(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
{第1実施形態}
以下、第1実施形態に係るワイヤーハーネスについて説明する。
図1は、第1実施形態に係るワイヤーハーネス10を示す斜視図である。
図2および
図3は、第1実施形態に係るワイヤーハーネス10を製造する様子を示す説明図である。
【0020】
ワイヤーハーネス10は、ベース材20と、電線30とを備える。
【0021】
ベース材20は、電線30の一部をフラットに配設可能であればよく、形状、材質等は特に限定されるものではなく、ベース材20の機能に応じて適宜設定されていればよい。係るベース材20の機能としては、配設された電線30をフラットに保つ機能以外の機能を有している場合もあり得る。このような機能として、例えば、保護、断熱、遮熱、放熱、防音、防水、電磁シールド、電線30へかかる張力を緩和するテンションメンバ等のうち1つ又は複数を有する場合が考えられる。
【0022】
例えば、ベース材20が防音材である場合、特に、車両の床に配設されるサイレンサである場合などが考えられる。この場合、ベース材20としては、不織布、繊維が圧縮されて接着剤等で固められたもの、発泡樹脂、又は発泡樹脂のチップが圧縮されて固められたものなどを用いることが考えられる。また、この場合、ベース材20は、比較的柔軟で、かつ比較的厚い部材であることが考えられる。
【0023】
また例えば、ベース材20が保護シートである場合なども考えられる。この場合、ベース材20としては、樹脂が押出成形された一様な充実断面のシート材、又は不織布などを用いることが考えられる。
【0024】
ベース材20は、1つの部材で構成されていてもよいし、それぞれ異なる機能を有する複数の部材が積層されて構成されていてもよい。
【0025】
電線30は、積層されつつベース材20に配設されている。電線30は、第1電線32と第2電線34とを含む。第1電線32は、ベース材20上に配設された電線である。第2電線34は、第1電線32上に配設された電線である。
図3に示す例では、第2電線34は、隣り合う2本の第1電線32の間に位置しており、隣り合う2本の第1電線32に当接しているが、このことは必須ではない。第2電線34は、1本の第1電線32のみに当接している場合もあり得る。また、
図3に示す例では、第2電線34が、自身に当接する第1電線32よりも大きく形成されているが、このことは必須ではない。第2電線34が、自身に当接する第1電線32と同じかそれよりも小さく形成されていてもよい。また、
図3に示す例では、第1電線32としての複数の電線が全て同じ大きさに形成されているが、このことは必須ではない。第1電線32として異なる大きさの電線が設けられていてもよい。第2電線34についても同様である。
【0026】
以下では、各電線30が、芯線と、芯線を覆う絶縁被覆とを含む絶縁電線であるものとして説明する。芯線は、単線であってもよいし、複数の素線が集合してなるものであってもよい。複数の素線が集合してなるものの場合、撚られていてもよいし、撚られていなくてもよい。絶縁被覆は、樹脂等が芯線の周囲に押出成形されて形成されたものであってもよいし、樹脂塗料が芯線の周囲に塗布されて形成されたものであってもよい。もっとも、電線30の一部に絶縁被覆のない、いわゆる裸電線が採用される場合もあり得る。この場合でも、相互に当接する電線30のうち少なくとも一方は絶縁電線とされる。
【0027】
ここでは、第1電線32と第2電線34とがベース材に対して常に同じ経路に沿って延びているものとして説明するが、このことは必須の構成ではない。第1電線32と第2電線34とがベース材に対して一部の区間において異なる経路に沿って延びている場合もあり得る。これについて詳しくは後述する。
【0028】
図1に示す例では、第1電線32の端部と第2電線34の端部とが同じ部材(
図1に示す例では、コネクタC)に接続されているが、このことは必須の構成ではない。第1電線32の端部と第2電線34の端部とが別の部材に接続されている場合もあり得る。
【0029】
