特許第6784328号(P6784328)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6784328
(24)【登録日】2020年10月27日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】ドア制御装置
(51)【国際特許分類】
   B61D 19/02 20060101AFI20201102BHJP
   E05F 15/655 20150101ALI20201102BHJP
   E05B 47/00 20060101ALI20201102BHJP
   E05B 83/36 20140101ALI20201102BHJP
【FI】
   B61D19/02 V
   E05F15/655
   E05B47/00 M
   E05B83/36 A
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-516544(P2019-516544)
(86)(22)【出願日】2017年10月16日
(86)【国際出願番号】JP2017037427
(87)【国際公開番号】WO2019077666
(87)【国際公開日】20190425
【審査請求日】2019年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】藤田 憲司
(72)【発明者】
【氏名】北端 篤史
【審査官】 志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/120790(WO,A1)
【文献】 特開2012−176708(JP,A)
【文献】 特開2016−089406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 19/02 − 19/02
E05F 15/632 − 15/662
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアを開閉するための電動機を駆動する電動機制御部と、
前記ドアの閉状態を検出するドア閉状態検出部と、
閉指令に応じて前記電動機制御部によって前記電動機が駆動され、前記ドア閉状態検出部によって前記閉状態が検出されてから、所定の待ち時間が経過するまでの間で前記閉状態が検出されているか否かによらず、前記所定の待ち時間が経過したときに前記閉状態が検出されると、前記ドアの施錠装置を施錠状態にする施錠指令を出力する施錠指令出力部と
を含む、ドア制御装置。
【請求項2】
前記施錠指令出力部は、前記ドア閉状態検出部によって前記閉状態が検出されてから、前記所定の待ち時間にわたって前記閉状態が検出され続けると、前記ドアの施錠装置を施錠状態にする施錠指令を出力する、請求項1記載のドア制御装置。
【請求項3】
前記電動機制御部は、
前記閉指令が出力されると、前記ドア閉状態検出部によって前記閉状態が検出される前は、速度指令で前記電動機を駆動し、
前記ドア閉状態検出部によって前記閉状態が検出されると、前記ドアに挟まった異物を利用者が引き抜ける程度の所定の推力を表す推力指令で前記電動機を駆動して前記ドアを閉状態に保持する、請求項1又は2記載のドア制御装置。
【請求項4】
前記速度指令は、前記ドアの位置が前記閉状態から相対的に離れている場合、相対的に高く設定され、前記ドアの位置が前記閉状態から相対的に近い場合、相対的に低く設定される、
請求項3記載のドア制御装置。
【請求項5】
前記電動機制御部は、
前記閉指令が出力され、前記速度指令で前記電動機を駆動している間は推力が所定の最大値を上回らないように制限され、前記推力指令で前記電動機を駆動している間は速度が所定の最大値を上回らないように制限される、請求項3又は4記載のドア制御装置。
【請求項6】
前記所定の待ち時間は、前記閉状態が検出されてから、前記電動機の駆動による前記ドアの推力が所定の推力以下になるまでの時間、及び/又は、前記ドアの慣性力が所定の慣性力以下になるまでの時間を考慮した時間である、請求項1乃至5のいずれか一項記載のドア制御装置。
【請求項7】
ドアを開閉するための電動機を駆動する電動機制御部と、
前記ドアの閉状態を検出するドア閉状態検出部と、
閉指令に応じて前記電動機制御部によって前記電動機が駆動され、前記ドア閉状態検出部によって前記閉状態が検出されてから、所定の待ち時間が経過したときに前記閉状態が検出されると、前記ドアの施錠装置を施錠状態にする施錠指令を出力する施錠指令出力部と
を含
前記電動機制御部は、
前記閉指令が出力されると、前記ドア閉状態検出部によって前記閉状態が検出される前は、速度指令で前記電動機を駆動し、
前記ドア閉状態検出部によって前記閉状態が検出されると、前記ドアに挟まった異物を利用者が引き抜ける程度の所定の推力を表す推力指令で前記電動機を駆動して前記ドアを閉状態に保持し、
