特許第6784171号(P6784171)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6784171-中継端子 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6784171
(24)【登録日】2020年10月27日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】中継端子
(51)【国際特許分類】
   H01R 31/06 20060101AFI20201102BHJP
   H01R 43/16 20060101ALI20201102BHJP
   H01R 13/11 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
   H01R31/06 Z
   H01R43/16
   H01R13/11 A
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-254065(P2016-254065)
(22)【出願日】2016年12月27日
(65)【公開番号】特開2018-107015(P2018-107015A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】藤▲崎▼ 龍一
【審査官】 杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−064318(JP,A)
【文献】 特開平06−176847(JP,A)
【文献】 特開平07−230865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 31/06
H01R 13/11
H01R 43/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向から雄型端子が挿入接続される第1の端子接続部と、
前記第1の方向と逆方向の第2の方向から雄型端子が挿入接続される第2の端子接続部と、
前記第1の端子接続部と前記第2の端子接続部とを連結する連結部と、
を有し、
前記連結部は、
前記第1の方向に沿って延びるビードを有していない平板状に形成され、第1の端部に前記第1の端子接続部が接続され、第2の端部に前記第2の端子接続部が接続された基部と、
前記基部の幅方向の両側部の一方に立設され前記第1の端部から前記第2の端部に向かって延びる第1の側壁部と、
前記基部の幅方向の両側部の他方に立設され前記第2の端部から前記第1の端部に向かって延びる第2の側壁部と、
を有し、
前記基部は、前記第2の側壁部が配設された側部に第1のキャリア切断部を有し、前記第1の側壁部が配設された側部に第2のキャリア切断部を有すること、
を特徴とする中継端子。
【請求項2】
前記第1のキャリア切断部は、前記第1の端部に形成され、
前記第2のキャリア切断部は、前記第2の端部に形成されていること、
を特徴とする請求項1に記載の中継端子。
【請求項3】
前記第1の端子接続部及び前記第2の端子接続部は、角筒状に形成され、内部に配設された弾性接触片を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の中継端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中継端子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばワイヤーハーネスや機器等の雄型端子同士を接続するために、両端に雌型の接続部を有する中継端子が用いられる(例えば、特許文献1参照)。中継端子は、2つの接続部と、接続部同士を連結する連結部とを有している。連結部には、雌型の接続部に対する雄型端子の挿入に対して雌型の接続部を保持するために、例えばビード(絞り溝)が配設される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−64318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、両端の接続部の間の距離を長くすることが求められる。しかしながら、連結部を長くすると、ビードの形成によって連結部が変形する虞がある。複数の中継端子は、製造工程において、キャリアにより連結されて形成される。このキャリアの切断工程において、連結部が変形する虞がある。