本明細書において、第1電線32がベース材20上に配設された状態に維持するための固定手段が設けられた固定箇所を第1固定箇所と称する。同様に、第2電線34が第1電線32上に配設された状態に維持するための固定手段が設けられた固定箇所を第2固定箇所と称する。ワイヤーハーネス10において、第1固定箇所の固定手段と、第2固定箇所の固定手段とが異なっている。なお、第1固定箇所では、第1電線32とベース材20とが固定される。第2固定箇所では、第2電線34と第1電線32又はベース材20とが固定される。
【0030】
ここで本明細書において、糸40による縫付を用いた固定手段を第1固定手段と称する。同様に、超音波溶着を用いた固定手段を第2固定手段と称する。同様に、接着性又は粘着性を有する介在物50(
図4参照)を用いた固定手段を第3固定手段と称する。
【0031】
ここでは、第1固定箇所および第2固定箇所の固定手段として、第1固定手段、第2固定手段、および第3固定手段のうち2つの固定手段が採用されている。本実施形態は、第1固定箇所の固定手段として、第1固定手段が用いられている事例である。後述する第2実施形態に示す例で第1固定箇所の固定手段として第3固定手段が用いられている事例について、後述する第3実施形態に示す例で第1固定箇所の固定手段として第2固定手段が用いられている事例について、それぞれ詳述する。
【0032】
第1固定手段は、上述したように、糸40による縫付を用いた固定手段である。より詳細には、
図2に示すように、針70の先端に形成された挿通孔72に糸40が挿通された状態で、当該糸40が挿通された針70の先端をベース材20に貫通させることによって、糸40による縫付を行うことができる。従ってここでは、ベース材20は、針70の先端が貫通可能に形成されている。このとき、縫い方は特に限定されない。例えば、ミシンを用いた本縫いであってもよいし、同じくミシンを用いた環縫いであってもよいし、またミシンを用いない手縫いであってもよい。また、このとき、1つの縫い目に係る糸40は1本であってもよいし、2本以上となってもよい。一般的に、手縫い又はミシンによる環縫いの場合、1つの縫い目に係る糸40は1本となり、ミシンによる本縫いの場合、1つの縫い目に係る糸40は針70に挿通された上糸42と、上糸42のループをくぐる下糸44との2本となる。
図2に示す例では、本縫いを示している。従って、糸40は、上糸42と下糸44との2本となっている。電線30をミシンによって本縫いする場合、例えば、刺しゅう糸を本縫いによって基材に縫い付ける刺しゅう用ミシンにおいて、刺しゅう糸の代わりに電線30を用いることなどによって、ベース材20に対して電線30を繰出しつつ縫付けていくことができる。
【0033】
電線30を糸40によって縫付けるに当たり、同じ糸40によって1本の電線30のみを縫い付けるものであってもよいし、同じ糸40によって平行する複数本の電線30をまとめて縫い付けるものであってもよい。縫付のピッチ等は適宜設定されるものであり、途中でピッチ等が変わる場合もあり得る。例えば、電線30が曲がって配設される部分と、直線状に配設される部分とを含む場合、電線30が曲がって配設される部分におけるピッチが直線状に配設される部分におけるピッチに比べて、小さい場合又は大きい場合など、両部分のピッチが異なる場合が考えられる。
【0034】
また、第1電線32は、同じ糸によって長手方向に連続的に縫付けられるものであってもよいし、別の糸40によって長手方向に断続的に縫付けられるもの、すなわち隣り合う縫付領域において違う糸40で縫い付けられるものであってもよい。第1電線32が長手方向に断続的に縫付けられる場合、1つの縫付領域の大きさ、および隣り合う縫付領域の間隔等は適宜設定される。
【0035】
本態様に係る例は、第2固定箇所の固定手段が第2固定手段である事例である。もっとも、第2固定箇所の固定手段が第3固定手段である場合もあり得る。この事例について詳しくは、後述する。
【0036】
第2固定手段は、上述したように、超音波溶着を用いた固定手段である。より詳細には、
