特許第6784329号(P6784329)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6784329-ポリイミドフィルムと無機基板の積層体 図000007
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6784329
(24)【登録日】2020年10月27日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】ポリイミドフィルムと無機基板の積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/34 20060101AFI20201102BHJP
【FI】
   B32B27/34
【請求項の数】7
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2019-522170(P2019-522170)
(86)(22)【出願日】2018年5月24日
(86)【国際出願番号】JP2018020016
(87)【国際公開番号】WO2018221374
(87)【国際公開日】20181206
【審査請求日】2020年9月7日
(31)【優先権主張番号】特願2017-105417(P2017-105417)
(32)【優先日】2017年5月29日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2017-105414(P2017-105414)
(32)【優先日】2017年5月29日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】特許業務法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 全広
(72)【発明者】
【氏名】奥山 哲雄
(72)【発明者】
【氏名】土屋 俊之
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 直樹
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼田 桂也
(72)【発明者】
【氏名】原 彰太
【審査官】 斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/031746(WO,A1)
【文献】 特開2013−010342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 − 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミドフィルムと無機基板の積層体において、少なくとも(a)または(b)の条件を満たすことを特徴とするポリイミドフィルムと無機基板の積層体。
(a)ブリスター欠点の個数密度50個/平方メートル以下であり、ブリスターの平均高さが2μm以下であり、ブリスター個数密度(個/平方メートル)とブリスターの平均高さ(μm)との積が20以下であること。
(b)ポリイミドフィルムと無機基板の積層体において、高さ3μm以上のブリスター個数が10個/平方mであること。
【請求項2】
面積が0.157平方メートル以上であることを特徴とする請求項1記載のポリイミドフィルムと無機基板の積層体。
【請求項3】
前記ブリスターが、内部に炭化物粒子を内包する事を特徴とする請求項1または請求項2に記載のポリイミドフィルムと無機基板の積層体。
【請求項4】
前記ポリイミドフィルムと無機基板の間に、厚さ5nm〜500nmのシランカップリング剤縮合物層が存在する事を特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のポリイミドフィルムと無機基板の積層体。
【請求項5】
ポリイミドフィルムと無機基板を積層体した後、350℃以上600℃未満の温度で熱処理することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のポリイミドフィルムと無機基板の積層体の製造方法。
【請求項6】
ポリイミドフィルムと無機基板を積層体した後、350℃以上600℃未満の温度で熱処理し、 熱処理後に10℃/分以上、90℃/分以下の速度で少なくとも200℃まで冷却することを特徴とする請求項5に記載のポリイミドフィルムと無機基板の積層体の製造方法。
【請求項7】
ポリイミドと無機基板を積層する前工程として、あらかじめオゾンにて処理された超純水にてポリイミドフィルムを洗浄することを特徴とする請求項5または6に記載のポリイミドフィルムと無機基板の積層体の製造方法。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ポリイミドフィルムと、ガラスなどの無機基板との積層体に関し、さらに詳しくは、ポリイミドフィルムを無機基板に積層することにより、フレキシブルなポリイミドフィルムを仮支持し、ポリイミドフィルム上に電子デバイスなどの機能素子を製造加工した後に無機基板からポリイミドフィルムを剥離することにより、ポリイミドフィルムを基板とするフレキシブルな機能素子を製造するために用いられるポリイミドフィルムと無機基板の積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子、MEMS素子、ディスプレイ素子、ウェアラブルセンサーなど機能素子の軽量化、小型・薄型化、フレキシビリティ化を目的として、高分子フィルム上にこれらの素子を形成する技術開発が活発に行われている。すなわち、情報通信機器(放送機器、移動体無線、携帯通信機器等)、レーダーや高速情報処理装置などといった電子部品の基材の材料としては、従来、耐熱性を有し且つ情報通信機器の信号帯域の高周波数化(GHz帯に達する)にも対応し得るセラミックが用いられていたが、セラミックはフレキシブルではなく薄型化もしにくいので、適用可能な分野が限定されるという欠点があったため、最近は高分子フィルムが基板として用いられている。
【0003】
機能素子を高分子フィルム表面に形成するにあたっては、高分子フィルムの特性であるフレキシビリティを利用した、いわゆるロール・ツー・ロールプロセスにて加工することが理想とされている。しかしながら、半導体産業、MEMS産業、ディスプレイ産業等の業界では、これまでウエハベースまたはガラス基板ベース等のリジッドな平面基板を対象としたプロセス技術が構築されてきた。そこで、既存インフラを利用して機能素子を高分子フィルム上に形成するために、高分子フィルムを、例えばガラス板、セラミック板、シリコンウエハ、金属板などの無機物からなるリジッドな支持体に貼り合わせ、その上に所望の素子を形成した後に支持体から剥離するというプロセスが用いられている。
【0004】
一方で機能素子に用いられる導体材料、絶縁体材料、半導体材料などを高分子フィルム状に形成するに際しては、真空薄膜法、厚膜方などが用いられ、形成プロセスにて加熱されることが多い。一般にこれらの材料は高温プロセスを用いた方が良好な特性を発現する。従って高分子フィルムを無機物からなる支持体に貼り合わせた状態で、耐熱性を有することが求められる。しかしながら、多くの場合、高分子フィルムを支持体に接着材を用いて貼り付けた場合、接着材の耐熱性が低いために工程上の支障が生じることが多い。
【0005】
高分子フィルムを無機基板に貼り付ける耐熱接着手段が乏しいため、かかる用途においては、高分子溶液または高分子の前駆体溶液を無機基板上に塗布して支持体上で乾燥・硬化させてフィルム化し、当該用途に使用する技術が知られている。さらに剥離を容易とするために、複数の層を形成して、一部を犠牲層的に用いる技術、あるいは接着/剥離機能と、フィルム物性とを機能分離させる技術などが提案されている(特許文献1〜3)。
かかる手段により得られる高分子フィルムは、脆く裂けやすいため、高分子フィルム表面に形成された機能素子は支持体から剥離する際に破壊してしまう場合が多い。特に支持体から大面積のフィルムを剥離するのは極めて難しく、およそ工業的に成り立つ収率を得ることはできない。このような事情に鑑み、機能素子を形成するための高分子フィルムと支持体との積層体として、耐熱性に優れ強靭で薄膜化が可能なポリイミドフィルムを、シランカップリング剤を介して無機物からなる支持体(無機層)に貼り合わせてなる積層体が提案されている(特許文献4〜5)。
【0006】
