(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
位相変調型の空間光変調素子を有し、前記空間光変調素子の表示部に表示された位相分布に対応するパターンを形成させる投射光を少なくとも二つの投射領域に向けて投光する投光手段と、
前記投光手段によって投光された投射光によって形成されるパターンを含む領域を撮像する受光手段と、
前記投光手段からの投光を制御するとともに、前記受光手段によって撮像された撮像データを解析して前記投射領域における対象物の有無を前記投射領域ごとに検証し、検出された対象物との距離を計測する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
複数の要素によって構成されるパターンを前記投射領域に形成させる位相分布を前記空間光変調素子の表示部に表示させ、
前記撮像データを解析して、前記投射領域に形成されたパターンを構成する前記複数の要素のずれに基づいて、前記投射領域における対象物を検出し、
前記複数の要素によって構成されるパターンの変化に基づいて、検出された対象物との距離を測定する距離測定システム。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。なお、以下の実施形態の説明に用いる全図においては、特に理由が無い限り、同様箇所には同一符号を付す。また、以下の実施形態において、同様の構成・動作に関しては繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0018】
(第1の実施形態)
〔構成〕
まず、本発明の第1の実施形態に係る距離測定システムの構成について図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1は、本実施形態の距離測定システム1の構成を示すブロック図である。
図2は、投光装置10の構成を示す概念図である。
図3は、投光装置10と受光装置20との空間的な位置関係を示すとともに、投光装置10の内部構成の概略を示す概念図である。なお、
図1〜
図3は概念的なものであり、必ずしも各構成要素の空間的な位置関係や光の進行の様子を正確に表すものではない。
【0020】
図1のように、距離測定システム1は、投光装置10、受光装置20および制御装置30を備える。
【0021】
投光装置10は、制御装置30に接続される。投光装置10は、位相変調型の空間光変調素子を含む。投光装置10は、制御装置30の制御に応じて、少なくとも二つの距離に対応する投射光を投射する。例えば、投光装置10は、遠方(第1の距離)の投射領域(第1の投射領域)に向けた長距離投射光(第1の投射光)と、近方(第2の距離)の投射領域(第2の投射領域)に向けた短距離投射光(第2の投射光)とを投射する。第1の投射光および第2の投射光は、複数のマークが並んだパターン光(以下、単にパターンと記載)を被投射面上に形成させる。言い換えると、上述した複数のマークはパターン光の要素である。なお、以下においては、距離測定システム1から異なる距離に位置する異なる投射領域に投射光を投射する例について説明するが、距離測定システム1から同じ距離に位置する異なる投射領域に投射光を投射することもできる。
【0022】
受光装置20は、制御装置30に接続される。受光装置20は、制御装置30の制御に応じて、第1の投射領域および第2の投射領域を含む領域を撮像する。受光装置20は、一般的なデジタルカメラと同様の撮像素子を含む。
【0023】
制御装置30は、投光装置10および受光装置20に接続される。制御装置30は、第1の投射光および第2の投射光を投射するように投光装置10を制御する。また、制御装置30は、第1の投射領域および第2の投射領域を含む領域を撮像するように受光装置20を制御する。制御装置30は、撮像した領域に含まれるパターンを解析することによって、各投射領域における対象物の有無を検証し、対象物を検出した場合はその対象物との距離を測定する。
【0024】
図2のように、投光装置10は、光源11、空間光変調素子13、投射光学系14、光源駆動電源15および変調素子制御回路16を有する。なお、
図2においては省略しているが、
図3のように、投光装置10は、コリメータ12およびフーリエ変換レンズ17を含む。
図2においては、コリメータ12を省略しているため、光源11から平行光110が出射されるように図示しているが、実際には、光源11から出射された光はコリメータ12によって平行光110に変換される。そして、空間光変調素子13の表示面で反射された光は、フーリエ変換レンズ17によって所望の焦点位置に向けて集束される。
【0025】
図3のように、投光装置10と受光装置20とは、離れた位置に配置することが好ましい。なぜならば、対象物との距離を計測する際に三角測量の手法を用いる場合、投光装置10と受光装置20との距離が離れている方が精度よく測定できるためである。例えば、距離測定システム1を車両に搭載する場合、投光装置10を車両の前方に配置し、受光装置20を車両の上方に配置すればよい。なお、投光装置10および受光装置20を配置する位置は適宜設定できる。
【0026】
光源11は、光源駆動電源15の駆動に伴って特定波長の光を出射する。光源11から出射された光は、コリメータ12によって平行光110になる。平行光110は、空間光変調素子13の表示部で反射される際に変調光130に変換されて投射光学系14に導かれる。変調光130は、投射光学系14において投射光に変換され、投射光学系14から長距離投射光101および短距離投射光102として投光される。
【0027】
光源11は、特定波長の光を出射する。光源11から出射される光は、位相がそろったコヒーレントな光であることが好ましい。例えば、光源11には、レーザ光源を用いることができる。なお、光源11は、位相がそろったコヒーレントな光が得られるものであれば、発光ダイオードや白熱電球、放電管などであってもよい。
【0028】
本実施形態においては、投射した光が目視されないように、光源11は、赤外領域の光を出射するように構成することが好ましい。例えば、光源11は、可視領域や紫外領域の光を出射するように構成してもよい。また、例えば、レーザ光をパルス状に照射し、単位時間あたりにおけるレーザ光の照射量の積算が人に視認できない条件であれば、可視光を用いてもよい。また、レーザ光を照射していることを視認されてもよい場合や、レーザ光を照射していることを敢えて視認させたい場合も、可視光を用いてもよい。
【0029】
空間光変調素子13は、制御装置30の制御に応じて、長距離投射光101および短距離投射光102として投射される光によって形成されるパターンを生成するための像を自身の表示部に表示する。本実施形態においては、所望のパターンを形成するための像を空間光変調素子13の表示部に表示させた状態で、その表示部に平行光110を照射する。空間光変調素子13は、平行光110を変調した変調光130を投射光学系14に向けて出射する。
