(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように帯状体と被覆電線とが溶着されているワイヤハーネスにおいて、帯状体と被覆電線とが強固に溶着されている場合がありうる。このような場合において、例えば被覆電線に帯状体から剥離する方向への力がかけられると、
図8に示すように、帯状体90と被覆電線92とが剥離する代わりに、被覆電線92の被覆94が破断する恐れがある。被覆電線92の被覆94が破断してしまうと、被覆電線92の芯線96が露出し、短絡などが生じる恐れがある。
【0005】
そこで本発明は、シート部材と線状伝送部材の被覆とが直接固定されている配線部材において、線状伝送部材にシート部材から剥離する力がかけられた際、線状伝送部材の被覆が破断することを抑制できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、第1の態様に係る配線部材は、伝送線本体と、前記伝送線本体を覆う被覆とを含む線状伝送部材と、主面上に配設された前記線状伝送部材の前記被覆と直接固定されて前記線状伝送部材を保持する線材保持部と、前記線材保持部の周囲に設けられ前記線状伝送部材に剥離する力がかけられた際に前記被覆の破断及び前記線材保持部と前記被覆との剥離よりも先に破断される被覆破断抑制部と、を含むシート部材と、を備える。
【0007】
第2の態様に係る配線部材は、第1の態様に係る配線部材であって、前記被覆破断抑制部は、前記シート部材が厚み方向に分離する態様で破断するように形成されている。
【0008】
第3の態様に係る配線部材は、第1又は第2の態様に係る配線部材であって、前記被覆破断抑制部は、前記シート部材のうち前記線状伝送部材の側方部が面内方向に分離する態様で破断するように形成されている。
【0009】
第4の態様に係る配線部材は、第3の態様に係る配線部材であって、前記シート部材が断続的に破断された断続的破断部が前記シート部材のうち前記線状伝送部材の側方部に前記線状伝送部材の長手方向に沿って形成されている。
【0010】
第5の態様に係る配線部材は、第4の態様に係る配線部材であって、前記断続的破断部は、前記シート部材のうち前記線状伝送部材側の主面から厚み方向中間部までの深さで形成されている。
【0011】
第6の態様に係る配線部材は、第1から第5のいずれか1つの態様に係る配線部材であって、前記シート部材は不織布で形成された層を含み、前記不織布の内部で剥離することによって前記被覆破断抑制部の破断が生じるように形成されている。
【0012】
第7の態様に係る配線部材は、第6の態様に係る配線部材であって、前記シート部材は、前記不織布で形成された層に積層されて、前記線状伝送部材と直接固定されている層をさらに含む。
【0013】
第8の態様に係る配線部材は、第1から第7のいずれか1つの態様に係る配線部材であって、前記被覆破断抑制部は前記シート部材の端部に設けられている。
【発明の効果】
【0014】
各態様によると、被覆破断抑制部が被覆の破断及び線材保持部と被覆との剥離よりも先に破断するため、被覆の破断を抑制することができる。
【0015】
第2の態様によると、シート部材の一部は面内方向につながったままとすることができる。
【0016】
第3の態様によると、厚み方向に分離するように形成されている場合には、シート部材のうち線状伝送部材の側方部が面内方向に分離する態様で破断するように形成されていることによって、厚み方向に分離する範囲を小さくすることができる。また厚み方向に分離しないように形成されている場合には、シート部材のうち線状伝送部材の側方部が面内方向に分離する態様で破断するように形成されていることによって、線材保持部の厚みが薄くなることを抑制できる。
【0017】
第4の態様によると、断続的破断部によってシート部材のうち線状伝送部材の側方部が破断しやすい。
【0018】
第5の態様によると、シート部材の厚み方向への破断も生じさせることができる。
【0019】
第6の態様によると、不織布によって簡易に被覆破断抑制部を形成することができる。
【0020】
第7の態様によると、線状伝送部材と直接固定されている層とは異なる層に不織布の層を設けることができる。
【0021】
線状伝送部材を剥離させる力は、シート部材の端部にかかりやすい。この場合でも、第8の態様によると、被覆破断抑制部はシート部材の端部に設けられているため、シート部材の端部において被覆の破断を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
{実施形態}
以下、実施形態に係る配線部材について説明する。
図1は、実施形態に係る配線部材10を示す平面図である。
図2は、
図1のII−II線に沿って切断した横断面図である。
【0024】
配線部材10は、車両等に配設されて、車両に搭載された機器に電力、信号などを授受するための部材である。配線部材10は、線状伝送部材20と、シート部材30と、を備える。
【0025】
線状伝送部材20は、電気又は光等を伝送する線状の部材であればよい。線状伝送部材20は、電気又は光等を伝送する伝送線本体22と、伝送線本体22を覆う被覆24とを含む。例えば、線状伝送部材20は、芯線22と芯線22の周囲の被覆24とを有する一般電線であってもよいし、シールド線、ツイスト線、エナメル線、ニクロム線、光ファイバ等であってもよい。以下では、線状伝送部材20が一般電線である例で説明する。
図2に示す例では、伝送線本体22として複数の素線23が撚られた芯線22が採用されている。もちろん芯線22は、1本の素線であってもよい。被覆24は、樹脂材料が芯線22の周囲に押出成形されるなどして形成される。
【0026】
電気を伝送する線状伝送部材20としては、各種信号線、各種電力線であってもよい。電気を伝送する線状伝送部材20は、信号又は電力を空間に対して送る又は空間から受けるアンテナ、コイル等として用いられてもよい。
