(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6784209
(24)【登録日】2020年10月27日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】表面紙力増強剤、塗工液及び塗工紙
(51)【国際特許分類】
D21H 17/37 20060101AFI20201102BHJP
D21H 17/42 20060101ALI20201102BHJP
D21H 21/18 20060101ALI20201102BHJP
D21H 19/20 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
D21H17/37
D21H17/42
D21H21/18
D21H19/20 A
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-65155(P2017-65155)
(22)【出願日】2017年3月29日
(65)【公開番号】特開2018-168487(P2018-168487A)
(43)【公開日】2018年11月1日
【審査請求日】2019年12月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宮部 知矢
(72)【発明者】
【氏名】相野谷 卓
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 大輔
【審査官】
長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−169946(JP,A)
【文献】
特開2000−129590(JP,A)
【文献】
特開平08−067715(JP,A)
【文献】
特開平08−176991(JP,A)
【文献】
特開2015−113541(JP,A)
【文献】
特開2004−011059(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B1/00−1/38
D21C1/00−11/14
D21D1/00−99/00
D21F1/00−13/12
D21G1/00−9/00
D21H11/00−27/42
D21J1/00−7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリルアミド(a1)を72〜99モル%、N置換(メタ)アクリルアミド類(a2)を0.05〜10モル%、(メタ)アリル基を有する不飽和モノマー(a3)を0.8〜10モル%、及び(a3)成分以外のアニオン性不飽和モノマー(a4)を8モル%以下含むモノマー成分の重合体(A)を含み、
重量平均分子量が100,000〜2,000,000であり、
その10重量%水溶液の25℃における、ハイシェア粘度計(回転速度:8800rpm)での粘度が5〜25mPa・sである、表面紙力増強剤。
【請求項2】
(a2)成分が、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミドを含む、請求項1の表面紙力増強剤。
【請求項3】
(a3)成分が、メタリルスルホン酸及び/又はその塩を含む請求項1又は2の表面紙力増強剤。
【請求項4】
(a4)成分が、カルボキシル基含有アニオン性不飽和モノマーを含む請求項1〜3のいずれかの表面紙力増強剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかの表面紙力増強剤を含む塗工液。
【請求項6】
請求項5の塗工液を原紙の表面に塗工してなる塗工紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面紙力増強剤、塗工液及び塗工紙に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の環境意識の高まり、コスト削減などの要請により、古紙パルプの増配あるいは原紙自体の軽量化が進んでいる。そのため、原料パルプに紙力増強剤を内部添加するのみでは、紙中に含まれる微細繊維やカルシウムイオン等の夾雑物の影響で紙力強度を維持することが難しく、更に原紙自体が軽量化される程、紙力は低下しやすくなる。その強度を補うべく、ポリアクリルアミド等の表面紙力増強剤が原紙の表面に塗工されている。また、表面塗工においては、生産性の向上から、抄紙マシンの高速化も進み、2ロールサイズプレスの従来方式からゲートロールやロッドメタリング等のフィルム転写方式のサイズプレスが適用されてきている。しかしながら、高速マシンでの塗工においては、塗工液の粘度が高いと、ロール上で塗工液が紙に均一に広がらずに塗工ムラが発生する、または良好な紙力増強効果が発揮され難い傾向がより顕著となりやすいため、低粘度の塗工液でも良好な紙力強度を確保できる表面紙力増強剤が求められている。
