(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の検出位置における前記検出対象磁界の強度に対する前記第2の検出位置における前記検出対象磁界の強度の比は、4以下であることを特徴とする請求項1記載の角度センサシステム。
前記第1の検出情報は、前記第1の印加磁界成分の方向が前記基準方向に対してなす角度の余弦と対応関係を有する第1の検出値と、前記第1の印加磁界成分の方向が前記基準方向に対してなす角度の正弦と対応関係を有する第2の検出値とを含み、
前記第2の検出情報は、前記第2の印加磁界成分の方向が前記基準方向に対してなす角度の余弦と対応関係を有する第3の検出値と、前記第2の印加磁界成分の方向が前記基準方向に対してなす角度の正弦と対応関係を有する第4の検出値と含むことを特徴とする請求項4記載の角度センサシステム。
前記回転軸に平行な方向に見たときに、前記第1の検出位置は前記第2の部分の前記空洞と重なる位置にあり、前記第2の検出位置は前記空洞を除いた前記第2の部分と重なる位置にあることを特徴とする請求項8ないし11のいずれかに記載の角度センサシステム。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、
図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る角度センサシステムの概略の構成について説明する。本実施の形態に係る角度センサシステム100は、本実施の形態に係る角度センサ1と、磁界発生部5とを備えている。角度センサ1は、特に、磁気式の角度センサである。
【0023】
磁界発生部5は、検出対象の角度に関連する検出対象磁界を発生する。磁界発生部5は、磁性体よりなる磁性構造体6を含んでいる。本実施の形態では特に、磁性構造体6は、その全体が硬磁性体によって構成されている。磁性構造体6は、回転軸Cに垂直な方向の磁化を有し、回転軸Cを中心として回転する。磁性構造体6の形状については、後で詳しく説明する。
【0024】
以下、検出対象の角度を、対象角度と言い、記号θで表す。本実施の形態における対象角度θは、磁性構造体6の回転位置に対応する角度である。
【0025】
角度センサ1は、検出対象磁界を検出して、対象角度θと対応関係を有する角度検出値θsを生成するものである。以下、基準平面P内において基準位置における検出対象磁界の方向が基準方向DRに対してなす角度を回転磁界角度と言い、記号θMで表す。回転磁界角度θMは、対象角度θと対応関係を有する。磁性構造体6が理想的な回転磁界を発生する場合には、回転磁界角度θMは、対象角度θと一致する。本実施の形態では、回転磁界角度θMは、対象角度θと一致するものとする。
【0026】
基準平面Pは、例えば、回転軸Cに垂直な仮想の平面である。基準位置は、基準平面P内に位置する。基準平面P内において、磁性構造体6が発生する検出対象磁界の方向は、基準位置を中心として回転する。基準方向DRは、基準平面P内に位置して、基準位置と交差する。以下の説明において、基準位置における検出対象磁界の方向とは、基準平面P内に位置する方向を指す。なお、
図1では、磁性構造体6と基準平面Pを、実際よりも離して描いている。
【0027】
角度検出値θsは、回転磁界角度θMと対応関係を有する。前述の通り、回転磁界角度θMは、対象角度θと対応関係を有する。従って、角度検出値θsは、対象角度θと対応関係を有する。
【0028】
角度センサ1は、第1の磁気センサ10と第2の磁気センサ20とを含んでいる。第1の磁気センサ10は、第1の検出位置P1において検出対象磁界を含む第1の印加磁界MF1を検出する。第2の磁気センサ20は、第2の検出位置P2において検出対象磁界を含む第2の印加磁界MF2を検出する。
【0029】
第1および第2の検出位置P1,P2は、磁性構造体6に対して、回転軸Cに平行な方向における同じ側に存在する。本実施の形態では、第1および第2の検出位置P1,P2は、いずれも基準平面P上にある。また、第1および第2の検出位置P1,P2は、回転軸Cからの距離が互いに異なる。本実施の形態では、基準平面Pと回転軸Cとの交点からの距離が互いに異なるように、第1および第2の検出位置P1,P2が規定されている。
図1に示した例では、第1の検出位置P1は、基準平面Pと回転軸Cとの交点であり、第2の検出位置P2は、回転軸Cから離れた位置にある。なお、第1および第2の検出位置P1,P2と磁性構造体6との位置関係は、
図1に示した例に限られない。例えば、第1および第2の検出位置P1,P2は、磁性構造体6からの距離が互いに異なる2つの位置であってもよい。
【0030】
以下、第1の検出位置P1における検出対象磁界を第1の部分磁界MFaと言い、第2の検出位置P2における検出対象磁界を特に第2の部分磁界MFbと言う。第1および第2の部分磁界MFa,MFbの方向は、対象角度θおよび回転磁界角度θMに応じて変化する。第1および第2の部分磁界MFa,MFbの方向は、基準平面Pに平行であるか、ほぼ平行である。第1および第2の検出位置P1,P2が互いに異なっていることにより、第1および第2の部分磁界MFa,MFbの強度は互いに異なっている。
【0031】
角度センサ1には、検出対象磁界の他に、検出対象磁界以外のノイズ磁界Mexが印加される場合がある。第2の検出位置P2におけるノイズ磁界Mexの方向および強度は、それぞれ第1の検出位置P1におけるノイズ磁界Mexの方向および強度と等しい。ノイズ磁界Mexは、その方向と強度が時間的に一定の磁界であってもよいし、その方向と強度が時間的に周期的に変化する磁界であってもよいし、その方向と強度が時間的にランダムに変化する磁界であってもよい。
【0032】
角度センサ1にノイズ磁界Mexが印加されている場合、第1の印加磁界MF1は、第1の部分磁界MFaとノイズ磁界Mexとの合成磁界であり、第2の印加磁界MF2は、第2の部分磁界MFbとノイズ磁界Mexとの合成磁界である。
【0033】
ここで、
図1および
図2を参照して、本実施の形態における方向と角度の定義について説明する。まず、
図1に示した回転軸Cに平行で、
図1における下から上に向かう方向をZ方向とする。
図2では、Z方向を
図2における奥から手前に向かう方向として表している。次に、Z方向に垂直な2方向であって、互いに直交する2つの方向をX方向とY方向とする。
図2では、X方向を右側に向かう方向として表し、Y方向を上側に向かう方向として表している。また、X方向とは反対の方向を−X方向とし、Y方向とは反対の方向を−Y方向とする。
【0034】
回転磁界角度θMは、基準方向DRを基準にして表される。本実施の形態では、X方向を基準方向DRとする。また、本実施の形態では、基準平面Pと回転軸Cとの交点を基準位置とする。
【0035】
ここで、第1の印加磁界MF1の基準平面Pに平行な成分を第1の印加磁界成分MF1cと言い、第2の印加磁界MF2の基準平面Pに平行な成分を第2の印加磁界成分MF2cと言う。
【0036】
第1および第2の印加磁界成分MF1c,MF2cの方向は、いずれも、
図2において反時計回り方向に回転するものとする。
図2に示したように、第1の印加磁界成分MF1cの方向が基準方向DRに対してなす角度を記号θ1で表し、第2の印加磁界成分MF2cの方向が基準方向DRに対してなす角度を記号θ2で表す。角度θ1,θ2は、基準方向DRから反時計回り方向に見たときに正の値で表し、基準方向DRから時計回り方向に見たときに負の値で表す。
【0037】
第1の印加磁界MF1の主成分は、第1の部分磁界MFaである。第2の印加磁界MF2の主成分は、第2の部分磁界MFbである。以下の説明では、第1および第2の部分磁界MFa,MFbの方向は、基準位置における検出対象磁界の方向に一致するものとする。この場合、第1および第2の部分磁界MFa,MFbが基準方向DRに対してなすそれぞれの角度は、回転磁界角度θMと等しい。これらの角度の正負の定義は、角度θ1,θ2と同様である。
【0038】
図1には、基準位置と第1の検出位置P1が一致している例を示している。基準位置は、上記の第1および第2の部分磁界MFa,MFbと基準位置における検出対象磁界との関係を満たす限り、基準平面Pと回転軸Cとの交点とは異なっていてもよい。
【0039】
次に、
図3および
図4を参照して、磁性構造体6の形状について詳しく説明する。
図3は、磁性構造体6を示す分解斜視図である。
図4は、磁性構造体6を示す断面図である。磁性構造体6は、回転軸Cに平行な方向において互いに反対側に位置する第1の端面6aと第2の端面6bとを有している。第2の端面6bは、