前記閉指令が出力され、前記速度指令で前記電動機を駆動している間は推力が所定の最大値を上回らないように制限され、前記推力指令で前記電動機を駆動している間は速度が所定の最大値を上回らないように制限される、ドア制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドア制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車輌の枠の中で直線に開閉する引戸に閉受動体とこれの開方向に位置する開受動体とを取付け、引戸を開閉する原動機の駆動突起を閉受動体と開受動体との間に位置させ、引戸の戸閉状態では駆動突起と閉受動体とが当接すると共に駆動突起と開受動体との間に間隙Xを保つ引戸の戸閉装置において、引戸に固定した引戸側ストッパと枠に取付けた固定側ストッパとを設け、両ストッパの一方を開閉方向と直角方向に出入可能に付勢して他方に係合可能にさせ、戸閉状態では、引戸側ストッパを固定側ストッパに対して隙Yで戸閉方向に位置させ、原動機に突起を設け、この突起の開方向の動きZで両ストッパのうちの出入可能なものを「入」方向に動かして係合を解除することを特徴とする引戸の戸閉装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−165635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1には、引戸同士の間、又は、引戸と枠の間に異物が挟まって引戸が閉じられている状態で、利用者が異物を引き抜き易くすることは開示されていない。
【0005】
そこで、引き抜き性の良好なドア制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の施形態のドア制御装置は、電動機によって開閉駆動されるドアを閉める閉指令に応じて前記電動機を駆動する電動機制御部と、前記ドアの閉状態を検出するドア閉状態検出部と、前記閉指令に応じて前記電動機制御部によって前記電動機が駆動され、前記ドア閉状態検出部によって前記閉状態が検出されてから、所定の待ち時間が経過するまでの間で前記閉状態が検出されているか否かによらず、前記所定の待ち時間が経過したときに前記閉状態が検出されると、前記ドアの施錠装置を施錠状態にする施錠指令を出力する施錠指令出力部とを含む。
また、本発明の他の実施形態のドア制御装置は、ドアを開閉するための電動機を駆動する電動機制御部と、前記ドアの閉状態を検出するドア閉状態検出部と、閉指令に応じて前記電動機制御部によって前記電動機が駆動され、前記ドア閉状態検出部によって前記閉状態が検出されてから、所定の待ち時間が経過したときに前記閉状態が検出されると、前記ドアの施錠装置を施錠状態にする施錠指令を出力する施錠指令出力部とを含み、前記電動機制御部は、前記閉指令が出力されると、前記ドア閉状態検出部によって前記閉状態が検出される前は、速度指令で前記電動機を駆動し、前記ドア閉状態検出部によって前記閉状態が検出されると、前記ドアに挟まった異物を利用者が引き抜ける程度の所定の推力を表す推力指令で前記電動機を駆動して前記ドアを閉状態に保持し、前記閉指令が出力され、前記速度指令で前記電動機を駆動している間は推力が所定の最大値を上回らないように制限され、前記推力指令で前記電動機を駆動している間は速度が所定の最大値を上回らないように制限される。
【発明の効果】
【0007】
引き抜き性の良好なドア制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】車両1のドア装置の回路構成を示す図である。
図2】車両1のドア80A、80B及び周辺の構成と動作を示す図である。
図3】車両1のドア80A、80B及び周辺の構成と動作を示す図である。
図4】ドア制御装置100がドア80A、80Bを閉じる動作を示すタイミングチャートである。
図5】ドア制御装置100がドア80A、80Bを閉じる動作を示すタイミングチャートである。
図6】ドア制御装置100がドア80A、80Bを閉じる動作を示すタイミングチャートである。
図7図4に示す動作の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のドア制御装置を適用した実施の形態について説明する。
【0010】
<実施の形態>
図1は、車両1のドア装置の回路構成を示す図である。ここで、車両1は、鉄道会社等が運行する列車の車両であり、モータ30によって駆動されるドアを含む。列車は、モータ30によって駆動されるドアを含めば、電車に限られない。図1には、ドアの開閉動作及び開閉制御に関する構成を示し、ドアの図示を省略する。
【0011】
車両1は、車両制御部10、ドア開閉操作部20、モータ30、エンコーダ31、電流センサ32A、32B、インバータ40、施錠装置50、DCS(Door Close Switch)60、DLS(Door Lock Switch)70、及びドア制御装置100を含む。
【0012】
車両制御部10は、車両1の運行制御を行う情報処理装置であり、複数の車両1を連結した列車の場合は、先頭の車両1の運転室と最後尾の車両1の車掌室とに1つずつ設けられる。車両制御部10には、ドア開閉操作部20の他に、車両1の運転操作を行う際に用いる操作レバー等が接続されるが、ここでは省略する。なお、車両1が1両編成で運行可能な車両である場合には、例えば、車両制御部10は、車両1の進行方向における両端に位置する運転室と車掌室とに1つずつ設けられる。
【0013】
車両制御部10は、車両1が駅等に停車しているときに、停車中であることを表す停車信号をドア制御装置100に出力する。また、車両制御部10は、ドア開閉操作部20から入力される戸開指令をドア制御装置100に出力する。
【0014】
