(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記テーパネジの少なくとも小径側には、油圧調整孔部と螺合したテーパネジを回転させる工具が嵌合する嵌合部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の車両の重量測定装置。
【背景技術】
【0002】
自動車、特に、種々の荷物などを運搬するトラックやバンなどの商用車において、法定積載量を超えて道路を通行する不法な過積載が社会問題となっている。これは、一度にたくさんの荷物を運搬したほうが運送費を少なくできるからである。
【0003】
しかし、このような過積載は次のような種々の問題を招く虞を有しており、避けなければならないものである。
(1)過積載により自動車の運動性能が低下したり、構成部品が破損したりする虞があるため、事故の原因となることがある。例えば、車軸(ハブ)の破損、タイヤの破損(バースト)、制動距離が長くなりブレーキが過熱して効きにくくなる、車両が横転し易くなるなど、事故等を招く要因を多数有している。
(2)過積載により道路の損傷が激しくなるため、道路のメンテナンス費用が掛かる。
【0004】
このような過積載の防止が困難となっている原因は多々あるが、その内の一つには、積載重量が運転手あるいは同乗者などから容易に認識できないということにある。
すなわち、従来、車両の荷重測定(積載重量測定)は、台秤に測定対象の車両を載せて行っていた。
しかし、台秤の設置は、施設が大がかりで広い設置スペースを必要とするため、及び設置コストが嵩むため、設置できる台秤の台数が制限され多くの車両を測定することなど物理的にも無理があった。
【0005】
そこで、昨今では、特許文献1などに開示されているように、車両自体に搭載して荷重を測定することを可能とした簡易的な荷重測定装置が多々提案されている。
【0006】
例えば、特許文献1に開示の先行技術は、車両の荷重が掛かることで伸縮する被荷重部材の異なる取付箇所に2つの溶着部分が溶着されるベースアッシーと、該ベースアッシーにより支持され、前記車両に掛かる荷重の変化により前記2つの溶着部分が接近離間する方向に前記ベースアッシーが伸縮することで出力が変化する圧縮歪検出用センサ素子と、該圧縮歪検出用センサ素子の出力を増幅するアンプが実装された回路基板とで構成し、圧縮歪を検出することにより荷重測定する簡易的な荷重測定装置である。
【0007】
しかし、従来のこの種の荷重測定装置にあっては、特許文献1のように構成が複雑でかつ回路基板やアンプなどを備える必要があるためコスト高を招いていた。また、これら荷重測定装置が衝撃を受け易い箇所に備えられるため、回路基板やアンプなどに支障を来す虞もあった。
【0008】
そこで本願の発明者等は、懸架装置における車体との取付部近傍に組み込まれている軸受装置に着目し、懸架装置に掛かる圧縮方向荷重を計測し得る簡易かつ安価で耐久性に優れた車両の重量測定装置を提供することで上記問題点を解消することに成功し、先に出願をしている(例えば、特願2015−241305号)。具体的には、重量測定装置を懸架装置に一体に備える構成であって、懸架装置のコイルスプリングによって、ピストンがインナーカラーの外径に摺接しつつ軸方向に案内され、ダイアフラムを押圧することによって油室内に充填されている測定流体に圧力を掛け、その圧力変化を圧力センサで検出する構成である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の車両の重量測定装置の一実施形態について、添付図面を参照して説明する。
本実施形態では、本発明の車両の重量測定装置を自動車の懸架装置(サスペンション)1に用いた実施の一形態を示す。なお、本実施形態は、本発明の一実施形態であって、何等これに限定解釈されるものではなく本発明の範囲内で設計変更可能である。
【0019】
図示は省略するが、例えば、懸架装置(サスペンション)1の上側は、取付部(トッププレート)7を介して自動車の本体フレーム(クロスメンバ)に固定され、下側はフレームに枢着されたロア・アームを介してアクスル(車軸)に固定される。
なお、