基準平面Pに対向している。本実施の形態では、第1の端面6aと第2の端面6bは、いずれも、回転軸Cに垂直である。
【0040】
また、磁性構造体6は、互いに連結された第1の部分61と第2の部分62を含んでいる。
図3では、第1の部分61と第2の部分62を分離して描いている。
図4では、第1の部分61と第2の部分62の境界を、点線で示している。第1の部分61は、第1の端面6aを含んでいる。第2の部分62は、第2の端面6bを含んでいる。
【0041】
図4に示したように、第2の部分62は、回転軸Cに平行な方向に関して、第1および第2の検出位置P1,P2と第1の部分61との間に位置している。また、
図3および
図4に示したように、第1の部分61は回転軸Cが通過する空洞を含まないが、第2の部分62は回転軸Cが通過する空洞62hを含んでいる。
【0042】
本実施の形態では、第2の部分62は、以下のような形状を有している。回転軸Cに垂直な第2の部分62の任意の断面における第2の部分62の外周および内周は、いずれも回転軸C上に中心が位置する円形である。以下、上記の断面における第2の部分62の外周の直径を、第2の部分62の外径と言い、記号Dで表す。また、上記の断面における第2の部分62の内周の直径を、第2の部分62の内径と言い、記号dで表す。本実施の形態では、第2の部分62の外径Dと第2の部分62の内径dは、いずれも、第2の端面6bからの距離によらずに一定である。また、第2の部分62の回転軸Cに平行な方向の寸法を、第2の部分62の厚みと言い、記号T2で表す。
【0043】
本実施の形態では、第1の部分61は、回転軸C上に中心軸が位置する円板形状を有している。以下、回転軸Cに垂直な第1の部分61の任意の断面における第1の部分61の外周の直径を、第1の部分61の外径と言う。本実施の形態では、第1の部分61の外径は、第1の端面6aからの距離によらずに一定である。また、第1の部分61の回転軸Cに平行な方向の寸法を、第1の部分61の厚みと言い、記号T1で表す。
【0044】
図4に示した例では、回転軸Cに平行な方向に見たときに、第1の検出位置P1は第2の部分62の空洞62hと重なる位置にあり、第2の検出位置P2は空洞62hを除いた第2の部分62と重なる位置にある。なお、第1および第2の検出位置P1,P2と磁性構造体6との位置関係は、
図4に示した例に限られない。例えば、回転軸Cに平行な方向に見たときに、第1の検出位置P1と第2の検出位置P2の両方が、第2の部分62の空洞62hと重なる位置にあってもよい。
【0045】
次に、
図5を参照して、角度センサ1の構成について詳しく説明する。
図5は、角度センサ1の構成を示す機能ブロック図である。前述の通り、角度センサ1は、第1および第2の磁気センサ10,20を含んでいる。第1の磁気センサ10は、対象角度θと対応関係を有する第1の検出情報を生成する。第1の検出情報は、第1の印加磁界成分MF1cの方向が基準方向DRに対してなす角度θ1と対応関係を有する。第2の磁気センサ20は、対象角度θと対応関係を有する第2の検出情報を生成する。第2の検出情報は、第2の印加磁界成分MF2cの方向が基準方向DRに対してなす角度θ2と対応関係を有する。
【0046】
第1の検出情報は、角度θ1の余弦と対応関係を有する第1の検出値S1と、角度θ1の正弦と対応関係を有する第2の検出値S2とを含んでいる。第1の検出値S1は、第1の印加磁界成分MF1cのX方向の成分の強度と対応関係を有していてもよい。第2の検出値S2は、第1の印加磁界成分MF1cのY方向の成分の強度と対応関係を有していてもよい。
【0047】
第2の検出情報は、角度θ2の余弦と対応関係を有する第3の検出値S3と、角度θ2の正弦と対応関係を有する第4の検出値S4とを含んでいる。第3の検出値S3は、第2の印加磁界成分MF2cのX方向の成分の強度と対応関係を有していてもよい。第4の検出値S4は、第2の印加磁界成分MF2cのY方向の成分の強度と対応関係を有していてもよい。
【0048】
第1の磁気センサ10は、第1の検出値S1を生成する第1の検出値生成部11と、第2の検出値S2を生成する第2の検出値生成部12とを含んでいる。第2の磁気センサ20は、第3の検出値S3を生成する第3の検出値生成部21と、第4の検出値S4を生成する第4の検出値生成部22とを含んでいる。
【0049】
第1ないし第4の検出値生成部11,12,21,22の各々は、少なくとも1つの磁気検出素子を含んでいる。少なくとも1つの磁気検出素子は、少なくとも1つの磁気抵抗効果素子を含んでいてもよい。磁気抵抗効果素子は、GMR(巨大磁気抵抗効果)素子でもよいし、TMR(トンネル磁気抵抗効果)素子でもよいし、AMR(異方性磁気抵抗効果)素子でもよい。また、少なくとも1つの磁気検出素子は、ホール素子等、磁気抵抗効果素子以外の磁界を検出する素子を、少なくとも1つ含んでいてもよい。
【0050】
検出対象磁界の方向が所定の周期Tで回転すると、回転磁界角度θMは周期Tで変化する。この場合、第1ないし第4の検出値S1〜S4は、いずれも、周期Tで周期的に変化する。第1の検出値S1と第3の検出値S3の位相は同じである。第2の検出値S2と第4の検出値S4の位相は同じである。第2の検出値S2の位相は、第1の検出値S1の位相に対して、周期Tの1/4の奇数倍だけ異なっている。第4の検出値S4の位相は、第3の検出値S3の位相に対して、周期Tの1/4の奇数倍だけ異なっている。なお、磁気検出素子の作製の精度等の観点から、これらの検出値の位相の関係は、上記の関係からわずかにずれていてもよい。
【0051】
角度センサ1は、更に、演算器30を備えている。演算器30は、第1の検出情報と第2の検出情報とを用いた演算を行って、角度検出値θsを生成する。演算器30は、例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)またはマイクロコンピュータによって実現することができる。
【0052】
本実施の形態では、演算器30は、アナログ−デジタル変換器(以下、A/D変換器と記す。)31,32,33,34と、第1の初期角度演算部35と、第2の初期角度演算部36と、演算処理部37と、記憶部38を含んでいる。A/D変換器31,32は、それぞれ、第1および第2の検出値S1,S2をデジタル信号に変換する。第1の初期角度演算部35は、それぞれA/D変換器31,32によってデジタル信号に変換された第1および第2の検出値S1,S2を用いた演算を行って、角度θ1の検出値である第1の初期角度検出値θ1sを求める。
【0053】
A/D変換器33,34は、それぞれ、第3および第4の検出値S3,S4をデジタル信号に変換する。第2の初期角度演算部36は、それぞれA/D変換器33,34によってデジタル信号に変換された第3および第4の検出値S3,S4を用いた演算を行って、角度θ2の検出値である第2の初期角度検出値θ2sを求める。
【0054】
演算処理部37は、θ1s,θ2sを用いて、角度検出値θsを算出する。θ1s,θ2s,θsの算出方法と、記憶部38の機能については、後で説明する。
【0055】
次に、第1ないし第4の検出値生成部11,12,21,22の構成について説明する。
図6は、第1の検出値生成部11の具体的な構成の一例を示している。この例では、第1の検出値生成部11は、ホイートストンブリッジ回路17と、差分検出器18とを有している。ホイートストンブリッジ回路17は、4つの磁気検出素子R11,R12,R13,R14と、電源ポートV1と、グランドポートG1と、2つの出力ポートE11,E12とを含んでいる。磁気検出素子R11は、電源ポートV1と出力ポートE11との間に設けられている。磁気検出素子R12は、出力ポートE11とグランドポートG1との間に設けられている。磁気検出素子R13は、電源ポートV1と出力ポートE12との間に設けられている。磁気検出素子R14は、出力ポートE12とグランドポートG1との間に設けられている。電源ポートV1には、所定の大きさの電源電圧が印加される。グランドポートG1はグランドに接続される。
【0056】
第3の検出値生成部21の構成は、第1の検出値生成部11の構成と同じである。そのため、以下の説明では、第3の検出値生成部21の構成要素について、第1の検出値生成部11の構成要素と同じ符号を用いる。
【0057】
