(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6784202
(24)【登録日】2020年10月27日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】導線、シールド用編組部材、及びワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
H01B 5/02 20060101AFI20201102BHJP
H01B 7/00 20060101ALI20201102BHJP
H01B 5/12 20060101ALI20201102BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
H01B5/02 A
H01B7/00 301
H01B5/12
B60R16/02 620Z
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-50384(P2017-50384)
(22)【出願日】2017年3月15日
(65)【公開番号】特開2018-156745(P2018-156745A)
(43)【公開日】2018年10月4日
【審査請求日】2019年6月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】清水 武史
(72)【発明者】
【氏名】馬場 裕隆
(72)【発明者】
【氏名】北原 裕太
【審査官】
久保 正典
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−120326(JP,A)
【文献】
特開2014−055388(JP,A)
【文献】
特開2012−212657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 5/02
H01B 5/12
H01B 7/00
H01B 7/18
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のワイヤハーネスに用いられる導線であって、
絶縁性を有する強化繊維からなる芯線と、前記芯線の外周を被覆する金属材料からなる被覆部材とを備え、
前記被覆部材としての金属パイプ内に前記芯線が挿通されていることを特徴とする導線。
【請求項2】
請求項1に記載の導線において、
前記強化繊維は、アラミド繊維であることを特徴とする導線。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の導線が筒状に編み込まれてなるシールド用編組部材。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の導線、又は請求項3に記載のシールド用編組部材を備えたワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のワイヤハーネスに用いられる導線に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のワイヤハーネスにおける導線で構成された部材としては、シールド用の編組部材などがある(例えば特許文献1参照)。編組部材は、複数の導線が筒状に編み込まれて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3909763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、シールド用編組部材を構成する導線や、ワイヤハーネスにおいてシールド用編組部材以外に用いる導線の強度をいかにして向上させるかを検討していた。
本発明の目的は、強度に優れた導線、シールド用編組部材、及びワイヤハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する導線は、車両のワイヤハーネスに用いられる導線であって、絶縁性を有する強化繊維からなる芯線と、前記芯線の外周を被覆する金属材料からなる被覆部材とを備える。
【0006】
この構成によれば、金属材料からなる被覆部材の内部に強化繊維からなる芯線を有するため、導線の強度の向上を図ることができる。
上記導線において、前記強化繊維は、アラミド繊維である。
【0007】
この構成によれば、芯線がアラミド繊維にて構成されるため、導線の強度をより好適に向上させることができる。
上記導線において、前記被覆部材としての金属パイプ内に前記芯線が挿通されている。
【0008】
この構成によれば、金属パイプ内に強化繊維からなる芯線が挿通されて構成される。このため、被覆部材を蒸着、スパッタリング、又はめっきなどで形成される皮膜とした構成と比べて、被覆部材の剥がれなどによる電気的導通性の悪化が生じにくく、信頼性の高い導線を得ることができる。
【0009】
上記導線において、前記被覆部材は、前記芯線の外周面に固着された固着層である。
