特許第6784239号(P6784239)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6784239切羽評価支援システム、切羽評価支援方法及び切羽評価支援プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6784239
(24)【登録日】2020年10月27日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】切羽評価支援システム、切羽評価支援方法及び切羽評価支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/14 20060101AFI20201102BHJP
   G06N 3/08 20060101ALI20201102BHJP
   G01D 21/00 20060101ALI20201102BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20201102BHJP
   G06F 3/0481 20130101ALI20201102BHJP
【FI】
   E21D9/14
   G06N3/08
   G01D21/00 D
   G06T7/00 350B
   G06F3/0481
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-142711(P2017-142711)
(22)【出願日】2017年7月24日
(65)【公開番号】特開2019-23392(P2019-23392A)
(43)【公開日】2019年2月14日
【審査請求日】2019年10月25日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】畑 浩二
【審査官】 富士 春奈
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−062776(JP,A)
【文献】 特開平05−202694(JP,A)
【文献】 特開2011−095947(JP,A)
【文献】 特開2017−117147(JP,A)
【文献】 特開平06−003145(JP,A)
【文献】 特開2005−220687(JP,A)
【文献】 国際公開第01/034941(WO,A1)
【文献】 ニューラルネットワークの分類精度に関する基礎的検討とその切羽画像解析への応用,資源と素材,1998年,Vol.114,P.155-162
【文献】 澤井康太,トンネル切羽画像を対象としたエッジ抽出による自動岩判定システム,三重大学大学院地域イノベーション学研究科 地域イノベーション学専攻 修士論文,2015年,第1頁〜第34頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D1/00−9/14
G01D18/00−21/02
G01V1/00−99/00
G06F3/01、3/048−3/0489
G06T7/00−7/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
坑内観察における切羽の撮影画像を基準画素数で分割して生成した学習用分割画像を入力層に用い、前記切羽の観察項目に対する評価区分を出力層に用いた機械学習により生成した学習結果を記憶する学習結果記憶部と、
入力部と出力部とに接続された制御部とを備えた切羽評価支援システムであって、
前記制御部が、
前記入力部から取得した切羽の撮像画像から切羽部分を切り出して、評価対象の切羽画像を取得し、
前記切羽画像の評価領域を、前記基準画素数で分割し、
前記分割した評価対象分割画像に前記学習結果を適用して、前記評価対象分割画像の個別評価区分を取得し、
前記評価対象分割画像の個別評価区分に基づいて、前記評価領域の評価区分を予測し、前記出力部に出力するとともに、
前記観察項目に割目間隔および割目状態の少なくとも一方を含むことを特徴とする切羽評価支援システム。
【請求項2】
前記制御部が、
坑内観察における切羽の撮影画像を取得し、前記撮影画像を前記基準画素数で分割した学習用分割画像を生成し、
前記学習用分割画像を入力層に用い、前記切羽の観察項目に対する評価区分を出力層に用いた機械学習により学習結果を生成し、前記学習結果記憶部に記録する請求項1に記載の切羽評価支援システム。
【請求項3】
前記観察項目に風化変質をさらに含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の切羽評価支援システム。
【請求項4】
前記評価領域には、切羽の天端、右肩部、左肩部の少なくともいずれか一つを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の切羽評価支援システム。
【請求項5】
前記制御部が、評価対象の切羽画像の分割画像について予測した評価区分を、前記分割
