特許第6784234号(P6784234)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6784234
(24)【登録日】2020年10月27日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 29/38 20060101AFI20201102BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20201102BHJP
   B41J 5/30 20060101ALI20201102BHJP
   H04N 1/00 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
   B41J29/38 204
   G03G21/00 388
   G03G21/00 384
   B41J5/30 Z
   H04N1/00 C
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-128016(P2017-128016)
(22)【出願日】2017年6月29日
(65)【公開番号】特開2019-10786(P2019-10786A)
(43)【公開日】2019年1月24日
【審査請求日】2019年5月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129997
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 米藏
(72)【発明者】
【氏名】掛布 亘
【審査官】 加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−137202(JP,A)
【文献】 特開2014−124851(JP,A)
【文献】 特開2015−227920(JP,A)
【文献】 特開2009−282947(JP,A)
【文献】 特開2017−100306(JP,A)
【文献】 特開2008−279699(JP,A)
【文献】 特開2017−010487(JP,A)
【文献】 特開2004−202933(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0181628(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J5/30
B41J29/00−29/70
G03G21/00
H04N1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷ジョブに従って、記録剤を用いて記録媒体に画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部の動作を制御する制御部と、
前記記録剤の残量を検出する残量検出部と、
印刷ジョブ毎に、それぞれの印刷ジョブによる印刷で消費される記録剤の消費量を算出する消費量算出部と、
前記消費量算出部により算出された実行中の印刷ジョブによる印刷で消費される記録剤の消費量と、前記残量検出部により検出された記録剤の残量とを比較することで、実行中の印刷ジョブが途中で停止するか否かを判定する第1判定部と、
前記残量検出部により検出された記録剤の残量が、予め定められた規定量以下になったか否かを判断する残量状況判断部と、
前記消費量算出部により算出された後続の印刷ジョブによる印刷で消費される記録剤の消費量と、前記予め定められた規定量とを比較することで、記録剤の残量が前記予め定められた規定量まで減少したときに、実行中の印刷ジョブに代えて、前記後続の印刷ジョブを実行させた場合に、当該後続の印刷ジョブの処理が完了するか否かを判定する第3判定部と、を備え、
前記制御部は、前記第1判定部により実行中の印刷ジョブは途中で停止すると判定され、なおかつ前記残量状況判断部により、記録剤の残量が前記予め定められた規定量以下になったと判断されたときに、前記第3判定部により処理が完了すると判定された後続の印刷ジョブが存在する場合は、実行中の印刷ジョブを停止させ、当該後続の印刷ジョブを実行させる画像形成装置。
【請求項2】
印刷ジョブは、当該印刷ジョブが機密性を有しているか否かを示す属性情報を含み、
前記第3判定部により処理が完了すると判定された後続の印刷ジョブが複数存在する場合、