この構成によれば、被覆部材が例えば蒸着、スパッタリング、又はめっきなどによって芯線の外周面に形成された固着層からなるため、芯線を被覆する金属製の被覆部材を容易に形成することができる。
【0010】
上記課題を解決するシールド用編組部材は、上記のいずれかに記載の導線が筒状に編み込まれてなる。
この構成によれば、上記のいずれかに記載の効果と同様の効果を奏するシールド用編組部材を提供できる。
【0011】
上記課題を解決するワイヤハーネスは、上記のいずれかに記載の導線、又は上記記載のシールド用編組部材を備える。
この構成によれば、上記のいずれかに記載の効果と同様の効果を奏するワイヤハーネスを提供できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、導線、シールド用編組部材、及びワイヤハーネスの強度の向上を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、導線、シールド用編組部材、及びワイヤハーネスの一実施形態について説明する。なお、図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率についても、実際と異なる場合がある。
【0015】
図1に示すように、本実施形態のワイヤハーネス10は、ハイブリッド車や電気自動車等において、例えば車両後部に設置された高圧バッテリ11と車両前部に設置されたインバータ12とを接続するために、車両の床下等を通るように配索される。インバータ12は、車両走行の動力源となる車輪駆動用モータ(図示略)と接続され、高圧バッテリ11の直流電力から交流電力を生成し、該交流電力をモータに供給する。高圧バッテリ11は、数百ボルトの電圧を供給可能なバッテリである。
【0016】
ワイヤハーネス10は、高圧電線を含む電線束13と、電線束13の外周を覆う電磁シールド部14とを備えている。電線束13の一端部はコネクタC1を介して高圧バッテリ11と接続され、他端部はコネクタC2を介してインバータ12と接続されている。
【0017】
電磁シールド部14は、円筒状のシールドパイプ15と、シールドパイプ15の両端部の各々に対し連結部材Lによって連結された筒状の編組部材16とを備えている。電磁シールド部14は全体として長尺の筒状をなし、その長さ方向の中間部がシールドパイプ15で構成されるとともに、シールドパイプ15で構成された部位以外の長さ方向両端部を含む範囲が編組部材16で構成されている。
【0018】
シールドパイプ15は、例えばアルミニウム系の金属材料にて構成されている。シールドパイプ15は、車両の床下を通って配索されるものであり、該床下の構成に応じた所定形状に曲げて配索される。シールドパイプ15は、内部に挿通された電線束13を一括してシールドするとともに、電線束13を飛び石等から保護する。
【0019】
各編組部材16は、後述する複数本の導線21が編み込まれて構成された筒状の部材であり、可撓性を有する。編組部材16は、連結部材Lによってシールドパイプ15の両端部にそれぞれ連結され、これにより、各編組部材16とシールドパイプ15とが互いに電気的に導通されている。また、各編組部材16は、電線束13におけるシールドパイプ15の両端部から導出された部位の外周を一括してシールドしている。また、各編組部材16におけるシールドパイプ15とは反対側の端部は、コネクタC1,C2にそれぞれ接続されている。なお、各編組部材16の外周は、例えばコルゲートチューブ等の外装材Cによって包囲されている。また、シールドパイプ15と編組部材16との接続箇所には、該接続箇所の外周を覆って水の浸入を防止するゴム製のグロメットGが装着されている。
【0020】
図2に示すように、編組部材16は、複数の導線21からなる導線束21Aが格子状に編み込まれて構成されている。編組部材16を構成する各導線21は、絶縁性を有する強化繊維からなる芯線22と、芯線22の外周を被覆する金属材料からなる被覆部材23とを備えている。なお、本実施形態では、編組部材16を構成する全ての素線が導線21とされている。
【0021】
芯線22は、絶縁性及び耐剪断性に優れた複数の強化繊維からなる撚り線(撚糸)である。芯線22を構成する強化繊維としては、例えば、パラ系アラミド繊維、ポリアリレート繊維、PBO(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維、PET(ポリエチレンテレフタレート)繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、PEI(ポリエーテルイミド)繊維、ガラス繊維、セラミック繊維等が挙げられ、これらの内の1種類又は複数種類を、芯線22に要求される物性に応じて用いることが好ましい。本実施形態では、芯線22はパラ系アラミド繊維の1種類で構成されている。
【0022】