【0030】
本実施形態においては、長距離投射光101および短距離投射光102のそれぞれによって形成されるパターンを生成するための像を空間光変調素子13の表示部に表示させる。すなわち、空間光変調素子13の表示部は、長距離投射光101によって形成されるパターンに対応する像を表示させる第1の画素群と、短距離投射光102によって形成されるパターンに対応する像を表示させる第2の画素群とに割り当てられる。空間光変調素子13の表示部に表示させる像の詳細については後述する。
【0031】
空間光変調素子13は、位相がそろったコヒーレントな平行光110の入射を受け、入射された平行光110の位相を変調する位相変調型の空間光変調素子によって実現できる。位相変調型の空間光変調素子13は、フォーカスフリーであるため、複数の投射距離に光を投射することになっても、距離ごとに焦点を変える必要がない。なお、空間光変調素子13は、位相変調型とは異なる方式の素子であってもよいが、以下においては、位相変調型の素子を用いることを前提として説明する。これ以降は、位相変調型の空間光変調素子を用いるものとし、各投射領域に形成されるパターンを生成するための像は位相分布であるものとする。
【0032】
位相変調型の空間光変調素子13の表示部は、複数の画素で構成され、長距離投射光101および短距離投射光102によって形成されるパターンの位相分布がいずれかの画素に表示される。本実施形態では、空間光変調素子13の表示部を構成する複数の画素は、長距離投射光101用のパターンを表示させる画素群(第1の画素群)と、短距離投射光102用のパターンを表示させる画素群(第2の画素群)とに割り当てられる。すなわち、長距離投射光101用の位相分布を第1の画素群に表示させ、短距離投射光102の位相分布を第2の画素群に表示させる。
【0033】
空間光変調素子13は、例えば、強誘電性液晶やホモジーニアス液晶、垂直配向液晶などを用いた空間光変調素子によって実現される。空間光変調素子13は、具体的には、LCOS(Liquid Crystal on Silicon)によって実現できる。また、空間光変調素子13は、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical System)によって実現してもよい。
【0034】
位相変調型の空間光変調素子13を用いれば、投射光を投射する箇所を順次切り替えるように動作させることによって、エネルギーを表示情報の部分に集中することができる。そのため、位相変調型の空間光変調素子13によれば、光源の出力が同じであれば、表示領域全面に光を投射する方式のものよりも表示情報を明るく表示させることができる。
【0035】
投射光学系14は、空間光変調素子13で変調された変調光130を投射光として投射する光学系である。空間光変調素子13で変調された変調光130は、投射光学系14によって長距離投射光101および短距離投射光102として投射される。
【0036】
図4は、投射光学系14の構成例を示す概念図である。
図4のように、投射光学系14は、長距離投射光学系141(第1の光学系ともよぶ)と、短距離投射光学系142(第2の光学系ともよぶ)とを有する。長距離投射光学系141は、第1の投射角のレンズ410を含む。短距離投射光学系142は、第2の投射角のレンズ420を含む。なお、
図4に示すレンズ410およびレンズ420の形状や大きさは、実際の形状や大きさを反映させているわけではない。
【0037】
長距離投射光学系141は、空間光変調素子13の第1の画素群で変調された変調光130を入射し、レンズ410を介して長距離投射光101を投光する。長距離投射光学系141は、短距離投射光102よりも遠方に向けて長距離投射光101を投射する。
【0038】
短距離投射光学系142は、空間光変調素子13の第2の画素群で変調された変調光130を入射し、レンズ420を介して短距離投射光102を投光する。短距離投射光学系142は、長距離投射光101よりも近方に向けて短距離投射光102を投射する。
【0039】
光源駆動電源15は、制御装置30の制御に応じて光源11を駆動させて、光源11から光を出射させるための電源である。
【0040】
変調素子制御回路16は、制御装置30の制御に応じて、各投射領域に表示されるパターンを生成するための位相分布を空間光変調素子13の表示部に表示させる。変調素子制御回路16は、空間光変調素子13の表示部を構成する第1の画素群に長距離投射光101に対応する位相分布を表示させ、第2の画素群に短距離投射光102に対応する位相分布を表示させる。例えば、変調素子制御回路16は、空間光変調素子13の表示部に照射される平行光110の位相と、表示部で反射される変調光130の位相との差分を決定づけるパラメータが変化するように空間光変調素子13を駆動する。
【0041】
位相変調型の空間光変調素子13の表示部に照射される平行光110の位相と、表示部で反射される変調光130の位相との差分を決定づけるパラメータは、例えば、屈折率や光路長などの光学的特性に関するパラメータである。例えば、変調素子制御回路16は、空間光変調素子13の表示部に印可する電圧を変化させることによって、表示部の屈折率を変化させる。その結果、表示部に照射された平行光110は、表示部の屈折率に基づいて適宜回折される。すなわち、位相変調型の空間光変調素子13に照射された平行光110の位相分布は、表示部の光学的特性に応じて変調される。なお、変調素子制御回路16による空間光変調素子13の駆動方法はここで挙げた限りではない。
【0042】
図5は、本実施形態の距離測定システム1を搭載した車両100から投射光を投光する例を示す概念図である。
【0043】
図5のように、車両100に搭載された距離測定システム1は、遠方に向けた長距離投射光101と、近方に向けた短距離投射光102とを投射する。距離測定システム1は、長距離投射光101に比べて、短距離投射光102の投射範囲を広くする。一般に、車両100に近いほど広い領域を見る必要がある。そのため、距離測定システム1は、短距離ほど広い投射範囲に投射を行う。また、距離測定システム1は、長距離投射光101の投射範囲を小さくし、遠方における投射光の広がりを小さくするため、遠方と近方に同じ投射範囲で投射光を投射する場合と比較して遠方の対象物に関する解像度が向上する。
【0044】
〔受光装置〕
図6は、距離測定システム1の受光装置20の構成を示すブロック図である。
図6のように、受光装置20は、シャッタ21、撮像素子22、画像処理プロセッサ23、メモリ24および出力回路25を有する。なお、受光装置20は、一般的なデジタルカメラの撮像機能を有すれば、
図6の構成と異なっていてもよい。
【0045】
シャッタ21は、撮像素子22に到達する光の量を制御するための電子的な機構である。
【0046】
