特許第6784199号(P6784199)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6784199
(24)【登録日】2020年10月27日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】画像処理装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/00 20060101AFI20201102BHJP
   B66B 3/00 20060101ALI20201102BHJP
   G06T 3/00 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
   B66B5/00 G
   B66B3/00 R
   G06T3/00 710
【請求項の数】5
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-45268(P2017-45268)
(22)【出願日】2017年3月9日
(65)【公開番号】特開2018-150086(P2018-150086A)
(43)【公開日】2018年9月27日
【審査請求日】2019年1月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】石岡 早織
【審査官】 今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−005117(JP,A)
【文献】 特開2012−087569(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3066594(JP,U)
【文献】 特開2016−098063(JP,A)
【文献】 特開2005−286820(JP,A)
【文献】 国際公開第97/050252(WO,A1)
【文献】 特開2019−012302(JP,A)
【文献】 特開2018−164168(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00 − 5/28
B66B 3/00 − 3/02
G06T 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
360度カメラで撮影された、エレベータの昇降路内の360度画像を平面画像へ展開して表示する際の、前記360度画像の切れ目となる境界を規定する境界情報を取得する境界情報取得部と、
前記境界情報により規定される境界を複数の360度画像に対して適用することにより、各360度画像を平面画像へ展開する展開部と、
前記360度画像の画像データに対する画像認識処理により、前記エレベータの昇降路およびかごの少なくとも一方の構造的特徴に基づいて予め定められた条件を満たす部分を特定し、その部分を前記境界とする境界情報を生成して前記境界情報取得部へ提供する第1境界情報生成部と、を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記境界情報取得部は、平面上に位置する互いに異なる4つの方位に対応する4つの平面画像へ360度画像を分割しつつ展開するために必要な境界情報を取得することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記第1境界情報生成部は、前記条件を満たす部分を前記境界の1つとして特定した後、前記昇降路の寸法および前記かごのサイズの少なくとも一方の比率に基づき、残りの前記境界を特定する、請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記展開部によって展開された4つの平面画像を横に並べた画面を生成する画面生成部をさらに備えることを特徴とする請求項2または3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記画面生成部は、前記各360度画像に対応する横に並べた前記平面画像の組みを縦に並べた画面を生成することを特徴とする請求項に記載の画像処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータの昇降路内を撮影した画像を処理する画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータにおいては、昇降路内の点検や異常検知のために、かごにカメラを設置して昇降路内を撮影することが行われている。その際、通常のカメラを使用した撮影では、昇降路内の四方を別々に撮影する必要が生じ不便であることから、全天球カメラの使用が検討されている。全天球カメラとは、上下左右全方位の360度パノラマ撮影を行うカメラであり、全方位カメラとも呼ばれている。
【0003】
全天球カメラにより撮影された画像は、画像処理を施すことにより、複数の領域に分割することができ、分割された領域ごとに画面表示することができる。このように分割を行うことについては、例えば特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−54423号公報(2016年4月14日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エレベータの昇降路内の撮影は、かごの移動方向に沿った複数の位置での静止画撮影、または、かごの移動方向に沿って移動しつつの動画撮影が行われることが多い。この撮影に全天球カメラを用いた場合、各位置において撮影された静止画、または動画の各フレームに対して個別に上述した領域分割を行うことは煩雑な作業となる。
【0006】
一方、特許文献1に開示された技術では、全天球カメラによって撮影した画像を、同カメラ内において特定の画像領域数に分割することとされている。このような全天球カメラを用いると領域分割のための煩雑さは解消されるが、各画像領域の境界がカメラによって特定されてしまっているため、点検や異常検知において重要なポイントが境界に重なってしまい、点検や異常検知に不都合をきたすおそれがある。
【0007】
この問題を回避するためには、撮影時に全天球カメラの撮影方向を適切に調整することが考えられるが、このような調整作業は撮影時の煩雑さを招来することとなる。
【0008】
