(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ダイヤフラムを有し液体が出入り可能な送液用開口部が形成されたポンプ室と、一端が前記送液用開口部に接続され、他端が分岐してそれぞれ液体供給元及び液体供給先に接続されるチューブと、を備える送液カセットと、
前記ダイヤフラムを一定のストローク幅で往復駆動するための駆動手段と、
前記チューブのうち分岐した他端側の流路をそれぞれ開閉する流路開閉手段と、
検出領域に向けて信号を照射し、反射した信号を検出して、前記ダイヤフラムの往復駆動の挙動及び前記チューブ内の気泡の有無を検出可能な反射型の検出手段と、
を備え、
前記ダイヤフラムの往復方向に関して、
前記チューブは、該チューブの非分岐部において前記ダイヤフラムと重複する重複領域を有し、
前記検出手段は、検出領域が前記重複領域を含むように、前記チューブの非分岐部に対向して配置される送液機構。
ダイヤフラムを有し透析液が出入り可能な送液用開口部が形成されたポンプ室と、一端が前記送液用開口部に接続され、他端が分岐してそれぞれ透析液供給元又は透析液供給先に接続されるチューブと、を備える送液カセットを装着可能な腹膜透析装置であって、
前記ダイヤフラムを一定のストローク幅で往復駆動するための駆動手段と、
前記チューブのうち分岐した他端側の流路をそれぞれ開閉する流路開閉手段と、
検出領域に向けて信号を照射し、反射した信号を検出して、前記ダイヤフラムの往復駆動の挙動及び前記チューブ内の気泡の有無を検出可能な反射型の検出手段と、
を備え、
前記送液カセットが装着された状態において、前記ダイヤフラムの往復方向に関して、
前記チューブは、該チューブの非分岐部において前記ダイヤフラムと重複する重複領域を有し、
前記検出手段は、検出領域が前記重複領域を含むように、前記チューブの非分岐部に対向して配置される腹膜透析装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の送液機構及び腹膜透析装置の好ましい一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
本実施形態の送液機構1の構成について、
図1を参照して説明し、送液機構1を適用した腹膜透析装置100について、
図2及び
図3を参照して説明する。
送液機構1は、
図1に示すように、一定量の液体を吸引及び送出する送液カセット10と、送液カセット10を動作させる駆動手段110と、送液カセット10の流路を開閉する流路開閉手段120と、送液カセット10の作動及び気泡の有無を検出する検出手段130と、を備える。
【0018】
送液カセット10は、硬質容器としてのチャンバ11と、チャンバ11の内部に配置されるダイヤフラム12と、チャンバ11に接続されるチューブ13と、を備える。
チャンバ11は、光透過性を有する硬質の合成樹脂(例えば、硬質のポリ塩化ビニル)により構成され、同形の球面の一部である第1半円球状部材14A及び第2半円球状部材14Bが貼り合わされて所定の容量に形成される。チャンバ11の容積は、例えば
図2に示す腹膜透析装置に使用する場合、通常10〜100ml、好ましくは20〜50mlである。本実施形態では、50mlとした。
【0019】
ダイヤフラム12は、弾性を有する膜部材であり、例えば、シリコーン、塩化ビニール樹脂、天然ゴム、熱可塑性エラストマー等の合成樹脂材料で形成され、0.2〜0.5mm程度の厚さを有する。チャンバ11の内部は、ダイヤフラム12によりポンプ室11Aと圧力室11Bとに区画される。
【0020】
ポンプ室11Aを構成する第1半円球状部材14Aの球面の中央には、移送対象の液体が出入り可能な送液用開口部14aが形成され、圧力室11Bを構成する第2半円球状部材14Bの球面の中央には、駆動手段からの作動流体が出入り可能な印加用開口部14bが形成される。
【0021】
チューブ13は、非分岐部15と分岐部16とを有し、非分岐部15側の端部(一端)がポンプ室11Aの送液用開口部14aに接続される。そして、非分岐部15の他端が分岐して分岐部16となり、それぞれ液体供給元及び液体供給先に接続される。チューブ13は、可撓性及び光透過性を有する合成樹脂(例えば、軟質のポリ塩化ビニル)により構成される。チューブの非分岐部15と分岐部16とは一体的に形成されていてもよいし、接続部材を介して複数本のチューブをつなげて構成してもよい。