また、車両制御部10には、インターロック信号を伝送する配線11が接続されている。配線11は、DCS60及びDLS70にループ状に接続されている。DCS60及びDLS70がともにオンの状態で、インターロック信号は、H(High)レベルになり、車両1は走行可能になる。
【0015】
ドア開閉操作部20には、ドアの開閉操作を行う際に用いる開スイッチ21A及び閉スイッチ21Bが設けられる。車両1の停車中に開スイッチ21Aが操作されると、ドア開閉操作部20は、H(High)レベルに立ち上がる戸開指令を車両制御部10に出力する。これにより、ドアが開かれる。また、閉スイッチ21Bが操作されると、ドア開閉操作部20は、L(Low)レベルに立ち下がる戸開指令を車両制御部10に出力する。これにより、ドアが閉じられる。Lレベルに立ち下がる戸開指令は、ドアを閉じる閉指令の一例である。
【0016】
モータ30は、ドアの開閉駆動を行う三相交流モータである。モータ30は、インバータ40を介してドア制御装置100によって駆動制御が行われる。モータ30は、電動機の一例である。
【0017】
エンコーダ31は、モータ30の回転軸の回転角度を検出することによって、モータ30の回転位置を検出し、回転位置を表す回転位置信号をドア状態検出部140に出力する。
【0018】
電流センサ32A、32Bは、電力ケーブル41Uと41Wに設けられており、インバータ40から電力ケーブル41U、41V、41Wを介してモータ30に供給される三相交流電流のうちのU相とW相の電流値を検出する。電流センサ32A、32Bによって検出される電流値は、電流検出部130に入力される。
【0019】
インバータ40は、車両1に搭載される電源装置から出力される直流電力を三相交流電力に変換し、電力ケーブル41U、41V、41Wを介してモータ30に供給する。インバータ40の入力側には、電源装置の出力側に接続される2本の電力ケーブルが接続されており、一例として、100Vの直流電力が供給される。
【0020】
施錠装置50は、車両1のドアの施錠を行う装置である。施錠装置50は、ピン51と、解錠用及び施錠用のコイル52A、52Bを有し、双方向自己保持型ソレノイド装置によって実現される。コイル52Aは、配線53A、53Bによって施錠駆動部160に接続され、コイル52Bは、配線54A、54Bによって施錠駆動部160に接続される。
【0021】
施錠装置50は、施錠駆動部160によってコイル52Aが通電されると、ピン51を施錠装置50の筐体50Aから突出(延出)させる。これにより、ドアのロックピンが移動し、ドアが解錠される。なお、施錠装置50は、自己保持型であるため、コイル52Aの通電が解除されてもピン51が筐体50Aから突出した状態を保持する。
【0022】
また、施錠装置50は、施錠駆動部160によってコイル52Bに通電されると、ピン51を施錠装置50の筐体50Aの内部に引き込む。これにより、ドアのロックピンが移動し、ドアが施錠される。車両1の走行中は施錠装置50によってドアが施錠(ロック)される。なお、施錠装置50は、自己保持型であるため、コイル52Bの通電が解除されてもピン51が筐体50Aに引き込んだ状態を保持する。また、ピン51は、筐体50Aの内部に完全には引き込まれず、先端は筐体50Aから少し飛び出ている。
【0023】
DCS60は、車両1のドアが閉じていることを検出するスイッチである。DCS60は、例えば、ドアが閉じる位置まで移動すると、ドアによって押圧されるリミットスイッチで構成される。
【0024】
DCS60は、端子61A1、61A2、61B1、61B2と、可動接点62とを有する。端子61A1、61A2は、車両制御部10にインターロック信号を伝送する配線11に直列に挿入されている。端子61B1、61B2は、ドア状態検出部140にDCS60のオン/オフの状態を表す信号を伝送する配線141に直列に挿入されている。
【0025】
可動接点62は、図中で上下方向に移動することによって、端子61A1及び61A2と、端子61B1及び61B2とのいずれか一方を導通する。DCS60は、リミットスイッチがドアによって押圧されると、端子61A1及び61A2が可動接点62によって導通した状態でオンになり、リミットスイッチがドアによって押圧されていないとき、図1に示すように端子61B1及び61B2が可動接点62によって導通した状態でオフになる。DCS60がオンとは、ドアが完全に閉じられていることを表す。
【0026】
DLS70は、車両1のドアが施錠されていることを検出するスイッチである。DLS70は、施錠装置50のピン51が筐体50Aの内部に引き込まれてドアのロックピンが施錠位置に移動すると、ロックピンによって押圧されるリミットスイッチで構成される。
【0027】
DLS70は、端子71A1、71A2、71B1、71B2と、可動接点72とを有する。端子71A1、71A2は、車両制御部10にインターロック信号を伝送する配線11に直列に挿入されている。端子71B1、71B2は、ドア状態検出部140にDLS70のオン/オフの状態を表す信号を伝送する配線142に直列に挿入されている。
【0028】
可動接点72は、図中で上下方向に移動することによって、端子71A1及び71A2と、端子71B1及び71B2とのいずれか一方を導通する。DLS70は、リミットスイッチがロックピンによって押圧されると、端子71A1及び71A2が可動接点72によって導通した状態でオンになり、リミットスイッチがロックピンによって押圧されていないとき、図1に示すように端子71B1及び71B2が可動接点72によって導通した状態でオフになる。