図7は、第2の検出値生成部12の具体的な構成の一例を示している。この例では、第2の検出値生成部12は、ホイートストンブリッジ回路27と、差分検出器28とを有している。ホイートストンブリッジ回路27は、4つの磁気検出素子R21,R22,R23,R24と、電源ポートV2と、グランドポートG2と、2つの出力ポートE21,E22とを含んでいる。磁気検出素子R21は、電源ポートV2と出力ポートE21との間に設けられている。磁気検出素子R22は、出力ポートE21とグランドポートG2との間に設けられている。磁気検出素子R23は、電源ポートV2と出力ポートE22との間に設けられている。磁気検出素子R24は、出力ポートE22とグランドポートG2との間に設けられている。電源ポートV2には、所定の大きさの電源電圧が印加される。グランドポートG2はグランドに接続される。
【0058】
第4の検出値生成部22の構成は、第2の検出値生成部12の構成と同じである。そのため、以下の説明では、第4の検出値生成部22の構成要素について、第2の検出値生成部12の構成要素と同じ符号を用いる。
【0059】
本実施の形態では、磁気検出素子R11〜R14,R21〜R24の各々は、直列に接続された複数の磁気抵抗効果素子(MR素子)を含んでいる。複数のMR素子の各々は、例えばスピンバルブ型のMR素子である。このスピンバルブ型のMR素子は、磁化方向が固定された磁化固定層と、検出対象磁界の方向に応じて磁化の方向が変化する磁性層である自由層と、磁化固定層と自由層の間に配置された非磁性層とを有している。スピンバルブ型のMR素子は、TMR素子でもよいし、GMR素子でもよい。TMR素子では、非磁性層はトンネルバリア層である。GMR素子では、非磁性層は非磁性導電層である。スピンバルブ型のMR素子では、自由層の磁化の方向が磁化固定層の磁化の方向に対してなす角度に応じて抵抗値が変化し、この角度が0°のときに抵抗値は最小値となり、角度が180°のときに抵抗値は最大値となる。
図6および
図7において、塗りつぶした矢印は、MR素子における磁化固定層の磁化の方向を表し、白抜きの矢印は、MR素子における自由層の磁化の方向を表している。
【0060】
第1の検出値生成部11では、磁気検出素子R11,R14に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向はX方向であり、磁気検出素子R12,R13に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は−X方向である。この場合、角度θ1の余弦に応じて、出力ポートE11,E12の電位差が変化する。差分検出器18は、出力ポートE11,E12の電位差に対応する信号を第1の検出値S1として出力する。従って、第1の検出値S1は、角度θ1の余弦と対応関係を有する。
【0061】
第2の検出値生成部12では、磁気検出素子R21,R24に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向はY方向であり、磁気検出素子R22,R23に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は−Y方向である。この場合、角度θ1の正弦に応じて、出力ポートE21,E22の電位差が変化する。差分検出器28は、出力ポートE21,E22の電位差に対応する信号を第2の検出値S2として出力する。従って、第2の検出値S2は、角度θ1の正弦と対応関係を有する。
【0062】
第3の検出値生成部21では、角度θ2の余弦に応じて、出力ポートE11,E12の電位差が変化する。差分検出器18は、出力ポートE11,E12の電位差に対応する信号を第3の検出値S3として出力する。従って、第3の検出値S3は、角度θ2の余弦と対応関係を有する。
【0063】
第4の検出値生成部22では、角度θ2の正弦に応じて、出力ポートE21,E22の電位差が変化する。差分検出器28は、出力ポートE21,E22の電位差に対応する信号を第4の検出値S4として出力する。従って、第4の検出値S4は、角度θ2の正弦と対応関係を有する。
【0064】
なお、検出値生成部11,12,21,22内の複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は、MR素子の作製の精度等の観点から、上述の方向からわずかにずれていてもよい。
【0065】
ここで、
図8を参照して、磁気検出素子の構成の一例について説明する。
図8は、
図6および
図7に示した検出値生成部11,12における1つの磁気検出素子の一部を示す斜視図である。この例では、1つの磁気検出素子は、複数の下部電極65と、複数のMR素子50と、複数の上部電極66とを有している。複数の下部電極65は図示しない基板上に配置されている。個々の下部電極65は細長い形状を有している。下部電極65の長手方向に隣接する2つの下部電極65の間には、間隙が形成されている。
図8に示したように、下部電極65の上面上において、長手方向の両端の近傍に、それぞれMR素子50が配置されている。MR素子50は、下部電極65側から順に積層された自由層51、非磁性層52、磁化固定層53および反強磁性層54を含んでいる。自由層51は、下部電極65に電気的に接続されている。反強磁性層54は、反強磁性材料よりなり、磁化固定層53との間で交換結合を生じさせて、磁化固定層53の磁化の方向を固定する。複数の上部電極66は、複数のMR素子50の上に配置されている。個々の上部電極66は細長い形状を有し、下部電極65の長手方向に隣接する2つの下部電極65上に配置されて隣接する2つのMR素子50の反強磁性層54同士を電気的に接続する。このような構成により、
図8に示した磁気検出素子は、複数の下部電極65と複数の上部電極66とによって直列に接続された複数のMR素子50を有している。
【0066】
なお、MR素子50における層51〜54の配置は、
図8に示した配置とは上下が反対でもよい。また、MR素子50は、反強磁性層54を含まない構成であってもよい。この構成は、例えば、反強磁性層54および磁化固定層53の代わりに、2つの強磁性層とこの2つの強磁性層の間に配置された非磁性金属層とを含む人工反強磁性構造の磁化固定層を含む構成であってもよい。
【0067】
次に、第1および第2の初期角度検出値θ1s,θ2sの算出方法について説明する。演算器30の第1の初期角度演算部35は、例えば下記の式(1)を含む第1の演算によって、θ1sを算出する。なお、“atan”は、アークタンジェントを表す。
【0068】
θ1s=atan(S2/S1) …(1)
【0069】
θ1sが0°以上360°未満の範囲内では、式(1)におけるθ1sの解には、180°異なる2つの値がある。しかし、S1,S2の正負の組み合わせにより、θ1sの真の値が、式(1)におけるθ1sの2つの解のいずれであるかを判別することができる。第1の初期角度演算部35は、式(1)と、上記のS1,S2の正負の組み合わせの判定により、0°以上360°未満の範囲内でθ1sを求める。
【0070】
演算器30の第2の初期角度演算部36は、例えば下記の式(2)を含む第2の演算によって、θ2sを算出する。
【0071】
θ2s=atan(S4/S3) …(2)
【0072】
θ2sが0°以上360°未満の範囲内では、式(2)におけるθ2sの解には、180°異なる2つの値がある。しかし、S3,S4の正負の組み合わせにより、θ2sの真の値が、式(2)におけるθ2の2つの解のいずれであるかを判別することができる。第2の初期角度演算部36は、式(2)と、上記のS3,S4の正負の組み合わせの判定により、0°以上360°未満の範囲内でθ2sを求める。
【0073】
なお、第1の演算は、式(1)によって算出されたθ1sの誤差を低減するための演算を含んでいてもよい。同様に、第2の演算は、式(2)によって算出されたθ2sの誤差を低減するための演算を含んでいてもよい。
【0074】
次に、角度検出値θsの算出方法について説明する。始めに、角度θ1,θ2と回転磁界角度θMとの関係について説明する。ノイズ磁界Mexが存在しない場合には、角度θ1は、回転磁界角度θMと等しくなる。しかし、ノイズ磁界Mexが存在すると、第1の印加磁界成分MF1cの方向が第1の部分磁界MFaの方向からずれて、その結果、角度θ1が回転磁界角度θMとは異なる値になる場合がある。以下、角度θ1と回転磁界角度θMの差を、角度θ1の角度誤差と言う。角度θ1の角度誤差は、ノイズ磁界Mexに起因して生じる。
【0075】
