(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された音響反射器を有する弾性波装置の場合、音響反射器を構成する膜として金属膜を用いると、圧電膜上に形成されるIDT電極、バスバー電極および配線電極と、音響反射器を構成する金属膜との間に、意図しない容量成分が発生する。この容量成分により弾性波の高周波伝搬特性が悪化してしまうという課題がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、音響反射層による不要な容量成分を排除しつつ弾性波伝搬損失が低減された弾性波装置、高周波フロントエンド回路および通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る弾性波装置は、支持基板と、前記支持基板上に直接または間接的に積層された音響反射層と、前記音響反射層上に直接または間接的に積層された圧電層と、前記圧電層上に直接または間接的に形成された、1以上のIDT電極と、前記圧電層上に直接または間接的に形成され、前記1以上のIDT電極と電気的に接続された配線電極と、を備え、前記音響反射層は、第1誘電体層と、前記第1誘電体層よりも前記支持基板側に配置され、前記第1誘電体層よりも音響インピーダンスが高い第2誘電体層と、前記第1誘電体層よりも前記圧電層側に配置され、前記第1誘電体層よりも音響インピーダンスが高い金属層と、を有し、前記金属層は、前記音響反射層を平面視した場合に、前記1以上のIDT電極のうちの一のIDT電極と当該一のIDT電極に接続された配線電極とを含み、かつ、当該一のIDT電極以外のIDT電極を含まない領域において、前記金属層の形成面積は前記第2誘電体層の形成面積よりも小さい。
【0008】
これによれば、第1誘電体層よりも音響インピーダンスの高い金属層を、上記平面視において、圧電層を挟んでIDT電極を包含するように配置することで、当該IDT電極および圧電層で形成された弾性波共振子に好適な容量成分を付加しつつ弾性波の主モードを金属層の上方に閉じ込めることができる。また、上記平面視において、金属層は、配線電極を包含するようには配置されないので、配線電極と金属層とで形成される不要な容量成分を低減できる。一方、金属層が形成されていない領域における弾性波の主モードの下方への漏洩については、金属層よりも形成面積が大きくかつ第1誘電体層よりも音響インピーダンスの高い第2誘電体層の表面で上方へ反射されるので、当該弾性波の伝搬損失を低減できる。つまり、弾性波の主モードを金属層の上方に閉じ込め、不要な容量成分を排除して弾性波伝搬損失を低減できる。
【0009】
また、前記1以上のIDT電極のそれぞれは、一対の櫛歯状電極からなり、前記圧電層の膜厚は、前記一対の櫛歯状電極のうちの一方の櫛歯状電極を構成する複数の電極指の繰り返しピッチであるIDT波長以下であってもよい。
【0010】
これにより、弾性波の利用効率が最適化されるので、弾性波伝搬特性を向上できる。
【0011】
また、前記音響反射層は、さらに、前記金属層と前記圧電層との間に配置され、前記金属層よりも音響インピーダンスが低い第3誘電体層を有してもよい。
【0012】
これにより、第3誘電体層と金属層との界面において弾性波の主モードを上方へ反射させることが可能となる。
【0013】
また、前記第3誘電体層の膜厚と前記第1誘電体層の膜厚とは異なってもよい。
【0014】
これによれば、第3誘電体層と金属層との界面において弾性波の主モードを反射させるのに最適な第3誘電体層および金属層の膜厚構成比と、第1誘電体層と第2誘電体層との界面において弾性波の主モードを反射させるのに最適な第1誘電体層および第2誘電体層の膜厚構成比とを個別に調整できる。つまり、弾性波の主モードの閉じ込め効率がより向上するとともに、音響反射層の膜厚対称性を崩すことで不要波をより低減できる。
【0015】
また、前記音響反射層は、前記圧電層の垂線方向に積層された複数の前記金属層、および、前記垂線方向に積層された複数の前記第2誘電体層の少なくとも一方を有し、前記複数の金属層の間には、それぞれ、前記金属層よりも音響インピーダンスが低い第4誘電体層が配置され、前記複数の第2誘電体層の間には、それぞれ、前記第2誘電体層よりも音響インピーダンスが低い第5誘電体層が配置されていてもよい。
【0016】
これによれば、音響反射層において、高音響インピーダンス層である金属層および第2誘電体層と、低音響インピーダンス層である第4誘電体層、第1誘電体層、および第5誘電体層とが、交互に積層されているので、上方から下方へ伝搬されてきた弾性波の主モードを、各高音響インピーダンス層の上方表面で、階層的に反射することが可能となる。よって、弾性波の伝搬損失をより効果的に低減できる。
【0017】
また、前記第4誘電体層の膜厚と前記第5誘電体層の膜厚とは異なってもよい。
【0018】
これによれば、第4誘電体層と金属層との界面において弾性波の主モードを反射させるのに最適な第4誘電体層および金属層の膜厚構成比と、第5誘電体層と第2誘電体層との界面において弾性波の主モードを反射させるのに最適な第5誘電体層および第2誘電体層の膜厚構成比とを個別に調整できる。つまり、弾性波の主モードの閉じ込め効率がより向上するとともに、音響反射層の膜厚対称性を崩すことで不要波をより低減できる。