【0003】
塗工液の粘度を下げるには、例えば、塗工液中の表面紙力増強剤の濃度を下げることが挙げられるが、この方法では、原紙に対する紙力増強剤の付着量が不足し、紙力強度が充分に得られないため、他の手段として、架橋構造の導入による低粘度化が試みられている。
【0004】
例えば、(メタ)アクリルアミド、スルホン酸系ビニル化合物又はそれらの塩を重合して得られるアクリルアミド系ポリマー水溶液からなる表面塗工剤が公知である(特許文献1)が、高分子量化することで粘度が高まり、高濃度塗工において不適であった。
【0005】
また、スルホン酸系ビニル化合物と、アニオン性ビニルモノマーを重合して得られた重合体の存在下で、(メタ)アクリルアミドを重合させることにより得られることを特徴とするアニオン性アクリルアミド重合体も公知であり、前記重合体は表面紙力増強剤としても検討されている(特許文献2)。しかしながら、工程が煩雑であり、かつ架橋構造の導入による高分子量化で粘度が高まり、前記同様の問題が生じるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−176991号公報
【特許文献2】特開2000−129590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、架橋構造を導入した重合体でありながら、分子量を制御しつつ低粘度とすることで、高濃度で塗工でき、かつ塗工時の機械的シェアを受けても紙の表面へ均一に塗工でき、更に紙の内部へ充分に浸透することで良好な紙力増強効果も発揮する表面紙力増強剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決すべく、鋭意検討したところ、架橋構造を導入しながらも分子量を制御しつつ、強い機械的シェアがかかった際の粘度も所定値となるように調製した表面紙力増強剤が、高濃度での塗工を可能にし、かつ塗工時の機械的シェアを受けても紙の表面へ均一に塗工でき、更に紙の内部へ充分に浸透することで良好な紙力増強効果を発揮することを見出した。すなわち、本発明は以下の表面紙力増強剤、塗工液及び塗工紙に関する。
【0009】
1.(メタ)アクリルアミド(a1)を72〜99モル%、N置換(メタ)アクリルアミド類(a2)を0.05〜10モル%、(メタ)アリル基を有する不飽和モノマー(a3)を0.8〜10モル%、及び(a3)成分以外のアニオン性不飽和モノマー(a4)を8モル%以下含むモノマー成分の重合体(A)を含み、
重量平均分子量が100,000〜2,000,000であり、
その10重量%水溶液の25℃における、ハイシェア粘度計(回転速度:8800rpm)での粘度が5〜25mPa・sである、表面紙力増強剤。
【0010】
2.(a2)成分が、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミドを含む、前項1の表面紙力増強剤。
【0011】
3.(a3)成分が、メタリルスルホン酸及び/又はその塩を含む前項1又は2の表面紙力増強剤。
【0012】
4.(a4)成分が、カルボキシル基含有アニオン性不飽和モノマーを含む前項1〜3のいずれかの表面紙力増強剤。
【0013】
5.前項1〜4のいずれかの表面紙力増強剤を含む塗工液。
【0014】
6.前項5の塗工液を原紙の表面に塗工してなる塗工紙。
【発明の効果】
【0015】
本発明の表面紙力増強剤によれば、塗工時に機械的シェアを受けても紙の表面へ均一に塗工でき、更に紙の内部へ充分に浸透しやすいものである。また、架橋構造を導入しつつも、分子量を制御しつつ低粘度とした表面紙力増強剤であることから、高濃度での塗工が可能となり、更に得られた塗工紙も優れた紙力増強効果を有する。また本発明の表面紙力増強剤は、高速マシンでの塗工(以下、高速塗工ともいう)にも適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の表面紙力増強剤は、(メタ)アクリルアミド(a1)(以下、(a1)成分という)、N置換(メタ)アクリルアミド類(a2)(以下、(a2)成分という)、(メタ)アリル基を有する不飽和モノマー(a3)(以下、(a3)成分という)、及び(a3)成分以外のアニオン性不飽和モノマー(a4)(以下、(a4)成分という)を含むモノマー成分の重合体を含むものである。
【0017】
(a1)成分としては、アクリルアミド、メタクリルアミドが挙げられる。
【0018】
