特許第6784252号(P6784252)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社オートネットワーク技術研究所の特許一覧 ▶ 住友電装株式会社の特許一覧 ▶ 住友電気工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6784252-出力装置及び電源システム 図000002
  • 特許6784252-出力装置及び電源システム 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6784252
(24)【登録日】2020年10月27日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】出力装置及び電源システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 1/00 20060101AFI20201102BHJP
   H02H 3/08 20060101ALI20201102BHJP
   H02H 3/087 20060101ALI20201102BHJP
   H03K 17/08 20060101ALI20201102BHJP
   H03K 17/687 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
   H02J1/00 309W
   H02H3/08 A
   H02H3/087
   H03K17/08 C
   H03K17/687 A
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-216603(P2017-216603)
(22)【出願日】2017年11月9日
(65)【公開番号】特開2019-87941(P2019-87941A)
(43)【公開日】2019年6月6日
【審査請求日】2020年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】若園 佳佑
【審査官】 工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】 特開平6−141465(JP,A)
【文献】 特開平7−046756(JP,A)
【文献】 特開平9−285003(JP,A)
【文献】 特開2011−259627(JP,A)
【文献】 特開2014−3562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H3/08−3/10
H02H11/00
H02J1/00−1/16
H03K17/08−17/082
H03K17/687−17/695
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの端子間に印加された直流電圧を、半導体スイッチの第1端及び第2端を介して出力する出力装置であって、
前記2つの端子に接続されており、前記直流電圧の極性とは無関係に、該直流電圧を所定極性の電圧に変換する変換回路と、
前記半導体スイッチの第1端及び制御端に接続されており、該変換回路が変換した電圧を昇圧し、昇圧した電圧を制御端に印加する昇圧回路と
を備え、
前記半導体スイッチは、前記第1端の電位を基準とした前記制御端の電圧が所定電圧以上である場合にオンである
出力装置。
【請求項2】
前記昇圧回路は、前記直流電圧が前記2つの端子間に印加された場合に昇圧を開始する
請求項1に記載の出力装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の出力装置と、
該出力装置が出力した前記直流電圧が印加される負荷と
を備え
前記2つの端子中の一方の端子が前記半導体スイッチを介して前記負荷の一端に接続されており、
前記2つの端子中の他方の端子が前記負荷の他端に接続されている
電源システム。
【請求項4】
所定電流以上の電流が流れた場合に溶断される溶断素子を備え、
前記一方の端子は前記溶断素子及び半導体スイッチを介して前記負荷の一端に接続されており、
前記直流電圧は、前記半導体スイッチ及び溶断素子を介して前記負荷に印加される
