用)することが可能となる。
【0039】
図2は、
図1に外観を示す複合機のハードウェア構成図である。
【0040】
ここには、
図1にも示した、スキャナ20A、プリンタ20B、顔認証カメラ21、ICカードリーダ22、およびUI23が示されている。さらにここには、メインコントローラ24が示されている。このメインコントローラ24は、プログラムを実行する情報処理装置としての機能を備えている。具体的には、このメインコントローラ24は、CPU241、ROM242、RAM243、HDD244、および通信I/F245を備えている。そして、それらは、バス249を介して互いに通信可能に接続されている。
【0041】
CPU241は、中央演算処理装置(Central Processing Unit)であり、プログラムの実行を担っている。
【0042】
ROM242は、リードオンリメモリ(Read Only Memory)である。このROM242には、CPU241で実行されるプログラムにより参照される定数等が記憶されている。
【0043】
また、RAM243は、CPU241でのプログラムの実行にあたり、実行しようとしているプログラムがHDD244から読み出されて格納されるメモリである。このRAM243は、プログラムの実行の際に必要な変数等を格納しておく作業領域としても利用される。
【0044】
また、HDD244は、HD(ハードディスク)を内蔵したハードディスクドライブである。このHDD244には、CPU241で実行される予定のある様々なプログラムや、その実行に必要となる様々なデータが記憶されている。また、このHDD244には、このノートPC10等から送信されてきたプリントジョブ等が格納される。この複合機20の使用権限の有無を判定するためのユーザIDやユーザの顔の特徴量なども、ここに記憶されている。
【0045】
さらに、通信I/F245は、
図1にも示す通信回線101を介してのノートPC10との間の通信を担っている通信インターフェースである。
【0046】
図3は、
図1に示す複合機の機能ブロック図である。
【0047】
この
図3には、処理実行部25、表示・操作部26、認証処理部27、許可範囲規定部28、代替処理提示部29、および制御部210が示されている。ここで、制御部210は、この複合機20全体の制御や情報の受渡しを担っている。
【0048】
処理実行部25は、送受信部251、記憶部252、プリント部253、読取部254を有し、この複合機20での各種処理の実行を担っている。
【0049】
送受信部251は、通信回線101を経由してノートPC10(
図1参照)から送信されてきた、プリント出力の指示であるプリントジョブを受信する。このプリントジョブには、そのプリントジョブを送信したユーザを特定するユーザIDが含まれている。この送受信部251で受信したプリントジョブは制御部210を経由して記憶部252に送られ、その記憶部252に格納される。また、この送受信部251は、読取部258(スキャナ20A)で読み取って得たデータのノートPC10への送信も担っている。この送受信部251は、ハードウェア上は、主に、
図2に示す通信I/F245がその役割を担っている。
【0050】
また、記憶部252は、送受信部251で受信したプリントジョブを、プリント部253(プリンタ20B)における、そのプリントジョブに基づくプリント出力の実行まで記憶しておく。この記憶部252は、ハードウェア上は、主に、
図2示すHDD244がその役割を担っている。
【0051】
また、プリント部253は、用紙上へのプリント出力を担っている。このプリント部253は、ハードウェア上は、複合機のプリンタ20Bが、その役割を担っている。
【0052】
さらに、読取部254は、原稿上の画像を読み取って画像データを取得する役割を担っている。この読取部254で取得した画像データは、送受信部251を経由してノートPC10に送信され、あるいは、プリント部253に送られてその画像データに基づく画像がプリント出力される。この読取部254は、ハードウェア上は、
図1,
図2に示すスキャナ20Aがその役割を担っている。
【0053】
また、表示・操作部26は、ユーザへの様々な情報の画面表示による通知や、ユーザの操作による、ユーザからの様々な指示を受け付ける役割を担っている。この表示・操作部26は、ハードウェア上は、主にUI23がその役割を担っている。この表示・操作部26は、本発明にいうユーザ操作部の一例を包含している。
【0054】