図1に示す懸架装置1は、本発明の車両の重量測定装置を組み込んだ以外は周知の構成であって、特に本実施形態に限定解釈されるものではなく本発明の範囲内で設計変更可能である。
図1中、符号3はショックアブソーバ、符号5はコイルスプリングを示す。以下、本発明の特徴的部分である車両の重量測定装置について説明し、それ以外の懸架装置の構成についての説明は省略する。
【0020】
車両の重量測定装置は、車両側に固定される取付部(トッププレート)7と、取付部7の下面7bに備えられるインナーカラー33及びアウターカラー35と前記取付部7とによって挟まれて固定されるダイアフラム11と、ダイアフラム11と当接し、ダイアフラム11を鉛直方向(図中矢印100で示す方向)に押圧可能なピストン43と、懸架装置1のコイルスプリング5の一端(上端)を受けるブッシュ47と、ピストン43とブッシュ47との間に介在される軸受装置57と、取付部7とダイアフラム11との間で形成され、所定の測定流体(作動油)Rを充填してなる油室9と、取付部7の上面7aに備えられ、油室9内に充填されている測定流体Rの圧力変化を検出し得る圧力センサ21と、油圧調整機構16とで構成されている(
図1乃至
図4参照。)
【0021】
取付部(トッププレート)7は、所定の肉厚を有する短尺円筒状に形成され、上面7a側を車両側に固定するとともに、環状に開口する溝部9cを下面7b側に設けてなり、外周端から鉛直方向で下方に向けて薄肉の円筒状に環状壁部7cを突出している。
【0022】
また、取付部7には、自動車の本体フレーム(例えばクロスメンバ)に締結固定するため、ボルト15を挿通する複数個のボルト挿通孔7gを設けるとともに、後述するストッパを固定するための連結ボルト20を締結する複数個のボルト固定孔7hを備えている。
また、取付部7の下面7bの中心領域には、インナーカラー33の円筒状突部33bを嵌合する嵌合孔部7iを凹設している。
【0023】
溝部9cは、取付部7の下面7bにて環状に凹設されているダイアフラム収容凹部13内にて取付部7の上面7a方向に向けて断面視ドーム状に形成されている。
ダイアフラム収容凹部13は、溝部9cの内径側に所定幅で環状に構成された内側の面部13aと、溝部9cの外径側に所定幅環状に構成された外側の面部13bとを備えている。
【0024】
前記取付部7における車体側に面した上面7aには、圧力センサ21を連結可能なセンサ連結部7dが形成されている。
また、取付部7には、溝部9cと一箇所又は複数個所で連通する連通路9aがセンサ連結部7dに向けて内設されている。
【0025】
前記センサ連結部7dは、圧力センサ21の先端に設けた円筒状の検出部21aを受ける円筒状の挿入部7fが、上面から内部に向けて凹設され、挿入口7eが鉛直方向で上方に向けて円筒状に突出するとともに開口している。また、挿入部7fの底面領域には、前記連通路9aと連通する流体溜まり9bが形成されている。
なお、センサ連結部7dと圧力センサ21との接続は、測定流体Rが漏れないよう接続することが必要である。
【0026】
圧力センサ21は、油室9内に充填されている測定流体Rの圧力変化を検出し得るものであって、例えば、圧力を測定し、これを電圧信号に変換して伝送される周知構造のものが適宜本発明の範囲内において選択使用されるものであり、特に限定解釈はされず、本発明の範囲内で最適なものが適宜選択可能である。
本実施形態では、センサ連結部7dに検出部21aを挿入するとともに、先端検出面21bを油室9内に臨ませ、突き当てフランジ面部21cをセンサ連結部7dの開口縁部に密着させて鉛直方向に立設されている。
【0027】
本実施形態では、突き当てフランジ面部21cと開口縁部との間にワッシャ23を介して固定している。また、側定流体の漏洩防止を図るため、所定の密封装置、本実施形態ではOリング25を配設している。
なお、圧力センサ21は、必ずしも取付部7の上面7aの中心に配設することはなく、センサ連結部7dを取付部7の上面7aの任意位置に設けて配設することが可能で、車体側の取り付けにおいて支障のない位置を採択して配設することが可能である。
【0028】
ダイアフラム11は、前記溝部9cの開口領域9dを覆い、前記溝部9cとともに所定空間の油室9を形成する環状に形成されており、取付部7の下面7bにて環状に形成されているダイアフラム収容凹部13に嵌着されている。