請求項3に記載の電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出力装置及び電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、半導体スイッチを備え、第1端及び第2端間にバッテリが印加した直流電圧を、半導体スイッチを介して出力する出力装置(例えば、特許文献1を参照)が搭載されている。出力装置が出力した電圧は負荷に印加される。特許文献1に記載の出力装置では、半導体スイッチはNチャネル型のFET(Field Effect Transistor)である。半導体スイッチのドレインに第1端子が接続されている。半導体スイッチのソースに負荷の一端が接続されている。負荷の他端に第2端子が接続されている。半導体スイッチのドレイン及びソース夫々に、寄生ダイオードのカソード及びアノードが接続されている。半導体スイッチのゲート及び第2端子間に端子スイッチが接続されている。
【0003】
ソースの電位を基準としたゲートの電圧が所定電圧以上である場合、半導体スイッチはオンであり、ソースの電位を基準としたゲートの電圧が所定電圧未満である場合、半導体スイッチはオフである。特許文献1に記載の出力装置は、半導体スイッチ及び端子スイッチ夫々をオン又はオフに切替えるドライバ回路を更に備える。ドライバ回路は、半導体スイッチ30のゲートに接続されており、ゲートの電圧を上昇させることによって半導体スイッチをオンに切替え、ゲートの電圧を低下させることによってオフに切替える。ドライバ回路は、半導体スイッチをオンに切替える場合に端子スイッチをオフに切替え、半導体スイッチがオフに切替える場合に端子スイッチをオンに切替える。
【0004】
半導体スイッチ及び端子スイッチ夫々がオフ及びオンである状態で、バッテリを第1端子及び第2端子間に接続する。バッテリの正極及び負極夫々が第1端子及び第2端子に接続されている場合、ドライバ回路が半導体スイッチをオン又はオフに切替えることによって、電圧出力と、電圧出力の停止とが正常に行われる。
【0005】
バッテリの正極及び負極夫々を第2端子及び第1端子に誤って接続した場合において、半導体スイッチがオフに維持されているとき、半導体スイッチの寄生ダイオードを介して電流が流れる。寄生ダイオードを介して大きな電流が長時間流れた場合、半導体スイッチの温度が異常な温度に上昇し、半導体スイッチが故障する可能性がある。
【0006】
特許文献1に記載の出力装置では、バッテリの正極及び負極夫々を第2端子及び第1端子に誤って接続した場合、ソースの電位を基準としたゲートの電圧が、バッテリの出力電圧に略一致し、所定電圧以上となる。これにより、半導体スイッチは強制的にオンに切替わり、電流が、寄生ダイオードではなく、半導体スイッチを流れる。このため、電流が寄生ダイオードを介して流れる期間は、バッテリが接続されてから半導体スイッチがオンに切替わるまでの期間であり、短く、半導体スイッチが故障する可能性は低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−19812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の出力装置では、負荷の抵抗値を基準として、第1端子と、半導体スイッチのドレインとの間の抵抗値が十分に小さいことが前提条件である。
【0009】
バッテリの正極及び負極夫々を第2端子及び第1端子に誤って接続されている場合においては、第1端子と半導体スイッチのドレインとの間の抵抗値が大きい程、第1端子の電位を基準とした半導体スイッチのソースの電圧は高い。一方で、第1端子の電位を基準とした半導体スイッチのゲートの電圧は、第1端子と半導体スイッチのドレインとの間の抵抗値とは無関係に、バッテリの出力電圧に略一致する。
【0010】
このため、第1端子と半導体スイッチのドレインとの間の抵抗値が大きい場合においては、バッテリの正極及び負極夫々を第2端子及び第1端子に誤って接続したときに、ソースの電位を基準としたゲートの電圧が所定電圧以上とならず、半導体スイッチが強制的にオンに切替わらない可能性がある。半導体スイッチが強制的にオンに切替わらなかった場合、大きな電流が半導体スイッチの寄生ダイオードに長時間流れ続け、半導体スイッチが故障する可能性がある。