これらの積層体の高分子フィルム面には現実的には種々の欠点が存在し、機能性素子製造の収率を落としている。高分子フィルムそのものにキズなどの欠点がある場合には高分子フィルムの品位を改善する必要がある。高分子フィルムの表面に異物が付着している場合には、工程のクリーン化と同時に高分子フィルム表面のクリーニングを行う事で対応が可能である。しかしながら、高品位の高分子フィルムを用い、さらにクリーニングを行っても、なお、高分子フィルム面に欠点が残り、機能性素子製造の収率が向上しない事が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開 2016−120629号公報
【特許文献2】特開 2016−120630号公報
【特許文献3】特許 4834758号公報
【特許文献4】特開2010−283262号公報
【特許文献5】特開2011−11455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者等は、製造収率を改善すべく、鋭意検討した結果、機能性素子の製造収率を落としている一つの原因が、ブリスターにあることを見出した。高分子フィルムを表面平滑でリジッドな無機基板(以下、無機基板の代表事例としてガラス板を用いた場合について主に説明する。)に貼り合わせる際に、高分子フィルムとガラス板の間に異物が挟まった場合、異物を支柱として高分子フィルムの一部がガラス板からテント状に浮き上がり、高分子フィルムとガラス板との間に空隙が生じ、フィルム表面が凸となる欠点が生じる。この種の欠点がブリスター欠点である(単にブリスター、あるいはバブル、ウキ、気泡と呼ばれることもある。)。
高分子フィルムと無機基板を比較的厚い接着剤層を介して貼り合わせる場合には、異物が接着材層に埋没してしまうために、比較的ブリスターは生じにくい。しかしながら、接着材層が薄い場合、特に異物の高さが接着材層よりも大なる場合にはブリスターが発生してしまう。
【0009】
本発明者等は、貼り合わせ前の高分子フィルムとガラス板(無機基板)表面のクリーニング(洗浄)を行う事により、ブリスターを低減することができた。しかしながら、洗浄を念入りに行っても、ブリスターの発生を根絶するには至らなかった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは前記課題を解決するために鋭意検討した結果、高分子フィルム上と無機物からなる支持体との積層体において、接着層が薄い場合、ないし接着層が実質的に存在しない場合においてもブリスターの発生が抑制され、高い製造収率を実現する事が出来る処方を見出し本発明に到達した。
【0011】
すなわち本発明は以下の構成を有する。
[1] ポリイミドフィルムと無機基板の積層体において、少なくとも(a)または(b)の条件を満たすことを特徴とするポリイミドフィルムと無機基板の積層体。
(a)ブリスター欠点の個数密度50個/平方メートル以下であり、ブリスターの平均高さが2μm以下であり、ブリスター個数密度(個/平方メートル)とブリスターの平均高さ(μm)との積が20以下であること。
(b)ポリイミドフィルムと無機基板の積層体において、高さ3μm以上のブリスター個数が10個/平方mであること。
[2] 面積が0.157平方メートル以上であることを特徴とする[1]記載のポリイミドフィルムと無機基板の積層体。
[3] 前記ブリスターが、内部に炭化物粒子を内包する事を特徴とする[1]または[2]に記載のポリイミドフィルムと無機基板の積層体。
[4] 前記ポリイミドフィルムと無機基板の間に、厚さ5nm〜500nmのシランカップリング剤縮合物層が存在する事を特徴とする[1]から[3]のいずれかに記載のポリイミドフィルムと無機基板の積層体。
[5] ポリイミドフィルムと無機基板を積層体した後、350℃以上600℃未満の温度で熱処理することを特徴とする[1]から[4]のいずれかに記載のポリイミドフィルムと無機基板の積層体の製造方法。
[6] ポリイミドフィルムと無機基板を積層体した後、350℃以上600℃未満の温度で熱処理し、 熱処理後に10℃/分以上、90℃/分以下の速度で少なくとも200℃まで冷却することを特徴とする[5]に記載のポリイミドフィルムと無機基板の積層体の製造方法。
[7] ポリイミドと無機基板を積層する前工程として、あらかじめオゾンにて処理された超純水にてポリイミドフィルムを洗浄することを特徴とする請求項5または6に記載のポリイミドフィルムと無機基板の積層体の製造方法。
【0012】
本発明では、さらに以下の構成を有する事が好ましい。
[8] 前記冷却時に、ポリイミドフィルムと無機基板の積層体の無機基板側を、温度が180℃以下の金属板に接触させることにより冷却することを特徴とする[5]から[7]のいずれかに記載のポリイミドフィルムと無機基板の積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
ブリスターの原因となる異物は多種多様である。異物は環境中に存在する無機物、有機物であり、フィルムないし無機基板に静電気などにより付着する。一般に無機物については洗浄などで比較的容易に除去が可能である。ポリイミドフィルムの表面に付着する有機異物の種類において特徴的である物質はポリイミドの粒子である。かかるポリイミドの粒子はポリイミドフィルムの製造工程ないしスリット工程等にて発生するものと推定される。かかるポリイミドに起因する異物は無機物と同様に洗浄により比較的容易に除去が可能である。
しかしながら、粘着剤や環境由来の有機異物、生体由来の異物などは比較的柔軟であり、場合によっては粘着性を有するため単純な洗浄処理で完全に除去することは難しい。一方で、そのような柔軟性、粘着性を有する有機物は、本発明で用いるポリイミドフィルムおよび無機基板に比較し耐熱性に劣り、高温前処理にて熱分解させることによる除去ができると考えられる。
しかしながら実際の行程でそのような前処理行程を設ける事は加熱から冷却による製造時間の延長、ならびに、新たな異物付着ないしハンドリングに伴うキズの生成などのリスクが高く非現実的である。
【0014】
本発明は、フィルムと無機基板とを貼り合わせ後に、所定の条件にて熱処理を行う事により、フィルムと無機基板間に有機物異物が存在した場合でもブリスターの高さを低減し、実用的に問題にならないレベルに改善させたことが特徴である。すなわち、本発明の効果は、内部に異物を有するブリスターであっても、内部の異物が炭化物である場合にブリスターの高さが低く、歩留まりの低下を最低限に抑えることが出来る点であり、また、問題となる高さを有する有機異物内包ブリスターを特定の処理方法により炭化物異物内包ブリスターに変換し、ブリスターの高さを問題とならないレベルに低減させることができるところにある。
【0015】
本発明では、特に熱処理後の冷却速度を所定の範囲に制御することにより、さらに本発明の効果を顕著にすることが出来る。すなわち、特定速度で冷却することにより、有機物の分解ガスで膨らんだブリスターを速やかに収縮させることができる。冷却速度が不必要に長い場合には、ブリスターが十分に収縮する前に、高温で低下していたポリイミドフィルムの弾性率が元の値に戻り、ポリイミドフィルムそのものの形状保持性が高まるためにブリスターの高さを十分に低減することが出来なくなる場合が生じる。
サイズの大きな基板では加熱速度、冷却速度に斑が生じやすい。本発明では特に冷却速度の斑を小さくすることが肝要である。したがって本発明では冷却時に積層体を高比熱の物質、例えば金属板などに直接接触させることにより冷却することが好ましい。
【0016】
また本発明ではさらに好ましい態様として、あらかじめオゾン処理を行った超純水で、積層前のポリイミドフィルムを洗浄することにより十分な効果を得ることができる。すなわちブリスターの原因は有機異物から発生する分解ガスである。あらかじめオゾン処理により有機物を分解除去した超純水によってポリイミド表面を洗浄することにより、もともと付着していたであろう有機異物を洗浄除去できると同時に、洗浄液そのものに含まれていた有機異物についてもオゾン処理により分解し低分子化されることから、固形物の再付着が抑制され、結果として異物密度を大幅に低減することができる。