【0022】
駆動手段110は、圧力室11Bに流体を出し入れして圧力を印加するポンプ111と、ポンプ111を駆動させる駆動源としてのドライバ112と、を備え、ダイヤフラム12を一定のストローク幅で往復駆動する。
【0023】
ポンプ111は、圧力室11Bに交互に陽圧と陰圧とを印加可能な構成であればどのようなものでもよく、本実施形態においては、シリンダ113aとピストン113bで構成されるエアポンプ113を用いた。エアポンプ113は、ドライバ112によるピストン駆動によってエアチューブ114及び印加用開口部14bを介して圧力室11Bに陽圧又は陰圧を加え、ダイヤフラム12を駆動する。
【0024】
シリンダ113aと圧力室11Bとの間を繋ぐエアチューブ114には、その中ほどから分岐した部分にバルブ115及び圧力センサ116が設けられている。バルブ115は、圧力室11Bに過度の圧力が印可されないよう圧力センサ116からのフィードバックを受け駆動される。バルブ115としては、例えば、公知のダイヤフラム式電磁バルブ等が用いられ、圧力センサ116としては、例えば、圧電素子あるいはピエゾ抵抗効果を用いた半導体圧力センサ等が用いられる。
【0025】
流路開閉手段120は、クランプ部121とこのクランプ部121を駆動させる駆動源(不図示)とを備える。クランプ部121は、チューブ13のうち分岐した他端側(分岐部16)に設けられ、分岐した流路をそれぞれ開閉し、ポンプ室11Aと液体供給元及び液体供給先との連通状態を変更する。
【0026】
検出手段130は、反射型の光電センサ131と、信号を増幅する増幅器(不図示)と、を含んで構成される。光電センサ131は、検出領域に向けて光を照射する発光部131aと、検出領域からの反射光を受光する受光部131bと、を備える。受光部で受光した光は電気信号に変換された後、増幅器により増幅され、後述する制御部170に送信される。
【0027】
図1に示すように、ダイヤフラム12の往復方向に関して、チューブ13は、非分岐部15においてダイヤフラム12と重複する重複領域17を有するように配置される。検出手段130は、検出領域が重複領域17を含むように、チューブの非分岐部15に対向して配置される。なお、送液カセット10における液体の吸引及び吐出は、1つの送液用開口部14aを介して行われる。よって、移送される液体は、ポンプ室11Aに吸引されるときもポンプ室11Aから吐出されるときも、必ずチューブの非分岐部15を通るので、チューブの非分岐部15において気泡の有無を検出すればよい。
【0028】
次に、送液機構1を適用した腹膜透析装置100について、
図2〜
図4を参照して説明する。なお、送液機構1について、
図1で説明した構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
本実施形態に係る腹膜透析装置100は、腎不全患者に対して実施する腹膜透析を実施するためのものであり、患者の腹腔に対して透析液を注入し、透析液を腹腔に一定時間貯留した後に体内の老廃物が混じった透析液を排出する構成となっている。そして、患者は、この腹膜透析装置100を用いて、上記注液、貯留及び排液で構成されるサイクルを1日に複数回繰り返す。
【0029】
図2に示すように、本実施形態に送液機構1が適用される腹膜透析装置100は、透析装置本体140と、透析液バッグを収容して加温する加温部150と、この加温部150を覆う加温部蓋部141と、送液カセット10(
図3参照)の流路を開閉する流路開閉手段120と、送液カセット10が装着されるカセット装着部142と、装着された送液カセット10を覆うカセット蓋部143と、送液カセット10の作動及び気泡の有無を検出する検出手段130(
図4参照)と、操作部160と、を備え、透析装置本体140内部には、送液カセット10を動作させる駆動手段110と、制御部170と、データ格納部180と、を備える(
図4参照)。
【0030】
透析装置本体140は、腹膜透析装置100の外形を構成する。