画像の配置に対応させて表示したヒートマップを生成し、前記出力部に出力することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の切羽評価支援システム。
【請求項6】
坑内観察における切羽の撮影画像を基準画素数で分割して生成した学習用分割画像を入力層に用い、前記切羽の観察項目に対する評価区分を出力層に用いた機械学習により生成した学習結果を記憶する学習結果記憶部と、
入力部と出力部とに接続された制御部とを備えた切羽評価支援システムを用いて、切羽評価支援を行なう方法であって、
前記制御部が、
前記入力部から取得した切羽の撮像画像から切羽部分を切り出して、評価対象の切羽画像を取得し、
前記切羽画像の評価領域を、前記基準画素数で分割し、
前記分割した評価対象分割画像に前記学習結果を適用して、前記評価対象分割画像の個別評価区分を取得し、
前記評価対象分割画像の個別評価区分に基づいて、前記評価領域の評価区分を予測し、前記出力部に出力するとともに、
前記観察項目に割目間隔および割目状態の少なくとも一方を含むことを特徴とする切羽評価支援方法。
【請求項7】
坑内観察における切羽の撮影画像を基準画素数で分割して生成した学習用分割画像を入力層に用い、前記切羽の観察項目に対する評価区分を出力層に用いた機械学習により生成した学習結果を記憶する学習結果記憶部と、
入力部と出力部とに接続された制御部とを備えた切羽評価支援システムを用いて、切羽評価支援を行なうためのプログラムであって、
前記制御部を、
前記入力部から取得した切羽の撮像画像から切羽部分を切り出して、評価対象の切羽画像を取得し、
前記切羽画像の評価領域を、前記基準画素数で分割し、
前記分割した評価対象分割画像に前記学習結果を適用して、前記評価対象分割画像の個別評価区分を取得し、
前記評価対象分割画像の個別評価区分に基づいて、前記評価領域の評価区分を予測し、前記出力部に出力する手段として機能させるとともに、
前記観察項目に割目間隔および割目状態の少なくとも一方を含むことを特徴とする切羽評価支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、山岳トンネルにおける切羽の評価を支援するための切羽評価支援システム、切羽評価支援方法及び切羽評価支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル工事では、切羽の地質状況の変化に応じて適切な掘削方法や支保工を選定したり、補助工法を施工したりするため、各切羽の地質状況を、切羽・坑内観察記録簿に観察記録している。この切羽・坑内観察記録簿には、切羽の地質状況のスケッチ、岩石の硬軟や亀裂頻度、湧水状況等を記載し、適切な施工法について検討する。
【0003】
また、画像を用いて、切羽状況を判定する技術も検討されている(例えば、特許文献1参照。)。この文献に開示されたトンネル地山判定資料の作成方法は、デジタルカメラにより撮影されたトンネル切羽面の状況を、メモリーカードやパソコン用カードリーダを介して、画像情報としてパーソナルコンピュータに取り込んでディスプレイ上に表示する。そして、このディスプレイ上の画像と、作業員が記録した切羽面の観察結果に基づいて、地山判定プログラムによる地山判定用のデータをパーソナルコンピュータに入力し、このプログラムによる判定結果を地山判定資料として出力する。
【0004】
また、岩・地質の判定を明確にする基礎資料を提供するために、画像処理により特徴量を算出する技術が検討されている(例えば、非特許文献1参照。)。この文献に開示された技術では、カラー画像からの切羽部分を切出し、RGB表色系の各成分とLab色空間のa成分とb成分との散布図による分離性が検討されている。
【0005】
また、トンネル切羽のデータ収集、画像解析による、岩判定支援システムの構築も検討されている(例えば、非特許文献2参照。)。この文献に開示された技術では、画像解析やディープラーニングといったICT技術を、トンネル切羽観察にも導入し、岩判定に要する手間の軽減というニーズが提示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−39042号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】三重大学学術機関リポジトリ研究教育成果コレクション、澤井康太、修士論文2015年度〔平成29年6月27日検索〕「トンネル切羽画像に対する色特徴を利用した岩領域と粘土領域の識別方法」,URL:https://mie-u.repo.nii.ac.jp/?action=repository_uri&item_id=10807&file_id=17