本発明は、以上の課題に鑑み、上記煩雑さを抑制できる画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る画像処理装置は、360度カメラで撮影された360度画像を平面画像へ展開して表示する際の、前記360度画像の切れ目となる境界を規定する境界情報を取得する境界情報取得部と、前記境界情報により規定される境界を複数の360度画像に対して適用することにより、各360度画像を平面画像へ展開する展開部と、を備える。
【0010】
上記の構成によれば、取得した境界情報に基づき、複数の360度画像それぞれを平面画像へ展開することができる。そのため、複数の360度画像それぞれに対して個別に境界を指定することの煩雑さを抑制することができる。また、点検や異常検知における重要ポイントと重ならないように境界を設定すれば、360度画像の撮影時に360度カメラの撮影方向を調整する必要がなくなり、それゆえ、撮影方向を調整することの煩雑さを抑制することができる。
【0011】
なお、境界情報は、例えば360度画像を構成する画像データにおける座標など、画像データのフォーマット上での位置を特定する情報であればよい。
【0012】
また、上記「360度画像」には、円筒スクリーンへの投影に対応する「全周画像」、半球スクリーンへの投影に対応する「全天周画像」、全球スクリーンへの投影に対応する「全天球画像」が含まれる。
【0013】
また、上記画像は、静止画像であっても、一連の動画像の1フレームであってもよい。さらに、上記画像処理装置は、上記カメラに内蔵されていてもよいが、上記カメラとは別に、例えばパーソナルコンピュータとして実現されてもよい。
【0014】
また、本発明の一態様に係る画像処理装置において、前記360度画像の画像データに対する画像認識処理により、予め定められた条件を満たす部分を特定し、その部分を前記境界とする境界情報を生成して前記境界情報取得部へ提供する第1境界情報生成部をさらに備えてもよい。
【0015】
エレベータの昇降路内を360度カメラで撮影した360度画像には、例えば昇降路の四隅やかごの四隅など、360度画像を平面画像へ展開して表示する際の境界として適し、かつ画像認識処理により特定可能な特徴部分が写っている。
【0016】
上記の構成によれば、境界情報生成部により特徴部分を特定し、該特徴部分を境界とする境界情報を生成することができる。これにより、自動的に適切な境界を設定して平面画像への展開を行うことが可能となる。
【0017】
また、本発明の一態様に係る画像処理装置において、前記360度画像を表示装置に表示させる画像表示部と、前記画像表示部により表示された360度画像に基づき前記境界の位置をユーザに特定させ、その位置に対応する境界情報を生成して前記境界情報取得部へ提供する第2境界情報生成部と、をさらに備えてもよい。
【0018】
上記の構成によれば、ユーザが、表示された360度画像を見ながら境界の位置を特定する必要は生じるが、1つの360度画像に対して特定した境界の位置を展開部において他の360度画像へも適用することができるため、ユーザに求められる作業が煩雑となることを回避することができる。
【0019】
また、本発明の一態様に係る画像処理装置において、前記境界情報取得部は、平面上に位置する互いに異なる4つの方位に対応する4つの平面画像へ360度画像を分割しつつ展開するために必要な境界情報を取得してもよい。
【0020】
エレベータの昇降路は通常、ほぼ直方体形状となっている。そのため、上記の構成のとおり、境界情報取得部が、平面上に位置する互いに異なる4つの方位に対応する4つの平面画像へ360度画像を分割しつつ展開するために必要な境界情報を取得し、この境界情報に基づいて360度画像を平面画像へ展開することにより、昇降路内の各側壁を正面とした領域への画像の分割を行うことができるようになる。これにより、分割された画像に基づく点検や異常検知が容易となる。
【0021】
また、本発明の一態様に係る画像処理装置において、前記展開部によって展開された4つの平面画像を横に並べた画面を生成する画面生成部をさらに備えてもよい。
【0022】
上記の構成によれば、昇降路内の各側壁を撮影した画像を横に展開した状態で一覧することができるため、分割された画像に基づく点検や異常検知がさらに容易になる。
【0023】
また、本発明の一態様に係る画像処理装置において、前記画面生成部は、前記各360度画像に対応する横に並べた前記平面画像の組みを縦に並べた画面を生成してもよい。
【0024】
上記の構成によれば、昇降路内を縦方向に沿って撮影した複数の360度画像を対象とすることにより、側壁ごとに、複数の撮影位置を縦に展開した状態で一覧することができるため、分割された画像に基づく点検や異常検知がさらに容易になる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一態様によれば、360度画像を平面画像へ展開して表示する際の360度画像の切れ目となる境界を複数の360度画像それぞれに対して個別に指定することの煩雑さを抑制することができるという効果を奏する。
【0026】
また、点検や異常検知における重要ポイントと重ならないように境界を設定すれば、360度画像の撮影時に360度カメラの撮影方向を調整する必要がなくなり、それゆえ、撮影方向を調整することの煩雑さを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施形態1に係る画像処理システムに含まれる画像処理装置の要部構成の一例を示すブロック図である。
図2図1に示すエレベータの構成の一例を示す概略図である。
図3図1に示す表示装置が表示する全天球画像の一例を示す図である。
図4図1に示す表示装置が表示する平面画像の一例を示す図である。
図5図1に示す画像処理装置が実行する画像展開処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図6】本発明の実施形態2に係る画像処理システムに含まれる画像処理装置の要部構成の一例を示すブロック図である。
図7図6に示す画像処理装置が実行する画像展開処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図8】本発明の実施形態3に係る画像処理システムに含まれる画像処理装置の要部構成の一例を示すブロック図である。