【0011】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、2つの端子間に印加する直流電圧の極性が誤っている場合に半導体スイッチを確実にオンに維持することができる出力装置及び電源システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様に係る出力装置は、2つの端子間に印加された直流電圧を、半導体スイッチの第1端及び第2端を介して出力する出力装置であって、前記2つの端子に接続されており、前記直流電圧の極性とは無関係に、該直流電圧を所定極性の電圧に変換する変換回路と、前記半導体スイッチの第1端及び制御端に接続されており、該変換回路が変換した電圧を昇圧し、昇圧した電圧を制御端に印加する昇圧回路とを備え、前記半導体スイッチは、前記第1端の電位を基準とした前記制御端の電圧が所定電圧以上である場合にオンである。
【0013】
本発明の一態様に係る電源システムは、前述した出力装置と、該出力装置が出力した前記直流電圧が印加される負荷とを備え、前記2つの端子中の一方の端子が前記半導体スイッチを介して前記負荷の一端に接続されており、前記2つの端子中の他方の端子が前記負荷の他端に接続されている。
【発明の効果】
【0014】
上記の態様によれば、2つの端子間に印加する直流電圧の極性が誤っている場合に半導体スイッチを確実にオンに維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態における電源システムの回路図である。
図2】出力装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列挙して説明する。以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0017】
(1)本発明の一態様に係る出力装置は、2つの端子間に印加された直流電圧を、半導体スイッチの第1端及び第2端を介して出力する出力装置であって、前記直流電圧の極性とは無関係に、該直流電圧を所定極性の電圧に変換する変換回路と、該変換回路が変換した電圧を昇圧し、昇圧した電圧を前記半導体スイッチの制御端に印加する昇圧回路とを備え、前記半導体スイッチは、前記第1端の電位を基準とした前記制御端の電圧が所定電圧以上である場合にオンである。
【0018】
上記の一態様にあっては、2つの端子間に印加する直流電圧の極性が誤っている場合において、変換回路は、直流電圧の極性が正しいときと同様に、直流電圧を、極性が例えば正である電圧に変換する。昇圧回路は、変換回路が変換した電圧を昇圧し、昇圧した電圧を半導体スイッチの制御端に印加する。昇圧回路が上昇させる電圧の幅が十分に大きいと仮定する。この場合、昇圧回路が印加する電圧が十分に高いので、半導体スイッチは、他方の端子と半導体スイッチの第2端との間の抵抗値とは無関係に、半導体スイッチは確実にオンに切替わる。
【0019】
(2)本発明の一態様に係る出力装置では、前記昇圧回路は、前記直流電圧が前記2つの端子間に印加された場合に昇圧を開始する。
【0020】
上記の一態様にあっては、直流電圧が2つの端子間に印加された場合、直流電圧の極性とは無関係に、昇圧回路は昇圧を開始し、半導体スイッチがオンに切替わる。
【0021】
(3)本発明の一態様に係る電源システムは、前述した出力装置と、該出力装置が出力した前記直流電圧が印加される負荷とを備える。
【0022】
上記の一態様にあっては、出力装置は、負荷に電圧を出力し、負荷が作動する。
【0023】
(4)本発明の一態様に係る電源システムは、所定電流以上の電流が流れた場合に溶断される溶断素子を備え、前記直流電圧は、前記半導体スイッチ及び溶断素子を介して前記負荷に印加される。
【0024】
上記の一態様にあっては、直流電圧の極性が誤っている場合においても、半導体スイッチはオンに切替わる。この状態で、半導体スイッチを介して流れる電流が大きい場合、断素子が溶断され、過電流が流れることが防止される。
【0025】
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係る電源システムの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0026】
図1は、本実施形態における電源システム1の回路図である。電源システム1は、車両に好適に搭載されており、バッテリ2、出力装置3、負荷4、溶断素子F1、第1導線L1、第2導線L2、第1端子T1及び第2端子T2を備える。バッテリ2は、第1端子T1及び第2端子T2間に接続される。第1導線L1及び第2導線L2夫々は抵抗成分を有する。第1導線L1の等価回路が第1抵抗R1で表され、第2導線L2の等価回路が第2抵抗R2で表されている。