オゾン処理は、例えばオゾナイザー等にて生成させた含オゾンクリーンエアに洗浄水を曝気する事により行うことができる。本発明では洗浄水中のオゾン濃度が3ppm以上、好ましくは6ppm以上、なお好ましくは9ppm以上、さらに好ましくは20ppm以上とする事が好ましい。オゾン濃度の上限は特に制限されないが、概ね200ppm程度である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明のポリイミドフィルムと無機基板の積層体におけるブリスターの概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の積層体においては支持基板として無機基板を用いる。無機基板とは無機物からなる板状物であって、例えば、ガラス板、セラミック板、半導体ウエハ、金属板等を例示できる。またガラス板、セラミック板、半導体ウエハ、金属板から選択される2種以上が積層された複合基板も使用できる。さらにガラス、セラミック、金属から選択される一種以上の材料が、他の無機材料中ないし有機材料中に粉体的に分散している複合体を例示できる。さらにガラス、セラミック、金属から選択される一種以上の繊維状物が他の無機材料中、ないし有機材料中に複合化された繊維強化コンポジット構造を有する基板材料などを例示することができる。
【0019】
本発明における無機基板であるガラス板およびガラスを含み基板材料に用いられるガラスとしては、石英ガラス、高ケイ酸ガラス(96%シリカ)、ソーダ石灰ガラス、鉛ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス(パイレックス(登録商標))、ホウケイ酸ガラス(無アルカリ)、ホウケイ酸ガラス(マイクロシート)、アルミノケイ酸塩ガラス等を例示できる。本発明では、これらの中でも、特に線膨張係数が5ppm/K以下のものが望ましく、市販品であれば、液晶表示素子用ガラスであるコーニング社製の「コーニング(登録商標)7059」や「コーニング(登録商標)1737」、「EAGLE XG」、旭硝子社製の「AN100」、日本電気硝子社製の「OA10G」、SCHOTT社製の「AF32」などを用いる事が望ましい。
【0020】
本発明における無機基板であるセラミック板としては、アルミナ、ムライト、窒化アルミニウム、炭化珪素、窒化珪素、窒化ホウ素、結晶化ガラス、コーデュライト、リシア輝石、Pb−BSG+CaZrO3+Al2O3、結晶化ガラス+Al2O3、結晶化Ca−ホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス+石英、ホウケイ酸ガラス+Al2O3、Pb+ホウケイ酸ガラス+Al2O3、ガラスセラミック、ゼロデュア材などの基板用セラミックス、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、アルミナ、マグネシア、ステアタイト、BaTi4O9、BaTi4O9+CaZrO3、BaSrCaZrTiO3、Ba(TiZr)O3、PMN−PTやPFN−PFWなどのキャパシタ材料、PbNb2O6、Pb0.5Be0.5Nb2O6、PbTiO3、BaTiO3、PZT、0.855PZT−95PT−0.5BT、0.873PZT−0.97PT−0.3BT、PLZTなどの圧電材料等から選択される一種以上の材料からなるセラミック板を例示できる。
【0021】
本発明における金属板を構成する金属材料としては、W、Mo、Pt、Fe、Ni、Auといった単一元素金属、インコネル、モネル、ニモニック、炭素銅、Fe−Ni系インバー合金、スーパーインバー合金、といった合金等が含まれる。また、これら金属に、他の金属層、セラミック層を付加してなる多層金属板も含まれる。この場合、付加層との全体のCTEが低ければ、主金属層にCu、Alなども用いられる。付加金属層として使用される金属としては、ポリイミドフィルムとの密着性を強固にするもの、拡散がないこと、耐薬品性や耐熱性が良いこと等の特性を有するものであれば限定されるものではないが、クロム、ニッケル、TiN、Mo含有Cuが好適な例として挙げられる。
【0022】
本発明に於ける半導体ウェハとしては、シリコンウエハ、炭化珪素ウェハ、化合物半導体ウエハ等を用いることができ、シリコンウエハとしては単結晶ないし多結晶のシリコンを薄板上に加工した物であり、n型或はp型にドーピングされたシリコンウエハ、イントリンシックシリコンウエハ等の全てが含まれ、また、シリコンウエハの表面に酸化シリコン層や各種薄膜が堆積されたシリコンウエハも含まれ、シリコンウエハ以外にも、ゲルマニウム、シリコン−ゲルマニウム、ガリウム−ヒ素、アルミニウム−ガリウム−インジウム、窒素−リン−ヒ素−アンチモン、SiC、InP(インジウム燐)、InGaAs、GaInNAs、LT、LN、ZnO(酸化亜鉛)やCdTe(カドミウムテルル)、ZnSe(セレン化亜鉛) などの半導体ウエハ、化合物半導体ウエハなどを用いることが出来る。
【0023】
本発明における無機基板の面積は0.157平方メートル以上である事が好ましい。より具体的には、長辺が45cm以上、短辺が35cm以上の長方形であることが好ましい。
【0024】
これら支持体となる無機基板には、UVオゾン処理、真空プラズマ処理、大気圧プラズマ処理、コロナ処理、火炎処理、イトロ処理、UVオゾン処理、活性ガスへの暴露処理などの活性化処理を行うことができる。これらの処理は主には無機基板表面の有機物等の付着汚染物を除去するクリーニング効果とともに、無機基板表面を活性化してポリイミドフィルムとの接着性を改善する効果を有する。
【0025】
本発明におけるポリイミドとはイミド結合による多量体である。一般にポリイミドはテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの縮合物として得られる。一般的なポリイミドの製法としては、溶媒中でテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られるポリアミド酸(ポリイミド前駆体)溶液を、支持体に塗布、乾燥して前駆体フィルムとし、さらに加熱ないし触媒の作用によりイミド化反応を生じせしめてポリイミドに転化させる方法が知られている。ポリイミドをフィルム化する際には前駆体フィルムを支持体から剥離してイミド化する方法が一般的である。また、支持体を被覆する用途においては剥離せずにイミド化する手法も知られている。支持体上に前駆体溶液を塗布乾燥し、支持体上でイミド化する方法は、ポリイミドフィルムをフレキシブルデバイスの基板として用いる用途にて実用化が検討されているところである。
【0026】
本発明におけるテトラカルボン酸二無水物としては好ましくは芳香族テトラカルボン酸二無水物、脂環族テトラカルボン酸二無水物を用いる事ができる。耐熱性の観点からは芳香族テトラカルボン酸二無水物が好ましく、光透過性の観点からは脂環族テトラカルボン酸二無水物が好ましい。テトラカルボン酸二無水物は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0027】
本発明における芳香族テトラカルボン酸としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン酸無水物等が挙げられる。本発明ではピロメリット酸二無水物の使用が好ましい。
【0028】
本発明における脂環族テトラカルボン酸類としては、例えば、シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビシクロヘキシルテトラカルボン酸等の脂環族テトラカルボン酸、およびこれらの酸無水物が挙げられる。これらの中でも、2個の無水物構造を有する二無水物(例えば、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物等)が好適である。なお、脂環族テトラカルボン酸類は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
脂環式テトラカルボン酸類は、透明性を重視する場合には、例えば、全テトラカルボン酸類の80質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
【0029】
本発明におけるジアミン類としては、特に制限はなく、ポリイミド合成に通常用いられる芳香族ジアミン類、脂肪族ジアミン類、脂環式ジアミン類等を用いることができる。耐熱性の観点からは、芳香族ジアミン類が好ましく、芳香族ジアミン類の中では、ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類を用いる事ができる。ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類を用いると、高い耐熱性とともに、高弾性率、低熱収縮性、低線膨張係数を発現させることが可能になる。ジアミン類は、単独で用いてもよいし二種以上を併用してもよい。
【0030】