前記制御部は、前記属性情報に基づいて、前記後続の印刷ジョブのうち、機密性を有しているものを、機密性を有していないものよりも実行順位を上位に設定する請求項に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、予め定められた通常の記録材料で画像形成を行う通常モードと、当該通常モードよりも、予め定められた低減条件に従って記録剤の消費量を低下させて画像形成を行うエコモードとを切り替えて実行し、
前記消費量算出部は、前記エコモードが設定されている場合、前記予め定められた低減条件に従って、印刷ジョブによる印刷で消費される記録剤の消費量を算出する請求項1又は請求項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、特に、トナー等の記録剤の残量が少なくなった場合における動作制御に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なプリンターや複合機等の画像形成装置は、記録剤が残量不足になると、印刷が停止し、記録剤が補給されるまで、印刷は再開されず、停止した印刷ジョブはもちろん、後続の印刷ジョブの実行も滞り、ダウンタイムが発生する。下記の特許文献1には、記録剤を多種類搭載するカラー印刷装置において、印刷時にある一種類の記録剤が残量不足又は残量切れになったときに、他の種類の記録剤が残っている場合には、当該他の種類の記録剤だけでの印刷が可能な待機中のジョブを優先して印刷させることによって、後続の印刷ジョブの実行が滞るのを回避させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−263968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、記録剤の残量不足により、実行中の印刷ジョブが停止するのは仕方のないことであると、ユーザーもあきらめがつくと思われるが、後続の印刷ジョブによる記録剤の消費量が少ないにも拘わらず、停止した印刷ジョブによる記録剤の消費量が多過ぎたために、記録剤が残量不足となるのは、ユーザーは不満であろうと思われる。上記の特許文献1には、後続の印刷ジョブを優先して実行させることが記載されているが、これは画像形成に必要な種類の記録剤の残量不足となったために、実行中の印刷ジョブを停止せざるを得なかったためであり、記録剤の残量不足となるまでに、印刷ジョブの実行の順番を入れ替えるものではない。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたものであり、印刷ジョブの順番を効率良く入れ替え、実行の滞る印刷ジョブを減らすことによって、装置使用時にユーザーが体験する満足度(ユーザーエクスペリエンス)を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面に係る画像形成装置は、印刷ジョブに従って、記録剤を用いて記録媒体に画像を形成する画像形成部と、前記画像形成部の動作を制御する制御部と、前記記録剤の残量を検出する残量検出部と、印刷ジョブ毎に、それぞれの印刷ジョブによる印刷で消費される記録剤の消費量を算出する消費量算出部と、前記消費量算出部により算出された実行中の印刷ジョブによる印刷で消費される記録剤の消費量と、前記残量検出部により検出された記録剤の残量とを比較することで、実行中の印刷ジョブが途中で停止するか否かを判定する第1判定部と、前記消費量算出部により算出された、前記実行中の印刷ジョブに続く後続の印刷ジョブによる印刷で消費される記録剤の消費量と、前記残量検出部により検出された記録剤の残量とを比較することで、実行中の印刷ジョブに代えて前記後続の印刷ジョブを実行させた場合に、当該印刷ジョブの処理が完了するか否かを判定する第2判定部と、を備え、前記制御部は、前記第1判定部により実行中の印刷ジョブは途中で停止すると判定され、 かつ、前記第2判定部により前記後続の印刷ジョブの処理は完了すると判定された場合、実行中の印刷ジョブを停止させ、前記後続の印刷ジョブを実行させるものである。
【0007】