図9】(a)は、分割画像を生成するための境界を示す図である。(b)は、図8に示す表示装置が表示する分割画像の一例を示す図である。
図10図8に示す画像処理装置が実行する画像展開処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図11】エレベータの他の構成例を示す概略図である。
図12】エレベータのさらなる他の構成例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
〔実施形態1〕
以下、本発明の実施形態について、図1から図5に基づいて詳細に説明する。
【0029】
(エレベータ20の概要)
まず、本実施形態に係るエレベータ20の基本構造について、図2を参照して説明する。図2は、エレベータ20の構成の一例を示す概略図である。なお、エレベータ20の概略構成は図示の例に限定されない。
【0030】
図示のエレベータ20は、昇降路21と機械室23とを備えたエレベータである。なお、機械室23の位置は、昇降路21の上方に限定されない。また、エレベータ20は、機械室23を備えない構成であってもよい。
【0031】
図示のように、エレベータ20のかご22は、ロープの一端部に連結されている。また、ロープの他端部には釣合おもりが連結されている。該ロープを機械室23に設置された巻上機が巻き上げることで、かご22が昇降路21内を昇降する。
【0032】
機械室23には、エレベータ20の各部に対する制御を行う制御盤24が設置されている。制御盤24は、エレベータ20に設けられた各種ボタン(例えば乗場ボタン)などから取得した制御信号に応じて、利用者が指定した階床へのかご22の移動および該階床での停止、かご22および乗場に設けられたドアの開閉、乗場に設けられた位置表示機の表示変更などを制御する。
【0033】
また、制御盤24は、所定の通信網(例えば、インターネットなど)を介して、外部の装置と通信可能に構成されていてもよく、上記通信網を介して、本実施形態に係る画像処理装置1と通信してもよい。
【0034】
(全天球カメラ2)
図示のように、本実施形態に係るかご22には、全天球カメラ2が設置されている。全天球カメラ2は、かご22の移動方向に沿った複数の位置での昇降路21内の静止画撮影、および、かご22の移動方向に沿って移動しつつの昇降路21内の動画撮影の少なくとも一方を行い、画像を生成する。また、全天球カメラ2は、上下左右全方位の360度パノラマ撮影を行う、いわゆる「360度カメラ」である。換言すれば、全天球カメラ2が生成した画像は、全球スクリーンへの投影に対応する、いわゆる「全天球画像」(360度画像)である。また、本実施形態に係る全天球カメラ2は、作業員の遠隔操作によって、または、所定の期間ごとに自動的に撮影を行うカメラである。
【0035】
なお、本実施形態では、かご22に設置するカメラとして、全天球カメラ2を例に挙げて説明するが、これに限定されるものではない。例えば、かご22に設置するカメラは、円筒スクリーンへの投影に対応する、いわゆる全周画像を生成するカメラであってもよいし、半球スクリーンへの投影に対応する、いわゆる全天周画像を生成するカメラであってもよい。
【0036】
図示の例では、全天球カメラ2は、かご22の外側上部に設置されている。ただし、全天球カメラ2の設置位置は図示の例に限定されない。全天球カメラ2は、昇降路21内を撮影できる位置に設置されていればよく、例えば、かご22の外側下部に設置されてもよい。
【0037】
さらに、全天球カメラ2は、かご22に常時設置されていなくてもよい。具体的には、全天球カメラ2は、エレベータ20の点検を行う作業員によって保守点検時に持ち込まれ、かご22に設置されてもよい。また、全天球カメラ2は、かご22に設置されていない状態で使用されてもよい。具体的には、かご22の上に乗った作業員が全天球カメラ2を手に持った状態で昇降路21内を撮影してもよい。この例の場合、全天球カメラ2は、作業員の遠隔操作によって撮影を行う機能、または、所定の期間ごとに自動的に撮影を行う機能を備えていなくてもよい。
【0038】
(画像処理システム100の概要)
次に、本実施形態に係る画像処理システム100の概要について、図1を参照して説明する。図1は、画像処理システム100に含まれる画像処理装置1の要部構成の一例を示すブロック図である。図示のように、画像処理システム100は、画像処理装置1、上述した全天球カメラ2、記憶装置3、入力装置4、および表示装置5を含む。画像処理装置1は、入力された画像を処理し出力する、いわゆるコンピュータである。
【0039】
入力装置4は、ユーザの操作を受け付けて、該操作に応じた信号(図示の操作信号)を画像処理装置1へ入力する。入力装置4は、例えばマウスおよびキーボードである。表示装置5は、画像処理装置1が生成した画像(図示の表示データ)を取得し、表示する。表示装置5は、例えば液晶ディスプレイである。また、入力装置4および表示装置5は、画像処理装置1と一体となった構成であってもよい。
【0040】
記憶装置3は、全天球カメラ2が生成した全天球画像を記憶する。記憶装置3は、典型的には、全天球カメラ2に着脱可能なSD(Secure Digital)メモリーカードなどの、画像処理装置1と物理的に接続することが可能な記憶装置であるが、所定の通信網(例えば、インターネットなど)を介して、全天球カメラ2および画像処理装置1と通信可能な記憶装置であってもよい。なお、全天球カメラ2が有線または無線で画像処理装置1と通信可能であり、かつ、全天球カメラ2が生成した全天球画像が画像処理装置1へ直接送信される構成である場合、画像処理システム100は記憶装置3を含んでいなくてもよい。
【0041】
(画像処理装置1の要部構成)
次に、画像処理装置1の要部構成について、引き続き図1を参照して説明する。画像処理装置1は、図示のように、制御部10、記憶部11、および通信部12を備えている。制御部10は画像処理装置1の各部を統括して制御する。なお、制御部10の詳細については後述する。
【0042】
記憶部11は、画像処理装置1が使用する各種データを記憶する。本実施形態に係る記憶部11は、全天球カメラ2が生成した全天球画像、および、画像処理装置1が全天球画像を展開して生成した平面画像を記憶する。平面画像とは、平面のスクリーンへの投影に対応する画像である。また、記憶部11は、全天球画像を表示装置5に表示させるためのアプリケーション(以下、「全天球画像ビューア」と称する。)を記憶する。なお、記憶部11は、画像処理装置1の内蔵メモリであってもよいし、画像処理装置1に外付けされるハードディスクであってもよい。
