【実施例】
【0020】
実施例1
実施例1の表面実装インダクタ100を
図1から
図4、
図5A、
図5B、
図6A、
図6B、
図7Aおよび
図7Bを参照して説明する。
図1は表面実装インダクタ100の一例を示す概略透過斜視図である。
図2は表面実装インダクタ100を構成するコイル10の一例を示す概略斜視図である。
図3および
図4は表面実装インダクタ100の製造方法を説明する概略斜視図である。
図5Aは表面実装インダクタ100の断面の上面側を部分的に拡大したデジタルマイクロスコープ画像であり、
図5Bは表面実装インダクタ100の断面の底面側を部分的に拡大したデジタルマイクロスコープ画像である。
図6Aは表面実装インダクタ100の上面部の走査型電子顕微鏡(SEM)画像であり、
図6Bは
図6Aを2値化処理した画像である。
図7Aは表面実装インダクタ100の底面部の走査型電子顕微鏡(SEM)画像であり、
図7Bは
図7Aを2値化処理した画像である。
【0021】
図1に示すように、表面実装インダクタ100は、磁性粉を含有する複合材料からなる成型体12と、成型体12内に内蔵されるコイル10と、コイルの引出部の端部それぞれに接続し、実装面の一部から側面の一部にかけて配置される外部端子14とを備える。成型体12は、実装面側の底面と、底面に対向する上面と、底面および上面に隣接する4つの側面とを有する。また、成型体12はコイル10の巻軸に直交する断面における長軸方向に平行な長手方向と、コイルの巻軸方向に平行な短手方向とを有し、底面と上面の距離である高さを有する。コイル10は巻軸を成型体12の底面に対して平行にして成型体12に内蔵され、コイル10の巻軸が表面実装インダクタ100の実装面に対して平行になっている。コイル10の巻回部の外周からは、実装面方向に引出部が互いに交差することなく引き出され、引出部の端部が成型体12の底面に露出する。引出部の端部のそれぞれは、成型体12の底面から露出し、互いに逆方向に成型体12の対向する側面それぞれの方向に底面に沿って延在する。端部の表面は成型体12の底面から露出し、端部の端面は成型体12の側面から露出する。底面から露出する引出部の端部には外部端子14が電気的に接続される。成型体12の底面部でコイル10の端部と接続される外部端子14は、底面と、底面に隣接し、端部の端面が露出する側面とに跨がってL字状に形成される。外部端子14の成型体12の側面における高さは、例えば、成型体12の高さの1/4以上に形成される。また、成型体12では底面の引出部の端部に挟まれた領域における磁性粉の密度が、上面における磁性粉の密度よりも小さくなっている(図示せず)。
【0022】
外部端子14がコイル10の引出部の端部と成型体12の底面部で接続されることで、表面実装インダクタ100を実装面にて実装基板に実装するとき、外部端子を介して引出部と実装基板の間を流れる電流経路を短くでき、例えば、直流抵抗値を従来のものが6.15mΩであったものを、4.88mΩまで低抵抗化することができた。また、外部端子14の成型体12の側面における高さが、成型体12の側面の高さの1/4以上であると、実装時にはんだフィレットが目視可能に形成され、実装基板に実装する際の配線パターンとの接続信頼性がより向上する。また、成型体12における磁性粉の密度が底面側で低くなっていることで、外部端子間の絶縁耐圧がより向上する。
【0023】
成型体12を構成する複合材料は、磁性粉に加えて、樹脂等の結着剤を含んでいてもよい。磁性粉には、例えば、鉄(Fe)、Fe−Si系、Fe−Si−Cr系、Fe−Si−Al系、Fe−Ni−Al系、Fe−Cr−Al系等の鉄系の金属磁性粉や、鉄を含まない組成系の金属磁性粉、鉄を含む他の組成系の金属磁性粉、アモルファス状態の金属磁性粉、表面がガラス等の絶縁体で被覆されて金属磁性粉、表面を改質した金属磁性粉、ナノレベルの微小な金属磁性粉、フェライト粉等を用いることができる。また、結着剤には、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂が用いられる。実施例1の表面実装インダクタの成型体12は、例えば、磁性粉としてFe−Si−Cr系の金属磁性粉を、結着剤としてエポキシ樹脂を用いて構成される。