【非特許文献2】国土交通省〔平成29年6月27日検索〕「No.14 トンネル切羽のデータ収集、画像解析による、岩判定支援システムの構築」,URL:http://www.mlit.go.jp/common/001183031.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載されているように、切羽の評価においては多様な観察項目が用いられている。この場合、切羽観察者の経験値や知識によって注目する観察項目が異なり、その結果、切羽評価において大きなバラツキが生じる可能性がある。山岳トンネルにおける切羽評価において、土木職員が判断を行なう場合、その判断の適否を地質専門家がフォローできることが望ましい。しかしながら、山岳トンネルの工事現場は多く、フォローの負担が大きくなる。非特許文献1に記載のように、岩・地質の判定には色を利用可能であるが、切羽・坑内観察記録簿に記録する情報は多様である。また、非特許文献2には、具体的なICT技術の活用方法は開示されていない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための切羽評価支援システムは、坑内観察における切羽の撮影画像を基準画素数で分割して生成した学習用分割画像を入力層に用い、前記切羽の観察項目に対する評価区分を出力層に用いた機械学習により生成した学習結果を記憶する学習結果記憶部と、入力部と出力部とに接続された制御部とを備える。そして、前記制御部が、前記入力部から取得した評価対象の切羽画像の評価領域を、前記基準画素数で分割し、前記分割した評価対象分割画像に前記学習結果を適用して個別評価区分を取得し、前記個別評価区分に基づいて、前記評価領域の評価区分を予測し、前記出力部に出力する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、山岳トンネルにおける切羽の的確な評価を効率的に支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態のシステムの説明図であって、(a)はシステム概要、(b)は教師データ記憶部の説明図。
図2】本実施形態の処理手順の説明図。
図3】本実施形態の処理手順の説明図。
図4】本実施形態の画像加工の説明図であって、(a)は撮影画像、(b)は切羽の切り出し、(c)は3領域分割、(d)は画像分割の説明図。
図5】本実施形態のヒートマップの説明図であって、(a)は切羽面画像、(b)はヒートマップ画像の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、一実施形態を、図1図5に従って説明する。本実施形態では、山岳トンネルの切羽観察を支援するための切羽評価支援システムとして説明する。
図1(a)に示すように、本実施形態では、入力部10、出力部11を備えた評価支援装置20を用いる。
【0013】
入力部10は、キーボードやポインティングデバイス等、各種指示を入力するために用いる。本実施形態では、土木職員が、切羽・坑内観察記録簿に必要な観察項目を入力する場合を想定する。出力部11は、各種情報を出力するために用いる。本実施形態では、土木職員の切羽評価を支援するための情報が出力される。なお、入力部10及び出力部11の機能を兼ね備えたタッチパネルディスプレイを用いることも可能である。
【0014】
評価支援装置20は、土木職員による切羽評価を支援するコンピュータシステムである。この評価支援装置20は、制御部21、教師データ記憶部22、学習結果記憶部23、切羽観察情報記憶部24を備える。
【0015】
制御部21は、CPU、RAM、ROM等から構成された制御手段として機能し、後述する処理(画像加工段階、学習処理段階、評価支援段階、各観察項目の予測段階等を含む処理)を行なう。このための切羽評価支援プログラムを実行することにより、画像加工部211、学習処理部212、評価支援部213、予測部214等として機能する。
【0016】
画像加工部211は、切羽画像の学習や評価を行なう前に必要な画像の事前加工を行なう処理を実行する。
学習処理部212は、教師データを用いた深層学習により、切羽を判定するための学習処理を実行する。本実施形態では、学習処理部212は、例えば、CNN(Convolutional Neural Network)を用いるが、これに限定されるものではない。
【0017】
評価支援部213は、土木職員の切羽観察を支援する処理を実行する。
予測部214は、学習処理部212による学習結果を用いて、切羽評価を支援する処理を実行する。CNNにおいては、入力層において入力された情報を用いて、多層に重ね合わせた畳み込み層、プーリング層を介して、全結合層において特徴量から最終的な判定を行なう。畳み込み層では、種々のフィルタを介して切羽の局所領域の特徴を捉える。プーリング層では、畳み込み層で得られた特徴点を代表的な数値に置き換える。本実施形態では、予測部214は、風化変質、割目間隔、割目状態をそれぞれ判定するための学習結果を保持する。なお、本実施形態では、全結合層において、畳み込み層、プーリング層から出力された特徴量に応じて、分類器(例えば、SVM:Support Vector Machine)を用いて、分析結果と切羽評点とを結び付け、分析のための閾値を決定する。