撮像素子22は、投光装置10から投射された光を撮像するための素子である。撮像素子22は、半導体部品が集積回路化された光電変換素子であり、複数の受光領域が格子状に配置された構造を有する。撮像素子22は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)などの固体撮像素子によって実現できる。CCDやCMOSは、アレイ状に配置された複数の受光領域を有する。撮像素子22は、赤外領域の光を撮像する素子によって構成することが好ましい。なお、必要に応じて、赤外領域以外の可視光や紫外線、X線、ガンマ線、電波、マイクロ波などの電磁波を撮像・検波できるように構成してもよい。
【0047】
画像処理プロセッサ23は、撮像素子22によって撮像された撮像データに対して、暗電流補正や補間演算、色空間変換、ガンマ補正、収差の補正、ノイズリダクション、画像圧縮などの画像処理を実行する集積回路である。なお、画像情報を加工しない場合は、画像処理プロセッサ23を省略してもよい。
【0048】
メモリ24は、画像処理プロセッサ23によって画像処理を行う際に処理しきれない画像データや、処理済みの画像データを一時的に格納する記憶素子である。なお、撮像素子22によって撮像された画像データをメモリ24に一時的に記憶するように構成してもよい。メモリ24は、一般的なメモリによって構成すればよい。
【0049】
出力回路25は、画像処理プロセッサ23によって処理された画像データを制御装置30に出力する。
【0050】
〔制御装置〕
図7は、距離測定システム1の制御装置30の構成を示すブロック図である。
【0051】
図7のように、制御装置30は、投光制御回路31、投光条件設定回路32、記憶回路33、受光制御回路34、解析回路35および通信回路36を有する。
【0052】
投光制御回路31は、投光条件設定回路32から取得した光源制御条件に基づいて、光源駆動電源15のON/OFF状態や、駆動電圧を制御する。光源駆動電源15が投光制御回路31の制御に応じることによって、空間光変調素子13の表示部に表示させた位相分布によって生成されるパターンを所望のタイミングで各投射領域に投射できる。
【0053】
また、投光制御回路31は、各投射領域に形成されるパターンを生成するための位相分布を空間光変調素子13の表示部を構成する各画素に表示させるように変調素子制御回路16を制御する。投光制御回路31は、空間光変調素子13の表示部を構成する第1の画素群に長距離投射光101の表示パターンに対応する位相分布を表示させるように変調素子制御回路16を制御する。また、投光制御回路31は、空間光変調素子13の表示部を構成する第2の画素群に短距離投射光102の表示パターンに対応する位相分布を表示させるように変調素子制御回路16を制御する。例えば、投光制御回路31は、空間光変調素子13の表示部に照射される平行光110の位相と、表示部で反射される変調光130の位相との差分を決定づけるパラメータが変化するように空間光変調素子13を駆動する。
【0054】
投光条件設定回路32は、各投射領域に投射するパターンを構成する基本パターンの位相分布を記憶回路33から取得する。投光条件設定回路32は、記憶回路33に記憶された基本パターンの位相分布に移動処理や合成処理をすることによって、空間光変調素子13の表示部に表示させる位相分布を生成する。
【0055】
また、投光条件設定回路32は、適切な表示情報を適切なタイミングで適切な表示領域に向けて投射光を投射するための制御条件を生成する。制御条件は、適切なパターンを形成する投射光を適切な投射領域に向けて投射するための変調素子制御条件と、適切なタイミングで投射光を投射するための光源制御条件とを含む。投光条件設定回路32は、変調素子制御条件を投光制御回路31に出力し、光源制御条件を投光制御回路31に出力する。
【0056】
記憶回路33には、各投射領域に投射する投射パターンを構成する基本パターンの位相分布を記憶させておく。例えば、記憶回路33には、投射パターンを生成するための基本パターンの位相分布を事前に記憶させておけばよい。なお、記憶回路33には、基本パターンの位相分布のみならず、基本パターンを組み合わせたパターンの位相分布や、さらに複雑なパターンの位相分布を記憶させておいてもよい。
【0057】
受光制御回路34は、投光条件設定回路32が設定した光源制御条件に基づいて、各投射領域を撮像するように受光装置20を制御する。なお、受光装置20にシャッタ21を設置しない場合、受光制御回路34は、シャッタ21の開閉制御を行わない。
【0058】
受光制御回路34は、投光したパターンを撮像するタイミングでシャッタ21を開き、撮像素子22に各投射領域を撮像させる。具体的には、受光制御回路34は、長距離投射光101および短距離投射光102の反射光が受光されるタイミングでシャッタ21を開き、いずれの投射光の反射光も受光されていない期間はシャッタ21を閉じるように制御する。
【0059】
受光制御回路34は、受光装置20が撮像した撮像データを取得する。受光制御回路34は、取得した撮像データを解析回路35に出力する。
【0060】
解析回路35は、受光制御回路34から受け取った撮像データに含まれるパターンを解析し、長距離投射光101および短距離投射光102の投光領域における対象物の有無を検証する。解析回路35は、長距離投射光101または短距離投射光102の投光領域に対象物があると判定した場合、対象物があると判定された投光領域に関して、対象物との距離を計測する。例えば、解析回路35は、長距離投射光101および短距離投射光102が投光するパターンの種類によっては、対象物の形状まで認識できる。
【0061】
解析回路35は、長距離投射光101および短距離投射光102の投光領域における対象物の有無、対象物との距離などを含む情報を通信回路36に出力する。
【0062】
通信回路36は、別のシステムや装置、センサなどと距離測定システム1とを接続するインターフェースである。通信回路36は、別のシステムや装置、センサなどに向けて、距離測定システム1によって得られた情報を送信する。また、通信回路36は、別のシステムや装置、センサなどから距離測定システム1に対する指示や要求を含む信号を受信してもよい。通信回路36の通信形態は、有線通信であってもよいし、無線通信であってもよく、その周波数帯や通信品質、規格などに関しては特に限定しない。
【0063】
〔ハードウェア〕
ここで、
図8を用いて、本実施形態に係る距離測定システム1の制御系統を実現するハードウェア(制御基板300)について説明する。なお、
図8の制御基板300は、距離測定システム1を実現するための一例であって、本発明の範囲を限定するものではない。
【0064】
図8のように、制御基板300は、プロセッサ301、主記憶装置302、補助記憶装置303、入出力インターフェース305およびネットワークアダプター306を備える。なお、