【0027】
第1端子T1は溶断素子F1の一端に接続されている。溶断素子F1の他端は第1導線L1の一端に接続されている。第1導線L1の他端と、第2端子T2は出力装置3に接続されている。出力装置3は、更に、第2導線L2の一端に接続されている。第2導線L2の他端は負荷4の一端に接続されている。負荷4の他端は出力装置3に接続されている。
【0028】
第1端子T1及び第2端子T2間にバッテリ2が接続された場合、バッテリ2は、第1端子T1及び第2端子T2間に直流電圧を印加する。出力装置3は、第1端子T1及び第2端子T2間に印加された直流電圧を、第2導線L2を介して出力する。出力装置3が出力した直流電圧は負荷4に印加される。
【0029】
負荷4は、車両に搭載された電気機器である。負荷4では、電流は、一端から他端に向かう方向だけではなく、他端から一端に向かう方向にも流れることが可能である。
バッテリ2の正極及び負極夫々が第1端子T1及び第2端子T2に接続されている場合、バッテリ2の接続は正常接続であり、第2端子T2の電位を基準とした直流電圧の極性は正である。バッテリ2の接続が正常接続である場合、電流は、第1端子T1から、溶断素子F1、第1導線L1、出力装置3、第2導線L2、負荷4、出力装置3及び第2端子T2の順に流れる。これにより、負荷4に電力が供給され、負荷4が正常に作動する。
【0030】
バッテリ2の正極及び負極夫々が第2端子T2及び第1端子T1に接続されている場合、バッテリ2の接続は、逆接続であり、誤った接続である。このとき、第2端子T2の電位を基準とした直流電圧の極性は負である。バッテリ2の接続が逆接続である場合、電流は、第2端子T2から、出力装置3、負荷4、第2導線L2、出力装置3、第1導線L1、溶断素子F1及び第1端子T1の順に流れる。
【0031】
溶断素子F1は、ヒューズ又はヒュージブルリンク等である。溶断素子F1を流れる電流が所定電流以上となった場合、溶断素子F1は溶断される。溶断素子F1が溶断された場合、出力装置3、負荷4、第1導線L1及び第2導線L2を介して流れる電流が遮断され、過電流が流れることが防止される。
【0032】
出力装置3は、半導体スイッチ30、ダイオード31、変換回路32及び昇圧回路33を有する。半導体スイッチ30は、Nチャネル型のFETである。ダイオード31は、半導体スイッチ30の製造過程で形成される寄生ダイオードである。ダイオード31のカソード及びアノード夫々は、半導体スイッチ30のドレイン及びソースに接続されている。変換回路32は、4つのダイオード50,51,52,53を有する。
【0033】
出力装置3では、第1導線L1の他端は半導体スイッチ30のドレインに接続され、半導体スイッチ30のソースは第2導線L2の一端に接続されている。半導体スイッチ30のドレインには、更に、ダイオード50のアノードと、ダイオード51のカソードとが接続されている。ダイオード50のカソードは、ダイオード52のカソードに接続されている。ダイオード51のアノードは、ダイオード53のアノードに接続されている。ダイオード52のアノードと、ダイオード53のカソードとは、第2端子T2に接続されている。ダイオード50,52間の第1接続ノードと、ダイオード51,53間の第2接続ノードとは、昇圧回路33に各別に接続されている。昇圧回路33は、更に、半導体スイッチ30のソース及びゲートに各別に接続されている。負荷4の他端も第2端子T2に接続されている。
【0034】
変換回路32は、受動素子であり、第1端子T1及び第2端子T2間に印加された直流電圧を変換する。変換回路32が変換した変換電圧は、第1接続ノード及び第2接続ノードから昇圧回路33に出力される。
【0035】
バッテリ2の接続が正常接続である場合、電流は、第1端子T1から、溶断素子F1、第1導線L1、ダイオード50、昇圧回路33、ダイオード53及び第2端子T2の順に流れる。このとき、第2接続ノードの電位を基準とした変換電圧の極性は正である。
バッテリ2の接続が逆接続である場合、電流は、第2端子T2から、ダイオード52、昇圧回路33、ダイオード51、第1導線L1、溶断素子F1及び第1端子T1の順に流れる。このときも、第2接続ノードの電位を基準とした変換電圧の極性は正である。
【0036】
以上のように、変換回路32は、第2端子T2の電位を基準とした直流電圧の極性に無関係に、この直流電圧を、第2接続ノードの電位を基準とした極性が正である電圧に変換する。