また、認証処理部27は、前述の通り、この複合機20の元へ来たユーザがこの複合機20の使用権限(スキャン処理を除く)を有するユーザであるか否かを判定する。この記憶処理部27は、ハードウェア上は、
図1,
図2に示す認証カメラ21、ICカードリーダ22、認証用のプログラムを実行するCPU241等が、その役割を担っている。
【0055】
また、本実施形態の複合機20では、この複合機20の使用権限を有するユーザであっても、ユーザごとに使用内容についての使用制限が設けられている。許可範囲規定部28は、ユーザごとの、複合機20の使用が許可された処理範囲である「許可範囲」を規定したテーブルを記憶している。この許可範囲規定部28は、ハードウェア上は、HDD244がその役割を担っている。ユーザごとの許可範囲の具体例については後述する。
【0056】
本実施形態の複合機20では、認証成功よりも前に、UI23を使って、そのユーザが実行しようとしている処理に関する全ての設定操作を実行することができる。このため、認証成功後に、そのユーザの許可範囲を逸脱した設定が行われていることが判明する可能性がある。代替処理指示部29は、認証成功よりも前に、そのユーザの許可範囲を逸脱した「利用不許可処理」のユーザ操作が行われていた場合に、認証成功後に、そのユーザに向けて、UI23への画面表示により、その「利用不許可処理」に代わる、そのユーザの許可範囲内の「代替処理」を提示する。この代替処理指示部29は、ハードウェア上は、UI23や、「代替処理」を提示するプログラムを実行するCPU241が、その役割を担っている。
【0057】
以下、この複合機20における処理を具体的に説明する。
【0058】
図4,
図5は、UI設定処理プログラムのフローチャートの、それぞれ前半部分、後半部分を示した図である。このUI設定処理プログラムは、UI23の初期画面上にユーザが指を触れるか否かを常に監視している(ステップS01)。
【0059】
図6は、UIの初期画面を示した図である。
【0060】
本実施形態における複合機20では、大分類の処理として、「コピー」、「フリント」、および「スキャン」の各処理が実行される。これら大分類の処理のうち、「コピー」および「プリント」の処理は、ユーザ認証により、そのユーザが有権ユーザであることが判明した後に実行される「要認証処理」であり、一方、「スキャン」は、ユーザ認証不要の「認証不要処理」である。また、この初期画面には、「終了」ボタンが示されている。この「終了」ボタンは、今回のユーザによる、複合機20の今回の利用が終了して複合機20の元を立ち去るときに押されるボタンである。なお、この「終了」ボタンは、常に表示されるボタンであり、したがってUIの表示画面とは別にハードウェアとして設けられたボタンであってもよい。
【0062】
図4のステップS01において、UI23の画面上に指が触れたと判定されると、先ずは、今回触れた指のUI23上の位置から、「要認証処理」(「コピー」あるいは「プリント」)か「認証不要処理」(「スキャン」)かが判定される(ステップS02)。そして、「要認証処理」の場合は「要認証処理」であることが報告され(ステップS03)、「認証不要処理」の場合は「認証不要処理」であることが報告される(ステップS04)。
【0063】
そして次に、初期画面上に指を触れたことで指定された処理に応じたメニュー画面が表示される(ステップS05)。
【0064】
図7は、「コピー」についてのメニュー画面を例示した図である。
【0065】
ここでは、「モノクロ」コピーか「カラー」コピーかの別、コピー枚数、片面原稿か両面原稿かの別、片面プリントか両面プリントかの別が指定される。
【0066】
「モノクロ」と「カラー」については、いずれか一方のボタンを押すことにより、択一的に選択される。このメニュー画面表示の際のプリセット値は「モノクロ」である。
【0067】
「コピー枚数」は、その右側のテンキーで枚数を指定して「エンター」キーを押すことにより設定される。この「コピー枚数」のプリセット値は「1」枚である。
【0068】
原稿の「片面」と「両面」については、いずれか一方のいずれか一方のボタンを押すことにより、択一的に選択される。プリセット値は「片面」である。
【0069】
プリントの「片面」と「両面」についても、いずれか一方のボタンを押すことにより、択一的に選択される。プリセット値は「片面」である。
【0070】
「スタート」ボタンを押すと、このメニュー画面上の、その時点における設定内容が有効となる。この
図7に示す例では、各プリセット値と同じく、「モノクロ」、コピー枚数「1」枚、原稿「片面」、プリント「片面」が設定されている。ただし、「スタート」ボタンを押しても、その有効となった処理が直ちに実行されるとは限らず、ユーザ認証がまだ終わっていなかったときは、ユーザ認証終了まで保留される。