【0019】
また、前記金属層は、PtまたはWからなるとしてもよい。
【0020】
これにより、金属層の音響インピーダンスを、第1誘電体層の音響インピーダンスよりも高くすることで、圧電層に近い部分で弾性波の閉じ込めが可能となる。
【0021】
また、前記第1誘電体層は、シリコン酸化物からなるとしてもよい。
【0022】
これにより、第1誘電体層の音響インピーダンスを、金属層および第2誘電体層の音響インピーダンスよりも低くできるとともに、弾性波装置の周波数温度特性を改善できる。
【0023】
また、前記第2誘電体層は、Ta
2O
5からなるとしてもよい。
【0024】
これにより、第2誘電体層の音響インピーダンスを、第1誘電体層の音響インピーダンスよりも高くすることで、弾性波を効率良く閉じ込めることが可能となる。
【0025】
また、本発明の一態様に係る高周波フロントエンド回路は、上記いずれかに記載の弾性波装置と、前記弾性波装置に接続された増幅回路と、を備える。
【0026】
これにより、高周波伝搬損失が低減された高周波フロントエンド回路を提供できる。
【0027】
また、本発明の一態様に係る通信装置は、上記記載の高周波フロントエンド回路と、高周波信号を処理する信号処理回路と、を備える。
【0028】
これにより、高周波伝搬損失が低減された通信装置を提供できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、音響反射器による不要な容量成分を排除しつつ弾性波伝搬損失が低減された弾性波装置、高周波フロントエンド回路および通信装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について、実施の形態および図面を用いて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置および接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、図面に示される構成要素の大きさまたは大きさの比は、必ずしも厳密ではない。
【0032】
(実施の形態1)
[1−1.弾性波装置の構成]
図1Aは、実施の形態1に係る弾性波装置1の平面図である。また、
図1Bは、実施の形態1に係る弾性波装置1の回路構成の一例である。また、
図2は、実施の形態1に係る弾性波装置1の断面図である。より具体的には、
図2は、
図1Aの弾性波装置1をII−II線で切断した場合の切断面である。
【0033】
図1Bに示すように、弾性波装置1は、入出力端子31と入出力端子32との間に接続された直列腕共振子11および12、ならびに、入出力端子31から入出力端子32までの接続経路とグランドとの間に接続された並列腕共振子21および22を有するラダー型の弾性波フィルタである。直列腕共振子11および12ならびに並列腕共振子21および22は、弾性波共振子で構成されている。弾性波装置1は、例えば、入出力端子31から入力された高周波信号を、所定の通過帯域でフィルタリングして入出力端子32へ出力する帯域通過型フィルタである。
【0034】
図1Aには、
図1Bに示された弾性波装置1の回路構成を実現する電極配置構成が示されている。具体的には、
図1Aには、基板50上に形成されたIDT(InterDigital Transducer)電極110、120、210および220、配線電極41a、41b、42a、42b、42c、43、44、45、46および47、入出力端子31および32、ならびに、グランド端子33および34の電極レイアウトが表されている。
【0035】
図1Bに示された直列腕共振子11は、一対の櫛歯状電極からなるIDT電極110と、IDT電極110の弾性波伝搬方向に隣接して設けられた反射電極と、基板50とで構成されている。直列腕共振子12は、一対の櫛歯状電極からなるIDT電極120と、IDT電極120の弾性波伝搬方向に隣接して設けられた反射電極と、基板50とで構成されている。並列腕共振子21は、一対の櫛歯状電極からなるIDT電極210と、IDT電極210の弾性波伝搬方向に隣接して設けられた反射電極と、基板50とで構成されている。並列腕共振子22は、一対の櫛歯状電極からなるIDT電極220と、IDT電極220の弾性波伝搬方向に隣接して設けられた反射電極と、基板50とで構成されている。
【0036】
配線電極41aおよび41bを含む配線電極41は、IDT電極110と入出力端子31とを接続する配線であり、IDT電極110を構成する複数の電極指を接続するバスバー電極を兼ねている。配線電極42aは、IDT電極110を構成する複数の電極指を接続するバスバー電極である。配線電極42bは、IDT電極110とIDT電極120とを接続する配線である。配線電極42cは、IDT電極120を構成する複数の電極指を接続するバスバー電極である。配線電極42a、42b、および42cを含む配線電極42は、IDT電極110とIDT電極120とを接続する配線である。配線電極43は、IDT電極120と入出力端子32とを接続する配線であり、また、IDT電極120を構成する複数の電極指を接続するバスバー電極を兼ねている。配線電極44は、IDT電極210を構成する複数の電極指を接続するバスバー電極である。配線電極45は、IDT電極210とグランド端子33とを接続する配線であり、また、IDT電極210を構成する複数の電極指を接続するバスバー電極を兼ねている。配線電極46は、IDT電極220を構成する複数の電極指を接続するバスバー電極である。配線電極47は、IDT電極220とグランド端子34とを接続する配線であり、また、IDT電極220を構成する複数の電極指を接続するバスバー電極を兼ねている。