【0029】
ダイアフラム11は、例えば、本実施形態では、内径側と外径側にそれぞれ肉厚の第一密封領域27と第二密封領域29をそれぞれ環状に形成するとともに、第一密封領域27と第二密封領域29の間で薄肉状に連結されて変形可能に構成された環状の押圧領域31を備えて構成されている。
押圧領域31は、前記溝部9cの開口領域9dを覆う程度の幅をもって構成され、この押圧領域31と取付部7の溝部9c(連通路9a及び流体溜まり9bを含む)とによって所定領域の油室9が形成される。
第一密封領域27と第二密封領域29は、ダイアフラム収容凹部13の鉛直方向深さよりも肉厚に形成されており、インナーカラー33及びアウターカラー35によって挟み込まれたときに圧縮されて密封可能な厚さとする。
【0030】
ダイアフラム11の材質は、柔軟で耐久性(耐寒性・耐摩耗性・耐油性)がある素材であれば良く、特に限定解釈されるものではないが、例えば、ニトリルゴム・テフロン(登録商標)・クロロプレンゴム・ふっ素ゴム・エチレンプロピレンゴムなど、流体の特質に合った材料を選択する。
また、薄肉のステンレス製などからなる金属製のダイアフラムであってもよく本発明の範囲内である。
【0031】
また、本実施形態では、油室内の圧力を調整する油圧調整機構16を備えている。
油圧調整機構16は、油室側と大気側とを連通する油圧調整孔部17と、油圧調整孔部17に螺合するテーパネジ18とからなる。
油圧調整孔部17は、取付部7の断面視ドーム状に形成された溝部9c(油室側)から取付部7の上面7a(大気側)に連通して形成され、油圧調整孔部17の油室側端17aが最も大径で、大気側端17bが最も小径となるように、油室側端17aから大気側端17bに向けて徐々に縮径してなるテーパ形状をしている。即ち、油圧調整孔部17の内周面は大気側端17bに向かって内径方向のテーパ角を有して形成されている。
また、油圧調整孔部17の内周面には、油室側端17aから大気側端17bに向けて所定長さ(孔部の長さ方向)の雌ネジ部17cが形成されている。
【0032】
テーパネジ18は、所謂「止めネジ」と称される頭の無い円柱状のネジであって、その外周面は、全長にわたって雄ネジ部18cが形成されるとともに、油室側端18aから大気側端18bに向けて徐々に縮径してなるテーパ形状をしている。
テーパネジ18の外周面は大気側端18bに向かって内径方向に、前記油圧調整孔部17の内周面と同様のテーパ角を有し、テーパネジ18のネジ長さは、油圧調整孔部17の孔長よりも短い。例えば、本実施形態では、テーパネジ18のネジ長さは、油圧調整孔部17の孔長さの約1/2の長さとなっている。
【0033】
さらに、テーパネジ18の大気側端18b(ネジ小径側端)は、油圧調整孔部17の大気側端17b(孔部小径側端)よりも大径に形成されており、油圧調整孔部17の油室側端17a(孔部大径側端)から油圧調整孔部17内に挿し込まれることにより、テーパネジ18の雄ネジ部18cと油圧調整孔部17の雌ネジ部17cとが螺合し、テーパネジ18を締めこむことができる。そして、双方のテーパ周面が重なると、雄ネジ部18cと雌ネジ部17cとが緊密に噛みあい緊締される。
このとき、テーパネジ18の大気側端18bは、油圧調整孔部17の大気側端17bよりも十分に奥まった位置で緊締されており、取付部7の上面7aに突出することは無い。
なお、油圧調整孔部17にテーパネジ18を組み付ける段階では、テーパネジ18は比較的緩い締め付けトルクで締めこまれることにより設置されている。
【0034】
また、テーパネジ18には、テーパネジ18が油圧調整孔部17の雌ネジ部17cと螺合した状態で、工具を差し込んで回転させるための嵌合部19を備えている。本実施形態では、嵌合部19は、テーパネジ18の大気側端18b(ネジ小径側端)の端面の中央に、六角形の凹部として形成される(所謂六角穴付き止めねじ)とともに、テーパネジ18の油室側端18a(ネジ大径側端)の端面の中央に、六角形の凹部として形成された油室側嵌合部19aが備えられている。
【0035】