本発明におけるジアミン類の内、芳香族ジアミン類としては、例えば、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、1,4−ビス[2−(4−アミノフェニル)−2−プロピル]ベンゼン(ビスアニリン)、1,4−ビス(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン、2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス[(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、4,4’−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−トリフルオロメチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−フルオロフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−メチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−シアノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−ビフェノキシベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、2,6−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾニトリル、および上記芳香族ジアミンの芳香環上の水素原子の一部もしくは全てが、ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基またはアルコキシル基、シアノ基、またはアルキル基またはアルコキシル基の水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換された炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基またはアルコキシル基で置換された芳香族ジアミン等が挙げられる。
【0031】
本発明における脂肪族ジアミン類としては、例えば、1,2−ジアミノエタン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,8−ジアミノオクタン等が挙げられる。
本発明における脂環式ジアミン類としては、例えば、1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルシクロヘキシルアミン)等が挙げられる。
【0032】
本発明におけるベンゾオキサゾール構造を有するジアミン類としては、例えば、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、6−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、5−アミノ−2−(m−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、6−アミノ−2−(m−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、2,2’−p−フェニレンビス(5−アミノベンゾオキサゾール)、2,2’−p−フェニレンビス(6−アミノベンゾオキサゾール)、1−(5−アミノベンゾオキサゾロ)−4−(6−アミノベンゾオキサゾロ)ベンゼン、2,6−(4,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2−d:5,4−d’]ビスオキサゾール、2,6−(4,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2−d:4,5−d’]ビスオキサゾール、2,6−(3,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2−d:5,4−d’]ビスオキサゾール、2,6−(3,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2−d:4,5−d’]ビスオキサゾール、2,6−(3,3’−ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2−d:5,4−d’]ビスオキサゾール、2,6−(3,3’−ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2−d:4,5−d’]ビスオキサゾール等が挙げられる。
【0033】
本発明において、好ましく用いられるポリイミドは、芳香族テトラカルボン酸二無水物と、芳香族ジアミンとの縮合物からなるフィルムであることが好ましく、さらに、
(a)芳香族テトラカルボン酸二無水物と、少なくともベンゾオキサゾール骨格を有するジアミンを含むジアミンとの縮合物のフィルム、
(b)芳香族テトラカルボン酸二無水物と、少なくとも分子内にエーテル結合を有するジアミンを含むジアミンとの縮合物のフィルム、
(c)芳香族テトラカルボン酸二無水物と、少なくともフェニレンジアミンを含むジアミンとの縮合物のフィルム、
(d)ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と、芳香族ジアミンとの縮合物のフィルム、
から選択される少なくとも一種のポリイミドフィルムからなることが好ましい。
【0034】
本発明におけるポリイミドフィルムの膜厚は、特に限定されるものではないが、0.5μm〜200μmが好ましく、更に好ましくは、3μm〜50μmである。0.5μm以下では、膜厚の制御が困難であり、一部ポリイミドが欠損する部分ができる可能性がある。一方で200μm以上では、作製に時間がかかり、フィルムの膜厚斑を制御することが困難になる場合がある。ポリイミドフィルムの膜厚斑は5%以下である事が必須であり、さらに4%以下である事が好ましく、なおさらに3%以下である事が好ましい。
【0035】
本発明のテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの縮合物のフィルム、すなわちポリイミドフィルムは溶液成膜法で得ることができる。ポリイミドの溶液成膜法は、ステンレス鋼のロールないしはエンドレスベルト、あるいは、PETなどの高分子フィルムを、長尺ないしエンドレスの支持体として用い、支持体上にポリイミド樹脂の前駆体溶液を塗布し、乾燥後に支持体から剥離してポリイミド前駆体フィルムとし、好ましくはフィルムの両端をクリップないしピンにて把持して、搬送しつつ、さらに熱処理を加えてポリイミド前駆体をポリイミドへと化学反応させてポリイミドフィルムを得る方法である。かかる手法を用いて得られるポリイミドフィルムは、膜厚斑が5%以下、好ましくは3.6%以下、さらに好ましくは2.4%以下であり、引張破断強度が90MPa以上、好ましくは180MPa以上、さらに好ましくは350MPa以上、なお好ましくは450MPa以上のポリイミドフィルムとなる。
【0036】
本発明では、ポリイミドフィルムの性状調整のために、ポリイミドに無機物を含有せしめることが可能であるが、必要最低限に留めるべきである。一般に高分子をフィルム化する際には滑剤と呼ばれる無機粒子を少量添加し、フィルム表面に積極的に微小な凸部を生成せしめ、フィルムとフィルムないしフィルムと平滑面が重なった際に、その間に空気層を巻き込むことによりフィルムの滑り性を発現させる。本発明において、ポリイミドフィルムに含まれる酸化珪素成分は好ましくは6000ppm以下、好ましくは4500ppm以下、更に好ましくは1800ppm以下、なおさらに好ましくは900ppm以下に留めることが好ましい。過剰な滑剤の添加は、フィルム表面の粗度を大きくし、第2のポリイミドフィルムの剥離性を阻害する場合がある。
【0037】
本発明において支持体である無機基板とポリイミドフィルムとの接着手段としては、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂などの公知の接着剤、粘着剤を用いることができる。しかしながら、本発明で好ましい接着手段は、膜厚が5μm以下の、極薄い、接着・粘着層による接着手段、ないしは、好ましくは実質的に接着剤、粘着剤を用いない、接着手段が好ましい。
【0038】