同様に、ノイズ磁界Mexが存在しない場合には、角度θ2は、回転磁界角度θMと等しくなる。しかし、ノイズ磁界Mexが存在すると、第2の印加磁界成分MF2cの方向が、第2の部分磁界MFbの方向からずれて、その結果、角度θ2が回転磁界角度θMとは異なる値になる場合がある。以下、角度θ2と回転磁界角度θMの差を、角度θ2の角度誤差と言う。角度θ2の角度誤差は、ノイズ磁界Mexに起因して生じる。
【0076】
ここで、ノイズ磁界Mexを第1ないし第3の成分に分けて考える。第1の成分は、基準平面Pに平行であって且つ第1および第2の部分磁界MFa,MFbの方向に対して直交する方向の成分である。第2の成分は、第1および第2の部分磁界MFa,MFbの方向に平行な方向の成分である。第3の成分は、基準平面Pに垂直な方向の成分である。
図9は、第1および第2の印加磁界成分MF1c,MF2cとノイズ磁界Mexとの関係を模式的に示す説明図である。
図9において、記号Mex1を付した矢印は、ノイズ磁界Mexの第1の成分を表している。なお、
図9では、第1の成分Mex1の大きさを強調して描いている。
図9に示したように、第1および第2の印加磁界成分MF1c,MF2cの方向は、第1の成分Mex1の影響によって、それぞれ第1および第2の部分磁界MFa,MFbの方向からずれる。
【0077】
なお、本実施の形態では、第1および第2の印加磁界成分MF1c,MF2cの方向のずれに対するノイズ磁界Mexの第2の成分の影響を無視することができる程度に、ノイズ磁界Mexの強度は、第1および第2の部分磁界MFa,MFbの強度に比べて十分に小さいものとする。また、ノイズ磁界Mexの第3の成分は、第1および第2の印加磁界成分MF1c,MF2cの方向に影響しない。
図9では、第1の印加磁界成分MF1cを、第1の部分磁界MFaとノイズ磁界Mexの第1の成分Mex1との合成磁界として表し、第2の印加磁界成分MF2cを、第2の部分磁界MFbとノイズ磁界Mexの第1の成分Mex1との合成磁界として表している。
【0078】
図9に示したように、第1の印加磁界成分MF1cの方向が第1の部分磁界MFaの方向からずれると、角度θ1には角度誤差が生じる。第1の部分磁界MFaの強度をB1とし、ノイズ磁界Mexの第1の成分Mex1の強度をBexとすると、角度θ1の角度誤差は、atan(Bex/B1)になる。
【0079】
また、
図9に示したように、第2の印加磁界成分MF2cの方向が第2の部分磁界MFbの方向からずれると、角度θ2には角度誤差が生じる。第2の部分磁界MFbの強度をB2とすると、角度θ2の角度誤差は、atan(Bex/B2)になる。
【0080】
角度θ1は、回転磁界角度θMと、角度θ1の角度誤差とを用いて表すことができる。同様に、角度θ2は、回転磁界角度θMと、角度θ2の角度誤差とを用いて表すことができる。具体的には、角度θ1,θ2は、それぞれ下記の式(3)、(4)によって表すことができる。
【0081】
θ1=θM−atan(Bex/B1) …(3)
θ2=θM−atan(Bex/B2) …(4)
【0082】
ところで、xが十分に小さいときには、atan(x)をAT・xと近似することができる。ATは、定数であり、例えば56.57である。本実施の形態では、ノイズ磁界Mexの第1の成分Mex1の強度Bexは、第1および第2の部分磁界MFa,MFbの強度B1,B2に比べて十分に小さいため、atan(Bex/B1)、atan(
Bex/B2)をそれぞれAT・(Bex/B1)、AT・(Bex/B2)と近似することができる。この近似を式(3)に適用して変形すると、Bexは下記の式(5)で表すことができる。
【0083】
Bex=−B1・(θ1−θM)/AT …(5)
【0084】
また、上記の近似を適用して式(4)を変形し、変形後の式に式(5)を代入すると、下記の式(6)が得られる。
【0085】
θ2=θM+B1・(θ1−θM)/B2 …(6)
式(6)を変形すると、回転磁界角度θMは下記の式(7)で表すことができる。
【0086】
θM={θ2−(B1/B2)・θ1}/{1−(B1/B2)} …(7)
【0087】
本実施の形態において、第1の検出位置P1における検出対象磁界の強度に対する第2の検出位置P2における検出対象磁界の強度の比は、角度検出値θsの角度誤差に関係する重要なパラメータである。この比は、第1の部分磁界MFaの強度B1に対する第2の部分磁界MFbの強度B2の比B2/B1と同じである。ここで、比B2/B1の逆数である比B1/B2を、記号B12で表す。比B2/B1および比B12の値は、第1および第2の検出位置P1,P2の位置関係によって異なる。
【0088】
次に、演算処理部37における角度検出値θsの算出方法について具体的に説明する。本実施の形態では、演算処理部37は、角度θ1,θ2の検出値であるθ1s,θ2sと上記の比B12とを用いた演算を行う。具体的には、演算処理部37は、下記の式(8)で表される演算を行って、角度検出値θsを生成する。
【0089】
θs=(θ2s−B12・θ1s)/(1−B12) …(8)
【0090】
式(8)は、式(7)におけるθM,θ1,θ2,B1/B2を、それぞれθs,θ1s,θ2s,B12に置き換えたものである。
【0091】
記憶部38は、比B12を保持している。演算処理部37は、第1の初期角度演算部35によって算出されたθ1sと、第2の初期角度演算部36によって算出されたθ2sと、記憶部38によって保持された比B12とを用いて、式(8)によって、角度検出値θsを算出する。
【0092】
なお、θ1sは、第1および第2の検出値S1,S2を用いて算出される。θ2sは、第3および第4の検出値S3,S4を用いて算出される。従って、式(8)で表される演算は、第1ないし第4の検出値S1〜S4を用いた演算でもあり、第1および第2の検出情報を用いた演算でもある。
【0093】
また、比B12は、第1および第2の部分磁界MFa,MFbの強度B1,B2を測定することによって求めることができる。強度B1,B2の測定は、角度センサ1の出荷前または使用前に、角度センサ1の外部の図示しない制御部によって実行される。強度B1,B2の測定は、第1および第2の磁気センサ10,20を用いてもよいし、他の磁気センサを用いてもよい。
【0094】
本実施の形態によれば、第1および第2の検出情報を用いた演算を行うことにより、第1および第2の検出情報のうちの任意の1つのみに基づいて角度検出値θsを生成する場合に比べて、ノイズ磁界Mexに起因した角度誤差が低減された角度検出値θsを生成することができる。以下、その理由について詳しく説明する。
【0095】
式(3)に示したように、角度θ1は、ノイズ磁界Mexに起因した角度誤差“atan(Bex/B1)”によって変化する。また、式(4)に示したように、角度θ2は、ノイズ磁界Mexに起因した角度誤差“atan(Bex/B2)”によって変化する。
【0096】
また、本実施の形態では、第1の部分磁界MFaの強度B1と第2の部分磁界MFbの強度B2は、互いに異なる。その結果、角度θ1,θ2の角度誤差の値に、ノイズ磁界Mexに依存した違いが生じる。式(7)に示した回転磁界角度θMは、この性質を利用して導かれたものである。本実施の形態では、第1および第2の検出情報を用いた演算、具体的には式(8)に示した演算を行って、角度検出値θsを生成する。
【0097】
ところで、角度θ1,θ2の検出値であるθ1s,θ2sは、第1および第2の検出情報のうちの任意の1つのみに基づいて生成された角度検出値に相当する。前述のように、角度θ1,θ2はノイズ磁界Mexに起因した角度誤差を含むことから、θ1s,θ2sも同様の角度誤差を含む。一方、回転磁界角度θMは、ノイズ磁界Mexに起因した角度誤差を含まないことから、式(8)に示した演算を行って生成された角度検出値θsも、理論上、ノイズ磁界Mexに起因した角度誤差を含まない。これにより、本実施の形態によれば、θ1s,θ2sに比べて、ノイズ磁界Mexに起因した角度誤差が低減された角度検出値θsを生成することができる。
【0098】
以下、第1のシミュレーションの結果を参照して、本実施の形態の効果について説明する。第1のシミュレーションでは、角度センサシステム100の第1のモデルを用いて、方向と強度が一定のノイズ磁界Mexが存在する状況の下でθ1s,θ2s,θsを生成したときの、θ1s,θ2s,θsのそれぞれの角度誤差を求めた。
【0099】
第1のモデルの磁性構造体6の構成は、以下の通りである。第1の部分61の外径は6mmである。第1の部分61の厚みT1(
図4参照)は2mmである。第2の部分62の外径D(
図4参照)は6mmである。第2の部分62の内径d(
図4参照)は2mmである。第2の部分62の厚みT2(