加温部150は、透析装置本体140の上面部に配置される。加温部150は、透析液が収容された透析液バッグを収納する収納部151と、加温用透析液バッグを加温する加温機構(図示せず)と、を備える。加温部150は、加温機構により、収納部151に収納された加温用透析液バッグ(透析液)を所定の温度に加温する。加温部150において加温される透析液の温度は、温度センサ152により測定される。
加温部蓋部141は、透析装置本体140に対して開閉可能に取り付けられ、加温部150を覆う。
【0031】
カセット装着部142は、送液カセット10のチャンバ11が着脱可能に構成される。
カセット蓋部143は、透析装置本体140に対して開閉可能に取り付けられ、透析装置本体140に装着された送液カセット10を覆う。このカセット蓋部143の内面には、後述するように、検出手段130と、流路開閉手段120においてチューブを押さえる押さえ部材121bとが取り付けられる。
【0032】
送液カセット10は、
図3に示すように、チャンバ11と、チューブ13と、を備え、チューブ13は、チューブの非分岐部15と、チューブの分岐部16を構成する複数本の並列するチューブ16a、16b、16c、16d、16e、とが接続部材18により接続されて構成される。
複数本の並列するチューブ16a〜16eは、透析液供給源(後述の加温用透析液バッグ190a、補充用透析液バッグ190b、濃度変更用透析液バッグ190c)及び透析液送出先(患者Pの腹腔内、排液バッグ190e)にそれぞれ接続される。
【0033】
本実施形態では、チューブ16aは、加温部150に収納された加温用透析液バッグ190aに接続され、加温ラインLaの一部又は全部(以下同様)を構成する。チューブ16bは、補充用透析液バッグ190b(本実施形態では、3つの補充用透析液バッグ190b)に接続され、補充用ラインLbを構成する。チューブ16cは、補充用透析液バッグ190bに収容された透析液とは異なる濃度の透析液が収容された濃度変更用透析液バッグ190cに接続され、濃度変更ラインLcを構成する。チューブ16dは、患者Pの腹腔内に接続され、腹膜ラインLdを構成する。チューブ16eは、排液を収容する排液バッグ190eに接続され、排液ラインLeを構成する。
尚、それぞれのチューブは、直接又は接続部材を介してバッグ等に接続される。
【0034】
流路開閉手段120は、5本のチューブ16a〜16eの各々に対して配置されるクランプ部121と、これらクランプ部121を駆動する駆動源(不図示)と、を備える。
クランプ部121は、
図2に示すように、チューブを押圧する押圧部材121aと、チューブを挟んで押圧部材121aの反対側に配置される押さえ部材121bと、を備える。押圧部材121aは、透析装置本体140の上面に配置され、押さえ部材121bは、カセット蓋部143の内面に配置される。
駆動源は、押圧部材121aを進行させ、チューブを押さえ部材121bに押し付けて流路を閉止状態とし、押圧部材121aを後退させ、チューブを開放状態として、ポンプ室11Aと透析液供給元及び透析液供給先との連通状態を変更する。
【0035】
駆動手段110は、エアポンプ113とエアポンプ113の駆動源としてのドライバ112とを備える。エアポンプ113及びドライバ112は、透析装置本体140の内部に配置され、チャンバ11の圧力室11Bに空気を出し入れして空気圧を印加することによりダイヤフラム12を往復駆動させる。
【0036】
より具体的には、
図4に示すように、エアポンプ113はエアチューブ114及びカセット装着部142を介してチャンバ11の圧力室11Bにおける印加用開口部14bに接続される。そして、エアポンプ113により圧力室11Bの内部の空気を吸引することで、ダイヤフラム12を圧力室11Bの内壁(第2半円球状部材14Bの内壁)に密着するまで引き寄せて、チューブ16a〜16dのうち流路が開放されたチューブからチャンバ11のポンプ室11Aに透析液を吸引する。また、この状態において、チャンバ11の圧力室11Bの内部に空気を導入することで、ダイヤフラム12をポンプ室11Aの内壁(第1半円球状部材14Aの内壁)に密着するまで押し込んでポンプ室11Aに吸引された透析液を送液用開口部14aから送出する。これにより、ダイヤフラム12がチャンバ11の内壁で規定される一定のストローク幅で往復駆動することにより一定量(チャンバ11の容積)の透析液が吸引又は送出される。