本発明におけるポリイミドフィルムと無機基板の積層体の面積は0.157平方メートル以上である事が好ましい。なおポリイミドフィルムと無機基板の積層体の面積とはポリイミドフィルムと無機基板の大きさが異なる場合には、両者が重なり合っている部分の面積を云う。ポリイミドフィルムと無機基板の積層体の面積は、好ましくは0.25平方メートル以上であり、さらに好ましくは0.46平方メートル以上であり、なお好ましくは0.62平方メートル以上であり、なおさらに好ましくは 0.98平方メートル以上である。
【0039】
本発明では実質的に接着剤、粘着剤を用いない接着手段としてシランカップリング剤を用いて接着する方法を使用できる。すなわち、本発明では、無機基板と、ポリイミドフィルムとの間にシランカップリング剤層を有する事が好ましい。
本発明におけるシランカップリング剤は、無機板とポリイミドフィルムとの間に物理的ないし化学的に介在し、両者間の接着力を高める作用を有する化合物を云う。
シランカップリング剤の好ましい具体例としては、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、2−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、トリス−(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、クロロメチルフェネチルトリメトキシシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、アミノフェネチルトリメトキシシラン、アミノフェニルアミノメチルフェネチルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザンなどが挙げられる。
【0040】
本発明で用いることのできるシランカップリング剤としては、上記のほかにn−プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリクロロシラン、2−シアノエチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、デシルトリクロロシラン、ジアセトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、ドデシルリクロロシラン、ドデシルトリメトキシラン、エチルトリクロロシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリクロロシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、トリエトキシエチルシラン、トリエトキシメチルシラン、トリメトキシメチルシラン、トリメトキシフェニルシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ペンチルトリクロロシラン、トリアセトキシメチルシラン、トリクロロヘキシルシラン、トリクロロメチルシラン、トリクロロオクタデシルシラン、トリクロロプロピルシラン、トリクロロテトラデシルシラン、トリメトキシプロピルシラン、アリルトリクロロシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、トリクロロビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、トリクロロ−2−シアノエチルシラン、ジエトキシ(3−グリシジルオキシプロピル)メチルシラン、3−グリシジルオキシプロピル(ジメトキシ)メチルシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、などを使用することもできる。
【0041】
また、シランカップリング剤の中に他のアルコキシラン類、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどを適宜加えても良い。また、シランカップリング剤の中に他のアルコキシラン類、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどを適宜加えた場合、あるいは、加えない場合も含めて、混合、加熱操作を加えて、反応を若干進めてから、使用しても良い。
【0042】
かかるシランカップリング剤の中で、本発明にて好ましく用いられるシランカップリング剤はカップリング剤の、一分子あたりに一個の珪素原子を有する化学構造のシランカップリング剤が好ましい。
本発明では、特に好ましいシランカップリング剤としては、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、2−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、アミノフェネチルトリメトキシシラン、アミノフェニルアミノメチルフェネチルトリメトキシシランなどが挙げられる。プロセスで特に高い耐熱性が要求される場合、Siとアミノ基の間を芳香族基でつないだものが望ましい。
なお本発明では必要に応じて、リン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤等を併用しても良い。
【0043】
本発明におけるシランカップリング剤の塗布方法は特に限定されず、一般的な湿式塗工法または気相での塗工法を用いる事が出来る。湿式塗工法としては、シランカップリング剤の原液ないし溶剤溶液、好ましくはアルコール溶液などを用いて、スピンコート、キャピラリーコート、バーコート、アプリケータ、ダイコート、コンマコート、スクリーン印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷、スプレーコート、噴霧コート等の手法を用いることができる。
本発明ではこのシランカップリング剤塗布方法として、好ましくは気相を介する気相塗布法を用いる事ができる。気相塗布法とは、気化させたシランカップリング剤に無機基板を暴露することにより塗布を行う。シランカップリング剤塗布をシランカップリング剤処理と言い換えても良い。気化とはシランカップリング剤の蒸気、すなわち実質的に気体状態のシランカップリング剤あるいは、微粒子状態のシランカップリング剤が存在する状態を指す。暴露とは、前記の気化したはシランカップリング剤を含んだ気体あるいは真空状態に有機系高分子フィルムが接触していることを言う。
【0044】
シランカップリング剤の蒸気は、液体状態のシランカップリング剤を30℃〜シランカップリング剤の沸点までの温度に加温することによって容易に得ることが出来る。シランカップリング剤の上記は沸点以下であっても生成する。シランカップリング剤の微粒子が共存する状態も利用できる。また、温度圧力の操作によって、蒸気密度を高める操作を行っても良い。シランカップリング剤の沸点は、化学構造によって異なるが、概ね100〜250℃の範囲である。ただし200℃以上の加熱は、シランカップリング剤の有機基側の副反応を招く恐れがあるため好ましくない。
【0045】
本発明におけるシランカップリング剤層の厚さは5nm以上であることが好ましく、9nm以上が好ましく18nm以上が好ましく、45nm以上がなお好ましい。シランカップリング剤の膜厚の上限は500nm以下が好ましく、390nm以下がさらに好ましく、240nm以下がなお好ましい。シランカップリング剤の膜厚は、積層体の断面の電子顕微鏡観察によって測定できる。
【0046】
シランカップリング剤を加温する環境は、加圧下、常圧下、減圧下のいずれでも構わないが、シランカップリング剤の気化を促進する場合には概ね常圧下ないし減圧下が好ましい。シランカップリング剤は可燃性液体に分類されることが多いため、密閉容器内にて、好ましくは容器内を不活性ガスで置換した後に気化作業を行うことが好ましい。
一方、生産効率向上および生産設備価格低減の観点からは、真空を使わない環境でのシランカップリング剤塗布が望ましい。例えば、チャンバー内に常圧下にて有機系高分子フィルムをセットし、チャンバー内を気化したシランカップリング剤を含む概ね常圧のキャリアガスを満たしてシランカップリング剤を堆積してから、再び気化したシランカップリング剤の無い状態に戻すまで、概略大気圧のままで行うことができる。
【0047】
本発明のポリイミドフィルムとなるポリイミドフィルムの、少なくとも無機基板と貼り合わせる側には、UVオゾン処理、真空プラズマ処理、大気圧プラズマ処理、コロナ処理、火炎処理、イトロ処理、酸処理、アルカリ処理、活性ガスへの暴露処理などの活性化処理を行うことができる。これらの処理は主にはポリイミドフィルム表面の有機物等の付着汚染物を除去するクリーニング効果とともに、ポリイミドフィルム表面を活性化して無機基板との接着性を改善する効果を有する。