【0071】
また、「キャンセル」ボタンを押すと、このメニュー画面上での操作によるそれまでの設定がキャンセルされて、
図6に示す初期画面に戻る。
【0072】
また、「終了」ボタンは、
図6に示した「終了」ボタンと同様、このユーザによる、複合機20の今回の利用が終了して複合機20の元を立ち去るときに押されるボタンである。
【0073】
再び、
図4,
図5に戻って説明を続ける。
【0074】
図4のステップS05において処理に応じたメニュー画面(例えば「コピー」処理の場合の
図7に示すメニュー画面)を表示した後、そのメニュー画面上でのユーザ操作(「スタート」、「キャンセル」、および「終了」の各ボタンの押下操作を除く)の有無が監視され(ステップS06)、ユーザ操作があったときはそのユーザ操作による設定内容が保存され(ステップS07)、そのユーザ操作に応じてそのメニュー画面上の表示が変更される(ステップS08)。ここでは、例えば、
図7に示すコピーのメニュー画面上でコピー枚数が「10」枚に変更する操作が行われると、そのメニュー画面上のコピー枚数の欄が「10」に変更される。これら、ステップS06〜S08の処理は、ユーザ操作があるたびに繰り返される。
【0075】
そして、「キャンセル」ボタンが押されると(ステップS09)、今回の設定内容がキャンセルされて、すなわち、ステップS07で保存された保存内容が消去されて(ステップS10)、
図6の示した初期画面に戻る(ステップS11)。
【0076】
一方、「スタート」ボタンが押されると(ステップS12)、今回指示された処理が「スキャン」の処理か否かが判定される(
図5、ステップS13)。そして、今回の処理が「スキャン」の処理の場合は、その処理の実行の準備が完了したことが報告される(ステップS14)。この段階で準備完了を報告するのは、「スキャン」の処理が「認証不要処理」であり、「スタート」ボタンの押下(
図4、ステップS12)によって、認証とは無関係に実行することが可能だからである。また、この処理実行準備完了報告とともに、UI23が初期画面(
図6参照)に戻されて(ステップS15)、UI23の初期画面上への次のタッチ(
図4、ステップS01)の監視に戻る。
【0077】
一方、今回指示された処理が「スキャン」ではなく、「コピー」あるいは「プリント」の処理だっだときは、次に、ユーザ認証処理が終了しているか否かが判定される(ステップS16)。そして、ユーザ認証処理が未だ終了していないときはUI23にポップアップ画面が表示される(ステップS17)。
【0078】
図8は、
図5のステップS17で表示されるポップアップ画面を示した図である。
【0079】
ここでは、「認証処理中です。しばらくお待ちください。」が表示され、この表示により、ユーザに認証待ちであることが伝えられる。
【0081】
ステップS16でユーザ認証処理(認証成功あるいは認証失敗)が終了したことが判定されると、次に、その終了した認証処理が、認証成功であったか認証失敗であったかが判定される(ステップS18)。そして、認証失敗だったときは、UI23上に一定時間ポップアップ画面が表示される(ステップS19)。そしてその後、UI23の画面が初期画面(
図6参照)に戻されて(ステップS20)、UI23の初期画面上への次のタッチ(
図4、ステップS01)の監視に戻る。
【0082】
図9は、
図5のステップS19で表示されるポップアップ画面を示した図である。
【0083】
ここでは、「使用権限が確認できないので、この処理は受付できません。」が表示され、この表示により、ユーザに使用不能であることが伝えられる。
【0085】
ユーザ認証に成功したときは(ステップS18)、今回の設定内容(
図4、ステップS07で保存された設定内容)が、そのユーザにとっての許可範囲内の処理内容か否かが判定される(ステップS21)。
【0086】
図10は、ユーザごとの許可範囲が記録されたテーブルを示した図である。
【0087】
複合機20内には、このような、ユーザごとの許可範囲が記録されたテーブルが記憶されている。
【0088】
ここに示すユーザID=001のユーザは、用紙を無制限に使って、モノクロ/カラーコピー、モノクロ/カラープリントのいずれをも実行することができる。
【0089】
また、ユーザID=002のユーザは、モノクロ/カラーコピー、モノクロ/カラープリントのいずれをも利用可能であるが、使用する用紙枚数に制限がある。
【0090】