【0037】
検出手段130は、反射型の光電センサ131と、信号を増幅する増幅器(不図示)と、を含んで構成され、検出された信号は増幅器により増幅され、制御部170に送信される。検出手段130は、送液カセット10を透析装置本体140に装着した状態において、カセット蓋部143を閉めたときに、チューブの非分岐部15及びダイヤフラム12に対向するようにカセット蓋部143の内面に配置される(
図2参照)。このように検出手段130を配置することで、チューブ13内の気泡の有無及びダイヤフラム12の往復挙動を検出することが可能となる。よって、気泡の検出手段とは別の検出手段を設けることなく、ダイヤフラム12の作動状態を確認することができ、送液機構1及び腹膜透析装置100が適切に作動しているかどうか確認することができる。
【0038】
操作部160は、液晶パネル及び各種操作ボタンを含んで構成される。液晶パネルには、透析液の送液量等の各種情報が表示される。
図4に示すように、制御部170は、データ格納部180に格納されたデータや、操作部160からの入力データに基づいて、駆動手段110、流路開閉手段120、検出手段130、及び加温部150の駆動を制御する。また、制御部170は、ダイヤフラム12の1往復ごとの送液カセット10からの送液量、及び検出手段130で検出されたダイヤフラム12の往復駆動回数に基づいて、チャンバ11の透析液供給元から前記透析液供給先への送液量を算出する算出手段として機能する。
【0039】
次に、以上の腹膜透析装置100の動作の一例につき説明する。
腹膜透析装置100を使用する場合、まず、
図5に示すように、送液カセット10を透析装置本体140のカセット装着部142に装着する。次いで、送液カセット10のチューブの分岐部16を構成するチューブ16a〜16eを、それぞれ、加温用透析液バッグ190a、補充用透析液バッグ190b、濃度変更用透析液バッグ190c、排液バッグ190eに接続し、プライミングを行う(
図3参照)。その後、チューブ16dを患者Pの腹部に接続し、透析を開始する。
【0040】
ここで、透析を行う場合には、流路開閉手段120により所定の1本のチューブ(例えば、チューブ16a)の流路を開放し、他のチューブの流路を閉止した状態で、エアポンプ113によりチャンバ11の圧力室11Bの空気を吸引することで、流路が開放されているチューブからチャンバ11のポンプ室11Aに透析液(この場合、加温用透析液バッグ190aに収容された透析液)を吸引する。次いで、流路開閉手段120を操作して流路を開放するチューブを変更し(例えば、チューブ16dの流路を開放し、他のチューブの流路を閉止)、この状態において、チャンバ11の圧力室11Bに空気を導入することで、でチャンバ11のポンプ室Aに吸引された透析液を送出(この場合、患者Pの腹腔内に透析液を送出)する。これにより、一定量(チャンバ11の容積)の透析液が吸引及び送出される。
【0041】
以上のように、流路開閉手段120により流路を開放するチューブ変更しながら上記操作を繰り返すことで、送液機構1により(1)予め加温部150により加温された加温用透析液バッグ190a内の透析液を患者Pの腹腔内への移送する注液工程、(2)次回サイクルで移送される透析液について補充用透析液バッグ190bから加温用透析液バッグ190aへ透析液を移送して補充し、並びに濃度変更用透析液バッグ190cから加温用透析液バッグ190aへ透析液を補充して所定量の透析液の移送を行う補充工程、(3)患者Pの腹腔内からの透析液の回収及び回収した透析を排液バッグ190eへ移送(排出)する排液工程、が行われる。
【0042】
次に、
図6を参照して、ダイヤフラム12の往復挙動及びチューブ13内の気泡の有無について、検出手段130(光電センサ131)で検出される出力波形について説明する。