【0037】
次に、弾性波装置1を構成する弾性波共振子の断面構造について説明する。
図2では、特に、直列腕共振子11の断面構造に絞って表示されている。
図2に示すように、弾性波装置1は、基板50と、基板50の上に配置されたIDT電極110と、基板50の上に配置された配線電極41および42と、を備える。なお、配線電極41および42は、それぞれ、IDT電極110の弾性波伝搬方向の両隣に配置されているが、反射電極を省略して記載している。
【0038】
IDT電極110は、例えば、Al、Cu、Pt、Au、Ti、Ni、Cr、Ag、W、Mo、NiCrおよびTaなどから選択された金属、または、それらのうちの2以上の金属からなる合金もしくは積層体で構成される。
【0039】
基板50は、支持基板51と、音響反射層56と、圧電層52とが、この順で積層された構造を有する。
【0040】
支持基板51は、圧電層52および音響反射層56を支持する基板であり、例えば、Siなどの半導体、サファイア、LiTaO
3、LiNbO
3、ガラスなどが挙げられる。これらの材料は、単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
【0041】
圧電層52を構成する材料は、例えば、LiTaO
3、LiNbO
3、ZnO、AlN、および水晶などのうち、弾性波装置1に要求される周波数帯、通過帯域幅および電気機械結合係数を考慮して適宜選択される。
【0042】
ここで、圧電層52の膜厚は、IDT電極を構成する一対の櫛歯状電極のうちの一方の櫛歯状電極を構成する複数の電極指の繰り返しピッチであるIDT波長以下であることが好ましい。
【0043】
これにより、弾性波装置1は、弾性波伝搬方向に所定の板波を主モードとして効率的に励振することが可能となる。なお、板波とは、励振される板波の波長を1λとした場合、膜厚1λ程度以下の圧電層に励振される種々の波を総称している。
【0044】
弾性波装置の高周波信号伝搬手段として利用される板波は、弾性波が伝搬する圧電層の厚みを弾性波の波長(λ)以下程度まで薄くした場合に励振されることを特徴としている。この板波を利用することで、弾性波共振子の共振特性を改善することが可能となる。従来、この板波を用いた弾性波共振子である板波共振子として、圧電層直下に音響多層膜を有する音響多層膜型共振子と、圧電層が中空部に浮いているメンブレン型共振子とが提案されている。しかしながら、音響多層膜型の板波共振子を用いた弾性波フィルタにおいて、これまで、効率的に板波を閉じ込めつつ弾性波フィルタの損失が改善された構成については示されていない。弾性波フィルタの損失を低減するためには、板波を効率的に閉じ込めねばならず、また、通過帯域を調整するためには、弾性波フィルタを構成する回路に最適な容量成分を持たせる必要がある。このような状況下において、本発明では、板波の主モードを効率的に閉じ込めつつ音響反射層を用いて必要な容量を付加し、不要な容量を排除するための、以下のような特徴的な構成を見出した。
【0045】
音響反射層56は、支持基板51側から圧電層52に向かって順に、低Z誘電体層53C、高Z誘電体層55、低Z誘電体層53B、金属層54、低Z誘電体層53Aが積層された構造を有する。
【0046】
低Z誘電体層53Bは、誘電体で構成された層であり、金属層54と高Z誘電体層55との間に配置され、金属層54および高Z誘電体層55よりも音響インピーダンスが低い第1誘電体層である。低Z誘電体層53Bは、例えば、シリコン酸化物からなり、膜厚は、例えば、0.05λ〜0.3λである。低Z誘電体層53Bがシリコン酸化物で構成されることにより、低Z誘電体層53Bの音響インピーダンスを、金属層54および高Z誘電体層55の音響インピーダンスよりも低くできるとともに、弾性波装置1の周波数温度特性を改善することが可能となる。
【0047】
高Z誘電体層55は、誘電体で構成された層であり、低Z誘電体層53Bよりも支持基板51側に配置され、低Z誘電体層53Bよりも音響インピーダンスが高い第2誘電体層である。高Z誘電体層55は、例えば、Ta
2O
5からなり、膜厚は、例えば、0.05λ〜0.3λである。高Z誘電体層55がTa
2O
5で構成されることにより、高Z誘電体層55の音響インピーダンスを、低Z誘電体層53Bの音響インピーダンスよりも高くすることが可能となる。
【0048】