【0043】
通信部12は、外部装置と有線または無線で通信可能に接続し、接続した外部装置からデータを取得する。本実施形態に係る通信部12は、記憶装置3から全天球画像を取得し、取得した全天球画像を記憶部11に記憶させる。通信部12は、入力装置4からの操作信号をトリガとして、記憶装置3から全天球画像を取得してもよい。また、通信部12は、画像処理装置1と記憶装置3とが通信可能に接続されたときに、自動的に記憶装置3から全天球画像を取得してもよい。
【0044】
制御部10は、図示のように、入力制御部101、境界情報生成部102(第2境界情報生成部)、展開部103、および表示制御部105(画像表示部)を含んでいる。
【0045】
入力制御部101は、入力装置4からの操作信号を取得して、該操作信号に応じた指示を制御部10の各部へ出力する。特に、入力制御部101は、全天球画像または平面画像を表示装置5へ表示させる操作を示す操作信号を取得すると、これらの画像を表示装置5へ表示させる指示(図示の画像表示指示)を表示制御部105へ出力する。また、入力制御部101は、全天球画像を平面画像へ展開して表示する際に、該全天球画像の切れ目となる境界の起点となる位置を指定する操作(以下、「指定操作」と称する。)を示す操作信号を取得すると、該境界を規定する境界情報を生成させる指示(以下、「生成指示」と称する。)を境界情報生成部102へ出力する。なお、生成指示には、指定された位置を示す情報(以下、「位置情報」と称する。)、および、指定操作がなされた全天球画像を示す情報(以下、「画像情報」と称する。)が含まれている。位置情報の典型例は、表示装置5の表示領域における座標である。
【0046】
ここで、図3を参照して、指定操作について具体的に説明する。図3は、表示装置5が表示する全天球画像の一例を示す図である。より詳細に説明すると、図3は、一般的な全天球画像ビューアにより、昇降路21内を撮影した全天球画像51を表示装置5に表示させた様子の一例を示す図である。同図では、全天球画像ビューアの表示領域には全天球画像51の一部のみが表示されており、その他の部分は表示されていない。表示されていない部分を表示させるには、通常、ユーザの操作に応じて、表示領域内の全天球画像51をスライドさせる。該操作の典型例は、全天球画像ビューアの表示領域内にカーソル52がある状態での、入力装置4であるマウスを用いたドラッグ操作である。
【0047】
指定操作の典型例は、マウスを用いたクリック操作である。具体的には、ユーザは、マウスを用いて全天球画像51上でカーソル52を移動させ、全天球画像51を展開する際の切れ目となる境界の起点としたい位置でクリック操作を行う。なお、指定操作はマウスを用いたクリック操作に限定されるものではない。
【0048】
再び図1に戻り説明する。境界情報生成部102は、入力制御部101からの生成指示に従い、上述した境界情報を生成し、該境界情報を境界情報取得部104へ提供する。本実施形態に係る境界情報生成部102は、生成指示に含まれる位置情報が示す、表示装置5の表示領域における座標を、全天球画像51において対応する座標に変換する。境界情報生成部102は、変換後の座標を、境界情報として展開部103へ出力する。なお、境界情報は、全天球画像上の位置を特定することができる情報であれば、座標に限定されない。また、境界情報生成部102は、境界情報とともに、生成指示に含まれる画像情報を展開部103へ出力する。
【0049】
展開部103は、全天球画像を平面画像へ展開するものであり、境界情報取得部104を含んでいる。境界情報取得部104は、境界情報生成部102から境界情報および画像情報を取得する。境界情報取得部104が境界情報および画像情報を取得すると、展開部103は、画像情報で示される全天球画像が静止画像である場合、画像情報で示される全天球画像とともに、該全天球画像とは別の1つ以上の全天球画像を記憶部11から読み出す。別の全天球画像の典型例は、(1)画像情報で示される全天球画像と同一のフォルダに格納されている全天球画像、(2)ユーザによって選択された全天球画像であるが、この例に限定されるものではない。一方、画像情報で示される全天球画像が動画像の1フレームである場合、展開部103は、当該動画像の各フレームを記憶部11から読み出す。
【0050】
展開部103は、記憶部11から読み出した複数の全天球画像の各々を、境界情報により規定される境界を切れ目として、平面画像へ展開する。このとき、展開部103は、一つの境界情報により規定される境界を複数の全天球画像に対して一律に適用することにより、複数の全天球画像の各々を一括して平面画像へ展開する。
【0051】
上記境界は、全天球画像の天頂と天底とを端点とし、位置情報が示す座標を通る、天球面に沿った曲線である。なお、天頂とは、天球の中心から真上に延ばした線が天球面と交わる点である。また、天底とは、天球の中心から真下に延ばした線が天球面と交わる点である。そして、上記曲線を境界として全天球画像を平面画像に展開しただけでは全天球画像由来の歪みが残存するため、展開部103はこの歪みを無くすように補正する。これにより、平面画像は、平面のスクリーンへの投影に対応する画像となる。そして、展開部103は、生成した複数の平面画像を記憶部11に記憶させる。なお、全天球画像を平面画像へ展開する技術、および、歪みを補正する技術については、既存の技術を用いることができるため、詳細な説明を省略する。
【0052】
表示制御部105は、表示データを生成し、該表示データを表示装置5に表示させる。本実施形態に係る表示制御部105は、入力制御部101から、全天球画像の表示指示を取得すると、該表示指示で示される全天球画像を記憶部11から読み出し、全天球画像ビューアを起動して、表示装置5に表示させる。これにより、表示装置5は、図3に示すように、全天球画像51を表示する。
【0053】