【0024】
成型体12は、例えば、長手方向の長さL2.5mm×短手方向の長さW2.0mm×高さT2.0mmのいわゆる252020の大きさに形成される。
【0025】
図2に示すように、コイル10は、断面が矩形状の導体である平角線を2段に巻回して形成される巻回部10aと、巻回部10aの外周部から引き出される引出部10bとを有して形成される。コイル10を形成する導体は、ポリエステル樹脂等の絶縁被膜を有している(図示せず)。
図2では、巻回部10aは巻軸に直交する断面が、長径と短径を有する長円状、楕円状等に形成されている。巻回部10aは導体の両端が外周に位置する様に2段に巻回して形成され、引出部10bは上段および下段の外周部からそれぞれ引き出される。引出部10bのそれぞれは、巻回部10aの長径方向と略直交して同一方向に引き出される。引出部10bは、長径方向にそれぞれ逆方向に向けて折り曲げられ、長径方向に平行に延在する端部を有している。
【0026】
表面実装インダクタ100は、例えば、
図3に示すような中間体を加圧成型することで製造される。
図3では、第1予備成型体20の内部にコイルの巻回部10aが配置され、コイルの引出部10bの端部が、第1予備成型体20の外部の側面に沿って配置される。第1予備成型体20は、磁性粉を含む複合材料から形成され、底部と、底部に配置される巻軸部20aと、底部を包囲して配置される壁部とを有し、壁部の底部を包囲する4つの側面の内の1つの側面の一部に切欠部20bが設けられている。第1予備成型体20の巻軸部20aは、コイルの巻回部10aの巻軸が挿入可能に、底部の厚み方向に直交する面から厚み方向に形成される。第1予備成型体20の底部と壁部は、その内部にコイルの巻回部10aを収容可能に形成される。第1予備成型体20の壁部は、底部の厚み方向に直交する面の外周部に沿って、底部の厚み方向に形成される。
【0027】
コイル10は第1予備成型体20の底部が設けられた面とは反対側の面から第1予備成型体20内に配置され、巻軸部20aがコイルの巻回部10aの巻軸に挿入される。コイルの巻回部10aの巻軸に直交する面は、第1予備成型体20の底部の厚み方向に直交する面に接して配置される。コイルの巻回部10aの巻軸に平行な側面は、コイルの引出部10bに挟まれる領域を除いて、第1予備成型体20の壁部に包囲される。コイルの引出部10bは、第1予備成型体20の切欠部20bを挟む壁部に沿って配置される。コイルの引出部10bの端部は、切欠部20bから第1予備成型体20外へ露出し、第1予備成型体20の壁部の4つの側面の内の1つの側面に沿って配置される。また、コイルの引出部10bの端部は、第1予備成型体20と成型金型(図示せず)との間に挟持される。
【0028】
表面実装インダクタの製造方法の一例は、所定の形状に形成されたコイルを準備することと、所定の形状を有する第1予備成型体を準備することと、成型金型内に、第1予備成型体を配置してその内部にコイルを配置すること、又は、コイルが配置された第1予備成型体を配置することと、コイルが収容された第1予備成型体を成型金型で加圧成型して、コイルの端部の表面が実装面側に露出した成型体を得ることと、露出したコイルの端部の表面と接続する外部端子を形成することとを含む。
【0029】
具体的には、
図3に示すようにコイルが収容された第1予備成型体20を、コイルの巻軸方向に、成型金型で、加温した状態で、加圧成型することで、第1予備成型体20の底部が設けられた面とは反対側の面と、切欠部20bが複合材料で被覆されてコイルの巻回部が内蔵され、引出部10bの端部が表面に露出する成型体が形成される。
図4では、コイル10が収容される第1予備成型体20の底部が設けられた面とは反対側の面上に第2予備成型体30を配置し、第1予備成型体20と第2予備成型体30とを成型金型内に配置し、加温した状態で、成型金型を用いてコイルの巻回部の巻軸と平行な方向に加圧成型し、一体化して成型体が形成される。第2予備成型体30は第1予備成型体20と同様に磁性粉を含む複合材料から形成される。