金属層54は、低Z誘電体層53Bよりも圧電層52側に配置され、低Z誘電体層53Bよりも音響インピーダンスが高い層である。金属層54は、例えば、PtまたはWからなり、膜厚は、例えば、0.05λ〜0.3λである。金属層54がPtまたはWで構成されることにより、金属層54の音響インピーダンスを、低Z誘電体層53Bの音響インピーダンスよりも高くすることが可能となる。
【0049】
低Z誘電体層53Aは、誘電体で構成された層であり、金属層54と圧電層52との間に配置され、金属層54よりも音響インピーダンスが低い第3誘電体層である。低Z誘電体層53Aは、例えば、シリコン酸化物からなり、膜厚は、例えば、0.05〜0.3λである。低Z誘電体層53Aがシリコン酸化物で構成されることにより、低Z誘電体層53Aの音響インピーダンスを、金属層54の音響インピーダンスよりも低くできるとともに、弾性波装置1の周波数温度特性を改善することが可能となる。また、金属層54と圧電層52との間に低Z誘電体層53Aが配置されることで、低Z誘電体層53Aと金属層54との界面において弾性波の主モードを上方へ反射させることが可能となる。
【0050】
低Z誘電体層53Cは、誘電体で構成された層であり、支持基板51と高Z誘電体層55との間に配置され、支持基板51と高Z誘電体層55とを接着するための支持層であり、また、高Z誘電体層55よりも音響インピーダンスが低い誘電体層である。低Z誘電体層53Cは、例えば、シリコン酸化物からなり、膜厚は、例えば、0.05λ〜0.3λである。低Z誘電体層53Cがシリコン酸化物で構成されることにより、低Z誘電体層53Cの音響インピーダンスを、高Z誘電体層55の音響インピーダンスよりも低くできるとともに、弾性波装置1の周波数温度特性を改善することが可能となる。
【0051】
上述した音響反射層56の構成において、低Z誘電体層53Aおよび53Bよりも音響インピーダンスが高い金属層54および高Z誘電体層55のうち、金属層54の方が圧電層52に近く配置されている。
【0052】
また、音響反射層56を平面視した場合に、金属層54は、IDT電極110を包含する領域に形成されている。また、IDT電極110と、IDT電極110に接続された配線電極41a、41b、42aおよび42bと、を含み、IDT電極110以外のIDT電極を含まない領域A
L(
図1A参照)において、金属層54の形成面積(A
54)は高Z誘電体層55の形成面積よりも小さい。
【0053】
これによれば、低Z誘電体層53Bよりも音響インピーダンスの高い金属層54および高Z誘電体層55のうち金属層54を圧電層52に近く配置し、かつ、金属層54を、圧電層52を挟んでIDT電極110を包含するように配置している。金属層54は、高Z誘電体層55と比較して高導電性であり、かつ、パターニングの加工精度が高いので、IDT電極110および圧電層52で形成された直列腕共振子11に効果的に容量成分を付加しつつ高音速化された板波の主モードを金属層54の上方に閉じ込めることができる。また、上記平面視において、金属層54は、配線電極41a、41b、42aおよび42bを包含するようには配置されないので、配線電極41および42と金属層54とで形成される不要な容量成分を低減できる。一方、金属層54が形成されていない領域における板波の主モードの下方への漏洩については、低Z誘電体層53Bよりも音響インピーダンスの高い高Z誘電体層55の表面で上方へ反射されるので、当該板波の主モードの伝搬損失を低減できる。なお、高Z誘電体層55は、配線電極41および42との距離が大きいため、高Z誘電体層55と配線電極41および42とで形成される容量成分は小さいため、高Z誘電体層55をパターニング加工する必要はない。以上より、本実施の形態に係る音響反射層56の構成によれば、弾性波(板波)の主モードを金属層54の上方に閉じ込め、不要な容量成分を排除して弾性波伝搬損失を低減できる。
【0054】
また、より好ましくは、
図2に示すように、金属層54は、上記平面視において、IDT電極110を包含し、かつ、配線電極41および42を包含しない領域に形成されている。一方、高Z誘電体層55は、
図2に示すように、上記平面視において、領域A
L全体に形成されている。これを
図2の断面図で説明すると、金属層54は、上記平面視において、IDT電極110を包含し、かつ、配線電極41および42を包含しない領域に形成されており、金属層54の長さL
54は、領域A
Lの長さL
Lよりも短い。
【0055】
これによれば、上記平面視において、金属層54は、配線電極41および42と重複しないので、配線電極41および42と金属層54とで形成される不要な容量成分を排除できる。以上より、本実施の形態に係る音響反射層56の構成によれば、弾性波(板波)の主モードを金属層54の上方に閉じ込め、不要な容量成分を高精度に排除して弾性波伝搬損失を低減できる。
【0056】
なお、低Z誘電体層53Aの膜厚と、低Z誘電体層53Bの膜厚とは、異なっていることが好ましい。これによれば、低Z誘電体層53Aと金属層54との界面において弾性波(板波)の主モードを反射させるのに最適な低Z誘電体層53Aおよび金属層54の膜厚構成比と、低Z誘電体層53Bと高Z誘電体層55との界面において弾性波(板波)の主モードを反射させるのに最適な低Z誘電体層53Bおよび高Z誘電体層55の膜厚構成比とを個別に調整できる。つまり、弾性波(板波)の主モードの閉じ込め効率がより向上するとともに、音響反射層の膜厚対称性を崩すことで不要波をより低減できる。