また、本発明の他の一局面に係る画像形成装置は、印刷ジョブに従って、記録剤を用いて記録媒体に画像を形成する画像形成部と、前記画像形成部の動作を制御する制御部と、前記記録剤の残量を検出する残量検出部と、印刷ジョブ毎に、それぞれの印刷ジョブによる印刷で消費される記録剤の消費量を算出する消費量算出部と、前記消費量算出部により算出された実行中の印刷ジョブによる印刷で消費される記録剤の消費量と、前記残量検出部により検出された記録剤の残量とを比較することで、実行中の印刷ジョブが途中で停止するか否かを判定する第1判定部と、前記残量検出部により検出された記録剤の残量が、予め定められた規定量以下になったか否かを判断する残量状況判断部と、前記消費量算出部により算出された後続の印刷ジョブによる印刷で消費される記録剤の消費量と、前記予め定められた規定量とを比較することで、記録剤の残量が前記予め定められた規定量まで減少したときに、実行中の印刷ジョブに代えて、前記後続の印刷ジョブを実行させた場合に、当該後続の印刷ジョブの処理が完了するか否かを判定する第3判定部と、を備え、前記制御部は、前記第1判定部により実行中の印刷ジョブは途中で停止すると判定され、なおかつ前記残量状況判断部により、記録剤の残量が前記予め定められた規定量以下になったと判断されたときに、前記第3判定部により処理が完了すると判定された後続の印刷ジョブが存在する場合は、実行中の印刷ジョブを停止させ、当該後続の印刷ジョブを実行させるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、記録剤の残量不足によって、実行中の印刷ジョブが途中で停止するおそれがあり、なおかつ当該印刷ジョブの代わりに実行させれば、処理を完了させることの可能な後続の印刷ジョブが存在する場合、実行中の印刷ジョブが停止され、後続の印刷ジョブが実行される。従って、印刷ジョブの順番を効率良く入れ替え、実行の滞る印刷ジョブを減らすことが可能となり、装置使用時にユーザーが体験する満足度(ユーザーエクスペリエンス)を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の主要内部構成を概略的に示した機能ブロック図である。
図2】第1実施形態に係る画像形成装置における制御ユニットで行われる処理動作の一例を示したフローチャートである。
図3】第2実施形態に係る画像形成装置の主要内部構成を概略的に示した機能ブロック図である。
図4】第2実施形態に係る画像形成装置における制御ユニットで行われる処理動作の一例を示したフローチャートである。
図5】印刷ジョブを実行させる順番の入れ替えの一例を説明するための説明図である。
図6】印刷ジョブを実行させる順番の入れ替えの一例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態に係る画像形成装置の主要内部構成を概略的に示した機能ブロック図である。画像形成装置1は、例えば、コピー機能、プリンター機能、スキャナー機能、及びファクシミリ機能のような複数の機能を兼ね備えた複合機であり、制御ユニット10、原稿給送部6、原稿読取部5、画像形成部12、画像メモリー32、HDD(Hard Disk Drive)92、定着部13、給紙部14、操作部47、及びトナーコンテナ17を含んで構成されている。
【0011】
画像形成装置1で原稿読取動作が行われる場合について説明する。原稿給送部6により搬送されてきた原稿、又はプラテンガラスに載置された原稿の画像を、原稿読取部5が光学的に読み取り、そして画像データを生成する。原稿読取部5により生成された画像データは、画像メモリー32等に保存される。
【0012】
画像形成装置1で画像形成動作が行われる場合について説明する。原稿読取動作により生成された画像データや、HDD92に記憶されている画像データ、ネットワーク接続された外部装置としてのコンピューターから受信した画像データ等に基づいて、画像形成部12が、給紙部14から給紙される記録媒体としての記録紙にトナー像を形成する。
【0013】
HDD92は、原稿読取部5によって読み取られた原稿画像や各種プログラム等を記憶する大容量の記憶装置である。画像メモリー32は、原稿読取部5による読み取りで得られた原稿の画像データを記憶したり、画像形成部12のプリント対象となるデータを一時的に保存したりするための領域である。
【0014】
定着部13は、熱圧着によりトナー像を記録紙に定着させるものであり、定着処理が施された記録紙は排出トレイに排出される。給紙部14は、給紙カセットを備える。
【0015】