【0005】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、連結部の変形を抑制することを可能とした中継端子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する中継端子は、第1の方向から雄型端子が挿入接続される第1の端子接続部と、前記第1の方向と逆方向の第2の方向から雄型端子が挿入接続される第2の端子接続部と、前記第1の端子接続部と前記第2の端子接続部とを連結する連結部と、を有し、前記連結部は、前記第1の方向に沿って延びる平板状に形成され、第1の端部に前記第1の端子接続部が接続され、第2の端部に前記第2の端子接続部が接続された基部と、前記基部の幅方向の両側部の一方に立設され前記第1の端部から前記第2の端部に向かって延びる第1の側壁部と、前記基部の幅方向の両側部の他方に立設され前記第2の端部から前記第1の端部に向かって延びる第2の側壁部と、を有し、前記基部は、前記第2の側壁部が配設された側部に第1のキャリア切断部を有し、前記第1の側壁部が配設された側部に第2のキャリア切断部を有する。
【0007】
この構成によれば、連結部は、平板状の基部と、基部の両側部に立設された第1の側壁部及び第2の側壁部とを有し、基部は、第1の側壁部側に第2のキャリア切断部を有し、第2の側壁部側に第1のキャリア切断部を有している。第1のキャリア切断部と第2のキャリア切断部は、基部の長手方向において異なる位置に配設されている。つまり、第1の側壁部と第2の側壁部は、基部の長手方向においてオフセットした位置に配設され、基部の幅方向において一部が重ならないように形成されている。従って、基部はビードを有していないため、加工時における変形が抑制される。また、第1の端子接続部と第2の端子接続部への雄型端子の挿入時における座屈等の変形が抑制される。
【0008】
上記の中継端子において、前記第1のキャリア切断部は、前記第1の端部に形成され、第2のキャリア切断部は、前記第2の端部に形成されていることが好ましい。
この構成によれば、第1のキャリア切断部及び第2のキャリア切断部は、中継端子を連接するキャリア(連接部)を切断した加工跡である。つまり、複数の中継端子がキャリアにて連接して製造される。
【0009】
上記の中継端子において、前記第1の端子接続部及び前記第2の端子接続部は、角筒状に形成され、内部に配設された弾性接触片を有することが好ましい。
この構成によれば、角筒状の第1の端子接続部に挿入された雄型端子は、第1の端子接続部の内面と内部に配設された弾性接触片により挟持され、第1の端子接続部と雄型端子とが電気的に接続される。また、角筒状の第2の端子接続部に挿入された雄型端子は、第2の端子接続部の内面と内部に配設された弾性接触片により挟持され、第2の端子接続部と雄型端子とが電気的に接続される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の中継端子によれば、連結部の変形を抑制することを可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】(a)は中継端子の正面図、(b)は中継端子の側面図、(c)は中継端子の端子接続部を示す拡大図、(d)は連結部を示す拡大断面図。
図2】中継端子の斜視図。
図3】キャリアにより連結された複数の中継端子を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、各形態を説明する。
なお、添付図面は、理解を容易にするために構成要素を拡大して示している場合がある。構成要素の寸法比率は実際のものと、または別の図面中のものと異なる場合がある。
【0013】
図1(a)、図1(b)及び図2に示すように、中継端子1は、導電性に優れた金属板をプレス成形することにより形成されている。中継端子1の材料としては、例えば、青銅、黄銅、銅合金などの銅系合金、アルミニウム合金等を用いることができる。また、これらの材料に、各種のめっき等の表面処理を施してもよい。
【0014】
中継端子1は、2つの端子接続部10,20と、端子接続部10,20を互いに連結する連結部30とを有している。両端子接続部10,20には、図示しない雄型端子が挿入される。なお、図1(a)において、端子接続部10に対して図面上方から雄型端子が挿入され、端子接続部20に対して図面下方から雄型端子が挿入される。
【0015】
連結部30は、雄型端子の挿入方向(図1(a)において上下方向)に沿って延びるように形成されている。端子接続部10,20は、連結部30の両端(図1(a)において上端及び下端)に接続されている。
【0016】
図1(c)に示すように、端子接続部10は、両側(図1(a)において上下両側)に開口した角筒状をなしている。端子接続部10の内部には、先端縁(図1(a)において上端)から折り返された弾性接触片11が配設されている。端子接続部10に雄型端子(図示略)が挿入される。その雄型端子は、端子接続部10の内面と弾性接触片11との間で弾性的に挟持される。これにより、雄型端子と端子接続部10は、互いに電気的に接続される。
【0017】