図3に示すように、超音波溶着機80におけるホーン82とアンビル84とで固定対象を挟み込みつつ超音波振動を固定対象に付与することによって、超音波溶着を行うことができる。ここで、ホーン82が超音波振動する部材である。そして、ホーン82は、自身に当接する部材に超音波振動を付与することが可能である。アンビル84は、ホーン82と対向する位置に設けられてホーン82に対して反対側からホーン82と共に固定対象を挟み込む部材である。
【0037】
本態様では、第2固定箇所での固定手段として第2固定手段を用いている。このため、
図3に示すように、ホーン82が第2電線34側に位置し、アンビル84がベース材20側に位置することが好ましい。これにより、ホーン82とアンビル84の配置がこれとは逆の場合に比べて、ホーン82からの超音波振動を第2固定箇所により効果的に伝えることができる。
【0038】
ホーン82のうち固定対象に当接する面には、固定対象との滑り防止として、いわゆるローレット加工のような加工が施されて、一様で小さな凹凸形状が形成されている場合があり得る。この場合、ホーン82が当てられた部材には、ホーン82の凹凸形状に応じた跡(以下、ホーン跡という)が残る場合があり得る。従って、ここでは、第2電線34のうち第1電線32側と反対側を向く面にホーン跡が残る場合があり得る。
【0039】
第1電線32と、第2電線34とを超音波溶着するに当たり、第1電線32の絶縁被覆と、第2電線34の絶縁被覆とが同種の材料であることが好ましく、同じ材料であることがより好ましい。これにより、第1電線32と第2電線34とが超音波溶着される際、第1電線32の絶縁被覆と、第2電線34の絶縁被覆とが共に融けて、さらに比較的均一に混ざり合うことができ、以て、接合強度を高めることができる。
【0040】
なお、ホーン82は、1本の第2電線34にのみ当てられて当該1本の第2電線34のみを超音波溶着するものであってもよいし、複数の第2電線34に当てられて当該複数の第2電線34を一括して超音波溶着するものであってもよい。
【0041】
また、第2電線34は、長手方向に連続的に超音波溶着されるものであってもよいし、長手方向に断続的に超音波溶着されるものであってもよい。第2電線34は、長手方向に断続的に超音波溶着される場合、1つの超音波溶着領域の大きさ、および隣り合う超音波溶着領域の間隔等は適宜設定される。
【0042】
なお、ここでは第1固定箇所の固定手段として糸40による縫付を用いた第1固定手段が採用されている。このため、第1電線32と第2電線34との間に糸40が介在する部分が存在する。この際、第1電線32と第2電線34とは糸40が介在しない部分において超音波溶着されていればよい。
【0043】
第1電線32と第2電線34とが超音波溶着されるに当たり、第1電線32を縫い付けている糸40も併せて、第1電線32と第2電線34とのどちらか一方、又は両方に溶着されている場合もあり得る。このとき第1電線32を縫い付けている糸40が第1電線32と第2電線34との両方に溶着されている場合、第1電線32と第2電線34とが、糸40を介して接合された状態となる。もっとも、第1電線32を縫い付けている糸40は、電線30に溶着されていない場合もあり得る。
【0044】
図4は、第1実施形態に係るワイヤーハーネス10の変形例を示す概略断面図である。
【0045】
変形例に係るワイヤーハーネス10Aは、第2固定箇所の固定手段が第3固定手段である事例である。
【0046】
第3固定手段は、上述したように、接着性又は粘着性を有する介在物50を用いた固定手段である。係る介在物50としては、例えば接着剤または両面粘着テープ等が用いられる。係る介在物50として両面粘着テープが用いられる場合、貼付けることで簡易に設けることができ、また硬化させる工程を省略できる。また係る介在物50として接着剤が用いられる場合、隙間を埋めたり、接着面積を増やしたりすることができる。
【0047】
介在物50を用いる場合、介在物50が第1電線32に先に設けられてもよいし、介在物50が第2電線34に先に設けられてもよい。