図4参照)は1mmである。また、磁性構造体6の磁化に対応する残留磁束密度は、0.615Tである。
【0100】
また、第1のモデルの磁性構造体6、回転軸C、基準平面P、第1の検出位置P1および第2の検出位置P2の位置関係は、以下の通りである。磁性構造体6の第2の端面6bと基準平面Pとの間隔は、0.5mmである。第1および第2の検出位置P1,P2は、いずれも基準平面P上にある。第1の検出位置P1は、基準平面Pと回転軸Cとの交点である。回転軸Cから第2の検出位置P2までの距離は、2.4mmである。また、第1のシミュレーションにおいて、ノイズ磁界Mexの強度に対応する磁束密度は5mTである。
【0101】
図10は、第1のシミュレーションによって得られたθ1s,θ2s,θsのそれぞれの角度誤差の一例を示す波形図である。
図10において、横軸は対象角度θを示し、縦軸は角度誤差を示している。また、符号71はθ1sの角度誤差を示し、符号72はθ2sの角度誤差を示し、符号73はθsの角度誤差を示している。
図10に示したように、θsの角度誤差は、θ1s,θ2sのそれぞれの角度誤差に比べて極めて小さい。θ1s,θ2sのそれぞれの角度誤差は、主にノイズ磁界Mexに起因して生じたものである。第1のシミュレーションの結果から、本実施の形態によれば、ノイズ磁界Mexに起因した角度誤差が低減された角度検出値θsを生成することができることが分かる。
【0102】
次に、第2のシミュレーションについて説明する。第2のシミュレーションでは、角度センサシステム100の第2のモデルを用いて、第1の部分磁界MFaの強度B1に対する第2の部分磁界MFbの強度B2の比B2/B1と、角度検出値θsの角度誤差との関係を求めた。なお、以下、特段の断りがない限り、角度誤差というのは、対象角度θを360°変化させたときの角度誤差の最大値を指すものとする。第2のモデルは、回転軸Cから第2の検出位置P2までの距離が1.9mmである点を除いて、第1のモデルと同じである。第2のシミュレーションでは、第2の部分磁界MFbの強度B2を一定にし、第1の部分磁界MFaの強度B1を変えることによって、比B2/B1を変えた。第2のシミュレーションにおけるその他の条件は、第1のシミュレーションと同じである。
【0103】
図11は、第2のシミュレーションによって得られた比B2/B1と角度検出値θsの角度誤差との関係を示す特性図である。
図11において、横軸はB2/B1を示し、縦軸は角度誤差を示している。
図11に示したように、2.5以下のB2/B1の範囲では、B2/B1が1に近づくに従って、角度誤差が大きくなっている。2.5以上のB2/B1の範囲では、B2/B1が変化しても、角度誤差はほとんど変化しない。
【0104】
2.5以下のB2/B1の範囲においてB2/B1が1に近づくに従って角度誤差が大きくなる理由は、以下のように考えられる。本実施の形態において求められる角度検出値θsは、
図9に示された第2の印加磁界成分MF2cを表すベクトルと第1の印加磁界成分MF1cを表すベクトルとの差のベクトルの方向が、基準方向DRに対してなす角度に相当する。B2/B1が1に近づくと、上記の差のベクトルの大きさが小さくなり、その結果、角度検出値θsの信号対雑音比が小さくなって、角度誤差が大きくなると考えられる。
【0105】
角度誤差は、1.5°以下であることが好ましい。
図11から、B2/B1を1.65以上とすることにより、角度誤差を1.5°以下にすることができる。従って、B2/B1は1.65以上であることが好ましい。角度誤差をより小さくするために、B2/B1は、2以上であることがより好ましく、2.5以上であることが更に好ましい。
【0106】
ここで、角度θ1の角度誤差に対応するθ1sの角度誤差を記号AE1で表し、角度θ2の角度誤差に対応するθ2sの角度誤差を記号AE2で表す。角度誤差AE1はAT・(Bex/B1)と近似することができ、角度誤差AE2はAT・(Bex/B2)と近似することができる。このことから、AE1/AE2は、B2/B1とほぼ等しい。従って、B2/B1が1.65以上であることが好ましいということは、AE1/AE2が1.65以上であることが好ましいということである。
【0107】
ところで、一般的な角度センサが満たすべき要件には、例えば、ノイズ磁界が無い状態で、検出対象磁界の強度に対応する磁束密度が所定の範囲内のときに、角度誤差が所定値以下になるという要件がある。上記の所定の範囲は、例えば20mT〜80mTである。以下、ノイズ磁界が無い状態で、磁束密度が20mT〜80mTの範囲内のときに、角度誤差が所定値以下になるという要件を、通常誤差要件と言う。
【0108】
本実施の形態において、第1の磁気センサ10、A/D変換器31,32および第1の初期角度演算部35は、1つの角度センサとみなすことができる。そこで、第1の磁気センサ10、A/D変換器31,32および第1の初期角度演算部35からなる部分を、第1の角度センサ部分と言う。同様に、第2の磁気センサ20、A/D変換器33,34および第2の初期角度演算部36は、他の1つの角度センサとみなすことができる。そこで、第2の磁気センサ20、A/D変換器33,34および第2の初期角度演算部36からなる部分を、第2の角度センサ部分と言う。
【0109】
ここで、第1の角度センサ部分と第2の角度センサ部分は、上記通常誤差要件を満たすものとする。この場合、第1の部分磁界MFaの強度B1に対応する磁束密度が20mT〜80mTの範囲内であれば、ノイズ磁界Mexが無い状態では、第1の初期角度検出値θ1sは、通常誤差要件で規定された所定値以下になる。同様に、第2の部分磁界MFbの強度B2に対応する磁束密度が20mT〜80mTの範囲内であれば、ノイズ磁界Mexが無い状態では、第2の初期角度検出値θ2sは、通常誤差要件で規定された所定値以下になる。
【0110】
そこで、本実施の形態では、第1の部分磁界MFaの強度B1に対応する磁束密度と、第2の部分磁界MFbの強度B2に対応する磁束密度の両方が、20mT〜80mTの範囲内であることが好ましい。この要件を満たすためには、B2/B1は4以下である必要がある。そのため、B2/B1は4以下であることが好ましい。
【0111】
以上のことから、本実施の形態におけるB1,B2に関する好ましい要件は、B1に対応する磁束密度とB2に対応する磁束密度の両方が20mT〜80mTの範囲内であり、且つB2/B1が1.65以上4以下であるということになる。
【0112】
次に、第3のシミュレーションについて説明する。第3のシミュレーションでは、角度センサシステム100の第3のモデルを用いて、第2の部分62の厚みT2(
図4参照)に対する第1の部分61の厚みT1(
図4参照)の比T1/T2を変えて、基準平面Pと回転軸Cとの交点を通る基準平面P内の仮想の直線上の磁束密度の分布を調べた。以下、基準平面Pと回転軸Cとの交点を、原点と言う。また、前記仮想の直線上の任意の点を測定点と言い、測定点の位置を、原点から測定点までの距離で表す。測定点における磁束密度は、測定点における検出対象磁界の強度に対応する。第3のモデルは、磁性構造体6の第1の部分61の厚みT1が可変の値である点を除いて、第1のモデルと同じである。第3のシミュレーションでは、第2の部分62の厚みT2を1mmとし、第1の部分61の厚みT1を0.9mm、1mm、2mm、3mmと変えることによって、比T1/T2を変えた。第3のシミュレーションにおけるその他の条件は、第1のシミュレーションと同じである。
【0113】
図12は、第3のシミュレーションによって得られた比T1/T2と磁束密度との関係を示す特性図である。
図12において、横軸は、測定点の位置を示し、縦軸は、磁束密度を示している。また、
図12において、符号81を付した曲線は、T1/T2が0.9の場合の磁束密度を示し、符号82を付した曲線は、T1/T2が1の場合の磁束密度を示し、符号83は、T1/T2が2の場合の磁束密度を示し、符号84を付した曲線は、T1/T2が3の場合の磁束密度を示している。
図12に示したように、前記仮想の直線上の任意の点における磁束密度は、T1/T2が大きくなるに従って大きくなる。
【0114】
前述のように、本実施の形態におけるB1,B2に関する好ましい要件は、B1に対応する磁束密度とB2に対応する磁束密度の両方が20mT〜80mTの範囲内であり、且つB2/B1が1.65以上4以下である。第3のシミュレーションにおけるT1/T2の範囲内では、T1/T2がいずれの場合においても、上記の要件を満たし、且つ第1および第2の検出位置P1,P2が基準平面Pに含まれるように、第1および第2の磁気センサ10,20を配置することができる。特に、T1/T2が1以上の場合には、第1の検出位置P1が原点と一致するように第1の磁気センサ10を配置することができ、第1の磁気センサ10の位置決めが容易になる。そのため、T1/T2は1以上であることが好ましい。