(a1)成分の含有量としては、優れた紙力増強効果を発揮する点から、全モノマー成分を100モル%として、通常は72〜99モル%、好ましくは76〜98モル%、より好ましくは80〜95モル%である。
【0019】
(a2)成分は、共重合体に架橋構造を導入するために用いる成分であり、特に限定されず、各種公知のものを使用できる。具体的には、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−tert−プロピル(メタ)アクリルアミド等のN−アルキルアクリルアミド;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド等のN,N−ジアルキルアクリルアミド;N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N’−エチレンビス(メタ)アクリルアミド等のN,N’−ジアルキレンアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。これらの中でも、共重合体に架橋構造を導入しやすい点から、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミドを含むことが好ましく、N,N−ジメチルアクリルアミドを含むことがより好ましい。
【0020】
(a2)成分の含有量としては、全モノマー成分を100モル%として、通常は0.05〜10モル%である。含有量が0.05モル%未満であると、共重合体に架橋構造が導入され難く、10モル%を上回ると、架橋構造が過剰に導入され、共重合体がゲル化しやすくなる。また、同様の観点から、好ましくは0.1〜8モル%、より好ましくは0.5〜5モル%である。
【0021】
(a3)成分は、共重合体の重量平均分子量を調整する成分であり、特に限定されず、各種公知のものを使用できる。具体的には、(メタ)アリルスルホン酸、(メタ)アリルアルコール及びそれらの塩、アリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。塩としては、特に限定されないが、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。これらの中でも、共重合体の重量平均分子量を調整しやすい点から、メタリルスルホン酸及び/又はその塩を含むことが好ましく、メタリルスルホン酸ナトリウムがより好ましい。
【0022】
(a3)成分の含有量としては、全モノマー成分を100モル%として、通常は0.8〜10モル%である。含有量が0.8モル%未満であると、架橋反応を抑制できずに高分子量化が促進されることで、ゲル化を招きやすくなり、10モル%を上回ると、鎖長が短い共重合体が多く生成しやすくなり、充分な紙力増強効果が得られ難くなる。また、同様の観点から、好ましくは1〜8モル%、より好ましくは1.5〜6モル%である。
【0023】
(a4)成分は、表面紙力増強剤の紙中に対する浸透性及び紙力増強効果に寄与する成分であり、特に限定されず、各種公知のものを使用できる。具体的には、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ムコン酸、シトラコン酸等のカルボキシル基含有アニオン性不飽和モノマー;ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸などのスルホン基含有アニオン性不飽和モノマー、または前記各種有機酸のナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。これらの中でも、前記と同様の点から、カルボキシル基含有アニオン性不飽和モノマーが好ましく、アクリル酸及び/又はイタコン酸がより好ましい。
【0024】
(a4)成分の含有量としては、優れた紙力増強効果の点から、全モノマー成分を100モル%として、通常は8モル%以下、好ましくは0.5〜7モル%、より好ましくは2〜6モル%である。
【0025】
前記モノマー成分には、更にカチオン性不飽和モノマー(a5)(以下、(a5)成分ともいう)を併用しても良い。(a5)成分としては、特に限定されず、例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の第3級アミノ基含有ビニルモノマー;これらの3級アミノ基含有ビニルモノマーと4級化剤を反応させてなる該ビニルモノマーの4級化塩などが挙げられる。また、該ビニルモノマー塩としては、塩酸塩、硫酸塩等の無機酸塩であっても、酢酸塩等の有機酸塩であってもよい。また、反応させる4級化剤としては、メチルクロライド、ベンジルクロライド、ジメチル硫酸、エピクロルヒドリン等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を併用しても良い。