図6のグラフは、横軸は時間を、縦軸は検出手段からの信号の振幅を示す。グラフ上部(点線の枠で囲まれた部分)におけるのこぎり歯状の1つの波形が、ダイヤフラム12の往復駆動1回に対応する。具体的には、ダイヤフラム12が圧力室11Bの内壁に向けて駆動され透析液がポンプ室11Aの内部に引き込まれるときに、出力が上昇し、引き込まれたポンプ室11Aの内部の透析液が吐出されるとき(つまり、ダイヤフラム12がポンプ室11Aの内壁に向けて駆動されるとき)に、出力が急激に落ちる。また、検出領域内に気泡が存在する場合には、出力は下向きのスパイクを示す。
【0043】
本実施形態では、まず、加温用透析液バッグ190a内の所定量の透析液が加温部150により予め加温された後、上述の注液工程(1)により患者Pの腹腔内に透析液を移送する。腹腔内に気泡を送り込まないように、注液工程(1)では、上述の検出手段130を用いて気泡の有無を検出し、気泡の監視を行う。気泡が検出された場合は、腹腔へ接続される流路を閉止して、適宜プライミング処理を行い、気泡を除去する。
【0044】
注液工程(1)では、小サイクルの最初の50mLの送液を、シリンダ113aのストローク速さ3mm/sにて行い、続く50mL×9回の送液をストローク速さ14mm/sにて行い、小計500mLの送液を行う。この小サイクルを3回繰り返し、合計1500mLの透析液を腹腔内に移送する。本実施形態では、10サイクルのうちの1回において、送液速度を気泡の検出が好適に行えるように低下させ、この10サイクルを繰り返すことで、注液工程にかかる時間の長時間化を抑えつつ、気泡の検出精度を確保している。
【0045】
腹腔内への注液完了後は、上述の補充工程(2)が行われ、加温部150により次回サイクルで用いられる透析液が加温される。補充工程(2)では、ストローク速さ3mm/sにて送液が行われる。補充工程(2)は、比較的長時間に亘って行われる腹膜透析治療中に行うため、すべてのサイクルにおいて送液速度を低下させることで、より精度よく気泡の検出を行える。
所定時間経過後、上述の排液工程(3)が行われ、1サイクルが完了する。排液工程(3)では、患者Pの腹腔内に過剰な陰圧がかからないように、ストローク速さ3mm/sにて、排液が行われる。
【0046】
移送される透析液の計量は、すべての工程において行われる。具体的には、算出手段(制御部170)により、
図6の出力波形において、ダイヤフラム12の往復駆動の回数であるのこぎり歯状の波形の数を数え、その回数に、ダイヤフラム12が一定のストローク幅で1往復するごとに移送される透析液の移送量(チャンバ11の容積)を乗じて、移送量を算出する。各工程において、算出手段により移送量を算出しながら送液を行い、所定の移送量となったら送液を終了する。
【0047】
また、
図6の出力波形において、ダイヤフラム12の往復駆動の回数を数えるだけでなく、ダイヤフラム12の挙動に対応するのこぎり歯状の波形から、ダイヤフラムの作動状態を確認することも可能である。従って、例えば、のこぎり歯状の波形が所定の形状から異なる形状になった場合に、ダイヤフラム12の破損やエアポンプの故障等、何らかの不具合の発生を検知することができる。
【0048】
以上説明した本実施形態の送液機構1及び腹膜透析装置100によれば、以下のような作用効果を奏する。
【0049】
(1)チューブ13が非分岐部15においてダイヤフラム12と重複する重複領域17を有するように配置し、この重複領域17が検出領域に含まれるように反射型の検出手段130を配置した。これにより、1つの検出手段130でチューブ13内の気泡の有無を検出すると共に、ダイヤフラム12の挙動を検出することができる。よって、気泡の検出手段とは別の検出手段を設けることなく、ダイヤフラム12の作動状態を確認することができ、送液機構1及び腹膜透析装置100が適切に作動しているかどうか確認することができる。
【0050】
(2)送液カセット10を、内部がダイヤフラム12によりポンプ室11Aと圧力室11Bとに区画された、一定の容積を有する硬質容器(チャンバ11)を含んで構成し、駆動手段110を、圧力室11Bに形成された印加用開口部14bを介して圧力室11Bに流体を出し入れするポンプ111と、このポンプ111を駆動させる駆動源112とを含んで構成した。これにより、硬質容器(チャンバ11)の往復のストローク幅が規定されるため、送液の定量性を向上させることができる。