図8においては、インターフェースをI/F(Interface)と略して表記している。プロセッサ301、主記憶装置302、補助記憶装置303、入出力インターフェース305およびネットワークアダプター306は、バス309を介して互いに接続される。また、プロセッサ301、主記憶装置302、補助記憶装置303および入出力インターフェース305は、ネットワークアダプター306を介して、イントラネットやインターネットなどのネットワークに接続される。制御基板300は、ネットワークを介して、図示しない別のシステムや装置、センサなどに接続される。また、制御基板300は、ネットワークを介して、上位システムやサーバに接続されてもよい。
【0065】
プロセッサ301は、補助記憶装置303等に格納されたプログラムを主記憶装置302に展開し、展開されたプログラムを実行する中央演算装置である。本実施形態においては、制御基板300にインストールされたソフトウェアプログラムを用いる構成とすればよい。プロセッサ301は、制御装置30による演算処理や制御処理を実行する。
【0066】
主記憶装置302は、プログラムが展開される領域を有する。主記憶装置302は、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリとすればよい。また、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)などの不揮発性メモリを主記憶装置302として構成・追加してもよい。
【0067】
補助記憶装置303は、空間光変調素子13の表示部に表示させる位相分布などのデータを記憶させる手段である。補助記憶装置303は、ハードディスクやフラッシュメモリなどのローカルディスクとして構成される。なお、主記憶装置302にデータを記憶させる構成とし、補助記憶装置303を省略してもよい。
【0068】
入出力インターフェース305は、制御基板300と周辺機器とを接続規格に基づいて接続する装置である。
【0069】
制御基板300には、必要に応じて、キーボードやマウス、タッチパネルなどの入力機器を接続できるように構成してもよい。それらの入力機器は、情報や設定の入力に使用される。なお、タッチパネルを入力機器として用いる場合は、表示機器の表示画面が入力機器のインターフェースを兼ねるタッチパネルディスプレイを入力機器として用いればよい。プロセッサ301と入力機器との間のデータ授受は、入出力インターフェース305に仲介させればよい。
【0070】
ネットワークアダプター306は、規格や仕様に基づいて、インターネットやイントラネットなどのネットワークに接続するためのインターフェースである。入出力インターフェース305およびネットワークアダプター306は、外部機器と接続するインターフェースとして共通化してもよい。
【0071】
以上が、本実施形態の距離測定システム1を可能とするハードウェア構成の一例である。なお、
図8のハードウェア構成は、本実施形態の距離測定システム1を可能とするためのハードウェア構成の一例であって、本発明の範囲を限定するものではない。また、本実施形態の距離測定システム1に関する処理をコンピュータに実行させる距離測定プログラムも本発明の範囲に含まれる。さらに、本実施形態に係る距離測定プログラムを記録したプログラム記録媒体も本発明の範囲に含まれる。
【0072】
図9は、距離測定システム1からの投射光が形成するパターンの一例を示す概念図である。
図9は、車両のフロントガラス越しに見た道路上に、格子状に配列された要素(ポイント)からなるパターンを投光する例である。
【0073】
図9の例では、車両から遠い側の第1の投射領域111には長距離投射光101が投射され、車両に近い側の第2の投射領域112には短距離投射光102が投射される。
図9のように、投光装置10から第1の投射領域111と第2の投射領域112に同じパターンを投射する際に、遠方に投射される第1の投射光の投射範囲を小さくする。そのため、受光装置20は、第1の投射領域111に投射されたパターンを構成するポイントの方が狭い間隔で並んだような像を得る。
【0074】
一般に、遠くに位置する対象物の方が小さく見える。そのため、近方と遠方に同じパターンを投射すると、遠方のパターンを構成する要素の間隔が広がり、分解能が低下してしまう。それに対し、
図9のように、遠方に投射される第1の投射光の投射範囲を、近方に投射される第2の投射光の投射範囲と比べて小さくすると、遠方の第1の投射領域111に投射されるパターンを構成する要素の間隔が小さくなる。そのため、第2の投射領域112に位置する対象物を検出するために十分な分解能が得られる。
【0075】
図10は、道路上(第1の投射領域111)に車両(対象物)が位置する例である。第1の投射領域111に投射されたパターンを構成するポイントのうち対象物の位置に投射されたポイントには、ずれが生じる。
【0076】
すなわち、第1に、撮像されたパターンを構成する要素のずれが検出されることによって、距離測定システム1の測定範囲内に対象物が検出される。そして、第2に、距離測定システム1は、撮像されたパターンを構成する要素のずれ量によって、対象物との距離を測定することができる。例えば、距離測定システム1は、三角測量の原理を用いて、検出された対象物との距離を測定する。
【0077】
図11は、測定された対象物との距離を、その対象物の近くに表示させる例である。例えば、距離測定システム1を搭載する車両が前方を撮影するカメラを備え、そのカメラによって撮像された映像を車両内のモニターに表示できるのであれば、そのモニターに測定した距離を表示させればよい。また、距離測定システム1を搭載する車両のフロントウィンドウに映像を表示できるシステムを用いて、フロントウィンドウ越しに見える対象物の近傍に、その対象物との距離を表示させるようにしてもよい。
【0078】
図12は、投射領域に投射する投射光が形成するパターンの例をまとめた表である。例えば、距離測定システム1は、能動的計測法によって対象物の検出や距離の計測を行う。
【0079】
Aは、スポット状のパターン(スポット光)を投光する例である。
【0080】
スポット光を用いる場合、制御装置30は、三角測量原理によって対象までの距離を計算する。一般に、車両などの移動体から対象物を検出する際には、スポット光を二次元的に走査する必要がある。単に対象物があることを検出するだけならば高い解像度は要求されないため、スポット光の反射像の記録・解析にはそれほど時間が掛からない。しかし、対象物の形状まで分かるようにするほどの高い解像度が必要な場合は、スポット光の反射像の記録・解析にそれなりの時間が掛かり、データ量が膨大になるため、対象物を瞬時に判断する用途には向いていない。スポット光を用いる場合は、所定の距離よりも近くにある対象物を検出した段階で、対象物を検出したことを示す信号を出力するようなアルゴリズムを適用すればよい。
【0081】
Bは、ライン状のパターン(スリット光)を投光する例である。なお、スリット光は、縦線ではなく、横線であってもよい。
【0082】