【0057】
また、支持基板51と音響反射層56との間、音響反射層56と圧電層52との間、圧電層52とIDT電極110との間、および、圧電層52と上記配線電極との間、の少なくともいずれかに、別層が介在していてもよい。
【0058】
[1−2.弾性波装置の製造工程]
次に、本実施の形態に係る弾性波装置1の製造方法について説明する。
【0059】
図3は、実施の形態1に係る弾性波装置1の製造工程図である。
【0060】
まず、
図3の(a)に示すように、圧電基板52p上(圧電基板52pの下方)に、低Z誘電体層53Aを形成する。低Z誘電体層53Aは、例えば、シリコン酸化物膜をスパッタリング法により成膜することで形成される。
【0061】
次に、
図3の(b)に示すように、低Z誘電体層53A上(低Z誘電体層53Aの下方)に、例えばフォトリソグラフィーを使った蒸着リフトオフ法により、金属層54をパターニング形成する。ここで、金属層54は、圧電基板52pを平面視した場合、後工程で形成されるIDT電極110と重複するようにパターニングされる。
【0062】
次に、
図3の(c)に示すように、金属層54上(金属層54の下方)に、低Z誘電体膜53pを形成する。低Z誘電体膜53pは、例えば、シリコン酸化物膜をスパッタリング法により成膜することで形成される。
【0063】
次に、
図3の(d)に示すように、低Z誘電体膜53pを平坦化して、低Z誘電体層53Bを形成する。低Z誘電体膜53pの平坦化は、例えば、CMP(Chemical Mechanical Polishing)により行う。
【0064】
次に、
図3の(e)に示すように、低Z誘電体層53B上(低Z誘電体層53Bの下方)に、高Z誘電体層55を形成する。高Z誘電体層55は、例えば、タンタル酸化物膜(Ta
2O
5)をスパッタリング法により成膜することで形成される。ここで、高Z誘電体層55は、圧電基板52pを平面視した場合、後工程で形成されるIDT電極110と重複するようにパターニングされることなく、低Z誘電体層53B上の全域に形成される。
【0065】
次に、
図3の(f)に示すように、高Z誘電体層55上(高Z誘電体層55の下方)に、低Z誘電体層53Cを形成する。低Z誘電体層53Cは、例えば、シリコン酸化物膜をスパッタリング法により成膜することで形成される。
【0066】
次に、
図3の(g)に示すように、圧電基板52p、低Z誘電体層53A、金属層54、低Z誘電体層53B、高Z誘電体層55、および低Z誘電体層53Cの積層体に、支持基板51を接合する。支持基板51は、例えば、Siからなる。
【0067】
次に、
図3の(h)に示すように、圧電基板52pを、例えば研磨ないしはスマートカット法により、薄板化し、圧電層52を形成する。
【0068】
最後に、
図3の(i)に示すように、例えばフォトリソグラフィーを使った蒸着リフトオフ法により、IDT電極110、配線電極41および42をパターニング形成する。なお、配線電極41および42は、低抵抗化のため、金属膜を2層形成してもよい。
【0069】
なお、上記弾性波装置1の製造方法は、あくまで一例であり、高音響インピーダンス層の中で最も圧電層52寄りに存在する1層の金属層54と、高音響インピーダンス層である1層以上の高Z誘電体層55から成るものであればよく、積層数は問わない。その積層数に併せて低音響インピーダンス層の積層数も変化させればよい。
【0070】
[1−3.変形例に係る弾性波装置の構成]
図4は、実施の形態1の変形例1に係る弾性波装置1Aの断面図である。本変形例に係る弾性波装置1Aは、実施の形態1に係る弾性波装置1と比較して、音響反射層57の積層構造が異なる。なお、弾性波装置1Aの平面図および回路構成については、
図1Aに記載された平面図および
図1Bに記載された回路構成と同様である。以下、本変形例に係る弾性波装置1Aについて、実施の形態1に係る弾性波装置1と同じ点については説明を省略し、異なる点を中心に説明する。
【0071】
弾性波装置1Aを構成する弾性波共振子の断面構造について説明する。
図4では、特に、直列腕共振子11の断面構造に絞って表示されている。
図4に示すように、弾性波装置1Aは、基板50Aと、基板50Aの上に配置されたIDT電極110と、配線電極41および42と、を備える。なお、配線電極41および42は、それぞれ、IDT電極110の弾性波伝搬方向の両隣に配置されているが、反射電極を省略して記載している。
【0072】
基板50Aは、支持基板51と、音響反射層57と、圧電層52とが、この順で積層された構造を有する。
【0073】
音響反射層57は、支持基板51側から圧電層52に向かって順に、低Z誘電体層53E、高Z誘電体層55B、低Z誘電体層53D、高Z誘電体層55A、低Z誘電体層53C、金属層54B、低Z誘電体層53B、金属層54A、低Z誘電体層53Aが積層された構造を有する。
【0074】
金属層54Aおよび54Bは、圧電層52の垂線方向に積層された複数の金属層であり、低Z誘電体層53Cよりも圧電層52側に配置され、低Z誘電体層53Cよりも音響インピーダンスが高い層である。金属層54Aおよび54Bは、例えば、PtまたはWからなる。