【0115】
T1/T2が0.9の場合(符号81)には、例えば、第1の検出位置P1が原点以外の基準平面P内の点であって、磁束密度が20mT以上になる点と一致するように第1の磁気センサ10を配置することにより、上記の要件を満たし、且つ第1および第2の検出位置P1,P2が基準平面Pに含まれるように、第1および第2の磁気センサ10,20を基準平面P上に配置することができる。
【0116】
次に、第4のシミュレーションについて説明する。第4のシミュレーションでは、角度センサシステム100の第4のモデルを用いて、第2の部分62の外径D(
図4参照)に対する第2の部分62の内径d(
図4参照)の比d/Dを変えて、前記仮想の直線上の磁束密度の分布を調べた。第4のモデルは、磁性構造体6の第2の部分62の内径dが可変の値である点を除いて、第1のモデルと同じである。第4のシミュレーションでは、第2の部分62の外径Dを6mmとし、第2の部分62の内径dを1〜5.2mmの範囲内において0.2mm間隔で変えることによって、比d/Dを変えた。また、第4のシミュレーションにおけるその他の条件は、第1のシミュレーションと同じである。
【0117】
図13および
図14は、第4のシミュレーションによって得られた比d/Dと磁束密度との関係を示す特性図である。
図13および
図14において、横軸は、測定点の位置を示し、縦軸は、磁束密度を示している。
図13に示した複数の曲線は、d/Dが0.17〜0.50の範囲内の場合の磁束密度を示している。
図14に示した複数の曲線は、d/Dが0.53〜0.87の範囲内の場合の磁束密度を示している。
図13および
図14では、一部の曲線にのみ符号を付している。
【0118】
図13において、符号91を付した曲線はd/Dが0.17の場合の磁束密度を示し、符号92を付した曲線はd/Dが0.33の場合の磁束密度を示し、符号93を付した曲線はd/Dが0.50の場合の磁束密度を示している。
図13に示したように、測定点における磁束密度は、d/Dに応じて変化する。例えば、d/Dが0.17〜0.50の範囲内では、1mmの位置の測定点における磁束密度は、d/Dが大きくなるに従って小さくなっている。
【0119】
図14において、符号94を付した曲線はd/Dが0.53の場合の磁束密度を示し、符号95を付した曲線はd/Dが0.70の場合の磁束密度を示し、符号96を付した曲線はd/Dが0.87の場合の磁束密度を示している。
図14に示したように、測定点における磁束密度は、d/Dに応じて変化する。例えば、d/Dが0.53〜0.87の範囲内では、2mmの位置の測定点における磁束密度は、d/Dが大きくなるに従って小さくなっている。
【0120】
ここで、d/Dの値毎に、磁束密度が最小値Bminとなる測定点と、磁束密度が最大値Bmaxとなる測定点を考える。以下、磁束密度がBminとなる測定点を最小磁束密度点と言い、磁束密度がBmaxとなる測定点を最大磁束密度点と言う。なお、
図13および
図14に示したように、最小磁束密度点は、原点に限られない。
【0121】
最小磁束密度点は、第1の検出位置P1の候補となる。しかし、必ずしも、第1の検出位置P1を最小磁束密度点と一致させる必要はない。Bminが20mT以上であれば、B1に対応する磁束密度が20mT以上になるように第1の検出位置P1を選択することが可能となる。そのため、Bminは20mT以上であることが好ましい。
【0122】
一方、B2/B1を1.65以上とすると、Bminが80/1.65=48.5mTを越えると、第2の検出位置P2の候補となる点すなわちB2に対応する磁束密度80mT以下となる測定点は存在しなくなる。そのため、Bminは48.5mT以下であることが好ましい。
【0123】
また、B2/B1を1.65以上とするには、Bmax/Bminは1.65以上である必要がある。
【0124】
以上のことから、本実施の形態における磁性構造体6に関する好ましい要件は、基準平面PにおいてBminが20mT以上48.5mT以下であり且つBmax/Bminが1.65以上となるような検出対象磁界を発生することである。
【0125】
図15は、
図13および
図14に示した結果から導かれるd/DとBminとの関係を示す特性図である。
図15において、横軸はd/Dを示し、縦軸はBminを示している。
図15では、Bminが20mTとなる位置とBminが48.5mTとなる位置に、破線の直線を描いている。
図15から、d/Dが0.23〜0.8の範囲内であれば、Bminが20mT〜48.5mTの範囲内に収まることが分かる。
【0126】
図16は、
図13および
図14に示した結果から導かれるd/DとBmax/Bminとの関係を示す特性図である。
図16において、横軸はd/Dを示し、縦軸はBmax/Bminを示している。
図16に示したd/Dの範囲内では、Bmax/Bminは1.65以上である。
【0127】
図15および
図16に示した結果から、d/Dの好ましい範囲は、0.23〜0.8であると言える。
【0128】
次に、第5のシミュレーションについて説明する。第5のシミュレーションでは、角度センサシステム100の第5のモデルを用いて、前記仮想の直線上の磁束密度の分布を調べた。第5のモデルは、磁性構造体6の代わりに、磁性構造体6の第1の部分61のみからなる磁性構造体を含んでいる。
【0129】
第5のモデルの磁性構造体は、回転軸Cに平行な方向において互いに反対側に位置する第1の端面と第2の端面とを有している。第2の端面は、
基準平面Pに対向している。第5のモデルの磁性構造体の第2の端面と基準平面Pとの間隔は、0.5mmである。また、第5のモデルの磁性構造体は、回転軸Cに垂直な方向の磁化を有している。第5のモデルの磁性構造体の磁化に対応する残留磁束密度は、0.615Tである。
【0130】
第5のモデルの磁性構造体の外径および厚みの定義は、第1の部分61の外径および厚みT1の定義と同じである。以下、第5のモデルの磁性構造体の厚みを記号T3で表す。第5のシミュレーションでは、第5のモデルの磁性構造体の外径を6mmとし、厚みT3を1mm、2mm、3mmと変化させた。
【0131】
図17は、第5のシミュレーションによって得られた厚みT3と磁束密度との関係を示す特性図である。
図17において、横軸は、測定点の位置を示し、縦軸は、磁束密度を示している。また、
図17において、符号111を付した曲線は、厚みT3が1mmの場合の磁束密度を示し、符号112を付した曲線は、厚みT3が2mmの場合の磁束密度を示し、符号113は、厚みT3が3mmの場合の磁束密度を示している。
図17に示したように、同じ測定点における磁束密度は、厚みT3が大きくなるに従って大きくなっている。
【0132】
図17から理解されるように、第5のモデルの磁性構造体を用いた場合には、前述のB1,B2に関する好ましい要件を満たし、且つ第1および第2の検出位置P1,P2が基準平面Pに含まれるように、第1および第2の磁気センサ10,20を配置することはできない。しかし、例えば、第5のモデルの磁性構造体からの距離が互いに異なるように第1および第2の磁気センサ10,20を配置することにより、前述のB1,B2に関する好ましい要件を満たすことは可能である。例えば、前述のB1,B2に関する好ましい要件を満たすように、第1の磁気センサ10を、第2の磁気センサ20よりも第5のモデルの磁性構造体から遠い位置に配置して、角度センサシステムを構成してもよい。
【0133】
しかし、第5のモデルの磁性構造体を用いた場合には、第1および第2の磁気センサ10,20を同一平面上に配置することができないため、回転軸Cに平行な方向についての角度センサシステム100の寸法が大きくなってしまう。これに対し、第1の部分61と第2の部分62を含む磁性構造体6を用いた場合には、第1および第2の磁気センサ10,20を同一平面上に配置することができ、その結果、回転軸Cに平行な方向についての角度センサシステム100の寸法を小さくすることが可能になる。
【0134】
次に、第6のシミュレーションについて説明する。第6のシミュレーションでは、角度センサシステム100の第6のモデルを用いて、前記仮想の直線上の磁束密度の分布を調べた。第6のモデルは、磁性構造体6の代わりに、磁性構造体6の第2の部分62のみからなる磁性構造体を含んでいる。