スリット光を用いる場合、三角測量を応用した光切断法によって対象物との距離を計測することができる。スリット光を用いる場合、受光装置20は、シート状の光を一次元的に走査すればよいので、スポット光を用いる場合と比較して高解像度の三次元情報を高速に得ることができる。スリット光を用いる場合、受光装置20による撮像処理が全体の処理速度を律速することになるため、信号処理を高速化できるように素子を設計することが好ましい。ところで、スリット光を用いる場合、三次元情報を高解像度化するために撮像素子22のフレームレートを上げることが好ましいが、1フレームあたりの露光時間が減少するために投射光の光強度を上げる必要がある。しかし、対象物に人が含まれる場合、投射するレーザ光の強度には上限があるため、解像度には限界が生じることがある。
【0083】
Cは、ストライプ状のパターン(ストライプ光を)を投光する例である。なお、ストライプ状のパターンは、縦縞ではなく、横縞であってもよい。
【0084】
ストライプ光を用いる場合、複数のライン状のパターンを同時に投光するため、投光と受光の回数を減らすことができる。そのため、一本のライン状のスリット光を投光する場合と比較して、三次元情報の計測を高速化できる。また、ストライプ光を用いる場合、複数のラインの歪み具合によって対象物を検出できる。そのため、一回の投光・受光によって対象物の有無を検出することもできる。対象物の形状まで認識する必要がある場合、パターンをラインに対して垂直な方向に走査し、その反射光を受光して解析すればよい。
【0085】
Dは、Cの場合において、複数色のラインを含むパターンを投光する例である。なお、ストライプ状のパターンは、縦縞ではなく、横縞であってもよい。
【0086】
複数色のストライプ光を用いる場合、制御装置30は、各ラインを色に対応させて独立して解析できる。そのため、投光した領域ごとに得られた情報を各色に対応付けて処理できる。
【0087】
Eは、濃度が滑らかに変化する傾斜状のパターン(傾斜光)を投光する例である。なお、傾斜光は、左から右に向けてではなく、右から左に向けて濃くしてもよい。また、傾斜光は、左右方向に濃度変化させず、上下方向に濃度変化させたり、斜め方向に濃度変化させたり、中央から放射状に濃度変化させたりしてもよい。また、傾斜光は、単色のグラデーションではなく、複数色を交えたグラデーションで構成してもよい。
【0088】
傾斜光を用いる場合、制御装置30は、受光した反射光の強度分布を解析すれば、対象物の有無を検出したり、対象物との距離を計測したり、対象物の形状を認識したりすることができる。
【0089】
Fは、コード化されたパターン(コード光)を投光する例である。
【0090】
コード光を用いる場合、ストライプ光を用いる場合と同様に一回の投光・受光で、対象物の三次元情報を計測できる。また、コード光を用いる場合、対象物との絶対距離を計測することができる。しかし、コードを復号する際に計算量の多い画像処理が必要であったり、対象物の細かな部分までは計測しにくかったりするので、制御装置30における演算処理を高速化できるわけではない。
【0091】
Gは、アレイ状に配列させた要素(パターン光)を投光する例である。
【0092】
パターン光を用いる場合、対象物を含む領域からの反射光のうち、対象物からの反射光は、対象物を含まない部分の反射光と比べて歪む。そのため、対象物がない状況で受光されるパターンと、対象物がある状況で受光した反射光のパターンとを比較することによって、対象物の形状を含む距離情報を得ることができる。対象物がない状況で受光されるパターンは、システムの立ち上げ時にキャリブレーション用のパターンとして記憶するようにしてもよいし、受光の度に取得されたパターンを逐次記憶するようにしてもよい。なお、
図12のGには×印の要素からなるパターン光を投光する例を示しているが、パターン光を構成するマークの形状によって、得られる三次元情報の解像度などが異なる。そのため、必要とする三次元情報に応じて、パターンを構成するマークを選択することが好ましい。なお、パターン光は、単一種類の要素で構成されてもよいし、複数種類の要素を組み合わせて構成してもよい。
【0093】
Hは、ランダムなパターン(ランダムパターン光)を投光する例である。
【0094】
ランダムパターン光を用いる場合も、パターン光を用いる場合と同様に、対象物がない状況で受光されるパターンと、対象物がある状況で受光した反射光のパターンとを比較することによって、対象物の形状を含む距離情報を得ることができる。ランダムパターン光を用いれば、局所的なパターンの変化によって、対象物の細かな部分まで認識することができる。ランダムパターン光を用いる場合、対象物の細かな部分まで判別できる反面、検出領域の細かな変化まで拾うと、制御装置30の処理量が膨大になる。そのため、対象物を検出するために変位量の大きな変化を検知する工程と、検出された対象物を含む領域に関して変位量の小さな変化も検知する工程とを区別するアルゴリズムを用いることが好ましい。
【0095】
図13は、
図10で投光するパターン光の替わりに、複数のラインを並べたストライプ光を第1の投射領域111および第2の投射領域112に投射する例である。
図13の例でも、投射したパターンの変化に基づいて対象物との距離を測定できる。
【0096】
〔動作〕
次に、
図14のフローチャートを用いて、本実施形態の距離測定システム1の動作例について説明する。
図14は、長距離投射光101および短距離投射光102を同時に投光する場合のフローチャートである。なお、以下の説明においては、動作の概略だけを示し、構成要素間のデータの授受や動作の詳細は省略する。
【0097】
まず、
図14において、投光装置10は、第1の投射領域および第2の投射領域に向けて所定のパターンを投光する(ステップS11)。
【0098】
受光装置20は、第1の投射領域および第2の投射領域を撮像する(ステップS12)。
【0099】
制御装置30は、受光装置20が撮像したパターンを解析する(ステップS13)。
【0100】
制御装置30が対象物を検出しなかった場合(ステップS14でNo)、ステップS11に戻る。
【0101】
制御装置30は、対象物を検出した場合(ステップS14でYes)、対象物との距離を算出する(ステップS15)。
【0102】
制御装置30は、算出した対象物との距離を出力する(ステップS16)。
【0103】
投光装置10からの投光を継続する場合(ステップS17でYes)、ステップS11に戻る。一方、投光装置10からの投光を終了する場合(ステップS17でNo)、
図14のフローチャートに沿った工程を終了する。
【0104】
以上が、本実施形態の距離測定システム1の動作例についての説明である。
【0105】
(比較例)
ここで、
図15を用いて、投射領域を距離で分割せずに対象物の検出・距離測定を行う比較例について説明する。
図15の比較例では、単一のパターンの投射光210で全ての距離に対応するため、車両200から遠い領域と、車両200から近い領域とで区別しない。
【0106】