図4では、第2予備成型体30は平板状に形成され、第1予備成型体20の底部が設けられた面とは反対側の面を被覆する形状を有している。第1予備成型体20の底部が設けられた面とは反対側の面上に第2予備成型体30を配置して加圧成型すると、第1予備成型体20の底部が設けられた面とは反対側の面は第2予備成型体30の加圧成型物によって被覆される。また、切欠部20bは、第1予備成型体20および第2予備成型体30を構成する複合材料の一部がコイルの巻回部10aの側面に沿って回り込んで被覆される。そのため、切欠部20b付近の領域と第1または第2予備成型体から形成される他の領域とでは、加圧成型時における複合材料の流動性に差が生じることになる。その結果、成型体の底面となる切欠部20bが設けられた側面の切欠部20b付近における磁性粉の密度が、他の領域、例えば成型体の上面となる領域における磁性粉の密度よりも低くなる。これは例えば、以下のように考えることができる。すなわち、切欠部20b付近では、他の部分より複合材料に含まれる磁性粉のうち粒径の大きい粒子がコイルの巻回部10aの側面に沿って回り込んでくるが、複合材料に含まれる磁性粉のうち粒径の小さい粒子ほど他の粒子との摩擦が大きく、粒径の大きい粒子間に充填されにくい傾向にある。そのため、切欠部20bに対応する成型体の領域では、粒径の小さい粒子の含有量が、第1予備成型体20から形成される成型体の領域に比べて少なくなり、結果的に磁性粉の密度が低下すると考えられる。この様な形状の第1予備成型体と第2予備成型体を用いた場合、長手方向の長さL2.5mm×短手方向の長さW2.0mm×高さT2.0mmのいわゆる252020以下の大きさの成型体を形成するのに適している。
【0030】
表面実装インダクタ100の成型体12では、実装面側の底面の引出部の端部間である第2開口部に対応する領域における磁性粉の密度は、成型体の上面における磁性粉の密度よりも低くなっている。この磁性粉の密度が低い領域を、外部端子が接続されるコイルの引出部の両端部が挟持しているため、磁性粉が金属磁性粉の場合であっても、コイルの両端部間の絶縁耐圧が向上する。ここで、成型体12における磁性粉の密度は、後述するようにSEM画像観察における単位面積当たりに占める磁性粉の粒子の面積比率として算出される。
【0031】
例えば、特開2013−211331号公報に記載されているように、コイルの引出部を引き出すための切欠きを有する予備成型体に、引出部が交差しているコイルを収容して、予備成型体の切欠き側から加圧成型する場合には、金型及びコイルの引出部によって複合材料が加圧されるので、複合材料に含まれる磁性粉のうち粒径の小さい粒子も流動しやすくなるため、実装面側の領域と他の領域とでは磁性粉の密度に差が生じることはないと考えられる。また、例えば、特開2012−160507号公報に記載されているように、コイルの端部を引き出すための切欠きの面積が小さい予備成型体を用いる場合でも、実装面側の領域と他の領域とでは磁性粉の密度に差が生じることはないと考えられる。
【0032】
図5Aは、表面実装インダクタ100のコイルの巻軸方向に直交する断面における成型体の上面中央部付近を部分的に拡大したデジタルマイクロスコープ(キーエンス社製)画像である。また、
図5Bは、表面実装インダクタ100のコイルの巻軸方向に直交する断面における成型体の底面中央部付近を部分的に拡大したデジタルマイクロスコープ(キーエンス社製)画像である。
図5Aに示されるように、表面実装インダクタ100の上面側では、粒子径の大きい磁性粉粒子の間隙に、粒子径の小さい磁性粉粒子が密に充填されている。一方、
図5Bに示されるように、表面実装インダクタ100の底面側では、上面側に比べて粒子径の大きい磁性粉粒子の間隙に存在する粒子径の小さい磁性粉粒子の量が少なくなっている。すなわち、成型体の底面側の引出部に挟まれる領域における磁性粉の密度は、上面側の領域における磁性粉の密度よりも低くなっている。
【0033】
次に、成型体における磁性粉の密度の測定方法の一例を
図6A、
図6B、
図7Aおよび
図7Bを用いて説明する。
図6Aは成型体の上面部におけるSEM画像(500倍)の一例であり、これを画像処理ソフトウエアで2値化処理した画像が
図6Bである。また、
図7Aは成型体の底面部におけるSEM画像(500倍)の一例であり、これを画像処理ソフトウエアで2値化処理した画像が
図7Bである。