【0075】
低Z誘電体層53Bは、金属層54Aおよび54Bの間に配置され、金属層54Aおよび54Bよりも音響インピーダンスが低い第4誘電体層である。低Z誘電体層53Bは、例えば、シリコン酸化物からなる。
【0076】
高Z誘電体層55Aおよび55Bは、圧電層52の垂線方向に積層された複数の第2誘電体層であり、低Z誘電体層53Cよりも支持基板51側に配置され、低Z誘電体層53Cよりも音響インピーダンスが高い層である。高Z誘電体層55Aおよび55Bは、例えば、Ta
2O
5からなる。
【0077】
低Z誘電体層53Dは、高Z誘電体層55Aおよび55Bの間に配置され、高Z誘電体層55Aおよび55Bよりも音響インピーダンスが低い第5誘電体層である。低Z誘電体層53Dは、例えば、シリコン酸化物からなる。
【0078】
上述した音響反射層57の構成において、低Z誘電体層53A、53B、53C、53Dおよび53Eよりも音響インピーダンスが高い金属層54Aおよび54Bならびに高Z誘電体層55Aおよび55Bのうち、金属層54Aおよび54Bの方が圧電層52に近く配置されている。
【0079】
また、音響反射層57を平面視した場合に、金属層54Aおよび54Bは、IDT電極110と重複するように形成されている。また、IDT電極110、ならびに、IDT電極110に接続された配線電極41a、41b、42aおよび42bと重複する一体的な領域A
L(
図1A参照)において、金属層54Aの形成面積(A
54A)および金属層54Bの形成面積(A
54B)は、高Z誘電体層55Aおよび55Bの形成面積よりも小さい。
【0080】
また、より好ましくは、
図4に示すように、金属層54Aおよび54Bは、上記平面視において、IDT電極110を包含し、かつ、配線電極41および42を包含しない領域に形成されている。一方、高Z誘電体層55Aおよび55Bは、
図4に示すように、上記平面視において、領域A
L全体に形成されている。これを
図4の断面図で説明すると、金属層54Aおよび54Bは、上記平面視において、IDT電極110を包含し、かつ、配線電極41および42を包含しない領域に形成されており、金属層54Aの長さL
54Aおよび金属層54Bの長さL
54Bは、配線電極41および42とを含む一体的な領域A
Lの長さL
Lよりも短い。
【0081】
これによれば、低Z誘電体層53Cよりも音響インピーダンスの高い金属層54Aおよび54Bならびに高Z誘電体層55Aおよび55Bのうち金属層54Aおよび54Bを圧電層52に近く配置し、かつ、金属層54Aおよび54Bを、圧電層52を挟んでIDT電極110と重複するように配置している。金属層54Aおよび54Bは、高Z誘電体層55Aおよび55Bと比較して音響インピーダンスが高く、高導電性であり、加えて、パターニングの加工精度が高いので、IDT電極110および圧電層52で形成された直列腕共振子11に効果的に容量成分を付加しつつ板波の主モードを金属層54Bの上方に効率良く閉じ込めることができる。また、上記平面視において、金属層54Aおよび54Bは、配線電極41および42を包含するようには配置されないので、配線電極41および42と金属層54Aおよび54Bとで形成される不要な容量成分を低減できる。一方、金属層54Aおよび54Bが形成されていない領域における板波の下方への漏洩については、低Z誘電体層53Cよりも音響インピーダンスの高い高Z誘電体層55Aおよび55Bの表面で上方へ反射されるので、当該板波の伝搬損失を低減できる。なお、高Z誘電体層55Aおよび55Bは、配線電極41および42との距離が大きいため、高Z誘電体層55Aおよび55Bと配線電極41および42とで形成される容量成分は小さいので、高Z誘電体層55Aおよび55Bをパターニング加工する必要はない。以上より、本変形例に係る音響反射層57の構成によれば、弾性波の主モードを金属層54Bの上方に閉じ込め、不要な容量成分を排除しつつ弾性波伝搬損失を低減できる。
【0082】
なお、低Z誘電体層53Bの膜厚と、低Z誘電体層53Dとは、異なっていることが好ましい。これによれば、低Z誘電体層53Bと金属層54Bとの界面において弾性波の主モードを反射させるのに最適な低Z誘電体層53Bおよび金属層54Bの膜厚構成比と、低Z誘電体層53Dと高Z誘電体層55Bとの界面において弾性波の主モードを反射させるのに最適な低Z誘電体層53Dおよび高Z誘電体層55Bの膜厚構成比とを個別に調整できる。つまり、弾性波の主モードの閉じ込め効率がより向上するとともに、音響反射層の膜厚対称性を崩すことで不要波をより低減できる。
【0083】
なお、本変形例では、音響反射層57が金属層として2つの金属層54Aおよび54Bを有し、かつ、第2誘電体層として2つの高Z誘電体層55Aおよび55Bを有する構成を例示したが、金属層および第2誘電体層のうちの一方が1層であってもよい。
【0084】
また、音響反射層57は、金属層として3以上の金属層または第2誘電体層として3以上の高Z誘電体層の少なくとも一方を有していてもよい。
【0085】