操作部47は、画像形成装置1が実行可能な各種動作及び処理について操作者から画像形成動作実行指示等の指示を受け付ける。操作部47は、操作者への操作案内等を表示する表示部473を備えている。表示部473はタッチパネルになっており、操作者は画面表示されるボタンやキーに触れて画像形成装置1を操作することができる。
【0016】
トナーコンテナ17は、画像形成部12による画像形成に用いられる記録剤としてのトナーが収容されている。また、トナーコンテナ17には、内部に収容されているトナーの残量を検出するためのトナー残量センサー171が設けられ、トナー残量センサー171により検出されたトナー残量を示すデータは制御ユニット10に送信され、制御ユニット10において、当該信号に基づく制御が行われる。トナー残量センサー171としては、例えば、トナーに向けて光を照射し、反射される光量を検出することでトナーの残量を検出する光センサーが挙げられる。なお、トナー残量センサー171は、特許請求の範囲における残量検出部の一例である。
【0017】
制御ユニット10は、プロセッサー、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及び専用のハードウェア回路を含んで構成される。プロセッサーは、例えばCPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、又はMPU(Micro Processing Unit)等である。制御ユニット10は、制御部100と、消費量算出部101と、第1判定部102と、第2判定部103とを備えている。
【0018】
制御ユニット10は、HDD92に記憶されている制御プログラムに従った上記プロセッサーによる動作により、制御部100、消費量算出部101、第1判定部102、及び第2判定部103として機能するものである。但し、制御部100等は、制御ユニット10による制御プログラムに従った動作によらず、ハードウェア回路により構成することも可能である。以下、特に触れない限り、各実施形態について同様である。
【0019】
制御部100は、画像形成装置1の全体的な動作制御を司る。制御部100は、原稿給送部6、原稿読取部5、画像形成部12、画像メモリー32、HDD92、定着部13、給紙部14、操作部47、及びトナーコンテナ17と接続され、これら各部の駆動制御等を行う。
【0020】
消費量算出部101は、印刷ジョブ毎に、それぞれの印刷ジョブによる印刷で消費される記録剤(トナー)の消費量を算出する。なお、消費量算出部101は、実行中の印刷ジョブ、及びこのジョブに続く後続の印刷ジョブについて、印刷で消費される記録剤(トナー)の消費量を算出する。消費量算出部101は、例えば、印刷ジョブにかかる画像データを、レンダリング処理を行うハードウェア回路に通過させて、当該画像データに基づくラスタデータを生成させ、レンダリング処理によって得られたラスタデータから、各画素で消費されるトナー量をカウントし、全画素分のトナー消費量を積算することによって、当該印刷ジョブによる印刷で消費されるトナーの消費量を求める。
【0021】
第1判定部102は、消費量算出部101により算出された実行中の印刷ジョブによる印刷で消費されるトナーの消費量V1と、トナー残量センサー171により検出されたトナーの残量Rとを比較することで、実行中の印刷ジョブが途中で停止するか否かを判定する。例えば、第1判定部102は、トナーの消費量V1がトナーの残量よりも多い場合に、実行中の印刷ジョブを途中で停止すると判定する。
【0022】
第2判定部103は、消費量算出部101により算出された後続の印刷ジョブによる印刷で消費されるトナーの消費量V2と、トナー残量センサー171により検出されたトナーの残量Rとを比較することで、実行中の印刷ジョブに代えて、後続の印刷ジョブを実行させた場合に、当該印刷ジョブの処理が完了するか否かを判定する。例えば、第2判定部103は、トナーの消費量V2がトナーの残量R以下の場合には、実行中の印刷ジョブに代えて後続の印刷ジョブを実行させた場合に当該印刷ジョブの処理が完了すると判定する。
【0023】
次に、第1実施形態に係る画像形成装置1の制御ユニット10で行われる処理動作の一例について、図2に示したフローチャートに基づいて説明する。なお、この処理動作は、第1判定部102が、実行中の印刷ジョブが途中で停止すると判定されている(すなわち、トナー残量不足によって、実行中の印刷ジョブが途中で停止するおそれがある)ときに、制御部100が、新たな印刷ジョブが投入されたのを検出した場合(例えば、外部装置であるパーソナルコンピューターから新たな印刷ジョブが送信されてきた場合)に行われる処理動作である。