図6AのSEM画像は、成型体の上面部の表面を500倍で観察して得られる。2値化処理された
図6Bでは、白地部分が磁性粉の存在領域に該当する。したがって、観察領域全体の面積に対する白地部分の面積比率を算出することで、SEM画像の観察領域における磁性粉の密度を見積もることができる。
図6Bから成型体の上面部における磁性粉の密度を算出すると、90.2%となる。
図7AのSEM画像は、成型体の底面部の表面を500倍で観察して得られる。2値化処理された
図7Bでは、白地部分が磁性粉の存在領域に該当する。
図6Bと同様に
図7Bから成型体の底面部における磁性粉の密度を算出すると、83.4%となる。したがって、成型体の上面に対する底面の磁性粉の密度の比は0.92となる。表面実装インダクタ100では、成型体の上面に対する底面の磁性粉の密度の比は、例えば、0.8以上0.99以下であり、好ましくは0.85以上0.97以下である。なお、画像処理ソフトウエアとしてはGIMP(Spencer Kimball, Peter Mattis and the GIMP Development Team製)が使用できる。
【0034】
表面実装インダクタ100では、コイル10は断面が矩形状の導線を巻回して形成されるが、導線の断面形状は、矩形状以外の円形状、多角形状等であってもよい。また、コイルの巻回部は、軸方向から見た時に長円形状を有しているが、長円形状以外の円形状、楕円形状、矩形状、多角形状等を有していてもよい。また、外部端子は、成型体の底面のみに配置されていてもよく、底面と隣接する3つの側面に跨がって形成されていてもよい。さらに、コイルの引出部の端部の端面は、成型体の側面から露出しないように形成されてもよい。
【0035】
実施例2
実施例2の表面実装インダクタでは、成型体に含まれる磁性粉が、第1の平均粒径D50を有する第1磁性粉と、第1の平均粒径D50よりも小さい第2の平均粒径D50を有する第2磁性粉とを含んでいること以外は、実施例1の表面実装インダクタと同様に構成される。ここで、平均粒径D50は、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定される磁性粉の粒度分布において体積累積50%に相当する粒径として求められる。
【0036】
第1の平均粒径D50は、例えば、30μmであり、第2の平均粒径D50は、例えば、5μmである。また、磁性粉は第1磁性粉と第2磁性粉の混合比が重量基準で、例えば、7:3である。成型体を構成する複合材料には磁性粉に加えて樹脂を、磁性粉の総重量に対して、例えば、2.5重量%以上4重量%以下で含んでいる。係る構成の複合材料を用いて実施例1における製造方法と同様に表面実装インダクタを構成すると、成型体の底面側の引出部に挟まれる領域における磁性粉の密度は、上面側の領域における磁性粉の密度よりも低くなる。
【0037】
実施例2の表面実装インダクタにおいて、第1の平均粒径D50の第2の平均粒径D50に対する粒径比は6であるが、粒径比は、例えば、2以上20以下であってよく、好ましくは3以上15以下である。磁性粉における第1磁性粉と第2磁性粉の混合比は2.33であるが、第1磁性粉の第2磁性粉に対する混合比は、例えば、1.5以上6以下であってよく、好ましくは2以上4以下である。
【0038】
実施例3
実施例3の表面実装インダクタでは、コイルを、断面が矩形状の導体である平角線を2段に巻回して形成される巻回部10aと、巻回部10aの外周部から引き出される引出部10bとを有する様に形成し、コイルの巻回部の外周部から引き出される引出部を、互いに交差して反対方向に延在させ、コイルの引出部を成型体の実装面方向に引き出して、引出部の端部が成型体の底面に露出すること以外は、実施例1の表面実装インダクタと同様に構成される。
【0039】