また、ユーザID=003およびユーザID=004の各ユーザは、モノクロコピーおよびモノクロプリントのみ許可されており、カラーコピーおよびカラープリントの利用は許可されていない。また、使用する用紙枚数にも制限がある。
【0092】
ステップS21において、今回の設定が今回のユーザの許可範囲内の設定であったときは、処理実行準備完了の報告がなされ(ステップS22)、UI23が初期画面に戻される(ステップS23)。
【0093】
一方、ステップS21において、今回の設定が今回のユーザの許可範囲から外れていると判定されると、「代替処理」の探索が行われて(ステップS24)、その「代替処理」がUI23上にポップアップ表示される(ステップS25)。
【0094】
図11は、
図5のステップS25で表示されるポップアップ画面を示した図である。
【0095】
ここでは、一例として、
図10に示す、ユーザID=003のユーザであって、そのユーザが、UI23の操作により、カラーコピー100枚を設定したものとする。また、そのユーザは、今日、既に、用紙を50枚使用済みであるとする。ただし、このユーザの、1か月あたりの用紙使用枚数制限までには、まだ余裕があるものとする。このユーザID=003のユーザは、
図10に示す通り、カラーコピーは許されていない。また、今日、用紙を既に50枚使用済みであるため、使用可能な残り枚数は50枚である。
【0096】
以上のことから、
図5のステップS24における代替処理探索の結果、カラーコピーからモノクロコピーに変更し、コピー枚数を100枚から50枚に変更する、という「代替処理」が導出される。
【0097】
そして、
図5のステップS25では、UI23上に、この
図11に示すように、
「指示内容は許可された範囲から外れています。以下の処理に変更しては如何でしょうか? モノクロコピー/コピー枚数50枚」
が表示される。
【0098】
また、ここには、「はい」ボタンと「いいえ」ボタンも表示される。「はい」ボタンの押下は、ユーザがこの代替処理を受け入れたことを意味し、「いいえ」ボタンの押下は、ユーザがこの代替処理を拒否したことを意味する。
【0100】
ステップS26では、ステップS25でUI23上に表示したポップアップ画面(
図11参照)上で「はい」ボタンが押された(代替処理OK)か否かが判定される。
【0101】
代替処理OKの場合は、
図4のステップS07で保存された設定内容に代えて、ポップアップ画面上に示された代替処理の内容が保存され(ステップS27)、処理実行準備完了が報告され(ステップS28)、UI23が初期画面に変更される(ステップS29)。
【0102】
一方、ステップS26において、「いいえ」ボタンが押されたと認識されたときは、
図4のステップS07で保存された設定内容が消去されて(ステップS30)、UI23の初期画面が表示される。すなわち、このユーザは、代替処理を拒否したことにより、初期画面(
図6参照)から再度開始して新たな設定を行なうことになる。あるいは、このユーザが複合機20の今回の使用をあきらめたときは、「終了」ボタンを押して、この複合機20の元を立ち去ることになる。
【0103】
図12は、複合機起動プログラムのフローチャートである。
【0104】
この
図12に示す複合機起動プログラムは、
図4のステップS03あるいはステップS04における、「要認証処理」の報告あるいは「認証不要処理」の報告を受けて、その実行が開始される。
【0105】
ここで、本実施形態の複合機20は、UI23や、そのUI23に指を触れたことを検知して実行されるプログラムの実行に必要な一部分だけは、電源が常時投入されていて、その残りの部分、例えば顔認識カメラ21やスキャナ20Aやプリンタ20B等については、平時は電力が遮断されている。
【0106】
図12に示す複合機起動プログラムの実行が開始されると、先ずは、この複合機20の、平時は電力が遮断されている部分が電源オンになっているかか否かが判定され(ステップS51)、電源オフのままであったときは、電力が投入される(ステップS52)。
【0107】
次に、今回設定された処理が「要認証処理」であるか否かが判定され(ステップS53)、「要認証処理」のときは、ユーザ認証に既に成功しているか否かが判定される(ステップS54)。そして、「要認証処理」であって、かつ、まだ認証成功ではなかったときは、ユーザ認証処理の実行が指示される(ステップS55)。
【0108】
ここで、同じユーザによって、「プリント」と「コピー」など、続けて複数回の処理が指示されることがある。したがって、
図4のステップS03あるいはステップS04における「要認証処理」の報告あるいは「認証不要処理」の報告を受けて、この