なお、第1接続ノードの電位を基準とした場合、変換電圧の極性は、直流電圧の極性とは無関係に常に負である。以下に記載する変換電圧は、第2接続ノードの電位を基準とした電圧を意味する。
【0037】
昇圧回路33は、変換回路32から入力された変換電圧を昇圧する。昇圧回路33は、昇圧した電圧(以下では、昇圧電圧という)を半導体スイッチ30のゲートに印加する。本実施形態で記載する昇圧電圧も第2接続ノードの電位を基準とした電圧を意味する。
【0038】
半導体スイッチ30において、ソースの電位を基準としたゲートの電圧が所定電圧以上である場合、ドレイン及びソース間に電流が流れることが可能である。このとき、半導体スイッチ30はオンである。また、半導体スイッチ30において、ソースの電位を基準としたゲートが所定電圧未満である場合、ドレイン及びソース間に電流が流れることはない。このとき、半導体スイッチ30はオフである。
半導体スイッチ30のソース、ドレイン及びゲート夫々は、第1端、第2端及び制御端に相当する。
【0039】
昇圧回路33は、半導体スイッチ30において、ソースの電位を基準としたゲートの電圧(以下、ゲート電圧という)を監視している。昇圧回路33は、変換電圧の昇圧幅を調整することによって、昇圧電圧を調整する。具体的には、昇圧回路33は、ゲート電圧が、予め設定されている一定の設定電圧となるように、昇圧電圧を調整する。設定電圧は所定電圧以上である。このため、昇圧回路33が昇圧を行っている場合、半導体スイッチ30はオンである。
昇圧回路33が昇圧を停止している場合、半導体スイッチ30のゲートに昇圧電圧が印加されないため、ゲート電圧は所定電圧未満であり、半導体スイッチ30はオフである。
【0040】
前述したように、第1端子T1及び第2端子T2間にバッテリ2が接続された場合、バッテリ2の接続が正常接続であるか否かに無関係に、第1接続ノード、昇圧回路33及び第2接続ノードの順に電流が流れる。このとき、第1接続ノード及び第2接続ノードから変換電圧が昇圧回路33に出力されると共に、昇圧を行うための電力が昇圧回路33に供給される。
【0041】
昇圧回路33では、例えば、インダクタの一端にスイッチが接続されており、スイッチのオン及びオフへの切替えを交互に繰り返すことによって、昇圧を行う。昇圧を行うための電力には、例えば、昇圧回路33内のスイッチをオン又はオフに切替えるための電力が含まれる。
【0042】
図2は出力装置3の動作を説明するためのタイミングチャートである。図2には、半導体スイッチ30について、オン及びオフに係る推移が示されている。各推移の横軸は時間を表す。
まず、バッテリ2が第1端子T1及び第2端子T2間に接続されていない場合、即ち、第1端子T1及び第2端子T2が開放されている場合、昇圧回路33に電力が供給されていない。このため、昇圧回路33は昇圧回路33が昇圧を停止しており、半導体スイッチ30はオフである。半導体スイッチ30がオフである場合、電流は、半導体スイッチ30のドレイン及びソースを介して流れず、出力装置3は、半導体スイッチ30を介した電圧出力を停止している。このとき、負荷4に直流電圧が印加されていないため、負荷4は動作を停止している。
【0043】
バッテリ2が第1端子T1及び第2端子T2間に接続された場合、バッテリ2の接続が正常接続であるか否か、即ち、第2端子T2の電位を基準とした直流電圧の極性とは無関係に、昇圧回路33に電力が供給され、昇圧回路33は、変換回路32が変換した変換電圧の昇圧を開始する。これにより、半導体スイッチ30がオンに切替わる。
【0044】
バッテリ2の接続が正常接続である場合において、半導体スイッチ30にオンであるとき、電流は、第1端子T1から、溶断素子F1、第1導線L1、半導体スイッチ30、第2導線L2、負荷4及び第2端子T2の順に流れる。このとき、出力装置3は、第1端子T1及び第2端子T2間に印加された直流電圧を、半導体スイッチ30のドレイン及びソースを介して出力し、出力装置3が出力した直流電圧は負荷4に印加される。直流電圧は、半導体スイッチ30及び溶断素子F1を介して負荷4に印加される。直流電圧が負荷4に印加された場合、負荷4は作動する。
【0045】
バッテリ2の接続が逆接続である場合において、半導体スイッチ30はオンであるとき、電流は、第2端子T2から、負荷4、第2導線L2、半導体スイッチ30、第1導線L1、溶断素子F1及び第1端子T1の順に流れる。