図4に示す例では、介在物50としての両面粘着テープが第1電線32に先に設けられている。このとき、複数の第2電線34を貼り付け可能な一枚の比較的大きな両面粘着テープが第1電線32に先に設けられている。もっとも、これより小さな両面粘着テープが複数設けられるものであってもよく、1本の電線30に一枚の両面粘着テープが対応するものであってもよい。しかしながら、一枚の比較的大きな両面粘着テープが第1電線32に先に設けられることによって、これより小さな両面粘着テープが複数設けられる場合に比べて、両面粘着テープの配設工程を簡略化できる。
【0048】
介在物50は、第2電線34に対して長手方向に連続的に配設されるものであってもよいし、長手方向に断続的に配設されるものであってもよい。介在物50が長手方向に断続的に配設される場合、1つの介在物50の設けられる領域の長さ、および隣り合う介在物50の設けられる領域の間隔等は適宜設定される。
【0049】
{第2実施形態}
第2実施形態に係るワイヤーハーネスについて説明する。
図5および
図6は、第2実施形態に係るワイヤーハーネス110を製造する様子を示す説明図である。なお、本実施の形態の説明において、これまで説明したものと同様構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。以下の各実施の形態の説明においても同様である。
【0050】
上述したように、本態様に示す例は、第1固定箇所の固定手段として第3固定手段が用いられている事例である。第3固定手段によって第1固定箇所を固定するに当っては、上記ワイヤーハーネス10Aにおいて第3固定手段によって、第2固定箇所を固定するときと同様の方法を用いて行うことができる。
【0051】
このときここでは介在物50として、ワイヤーハーネス10Aにおける介在物50と同様に複数本の第1電線32を貼り付け可能に、一枚の比較的大きな両面粘着テープが用いられているが、このことは必須の構成ではない。例えば介在物50の大きさは、1本の第1電線32のみを貼り付け可能な大きさであってもよい。また例えば、介在物50の種類としては接着剤であってもよい。
【0052】
本態様に係る例は、第2固定箇所の固定手段が第2固定手段である事例である。もっとも、第2固定箇所の固定手段が第1固定手段である場合もあり得る。この事例について詳しくは、後述する。
【0053】
第2固定手段によって第2固定箇所を固定するに当っては、上記ワイヤーハーネス10において第2固定手段によって第2固定箇所を固定するときと同様の方法を用いて行うことができる。
【0054】
この際、ここでは第1固定箇所の固定手段が第3固定手段であるため、第1電線32の固定に糸40が用いられていない。この結果、上記ワイヤーハーネス10と比べて糸40を介さずに第1電線32と第2電線34とが当接している面積が大きくなる。このため、第1実施形態に係るワイヤーハーネス10において糸40が溶着されない場合に比べて、第1電線32と第2電線34との超音波溶着にかかる面積を大きくすることができる。
【0055】
図7は、第2実施形態に係るワイヤーハーネス110の変形例を示す概略断面図である。
【0056】
本変形例に係るワイヤーハーネス110Aは、第2固定箇所の固定手段が第1固定手段である事例である。第1固定手段によって第2固定箇所を固定するに当っては、上記ワイヤーハーネス10、10Aにおいて第1固定手段によって第1固定箇所を固定するときと同様の方法を用いて行うことができる。
【0057】
この際、ここでは糸40は第1電線32も巻き込みつつベース材20に縫い付けられている。従って、第2電線34に加えて第1電線32も糸40によって縫い付けられている。もっとも、糸40は第1電線32を巻き込むことなく、第2電線34のみをベース材20に縫い付けるものであってもよい。これについて詳しくは後述する。
【0058】
さらにここでは第1固定箇所の固定手段が第3固定手段であるため、ベース材20上に介在物50が設けられている。この際、
図7に示す例では、糸40は、介在物50を貫通している。もっとも、ベース材20上において第1電線32の間に介在物50が設けられていない部分が存在し、糸40はベース材20のうち当該介在物50が設けられていない部分に通されていてもよい。
【0059】
{第3実施形態}
第3実施形態に係るワイヤーハーネスについて説明する。
図8および