車両の場合、遠くの対象物と比べて、近くの対象物をより早く、より正確に検出することが求められる。なぜならば、人や車などの対象物は、車両に近いほど衝突の危険性が増すからである。車両200からモニターする範囲は、車両200に近いほど広角に設定することが好ましい。しかし、車両200の近くをモニターするために投射範囲を広げてしまうと、短距離における解像度が小さくなるだけではなく、遠方の対象物に対する解像度が著しく低下する。
【0107】
図16は、
図15のシステムで遠方の車両を検出しようとした際に、パターンを構成する要素の隙間に車両が位置するために、車両が検出されてないことを示す。すなわち、
図16のように、遠方と近方とを区別せずに検証すると、遠方の対象物の検出ができなかったり、遅れたりするという問題点があった。
【0108】
これに対し、本実施形態においては、対象物を検出する際に、遠方と近方とを区別して検証する。具体的には、本実施形態においては、短距離をモニターする場合は投射範囲を大きくし、長距離をモニターする場合は投射光を小さくする。
【0109】
一般的なプロジェクタにおいて距離ごとに投射範囲を変えるためには、例えば特許文献1(特開昭59−198377号公報)のように、複数台の光源が必要になる。これに対し、本実施形態においては、位相変調型の空間光変調素子を用いるため、単一の光源で複数の投射範囲に投光することができる。また、本実施形態の距離測定システムで用いる空間光変調素子は、フォーカスフリーであるためにピント調整が不要である。
【0110】
以上のように、本実施形態の距離測定システムは、空間光変調素子13の表示部に表示させる像を任意に設定できるので、スリットなどを用いなくても任意のパターンを投光することができる。投光するパターンは、単一のものを用いてもよいし、複数のものを組み合わせてもよい。なお、対象物を検出するために用いる手法は、上述の手法に限定されない。また、本実施形態の距離測定システム1は、任意のパターンを投射できるため、距離測定のみならず、種々の位置検出方式に適用できる。
【0111】
本実施形態の距離測定システムでは、位相変調型の空間光変調素子によって光を表示部分に集中して投光できるため、投光領域に均一に投光する通常のプロジェクタに比べて電力効率が高い。
【0112】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る距離測定システムの構成について図面を参照しながら説明する。本実施形態においては、第1の実施形態とは異なり、三つの距離に対応させて投光を行う。
【0113】
図17は、本実施形態の距離測定システム2を搭載した車両100−2から投射光を投光する例を示す概念図である。
図18は、距離測定システム2の構成を示す概念図である。
【0114】
図17のように、距離測定システム2は、長距離投射光101および短距離投射光102に加えて、長距離(第1の距離)と短距離(第2の距離)の中間的な距離である中距離(第3の距離)に向けて中距離投射光103(第3の投射光)を投光する。第3の距離に設定される投射領域を第3の投射領域ともよぶ。中距離投射光103の投射範囲は、長距離投射光101の投射範囲よりも広く、短距離投射光102の投射範囲よりも小さく設定する。
【0115】
図18のように、距離測定システム2は、第1の実施形態の投光装置10と異なる投射光学系(投射光学系14−2)を有する投光装置10−2を備える。
【0116】
図19は、投射光学系14−2の構成例を示す概念図である。
図19のように、投射光学系14−2は、長距離投射光学系141および短距離投射光学系142に加えて、第3の投射角で投射する中距離投射光学系143(第3の光学系)を有する。
【0117】
長距離投射光学系141は、第1の投射角のレンズ410を含む。短距離投射光学系142は、第2の投射角のレンズ420を含む。中距離投射光学系143は、第3の投射角のレンズ430を含む。なお、
図19に示すレンズ410、レンズ420およびレンズ430の形状や大きさは、実際の形状や大きさを反映させているわけではない。また、レンズ410、レンズ420およびレンズ430は、複数枚のレンズで構成してもよい。
【0118】
長距離投射光学系141は、入射された変調光130の一部を第1の投射角で投光する。長距離投射光学系141から投射された光が長距離投射光101である。長距離投射光学系141は、短距離投射光102および中距離投射光103よりも遠方に向けて長距離投射光101を投射する。
【0119】
短距離投射光学系142は、入射された変調光130の一部を第2の投射角で投光する。短距離投射光学系142から投射された光が短距離投射光102である。短距離投射光学系142は、長距離投射光101および中距離投射光103よりも近方に向けて短距離投射光102を投射する。
【0120】
中距離投射光学系143は、入射された変調光130の一部を第3の投射角で投光する。中距離投射光学系143から投射された光が中距離投射光103である。中距離投射光学系143は、短距離投射光102よりも遠方、かつ長距離投射光101よりも近方に向けて中距離投射光103を投射する。
【0121】
長距離投光用の第1の画素群によって反射された平行光110は、長距離投射光学系141に導かれる。長距離投射光学系141に導かれた光は、レンズ410によって第1の投射角で遠方に向けて投光される。
【0122】
短距離投光用の第2の画素群によって反射された平行光110は、短距離投射光学系142に導かれる。短距離投射光学系142に導かれた光は、レンズ420によって第2の投射角で近方に向けて投光される。
【0123】
中距離投光用の第3の画素群によって反射された平行光110は、中距離投射光学系143に導かれる。中距離投射光学系143に導かれた光は、レンズ430によって第3の投射角で遠方と近方との間に向けて投光される。
【0124】
図20は、投射光学系14−2の変形例(投射光学系14−3)を示す概念図である。
図20のように、投射光学系14−3は、投射レンズを含まない長距離投射光学系141−2を有する。位相変調型の空間光変調素子13から出射される変調光は、フラウンホーファ領域の所定の投射領域に投射光を投射する場合、フーリエ変換レンズを介さなくてもパターンを結像できる。そのため、
図20の投射光学系14−2のような構成も可能となる。なお、
図20の構成の場合、長距離投射光学系141−2に入射させる変調光は、フーリエ変換レンズを通さない構成とする。
【0125】
図21は、距離測定システム2から投射するパターンの一例を示す概念図である。
図21の例では、
図9の例と同様に、車両から遠い側の第1の投射領域111に長距離投射光101が投射され、車両に近い側の第2の投射領域112に短距離投射光102が投射される。それに加えて、
図21の例では、第1の投射領域111と第2の投射領域112との間の第3の投射領域113に中距離投射光103が投射される。
図21の例によれば、第1の投射領域111と第2の投射領域112との間の第3の投射領域113に中距離投射光103を投射することによって、
図9の例よりも対象物の分解能をより向上できる。
【0126】