【0024】
制御部100が、新たな印刷ジョブが投入されたのを検出すると、消費量算出部101が、当該印刷ジョブ(後続の印刷ジョブ)による印刷で消費されるトナーの消費量V2を算出し(S1)、制御部100が、当該印刷ジョブにかかる画像データを圧縮し、圧縮した画像データをHDD92に記憶させる(S2)。
【0025】
続いて、第2判定部103が、トナー残量センサー171で検出されるトナーの残量Rを示すデータを取得し(S3)、第2判定部103が、消費量算出部101により算出された消費量V2が残量R以下であるか否かを判断する(S4)。例えば、消費量算出部101は、後続の印刷ジョブが複数である場合は、当該複数の印刷ジョブのそれぞれについて算出した各消費量の合計を消費量V2として算出する。
【0026】
第2判定部103が、消費量算出部101により算出された消費量V2が残量R以下であると判断した場合(S4でYES)、制御部100は、画像形成部12の動作を制御して、実行中の印刷ジョブを停止させ(S5)、その後、当該後続の印刷ジョブを実行させる(S6)。なお、消費量算出部101により複数の後続の印刷ジョブについての各消費量の合計が消費量V2として算出されている場合は、制御部100は、当該複数の後続の印刷ジョブを全て実行する。
【0027】
制御部100は、当該後続の印刷ジョブの実行が完了したか否かを判断し(S7)、当該後続の印刷ジョブの実行が完了したと判断すると(S7でYES)、停止させていた印刷ジョブを実行させ(S8)、この処理動作を終了する。
【0028】
一方、第2判定部103が、消費量算出部101により算出された消費量V2が残量R以下でないと判断した場合(S4でNO)、そのままこの処理動作を終了する。
【0029】
上記第1実施形態によれば、記録剤であるトナーの残量不足によって、実行中の印刷ジョブが途中で停止するおそれがあり、なおかつ当該印刷ジョブの代わりに実行させれば、処理を完了させることの可能な後続の印刷ジョブが存在する場合、実行中の印刷ジョブが停止され、後続の印刷ジョブが実行される。従って、印刷ジョブの順番を効率良く入れ替え、実行の滞る印刷ジョブを減らすことが可能となり、画像形成装置1の使用時にユーザーが体験する満足度(ユーザーエクスペリエンス)を向上させることができる。
【0030】
次に、第2実施形態に係る画像形成装置を説明する。図3は、第2実施形態に係る画像形成装置の主要内部構成を概略的に示した機能ブロック図である。第2実施形態に係る画像形成装置は、第2判定部103を備えず、残量状況判断部104及び第3判定部105を備える。なお、第2実施形態の説明では、第1実施形態と同様に処理は説明を省略する。
【0031】
残量状況判断部104は、トナー残量センサー171により検出されたトナーの残量Rが、予め定められた規定量T1以下になったか否かを判断する。つまり、残量状況判断部104は、トナーが残り少なくなってきたか否かを判断する。この規定量T1は、例えば、消費量算出部101によって実行中の印刷ジョブについての記録剤消費量が算出された時点でのトナーの残量Rよりも小さい任意の値であり、残量状況判断部104が、トナー残量センサー171により検出されたトナーの残量Rに基づいて設定する。例えば、残量状況判断部104が、記録剤消費量が算出された時点でのトナーの残量Rの50%を規定量T1として設定する。
【0032】
第3判定部105は、消費量算出部101により算出された後続の印刷ジョブによる印刷で消費されるトナーの消費量V2と規定量T1とを比較することで、トナーの残量Rが規定量T1まで減少したときに、実行中の印刷ジョブに代えて、当該後続の印刷ジョブを実行させた場合に、当該後続の印刷ジョブの処理が完了するか否かを判定する。
【0033】
続いて、第2実施形態に係る画像形成装置1の制御ユニット10で行われる処理動作の一例について、図4に示したフローチャートに基づいて説明する。なお、この処理動作は、第1判定部102が、実行中の印刷ジョブが途中で停止すると判定されている(すなわち、トナー残量不足によって、実行中の印刷ジョブが途中で停止するおそれがある)ときに、残量状況判断部104が、トナーの残量Rが規定量T1以下になったと判断したときに行われる処理動作である。