また、表示制御部105は、平面画像を記憶部11から読み出し、表示装置5に表示させる。このとき、表示制御部105は、全天球画像ビューアを起動して平面画像を表示させてもよいし、他の画像ビューアを起動して平面画像を表示させてもよい。また、表示制御部105は、入力制御部101から、平面画像の表示指示を取得したことをトリガとして、平面画像を表示させてもよいし、展開部103によって平面画像が生成されたことをトリガとして、平面画像を表示させてもよい。また、表示制御部105は、同じ境界情報に基づいて生成された複数の平面画像を表示装置5に同時に表示させてもよい。
【0054】
ここで、図4を参照して、平面画像を表示する様子について具体的に説明する。図4は、一般的な画像ビューアにより、平面画像を表示装置5に表示させた様子の一例を示す図である。同図に示す例は、画像ビューアにて、2つの全天球画像それぞれを同じ境界情報に基づいて展開した平面画像53aおよび53bを表示させている例である。また、平面画像53a上の破線内の領域は、図3に示す全天球画像ビューアの表示領域に表示されている全天球画像51に対応する領域である。なお、以降では、平面画像53aおよび53bを区別しない場合、単に「平面画像53」と記載する。
【0055】
平面画像53は、上述したように、境界情報により規定される境界を切れ目として全天球画像を展開した画像である。図示のように、表示制御部105は、画像ビューアの表示領域に、平面画像53の全領域を表示させる。これにより、ユーザは、一般的な全天球画像ビューアにて全天球画像を確認する際に通常行っていたスライド操作を行わずとも、全領域を、一目で、かつ視認しやすい状態で確認することができる。
【0056】
全天球画像の各々は、かご22に設置された全天球カメラ2によって時間をずらして撮影された画像であり、また、複数の平面画像53の各々は、同じ境界情報に基づいて全天球画像の各々を展開した画像である。よって、各撮影の時点で全天球カメラ2に対する相対方向が同じ部分は、各全天球画像の同じ領域に写ることとなり、それゆえ、各平面画像53においても同じ領域に写ることとなる。例えば、昇降路21を構成する側壁は、いずれも、各撮影の時点で全天球カメラ2に対する相対方向が変わらないから、平面画像53の各々において同じ領域に写る。したがって、表示制御部105は、図示の平面画像53aおよび53bのように、表示対象である複数の平面画像53を、縦方向にスクロール可能に並べて表示させることが、視認性向上の観点から好ましい。このように表示させておけば、例えば、昇降路21の側壁を、複数の平面画像53にまたがって続けて確認したい場合、画面を縦方向にスクロールするだけで容易に確認することができる。また、ユーザが注目する側壁が表示される画面上の領域は、画面をスクロールしても変わらない。つまりユーザは、昇降路21の確認したい側壁の状態を、目線を横方向に大きく移動させることなく続けて確認することができる。
【0057】
なお、上述した例では、予め全天球画像を平面画像へ展開しておくものとして説明したが、表示制御部105が平面画像の表示指示を受け付けたことをトリガとして、全天球画像を平面画像へ展開するようにしてもよい。
【0058】
(画像展開処理の流れ)
次に、画像処理装置1が実行する画像展開処理の流れについて、図5を参照して説明する。図5は、画像展開処理の流れの一例を示すフローチャートである。図5の(a)は、画像展開処理の前半の流れの一例を示し、図5の(b)は、画像展開処理の後半の流れの一例を示す。
【0059】
まず、図5の(a)に示すように、通信部12は、記憶装置3から取得した複数の全天球画像を記憶部11に記憶させる(S1)。続いて、入力制御部101は、入力装置4から、いずれかの全天球画像を表示させるための操作信号を受け付けると、該全天球画像の表示指示を表示制御部105に出力する。表示制御部105は、取得した表示指示で示される全天球画像を記憶部11から読み出し、全天球画像ビューアを起動して、表示装置5に表示させる(S2)。
【0060】
続いて、図5の(b)に示すように、入力制御部101は、全天球画像の切れ目となる境界を指定する指定操作の操作信号を待機する状態となる(S3)。入力制御部101が、入力装置4から指定操作の操作信号を取得すると(S3でYES)、入力制御部101は、取得した操作信号に従って、境界情報を生成させる生成指示を境界情報生成部102に出力する。
【0061】
続いて、境界情報生成部102は、生成指示に含まれる位置情報で示される位置を通る境界を指定する境界情報を生成する(S4)。そして、境界情報取得部104は、境界情報生成部102が生成した境界情報、および、生成指示に含まれる画像情報を取得する(S5)。
【0062】
続いて、展開部103は、境界情報とともに取得した画像情報で示される全天球画像を含む、複数の全天球画像を読み出す。そして、展開部103は、境界情報により規定される境界を切れ目として、読み出した複数の全天球画像の各々を平面画像へ展開する(S6)。そして、展開部103は、平面画像を記憶部11に記憶させる(S7)。
【0063】
最後に、表示制御部105は、記憶部11から平面画像を読み出し、表示装置5に表示させる(S8)。以上で、画像処理装置1が実行する画像展開処理は終了する。
【0064】
(画像処理装置1が奏する効果)
以上のように、画像処理装置1によれば、1つの全天球画像に対して生成した境界情報により規定される境界を、複数の全天球画像に対して一律に適用することにより、複数の全天球画像のそれぞれを一括して平面画像に展開することができる。また、境界情報の生成のために、ユーザは、1つの全天球画像に対して境界の起点となる位置を指定するだけでよい。これにより、複数の全天球画像のそれぞれに対して、個別に境界を指定することの煩雑さを抑制することができる。
【0065】
また、境界の起点となる位置を点検や異常検知における重要ポイントと重ならないように指定しさえすれば、全天球画像の撮影時に全天球カメラ2の撮影方向を調整する必要がなくなり、それゆえ、撮影時に撮影方向を調整することの煩雑さを抑制することができる。
【0066】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、図6および図7に基づいて詳細に説明する。なお、これ以降の各実施形態では、説明の便宜上、実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材に同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0067】