【0135】
第6のモデルの磁性構造体は、回転軸Cに平行な方向において互いに反対側に位置する第1の端面と第2の端面とを有している。第2の端面は、
基準平面Pに対向している。第6のモデルの磁性構造体の第2の端面と基準平面Pとの間隔は、0.5mmである。また、第6のモデルの磁性構造体は、回転軸Cに垂直な方向の磁化を有している。第6のモデルの磁性構造体の磁化に対応する残留磁束密度は、0.615Tである。
【0136】
第6のモデルの磁性構造体の外径、内径および厚みの定義は、第2の部分62の外径D、内径dおよび厚みT2の定義と同じである。以下、第6のモデルの磁性構造体の厚みを記号T4で表す。第6のシミュレーションでは、第6のモデルの磁性構造体の外径と内径をそれぞれ6mmと2mmとし、厚みT4を1mm、2mm、3mm、4mmと変化させた。
【0137】
図18は、第6のシミュレーションによって得られた厚みT4と磁束密度との関係を示す特性図である。
図18において、横軸は、測定点の位置を示し、縦軸は、磁束密度を示している。また、
図18において、符号121を付した曲線は、厚みT4が1mmの場合の磁束密度を示し、符号122を付した曲線は、厚みT4が2mmの場合の磁束密度を示し、符号123は、厚みT4が3mmの場合の磁束密度を示し、符号124を付した曲線は、厚みT4が4mmの場合の磁束密度を示している。
図18に示したように、原点およびその近傍を除いて、同じ測定点における磁束密度は、厚みT4が大きくなるに従って大きくなっている。
【0138】
図18から理解されるように、第6のモデルの磁性構造体を用いた場合には、前述のB1,B2に関する好ましい要件を満たし、且つ第1および第2の検出位置P1,P2が基準平面Pに含まれるように、第1および第2の磁気センサ10,20を配置することができる。例えば、厚みT4が4mmの場合には、第1の検出位置P1が原点と一致するように第1の磁気センサ10を配置することができる。厚みT4が1mm、2mm、3mmの場合には、例えば、第1の検出位置P1が原点以外の基準平面P内の点であって、磁束密度が20mT〜48.5mTの範囲内になる点と一致するように第1の磁気センサ10を配置することにより、前述のB1,B2に関する好ましい要件を満たすことができる。
【0139】
図12と
図18から、第3のモデルの磁性構造体6と第6のモデルの磁性構造体を、厚みを同じにして比較すると、第3のモデルの磁性構造体6の方が、原点およびその近傍における磁束密度が大きいことが分かる。そのため、第1の検出位置P1を原点またはその近傍の位置に設定し、B1を同じにして比較すると、第6のモデルの磁性構造体よりも第3のモデルの磁性構造体6の方が厚みを小さくすることができる。従って、第1の部分61と第2の部分62を含む磁性構造体6を用いることによって、第6のモデルの磁性構造体を用いる場合に比べて、回転軸Cに平行な方向についての角度センサシステム100の寸法を小さくすることができる。
【0140】
[第2の実施の形態]
次に、
図19および
図20を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。
図19は、本実施の形態における磁性構造体を示す分解斜視図である。
図20は、本実施の形態における磁性構造体を示す断面図である。本実施の形態では、磁界発生部5は、第1の実施の形態における磁性構造体6の代わりに、磁性体よりなる磁性構造体106を含んでいる。磁性構造体106は、その全体が硬磁性体によって構成されている。磁性構造体106は、回転軸Cに垂直な方向の磁化を有し、回転軸Cを中心として回転する。
【0141】
磁性構造体106は、回転軸Cに平行な方向において互いに反対側に位置する第1の端面106aと第2の端面106bとを有している。第2の端面106bは、
基準平面Pに対向している。本実施の形態では、第1の端面106aと第2の端面106bは、いずれも、回転軸Cに垂直である。
【0142】
また、磁性構造体106は、互いに連結された第1の部分161と第2の部分162を含んでいる。
図19では、第1の部分161と第2の部分162を分離して描いている。
図20では、第1の部分161と第2の部分162の境界を、点線で示している。第1の部分161は、第1の端面106aを含んでいる。第2の部分162は、第2の端面106bを含んでいる。第1および第2の部分161,162の配置は、第1の実施の形態における磁性構造体6の第1および第2の部分61,62の配置と同じである。
【0143】
図19および
図20に示したように、第1の部分161は回転軸Cが通過する空洞を含まないが、第2の部分162は回転軸Cが通過する空洞162hを含んでいる
。
【0144】
本実施の形態では、第2の部分162は、以下のような形状を有している。回転軸Cに垂直な第2の部分162の任意の断面における第2の部分162の外周および内周は、いずれも回転軸C上に中心が位置する円形である。以下、上記の断面における第2の部分162の外周の直径を、第2の部分162の外径と言う。また、上記の断面における第2の部分162の内周の直径を、第2の部分162の内径と言う。本実施の形態では、第2の部分162の外径は、第2の端面106bからの距離によらずに一定である。
【0145】
第2の部分162の内径は、第2の端面106bにおいて最も大きく、第2の端面106bから遠ざかるに従って小さくなっている。本実施の形態では特に、空洞162hの形状は、第2の端面106bを含む仮想の平面と回転軸Cとの交点を中心とする半球形状である。以下、この半球の半径を空洞162hの半径と言い、記号rで表す。また、第2の部分162の回転軸Cに平行な方向の寸法を、第2の部分162の厚みと言う。
【0146】
第1の部分161の形状は、第1の実施の形態における第1の部分61の形状と同じである。以下、回転軸Cに垂直な第1の部分161の任意の断面における第1の部分161の外周の直径を、第1の部分161の外径と言う。また、第1の部分161の回転軸Cに平行な方向の寸法を、第1の部分161の厚みという。
【0147】
次に、第7のシミュレーションについて説明する。第7のシミュレーションでは、本実施の形態に係る角度センサシステム100の第7のモデルを用いた。第7のモデルにおける磁性構造体106の構成と、磁性構造体106と基準平面Pとの位置関係は、以下の通りである。第1の部分161の外径と第2の部分162の外径は6mmである。磁性構造体106の磁化に対応する残留磁束密度は、0.615Tである。磁性構造体106の第2の端面106bと基準平面Pとの間隔は、0.5mmである。
【0148】
第7のシミュレーションでは、第1の部分161の厚みを2mmとし、第2の部分162の厚みと空洞162hの半径rをいずれも1mmとした場合(以下、第1の場合と言う。)と、第1の部分161の厚みと第2の部分162の厚みと空洞162hの半径rをいずれも1.5mmとした場合(以下、第2の場合と言う。)のそれぞれにおいて、原点を通る基準平面P内の仮想の直線上の磁束密度の分布を調べた。
【0149】
図21は、第7のシミュレーションによって得られた磁束密度を示す特性図である。
図21において、横軸は、測定点の位置を示し、縦軸は、磁束密度を示している。また、
図21において、符号131を付した曲線は、第1の場合の磁束密度を示し、符号132を付した曲線は、第2の場合の磁束密度を示している。
【0150】
磁性構造体106に関する好ましい要件は、第1の実施の形態における磁性構造体6に関する好ましい要件と同じである。
図21に示したように、第1の場合(符号131)は、磁性構造体106に関する好ましい要件を満たさないが、第2の場合(符号132)は、磁性構造体106に関する好ましい要件を満たす。
【0151】
本実施の形態におけるB1,B2に関する好ましい要件は、第1の実施の形態と同じである。
図21から、第2の場合(符号132)には、B1,B2に関する好ましい要件を満たし、且つ第1および第2の検出位置P1,P2が基準平面Pに含まれるように、第1および第2の磁気センサ10,20を配置することができることが分かる。また、第2の場合(符号132)には、第1の検出位置P1が原点と一致するように第1の磁気センサ10を配置することができる。
【0152】
なお、第1の場合(符号131)には、例えば、磁性構造体106からの距離が互いに異なるように第1および第2の磁気センサ10,20を配置することにより、B1,B2に関する好ましい要件を満たすことが可能である。例えば、B1,B2に関する好ましい要件を満たすように、第1の磁気センサ10を、第2の磁気センサ20よりも磁性構造体106から遠い位置に配置して、角度センサシステムを構成してもよい。