【0034】
制御部100が、後続の印刷ジョブ(すなわち、後続の印刷ジョブにかかる画像データ)がHDD92に記憶されているか否か(すなわち、待機中の印刷ジョブが存在するか否か)を判断し(S11)、制御部100が、待機中の印刷ジョブが存在すると判断した場合(S11でYES)、消費量算出部101が、待機中の印刷ジョブの中で、実行順の一番早い待機中の印刷ジョブ、ここでは、投入された順番の一番早い待機中の印刷ジョブにかかる画像データをHDD92から読み出して、当該印刷ジョブによる印刷で消費されるトナーの消費量V3を算出する(S12)。
【0035】
続いて、第3判定部105が、トナー残量センサー171により検出されるトナーの残量Rが規定量T1まで減少したときに、消費量算出部101により算出された消費量V3が規定量T1以下であるか否かを判断する(S13)。第3判定部105が、消費量算出部101により算出された消費量V3が規定量T1以下であると判断した場合(S13でYES)、制御部100は、画像形成部12の動作を制御して、実行中の印刷ジョブを停止させ(S14)、その後、当該待機中の印刷ジョブを実行させる(S15)。
【0036】
一方、第3判定部105が、消費量算出部101により算出された消費量V3が規定量T1以下でないと判断した場合(S13でNO)、制御部100が、他の待機中の印刷ジョブが存在するか否かを判断する(S16)。
【0037】
制御部100が、他の待機中の印刷ジョブが存在すると判断した場合(S16でYES)、消費量算出部101が、当該他の待機中の印刷ジョブの中で、実行順の一番早い待機中の印刷ジョブ、ここでは、投入された順番の一番早い待機中の印刷ジョブにかかる画像データをHDD92から読み出して、当該印刷ジョブによる印刷で消費されるトナーの消費量V3を算出し(S17)、その後、処理はS13へ移る。
【0038】
制御部100が、待機中の印刷ジョブが存在しないと判断した場合(S11でNO)や、制御部100が、他の待機中の印刷ジョブが存在しないと判断した場合(S16でNO)、処理が完了する待機中の印刷ジョブは存在しないことになるので、この処理動作を終了する。
【0039】
S15において、待機中の印刷ジョブを実行させた後、制御部100は、当該印刷ジョブの実行が完了したか否かを判断し(S18)、当該印刷ジョブの実行が完了したと判断すると(S18でYES)、制御部100は、規定量T1から消費量V3を差し引いた大きさを新たな閾値TAに設定し(S19)、他の待機中の印刷ジョブが存在するか否かを判断する(S20)。
【0040】
制御部100が、他の待機中の印刷ジョブが存在すると判断した場合(S20でYES)、消費量算出部101が、当該他の待機中の印刷ジョブの中で、実行順の一番早い待機中の印刷ジョブ、ここでは、投入された順番の一番早い待機中の印刷ジョブにかかる画像データをHDD92から読み出して、当該印刷ジョブによる印刷で消費されるトナーの消費量V3を算出する(S21)。
【0041】
続いて、第3判定部105が、消費量算出部101により算出された消費量V3が閾値TA以下であるか否かを判断する(S22)。第3判定部105が、消費量算出部101により算出された消費量V3が閾値TA以下であると判断した場合(S22でYES)、制御部100は、画像形成部12の動作を制御して、当該待機中の印刷ジョブを実行させる(S23)。
【0042】
一方、第3判定部105が、消費量算出部101により算出された消費量V3が閾値TA以下でないと判断した場合(S22でNO)、処理はS20へ戻る。
【0043】
S23において、待機中の印刷ジョブを実行させた後、制御部100は、当該印刷ジョブの実行が完了したか否かを判断し(S24)、当該印刷ジョブの実行が完了したと判断すると(S24でYES)、制御部100は、閾値TAから消費量V3を差し引いた大きさに閾値TAを更新し(S25)、その後、処理はS20へ移る。
【0044】
また、S20において、制御部100が、他の待機中の印刷ジョブが存在しないと判断した場合(S20でNO)、S14で停止させていた印刷ジョブを再実行させ(S26)、この処理動作を終了する。
【0045】
図5は、印刷ジョブを実行させる実行順の入れ替えの一例を説明するための説明図である。図5は、名称が「ジョブA」、「ジョブB」、「ジョブC」、「ジョブD」、「ジョブE」である5つの印刷ジョブが画像形成装置1へ投入されていることを示し、一番早く投入された「ジョブA」が実行中であり、その他の印刷ジョブが待機中であることを示している。