図12に示す複合機起動プログラムの実行が開始されたときに、既に電源オンの状態にあり、また、認証成功の状態にある場合がある。そこで、この複合機起動プログラムでは、電源オンか否かの判定(ステップS51)とユーザ認証成功か否かの判定(ステップS54)を行なっている。
【0109】
本実施形態では、ステップS52における電源オンによって複合機20が動作可能な状態に立ち上がりつつある間、あるいはステップS55におけるユーザ認証の指示を契機として開始されるユーザ認証処理においてユーザ認証に成功する前の段階であっても、
図4,
図5に示す処理、すなわち、UI23の操作を先に進めることができる。
【0110】
図13は、ユーザ認証処理プログラムのフローチャートを示した図である。このユーザ認証処理プログラムは、
図12のステップS55における「ユーザ認証指示」を受けて、その実行が開始される。
【0111】
ここでは先ず、顔認証処理が実行される(ステップS62)。この顔認証処理では、顔認証カメラ21が起動されてユーザの顔の撮影が行われ、その顔の特徴量が抽出される。そして、その抽出された顔の特徴量が、複合機20内に記憶されている有権ユーザの顔の特徴量と対比され、その撮影されたユーザが有権ユーザであるか否かが判定される。この顔認証に成功すると、すなわち、今回のユーザが有権ユーザであることが判明すると、認証成功が報告される(ステップS69).この認証成功の報告は、
図5のステップS16,S18での判定に用いられる。
【0112】
顔認証に失敗したときは(ステップS62)、基本的には、ICカードによる認証処理に移行する。ただし、ここでは先ず、今回設定された処理が「要認証処理」か否かが判定される(ステップS63)。
【0113】
例えば、「認証不要処理」である「スキャン」を行なおうとしているユーザが、UI23の初期画面(
図6参照)上で誤って「要認証処理」である「コピー」を押したとする。その場合であっても、UI23の画面は
図7に示すコピーのメニュー画面に移行し、また、この時点で顔認証処理が開始される(
図4、ステップS03参照)。ただし、このユーザは、今回は「コピー」ではなく「スキャン」を行なう予定だったため、
図7に示すコピーのメニュー画面上で「キャンセル」ボタンが押されて
図6の初期画面に戻り、改めて「スキャン」のボタンが押されることになる。この場合、「スキャン」は、「認証不要処理」であるにもかかわらず、顔認証処理が既に開始されていることになる。
【0114】
そこで、
図13のステップS63では、今回設定された処理が「要認証処理」か否かが判定される。
【0115】
ステップS63において、今回の処理が「要認証処理」であると判定されると、UI23上にポップアップ画面が表示される(ステップS64)。
【0116】
図14は、
図13のステップS64で表示されるポップアップ画面を示した図である。
【0117】
このポップアップ画面上には、「顔認証できませんでした。ICカードをかざしてください。」が表示される。すなわち、ここでは、顔認証に失敗し(
図13、ステップS62)、かつ、今回実行すべき処理が「要認証処理」である(
図13、ステップS63)ことから、この表示により、ICカードをかざすことをユーザに促す。
【0119】
ステップS64におけるポップアップ画面の表示に続き、タイマが起動される(ステップS65)。このタイマは、ICカードによる認証処理の受付締切の時刻を決めるためのタイマである。このタイマがタイムアップするまで(ステップS66)、ICカードによる認証処理(ステップS67)が試みられる(ステップS68)。ここで、ICカードにはそのユーザのユーザIDが記憶されている。そして、このICカードによる認証処理(ステップS67)では、ICカードリーダ22にかざされたICカードから、そのICカードに記憶されているユーザIDが読み取られて、そのユーザIDが、有権ユーザのユーザIDであるか否かが確認される。
【0120】
ICカードにより認証に成功すると(ステップS68)、認証成功が報告される(ステップS69)。一方、ICカードによる認証に成功しないまま、ステップS65で起動したタイマがタイムアップすると(ステップS66)、認証失敗が報告される(ステップS70)。この認証失敗の報告も、ステップS69における認証成功の報告と同様、
図5のステップS16,S18での判定に用いられる。
【0121】
図15は、処理実行プログラムのフローチャートを示した図である。
【0122】