図9は、第3実施形態に係るワイヤーハーネス210を製造する様子を示す説明図である。
【0060】
上述したように、本態様に示す例は、第1固定箇所の固定手段として第2固定手段が用いられている事例である。第2固定手段によって第1固定箇所を固定するに当っては、上記ワイヤーハーネス10において第2固定手段によって、第2固定箇所を固定するときと同様の方法を用いて行うことができる。
【0061】
この際、
図8に示す例では、ホーン82が第1電線32側に位置し、アンビル84がベース材20側に位置する態様で超音波溶着が行われているが、この逆の配置で超音波溶着が行われていてもよい。つまり、ホーン82がベース材20側に位置し、アンビル84が第1電線32側に位置する態様で超音波溶着が行われるものであってもよい。特にベース材20の厚みが薄い場合には、ホーン82をベース材20側に位置させてもそれほど出力を高めずとも溶着可能である。ホーン82がベース材20側に位置する場合、ベース材20にホーン跡が残る場合があり得る。
【0062】
本態様に係る例は、第2固定箇所の固定手段が第3固定手段である事例である。第3固定手段によって第2固定箇所を固定するに当っては、上記ワイヤーハーネス10Aにおいて第3固定手段によって第2固定箇所を固定するときと同様の方法を用いて行うことができる。
【0063】
この際、ここでは第1固定箇所の固定手段が第2固定手段であるため、第1電線32の周囲に糸40が存在していない。このため、上記ワイヤーハーネス10Aと比べて、介在物50が第1電線32と直接当接する面積を大きくすることができる。また、糸40によって介在物50が第2電線34側に凸状に盛り上がる恐れがないため、介在物50が第2電線34と一様に当接しやすくなる。
【0064】
図10は、第3実施形態に係るワイヤーハーネス210の変形例を示す概略断面図である。
【0065】
本変形例に係るワイヤーハーネス210Aは、第2固定箇所の固定手段が第1固定手段である事例である。第1固定手段によって第2固定箇所を固定するに当っては、上記ワイヤーハーネス110Aにおいて第1固定手段によって、第2固定箇所を固定するときと同様の方法を用いて行うことができる。
【0066】
この際、ここでは第1固定箇所の固定手段が第2固定手段であるため、ベース材20上に介在物50が存在していない。このため、上記ワイヤーハーネス110Aと比べて、糸40が介在物50を貫通せずともよくなる。
【0067】
{第4実施形態}
第4実施形態に係るワイヤーハーネスについて説明する。
図11は、第4実施形態に係るワイヤーハーネス310を製造する様子を示す説明図である。
図12は、第4実施形態に係るワイヤーハーネス310の変形例を示す概略断面図である。
【0068】
本態様に係るワイヤーハーネス310及びこれの変形例に係るワイヤーハーネス310Aは、電線30が、第2電線34上に配設される第3電線36を含む事例である。このように、電線30が3層以上に積層される場合もあり得る。
【0069】
以下では第3電線36を第2電線34上に固定する固定手段が設けられる固定箇所を第3固定箇所と称する。第3固定箇所の固定手段は、特に限定されるものではなく、第1固定箇所の固定手段と同じであってもよいし、第2固定箇所の固定手段と同じであってもよいし、第1固定箇所の固定手段および第2固定箇所の固定手段と異なるものであってもよい。
【0070】
より詳細には、
図11、
図12に示す事例は、上記ワイヤーハーネス10に対して、さらに第3電線36を積層した場合の事例である。このとき、
図11に示すワイヤーハーネス310では、第3固定箇所の固定手段が第1固定箇所の固定手段および第2固定箇所の固定手段と異なる固定手段を採用している。より詳細には、
図12に示すワイヤーハーネス310では、第3固定箇所の固定手段として、第3固定手段を採用している。
【0071】
また、
図12に示すワイヤーハーネス10では、第3固定箇所の固定手段が第2固定箇所の固定手段と同じ固定手段、つまり第2固定手段を採用している。このように、第3固定箇所の固定手段が第2固定箇所の固定手段と同じ固定手段を用いることによって、第2電線34と第3電線36とを同じ設備を用いて配設することができる。