【0046】
前述したように、溶断素子F1を介して流れる電流が所定電流以上である場合、溶断素子F1は溶断される。従って、半導体スイッチ30を介して流れる電流と、昇圧回路33を流れる電流との和が所定電流以上となった場合、溶断素子F1が溶断される。これにより、半導体スイッチ30を介して流れる電流が遮断され、半導体スイッチ30を介して過電流が流れることが防止される。
前述したように、バッテリ2が第1端子T1及び第2端子T2間に接続された場合、バッテリ2の接続が正常接続である否かとは無関係に、半導体スイッチ30及び溶断素子F1を介して電流が流れる。そして、溶断素子F1の作用により、半導体スイッチ30を介して過電流が流れることが防止される。
【0047】
バッテリ2の接続が正常接続である場合、昇圧回路33には、半導体スイッチ30のオフを指示するオフ指示と、半導体スイッチ30のオンを指示するオン指示とが入力される。
昇圧回路33は、オフ指示が入力された場合、昇圧電圧の印加を停止する。これにより、半導体スイッチ30はオフに切替わる。バッテリ2の接続が正常である場合において、半導体スイッチ30がオフであるとき、電流は、半導体スイッチ30のドレイン及びソースを介して流れない。このとき、出力装置3は、半導体スイッチ30を介した電圧出力を停止する。これにより、負荷4への直流電圧の印加が停止し、負荷4が動作を停止する。
【0048】
昇圧回路33は、オン指示が入力された場合、昇圧電圧の印加を再開する。これにより、半導体スイッチ30はオンに切替わり、負荷4が再び作動する。
【0049】
バッテリ2の接続が逆接続である場合、オフ指示及びオン指示が昇圧回路33に入力されることはない。従って、バッテリ2が第1端子T1及び第2端子T2間に接続された場合において、バッテリ2の接続が逆接続であるとき、昇圧回路33は昇圧電圧の印加を継続し、半導体スイッチ30をオンに維持する。
なお、出力装置3は、第2端子T2の電位を基準とした第1端子T1の電圧の極性が負である場合にバッテリ2の接続が逆接続であることを示す報知信号を出力してもよい。
【0050】
以上のように構成された出力装置3では、第1端子T1及び第2端子T2間に印加する直流電圧の極性が誤っている場合、即ち、バッテリ2の接続が逆接続である場合、変換回路32は、直流電圧の極性が正しいときと同様に、直流電圧を所定極性の電圧に変換する。昇圧回路33は、変換電圧を昇圧し、昇圧電圧を半導体スイッチ30のゲートに印加する。昇圧回路33は、ゲート電圧が設定電圧となるように昇圧電圧を調整し、設定電圧は、半導体スイッチ30のオン及びオフへの切替えに係る所定電圧以上である。このため、半導体スイッチ30は、昇圧回路33が昇圧を行った場合、半導体スイッチ30は、第1抵抗R1の抵抗値とは無関係に、確実にオンに切替わる。
【0051】
また、バッテリ2の接続が逆接続である場合において、半導体スイッチ30がオフであるとき、ダイオード31、即ち、半導体スイッチ30の寄生ダイオードを電流が流れる。しかしながら、バッテリ2の接続が逆接続である場合、半導体スイッチ30はオンに切替わるので、ダイオード31を介して電流が流れる期間は短い。半導体スイッチ30がオンである場合、ダイオード51のカソード及びアノード間の電圧は略ゼロVとなるため、電流がダイオード51を流れることはない。
【0052】
更に、バッテリ2の接続が逆接続であり、かつ、半導体スイッチ30を介して電流が流れている場合において、半導体スイッチ30を介して流れる電流が大きいとき、溶断素子F1が溶断される。これにより、半導体スイッチ30を介して過電流が流れることが防止される。
【0053】
なお、第1端子T1及び第2端子T2に接続されている電源は、バッテリに限定されず、直流電源であればよい。また、半導体スイッチ30をオンに切替えることが可能である場合、例えば、昇圧回路33が上昇させる電圧の幅が十分に大きい場合、昇圧回路33は、ゲート電圧が設定電圧となるように昇圧電圧を調整しなくてもよい。
【0054】
開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0055】
1 電源システム
2 バッテリ
3 出力装置
30 半導体スイッチ
31,50,51,52,53 ダイオード
32 変換回路
33 昇圧回路
4 負荷
F1 溶断素子
L1 第1導線
L2 第2導線
R1 第1抵抗
R2 第2抵抗
T1 第1端子
T2 第2端子
図1
図2