【0029】
DLS70は、施錠装置50のピン51が筐体50Aから突出した状態では、ドアの施錠を検出せず、オフの状態であるが、施錠装置50のピン51が筐体50Aの内部に引き込まれてドアが施錠されると、オンになる。
【0030】
なお、インターロック信号は、DCS60がオンになり(すなわち、ドアが閉じられ)、かつ、DLS70がオンになる(すなわち、ドアが施錠される)と、Hレベルになる。
【0031】
ドア制御装置100は、モータ制御部110、モータ駆動部120、電流検出部130、ドア状態検出部140、施錠制御部150、及び施錠駆動部160を有する。破線で囲むモータ制御部110、モータ駆動部120、及び施錠制御部150は、例えば、CPU(Central Processing Unit)チップのような情報処理部で実現することができる。
【0032】
モータ制御部110は、ドア状態検出部140から入力されるドア駆動指令、ドア位置指令に基づいて、モータ30を駆動する速度指令及び推力指令を生成する。速度指令及び推力指令は、モータ駆動部120に出力される。ドア駆動指令は、ドアを開く方向と閉じる方向のどちらにどの速度でモータ30を駆動するかを表す指令であり、モータ制御部110は、ドア駆動指令に応じてモータ30を回転させる方向と速度パターンを決定する。
【0033】
速度指令は、モータ30を速度で制御する指令であり、ドアを閉め始める際に高い速度に設定され、ある程度ドアが閉まったところで、低い速度に設定される。速度指令の高速側と低速側との切替は、後述するドア位置信号が表すドアの位置に応じてモータ制御部110によって行われる。
【0034】
推力指令は、ドアを開閉する際に、ドアに生じる推力の上限値を表す。ドア制御装置100は、ドアの推力を推力指令が表す上限値以下になるように、駆動制御を行う。推力指令は、ドアが閉まり始めてから完全に閉まるまで大きい値に設定され、ドアが完全に閉まると、小さい値に設定される。大きい値は、一例として500Nであり、小さい値は、ドアに挟まった異物を利用者が引き抜ける程度の所定の推力である。
【0035】
モータ駆動部120は、モータ制御部110から入力される速度指令及び推力指令と、電流検出部130から入力される電流値と、ドア状態検出部140から入力されるドア速度とに基づいて、モータ30を駆動するPWM(Pulse Width Modulation)駆動信号を生成し、インバータ40に出力する。
【0036】
PWM駆動信号のデューティは、速度指令でモータ30を駆動する際には、速度指令が表す速度とドア速度とが等しくなるように設定され、推力指令でモータ30を駆動する際には、推力指令が表す推力と、電流値によって得られるモータ30の推力とが等しくなるように設定される。
【0037】
電流検出部130は、電流センサ32A、32Bによって検出される電流値を表すデータをモータ駆動部120に出力する。図1では、電流値を表すデータを1本の線で示すが、電流センサ32A、32Bによって検出される電流値を表すデータは、別々にモータ駆動部120に出力される。
【0038】
ドア状態検出部140は、車両制御部10から入力される戸開指令及び停車信号との論理和で表されるドア駆動指令を生成し、モータ制御部110に出力する。ドア駆動指令は、ドアを開く方向と閉じる方向のどちらにどの速度でモータ30を駆動するかを表す。
【0039】
また、ドア状態検出部140は、エンコーダ31から入力されるモータ30の回転位置をドアの開閉方向における位置に換算し、ドアの位置を表すドア位置信号をモータ制御部110に出力する。
【0040】
また、ドア状態検出部140は、配線141、142を介してDCS60、DLS70のオン/オフの状態を検出する。ドア状態検出部140は、DCS60がオフのときはL(Low)レベルのDCS信号を出力し、DCS60がオンのときはH(High)レベルのDCS信号を出力する。DCS信号は、施錠制御部150に入力される。
【0041】
また、ドア状態検出部140は、DLS70がオフのときはL(Low)レベルのDLS信号を出力し、DLS70がオンのときはH(High)レベルのDLS信号を出力する。DLS信号は、施錠制御部150に入力される。
【0042】
施錠制御部150は、カウンタ151を有し、ドア状態検出部140からドア駆動指令、DCS信号、及びDLS信号が入力される。カウンタ151は、ドアを閉めることを表すドア駆動指令が入力されると、DCS信号がH(High)レベルになってから、Hレベルに保持されている時間をカウントする。施錠制御部150は、カウンタ151でカウントする時間が0.5秒に到達すると、施錠指令を施錠駆動部160に出力する。この結果、施錠駆動部160によって施錠装置50が施錠される。
【0043】
また、施錠制御部150は、ドアを開くことを表すドア駆動指令が入力されると、解錠指令を施錠装置50に出力する。この結果、施錠駆動部160によって施錠装置50が解錠される。
【0044】
施錠駆動部160は、制御部161と、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)162A、162Bを有する。施錠駆動部160の出力端子には、配線53A、53B、54A、54Bが接続されている。施錠駆動部160には、一例として、インバータ40と同様に100Vの直流電力が供給されており、施錠駆動部160は、配線53Aと54Aに100Vの電力を供給する。