なお、処理の実行にあたり、先の処理の実行中であったときは、一般的には処理実行の待ち行列に並ぶ処理が行われるが、この点は本実施形態の特徴部分ではなく、また一般的な技術であり、ここでは、この待ち行列処理については省略する。
【0123】
この
図15に示す処理実行プログラムは、
図5のステップS15,S23,S28のうちのいずれかの処理実行準備報告を受けて起動される。
【0124】
この
図15に示す処理実行プログラムの実行が開始されると、
図4のステップS07で保存された設定内容が参照されて、その設定内容に従った処理(例えば「コピー」処理)が実行される。ただし、
図5のステップS27において
図4のステップS07で保存された設定内容が変更されたときは、その変更後の設定内容に従った処理が実行される。そしてその処理が終了すると、UI23が初期画面に戻される(ステップS73)。
【0125】
図16は、電源オフプログラムのフローチャートを示した図である。
【0126】
この電源オフプログラムは、UI23にタッチするたびに「開始1」から開始され、また、「終了」ボタン(
図6,
図7参照)が押されたときに「開始2」から開始される。
【0127】
UI23上にタッチすると、先ずはタイマが起動される。本実施形態の複合機20は、UI23での操作が長時間にわたって行なわれなかったときに、電源がオフとなる。このタイマは、その「長時間」を計測するためのタイマである。このタイマがタイムアップする前にUI23がタッチされると、この電源オフプログラムが動作を再度開始してタイマが再起動されて、その「長時間」の計測が最初から開始される。ステップS81で起動されたタイマがタイムアップすると(ステップS82)、UI23が初期画面(
図6参照)に戻され(ステップS83)、保存された設定内容が消去され(ステップS84)、認証成功がキャンセルされ(ステップS85)、複合機20の電源がオフにされる(ステップS86)。ただし、ここでの電源オフは、
図12のステップS52の電源オンに対応するものであって、顔認識カメラ21やスキャナ20Aプリンタ20B等についての電源オフであり、UI23やそのUIに指を触れたことを検知して実行されるプログラムの実行に必要な一部分については引き続き電力が供給される。ステップS83においてUI23を初期画面に変更するのは、ユーザがUI23を途中まで操作したまま立ち去ることが有り得るからである。また、ステップS84において保存された設定内容(
図4、ステップS07参照)を消去するのは、次のユーザの設定との混乱を避けるためである。また、ステップS85において認証成功をキャンセルするのは、次のユーザが前のユーザに成りすまして複合機20を利用するのを防ぐためである。
【0128】
このように、本実施形態の複合機20によれば、認証成功よりも前であってもユーザ設定を最後まで進めることができ、ユーザの待ち時間が短縮される。
【0129】
また、本実施形態の複合機20によれば、許可範囲を越えた設定がなされた場合に「代替処理」が提示されるため、許可範囲を越えた設定がなされた場合の再設定が容易となる。
【0130】
なお、上記の実施形態では、UI23にタッチすることで複合機20を使用可能状態に立ち上げ、さらに、「要認証処理」の設定の開始を受けて認証処理を開始している。ただし、認証処理の開始は、「要認証処理」であるか「認証不要処理」であるか特に区別することなく、UI23にタッチがあったことを受けて開始してもよい。
【0131】
また、近年では、複合機に人が近づいてきたことを検知するセンサやカメラを備えて、複合機を使おうとしているか否かを複合機への接触の前に検知する複合機や、複合機とは別体のセンサやカメラ等と連携して複合機を使おうとしているか否かの情報を取得する複合機が提案されてきている。このような複合機では、ユーザの待ち時間の短縮のために、その検知あるいは情報取得の時点で複合機への電力投入やユーザ認識が開始される。ただし、その場合であっても、ユーザ認識が直ちに終了するとは限らず、本発明を導入して、ユーザ認識の成功を待たずにユーザ操作を受け付ける構成とすると、ユーザの待ち時間の更なる短縮化を実現することができる。
【0132】
また、上記の実施形態では、認証処理をユーザに意識させることなくユーザ認証を行なう手段として、顔認証カメラ21を備えた顔認証システムが採用されている。ただし、本発明では、認証処理をユーザに意識させることなくユーザ認証を行なう手段として、顔認証に代わり、ユーザの瞳を撮影するカメラを備えた虹彩認証システムを採用してもよく、あるいは指紋認証機能を組み込んだUIを備えた指紋認証システムを採用してもよく、様々な認証システムを採用することができる。