被覆部材23は、銅製またはアルミニウム製であって細径の円筒状をなす金属パイプからなり、該被覆部材23(金属パイプ)内に芯線22が挿通されて構成されている。つまり、被覆部材23は、芯線22の表面に蒸着、スパッタリング、又はめっきなどで形成される皮膜ではなく、内部に芯線22が配置される前の状態からすでに管体として形成されているものである。なお、被覆部材23の内周面と芯線22とは密着している。
【0023】
次に、本実施形態の作用について説明する。
編組部材16を構成する各導線21は、導電性を有する被覆部材23の内部に、例えばパラ系アラミド繊維よりなる強化繊維で編成された耐衝撃性(特に耐剪断性)に優れる芯線22を備えている。これにより、衝撃による編組部材16の破損を抑制できるようになっている。
【0024】
次に、本実施形態の効果を記載する。
(1)シールド用の編組部材16を構成する導線21は、絶縁性を有する強化繊維からなる芯線22と、芯線22の外周を被覆する金属材料からなる被覆部材23とを備える。このため、被覆部材23によって導線21の電気的導通性を確保しつつ、強化繊維からなる芯線22によって導線21の強度の向上を図ることができる。
【0025】
(2)芯線22を構成する強化繊維にアラミド繊維を用いることで、導線21の強度をより好適に向上させることができ、ひいては、編組部材16の耐衝撃性を好適に向上させることができる。
【0026】
(3)導線21は、金属パイプからなる被覆部材23内に芯線22が挿通されて構成される。このため、芯線22を被覆する被覆部材を蒸着、スパッタリング、又はめっきなどで形成される皮膜とした構成と比べて、被覆部材23の剥がれなどによる電気的導通性の悪化が生じにくく、信頼性の高い導線21を得ることができる。
【0027】
なお、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、編組部材16を構成する全ての素線を導線21としたが、これに限らず、例えば、編組部材16を構成する複数の素線が、導線21の他に単純な金属線や樹脂線を含んでいてもよい。
【0028】
・上記実施形態では、導線21の芯線22を複数の強化繊維からなる撚り線(撚糸)としたが、これに限らず、芯線22を1本の強化繊維や、撚り合わされていない複数の強化繊維、又は、強化繊維からなる複数の撚り線(撚糸)を束にした構成としてもよい。
【0029】
・上記実施形態では、被覆部材23を銅製またはアルミニウム製の金属パイプとしたが、これに限らず、銅やアルミニウム以外の金属材料からなる金属パイプとしてもよい。
・上記実施形態の導線21は、金属パイプからなる被覆部材23の内部に芯線22が挿通されて構成されたが、これ以外に例えば、被覆部材23を、蒸着、スパッタリング、又はめっきなどによって芯線22の表面に固着された固着層としてもよい。また、例えば、被覆部材23としての金属箔を芯線22に対して螺旋状に巻装した構成としてもよい。
【0030】
・上記実施形態のシールドパイプ15として、例えば、非金属材料(例えば樹脂材料)からなるパイプ本体に、導電性を有するシールド層を積層又は埋設した構造のシールドパイプを用いてもよい。
【0031】
・上記実施形態の電磁シールド部14からシールドパイプ15を省略し、該シールドパイプ15で覆われていた部位を編組部材16でカバーする構成としてもよい。
・上記実施形態では、編組部材16をシールド用としたが、これに限定されるものではなく、例えば導電路(電線)として用いてもよい。
【0032】
・上記実施形態の電線束13に含まれる電線の構成は、車両構成に応じて適宜変更される。例えば、低圧バッテリと各種低電圧機器(例えばランプ、カーオーディオ等)とを接続する低圧電線を電線束13に含んでもよい。また、電線束13に高圧電線を含まない構成(例えば低圧電線のみの構成)としてもよい。
【0033】
・車両における高圧バッテリ11とインバータ12の配置関係は、上記実施形態に限定されるものではなく、車両構成に応じて適宜変更してもよい。また、上記実施形態では、高圧バッテリ11は、ワイヤハーネス10を介してインバータ12と接続されるが、インバータ12以外の高電圧機器に接続される構成としてもよい。
【0034】
・上記実施形態では、高圧バッテリ11とインバータ12とを繋ぐワイヤハーネス10に適用したが、これ以外に例えば、インバータ12と車輪駆動用モータとを繋ぐワイヤハーネスに適用してもよい。
【0035】
・上記実施形態では、導線21を、シールド用の編組部材16を構成する素線に適用した例を示したが、これに特に限定されるものではなく、車両のワイヤハーネスにおけるシールド用編組部材の素線以外の導線に適用可能である。例えば、上記実施形態の導線21と同様構成の導線を、数mAの低電流の信号を伝達するための低圧電線に適用してもよい。これによれば、低圧電線の強度を確保しつつ、小径化を図ることができる。
【0036】
・上記した実施形態並びに各変形例は適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0037】
10…ワイヤハーネス
13…電線束
16…編組部材(シールド用編組部材)
21…導線
22…芯線
23…被覆部材(金属パイプ)