【0018】
図1(b)に示すように、教師データ記憶部22には、切羽評価のための学習を行なうための教師データ220が記録される。この教師データ220は、学習処理を行なう前に登録される。教師データ220は、画像ID、切羽画像、領域ID、評価区分(風化変質)、評価区分(割目間隔)、評価区分(割目状態)に関するデータを含んで構成される。
【0019】
画像IDデータ領域には、切羽画像を特定するための識別子に関するデータが記録される。
切羽画像データ領域には、この画像IDの切羽画像のデータが記録される。
領域IDデータ領域には、天端、左肩部、右肩部の各領域を特定するための識別子に関するデータが記録される。
【0020】
評価区分(風化変質)データ領域には、この領域の風化変質を評価した結果に関するデータが記録される。風化変質については、「概ね新鮮」、「割れ目沿いの風化変質」、「岩芯まで風化変質」、「土砂状風化、未固結土砂」に対応させた「1〜4」によって評価する。
【0021】
評価区分(割目間隔)データ領域には、地質専門家が切羽の割目間隔を評価した結果に関するデータが記録される。割目間隔については「d≧1m」、「1m>d≧50cm」、「50cm>d≧20cm」、「20cm>d≧5cm」、「5cm>d」に対応させた「1〜5」によって評価する。
【0022】
評価区分(割目状態)データ領域には、地質専門家が切羽の割目状態を評価した結果に関するデータが記録される。割目状態については「割目は密着している」、「割目の一部が開口している」、「割目の多くが開口している」、「割目が開口している幅1〜5mm」、「割目が開口し5mm以上の幅がある」に対応させた「1〜5」によって評価する。
【0023】
学習結果記憶部23には、切羽評価のための学習結果が記録される。学習結果記憶部23には、観察項目(風化変質、割目間隔、割目状態)に応じた学習結果が記録される。この学習結果は、本実施形態では、学習処理時に記録される。
【0024】
切羽観察情報記憶部24には、切羽・坑内観察による切羽観察レコードが記録される。この切羽観察レコードは、工事現場の土木職員が切羽面の評価を行なった場合に記録される。この切羽観察レコードには、通常利用されている切羽・坑内観察記録簿に用いられている項目が記録されている。例えば、観察項目(圧縮強度、風化変質、割目間隔、割目状態、走向傾斜)、評価区分(風化変質)、評価区分(割目間隔)、評価区分(割目状態)の評価区分、切羽評価点等に関するデータを含んで構成される。
【0025】
次に、図2図5を用いて、評価支援装置20において、切羽評価を支援する場合の処理手順について説明する。ここでは、学習処理(図2)、評価支援処理(図3)の順番で説明する。
【0026】
(学習処理)
図2図4を用いて、学習処理を説明する。
まず、図2に示すように、評価支援装置20の制御部21は、教師データの取得処理を実行する(ステップS1−1)。具体的には、制御部21の学習処理部212は、教師データ記憶部22に記録されている教師データ220を取得する。この場合、図4(a)に示す撮影画像500を取得する。
【0027】
次に、評価支援装置20の制御部21は、切羽画像サイズの統一処理を実行する(ステップS1−2)。具体的には、制御部21の画像加工部211は、取得した教師データ220の切羽画像のサイズが一定値になるように調整する。
【0028】
次に、評価支援装置20の制御部21は、切羽部分の切り出し処理を実行する(ステップS1−3)。具体的には、制御部21の画像加工部211は、サイズを調整した切羽画像において、切羽部分を切り出す。この切り出しには、例えば、エッジ抽出、色判定等のパターン認識を用いることができる。この場合、図4(b)に示すように、切羽面画像510を取得する。
【0029】
次に、評価支援装置20の制御部21は、3領域分割処理を実行する(ステップS1−4)。具体的には、制御部21の画像加工部211は、円弧形状に基づいて、スプリングライン(SL)を特定する。次に、画像加工部211は、切羽部分のスプリングライン(SL)の上側を上下方向に2分割し、上方部分を天端画像として特定する。また、下方部分を左右に分割して、左肩部画像、右肩部画像として特定する。この場合、図4(c)に示すように、天端画像521、左肩部画像522、右肩部画像523を取得する。
【0030】
次に、評価支援装置20の制御部21は、画像分割処理を実行する(ステップS1−5)。具体的には、制御部21の画像加工部211は、天端画像、左肩部画像、右肩部画像をそれぞれ所定の基準画素数(ここでは、227ピクセル×227ピクセル)の領域に分割した学習用分割画像を生成する。図4(c)においては、天端画像521〜右肩部画像523において、分割画像を生成している。この場合、図4(d)を示すような分割画像531,532,533が複数生成される。ここでは、画像の写り込んだ切羽領域が評価対象抽出基準値(本実施形態では、50%)を超える画像(例えば、分割画像531,532)を深層学習に用いる。一方、切羽領域が評価対象抽出基準値を超えない画像(例えば、分割画像533)は、深層学習に用いない。