【0153】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0154】
[第3の実施の形態]
次に、
図22および
図23を参照して、本発明の第3の実施の形態について説明する。
図22は、本実施の形態における磁性構造体を示す分解斜視図である。
図23は、本実施の形態における磁性構造体を示す断面図である。本実施の形態では、磁界発生部5は、第1の実施の形態における磁性構造体6の代わりに、磁性体よりなる磁性構造体206を含んでいる。磁性構造体206は、回転軸Cに垂直な方向の磁化を有し、回転軸Cを中心として回転する。
【0155】
磁性構造体206は、回転軸Cに平行な方向において互いに反対側に位置する第1の端面206aと第2の端面206bとを有している。第2の端面206bは、
基準平面Pに対向している。本実施の形態では、第1の端面206aと第2の端面206bは、いずれも、回転軸Cに垂直である。
【0156】
また、磁性構造体206は、互いに連結された第1の部分261と第2の部分262を含んでいる。
図22では、第1の部分261と第2の部分262を分離して描いている。
図23では、第1の部分261と第2の部分262の境界を、点線で示している。第1の部分261は、第1の端面206aを含んでいる。第2の部分262は、第2の端面206bを含んでいる。第1および第2の部分261,262の配置は、第1の実施の形態における磁性構造体6の第1および第2の部分61,62の配置と同じである。
【0157】
図22および
図23に示したように、第1の部分261は回転軸Cが通過する空洞を含まないが、第2の部分262は回転軸Cが通過する空洞262hを含んでいる。
【0158】
第2の部分262の形状は、第1の実施の形態における第2の部分62の形状と同じである。以下、回転軸Cに垂直な第2の部分262の任意の断面における第2の部分262の外周の直径を、第2の部分262の外径と言う。また、上記の断面における第2の部分262の内周の直径を、第2の部分262の内径と言う。また、第2の部分262の回転軸Cに平行な方向の寸法を、第2の部分262の厚みと言う。
【0159】
第1の部分261は、軟磁性体よりなる軟磁性体部261Aと、硬磁性体よりなる硬磁性体部261Bとを含んでいる。軟磁性体としては、例えばFeが用いられる。硬磁性体部261Bは、回転軸Cが通過する収容部261Baを含んでいる。軟磁性体部261Aは、収容部261Baに収容されている。
【0160】
本実施の形態では、硬磁性体部261Bは、以下のような形状を有している。回転軸Cに垂直な硬磁性体部261Bの任意の断面における硬磁性体部261Bの外周および内周は、いずれも回転軸C上に中心が位置する円形である。以下、上記の断面における硬磁性体部261Bの外周の直径を、硬磁性体部261Bの外径と言う。また、上記の断面における硬磁性体部261Bの内周の直径を、硬磁性体部261Bの内径と言う。本実施の形態では、硬磁性体部261Bの外径と硬磁性体部261Bの内径は、いずれも、第1の端面206aからの距離によらずに一定である。また、硬磁性体部261Bの回転軸Cに平行な方向の寸法を、硬磁性体部261Bの厚みと言う。
【0161】
本実施の形態では、軟磁性体部261Aは、回転軸C上に中心軸が位置する円柱形状を有している。以下、回転軸Cに垂直な軟磁性体部261Aの任意の断面における軟磁性体部261Aの外周の直径を、軟磁性体部261Aの外径と言う。本実施の形態では、軟磁性体部261Aの外径は、第1の端面206aからの距離によらずに一定であり、硬磁性体部261Bの内径と等しい。また、軟磁性体部261Aの回転軸Cに平行な方向の寸法を、軟磁性体部261Aの厚みと言う。
【0162】
軟磁性体部261Aは、回転軸Cを中心として回転するシャフトの一部であってもよい。この場合、硬磁性体によって、硬磁性体部261Bおよび第2の部分262からなる硬磁性構造体を作製し、収容部261Baにシャフトの一部を嵌め込むことによって、シャフトと一体化された磁性構造体206を構成することができる。
【0163】
次に、第8のシミュレーションについて説明する。第8のシミュレーションでは、本実施の形態に係る角度センサシステム100の第8のモデルを用いた。第8のモデルにおける磁性構造体206の構成と、磁性構造体206と基準平面Pとの位置関係は、以下の通りである。硬磁性体部261Bの外径と第2の部分262の外径は6mmである。硬磁性体部261Bの内径と軟磁性体部261Aの外径と第2の部分262の内径は2mmである。第2の部分262の厚みは1mmである。磁性構造体206の磁化に対応する残留磁束密度は、0.615Tである。また、磁性構造体206の第2の端面206bと基準平面Pとの間隔は、0.5mmである。
【0164】
第8のシミュレーションでは、硬磁性体部261Bの厚みと軟磁性体部261Aの厚みをいずれも1mmとした場合(以下、第3の場合と言う。)と、硬磁性体部261Bの厚みと軟磁性体部261Aの厚みをいずれも2mmとした場合(以下、第4の場合と言う。)と、硬磁性体部261Bの厚みと軟磁性体部261Aの厚みをいずれも3mmとした場合(以下、第5の場合と言う。)のそれぞれにおいて、原点を通る基準平面P内の仮想の直線上の磁束密度の分布を調べた。
【0165】
図24は、第8のシミュレーションによって得られた磁束密度を示す特性図である。
図24において、横軸は、測定点の位置を示し、縦軸は、磁束密度を示している。また、
図24において、符号141を付した曲線は、第3の場合の磁束密度を示し、符号142を付した曲線は、第4の場合の磁束密度を示し、符号143を付した曲線は、第5の場合の磁束密度を示している。
【0166】
磁性構造体206に関する好ましい要件は、第1の実施の形態における磁性構造体6に関する好ましい要件と同じである。
図24に示したように、第3の場合(符号141)は、磁性構造体206に関する好ましい要件を満たさないが、第4の場合(符号142)と第5の場合(符号143)は、磁性構造体206に関する好ましい要件を満たす。
【0167】
本実施の形態におけるB1,B2に関する好ましい要件は、第1の実施の形態と同じである。
図24から、第3ないし第5の場合のいずれにおいても、B1,B2に関する好ましい要件を満たし、且つ第1および第2の検出位置P1,P2が基準平面Pに含まれるように、第1および第2の磁気センサ10,20を配置することができることが分かる。特に、第4の場合(符号142)と第5の場合(符号143)には、第1の検出位置P1が原点と一致するように第1の磁気センサ10を配置することができる。第3の場合(符号141)には、例えば、第1の検出位置P1が原点以外の基準平面P内の点であって、磁束密度が20
mT〜48.5mTの範囲内になる点と一致するように第1の磁気センサ10を配置することにより、B1,B2に関する好ましい要件を満たすことができる。
【0168】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0169】
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、磁性構造体の構成は、各実施の形態に示したものに限られない。磁性構造体は、第1の実施の形態で説明した磁性構造体6に関する好ましい要件を満たすものであることが好ましい。しかし、各実施の形態で説明したように、磁性構造体がこの好ましい要件を満たさない場合であっても、B1,B2に関する好ましい要件を満たすように、角度センサシステムを構成することが可能な場合もある。
【0170】
また、角度検出値θsを生成する演算の内容は、第1の実施の形態で説明した内容に限られない。例えば、第1の検出値S1が第1の印加磁界成分MF1cのX方向の成分の強度と対応関係を有し、第2の検出値S2が印加磁界成分MF1cのY方向の成分の強度と対応関係を有し、第3の検出値S3が第2の印加磁界成分MF2cのX方向の成分の強度と対応関係を有し、第4の検出値S4が第2の印加磁界成分MF2cのY方向の成分の強度と対応関係を有している場合には、以下のような演算を行って角度検出値θsを生成してもよい。まず、S3−S1を求めて、これをSaとする。また、S4−S2を求めて、これをSbとする。次に、atan(Sb/Sa)を求めて、これをθsとする。