本実施形態では、嵌合部19及び嵌合部19aを六角形の凹部として形成した場合を説明したが、嵌合部19及び嵌合部19aの形状については、これに限定解釈されるものではなく、テーパネジ18を回転させることが可能であれば、他の形状であっても良い。例えば、嵌合部19及び嵌合部19aに端面を横断するスリット(溝)部とした形状(所謂すりわり付き止めネジ)であっても良い。
また、本実施形態では、一例として大気側端18b(ネジ小径側端)の端面に嵌合部19を備え、さらに、油室側端18a(ネジ大径側端)の端面にも油室側嵌合部19aを備えた場合を説明したが、これに限定解釈されるものではなく、少なくともテーパネジ18の大気側端18b(ネジ小径側端)の嵌合部19が備えられていれば良い。
【0036】
取付部7の上面7a側から油圧調整孔部17内に工具(図示しない)を挿し入れるとともに、油圧調整機構16のテーパネジ18の嵌合部19に工具を嵌め込み、比較的高い締め付けトルクにて締結方向に回転させた場合には、テーパネジ18は、油圧調整孔部17を締結方向に回転することにより、油圧調整孔部17の大気側端17bの方向に移動する。これにより、油室9の容積が拡大するため油室9内の圧力が低下する。また、テーパネジ18を弛緩方向に回転させると、油室側端17aの方向に移動して、油室9の容積が縮小するため油室9内の圧力が上昇する。
【0037】
本実施形態では、重量測定装置の油室9内の圧力が一定となるように管理されている。
具体的には、圧力センサ21を取付部(トッププレート)7のセンサ連結部7dに取り付ける作業において、まず、重量測定装置に荷重が掛かっていないか、あるいは所定の荷重が掛かった状態にて、圧力センサ21の検出部21aがセンサ連結部7dに挿入されて鉛直方向にネジ込まれる。
このとき、突き当てフランジ面部21cとセンサ連結部7dの開口縁部との間に介在するワッシャ23及びOリング25が押し潰され、Oリングの弾性変形によって、突き当てフランジ面部21cをセンサ連結部7dの開口縁部との間が密封される。
【0038】
圧力センサ21が取り付けられると、油室9内に臨むまで進入したセンサの先端検出面21bによって油室9の容積が減少し、測定流体(作動油)Rが過剰となるため、油室9内の圧力が上昇する。また、ワッシャ23及びOリング25が押し潰される程度によって、圧力センサ21の先端検出面21bの油室9内への進入量も変わるため、組み立てられた重量測定装置毎に油室9内の圧力にばらつきが生じ、総じて高い圧力となっている。
【0039】
そこで、油圧調整機構16のテーパネジ18を工具にて緊締方向に回転することで、油圧調整孔部17内のテーパネジ18を大気側17b方向に移動させて油室9の容積を微小に拡大し、過剰となっている油室9内の圧力を低下させる。このとき、圧力センサ21による電圧信号を確認しつつ、圧力値が目標の公差内に入るように調整する。
このように、組み立て後に荷重測定装置内の油圧を調整して管理することができるようになったため、個別に測定値の検定をする必要もない。
【0040】
なお、本実施形態では、油圧調整孔部17及びテーパネジ18が取付部7の上面7a(大気側)に向けて縮径するテーパ形状としているため、油室9の圧力を低下させるために、テーパネジ18を緊締する方向(油圧調整孔部17の大気側端17bの方向)に回転させる。このとき、螺合するテーパネジ18の雄ネジ部18cと油圧調整孔部17の雌ネジ部17cとの噛み合せは、高い回転トルクによる緊締により、油圧の調整前よりも緊密となるため、測定流体(作動油)Rが密封されて漏れる虞もなくなる。
言い換えれば、仮に、油圧調整孔部17及びテーパネジ18が取付部7の上面7a(大気側)に向けて拡径するテーパ形状であった場合には、測定流体(作動油)Rが密封されず漏れる虞がある。すなわち、上記圧力の調整において、テーパネジ18を油圧調整孔部17の大気側端17bの方向に移動させた場合、螺合するテーパネジ18の雄ネジ部18cと油圧調整孔部17の雌ネジ部17cとの噛み合せが解かれる方向に回転するため、測定流体(作動油)Rが漏れる隙間が生じてしまう。このため、本実施形態では、油圧調整孔部17及びテーパネジ18が取付部7の上面7a(大気側)に向けて縮径するテーパ形状に形成されている。
【0041】