【0031】
次に、評価支援装置20の制御部21は、分割画像毎に、以下の処理を繰り返す。
ここでは、評価支援装置20の制御部21は、評価区分の付与処理を実行する(ステップS1−6)。具体的には、制御部21の学習処理部212は、各分割画像に対して、この分割画像を切り出した領域(天端、左肩部、右肩部)を特定する。そして、学習処理部212は、分割画像を切り出した領域に基づいて、教師データ220に記録されている評価区分(風化変質、割目間隔、割目状態)を取得し、各分割画像に関連付けて、メモリに仮記憶する。
【0032】
次に、評価支援装置20の制御部21は、観察項目(風化変質、割目間隔、割目状態)毎に、以下の処理を繰り返す。
ここでは、評価支援装置20の制御部21は、深層学習処理を実行する(ステップS1−7)。具体的には、制御部21の学習処理部212は、メモリに仮記憶した分割画像を入力層として用い、この分割画像に関連付けられた評価区分を出力層に用いて深層学習を行なうことにより、各観察項目についての学習結果を算出する。この深層学習においては、分割画像の227ピクセル×227ピクセル及び各画素の色データ(RGB)を用いる。
そして、学習処理部212は、観察項目(風化変質、割目間隔、割目状態)毎に生成した学習結果を学習結果記憶部23に記録する。
【0033】
(評価支援処理)
図3を用いて、評価支援処理を説明する。
まず、評価支援装置20の制御部21は、記録簿情報の取得処理を実行する(ステップS2−1)。具体的には、土木職員は、工事現場で切羽面を撮影した撮影画像を評価支援装置20に保存する。そして、評価支援装置20において切羽・坑内観察記録の登録を指示する。この場合、評価支援部213は、出力部11に記録簿画面を出力する。この記録簿画面には、切羽画像入力欄、各観察項目も入力欄が設けられている。そして、土木職員は、入力部10を用いて、記録簿画面に、撮影画像、切羽面に基づいて判定した評価区分を入力する。この場合、評価支援部213は、入力された評価区分、撮影画像を切羽観察情報記憶部24に記録する。
【0034】
次に、評価支援装置20の制御部21は、ステップS1−2〜S1−5と同様に、切羽画像サイズの統一処理(ステップS2−2)、切羽部分の切り出し処理(ステップS2−3)、3領域分割処理(ステップS2−4)、画像分割処理(ステップS2−5)を実行する。この場合、画像分割処理により評価対象分割画像が生成される。
【0035】
次に、評価支援装置20の制御部21は、観察項目毎に以下の処理を繰り返す。
まず、評価支援装置20の制御部21は、観察項目の評価に用いる学習結果の特定処理を実行する(ステップS2−6)。具体的には、制御部21の予測部214は、学習結果記憶部23から、観察項目(風化変質、割目間隔、割目状態)に応じた学習結果を取得する。
【0036】
そして、3領域毎に、各領域に含まれる評価対象分割画像を順次、処理対象画像として特定し、以下の処理を繰り返す。
ここでは、評価支援装置20の制御部21は、予測処理を実行する(ステップS2−7)。具体的には、制御部21の予測部214は、処理対象画像を、学習したCNNの入力層に設定し、出力層において個別評価区分を取得する。そして、予測部214は、取得した個別評価区分をメモリに仮記憶する。なお、この場合も、深層学習時と同様に、切羽領域が評価対象抽出基準値を超える分割画像を用いて予測を行なう。
以上のようにして、処理対象領域に含まれるすべての分割画像についての評価区分を予測する。
【0037】
そして、処理対象領域に含まれるすべての分割画像についての予測を終了した場合、評価支援装置20の制御部21は、評価区分の記録処理を実行する(ステップS2−8)。具体的には、制御部21の評価支援部213は、メモリに仮記憶された個別評価区分の代表値(例えば、平均値)を算出する。そして、評価支援部213は、領域、観察項目に関連付けて算出した評価区分(統計値)をメモリに仮記憶する。
上記処理を、対象領域、観察項目について、処理を繰り返す。
【0038】
次に、評価支援装置20の制御部21は、入力値との比較処理を実行する(ステップS2−9)。具体的には、制御部21の評価支援部213は、各領域について算出した評価区分に対して、予め定められた重み付けを行ない、各観察項目についての切羽評価点を算出する。次に、評価支援部213は、切羽観察情報記憶部24に記録された評価区分を取得する。そして、評価支援部213は、領域毎、観察項目毎に、土木職員によって入力された評価区分と深層学習により算出した評価区分とを比較した結果を算出し、出力部11に表示する。
【0039】