図1(a)及び図2に示す端子接続部20は、連結部30の上端の端子接続部10と回転した形状を有している。つまり、端子接続部10と端子接続部20とは、互いに回転対象の形状を有している。端子接続部20は、角筒状をなし、内部に弾性接触片21(図2参照)が配設されている。そして、端子接続部10と同様に、端子接続部20は、内部に挿入された雄型端子を端子接続部20の内面と弾性接触片21とにより弾性的に挟持し、雄型端子と電気的に接続される。
【0018】
図1(a)に示すように、連結部30は、基部31と、基部31の左右両側に配設された側壁部41,42とを有している。
基部31は、薄い平板状に形成されている。つまり、本実施形態の連結部30は、基部31にビード(絞り溝)が形成されていない。両端子接続部10,20は、基部31の上下両端部に接続されている。
【0019】
図1(d)に示すように、側壁部41,42は、基部31の端部から、基部31の面と直交する方向(図1(d)において上方向)に立設されている。なお、側壁部41,42と基部31は、1枚の金属板をプレス加工することにより、一体的に形成されている。つまり、側壁部41,42は、基部31に対して屈曲して形成されている。そして、基部31と側壁部41,42とを有する連結部30は、図1(d)において上方に開口したU字状(コ字状)の断面形状を有している。
【0020】
図1(a)に示すように、側壁部41は、基部31の第1の端部31aから第2の端部31bに向かって延びるように形成されている。一方、側壁部42は、基部31の第2の端部31bから第1の端部31aに向かって延びるように形成されている。従って、連結部30は、基部31の第1の端部31aから第2の端部31bにかけて、少なくとも1つの側壁部を有することとなる。
【0021】
基部31は、第1のキャリア切断部32aと第2のキャリア切断部32bとを有している。第1のキャリア切断部32aは、基部31の第1の端部31aにおいて、基部31の両側部の一方の側部(図1(b)において右側側部)に形成されている。基部31は、第1のキャリア切断部32aと側壁部42との間に切り欠き部33aを有している。
【0022】
第2のキャリア切断部32bは、基部31の第2の端部31bにおいて、基部31の両側部の他方の側部(図1(b)において左側側部)に形成されている。基部31は、第2のキャリア切断部32bと側壁部41との間に切り欠き部33bを有している。
【0023】
第1のキャリア切断部32a及び第2のキャリア切断部32bは、製造工程において生じた加工跡である。上述したように、中継端子1は、金属板に打ち抜き加工等を施して形成される。図3に示すように、打ち抜き工程の順送り工程等で必要とされるキャリア(連接部)50により複数の中継端子1が連続的に接続されて形成される。なお、図3では、キャリア50の長さ(図において左右方向の長さ)を短く描いている。連接状態の複数の中継端子1に対して、キャリア50を切断して個々の中継端子1が形成される。このキャリア50の切断跡(加工跡)が第1のキャリア切断部32a及び第2のキャリア切断部32bとなる。
【0024】
切り欠き部33a,33bは、側壁部41と側壁部42との間の距離を所望の値とするように形成されている。図1(d)に示すように、側壁部41,42は、端子接続部10と同じ幅となるように、基部31に対して屈曲して形成されている。このような幅にて側壁部41,42を形成するため、図1(a)に示すように、基部31の側部から内側に向かって切り欠き部33a,33bを形成することで、側壁部41,42の位置を、端子接続部10の幅と等しくするように設定する。
【0025】
(作用)
図1(a)及び図1(b)に示すように、中継端子1は、2つの端子接続部10,20と、2つの端子接続部10,20を互いに連結する連結部30を有している。連結部30は、基部31と、基部31の両側部に配設された側壁部41,42とを有している。基部31は、薄い平板状に形成されている。つまり、基部31はビード(絞り溝)を有していない。従って、ビード等の加工により生じる歪みは、本実施形態の基部31に生じていない。
【0026】
側壁部41,42は、基部31の両端部から、基部31の面と直交する方向に向かって立設されている。この基部31と側壁部41,42は、連結部30において、U字状(コ字状)の断面を形成する。従って、側壁部41,42は、基部31、つまり連結部30の撓みを抑制する。このため、端子接続部10,20に対して雄型端子を挿入接続した場合、連結部30の座屈、変形が抑制される。
【0027】
側壁部41,42は、基部31の長手方向において、オフセットした位置に配設されている。詳述すると、側壁部41は、基部31の第1の端部31aから、第2の端部31bに向かって延びるように形成されている。一方、側壁部42は、基部31の第2の端部31bから、第1の端部31aに向かって延びるように形成されている。そして、基部31は、第1の端部31aに第1のキャリア切断部32aを有し、第2の端部31bに第2のキャリア切断部32bを有している。従って、側壁部41と側壁部42は、基部31の幅方向において、一部が重ならないように形成されている。このため、基部31は、その全体(第1の端部31aから第2の端部31bまでの間)において、少なくとも1つの側壁部を有していることとなる。このため、基部31の全体において、撓みが抑制され、連結部30の座屈、変形が抑制される。