本実施形態では、画像認識処理(画像パターン認識処理)によって、全天球画像の切れ目となる境界を特定し、境界情報を自動生成する画像処理装置1aについて説明する。
【0068】
(画像処理装置1aの要部構成)
まず、画像処理装置1aの要部構成について、図6を参照して説明する。図6は、本実施形態に係る画像処理システム100aに含まれる画像処理装置1aの要部構成の一例を示すブロック図である。
【0069】
画像処理装置1aは、図示のように、制御部10a、記憶部11、通信部12を備えている。制御部10aは、図示のように、入力制御部101、境界情報生成部102a(第1境界情報生成部)、展開部103、および表示制御部105を含んでいる。
【0070】
上述したように、本実施形態に係る画像処理装置1aは、境界情報を自動生成する。そのため、本実施形態に係る入力制御部101は、指定操作の操作信号を取得する機能、および、生成指示を出力する機能を備えていなくてもよい。
【0071】
境界情報生成部102aは、全天球画像に対する画像認識処理の結果に基づいて、境界情報を生成する。具体的には、境界情報生成部102aは、まず、記憶部11に記憶された複数の全天球画像を読み出す。なお、複数の全天球画像とは、実施形態1にて展開部103が読み出す複数の全天球画像と同様である。また、境界情報生成部102aが全天球画像を読み出すトリガは特に限定されない。例えば、通信部12が、全天球画像を記憶部11に記憶したことをトリガとしてもよい。
【0072】
そして、境界情報生成部102aは、読み出した全天球画像のいずれか1つに対して画像認識処理を行い、全天球画像のうち、昇降路21やかご22の構造的特徴に基づいて予め定められた条件を満たす部分を特定する。条件の一例としては、(1)昇降路21内の隣接する側壁の境目、(2)かご22の四隅、(3)昇降方向に沿った柱、(4)乗場ドアと昇降路21内の側壁との境目、などが挙げられる。なお、条件は、ユーザが境界に適すると考える部分として、予め指定されるものとする。
【0073】
そして、境界情報生成部102aは、条件を満たす部分を境界とする境界情報を生成する。境界情報生成部102aは、生成した境界情報を境界情報取得部104に出力する。また、境界情報生成部102aは、記憶部11から読み出した全天球画像を展開部103へ出力する。
【0074】
(画像展開処理の流れ)
次に、画像処理装置1aが実行する画像展開処理の流れについて、図7を参照して説明する。図7は、画像展開処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、実施形態1で説明した画像展開処理の各ステップと同じ処理を実行するステップについては、同じステップ番号を付し、その説明を省略する。
【0075】
境界情報生成部102aは、記憶部11から複数の全天球画像を読み出し、読み出した全天球画像のいずれか1つに対して画像認識処理を行い、条件を満たす部分を特定する(S11)。そして、境界情報生成部102aは、条件を満たす部分を境界とする境界情報を生成する(S12)。境界情報生成部102aは、生成した境界情報を境界情報取得部104に出力する。また、境界情報生成部102aは、記憶部11から読み出した全天球画像を展開部103へ出力する。
【0076】
(画像処理装置1aが奏する効果)
以上のように、画像処理装置1aによれば、全天球画像に写る、境界として適した部分を特定し、該特定した部分を境界とする境界情報を自動生成することができる。これにより、画像処理装置1aは、自動的に適切な境界を設定し、該設定した境界を切れ目として全天球画像を平面画像に展開することができる。よって、ユーザは、境界を設定する操作を行うことなく、全天球画像を展開した平面画像を確認することができる。
【0077】
なお、画像処理装置1aは、自動生成された境界情報を、ユーザの操作に従って修正する機能を備えていてもよい。具体的には、表示制御部105が平面画像を表示装置5に表示させた後、入力制御部101が、指定操作の操作信号(実施形態1参照)を取得すると、入力制御部101は、境界指定を境界情報生成部102aへ出力する。そして、境界情報生成部102aは、取得した境界指定に基づいて、境界情報を新たに生成し、展開部103へ出力する。これにより、展開部103は、境界が修正された平面画像を生成することができる。つまりユーザは、表示装置5に表示された平面画像が、適切でないと判断した場合、自身の操作によって、自身が適すると考える平面画像に修正することができる。
【0078】
〔実施形態3〕
本発明のさらなる別の実施形態について、図8から図10に基づいて詳細に説明する。本実施形態では、1つの全天球画像を1つの平面画像へ展開するのではなく、1つの全天球画像を分割しつつ複数の平面画像へ展開する画像処理装置1bについて説明する。全天球画像を分割しつつ展開した平面画像を、以下では「分割画像」と称する。
【0079】
(画像処理装置1bの要部構成)
まず、画像処理装置1bの要部構成について、図8を参照して説明する。図8は、本実施形態に係る画像処理システム100bに含まれる画像処理装置1bの要部構成の一例を示すブロック図である。
【0080】
画像処理装置1bは、図示のように制御部10b、記憶部11、通信部12を備えている。制御部10b、図示のように、入力制御部101、境界情報生成部102、展開部103b、および表示制御部105(画面生成部)を含んでいる。
【0081】
画像処理装置1bは、全天球画像を、平面上に位置する互いに異なる方位に対応する分割画像へ分割する。一般的な昇降路21は、直方体形状であり4つの側壁を有するから、本実施形態では、画像処理装置1bは、全天球画像を、平面上に位置する互いに異なる4つの方位に対応する4つの分割画像へ分割するものとして説明する。よって、本実施形態では、指定操作は、4つの境界の位置を指定する操作であるものとする。したがって、入力制御部101は、指定操作に基づく4つの位置それぞれの位置情報を含む生成指示を境界情報生成部102へ出力する。なお、本実施形態では、指定された4つの位置が、それぞれ、昇降路21の隣接する側壁の境目の位置に対応する例を説明する。より具体的には、指定された4つの位置は、それぞれ、昇降路21における4つの上記境目の位置に対応する。
【0082】