【0045】
MOSFET162Aは、Nチャネル型のMOSFETであり、ゲートが制御部161に接続され、ドレインが配線53Bに接続され、ソースが接地されている。同様に、MOSFET162Bは、Nチャネル型のMOSFETであり、ゲートが制御部161に接続され、ドレインが配線54Bに接続され、ソースが接地されている。
【0046】
施錠駆動部160は、施錠制御部150から入力される解錠指令及び施錠指令に基づいて、MOSFET162A、162Bを駆動する。解錠指令がHレベルになると、施錠駆動部160は、MOSFET162Aをオンにする。この結果、施錠装置50のコイル52Aに通電され、ピン51が突出し、施錠装置50は解錠する。施錠指令がHレベルになると、施錠駆動部160は、MOSFET162Bをオンにする。この結果、施錠装置50のコイル52Bに通電され、ピン51が引き込まれ、施錠装置50は施錠する。
【0047】
図2及び図3は、車両1のドア80A、80B及び周辺の構成と動作を示す図である。まず、図2(A)を用いて、各部の構成について説明する。図2(A)には、ドア80A、80Bが完全に開かれて(全開の状態で)、施錠装置50が解錠されている状態を示す。
【0048】
ドア80A、80Bは、車両1の開口部1Aに設けられる両開き式の引き戸である。ドア80A、80Bは、互いに当接する部分に戸先ゴム81A、81Bをそれぞれ有する。戸先ゴム81A、81Bは、それぞれ、ドア80A、80Bの合わせ目の部分において、下端と上端との間に取り付けられている。ドア80A、80Bの上方には、モータ30が設けられている。モータ30の下にはDCS60が設けられている。
【0049】
ドア80Aには、上ラック210が取り付けられ、ドア80Bには下ラック220が取り付けられている。
【0050】
上ラック210は、ラック部211及び連結部212を有するL字型の部材である。ラック部211は、水平方向に渡される棒状の部材であり、下面にラック211Aが設けられる。ラック部211と連結部212はL字型に接続されている。このため、モータ30を回転させると、上ラック210が右又は左に移動され、ドア80Aが閉じる方向(右)又は開く方向(左)に移動する。
【0051】
ラック211Aは、モータ30によって駆動されるピニオンギアに係合される。連結部212は、ドア80Aの上端に上ラック210を連結する棒状の部材である。連結部212の下側の側面(図2中の右側の側面)には、当接部212Aが設けられている。ドア80A、80Bが閉じられると、当接部212AがDCS60の可動接点62に当接し、可動接点62を押圧する。これにより、DCS60はオンになる。
【0052】
下ラック220は、ラック部221、連結部222、延長部223を有し、ドア80Bに取り付けられる部材である。ラック部221は、水平方向に渡される棒状の部材であり、上面にラック221Aが設けられる。ラック221Aは、モータ30によって駆動されるピニオンギアに係合される。このため、モータ30を回転させると、下ラック220が右又は左に移動され、ドア80Bが開く方向(右)又は閉じる方向(左)に移動する。
【0053】
連結部222は、ドア80Bの上端に下ラック220を連結する棒状の部材であり、上端には傾斜部222Aを有する。延長部223は、連結部222に対してラック部221とは反対側で水平方向に延在する部分であり、ラック部221を延長したように水平方向に延在している。延長部223の上面にはラックは設けられておらず、ロックホール223Aが設けられている。
【0054】
ロックホール223Aは、延長部223の上面から下側に凹むように形成されている凹部である。ドア80A、80Bを施錠する際に、ロックホール223Aには、ロックピン230のピン部231の下端が挿入される。
【0055】
ロックピン230は、縦方向に延在するピン部231と、ピン部231の上部に接続され、水平方向に延在する延在部232とを有する。ロックピン230は、施錠装置50が解錠されてピン51が上方向に突出すると、延在部232が上方向に持ち上げられる。この状態では、ピン部231の下端は、傾斜部222Aよりも上方に位置し、ロックホール223Aに係合することはない。ピン部231の下端は、傾斜部222Aよりも上方に位置するため、ドア80A、80Bは左右方向(開閉方向)に移動可能な状態になる。
【0056】
ドア80A、80Bが完全に閉じられた状態で、施錠装置50が施錠されてピン51が引っ込むと、延在部232が下がり、ピン部231の下端がロックホール223Aに係合する。これにより、ドア80A、80Bは施錠される。
【0057】
次に、図2(A)に示すように、ドア80A、80Bが完全に開かれて(全開の状態で)、施錠装置50が解錠されている状態から、図2(B)及び図3(A)、(B)、(C)に示すように、ドア80A、80Bが徐々に閉じられて行くときの動作について説明する。
【0058】
図2(A)に示すドア80A、80Bが全開の状態から、モータ30がドア80A、80Bを閉じる方向に回転されてドア80A、80Bが徐々に閉じられて行くと、図2(B)及び図3(A)の状態を経て、図3(B)に示すようにドア80A、80Bが閉じられる。
【0059】