以上のように、本実施形態の投射システムは、第1の投射領域と第2の投射領域に加えて、第3の投射領域に投射光を投射する光学系を有する。その結果、本実施形態によれば、第1の実施形態と比較して、投光領域に位置する対象物をより確実に検出することが可能になる。また、本実施形態の距離測定システムに異なる領域に向けて投射光を投射する投射光学系をさらに追加し、4種類以上の領域に対応させた距離測定システムを構成してもよい。
【0127】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態に係る距離測定システムの構成について図面を参照しながら説明する。本実施形態においては、第1の実施形態とは異なり、ある投射領域で対象物が検知された際に、その投射領域に投射するパターンを変更する。なお、本実施形態の距離測定システムは、第1の実施形態と同様の構成でありながら、制御装置30の制御方式が異なるものである。
【0128】
図22は、本実施形態に係る距離測定システムから投射されたパターンの一例を示す概念図である。
図22の例では、第1の投射領域111に車両(対象物)が位置する例である。
【0129】
図23は、第1の投射領域111に対象物が検出された際に、第1の投射領域111で検出された対象物にパターンを集中させる例を示す図である。
図23の左側は、対象物の検出時点である。
図23の右側は、長距離投射光101を対象物に集中させ、対象物を含む領域に集中させるように第1の投射領域111を絞り込んだ時点を示す。
【0130】
図24は、
図23のように、対象物を含む領域に第1の投射領域111を絞り込んだ時点において、距離測定システムから投射されたパターンの一例を示す概念図である。
【0131】
第1の実施形態においては、第1の投射領域111において検出された対象物に関して、撮像されたパターンの変化から対象物との距離を計算した。それに対し、本実施形態においては、第1の投射領域111において対象物が検出された際に、第1の投射領域111を絞り込み、第1の投射領域111に投射するパターンを構成するポイントの密度を大きくする。対象物を含む領域に第1の投射領域111を絞り込めば、対象物によって変位するポイントの数が増えるため、対象物との距離や形状をより正確に検出できる。
【0132】
〔動作〕
次に、
図25のフローチャートを用いて、本実施形態の距離測定システムの動作例について説明する。なお、以下の説明においては、動作の概略だけを示し、構成要素間のデータの授受や動作の詳細は省略する。
【0133】
まず、
図25において、投光装置10は、第1の投射領域および第2の投射領域に向けて所定のパターンを投光する(ステップS21)。
【0134】
受光装置20は、第1の投射領域および第2の投射領域を撮像する(ステップS22)。
【0135】
制御装置30は、受光装置20が撮像したパターンを解析する(ステップS23)。
【0136】
制御装置30が対象物を検出しなかった場合(ステップS24でNo)、ステップS21に戻る。
【0137】
制御装置30は、対象物を検出した場合(ステップS24でYes)、対象物が検出された投射領域を絞り込み、検出した対象物に投射光を集中させる(ステップS25)。
【0138】
そして、制御装置30は、受光装置20が撮像したパターンを解析する(ステップS26)。
【0139】
制御装置30は、対象物との距離を算出する(ステップS27)。
【0140】
制御装置30は、算出した対象物との距離を出力する(ステップS28)。
【0141】
投光装置10からの投光を継続する場合(ステップS29でYes)、ステップS21に戻る。一方、投光装置10からの投光を終了する場合(ステップS29でNo)、
図25のフローチャートに沿った工程を終了する。
【0142】
以上が、本実施形態の距離測定システムの動作例についての説明である。
【0143】
以上のように、本実施形態の距離測定システムは、ある投射領域において対象物を検出すると、その投射領域を絞り込む。その結果、本実施形態の距離測定システムによれば、第1の実施形態と比べて対象物の検出や距離測定をより精度よく行うことができる。
【0144】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態に係る距離測定システムの構成について図面を参照しながら説明する。
【0145】
図26は、本実施形態の距離測定システム4の構成を示すブロック図である。本実施形態の距離測定システム4は、第1の実施形態とは異なり、投光装置10、受光装置20および制御装置30に加えて、制御装置30が出力した解析結果を通知する通知装置40を備える。なお、距離測定システム4に関して、通知装置40以外の構成は第1の実施形態と同様であるため、通知装置40以外の構成に関する詳細な説明は省略する。
【0146】
通知装置40は、制御装置30に接続される。通知装置40は、制御装置30の解析結果を受信し、その解析結果を利用者に通知する。例えば、通知装置40は、ナビゲーションシステムの画面などの表示装置に解析結果を表示させて、利用者に解析結果を表示情報として通知する装置として構成できる。通知装置40は、対象物を検出したことや、対象物との距離、対象物の形状、対象物の位置などを表示情報として利用者に通知すればよい。例えば、通知装置40は、フロントガラスに表示情報を投影するヘッドアップディスプレイによって表示情報を表示させてもよい。
【0147】
図27は、解析結果を表示情報として通知する通知装置40の一例である表示装置41の概念図である。
図27は、制御装置30が出力した解析結果を表示装置41に表示する例である。表示装置41には、運転手が視認できる大きさや明るさの文字や画像を表示させればよい。例えば、表示装置41は、運転手から視認しやすいように、ダッシュボードやフロントガラスの隅などに設置すればよい。また、車両に搭載されたナビゲーションシステムの画面を表示装置41として用いてもよい。
【0148】
また、例えば、通知装置40は、解析結果を音声情報に変換して利用者に通知する装置として構成できる。通知装置40は、対象物を検出したことや、対象物との距離、対象物の形状、対象物の位置などを音声情報として利用者に通知すればよい。
【0149】
図28は、解析結果を音声情報として通知する通知装置40の一例であるスピーカ42の概念図である。
図28は、制御装置30が出力した解析結果をスピーカ42から流す例である。スピーカ42からは、運転手に聞き取りやすい音声を流せばよい。例えば、スピーカ42は、運転手が音声を聞き取りやすいように、ダッシュボードや座席近傍などに設置すればよい。また、車両に搭載された音声出力装置をスピーカ42として用いてもよい。
【0150】
また、例えば、通知装置40は、解析結果を振動に変換して利用者に通知する装置として構成できる。通知装置40は、対象物を検出したことや、対象物との距離が近いことなどを振動によって利用者に通知してもよい。また、通知装置40は、表示情報、音声情報および振動を任意に組み合わせて解析結果を通知するように構成してもよい。