【0026】
(a5)成分の含有量としては、特に限定されないが、充分な紙力増強効果を確保する点から、全モノマー成分を100モル%として、好ましくは0.1〜10モル%程度、より好ましくは0.5〜5モル%程度である。
【0027】
前記モノマー成分には、更に(a1)〜(a5)成分以外のその他の不飽和モノマー(a6)(以下、(a6)成分ともいう)を併用しても良い。(a6)成分としては、特に限定されず、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート類;アジピン酸ジビニル、セバシン酸ジビニル等のジビニルエステル類;エポキシアクリレート類、ウレタンアクリレート類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニルモノマー;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどのアルキル(メタ)アクリレート類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等などのカルボン酸ビニルエステル類;クメン、α−メチルスチレンダイマー、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン等が挙げられる。
【0028】
(a6)成分の含有量としては、特に限定されないが、充分な紙力増強効果を確保する観点から、全モノマー成分を100モル%として、好ましくは0.1〜10モル%程度、より好ましくは0.5〜5モル%程度である。
【0029】
前記モノマー成分には、本発明の効果を損なわない限り、2−メルカプトエタノール、n−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類、α−メチルスチレンダイマー、エタノール、イソプロピルアルコールやペンタノール等のアルコール、四塩化炭素、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、クメン、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン等を更に併用しても良い。これらは単独でも2種以上組み合わせても良く、全モノマー成分100重量部に対して、0.001〜5重量部程度が好ましい。
【0030】
(A)成分の製造としては、特に限定されず、従来公知のモノマー滴下重合法、モノマー溶液を一括して仕込む同時重合法、又はこれらを組み合わせた方法等を活用できる。その具体例としては、予め反応装置に仕込んだ溶媒中へ、(a1)〜(a4)成分、必要に応じて、(a5)成分及び(a6)成分を含む溶液に、重合開始剤の溶液を添加した後、50〜100℃程度で1〜8時間重合させる方法等が挙げられる。なお、溶媒としては、特に限定されないが、(b1)〜(b4)成分を充分に溶解、分散させる点から、通常、水を用いることが好ましい。なお、重合終了の目安として、(A)成分のB型粘度計での粘度で判断することもできる。前記粘度としては、特に限定されないが、後述の重量平均分子量及びハイシェア粘度計での粘度に調節する点から、濃度10重量%換算で10〜80mPa・s程度が好ましく、20〜70mPa・s程度がより好ましい。
【0031】
前記重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の無機過酸化物、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド等の有機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート等)が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。なお、必要に応じて亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム等の還元剤を併用して反応系をレドックス系としても良い。重合開始剤の含有量としては、特に限定されないが、全モノマー成分100重量部に対して、0.05〜2重量部程度が好ましい。
【0032】
かくして得られる(A)成分は、重量平均分子量(ゲルパーメーションクロマトグラフィー(GPC)法によるポリエチレンオキシド換算値により得られた重量平均分子量をいう。以下同様)が、通常、100,000〜2,000,000である。重量平均分子量が100,000未満であると、充分な紙力増強効果が得られ難くなり、2,000,000を上回ると、高分子量化により、B型粘度計及びハイシェア粘度計での粘度が共に高くなる傾向がある。また同様の観点から、好ましくは200,000〜1,900,000、より好ましくは300,000〜1,500,000である。