図2(B)及び図3(A)の状態では、DCS60及びDLS70は、ともにオフである。図3(B)に示すように、ドア80A、80Bが完全に閉じられると、当接部212AがDCS60の可動接点62に当接し、可動接点62が押圧されてDCS60がオンになる。ただし、図3(B)の状態では、施錠装置50は解錠された状態であり、DLS70はオフである。
【0060】
ドア制御装置100は、図3(B)の状態(DCS60がオンでDLS70がオフの状態)では、ドア80A、80Bを閉じる方向にモータ30を駆動し、ドア80A、80Bを互いに押し付け、DCS60がオンになってから0.5秒間待機する。この0.5秒間は、所定の待ち時間の一例である。
【0061】
ドア80A、80Bは、上側で吊られており、閉じる際には、ドア80A、80Bに働く慣性力によって、上側よりも下側に遅れが生じ、ドア80A、80Bが傾く。この傾きが無くなるまでには、ドア80A、80Bに働く慣性力が略ゼロになるまでに必要な時間を要する。
【0062】
また、戸先ゴム81A、81Bが当接した状態で、モータ30の駆動力を一定に保ってドア80A、80Bを閉じた状態を保持するが、ドア80A、80Bが閉まろうとする推力が所定の指令値に安定になるまでには、ドア80A、80Bが閉まってDCS60がオンになってから所定の時間を要する。
【0063】
ドア制御装置100は、ドア80A、80Bに働く慣性力が略ゼロになるまでに必要な時間と、ドア80A、80Bの推力が所定の指令値に安定になるまでに必要な時間とを考慮して、図3(B)に示す状態で、0.5秒間(待ち時間)だけ待機する。
【0064】
また、ドア制御装置100は、DCS60がオンになると、モータ30の駆動に用いる駆動指令を速度指令から推力指令に切り替える。速度指令のときは、推力制限値を表す推力指令が500Nに設定され、閉め始めは高速でドア80A、80Bを閉め、閉じる直前に速度を低下させているが、DCS60がオンになると、ドア80A、80Bに挟まった異物を利用者が引き抜ける程度の所定の推力に低下させる。
【0065】
そして、DCS60がオンになってから0.5秒が経過したときに、図3(C)に示すように、施錠装置50を施錠することとしている。施錠装置50が施錠されると、ピン51が筐体50Aの内部に引き込まれ、ロックピン230が低下し、DLS70の可動接点72が押圧され、DLS70がオンになる。
【0066】
以上のように、待ち時間の間は、施錠装置50を施錠せずに解錠した状態で、比較的小さいモータ30の駆動力でドア80A、80Bを閉じた状態に保持している。
【0067】
従って、ドア80A、80Bが閉じる際に、戸先ゴム81A、81Bの間に異物(例えば、利用者の鞄又は傘等の手回り品)を挟んでも、利用者が異物を比較的容易に引き抜くことができる。
【0068】
また、施錠装置50を施錠せずに解錠した状態で待機するため、待ち時間が経過する前にドア80A、80Bが再び開いてDCS60がオフになっても、再び0.5秒間の待ち時間の経過を待てば、施錠装置50を施錠できるため、ラッシュ時等において車両1を早期に出発させることができ、ダイヤの遅れを抑制することができる。
【0069】
図4乃至図6は、ドア制御装置100がドア80A、80Bを閉じる動作を示すタイミングチャートである。図4乃至図6において、横軸は時間を表し、縦軸には、戸開指令、停車信号、戸閉動作、DSC信号、DLS信号、速度指令、推力指令、カウンタ出力、施錠指令、解錠指令、ドア位置、ドア速度を示す。
【0070】
戸開指令は、Hレベルへの立ち上がりがドアを開く戸開指令であり、Lレベルへの立ち下がりがドアを閉じる戸開指令である。停車信号は、車両1が停車している際にHレベルになり、走行している際にLレベルになる。戸閉動作は、戸開指令がLレベルになってから、DLS信号がHレベルになるまでHレベルであり、それ以外のときはLレベルである。
【0071】
DSC信号は、HレベルがDCS60がオンにされていることを表し、LレベルがDCS60がオフにされていることを表す。DLS信号は、HレベルがDLS70がオンにされていることを表し、LレベルがDLS70がオフにされていることを表す。
【0072】
速度指令は、ドアを閉め始める際に高い速度(高)に設定され、ある程度ドアが閉まったところで、低い速度(低)に設定され、モータ30が推力指令で駆動される際には最小値(MIN(Minimum)に設定される。
【0073】
推力指令は、ドア80A、80Bが閉まり始めてからDCS60がオンになるまでは大きい値に設定され、ドアが完全に閉まると、小さい値に設定される。大きい値は、一例として500Nであり、小さい値は、ドアに挟まった異物を利用者が引き抜ける程度の所定の推力である。なお、小さい値よりも下に破線で示すレベルがゼロである。カウンタ出力は、カウンタ151がカウントする時間が0.5秒の待ち時間に到達したときにカウンタ151が出力するHレベルのパルス信号を示すものである。
【0074】
施錠指令は、Hレベルへの立ち上がりが解錠された状態から施錠する施錠指令を表す。施錠指令のHレベルのパルスは、所定時間経過後にLレベルに立ち下がる。Lレベルへの立ち下がりは、施錠駆動部160への指令を表すものではない。解錠指令は、Hレベルへの立ち上がりが施錠された状態から解錠する解錠指令を表す。
【0075】
ドア位置は、ドア80A、80Bの位置を全開と全閉との間で示す。ドア速度は、ドア80A、80Bが閉じる際の実際のドアの速度を表す。
【0076】