次に、評価支援装置20の制御部21は、ヒートマップ出力処理を実行する(ステップS2−10)。具体的には、制御部21の評価支援部213は、観察項目毎に、深層学習により算出した評価区分を、分割画像の配置に応じて表示したヒートマップ画像を生成する。
図5(a)に示す切羽面画像510に対して、図5(b)に示すように、風化変質、割目間隔、割目状態に応じたヒートマップ画像540を生成する。なお、ヒートマップ画像540においては、複数の分割画像をまとめた領域の平均値を算出して配置されている。そして、評価支援部213は、生成したヒートマップ画像540を、出力部11に表示する。
【0040】
本実施形態の切羽評価支援システムによれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、評価支援装置20の制御部21は、切羽画像サイズの統一処理を実行する(ステップS1−2,S2−2)。そして、評価支援装置20の制御部21は、画像分割処理を実行する(ステップS1−5,S2−5)。画像のサイズが異なる場合には、学習時と予測時とで画像の解像度が異なるが、サイズを統一することにより、同じ画像状態で判定することができる。
【0041】
(2)本実施形態では、評価支援装置20の制御部21は、切羽部分の切り出し処理を実行する(ステップS1−3,S2−3)。これにより、撮影画像から評価対象の切羽面を抽出することができる。
【0042】
(3)本実施形態では、評価支援装置20の制御部21は、3領域分割処理を実行する(ステップS1−4)。これにより、過去の切羽・坑内観察記録簿の情報を用いて、教師データ220を作成することができる。
【0043】
(4)本実施形態では、評価支援装置20の制御部21は、評価区分の付与処理(ステップS1−6)、観察項目毎に、深層学習処理を実行する(ステップS1−7)。これにより、過去の切羽・坑内観察記録簿の情報を用いて、領域毎、観察項目毎に教師データ220を作成することができる。
【0044】
(5)本実施形態では、評価支援装置20の制御部21は、3領域分割処理を実行する(ステップS2−4)。これにより、工事現場の切羽面の領域毎に観察項目を評価することができる。
【0045】
(6)本実施形態では、評価支援装置20の制御部21は、予測処理(ステップS2−7)、評価区分の記録処理(ステップS2−8)を実行する。これにより、分割画像の評価を統合して、各3領域の評価区分を決定することができる。
【0046】
(7)本実施形態では、評価支援装置20の制御部21は、入力値との比較処理を実行する(ステップS2−9)。これにより、土木職員の判定の妥当性を確認することができる。
【0047】
(8)本実施形態では、評価支援装置20の制御部21は、ヒートマップ出力処理を実行する(ステップS2−10)。これにより、切羽面の分割領域毎に、各状態を確認することができる。
【0048】
また、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、評価支援装置20の制御部21は、評価区分の記録処理を実行する(ステップS2−8)。具体的には、制御部21の評価支援部213は、メモリに仮記憶された評価区分の代表値(例えば、平均値)を算出する。分割画像毎の評価区分を統合する際に用いる評価区分の代表値は、平均値に限定されるものではない。例えば、最も悪い評価区分を代表値として特定するようにしてもよい。
【0049】
・上記実施形態では、評価支援装置20の制御部21は、記録簿情報の取得処理を実行する(ステップS2−1)。そして、評価支援装置20の制御部21は、入力値との比較処理を実行する(ステップS2−9)。これに代えて、評価支援部213は、領域、観察項目に関連付けて算出した評価区分(統計値)を切羽観察情報記憶部24に記録するようにしてもよい。
【0050】
・上記実施形態では、評価支援装置20の制御部21は、予測処理を実行する(ステップS2−7)。ここでは、観察項目(風化変質、割目間隔、割目状態)について評価する。評価対象の観察項目はこれらに限定されるものではなく、これらの一部や他の観察項目に適用することも可能である。例えば、評価支援装置20の制御部21が、各撮影画像を用いて、差し目や流れ目を特定する。次に、制御部21が、連続した撮影画像において、差し目や流れ目の位置や向きに基づいて相互の関連性を特定する。そして、制御部21が、関連性がある差し目や流れ目について、トンネル軸との傾きに基づいて、走向傾斜(差し目傾斜、流れ目傾斜)を判定する。これにより、一枚の撮影画像を用いて評価する場合と異なり、切羽観察情報記憶部24に記録されている連続した切羽における撮影画像を用いて、評価を支援することができる。
【符号の説明】
【0051】
10…入力部、11…出力部、20…評価支援装置、21…制御部、211…画像加工部、212…学習処理部、213…評価支援部、214…予測部、22…教師データ記憶部、23…学習結果記憶部、24…切羽観察情報記憶部。
図1
図2
図3
図4
図5