境界情報生成部102は、4つの位置情報の各々に基づいて、4つの境界情報を生成する。なお、各境界情報の生成については、実施形態1で説明した方法と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0083】
展開部103bは、境界情報取得部104が、境界情報生成部102から取得した4つの境界情報により規定される境界を切れ目として、記憶部11から読み出した複数の全天球画像を、4つの分割画像へ分割しつつ展開する。そして、展開部103bは、4つの分割画像を一つの組みとして記憶部11に記憶させる。
【0084】
ここで、図9を参照して、画像の分割について具体的に説明する。図9の(a)は、分割画像を生成するための境界を示す図である。また、図9の(b)は、表示装置5が表示する分割画像の一例を示す図である。図9の(a)に示す平面画像53aは、実施形態1で説明した、1つの境界情報に基づいて全天球画像51を展開した図である。本実施形態の展開部103bは、さらに3つの境界情報に基づいて、平面画像53aを4つに分割する。この3つの境界情報は、例えば、図9の(a)に記載の破線で示される境界を規定する情報である。これにより、平面画像53aは、図9の(b)に示す分割画像の組み54aに含まれる、4つの分割画像となる。上述したように、4つの境界情報はそれぞれ、昇降路21の隣接する側壁の境目に対応するため、分割画像はそれぞれ、昇降路21の各側壁を正面とした画像となる。
【0085】
なお、分割処理および展開処理の順序は限定されるものではない。すなわち、展開部103bは、全天球画像から、図9の(a)に示すような平面画像を生成した後に、該平面画像を分割することにより、図9の(b)に示すような分割画像を生成する構成に限定されない。例えば、展開部103bは、4つの境界情報に基づいて、全天球画像から直接分割画像を生成してもよい。
【0086】
表示制御部105は、分割画像の組みを記憶部11から読み出し、表示装置5に表示させる。なお、表示制御部105は、入力制御部101から、分割画像の表示指示を取得したことをトリガとして、分割画像を表示させてもよいし、展開部103bによって分割画像が生成されたことをトリガとして、分割画像を表示させてもよい。また、表示制御部105は、同じ境界情報に基づいて生成された複数の分割画像の組みを表示装置5に同時に表示させてもよい。
【0087】
ここで、図9の(b)を参照して、分割画像の組みを表示する様子について具体的に説明する。なお以降、分割画像の組み54aおよび54bを区別しない場合、「分割画像の組み54」と記載する。
【0088】
表示制御部105は、図示の分割画像の組み54のように、分割画像の組み54に含まれる4つの分割画像を横方向に並べて表示装置5に表示させることが好ましい。これにより、表示制御部105は、4つの方位に対応する4つの分割画像を、横方向に並べて表示させることができる。例えば、表示制御部105は、4つの側壁それぞれを正面とした4つの分割画像を、横方向に並べて表示させることができる。これにより、ユーザは、各分割画像に写る領域の位置関係を容易に把握することができるとともに、注目する側壁を容易に確認することができる。したがって、昇降路21の点検や異常検知をさらに容易に実施することができる。
【0089】
また、表示制御部105は、図示の分割画像の組み54aおよび54bのように、表示対象である複数の分割画像の組み54を、縦方向にスクロール可能に並べて表示装置5に表示させることが、視認性向上の観点から好ましい。このとき、同じ方位が撮影された分割画像を縦方向にスクロール可能に並べて表示させることが好ましい。例えば、表示制御部105は、4つの側壁それぞれを正面とした、横並びの画像の組みを、同じ横並び順で、縦方向にスクロール可能に並べて表示させる。このように表示させておけば、例えば、昇降路21の側壁を連続して確認したい場合、画面を縦方向にスクロールするだけで容易に確認することができる。また、ユーザが注目する側壁が表示される画面上の領域は、画面をスクロールしても変わらない。つまり、ユーザは、昇降路21の確認したい側壁の状態を、目線を横方向に大きく移動させることなく続けて確認することができる。
【0090】
なお、上述した例では、予め全天球画像を分割画像へ展開しておくものとして説明したが、表示制御部105が分割画像の表示指示を受け付けたことをトリガとして、全天球画像を分割画像へ展開するようにしてもよい。
【0091】
(画像展開処理の流れ)
次に、画像処理装置1bが実行する画像展開処理の流れについて、図10を参照して説明する。図10は、画像展開処理の流れの一例を示すフローチャートである。図10の(a)は、画像展開処理の前半の流れの一例を示し、図10の(b)は、画像展開処理の後半の流れの一例を示す。なお、実施形態1で説明した画像展開処理の各ステップと同じ処理を実行するステップについては、同じステップ番号を付し、その説明を省略する。このため、図10の(a)については説明を省略する。
【0092】
図10の(b)に示すように、入力制御部101は、全天球画像の切れ目となる、4ヶ所の境界を指定する指定操作の操作信号を待機する状態となる(S21)。入力制御部101が、入力装置4から指定操作の操作信号を取得すると(S21でYES)、入力制御部101は、取得した操作信号に従って、境界情報を生成させる生成指示を境界情報生成部102に出力する。
【0093】
境界情報生成部102は、生成指示に含まれる位置情報で示される位置を通る4つの境界の各々を規定する4つの境界情報を生成する(S22)。そして、境界情報取得部104は、境界情報生成部102が生成した4つの境界情報、および、生成指示に含まれる画像情報を取得する(S23)。
【0094】
続いて、展開部103bは、境界情報とともに取得した画像情報で示される全天球画像を含む、複数の全天球画像を読み出す。そして、展開部103bは、境界情報により規定される境界を切れ目として、読み出した複数の全天球画像の各々を分割画像へ展開する(S24)。そして、展開部103bは、1つの全天球画像から分割された4つの分割画像を一つの組みとして、記憶部11に記憶させる(S25)。
【0095】
最後に、表示制御部105は、記憶部11から分割画像の組みを読み出し、表示装置5に表示させる(S26)。以上で、画像処理装置1bが実行する画像展開処理は終了する。
【0096】
(画像処理装置1bが奏する効果)