【0048】
無機基板とポリイミドフィルムを、シランカップリング材を介して積層したポリイミド/無機基板積相体の製造方法としては、シランカップリング剤を塗布した無機基板とポリイミドフィルムを重ね合わるか、或いは無機基板とシランカップリング剤を塗布したポリイミドフィルムを重ね合わせ、両者を加圧によって積層することが好ましい。また、無機基板とポリイミドフィルムの両方をシランカップリング材処理をしても良い。加圧方法としては、大気中での常温或いは熱をかけながら行う通常のプレスや、真空中でのプレスが上げられる。好ましい圧力としては、0.5MPaから20MPa更に好ましくは 2から10MPaである。圧力が高いと、基板を破損する恐れがあり、圧力が低いと、密着しない部分が出る場合がある。好ましい温度範囲としては0℃から550℃、更に好ましくは10℃から300℃である。温度が高過ぎると、フィルムや無機基板を劣化させる可能性がある。真空中でプレスする場合は、真空度は通常の油回転ポンプによる真空で充分であり、10Torr以下程度あれば充分である。
【0049】
また、一旦積層した後、熱処理によって、密着安定化させることもできる。この際の熱処理温度としては、50℃〜550℃の範囲で行うことが好ましい。より好ましくは、100℃〜500℃の範囲である。熱処理によって密着安定性を向上するができる。50℃以下であると、密着安定性向上の効果が小さく、550℃を超えるとポリイミドフィルムの熱劣化が進む傾向にある。
【0050】
また、ポリイミドフィルムと無機基板の積層体の製造方法として、無機基板の上に、前記ポリイミド或いはポリイミドの前駆体を有機溶媒に溶解させた溶液を流涎したのち、加熱処理によってポリイミドフィルムを形成する方法もとることもできる。溶媒は、ポリイミド或いはポリイミドの前駆体を溶解可能であればよく、非プロトン性極性溶媒などを好適に用いることができる。例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルメトキシアセトアミドなどのN,N−ジ低級アルキルカルボキシルアミド類、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、γ−ブチロラクトン、ジグライム、m−クレゾール、ヘキサメチルホスホルアミド、N−アセチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルホスホルアミド、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、スルホラン、p−クロロフェノールなどが挙げられる。なお、溶媒は2種以上の混合物であってもよい。
【0051】
ポリイミド前駆体をイミド化するための加熱処理の条件としては、特に限定されるものではないが、少なくとも150℃〜200℃、より好ましくは160℃から190℃の温度範囲で10分間以上、好ましくは30分間以上、特に好ましくは60分間以上加熱処理した後で、最高温度が400℃〜550℃、好ましくは430℃〜530℃、より好ましくは460℃〜530℃の温度範囲で加熱処理することが好ましい。なお、200℃以上の温度で加熱処理する時間(最高温度で加熱処理する時間も含む)は適宜決めることができ、特に限定されない。この処理によって、溶媒を蒸発させつつ、ポリイミドを形成させることができ、良好なポリイミド/無機基板積相体を製造することができる。
【0052】
また、前記ポリイミド或いはポリイミドの前駆体を有機溶媒に溶解させた溶液を無機基板上に塗布し、場合によっては、一部乾燥し、その上にポリイミドフィルムを積層し、その後乾燥する方法も可能である。また、前記ポリイミド或いはポリイミドの前駆体を有機溶媒に溶解させた溶液を無機基板上に塗布し、場合によっては、一部乾燥し、さらに別の種類のポリイミド或いはポリイミドの前駆体を有機溶媒に溶解させた溶液を無機基板上に塗布し、その後乾燥するなど公知の手法をとることもできる。
【0053】
本発明におけるブリスターとは、ポリイミドフィルムと無機基板の積層体において、ポリイミドフィルムと無機基板との間に空隙が生じ、ポリイミドフィルム側がテント状、ないしドーム状に膨れた形状の欠点を云う。
本発明のブリスターは肉眼で確認できる大きさの物を言う。より具体的には平面方向に観察したブリスターを円とした場合に直径が50μm以上のものを云う。なおここに直径はブリスターが歪んでいる場合には長径と短径の平均値である。
【0054】
本発明のポリイミドフィルムと無機基板の積層体は、高さが3μm以上のブリスターの個数が、1平方mあたり10個以下であることが好ましく、7個以下である事がさらに好ましく、4個以下である事がさらに好ましく、2個以下である事がさらに好ましく。0個であることがなお好ましい。
本発明ではさらに高さが2.2μm以上のブリスターの個数が、1平方mあたり10個以下であることが好ましく、7個以下である事がさらに好ましく、4個以下である事がさらに好ましく、2個以下である事がさらに好ましく。0個であることがなお好ましい。
本発明ではさらに高さが1.4μm以上のブリスターの個数が、1平方mあたり10個以下であることが好ましく、7個以下である事がさらに好ましく、4個以下である事がさらに好ましく、2個以下である事がさらに好ましく。0個であることがなお好ましい。
本発明ではさらに高さが0.8μm以上のブリスターの個数が、1平方mあたり10個以下であることが好ましく、7個以下である事がさらに好ましく、4個以下である事がさらに好ましく、2個以下である事がさらに好ましく。0個であることがなお好ましい。
本発明におけるブリスター総数の個数密度は50個/平方メートル以下である事が好ましい。
【0055】
本発明におけるブリスターの高さは3Dレーザー顕微鏡により測定できる。本発明におけるブリスター欠点部分の高さの平均値は2μm以下であることが好ましく、1.6μm以下であることがさらに好ましく、1.2μm以下であることがなお好ましく、0.8μm以下であることがなおさらに好ましい。ブリスター欠点部の高さの平均値がこの範囲を超えると製造歩留まりが著しく低下する。
【0056】
本発明において、ブリスター個数密度(個/平方メートル)とブリスターの平均高さ(μm)との積は20以下であることが好ましい。ブリスターの高さは、本発明の積層体の品位を決める上で重要な要素であるが、ブリスター高さの平均値は、高さの低いブリスターが多数ある場合には低く算出されてしまう。しかしながらブリスターの平均高さとブリスター個数分布の積を求める事により、フレキシブルデバイス製造歩留まり改善に効果的であるパラメータとすることができる。
【0057】
本発明におけるブリスターは、特に前記空隙に炭化物粒子(炭化物異物)を内包するブリスターを取り扱う。炭化物とは、黒色ないし黒褐色であり、かつ、SEM−EDXにおいてC元素とO元素の合計が全元素に対し50%を越える場合、または、顕微IR分析において炭化物特有のスペクトルを呈する場合の、少なくともいずれかの条件を満たす物質を云う。
無機基板としてガラス板を用いた場合には、ガラス板側からの観察により内包される異物(粒子)の色を容易に識別できる。不透明な無機基板の場合には、フィルム側を切開して観察することができる。
【0058】
本発明のポリイミドフィルムと無機基板の積層体は、ポリイミドフィルムと無機基板を積層体した後、350℃以上600℃未満の温度で熱処理することにより得ることができる。熱処理温度の下限は370℃以上が好ましく、390℃以上が好ましく、420℃以上が好ましい。また熱処理温度の上限は560℃以下が好ましく、520℃以下がさらに好ましく、490℃以下が好ましく、460℃以下がなお好ましい。熱処理温度が初手の範囲に達しない場合には、異物の炭化が十分に進行しない場合があり、また熱処理温度が所定の範囲以上であると、ポリイミドフィルムの劣化が進み、フレキシブルデバイスの基板からの剥離の際にフィルムが割けるなどのトラブルが生じやすい。
熱処理の時間については加熱して所定温度に到達後に5秒以上保持、好ましくは30秒以上保持、さらに好ましくは100秒以上保持したのちに冷却すれば良い。必要以上に保持時間を延ばすと、ポリイミドフィルムの劣化が生じやすくなる。
昇温速度については、好ましくは5℃/分〜200℃/分の昇温速度で加熱すれば良い。なお200℃/分以上の速度で昇温すると、ブリスターの個数が増加する場合がある。
【0059】