【0072】
なお、電線30が複数層以上に積層される場合、ベース材20から遠い電線30はきれいに整列されておらず、それよりベース材20側の複数層の電線30に当接している場合もあり得る。
【0073】
上記各態様によると、第1固定箇所の固定と、第2固定箇所の固定とを別手段とすることで、それぞれの固定箇所に応じて異なる固定手段を用いることができる。これにより、ベース材20に対して電線30を容易に積層可能となる。
【0074】
また、複数の異なる固定手段として、第1固定手段、第2固定手段および第3固定手段のうちの2つの固定手段が採用されているため、比較的簡易な固定手段を用いることができる。
【0075】
ここで、ベース材20が、例えば防音材等の比較的厚みがあり、かつ柔軟性を有する部材である場合、電線30を超音波溶着することが難しい場合がある。この場合でも、第1実施形態又は第2実施形態のように、第1固定箇所の固定手段が第1固定手段又は第3固定手段であることによって、ベース材20と電線30とを縫付又は接着等により確実に固定できる。
【0076】
特に、第1実施形態に係るワイヤーハーネス10において、第1固定箇所の固定に関し、例えばベース材20が針を貫通可能であればよく、ベース材20の材料として幅広い材料を用いることができる。また、第2固定箇所の固定に関し、例えば第1電線32と第2電線34とに絶縁被覆が同じ材料で構成された電線を用いるなどすることによって、他の部材を用いずとも比較的強固に第1電線32と第2電線34とを固定できる。
【0077】
{その他の変形例}
図13は、第1変形例に係るワイヤーハーネス410を示す概略平面図である。
【0078】
これまで第1電線32と、第2電線34とがベース材20に対して同じ経路に沿って配設されるものとして説明してきたが、このことは必須の構成ではない。
図13に示すように、第1電線32と、第2電線34とが途中で分岐する場合もあり得る。この場合、第1電線32との同じ経路上では第2電線34であった電線430は、第1電線32との分岐後、ベース材20上に配設される、つまり第1電線32となる場合もあり得る。この場合のように、ある経路では第1電線32、第2電線34、第3電線36のうちのいずれかの役割を有していた電線430が、別の経路では、第1電線32、第2電線34、第3電線36のうちの別の役割を有する場合もあり得る。
【0079】
また、実施形態において、1本の電線30に対して同じ固定手段が採用されるものとして説明してきたが、このことは必須の構成ではない。1本の電線30に対して異なる固定手段が採用される場合もあり得る。特に、
図13に示すように、1つの電線430が長手方向に沿った異なる部分において第1電線32、第2電線34、第3電線36のうちの別の役割を有するような場合には、役割に応じた異なる固定手段が採用される場合もあり得る。つまり、上記電線430において、第1電線32として機能する部分と、第2電線として機能する部分とで、異なる固定手段が採用されていてもよい。もちろん、上記電線430において、第1電線32として機能する部分と、第2電線として機能する部分とで、同じ固定手段が採用されていてもよい。
【0080】
また、実施形態において、第1電線32が複数存在する場合にすべての第1電線32に対して同じ固定手段が採用されるものとして説明してきたが、このことは必須の構成ではない。第1電線32が複数存在する場合に、一部の第1電線32と他の一部の第1電線32とに異なる固定手段が採用されている場合もあり得る。第2電線34、第3電線36についても同様である。
【0081】
図14は、第2変形例に係るワイヤーハーネス510を示す概略断面図である。
【0082】
ワイヤーハーネス510は、補強部材60をさらに備えている。なお、ワイヤーハーネス510における第1固定箇所の固定手段および第2固定箇所の固定手段は、上記ワイヤーハーネス10と同様であるが、特に限定されるものではない。
【0083】