以上のように、画像処理装置1bによれば、1つの全天球画像に対して生成した4つの境界情報に基づき、複数の全天球画像のそれぞれを、4つの分割画像に展開することができる。これにより、ユーザは、昇降路21内の、平面上に位置する互いに異なる4つの方位の状況について、それぞれ別画像として確認することができる。例えば、画像処理装置1bが、全天球画像のそれぞれを、昇降路21の各側壁を正面とした分割画像とすれば、ユーザは、昇降路21の各側壁の状況をそれぞれ別画像として確認することができるため、視認性が良い。よって、昇降路21の点検や異常検知をさらに容易に実施することができる。
【0097】
なお、本実施形態では、全天球画像を4つの分割画像へ展開する例を説明したが、分割画像の数はこの例に限定されない。また、本実施形態では、境界の位置をユーザが指定する例を説明したが、実施形態2のように、境界の位置を画像認識処理によって自動的に特定してもよい。また、境界の位置をユーザが指定する構成と、境界の位置を自動的に特定する構成とを組み合わせてもよい。
【0098】
境界の位置を自動的に特定する構成の場合、画像処理装置1bは、昇降路21の寸法やかご22のサイズなどの比率(典型的には縦横比)を用いて、境界情報を生成してもよい。例えば、上面が四角形状であるかご22の外側上部の中央付近に全天球カメラ2を設置するとともに、画像処理装置1bが、かご22の上面(以下、単に「上面」と称する。)の縦横比を示す情報を記憶部11に記憶させている場合を例に挙げて説明する。この場合、全天球カメラ2が撮影した全天球画像にはかご22の上面のうち中央付近を除く部分がほぼ全て写ることとなる。よって、画像処理装置1bは、画像認識処理によって、例えばかご22の四隅のうちの1ヶ所を特定しさえすれば、記憶部11に記憶されている縦横比を示す情報に基づいて、全天球画像に写る上面の残りの三隅を特定することができ、全天球画像を分割するためのすべての境界情報を生成することができる。このように、この構成によれば、昇降路21の寸法やかご22のサイズなどの比率を用いることにより、分割画像を生成するために必要な境界情報を生成することができる。
【0099】
〔変形例1〕
本発明の各実施形態に係る変形例について、図11および図12に基づいて詳細に説明する。図11は、エレベータ20の他の構成例を示す概略図である。図12は、エレベータ20のさらなる他の構成例を示す概略図である。なお、ここでは、実施形態1の変形例として説明するが、本変形例は実施形態2および3にも適用可能である。
【0100】
上述した実施形態1では、全天球カメラ2が1つの例を説明した。しかしながら、全天球カメラ2の数は1つに限定されない。例えば、図11に示すように、全天球カメラ2は、かご22の外側上部に設置される全天球カメラ2aと、かご22の外側下部に設置される全天球カメラ2bとの2つであってもよい。
【0101】
また例えば、図12に示すように、全天球カメラ2は、上記全天球カメラ2aおよび全天球カメラ2bに、ピット25に設置された全天球カメラ2cを加えた3つであってもよい。なお、全天球カメラ2は、全天球カメラ2aおよび全天球カメラ2bのいずれか一方と、全天球カメラ2cとの2つであってもよい。
【0102】
これら複数の全天球カメラ2を設ける構成においては、全天球カメラ2の各々が、同じタイミングで静止画像の撮影を行う(あるいは、同じタイミングで動画像の撮影を行う)構成とすることが好ましい。
【0103】
また、本変形例に係る記憶部11は、同時刻に撮影された複数の全天球画像を対応付けて記憶する構成であってもよい。これにより、本変形例に係る展開部103は、これら複数の全天球画像から展開した平面画像の各々を対応付けて記憶部11に記憶することができる。そして、本変形例に係る表示制御部105は、対応付けられた平面画像を縦方向に並べて表示装置5に表示させてもよい。これにより、ユーザは、昇降路21の注目する側壁の異なる位置における同時刻の状況を、一目で確認することができる。
【0104】
〔変形例2〕
本発明の各実施形態に係る他の変形例について、詳細に説明する。なおここでは、実施形態1の変形例として説明するが、本変形例は実施形態2および3にも適用可能である。
【0105】
上述した実施形態1では、境界情報生成部102および展開部103は、画像処理装置1の制御部10に含まれる構成として説明した。しかしながら、境界情報生成部102および展開部103は、全天球カメラ2に含まれる構成であってもよい。つまり、全天球カメラ2は、生成した全天球画像を平面画像に展開し、該平面画像を記憶装置3に記憶させる構成であってもよい。この場合、画像処理システム100は、画像処理装置1に代えて、入力装置4からの操作信号を受け付けて、記憶部11に記憶されている平面画像を読み出し、表示装置5に該平面画像を表示させる機能を有する情報処理装置を含む構成であればよい。
【0106】
〔ソフトウェアによる実現例〕
画像処理装置1、1a、1bの制御ブロック(特に制御部10、10a、10b)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0107】
後者の場合、画像処理装置1、1a、1bは、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムおよび各種データがコンピュータ(またはCPU)で読み取り可能に記録されたROM(Read Only Memory)または記憶装置(これらを「記録媒体」と称する)、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などを備えている。そして、コンピュータ(またはCPU)が上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0108】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0109】
1、1a、1b 画像処理装置
2 全天球カメラ(360度カメラ)
5 表示装置
51 全天球画像(360度画像)
53、53a、53b 平面画像
102、102b 境界情報生成部(第2境界情報生成部)
102a 境界情報生成部(第1境界情報生成部)
103、103b 展開部
104 境界情報取得部
105 表示制御部(画像表示部、画面生成部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12