図5は、実施の形態1の変形例2に係る弾性波装置1Bの断面図である。本変形例に係る弾性波装置1Bは、変形例1に係る弾性波装置1Aと比較して、高Z誘電体層55Aの形成面積が高Z誘電体層55Bの形成面積より小さい点が異なる。なお、弾性波装置1Bの平面図および回路構成については、
図1Aに記載された平面図および
図1Bに記載された回路構成と同様である。以下、本変形例に係る弾性波装置1Bについて、変形例1に係る弾性波装置1Aと同じ点については説明を省略し、異なる点を中心に説明する。
【0086】
弾性波装置1Bを構成する弾性波共振子の断面構造について説明する。
図5では、特に、直列腕共振子11の断面構造に絞って表示されている。
図5に示すように、弾性波装置1Bは、基板50Bと、基板50Bの上に配置されたIDT電極110と、配線電極41および42と、を備える。なお、配線電極41および42は、それぞれ、IDT電極110の弾性波伝搬方向の両隣に配置されているが、反射電極を省略して記載している。
【0087】
基板50Bは、支持基板51と、音響反射層58と、圧電層52とが、この順で積層された構造を有する。
【0088】
音響反射層58は、支持基板51側から圧電層52に向かって順に、低Z誘電体層53E、高Z誘電体層55B、低Z誘電体層53D、高Z誘電体層55A、低Z誘電体層53C、金属層54B、低Z誘電体層53B、金属層54A、低Z誘電体層53Aが積層された構造を有する。
【0089】
高Z誘電体層55Aおよび55Bは、圧電層52の垂線方向に積層された複数の第2誘電体層であり、低Z誘電体層53Cよりも支持基板51側に配置され、低Z誘電体層53Cよりも音響インピーダンスが高い層である。高Z誘電体層55Aおよび55Bは、例えば、Ta
2O
5からなる。
【0090】
上述した音響反射層58の構成において、低Z誘電体層53A、53B、53C、53Dおよび53Eよりも音響インピーダンスが高い金属層54Aおよび54Bならびに高Z誘電体層55Aおよび55Bのうち、金属層54Aおよび54Bの方が圧電層52に近く配置されている。
【0091】
また、音響反射層58を平面視した場合に、金属層54Aおよび54Bは、IDT電極110と重複するように形成されている。また、IDT電極110、ならびに、IDT電極110に接続された配線電極41a、41b、42aおよび42bと重複する一体的な領域A
L(
図1A参照)において、金属層54Aの形成面積(A
54A)および金属層54Bの形成面積(A
54B)は、高Z誘電体層55Aおよび55Bの形成面積よりも小さい。
【0092】
また、より好ましくは、
図5に示すように、金属層54Aおよび54Bは、上記平面視において、IDT電極110を包含し、かつ、配線電極41および42を包含しない領域に形成されている。一方、高Z誘電体層55Aは、IDT電極110を包含し、かつ、配線電極41および42を包含しない領域に形成されており、高Z誘電体層55Aの形成面積は、金属層54Bの形成面積より大きく、高Z誘電体層55Bの形成面積より小さい。また、高Z誘電体層55Bは、
図5に示すように、上記平面視において、領域A
L全体に形成されている。これを
図5の断面図で説明すると、金属層54Aおよび54Bは、上記平面視において、IDT電極110を包含し、かつ、配線電極41および42を包含しない領域に形成されており、金属層54Aの長さL
54Aおよび金属層54Bの長さL
54Bは、領域A
Lの長さL
Lよりも短い。
【0093】
これによれば、低Z誘電体層53Cよりも音響インピーダンスの高い金属層54Aおよび54Bならびに高Z誘電体層55Aおよび55Bのうち金属層54Aおよび54Bを圧電層52に近く配置し、かつ、金属層54Aおよび54Bを、圧電層52を挟んでIDT電極110と重複するように配置している。金属層54Aおよび54Bは、高Z誘電体層55Aおよび55Bと比較して音響インピーダンスが高く、高導電性であり、また、パターニングの加工精度が高いので、IDT電極110および圧電層52で形成された直列腕共振子11に効果的に容量成分を付加しつつ板波の主モードを金属層54Bの上方に効率良く閉じ込めることができる。また、上記平面視において、金属層54Aおよび54Bは、配線電極41および42を包含するようには配置されないので、配線電極41および42と金属層54Aおよび54Bとで形成される不要な容量成分を低減できる。このとき、
図5に示すように、圧電層52からの距離が大きいほど、金属層54Aおよび54Bの形成面積を大きくしてもよい。つまり、圧電層52からの距離が大きい金属層54Bの形成面積を、圧電層52からの距離が小さい金属層54Aの形成面積より大きくしてもよく、容量変化への影響が小さい上に、弾性波をより広い領域でトラップすることができる。
【0094】