実施例3の表面実装インダクタでは、引出部が巻回部の外周部から、互いに交差するように実装面方向に引き出されて、引出部の端部の表面が成型体の底面に露出する。また、底部と、底部に配置されてコイルの巻回部の巻軸を挿入するための巻軸部と、底部の周囲を包囲して配置される壁部とを備え、壁部の4つの側面の内の1つの側面の一部に切欠部を有する第1予備成型体に、引出部が互いに交差して反対方向に延在させたコイルを取り付け、コイルの引出部の端部を切欠部から引き出して壁部の4つの側面の内の1つの側面に沿って延在させ、第1予備成型体の底部が設けられた面とは反対側の面上に第2予備成型体を配置し、成型金型を用いて、コイルの巻回部の巻軸と平行な方向に加圧成形して、成型体が形成されるので、成型体の底面におけるコイルの引出部の端部に挟まれた領域の磁性粉の密度が、上面における磁性粉の密度よりも小さくなっている。
【0040】
引出部が互いに交差して成型体の底面に引き出されることで、引出部の形状形成における導体への負荷が小さくなり、より安定した形状形成が可能になる。また、底面におけるコイルの引出部の端部に挟まれた領域の磁性粉の密度が低いことで絶縁耐圧性が向上する。
【0041】
実施例4
実施例4の表面実装インダクタの製造方法は、実施例3の表面実装インダクタの製造方法である。実施例4の表面実装インダクタの製造方法では、第1予備成型体内に配置されるコイルが、コイルの巻回部の外周部から引き出される引出部が、第1予備成型体の切欠部において互いに交差して、その端部が第1予備成型体の外部に引き出されて、配置されること以外は実施例1における製造方法と同様に構成される。
【0042】
実施例4の製造方法では、引出部が互いに交差して成型体の底面に引き出されることで、引出部の形状形成における導体への負荷が小さくなり、より安定した形状形成が可能になる。また、底面におけるコイルの引出部の端部に挟まれた領域の磁性粉の密度が低いことで絶縁耐圧性が向上する。
【0043】
実施例5
実施例5の表面実装インダクタの製造方法を、
図8を参照して説明する。
図8は表面実装インダクタの製造方法を説明する概略斜視図である。実施例5の表面実装インダクタの製造方法では、実施例1における板状の第2予備成型体30に代えて、凸部を有する第2予備成型体32を用いること以外は、実施例1における製造方法と同様に構成される。
【0044】
図8に示すように、第2予備成型体32は、第1予備成型体20の底面部と反対側の面を被覆する板状部32aと、板状部32aの外周部の一部から突出し、第1予備成型体20の切欠部20bに部分的に挿入される凸部32bとを有する。凸部32bは、切欠部20bの幅よりも狭く、また切欠部20bの高さよりも短く形成され、第1予備成型体20の第2開口部の一部を被覆する。成型金型内でコイル10が配置される第1予備成型体20と第2予備成型体32とを一体に成型することで、コイルの巻回部が内蔵され、コイルの引出部の端部の表面が底面に露出する成型体が形成される。
【0045】
第2予備成型体32が凸部32bを有することで、第1予備成型体20の切欠部20bを被覆する複合材料が充分に供給されて、切欠部20bがより確実に被覆される。また、第2予備成型体の配置時における位置精度がより向上する。第2予備成型体32の凸部32bが、第1予備成型体の20の切欠部20bよりも小さく形成されるため、第2予備成型体32を構成する複合材料がコイル10の巻回部に沿って流れ込んで、切欠部20bを被覆する。そのため、切欠部20bに対応する成型体の領域は、第1予備成型体20または第2予備成型体32から直接形成される他の領域よりも磁性粉の密度が小さくなる。
【0046】
実施例6
実施例6の表面実装インダクタの製造方法を、
図9を参照して説明する。
図9は表面実装インダクタの製造方法を説明する概略斜視図である。実施例6の表面実装インダクタの製造方法では、板状部34aと板状部から突出する凸部34bとを有する第2予備成型体34を用いること以外は、実施例1における製造方法と同様に構成される。
【0047】
図9に示すように、第2予備成型体34は、第1予備成型体20の底部と反対側の面を被覆する板状部34aと、板状部34aの外周部の一部から、第1予備成型体20の切欠部20b側とは反対側に突出する凸部34bとを有する。
図9では凸部34bは第1予備成型体20と同じ幅で形成される。成型金型内でコイル10が配置される第1予備成型体20と第2予備成型体34とを一体に成型することで、コイルの巻回部が内蔵され、引出部の端部の表面が底面に露出する成型体が形成される。
【0048】