【0046】
また、図5は、「ジョブA」におけるトナー消費量が「トナー残量より多い」ことを示し、「ジョブB」、「ジョブC」、及び「ジョブE」におけるトナー消費量が「規定量T1以下」であること、そして「ジョブD」におけるトナー消費量が「規定量T1より多い」ことを示している。
【0047】
「ジョブA」におけるトナー消費量が「トナー残量より多い」ため、トナー残量不足によって、途中で停止するおそれがある。「ジョブB」、「ジョブC」、「ジョブE」については、トナーの残量Rが規定量T1まで減少したときに、処理を開始しても、処理は完了する。
【0048】
従って、図4に示した処理動作が実行されると、図5に示したように、実行の順番は「ジョブB」、「ジョブC」、「ジョブE」、「ジョブA」、「ジョブD」に入れ替わることになる。なお、「ジョブC」以降については、「ジョブB」によるトナー消費分、トナー残量が減るので、厳密には「ジョブB」によるトナー消費量を考慮する必要があるが、ここでは説明を簡単にするため、当該トナー消費量を考慮していない。
【0049】
当該第2実施形態によれば、ある程度トナー残量が減るまでは、実行中の印刷ジョブを実行し、ある程度トナー残量が減ってきた時点で、待機中の印刷ジョブの実行に切り換えることで、実行中の印刷ジョブを可能な限り長く実行しつつ、実行の滞る印刷ジョブを減らすことが可能となり、画像形成装置1の使用時にユーザーが体験する満足度(ユーザーエクスペリエンス)を更に向上させることができる。更には、待機中の印刷ジョブが複数存在する場合には、各印刷ジョブを一定基準に基づいた順番で順次処理することが可能となる。
【0050】
ところで、印刷物には社外秘等の機密性の高い文書があり、印刷ジョブが、当該印刷ジョブが機密性を有しているか否かを示す属性情報を含んでいる場合がある。そのため、他の実施形態として、制御部100が、当該属性情報に基づいて、後続の印刷ジョブ(すなわち、待機中の印刷ジョブ)のうち、機密性を有しているものを、機密性を有していないものよりも実行順位を上位に設定するようにしてもよい。
【0051】
例えば、上記実施形態では、S12やS17、S21において、消費量算出部101が、待機中の印刷ジョブの中で、投入された順番の早い待機中の印刷ジョブにかかる画像データをHDD92から読み出して、当該印刷ジョブによる印刷で消費されるトナーの消費量V3を算出しているが、当該他の実施形態としては、制御部100が、消費量算出部101に、機密性を有している待機中の印刷ジョブにかかる画像データをHDD92から優先して読み出させ、当該印刷ジョブによる印刷で消費されるトナーの消費量V3を優先して算出させるようにする。
【0052】
図6は、印刷ジョブを実行させる順番の入れ替えの一例を説明するための説明図である。図6に示したように、「ジョブC」が機密性を有しているため、実行の順番は「ジョブC」、「ジョブB」、「ジョブE」、「ジョブA」、「ジョブD」に入れ替わることになる。
【0053】
また、更なる別の実施形態では、制御部100が、通常モードと、当該通常モードよりも、予め定められた低減条件に従って、記録剤であるトナーの消費量を低下させるエコモードとを切り替え可能である場合、消費量算出部101が、エコモードが設定されている場合、当該予め定められた低減条件に従って、印刷ジョブによる印刷で消費されるトナーの消費量を算出するようにしてもよい。
【0054】
また、本発明は上記実施の形態の構成に限られず種々の変形が可能である。また、上記実施形態では、本発明に係る画像形成装置の一実施形態として複合機を用いて説明しているが、これは一例に過ぎず、例えば、コピー機、プリンター、ファクシミリ等の他の画像形成装置でもよい。
【0055】
また、図1乃至図6を用いて上記実施形態により示した構成及び処理は、本発明の一実施形態に過ぎず、本発明を当該構成及び処理に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0056】
1 画像形成装置
12 画像形成部
100 制御部
101 消費量算出部
102 第1判定部
103 第2判定部
104 残量状況判断部
105 第3判定部
171 トナー残量センサー
図1
図2
図3
図4
図5
図6