補強部材60は、積層された電線30の高さ以上の高さ寸法を有するように形成されている。補強部材60は、ベース材20に対して電線30の両側に位置するように設けられている。このとき、隣り合う補強部材60の間に配される第1電線32は複数本であってもよいし、1本であってもよい。また、補強部材60に当接する電線30が存在していてもよいし、存在していなくてもよい。補強部材60に当接する電線30が存在している場合、第1電線32であってもよいし、第2電線34であってもよいし、第3電線36以降の電線30であってもよい。
【0084】
補強部材60は、例えば、樹脂又は金属等を材料として形成される。このとき補強部材60は、電線30よりも高剛性を有するように形成されていることが好ましい。また、補強部材60は、電線30の経路に沿って設けられる。このとき補強部材60は、電線30の長手方向に沿って連続的に設けられていることが好ましいが、断続的に設けられていてもよい。また、補強部材60の断面形状は
図14に示す例では、方形状であるが、他の角形状であってもよいし、円形状であってもよく、適宜設定される。
【0085】
補強部材60は、ベース材20に固定される。補強部材60は、例えば、電線30と同様に、糸40による縫付、超音波溶着、接着性又は粘着性を有する介在物50を用いた固定等の方法によってベース材20に固定される。このとき、補強部材60は、第1固定箇所の固定手段と同じ固定手段で固定されていてもよいし、第2固定箇所の固定手段と同じ固定手段で固定されていてもよいし、第1固定箇所の固定手段および第2固定箇所の固定手段とは別の固定手段で固定されていてもよい。もっとも、補強部材60は、糸40による縫付、超音波溶着、接着性又は粘着性を有する介在物50を用いた固定以外の方法によってベース材20に固定されるものであってもよい。
【0086】
隣り合う補強部材60の間隔は、例えば、車両に配設された際に、ワイヤーハーネス510を押圧して大きな外力を加える恐れがある押圧部材90のうち押圧部分の外形がもっとも小さな押圧部材90よりも小さく設定されているとよい。係る押圧部材90としては、例えば、ヒール又は傘の先端等が考えられる。
【0087】
電線30がベース材20に固定されつつ積層された場合、電線30が踏まれるなどされると、電線30がその衝撃を吸収しきれずに傷つく恐れがある。特に、ワイヤーハーネス510が車両の床に配設されるフロアハーネスである場合のように室内側から踏まれるなどして強い力がかけられる可能性があり、かつワイヤーハーネス510と室内空間との間にトリム等の比較的高剛性の保護カバーが配されない場合があり得る。このような場合でも本態様によると、ワイヤーハーネス510に補強部材60が設けられることによって電線30に対して過度の力がかかることを抑制できる。
【0088】
なお、ベース材20の幅方向端部側に位置する電線30に対しては、ベース材20の端縁部側に補強部材60がない場合もあり得る。つまり、ワイヤーハーネス510において、補強部材60がベース材20に対して電線30の両側に位置するように設けられている第1補強領域A1のほかに、補強部材60がベース材20に対して電線30の片側にのみ位置するように設けられている第2補強領域A2が形成されていることもあり得る。この場合、例えば、ワイヤーハーネス510が車両に配設される際、当該ワイヤーハーネス510の近傍に他の部材100が配される、または当該ワイヤーハーネス510が凹状の溝部に配されるなどするとよい。これにより、他の部材100、または溝部の縁部が補強部材60の代わりを兼ねることが可能となる。
【0089】
また、補強部材60は、ベース材20に対して電線30が1層のみ設けられる部分に設けられた場合でも、上記効果を有する。従って、上記各ワイヤーハーネスにおいて、ベース材20に対して電線30が1層のみ設けられる部分が存在する場合、当該部分に補強部材60が設けられる場合も考えられる。さらに、ベース材20に対して電線が1層のみ設けられるワイヤーハーネス、およびベース材20に対して電線が積層される場合であって本発明とは異なる方法で積層されたワイヤーハーネスについても補強部材60を応用可能である。
【0090】
図15は、第3変形例に係るワイヤーハーネス610を示す概略断面図である。
【0091】