【0033】
さらに(A)成分の物性としては、塗工時に機械的シェアを受けても紙の表面へ均一に塗工でき、更に紙の内部へ充分に浸透することで塗工紙の紙力増強効果を発揮させるため、ハイシェア粘度計での粘度が特に重要となる。その方法としては、特に限定されないが、本発明では、ハーキュレス高せん断粘度計(商品名「Model HR−801C」、熊谷理機工業(株)製)を用いて、ボブFで測定し、回転速度8800rpmにおける粘度を測定値として採用する。
【0034】
前記粘度としては、その10重量%水溶液の温度25℃における条件で、通常、5〜25mPa・sである。5mPa・s未満であると、表面紙力増強剤が塗工時に浸透し過ぎることで、充分な紙力増強効果が得られ難くなる。また25mPa・sを上回ると、表面紙力増強剤が浸透しにくくなり、紙力増強効果を発揮し難い、又は塗工ムラが発生しやすい傾向となり、高濃度・高速塗工において、その傾向はより顕著となる。また同様の観点から、好ましくは8〜22mPa・sであり、より好ましくは12〜20mPa・sである。
【0035】
本発明の表面紙力増強剤には、消泡剤、防腐剤、キレート剤、水溶性アルミニウム系化合物、尿素等の添加剤;酸化澱粉、リン酸エステル化澱粉、APS変性澱粉、酵素変性澱粉、カチオン化澱粉、両性澱粉等の澱粉類等を配合しても良い。
【0036】
本発明の塗工液は、表面紙力増強剤を含むものであり、前記表面紙力増強剤の原液をそのまま、又は希釈しても良いが、原紙に均一に塗工するため、水などで希釈する方が好ましい(以下、“希釈液”ともいう)。また、低濃度から高濃度の広範囲に亘って塗工できる点から、塗工液の濃度としては、特に限定されないが、0.1〜15重量%に希釈することが好ましい。
【0037】
本発明の塗工液の物性としては、特に限定されないが、例えば、濃度10重量%水溶液の温度50℃におけるB型粘度計での粘度が、通常は50mPa・s以下、好ましくは40mPa・s以下である。当該粘度とすることで、塗工液が紙中へ浸透し易くなり、充分な紙力増強効果が発揮されやすくなる。
【0038】
また、前記塗工液には、必要に応じて、各種添加剤も配合でき、例えば、表面サイズ剤、酸化澱粉、リン酸エステル化澱粉、APS変性澱粉、酵素変性澱粉、カチオン化澱粉、両性澱粉などの澱粉類、カルボキシメチルセルロース等のセルロース類、ポリビニルアルコール類、アルギン酸ソーダ等の水溶性高分子等の紙力増強剤や、防滑剤、防腐剤、防錆剤、pH調整剤、消泡剤、増粘剤、充填剤、酸化防止剤、耐水化剤、造膜助剤、顔料、染料等が挙げられる。
【0039】
本発明の塗工紙は、本発明の塗工液を原紙の表面に塗工してなるものである。
【0040】
原紙としては、特に限定されないが、例えば、PPC用紙、インクジェット記録用紙、フォーム用紙、板紙、ライナー、中芯、新聞用紙、コート原紙、感熱紙等が挙げられる。これらの中でも、原紙中に表面紙力増強剤が良く浸透し、優れた紙力増強効果を有する点で板紙に適用することが好ましい。また、当該原紙中には填料やサイズ剤、紙力増強剤等の各種内添薬品が添加されていても良い。
【0041】
また、原紙に塗工するための塗工機としても、特に限定されず、従来公知のものを適用できる。例えば、2ロールサイズプレス、フィルムプレス、ゲートロールコーター、バーコーター、エアナイフコーター、ブレードコーター、カレンダーコーター、スプレー塗工機等が挙げられる。また、本発明の表面紙力増強剤は、ハイシェア粘度計での粘度が低いため、より機械的シェアを受ける塗工機での塗工でも、表面紙力増強剤が紙の表面へ均一に塗工でき、更に紙の内部へ充分に浸透することで、良好な紙力増強効果を発揮する。
【0042】
また塗工液の塗布量(固形分)は、特に限定されないが、優れた紙力増強効果を発揮させる点から、通常、0.001〜3g/m
2程度、好ましくは0.005〜2g/m
2程度である。
【実施例】
【0043】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例中の「部」及び「%」は特に断りがない限り、重量基準である。
【0044】
下記の化合物については、以下の略語で示す。
AM:アクリルアミド AA:アクリル酸 IA:イタコン酸
DMAA:N,N−ジメチルアクリルアミド
MBAA:N,N’−メチレンビスアクリルアミド
SMAS:メタリルスルホン酸ナトリウム
APS:過硫酸アンモニウム
【0045】
実施例1