また、本実施形態では、一つの油圧調整機構16を備えた場合を想定しているが、油圧調整機構16の数はこれに限定解釈されるものではなく、上記圧力の調整において必要とされる油室9の容積拡大量に応じて複数の油圧調整機構16が備えられても良い。その場合の増設された油圧調整機構16の構成については、上述した油圧調整機構16と同様の構成とすれば良い。
【0042】
このように、圧力が一定となるように管理された油室9には、所定の測定流体Rが気泡を発生させることなく一杯に密封充填されている。測定流体Rは、ピストン43の移動によってかかる圧力が変化可能である。
【0043】
インナーカラー33は、本実施形態では、取付部7の環状壁部7cに囲まれた領域内に収まる程度の鉛直方向の厚みをもって形成された所定の短尺円筒状に形成された本体部33aと、本体部33aの上面の中心に小径円筒状に立ち上げられた円筒状突部33bとを有して構成されている。
【0044】
円筒状突部33bは、取付部7の下面7bの中心に凹設されている嵌合孔部7iに嵌合可能な外径を有しているとともに、懸架装置1を構成するショックアブソーバ3のロッド3a先端と、ロッド3a先端に固定されるナット4を収容可能な収容孔部33cを貫通して形成している。
【0045】
本体部33aは、取付部7の嵌合孔部7iに円筒状突部33bを嵌合して配設した際に、ダイアフラム収容凹部13の内側の面部13aと対向する大きさに形成されている。
本体部33aの上面33a´と、前記取付部7の下面7bにおける前記開口領域9dより内側の面部(ダイアフラム収容凹部13の内側の面部13a)と、の間で、前記ダイアフラム11の第一の密封領域27を挟み込んで密封固定している。
【0046】
アウターカラー35は、本実施形態では、取付部7の環状壁部7cに囲まれた領域内に収まる程度の鉛直方向の厚みをもって形成された所定の短尺円筒状に形成された本体部35aと、本体部35aの中心に設けた挿通孔35bと、挿通孔35bよりも僅かに外径方向にずれた位置で、本体部35aの下面から円筒状に垂設された円筒状垂設部35cとを有して構成されている。
【0047】
本体部35aは、取付部7の環状壁部7cの内周面に嵌合可能な外径を有するとともに、ダイアフラム収容凹部13の外側の面部13bと対向する内径を有する大きさに形成されている。
本体部35aの上面35a´と、前記取付部7の下面7bにおける前記開口領域9dより外側の面部(ダイアフラム収容凹部13の外側の面部13b)と、の間で、前記ダイアフラム11の第二密封領域29を挟み込んで密封固定している。
また、本実施形態では、前記取付部7に設けたボルト挿通孔7gと鉛直方向で同軸上に同径のボルト挿通孔(大径)35dを同一数設けるとともに、ストッパを締結固定するためのボルト固定孔7hと同径のボルト挿通孔(小径)35eを同一数設けている。
【0048】
円筒状垂設部35cは、後述するブッシュ47とストッパ部49との間に配設可能な鉛直方向長さと外径及び内径を有して形成されている。
【0049】
従って、本実施形態では、インナーカラー33の本体部33aの外径とアウターカラー35の本体部35aの内径との間には、略ドーム状に形成される溝部9cと対向する環状の隙間37が形成され、この隙間37に、後述するピストン43が対向して配設される。
【0050】
本実施形態では、ダイアフラム11の第一密封領域27の上面部27a及び第二密封領域29の上面部29aと取付部7の下面(ダイアフラム収容凹部13の内側の面部13aと外側の面部13b)との間の密封固定領域A1,A2と、ダイアフラム11の第一密封領域27の下面部27bとインナーカラー33の上面33a´との間の密封固定領域A3と、第二密封領域29の下面部29とアウターカラー35の上面35a´との間の密封固定領域A4は、それぞれ面シールによる密封構造を採用している。
【0051】
また、これら面シールによる密封構造とともに、別途シール部材による密封構造をも併せて採用している。
【0052】
本実施形態では、ダイアフラム収容凹部13の内側の面部13aと外側の面部13bに大小径の異なる二つの環状のシール溝39を設けるとともに、それぞれのシール溝39にOリング41を挿入して第一密封領域27の上面部27a及び第二密封領域29の上面部29aとの間で前記Oリング41が圧縮されて密封している。
【0053】