ワイヤーハーネス610は、第2固定箇所に第1固定手段が採用されている点で、上記ワイヤーハーネス110A、210Aと同様である。しかしながら、第1固定手段における縫付態様が上記ワイヤーハーネス110A、210Aとは異なっている。
【0092】
具体的には、ここでは、糸40は、第1電線32を巻き込むことなく、第2電線34のみをベース材20に縫い付けている。このとき、1本の第2電線34が2本の第1電線32の間に配されており、第2電線34を縫い付けている糸40が、当該第2電線34の下方で2本の第1電線32の間を通りつつ、ベース材20に縫い付けられている。
【0093】
そのほか、これまで固定手段として、第1固定手段、第2固定手段、第3固定手段のいずれかが採用されるものとして説明してきたが、このことは必須の構成ではない。固定手段として、例えば、結束バンド又は片面粘着テープをベースと電線30との周囲に巻付けるなどの結束バンド又は片面粘着テープを用いた固定手段等、第1固定手段、第2固定手段、第3固定手段以外の固定手段が採用される場合もあり得る。
【0094】
またこれまで電線30はベース材20から延出する部分でコネクタC等の接続相手に接続されるものとして説明してきたが、このことは必須の構成ではない。電線30はベース材20上でコネクタC等の接続相手に接続されるものであってもよい。
【0095】
なお、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
また、本明細書は下記各態様を開示している。
第1の態様に係るワイヤーハーネスは、ベース材と、第1電線および第2電線を含み、積層されつつ前記ベース材に配設された電線と、を備え、前記第1電線が前記ベース材上に配設された状態に維持する第1固定箇所の固定手段と、前記第2電線が前記第1電線上に配設された状態に維持する第2固定箇所の固定手段とが異なっている。
第2の態様に係るワイヤーハーネスは、第1の態様に係るワイヤーハーネスであって、前記第1固定箇所および前記第2固定箇所の固定手段として、糸による縫付を用いた第1固定手段、超音波溶着を用いた第2固定手段、および接着性又は粘着性を有する介在物を用いた第3固定手段のうち2つの固定手段が採用されている。
第3の態様に係るワイヤーハーネスは、第2の態様に係るワイヤーハーネスであって、前記第1固定箇所の固定手段が、前記第1固定手段又は前記第3固定手段である。
第4の態様に係るワイヤーハーネスは、第3の態様に係るワイヤーハーネスであって、前記第1固定箇所の固定手段が、前記第1固定手段であり、前記第2固定箇所の固定手段が、前記第2固定手段である。
第5の態様に係るワイヤーハーネスは、第1から第4のいずれか1つの態様に係るワイヤーハーネスであって、積層された前記電線の高さ以上の高さ寸法を有するように形成され、前記ベース材に対して前記電線の両側に位置するように設けられた補強部材をさらに備える。
第1の態様によると、それぞれの固定箇所に応じて異なる固定手段を用いることができる。これにより、ベース材に対して電線を容易に積層可能となる。
第2の態様によると、複数の異なる固定手段として比較的簡易な固定手段を用いることができる。
第3の態様によると、ベース材が、例えば防音材等の比較的厚みがあり、かつ柔軟性を有する部材である場合、電線を超音波溶着することが難しい場合がある。この場合でも、ベース材と電線とを縫付又は接着等により確実に固定できる。
第4の態様によると、第1固定箇所の固定に関し、例えばベース材が針を貫通可能であればよく、ベース材の材料として幅広い材料を用いることができる。また、第2固定箇所の固定に関し、例えば第1電線と第2電線とに絶縁被覆が同じ材料で構成された電線を用いるなどすることによって、他の部材を用いずとも比較的強固に第1電線と第2電線とを固定できる。
電線がベース材に固定されつつ積層された場合、電線が踏まれるなどされると、電線がその衝撃を吸収しきれずに傷つく恐れがある。この場合でも第5の態様によると、補強部材が設けられることによって電線に対して過度の力がかかることを抑制できる。
【0096】
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。