【0028】
上述したように、基部31は、第1の端部31aに第1のキャリア切断部32aを有し、第2の端部31bに第2のキャリア切断部32bを有している。つまり、基部31の両側部に側壁部41,42と第1のキャリア切断部32a及び第2のキャリア切断部32bを有している。第1のキャリア切断部32a及び第2のキャリア切断部32bは、キャリア50を切断した加工跡である。中継端子1は、打ち抜き工程の順送り工程等で必要とされるキャリア50によって複数連接した状態で形成され、キャリア50を切断して個々の中継端子1となる。このように、打ち抜き工程の順送り工程により中継端子1を形成することができるため、連結部30の変形を抑制しつつ、中継端子1の製造コストの上昇を抑制することができる。また、ビードを形成する工程を必要としないため、容易に中継端子1を製造することができる。
【0029】
基部31は、第1の端部31aに第1のキャリア切断部32aを有している。第1のキャリア切断部32aは、キャリア50を切断した加工跡である。側壁部41は、第1の端部31aから、第2の端部31bに向かって延びるように形成されている。つまり、基部31の第1の端部31aにおいて、側壁部41と第1のキャリア切断部32aとが対向する位置に形成されている。このため、キャリア50を切断する際に、側壁部41によって基部31の変形が抑制される。
【0030】
同様に、基部31は、第2の端部に第2のキャリア切断部32bを有している。第2のキャリア切断部32bは、キャリア50を切断した加工跡である。側壁部42は、第2の端部31bから、第1の端部31aに向かって延びるように形成されている。つまり、基部31の第2の端部31bにおいて、側壁部42と第2のキャリア切断部32bとが対向する位置に形成されている。このため、キャリア50を切断する際に、側壁部42によって基部31の変形が抑制される。
【0031】
以上記述したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)中継端子1は、第1の方向から雄型端子が挿入接続される端子接続部10と、第1の方向と逆方向の第2の方向から雄型端子が挿入接続される端子接続部20と、端子接続部10と端子接続部20とを連結する連結部30と、を有している。連結部30は、基部31と側壁部41,42とを有している。基部31は、第1の方向に沿って延びる平板状に形成され、第1の端部31aに端子接続部10が接続され、第2の端部31bに端子接続部20が接続されている。側壁部41は、基部31の幅方向の両側部の一方に立設され第1の端部31aから第2の端部31bに向かって延びるように形成されている。側壁部42は、基部31の幅方向の両側部の他方に立設され第2の端部31bから第1の端部31aに向かって延びるように形成されている。このように、連結部30は、平板状の基部31と、基部31の両側部に立設された側壁部41及び側壁部42とを有している。従って、基部31はビードを有していないため、加工時における変形を抑制することができる。また、端子接続部10と端子接続部20への雄型端子の挿入時における座屈等の変形を抑制することができる。
【0032】
(2)基部31は、第1の端部31aにおいて、側壁部42が配設された側部に第1のキャリア切断部32aを有し、第2の端部31bにおいて、側壁部41が配設された側部に第2のキャリア切断部32bを有している。第1のキャリア切断部32a及び第2のキャリア切断部32bは、中継端子1を連接するキャリア(連接部)を切断した加工跡である。つまり、複数の中継端子1がキャリアにて連接して製造される。このため、複数の中継端子1を容易に形成することができる。
【0033】
(3)上記の中継端子1において、端子接続部10及び端子接続部20は、角筒状に形成され、内部に配設された弾性接触片11,21を有している。角筒状の端子接続部10に挿入された雄型端子は、端子接続部10の内面と内部に配設された弾性接触片11により挟持され、端子接続部10と雄型端子とを電気的に接続することができる。また、角筒状の端子接続部20に挿入された雄型端子は、端子接続部20の内面と内部に配設された弾性接触片21により挟持され、端子接続部20と雄型端子とを電気的に接続することができる。
【符号の説明】
【0034】
10…端子接続部(第1の端子接続部)、20…端子接続部(第1の端子接続部)、11,21…弾性接触片、30…連結部、31…基部、31a…第1の端部、31b…第2の端部、32a…第1のキャリア切断部、32b…第2のキャリア切断部、41…側壁部(第1の側壁部),42…側壁部(第2の側壁部)。
図1
図2
図3