【0051】
(3)腹膜透析装置100を、ダイヤフラム12の往復駆動の回数及びダイヤフラム12が1往復するごとに移送される透析液(液体)の一定量に基づいて送液量を算出する算出手段(制御部170)を含んで構成した。これにより、気泡の有無を検出可能な検出手段130によりダイヤフラム12の往復挙動も検出でき、送液量を算出できる。従って、従来のようにダイヤフラム12を駆動する駆動手段の挙動(駆動回数)を検出する構成を備えていなくても、送液量の算出が可能となる。
【0052】
(4)検出手段130を、検出領域に向けて光を照射する発光部131aと、検出領域からの反射光を受光する受光部131bとを備える光電センサにより構成した。これにより、超音波式センサに比べて応答速度の速い光電センサを用いることで、精度よくチューブ13内の気泡の有無及びダイヤフラム12の挙動を検出することができる。
【0053】
<変形例>
本発明の変形例について、
図7を参照して説明する。変形例に係る腹膜透析装置101は、上述した構成に加えて、駆動手段110の駆動状態を検出する駆動検出手段200を更に備える。
駆動手段110は、シリンダ113aとピストン113bで構成されるエアポンプ113と、エアポンプ113を駆動するドライバ112と、を備える。
本変形例では、駆動検出手段200として、エアポンプのシリンダ113aに装着されるエンコーダ201を用いた。制御部170には、エンコーダ201からの信号線が接続されており、シリンダ113aのロッドストロークに関する位置情報が入力されるようになっており、エアポンプ113の駆動を検出できる。
【0054】
ダイヤフラム12の往復挙動を検出手段130(光電センサ131)により検出すると共に、駆動手段110としてのエアポンプ113の駆動を駆動検出手段200(エンコーダ201)により検出することで、ダイヤフラム12と駆動手段110(エアポンプ113)とが適切に作動しているか、確認することができる。よって、ダイヤフラムの作動状態だけを確認する構成に比べ、何らかの不具合の発生を検知した場合に、どの構成に不具合が発生したのか、容易に確認することができ、更に安全性を向上させることができる。
【0055】
以上説明した本実施形態の送液機構1及び腹膜透析装置101によれば、以下のような作用効果を奏する。
【0056】
(5)腹膜透析装置101が駆動手段110の駆動状態を検出する駆動検出手段200を備えることで、ダイヤフラム12と駆動手段110とが適切に作動しているか、確認することができる。従って、ダイヤフラム12の作動状態だけを確認する構成に比べ、何らかの不具合の発生を検知した場合に、どの構成に不具合が発生したのか、容易に確認することができ、更に安全性を向上させることができる。
【0057】
以上、本発明の送液機構及び腹膜透析装置の好ましい各実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
例えば、本実施形態では、駆動手段の一例として、エアポンプ及びドライバを示したが、これに限らない。駆動手段としは、ダイヤフラムを一定のストローク幅で往復駆動可能であれば、ダイヤフラムにピストンを直接連結して往復駆動させる構成を用いてもよい。このような場合、上述したチャンバの圧力室は必須の構成ではない。すなわち、チャンバが第1半円球状部材及びダイヤフラムで構成されるポンプ室だけを備えていてもよい。
【0058】
また、ポンプの一例として、エアポンプを示したが、これに限らない。ポンプにより圧力室に印加される流体としては、エア(空気)の他に、作動油や生理食塩水等の水であってもよい。
【0059】
また、ポンプ室の一例として、硬質の第1半円球状部材及びダイヤフラムで構成される例を示したがこれに限らない。液体が出入り可能な送液用開口部を有しており、ダイヤフラムが一定のストローク幅で往復駆動可能な構成であれば、ポンプ室全体がダイヤフラムと同様の弾性部材により成形されていてもよい。
【0060】
また、本実施形態では検出手段の一例として光電センサを用いたが、反射型のセンサであれば、超音波センサであってもよい。この場合、チューブやチャンバが光透過性を備えなくてもよい。