本発明では、ポリイミドフィルムと無機基板を積層体した後、350℃以上600℃未満の温度で熱処理し、好ましくは熱処理後に10℃/分以上、90℃/分以下の速度で少なくとも200℃まで冷却することが好ましい。冷却速度は好ましくは15℃/分以上、さらに好ましくは25℃/分である。また冷却速度の上限は80℃/分以下が好ましく、70℃/分以下がさらに好ましく60℃/分以下がなお好ましい。
【実施例】
【0060】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例における物性の評価方法、処理方法、操作方法などは以下の通りである。
【0061】
<ポリアミド酸の還元粘度(ηsp/C)>
ポリマー濃度が0.2g/dlとなるようにN−メチル−2−ピロリドン(又は、N,N−ジメチルアセトアミド)に溶解した溶液をウベローデ型の粘度管により30℃で測定した。(ポリアミド酸溶液の調製に使用した溶媒がN,N−ジメチルアセトアミドの場合は、N,N−ジメチルアセトアミドを使用してポリマーを溶解し、測定した。)
【0062】
<ポリイミドフィルムの膜厚>
ポリイミドフィルムについては、積層体断面のSEM断面観察により求めた。なお、特に断りの無い限り、各ポリイミドフィルムの端部から1mm以上内側の領域において、無作為に選択した5点の膜厚の平均値をポリイミドフィルムの膜厚とした。
第2のポリイミドフィルムにおいては、ラミネート前のポリイミドフィルムないしは第2のポリイミドフィルムを積層体から90度剥離した後のフィルムの無作為に選択した10点の算術平均値を求め、膜厚とした。また、任意の10点の膜厚の最大値、最小値、算術平均値から、以下の式により膜厚斑[%]を算出した。
膜厚斑=100×(最大値−最小値)/算術平均値 [%]
なお第2のポリイミドフィルムであるポリイミドフィルムの厚さは触針式膜厚計で測定される。
また、良好に剥離できた場合には、剥離後のポリイミドフィルム、膜厚斑と、ラミネート前のポリイミドフィルムの膜厚および膜厚斑はほぼ一致した。
【0063】
<熱分解温度>
積層板から剥離したポリイミドフィルム(ポリイミドフィルム)を試料とし、150℃にて30分間乾燥した後に、下記条件で熱天秤測定(TGA)を行い、試料の質量が5%減る温度を熱分解温度とした。
装置名 : MACサイエンス社製TG−DTA2000S
パン : アルミパン(非気密型)
試料質量 : 10mg
昇温開始温度 : 30℃
昇温速度 : 20℃/min
雰囲気 : アルゴン
【0064】
<線膨張係数>
ポリイミドフィルム(フィルム)として得られた試料において、下記条件にて伸縮率を測定し、30℃〜45℃、45℃〜60℃、…と15℃の間隔での伸縮率/温度を測定し、この測定を300℃まで行い、全測定値の平均値をCTEとして算出した。
機器名 : MACサイエンス社製TMA4000S
試料長さ : 20mm
試料幅 : 2mm
昇温開始温度 : 25℃
昇温終了温度 : 400℃
昇温速度 : 5℃/min
雰囲気 : アルゴン
【0065】
<ブリスター欠点の個数>
肉眼にて確認できるブリスター個数を計数した。検知できるブリスターのサイズは平均径で50μm以上である。
<ブリスター欠点の高さ測定>
ポリイミドフィルムと無機基板の積層体のブリスター部分(凸欠点)の高さは、キーエンス製カラー3Dレーザー顕微鏡VK9710による高さ測定機能により計測した。
【0066】
<シランカップリング剤層の厚さ>
ポリイミドフィルムと無機基板の積層体の断面の電子顕微鏡写真により厚さを計測した。
【0067】
<異物分析>
内部に異物を含むブリスター部分の、ポリイミドフィルムを切開し、異物の顕微IR測定を行い、得られたIRスペクトルの吸収が全体的に緩やかで幅広く、1000−3500cm−1の領域で樹脂由来の特徴的な吸収が確認できないことをもってして、炭化物である事を確認した。
【0068】
<製造例>
[ポリイミド前駆体(ポリアミド酸)溶液PV1の製造]
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール223質量部、N,N−ジメチルアセトアミド4416質量部を加えて完全に溶解させた後、ピロメリット酸二無水物217質量部、25℃の反応温度で24時間攪拌すると、褐色で粘調なポリアミド酸溶液[PV1」を得た。
【0069】
[ポリイミド前駆体(ポリアミド酸)溶液PV2の製造]
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、テトラカルボン酸二無水物として3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物398質量部、パラフェニレンジアミン132質量部、4,4'ジアミノジフェニルエーテル30質量部を4600質量部のN、N−ジメチルアセトアミドに溶解し、25℃の反応温度で24時間攪拌すると、褐色で粘調なポリアミド酸溶液[PV2]を得た。
【0070】
[ポリイミド前駆体(ポリアミド酸)溶液PV3の製造]
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、ピロメリット酸無水物545質量部、4,4'ジアミノジフェニルエーテル500質量部を8000質量部のN、N−ジメチルアセトアミドに溶解し、温度を20℃以下に保ちながら同様に反応させてポリアミド酸溶液[PV3]を得た。
[ポリイミド前駆体(ポリアミド酸)溶液PV4の製造]
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、ピロメリット酸二無水物545質量部、パラフェニレンジアミン153質量部、4,4'ジアミノジフェニルエーテル200質量部を8000質量部のN、N−ジメチルアセトアミドに溶解し、温度を20℃以下に保ちながら同様に反応させてポリアミド酸溶液[PV4]を得た。
【0071】
[ポリイミド前駆体(ポリアミド酸)溶液PV5の製造]
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、反応容器に窒素雰囲気下、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル155.9質量部とN,N-ジメチルアセトアミド1200質量部を仕込んで溶解させた後、反応容器を冷却しながらシクロブタンテトラカルボン酸二無水物142.9質量部を固体のまま分割添加し、室温で5時間攪拌した。その後N,N-ジメチルアセトアミド1000質量部で希釈し、還元粘度4.20dl/gのポリアミド酸溶液[PV5]を得た。
【0072】
[ポリイミド前駆体(ポリアミド酸)溶液PV6の製造]
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、反応容器に窒素雰囲気下、2,2’-ジトリフルオロメチル-4,4’-ジアミノビフェニル176.5質量部とN,N-ジメチルアセトアミド1200質量部を仕込んで溶解させた後、反応容器を冷却しながら1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物122.9質量部を固体のまま分割添加し、室温で18時間攪拌した。その後N,N-ジメチルアセトアミド500質量部で希釈し、還元粘度3.26dl/gのポリアミド酸溶液[PV6]を得た。
【0073】
[ポリイミド前駆体(ポリアミド酸)溶液PV7の製造]
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、テトラカルボン酸二無水物として3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物398質量部、パラフェニレンジアミン148質量部、4600質量部のN、N−ジメチルアセトアミドに溶解し、25℃の反応温度で24時間攪拌すると、褐色で粘調なポリアミド酸溶液[PV7]を得た。
【0074】
<ポリイミドフィルムの製造>
製造例にて得られたポリアミド酸溶液[PV1]を脱泡後にコンマコーターを用いて、東洋紡株式会社製ポリエステルフィルムA4100の平滑面に塗布し、連続式乾燥機にて乾燥温度を95℃にて5分、110℃にて10分間乾燥しポリアミド酸フィルムとした。次いで得られたポリアミド酸フィルムをポリエステルフィルムから剥離し、フィルムの両端をピンにて把持し、連続式の熱処理炉にて250℃にて3分、485℃にて3分間熱処理を行ない、室温まで冷却してポリイミドフィルム[PF1a]を得た。得られたポリイミドフィルムの評価結果を表1に示す。表中の「フィルム成膜」はこの方法によって得られたポリイミドフィルムを用いた事を示す。