一方、金属層54Aおよび54Bが形成されていない領域における板波の下方への漏洩については、低Z誘電体層53Cよりも音響インピーダンスの高い高Z誘電体層55Aおよび55Bの表面で上方へ反射されるので、当該板波の伝搬損失を低減できる。なお、高Z誘電体層55Aおよび55Bは、配線電極41および42との距離が大きいため、高Z誘電体層55Aおよび55Bと配線電極41および42とで形成される容量成分は小さい。よって、圧電層52からの距離が高Z誘電体層55Aよりも大きい高Z誘電体層55Bをパターニング加工せず、高Z誘電体層55Aを、金属層54Bと高Z誘電体層55Bとの間の大きさにパターニング加工してもよい。つまり、圧電層52からの距離が小さいものから大きくなるにつれ、形成面積を大きくしてもよい。高Z誘電体層55Aないしは55Bの形成面積を小さくすることで、高Z誘電層による基板の応力を低減することもできる。本変形例では、圧電層52からの距離が小さい順かつ形成面積の小さい順に、金属層54A、54B、高Z誘電体層55Aおよび55Bと配置されている。
【0095】
以上より、本変形例に係る音響反射層58の構成によれば、弾性波(板波)の主モードを金属層54Bの上方に閉じ込め、不要な容量成分を排除しつつ弾性波伝搬損失を低減できる。
【0096】
なお、低Z誘電体層53Bの膜厚と低Z誘電体層53Dの膜厚とは、異なっていることが好ましい。これによれば、低Z誘電体層53Bと金属層54Bとの界面において弾性波(板波)の主モードを反射させるのに最適な低Z誘電体層53Bおよび金属層54Bの膜厚構成比と、低Z誘電体層53Dと高Z誘電体層55Bとの界面において弾性波(板波)の主モードを反射させるのに最適な低Z誘電体層53Dおよび高Z誘電体層55Bの膜厚構成比とを個別に調整できる。つまり、弾性波(板波)の主モードの閉じ込め効率がより向上するとともに、音響反射層の膜厚対称性を崩すことで不要波をより低減できる。
【0097】
なお、本変形例では、音響反射層58が金属層として2つの金属層54Aおよび54Bを有し、かつ、第2誘電体層として2つの高Z誘電体層55Aおよび55Bを有する構成を例示したが、金属層および第2誘電体層のうちの一方が1層であってもよい。
【0098】
また、音響反射層57は、金属層として3以上の金属層または第2誘電体層として3以上の高Z誘電体層の少なくとも一方を有していてもよい。
【0099】
(実施の形態2)
図6は、実施の形態2に係る高周波フロントエンド回路3および通信装置6を示す回路構成図である。本実施の形態に係る高周波フロントエンド回路3および通信装置6では、第1フィルタ1Cおよび第2フィルタ1Dに、実施の形態1に係る弾性波装置1、1Aおよび1Bのいずれかが適用される。
【0100】
図6に示すように、高周波フロントエンド回路3および通信装置6では、高周波信号を増幅するため、第1端子32CとRFIC4との間、および、第2端子32DとRFIC4との間に、それぞれLNA(Low Noise Amplifier)60Cおよび60D(増幅回路)が設けられている。また、アンテナ素子2との接続状態を切り替えるため、第1フィルタ1Cとアンテナ共通端子35との間、および、第2フィルタ1Dとアンテナ共通端子35との間に、マルチポートスイッチ105が設けられている。マルチポートスイッチ105は、同時にON/OFFすることができるスイッチであり、第1フィルタ1Cがアンテナ共通端子35に接続されているとき、すなわち、第1フィルタ1Cが信号処理をしている場合に、第2フィルタ1Dもアンテナ共通端子35に接続されるようにすることができる。
【0101】
このような回路構成を有する高周波フロントエンド回路3および通信装置6によれば、第1フィルタ1Cおよび第2フィルタ1Dの弾性波の主モードを金属層の上方に閉じ込め、不要な容量成分を排除しつつ弾性波伝搬損失を低減できる。よって、高周波伝搬損失が低減された高周波フロントエンド回路3および通信装置6を提供できる。
【0102】
また、本実施の形態では、第1フィルタ1Cおよび第2フィルタ1Dを受信フィルタとしているが、それに限られず、第1フィルタ1Cおよび第2フィルタ1Dを送信フィルタとしてもよい。このとき、例えば、第1フィルタ1CとRFIC4との間に位置するLNA60C、および、第2フィルタ1DとRFIC4との間に位置するLNA60Dを、PA(Power Amplifier)に置き換えることで、送信可能な通信装置6を構成することができる。
【0103】
また、第1フィルタ1Cを送信フィルタとし、第2フィルタ1Dを受信フィルタとしてもよい。このとき、例えば、第1フィルタ1CとRFIC4との間に位置するLNA60CをPAに置き換えることで、送受信可能な通信装置6を構成することができる。
【0104】
(その他の形態)
以上、実施の形態1に係る弾性波装置1、1Aおよび1B、ならびに、実施の形態2に係る高周波フロントエンド回路3および通信装置6について、実施の形態および変形例に基づいて説明したが、本発明は、上記実施の形態および変形例に限定されるものではない。上記実施の形態および変形例における任意の構成要素を組み合わせて実現される別の実施の形態や、上記実施の形態に対して本発明の主旨を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例や、本発明に係る弾性波装置、高周波フロントエンド回路および通信装置を内蔵した各種機器も本発明に含まれる。
【0105】
また、実施の形態1における弾性波装置1、1Aおよび1Bは、
図1Bに示されたラダー型の回路構成に限定されず、縦結合型共振回路、横結合型共振回路、および、トランスバーサル型共振回路などで構成されていてもよい。