【0151】
以上、本発明の実施形態及び実施例について説明した。しかしながら、本発明は、上述した各実施形態や実施例に記載した内容に限定されるものではなく、その構成及び動作は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0152】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下のようにも記載可能であるが、以下の構成には限られない。
(付記1)
位相変調型の空間光変調素子を有し、前記空間光変調素子の表示部に表示された位相分布に対応するパターンを形成させる投射光を少なくとも二つの投射領域に向けて投光する投光装置と、
前記投光装置によって投光された投射光によって形成されるパターンを含む領域を撮像する受光装置と、
前記投光装置からの投光を制御するとともに、前記受光装置によって撮像された撮像データを解析して前記投射領域における対象物の有無を前記投射領域ごとに検証し、検出された対象物との距離を計測する制御装置とを備える距離測定システム。
(付記2)
前記投光装置は、
前記空間光変調素子の表示部に向けて光を出射する光源と、
前記空間光変調素子の表示部によって反射された光を前記投射領域に向けて投射する投射光学系とを有し、
前記投射光学系は、
第1の投射領域に向けて第1の投射角で第1の投射光を投光する第1の光学系と、
第2の投射領域に向けて第2の投射角で第2の投射光を投光する第2の光学系とを含む付記1に記載の距離測定システム。
(付記3)
前記第1の投射領域は前記第2の投射領域よりも遠方に設定され、
前記第1の投射領域は前記第2の投射領域よりも小さく設定される付記2に記載の距離測定システム。
(付記4)
前記第2の光学系は、前記第2の投射角で投光するレンズを含む付記2または3に記載の距離測定システム。
(付記5)
前記第1の光学系は、前記第1の投射角で投光するレンズを含む付記4に記載の距離測定システム。
(付記6)
前記制御装置は、
前記空間光変調素子の表示部を構成する複数の表示領域を、前記第1の投射光によって形成されるパターンに対応する位相分布を表示させる第1の画素群と、前記第2の投射光によって形成されるパターンに対応する位相分布を表示させる第2の画素群とに割り当てて前記第1の画素群および前記第2の画素群に位相分布を表示させ、
前記投光装置は、
前記第1の画素群で反射された光を前記第1の光学系に導いて前記第1の投射光として投光し、前記第2の画素群で反射された光を前記第2の光学系に導いて前記第2の投射光として投光する付記2乃至5のいずれか一項に記載の距離測定システム。
(付記7)
前記投光装置は、
前記第1の投射領域および前記第2の投射領域とは異なる第3の投射領域に向けて第3の投射角で第3の投射光を投光する第3の光学系を含む付記2に記載の距離測定システム。
(付記8)
前記第1の投射領域は前記第3の投射領域よりも遠方に設定されるとともに、前記第3の投射領域は前記第2の投射領域よりも遠方に設定され、
前記第1の投射領域は前記第3の投射領域よりも小さく設定されるとともに、前記第3の投射領域は前記第2の投射領域よりも小さく設定される付記7に記載の距離測定システム。
(付記9)
前記第3の光学系は、前記第3の投射角で投光するレンズを含む付記8に記載の距離測定システム。
(付記10)
前記制御装置は、
前記空間光変調素子の表示部を構成する複数の表示領域を、前記第1の投射光によって形成されるパターンの位相分布を表示させる第1の画素群と、前記第2の投射光によって形成されるパターンの位相分布を表示させる第2の画素群と、前記第3の投射光によって形成されるパターンの位相分布を表示させる第3の画素群とに割り当て、
前記投光装置は、
前記第1の画素群で反射された光を前記第1の光学系に導いて前記第1の投射光として投光し、前記第2の画素群で反射された光を前記第2の光学系に導いて前記第2の投射光として投光し、前記第3の画素群で反射された光を前記第3の光学系に導いて前記第3の投射光として投光する付記7乃至9のいずれか一項に記載の距離測定システム。
(付記11)
前記制御装置は、
前記第1の投射光、前記第2の投射光および前記第3の投射光によって形成されるパターンの位相分布を前記空間光変調素子の表示部に異なるタイミングで表示させるように前記投光装置を制御し、
前記第1の投射光の反射光が入射する期間は前記第1の投射光の反射光を受光し、前記第2の投射光の反射光が入射する期間は前記第2の投射光の反射光を受光し、前記第3の投射光の反射光が入射する期間は前記第3の投射光の反射光を受光するように前記受光装置を制御する付記7乃至10のいずれか一項に記載の距離測定システム。
(付記12)
前記制御装置は、
前記投射領域においてスポット光を形成する位相分布を前記空間光変調素子の表示部に表示させ、前記投光装置から前記スポット光を投光させる制御をし、
前記受光装置が撮像した撮像データに含まれる前記スポット光を用いて対象物の検出および距離の計測を含む解析を行う付記1乃至11のいずれか一項に記載の距離測定システム。
(付記13)
前記制御装置は、
前記投射領域においてパターン光を形成する位相分布を前記空間光変調素子の表示部に表示させ、前記投光装置から前記パターン光を投光させる制御をし、
前記受光装置が撮像した撮像データに含まれる前記パターン光を用いて対象物の検出および距離の計測を含む解析を行う付記1乃至11のいずれか一項に記載の距離測定システム。
(付記14)
前記制御装置の解析結果を通知する通知装置を備える付記1乃至13のいずれか一項に記載の距離測定システム。
(付記15)
前記通知装置は、
前記制御装置の解析結果を表示情報によって通知する付記14に記載の距離測定システム。
(付記16)
前記通知装置は、
前記制御装置の解析結果を音声情報によって通知する付記14に記載の距離測定システム。
(付記17)
位相変調型の空間光変調素子の表示部に表示された位相分布に対応するパターンを形成させる投射光を少なくとも二つの投射領域に向けて投光し、
投光された投射光によって形成されるパターンを含む領域を撮像し、
撮像された撮像データを解析して前記投射領域における対象物の有無を前記投射領域ごとに検証し、
検出された対象物との距離を計測する距離測定方法。
(付記18)
位相変調型の空間光変調素子の表示部に表示された位相分布に対応するパターンを形成させる投射光を少なくとも二つの投射領域に向けて投光する処理と、
投光された投射光によって形成されるパターンを含む領域を撮像する処理と、
撮像された撮像データを解析して前記投射領域における対象物の有無を前記投射領域ごとに検証する処理と、
検出された対象物との距離を計測する処理とをコンピュータに実行させるプログラムを記録させたプログラム記録媒体。
【0153】
この出願は、2016年9月21日に出願された日本出願特願2016−184075を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。