本実施形態では、さらに、インナーカラー33の上面33a´とアウターカラー35の上面35a´にそれぞれ大小径の異なる二つの環状のシール溝39設けるとともに、それぞれのシール溝39にOリング41を挿入して第一密封領域27の下面部27b及び第二密封領域29の下面部29bとの間、取付部7の下面7bとの間で、前記それぞれのOリング41が圧縮されて密封している。
【0054】
第一密封領域27の上面部27a及び第二密封領域29の上面部29aとの間で前記Oリング41が圧縮されて密封しているため、油室9からの測定流体Rの漏洩防止が十分に図り得るが、本実施形態によれば、上述のとおり幾重もの密封構造を採用しているため、もしも第一密封領域27と第二密封領域29の密封構造から測定流体Rの漏れが発生したとしても、その他の密封構造領域にて測定流体Rの漏洩が防げるため、油室9からの測定流体Rの漏洩防止が確実に図り得る。よって、密封信頼性が極めて高いものとなる。
また、本実施形態では、上述のとおり相対移動がない領域に密封構造を設けたためシール耐久性も高い。
【0055】
前記各シール部材は、密封固着領域及び当接領域を構成する一方の部材にシール溝39を設けるとともに、前記シール溝39にOリング41を挿入して他方の部材との間で前記Oリング41が圧縮されて密封しているものであればよく、シール溝39とOリング41をいずれに設けるかは限定されずいずれであっても本発明の範囲内である。
【0056】
ピストン43は、本実施形態では、インナーカラー33の本体部33aの外径よりも小径に形成された円筒部43aと、同じくインナーカラー33の本体部33aの外径よりも小径で、円筒部43aの上端縁から水平方向に連続して一体に設けたフランジ部43bと、フランジ部43bの外周端から拡開状に鉛直方向で上方に向けて連続して一体に設けたテーパ円筒部43cと、テーパ円筒部43cの上端から連続して一体に立ち上げ形成された大径の短尺円筒部43dと、短尺円筒部43dから水平方向に連続して一体に設けられるフランジ状の押圧面部43eとで構成されている。
【0057】
前記円筒部43aは、中心に上下方向で貫通するロッド挿通孔43fを設けており、ロッド挿通孔43fは、ロッド3a先端の段差部3a´が当接可能な受け部43gを設けて大径孔部43f´と小径孔部43f´´が連続して形成されている。
【0058】
ピストン43は、ロッド挿通孔43fに挿通して円筒部43aの上面に突出した懸架装置1を構成するショックアブソーバ3のロッド3a先端を、ナット4を介して取り付け固定して懸架装置1の長さ方向に移動可能に備えられている。
そして、前記インナーカラー33の外径と前記アウターカラー35の内径との間の環状の隙間37に、ピストン43の押圧面部43eを位置せしめ、懸架装置1のスプリング5の弾発力により前記ダイアフラム11を押圧可能に備えられている。
また、本実施形態のピストン43は、短尺円筒部43dの内面がインナーカラー33の本体部33aの外径に沿って鉛直方向に進退可能にガイドされている(図面による横方向からの荷重(水平方向荷重)はインナーカラー33が受けることとなる)。
また、ピストン43とインナーカラー33の外径との摺接領域は、径方向に位置決めされる必要があるため、印籠構造を採用している。
【0059】
本実施形態においてピストン43は、パッド45を介してダイアフラム11に当接する構造を採用している。
パッド45は、ダイアフラム11の押圧領域31の下面に当接可能な径の環状に形成されており、特に限定解釈されるものではないが、ダイアフラム11とピストン43との間で摺動するため、自己潤滑性に優れた硬質の合成樹脂材、例えばデルリン(登録商標)等のポリアセタール樹脂からなるものなどが好ましい。
なお、パッド45を介さずに直接ピストン43が当接する形態であっても本発明の範囲内である。
また、本実施形態では、ピストン43の押圧面部43eの上面の内径寄りには、周方向に連続して鉛直方向で上方に向けて突設された環状の突条61が一体に設けられている。この突条61は、ピストン43の押圧面部43eの上面に当接するパッド45の内径が嵌合する外径を有しており、パッド45の水平方向のずれを抑止している。
【0060】