図4は、戸閉動作中にドア80A、80Bのこじ開けがなかった場合のタイミングチャートである。
【0077】
図4に示すように、時刻t0では、車両1が停車中でドア80A、80Bは全開で静止しており、施錠装置50は解錠されているため、戸開指令はHレベル、停車信号はHレベル、戸閉動作はLレベル、DSC信号はLレベル、DLS信号はLレベル、速度指令はMIN、推力指令は高、カウンタ出力はLレベル、施錠指令はLレベル、解錠指令はLレベル、ドア位置は全開、ドア速度は0である。
【0078】
時刻t1では、戸開指令がLレベルに立ち下がり、戸閉動作がHレベルになり、速度指令は高に向かって立ち上がり、ドア位置は全開から閉まる方向に動き出し、ドア速度は速度指令に遅れて立ち上がっている。
【0079】
時刻t2では、ドア80A、80Bの位置に応じて速度指令が高から低に切り替わり、ドア速度は速度指令に遅れて低下し始める。
【0080】
時刻t3では、ドア80A、80Bが閉じることによってDCS信号がオンになり、DCS信号のオンに伴って速度指令がMINに低下するとともに推力指令が低に低下する。これは、モータ30の駆動が速度指令から推力指令に切り替わったことを表している。また、DCS信号がオンになることにより、施錠制御部150のカウンタ151が待ち時間のカウントを開始する。また、ドア位置は全閉になり、ドア速度は時刻t3より少し遅れて0に低下する。
【0081】
時刻t4では、待ち時間に到達し、カウンタ出力にHレベルのパルスが生じ、施錠指令がHレベルに立ち上がる。なお、時刻t3から時刻t4までの時間は0.5秒である。
【0082】
時刻t5では、DLS信号がHレベルに立ち上がり、戸閉動作がLレベルに立ち下がる。DLS信号のHレベルへの立ち上がりは、時刻t4における施錠指令のHレベルへの立ち上がりによって生じた動作である。
【0083】
時刻t6では、停車信号がLレベルに立ち下がる。すなわち、車両1が発車している。
【0084】
図5は、戸閉動作中にドア80A、80Bのこじ開けが1回行われた場合のタイミングチャートである。図5に示すように、時刻t0では、図4に示す時刻t0と同じ状態である。また、時刻t11から時刻t13は、図4に示す時刻t1から時刻t3と同一である。
【0085】
時刻t14では、待ち時間に到達する前に、DCS信号がLレベルになる。これは、例えば、DCS60がオフになる程度までドア80A、80Bがこじ開けられたような場合が相当する。なお、待ち時間は時刻t15までであり、時刻t15にカウンタ出力にHレベルのパルスが生じる。
【0086】
時刻t16では、ドア80A、80Bのこじ開け状態が解消してDCS信号が再びHレベルに立ち上がり、カウンタ151がカウントを開始する。なお、カウンタ151が再度カウントする際には、カウント時間はリセットされる。
【0087】
時刻t17で待ち時間に到達し、カウンタ出力にHレベルのパルスが生じ、施錠指令がHレベルに立ち上がる。なお、時刻t16から時刻t17までの時間は0.5秒である。
【0088】
時刻t18では、DLS信号がHレベルに立ち上がり、戸閉動作がLレベルに立ち下がる。DLS信号のHレベルへの立ち上がりは、時刻t17における施錠指令のHレベルへの立ち上がりによって生じた動作である。
【0089】
時刻t19では、停車信号がLレベルに立ち下がる。すなわち、車両1が発車している。
【0090】
図6は、戸閉動作中にドア80A、80Bのこじ開けが2回続けて行われた場合のタイミングチャートである。
【0091】
図6に示すように、時刻t0から時刻t26の動作は、図5に示す時刻t0から時刻t16の動作と同一である。
【0092】
時刻t27では、2度目の待ち時間に到達する前に、再度DCS信号がLレベルになる。なお、待ち時間は時刻t28まであり、時刻t28にカウンタ出力にHレベルのパルスが生じる。
【0093】
時刻t29では、ドア80A,80Bがこじ開けられて、DCS信号が再びHレベルに立ち上がり、カウンタ151がカウントを開始する。なお、カウンタ151が再度カウントする際には、カウント時間はリセットされる。
【0094】
時刻t30で待ち時間に到達し、カウンタ出力にHレベルのパルスが生じ、施錠指令がHレベルに立ち上がる。なお、時刻t29から時刻t30までの時間は0.5秒である。
【0095】
時刻t31では、DLS信号がHレベルに立ち上がり、戸閉動作がLレベルに立ち下がる。DLS信号のHレベルへの立ち上がりは、時刻t30における施錠指令のHレベルへの立ち上がりによって生じた動作である。
【0096】
時刻t32では、停車信号がLレベルに立ち下がる。すなわち、車両1が発車している。
【0097】
以上、図4に示すように、ドア80A、80Bが閉じてから待ち時間にわたってドア80A、80Bが閉じられている場合に、施錠装置50を施錠する。また、待ち時間のカウントを始めると、モータ30の駆動を速度指令から推力指令に切り替わり、推力指令の値がドア80A、80Bに挟まった異物を利用者が引き抜ける程度の所定の推力に低下される。
【0098】
また、図5に示すように、ドア80A、80Bが閉じてから待ち時間の間にドア80A、80Bが少し開けられても、再度待ち時間をカウントし、待ち時間の間にわたってドア80A、80Bが閉じられている場合に、施錠装置50を施錠する。また、待ち時間のカウントを始めると、モータ30の駆動を速度指令から推力指令に切り替わり、推力指令の値がドア80A、80Bに挟まった異物を利用者が引き抜ける程度の所定の推力に低下される。