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素ガス導入管および2つの滴下ロートを備えた反応装置にイオン交換水522部を入れ、窒素ガスを通じて反応系内の酸素を除去した後、85℃まで加熱した。別途、滴下ロート(1)に50%のAM水溶液767.8部、DMAA5.6部、SMAS26.8部、IA3.7部を及びイオン交換水305部を仕込んだ。また、滴下ロート(2)にAPS1.5部およびイオン交換水150部を仕込んだ。次に、滴下ロート(1)および滴下ロート(2)より反応装置(I)に3時間かけて滴下した。滴下終了後、APS0.5部とイオン交換水10部を入れ、B型粘度計での推定粘度が40mPa・s(温度25℃、濃度10%換算)程度となった時点で、重合を終了させて冷却し重合体(A−1)を得た。得られた重合体(A−1)の重量平均分子量(Mw)、ハイシェア粘度計及びB型粘度計での粘度を表1に示す(以下同様)。
【0046】
実施例2〜12、比較例1〜8
実施例1と同様の方法で、表1に示すモノマー成分に変えて合成し、濃度10%の重合体(A−2)〜(A−12)、(B−1)〜(B−8)をそれぞれ得た。
【0047】
比較例9〜12
実施例2と同様のモノマー成分及び条件で合成し、B型粘度計(温度25℃、濃度10%換算)での推定粘度が下記の程度となった時点で、重合を終了させて冷却し重合体(B−9)〜(B−12)を得た。
・比較例9−推定粘度:100mPa・s程度
・比較例10−推定粘度:10mPa・s程度
・比較例11−推定粘度:55mPa・s程度
・比較例12−推定粘度:5mPa・s程度
【0048】
(重量平均分子量)
ゲルパーメーションクロマトグラフィー(GPC)法により、以下の測定条件で(A)成分の重量平均分子量を測定した。なお、カチオン基を含む(A)成分については、その濃度1%水溶液を、48%水酸化ナトリウムを用いてpH=10〜11に調整し、90℃で1時間加熱後、冷却し硫酸を用いてpH=6〜7に調整した後に測定する。
(測定条件)
・装置:HLC8120GPC(東ソー(株)製)
・使用カラム:TSKgel ALPHA−M(東ソー(株)製)
・検出器:紫外可視検出器 UV−8020(東ソー(株)製)
RI検出器:示差屈折計(東ソー(株)製)
・展開溶媒:0.2M硝酸ナトリウム水溶液
・測定値:ポリエチレンオキシド換算値で得られた重量平均分子量を測定値とした。
【0049】
(B型粘度計での粘度)
(A)成分をイオン交換水で濃度10%になるように希釈し、温度25℃に調整した後、B型粘度計(東機産業(株)製)を用いて、粘度を測定した。
【0050】
(ハイシェア粘度計での粘度)
(A)成分をイオン交換水で濃度10%になるように希釈し、温度25℃に調整した後、ハーキュレス高せん断粘度計(商品名「Model HR−801C」、熊谷理機工業(株)製)を用いて、ボブFで、粘度を測定し、回転数8800rpmにおける粘度を測定値とした。
【0051】
【表1】
【0052】
以下の評価では、各実施例及び比較例で得た重合体をそのまま表面紙力増強剤として使用した。
【0053】
<塗工液(1)の調製>
表面紙力増強剤(A−1)〜(A−12)、(B−1)〜(B−12)をイオン交換水で濃度が4%及び12%となるように希釈し、塗工液(1)を調製した。
【0054】
<塗工評価〜バーコーター〜>
評価例1〜12、比較評価例1〜12
バーコーターを用いて、各塗工液(1)をそれぞれ中芯原紙(坪量160g/m
2)の両面に塗工した。105℃の回転式ドラムドライヤーで1分間乾燥させて塗工紙を得た。なお、本評価では、表面紙力増強剤の固形付着量が1g/m
2及び3g/m
2となるように塗工した。
【0055】
<圧縮強度の測定>
前記塗工紙を用いて、JIS P 8126に準拠して測定し、比圧縮強度(N・m
2/g)で示した。
【0056】
<引張強度の測定>
評価例1〜12及び比較評価例1〜12の塗工紙を用いて、JIS P 8113に準拠して測定し、比引張強度(N・m/g)で示した。結果を表2に示す(以下同様)。
【0057】
【表2】
【0058】
<塗工液(2)の調製>
表面紙力増強剤(A−1)〜(A−12)、(B−1)〜(B−12)を、後述のゲートロールコーターでの塗工において、表面紙力増強剤の固形付着量が0.5g/m
2及び1g/m
2となるようにイオン交換水で希釈し、塗工液(2)を調製した。
【0059】
<塗工評価〜ゲートロールコーター〜>
評価例13〜24、比較評価例13〜24
ゲートロールコーター(エスエムテー(株)製)を用いて、各塗工液(2)をそれぞれ中芯原紙(坪量160g/m
2)に塗工した。105℃の回転式ドラムドライヤーで1分間乾燥させて塗工紙を得た。
【0060】
評価例13〜24及び比較評価例13〜24の塗工紙を用いて、同様の方法で圧縮強度及び引張強度をそれぞれ測定した。結果を表3に示す。
【0061】
【表3】