以下同様にポリアミド酸溶液、成膜方法、塗布膜厚、乾燥、熱処理条件,を代えて溶液成膜を行い表1に示すポリイミドフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0075】
<無機基板(支持体)>
基板[G1]として370mm×470mm、厚さ0.7mmの液晶ディスプレイ用ガラス板を用いた。
基板[G2]として550mm×650mm、厚さ0.7mmの液晶ディスプレイ用ガラス板を用いた。
【0076】
<UV/オゾン処理>
ランテクニカルサービス社製UV/オゾン洗浄改質装置を用い、ランプと無機基板との距離を30mmとして無機基板に1分間のUV/オゾン処理を行った。
【0077】
<シランカップリング剤処理>
ホットプレートと無機基板の支持台とを備えたチャンバーをクリーンな乾燥窒素で置換した後、UV/オゾン処理を行った無機基板を支持台に設置し、無機基板の200mm下方に液面が位置するようにシランカップリング剤(3−アミノプロピルトリメトキシシラン)を満たしたシャーレを置き、シャーレをホットプレートにて100℃に加熱し、無機基板の下面をシランカップリング剤蒸気に3分間暴露した後にチャンバーから取り出し、クリーンベンチ内に設置し、120℃に調温されたホットプレートに無機基板の暴露面とは逆側を熱板に接するように乗せ、1分間の熱処理を行い、シランカップリング剤処理とした。
【0078】
<フィルムの洗浄処理>
得られたポリイミドフィルムを、連続式の湿式フィルム洗浄装置を用いて洗浄し、さらに搬送しつつ120℃のクリーンドライエア中にて5分間保持して再乾燥を行った。なお湿式洗浄装置にて用いた洗浄液は、比抵抗が15MΩ・cm以上となるまで膜濾過により精製した後、オゾナイザーにて生成させた含オゾンクリーンエア2より曝気し、オゾン濃度が10ppm以上となるよう調整された。
【0079】
<プラズマ処理>
<フィルムのプラズマ処理>
ポリイミドフィルムを、ガラス基板の長辺、短辺より各々10mm小さいサイズに裁断し、枚葉式の真空プラズマ装置により処理を行った。真空プラズマ処理としては、平行平板型の電極を使ったRIEモード、RFプラズマによる処理を採用し、真空チャンバー内に窒素ガスを導入し、13.54MHzの高周波電力を導入するようにし、処理時間は3分間とした。
【0080】
<ガスバリア層の形成:窒化珪素薄膜>
一般的なプラズマCVD装置を用いて、以下の手法によりガスバリア層を形成した。原料ガスとしてシランガス(SiH4),アンモニアガス(NH3),窒素ガス(N2),および水素ガス(H2)を用いた。各種ガスの供給量は、シランガスが100sccm、アンモニアガスが200sccm、窒素ガスが500sccm、水素ガスが500sccmとした成膜圧力は60Paとした。供給するプラズマは、13.58MHzで3000Wとした。成膜中は、ガラス板(基板ホルダ)に、周波数400kHzで500Wのバイアス電力を供給した。
【0081】
【表1】
【0082】
なお、表1中の略語は以下の通りである。
PMDA:ピロメリット酸二無水物、
BPDA:3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、
CBA:シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、
CHA:1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、
ODA:4,4'ジアミノジフェニルエーテル、
PDA:フェニレンジアミン、
DAMBO:5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、
BPA:2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、
FA:2,2’-ジトリフルオロメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、
CTE :線膨張係数、
【0083】
<実施例1>
ポリイミドフィルムとなるポリイミドフィルム[PF1a]に、プラズマ処理を行い、シランカップリング剤処理を行った無機基板のシランカップリング剤処理面に重なるようにポリイミドフィルムを重ね、ロールラミネータにて仮圧着した後、クリーンベンチ内に設置し、150℃に調温されたホットプレートに無機基板側を熱板に接するように乗せ、3分間熱処理を行い、ポリイミドフィルムと無機基板の積層体を得た。得られたポリイミドフィルムと無機基板の積層体を、温度20〜25℃、相対湿度65±30%の環境下で12時間以上保管した。
【0084】
得られたポリイミドフィルムと無機基板の積層体を、450℃のイナートオーブン中で30分間熱処理を施した。オーブンから取り出し、別途用意した25℃以上180℃以下の間の所定温度に調温された銅板の上に無機基板(ガラス板)側が接するように置き、200℃以下の温度になるまで急冷した。冷却速度は銅板の温度で制御した。450℃から200℃まで冷却する際にかかる平均冷却速度を冷却速度とした。
【0085】
得られたポリイミドフィルムと無機基板の積層体に存在するブリスターの個数を大きさ毎にクラス分けして計数した。さらにブリスター総数を積層体面積で除して個数密度を求めた。さらに、全てのブリスターの高さをレーザー顕微鏡で測定し、その平均値を求め、ブリスターの平均高さと個数密度との積を求めた。計数したブリスターの任意の5個を選択し、ポリイミドフィルム側を切開し、内包されている異物粒子の分析を行った。結果、すべて炭化物粒子であることが確認された。
以上の結果を表2に示す。なお表2、表3、表4においてイナートは窒素置換した雰囲気下での処理を示す。またサイズ50μm−1mmは、50μm以上1mm未満、サイズ1−2mmは1mm以上2mm未満、サイズ2−3mmは2mm以上3mm以下を意味する。
【0086】
<実施例2〜9、比較例1〜6>
以下、無機基板、ポリイミドフィルム、各々の処理条件、等を適宜替えて実験を行い表2,表3.表4、に示す実施例2〜実施例9、比較例1〜6のポリイミドと無機基板の積層体を得た。各々の積層体に存在するブリスターの高さ分布を表2、表3、表4に示す。なお、実施例1と同様に各積層体毎に任意のブリスター5点を選択し、ブリスターの内包物の分析を行いいずれも内包物が炭化物粒子である事を確認した。
【0087】
【表2】
【0088】
【表3】
【0089】
【表4】
【0090】
<応用実施例>
実施例1〜9、比較例1〜6にて得られたポリイミドと無機基板との積層体を100℃で1時間乾燥させたのち、ガスバリア層を形成する真空装置にセットし減圧した。所定の真空度に達したことを確認した後にポリイミドフィルムの表面に、ガスバリア層として窒化珪素薄膜を形成した。次いで、積相体のガスバリア層の表面に、10−5Paオーダーの真空度にて各薄膜を蒸着して積層した。先ず成膜温度400℃にて、膜厚100nmのインジウム・スズ酸化物(ITO)からなる陽極を形成した。その後、ITO上にN,N'-ジ(1−ナフチル)−N,N'-ジフェニルベンジジン)を30nmの厚さに形成し、この上に、1,3-ビス(N-カルバゾリル)ベンゼンを10nmの厚さに形成した。次に、下記の化合物1と4,4'-ビス(N-カルバゾリル)-1,1'-ビフェニルを異なる蒸着源から共蒸着し、20nmの厚さの層を形成して発光層とした。この時、化合物1の濃度は10重量%とした。次に、1,3,5−トリス(1−フェニル−1H-ベンズイミダゾール−2−イル)ベンゼンを40nmの厚さに形成し、この上にフッ化リチウムを0.8nm真空蒸着した。さらに、同様にITOを形成し陰極とした。その上からさらにガスバリア層を形成した。最後にガラス板から剥がすことで、フレキシブルな有機EL素子を作製した。
得られた有機EL素子について発光素子の品位を目視判定し、一辺が10cmの正方形換算にて黒点(無発光点)が1個以下である場合を◎、3個以下である場合を○、4個以上である場合を×とした。
結果を表2、表3、表4に示す。
結果から明らかなように、本発明のポリイミドと無機基板の積層体を使うと、良好なデバイスを作製することができることが示された。
【化1】
【産業上の利用可能性】
【0091】
以上、示してきたように、本発明の積層体は、フレキシブルな表示素子などのフレキシブル電子デバイス作製するための基板として好適に利用できる。本発明は各種フレキシブルな電子デバイス、MEMS素子、センサー素子、太陽電池、ウェアラブル用素子などに広く応用できる。
【符号の説明】
【0092】
1:無機基板
2:ポリイミドフィルム
3:異物(炭化物粒子)
h:ブリスター高さ(凸欠点高さ)
w:ブリスターサイズ(ブリスター径)

図1