【0099】
また、図6に示すように、ドア80A、80Bが閉じてから待ち時間の間にドア80A、80Bが2度にわたって少し開けられても、再度待ち時間をカウントし、待ち時間の間にわたってドア80A、80Bが閉じられている場合に、施錠装置50を施錠する。また、待ち時間のカウントを始めると、モータ30の駆動を速度指令から推力指令に切り替わり、推力指令の値がドア80A、80Bに挟まった異物を利用者が引き抜ける程度の所定の推力に低下される。
【0100】
このように、ドア80A、80Bが閉じると、モータ30の駆動を速度指令による制御から推力指令による制御に切り替えるとともに、推力指令を利用者が異物を利用者が引き抜ける程度に低くしている。
【0101】
これは、ドア80A、80Bが閉じる際に、戸先ゴム81A、81Bの間に異物(例えば、利用者の鞄又は傘等の手回り品)を挟んでも、利用者が異物を比較的容易に引き抜くことができるようにするためである。
【0102】
そして、ドア80A、80Bが閉じてから待ち時間にわたってドア80A、80Bが閉じられている場合に、施錠装置50を施錠する。
【0103】
従って、引き抜き性の良好なドア制御装置100を提供することができる。
【0104】
また、施錠装置50を施錠せずに解錠した状態で待機するため、待ち時間が経過する前にドア80A、80Bが再び開いてDCS60がオフになっても、再び0.5秒間の待ち時間の経過を待てば、施錠装置50を施錠できるため、ラッシュ時等において車両1を早期に出発させることができ、ダイヤの遅れを抑制することができる。
【0105】
従来のドア制御装置では、DCS60がオンになると、すぐに施錠装置50を施錠する方式を採用しているものがある。このようなドア制御装置では、利用者が異物を引き抜こうとしても、施錠装置50によってドア80A、80Bが施錠されているため、異物を引き抜くことが困難な場合があった。すなわち、引き抜き性が良好ではなかった。また、ドア80A、80Bを再度開く際には、施錠装置50を解錠する必要があるため、一連の動作に掛かる時間が長くなり、発車が遅れる要因になる場合があった。
【0106】
これに対して、実施の形態のドア制御装置100は、良好な引き抜き性の実現と、素早い動作とを両立することができる。
【0107】
なお、以上では、ドア80A、80Bに働く慣性力が略ゼロになるまでに必要な時間と、ドア80A、80Bの推力が所定の指令値に安定するまでに必要な時間とを考慮して、0.5秒間の待ち時間を設定する形態について説明した。しかしながら、待ち時間は、ドア80A、80Bに働く慣性力が略ゼロになるまでに必要な時間と、ドア80A、80Bの推力が所定の指令値に安定するまでに必要な時間とのいずれか一方を考慮したものであってもよい。
【0108】
また、以上では、待ち時間を0.5秒に設定したが、待ち時間は0.5秒に限られるものではなく、ドア80A、80Bの重量やモータ30、モータ駆動部120とモータ制御部110の応答性等を考慮して、適切な値に設定すればよい。
【0109】
また、以上では、速度指令でモータ30の駆動制御を行っている間は推力指令を500Nに設定する形態について説明したが、500Nに限られるものではなく、適切な値に設定すればよい。また、速度指令でモータ30の駆動制御を行っている間は推力指令の値を設定せずに、速度指令による制御モードと、推力指令による制御モードとを切り替えるようにしてもよい。推力指令の値を設定しないことは、推力指令を上限値に制限しないことと同義である。
【0110】
また、以上では、両開き式の引き戸であるドア80A、80Bの開閉制御を行う形態について説明したが、ドア80A、80Bの代わりに1枚の引き戸の開閉制御を行ってもよい。
【0111】
また、以上では、DCS信号がHレベルに立ち上がってから、待ち時間にわたってDCS信号がHレベルであり続けた場合に、施錠装置50を施錠する形態について説明したが、次のようにしてもよい。
【0112】
図7は、図4に示す動作の変形例を示す図である。図7では、時刻t3でDCS信号がHレベルになった後で、待ち時間が経過する時刻t4の前の時刻t3Aから時刻t3BにかけてDCS信号がLレベルに低下している。
【0113】
このような場合に、待ち時間の間に、瞬間的にドア80A、80Bが開けられた程度であれば、ドア80A、80Bが開けられた量もごく僅かであり、待ち時間が経過する時刻t4の時点で再びDCS信号がHレベルであれば、施錠を行うようにしてもよい。
【0114】
すなわち、DCS信号がHレベルに立ち上がってから、待ち時間の経過時にDCS信号がHレベルである場合に、施錠装置50を施錠するようにしてもよい。
【0115】
以上、本発明の例示的な実施の形態のドア制御装置について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0116】
1 車両
10 車両制御部
20 ドア開閉操作部
30 モータ
31 エンコーダ
32A、32B 電流センサ
40 インバータ
50 施錠装置
60 DCS
70 DLS
100 ドア制御装置
110 モータ制御部
120 モータ駆動部
130 電流検出部
140 ドア状態検出部
150 施錠制御部
160 施錠駆動部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7