第2予備成型体34が凸部34bを有することで、切欠部20bを被覆する複合材料が充分に供給されて、切欠部20bがより確実に被覆される。第1予備成型体の20の切欠部20bは、第2予備成型体34から供給される複合材料がコイル10の巻回部に沿って流れ込んで、被覆される。そのため、切欠部20bに対応する成型体の領域は、第1予備成型体20または第2予備成型体34から直接から形成される他の領域よりも磁性粉の密度が小さくなる。
【0049】
実施例5および実施例6では、実施例1の製造方法とは異なる形状の第2予備成型体を用いる。第2予備成型体の形状はこれらに限られず、例えば、
図10に示される第2予備成型体36、
図11に示される第2予備成型体38等であってもよい。
図10に示される第2予備成型体36は、板状部36aと、板状部36aの対向する側面部からそれぞれ突出する凸部36bとを有する。第2予備成型体36は、板状部36aを第1予備成型体の底部と反対側の面に対向させて成型金型内に配置されてもよく、凸部36bを第1予備成型体の底部と反対側の面に対向させて成型金型に配置されてもよい。また、
図11に示される第2予備成型体38は、板状部38aと、板状部38aの一方の面から突出する凸部38bとを有する。第2予備成型体38は、板状部38aを第1予備成型体の底部と反対側の面に対向させて成型金型内に配置されてもよく、凸部38bを第1予備成型体の底部と反対側の面に対向させて成型金型に配置されてもよい。コイルが配置される第1予備成型体と第2予備成型体とを成型金型内で一体化して成型することでコイルの巻回部が内蔵され、コイルの引出部の端部の表面が露出する成型体が形成される。
【0050】
実施例7
実施例7の表面実装インダクタの製造方法では、第2予備成型体の代わりに、未成型の磁性粉を含有する複合材料を、第1予備成型体上に配置し、第1予備成型体および複合材料を成型金型内で一体に成型して成型体を得ること以外は実施例1の製造方法と同様に構成される。
【0051】
実施例7の製造方法では、コイルが配置される第1予備成型体を成型金型内に配置し、第1予備成型体のコイルの巻回部の上面が露出する面を被覆する様に、磁性粉を含有する複合材料を成型金型内に配置する。このときコイルの巻回部の側面が露出する切欠部には、複合材料を充填しても、しなくてもよい。複合材料を配置した状態でコイルの巻回部の巻軸方向に加圧成型することで複合材料と第1予備成型体とが一体に成型されて、コイルの巻回部が内蔵され、コイルの引出部の端部の表面が露出する成型体が形成される。第1予備成型体の切欠部に対応する成型体の領域では、複合材料の流動性の差異に起因して、引出部に挟まれる領域における磁性粉の密度が、他の領域における磁性粉の密度よりも低くなっている。
【0052】
実施例7の製造方法では、第2予備成型体を別途用意する工程を省くことができるため、製造方法全体としての工数を低減することができる。
【0053】
実施例8
実施例8の表面実装インダクタの製造方法では、実施例1の第1予備成型体において、壁部の切欠部の外周部に沿った中央部に、底部の厚み方向に突出する凸部22cが、切欠部22bの幅よりも狭く、切欠部22bの高さより低く形成される第1予備成型体22を用いること以外は実施例1における製造方法と同様に構成される。第1予備成型体22は、磁性粉を含む複合材料から形成され、底部と、底部に配置される巻軸部22aと、底部を包囲して配置される壁部とを有し、壁部の底部を包囲する4つの側面の内の1つの側面の一部に切欠部22bが設けられ、切欠部22bにおいて底部の外周部の一部に凸部22cが配置されている。この様な形状の場合、第1予備成型体22の形状が複雑になるため、長手方向の長さL2.5mm×短手方向の長さW2.0mm×高さT2.0mmのいわゆる252020以下の大きさの成型体を形成することが困難な場合がある。したがって、この様な形状の第1の予備成型体は、長手方向の長さL2.5mm×短手方向の長さW2.0mm×高さT2.0mmのいわゆる252020を超える大きさの成型体を形成するのに適している。この様に形成した場合でも、凸部22cが壁部の切欠部22bよりも小さく形成されるため、切欠部22bに対応する成型体の領域は、第1予備成型体または第2予備成型体から直接形成される他の領域よりも磁性粉の密度が小さくなる。