ブッシュ47は、ピストン43の円筒部43aを内装可能な円筒状の貫通孔47bを備えた大径状円筒部47aと、大径状円筒部47aの上端から水平方向で外側に向けて連続して一体に設けたフランジ部47cと、フランジ部47cの外周縁から水平方向で外側に向けて突設した環状の係止片47dと、フランジ部47cの上面から鉛直方向で上方に向けて突設した環状壁部47eとを備えて構成されている。大径状円筒部47aは上下面を開口して形成されている。フランジ部47cの下面には、懸架装置1を構成するコイルスプリング5の一端(上端)5aが鉛直方向で突き当たる(
図1参照。)。
【0061】
本実施形態においてブッシュ47は、ストッパ部49を介して取付部7に一体に備えられている。
【0062】
ストッパ部49は、懸架装置1への取り付け作業性を向上させるために採用されているものであって、本実施形態では、アウターカラー35と同一外径で、かつ内径はアウターカラー35の下面に突設されている円筒状垂設部35cよりも僅かに大径で遊嵌可能あるいは同径で嵌合可能な円環状に形成された環状取付部49aと、環状取付部49aの内径から鉛直方向で下方に向けて垂設された円筒部49bと、円筒部49bの下端から水平方向で内側に向けて突設された係止鍔部49cとで構成されている。
環状取付部49aには、アウターカラー35のボルト挿通孔35eと取付部7のボルト固定孔7hとに鉛直方向で同軸に配されるようにボルト挿通孔49dが形成されている。
【0063】
従って、ストッパ部49のボルト挿通孔49dを、アウターカラー35のボルト挿通孔35eと取付部7のボルト固定孔7hを介して同軸上に連通させ、連結ボルト20を介して締結すると、係止鍔部49cが、ブッシュ47の係止片47dを鉛直方向で下方から受けるようにして係止してブッシュ47を取付部7と一体化させることができる。
このとき、アウターカラー35の円筒状垂設部35cは、ブッシュ47の環状壁部47eの外面とストッパ部49の内面との間に形成される環状隙間51に収容される。
また、ストッパ部49を取り付けた際に、ブッシュ47の環状壁部47eの上端面とアウターカラー35の本体部35aの下面との間、及びブッシュ47の係止片47dの上面とアウターカラー35の円筒状垂設部35cの下端面との間には、それぞれ所定の隙間53,55が形成されている。この隙間53,55の範囲内でブッシュ47が鉛直方向に移動可能である。
【0064】
軸受装置57は、前記ピストン43の押圧面部43eの下面と、前記ブッシュ47のフランジ部47cの上面との間に介在されて相対回転可能に構成されており、本実施形態では、外輪57aと、内輪57bと、外輪57aと内輪57bとの間に組み込まれる複数個の転動体(玉)57cと、転動体57cを保持案内する保持器57dとで構成されているスラストアンギュラ玉軸受が採用されている。なお、軸受装置57の内輪57bは、ブッシュ47の環状壁部47eの内面に嵌合して備えられている。
懸架装置1のショックアブソーバ3の軸とスプリング5の軸はオフセットしているため、スプリング入力はモーメントになる。よって、モーメント荷重を受けるためスラストアンギュラ玉軸受を適用している。また、本実施形態では、前記ピストン43(パッド)とダイアフラム11との接触面を、前記スラストアンギュラ玉軸受(軸受装置)57の接触角方向の延長戦が通過するように配置している。すなわち、スプリング5の入力とダイアフラム11の荷重作用線上に軸受の荷重作用線が乗るようにスラストアンギュラ玉軸受(軸受装置)57の接触角を選択したため剛性を高く保つことができる。
【0065】
また、本実施形態では、ピストン43の押圧面部43eがパッド45を介してダイアフラム11を押圧可能に構成した一例を説明したが、ダイアフラム11を押圧する構成はこれに限定解釈されるものではなく、懸架装置1のスプリング5の弾発力により前記ダイアフラム11を押圧可能に構成されていれば良い。例えば、前記軸受装置57の外輪57aの構成に押圧面部43eの形状を含み、外輪57aの押圧面部43eがダイアフラム11を押圧する構成であっても良い。
なお、本実施形態では、本発明による荷重測定装置を前輪用の懸架装置に組み込んだ場合を説明したが、これに限定解釈されるものではなく、後輪用の懸架装置に組み込むことも可能である。