【0027】
また、線状伝送部材20は、単一の線状物であってもよいし、複数の線状物の複合物(ツイスト線、複数の線状物を集合させてこれをシースで覆ったケーブル等)であってもよい。
【0028】
線状伝送部材20の端部には、線状伝送部材20と相手部材との接続形態に応じて、適宜端子、コネクタC等が設けられる。
【0029】
シート部材30の一方主面上に線状伝送部材20が配設されている。シート部材30は、複数の線状伝送部材20を並んだ状態に保持する。シート部材30は、線状伝送部材20の経路に沿って延びる帯状に形成されている。
図1に示す例では、シート部材30は、直線状に延びるように形成されている。
【0030】
なお
図1に示す例では、シート部材30上に線状伝送部材20が直線状に配設されている。もっとも、シート部材30上における線状伝送部材20の経路は適宜設定されていればよく、シート部材30上で曲がって配設されていてもよいし、直線状に配設された部分と曲がって配設された部分との両方が存在していてもよい。線状伝送部材20がシート部材30上に曲がって配設される部分がある場合、シート部材30も曲がって形成されていてもよい。
【0031】
また
図1に示す例では、複数本の線状伝送部材20が並行に延びるように配設されているが、複数本の線状伝送部材20の経路は適宜設定されていればよく、シート部材30上で分岐したり、交差したりするように異なる経路で配設されていてもよい。この場合、シート部材30も分岐したり、交差したりするように形成されていてもよい。
【0032】
また
図1に示す例では、一のシート部材30に同じ線状伝送部材20が複数本配設されているが、複数本の線状伝送部材20の径、用途、構造等は適宜設定されていればよく、径、用途、又は構造等の異なる線状伝送部材20が同じシート部材30に配設されていてもよい。
【0033】
線状伝送部材20とシート部材30とは、直接固定されている。ここで直接固定とは、例えば線状伝送部材20とシート部材30とのうち少なくとも一方に含まれる樹脂が溶かされることによって接触部分が直接くっついて固定されることを言う。
【0034】
係る直接固定の状態が形成されるに当たり、樹脂は、例えば、熱によって溶かされることも考えられるし、溶剤によって溶かされることも考えられる。つまり、直接固定の状態としては、熱による直接固定の状態であってもよいし、溶剤による直接固定の状態であってもよい。好ましくは、熱による直接固定の状態であるとよい。
【0035】
このとき直接固定の状態を形成する手段は特に限定されるものではなく、溶着、融着、溶接等の公知の手段を含む各種手段を用いることができる。例えば、溶着によって熱による直接固定の状態を形成する場合、超音波溶着、加熱加圧溶着、熱風溶着、高周波溶着など種々の溶着手段を採用することができる。またこれらの手段によって直接固定の状態が形成されると、線状伝送部材20とシート部材30とは、その手段による直接固定の状態とされる。具体的には、例えば、超音波溶着によって直接固定の状態が形成されると、線状伝送部材20とシート部材30とは、超音波溶着による直接固定の状態とされる。溶着によって熱による直接固定の状態を形成した部分(線状伝送部材20とシート部材30との固定部分)を溶着部、このうち、超音波溶着による固定部分を超音波溶着部、加熱加圧溶着による固定部分を加熱加圧溶着部等と称してもよい。
【0036】
直接固定の場合、線状伝送部材20の被覆24に含まれる樹脂のみが溶けていてもよいし、シート部材30に含まれる樹脂のみが溶けていてもよい。また直接固定の場合、線状伝送部材20の被覆24に含まれる樹脂とシート部材30に含まれる樹脂の両方が溶けていてもよい。
【0037】
なお線状伝送部材20の長手方向に沿って線状伝送部材20とシート部材30とが直接固定される範囲は特に限定されるものではない。例えば、線状伝送部材20の長手方向に沿って線状伝送部材20とシート部材30とが一連に直接固定されていてもよいし、断続的に直接固定されていてもよい。
【0038】
シート部材30は、湾曲しつつ複数の線状伝送部材20を平面的に位置決めした状態で保持できる程度の剛性を有するシート部材30であってもよいし、平らな状態を保った状態で複数の線状伝送部材20を2次元的に位置決めした状態で保持できる程度の剛性を有するシート部材30であってもよい。シート部材30は、部分的に壁が立設される等、立体的な形状部分を有していてもよい。
【0039】
シート部材30を構成する材料は特に限定されるものではないが、シート部材30は、例えばPVC(ポリ塩化ビニル)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)などの樹脂を含む材料によって形成される。シート部材30は、内部が一様に埋ったシート材であってもよいし、不織布、織地、編地などの布地等であってもよい。シート部材30は、金属などの材料を含むこともあり得る。
【0040】
シート部材30は、単層であってもよいし、複数層積層されていてもよい。複数層積層されている場合、例えば、樹脂層と樹脂層とが積層されていることが考えられる。また例えば、樹脂層と金属層とが積層されていることが考えられる。
【0041】
ここではシート部材30は、第1層32と、第2層34とを含む。第1層32及び第2層34は、厚み方向に重なるように相互に積層されている。第1層32は、シート部材30の一方主面として露出している。第1層32上に線状伝送部材20が配設されている。第1層32が、被覆24と直接固定されている。
【0042】
例えば、第1層32は、第2層34よりも被覆24と直接固定しやすい材料で形成され、第2層34は、保護性能、防音性能などの点で第1層32と異なる機能又は高い機能を有する材料で形成される。このようなシート部材30として、例えば、第1層32は、線状伝送部材20の被覆24と同じ樹脂を材料として内部が一様に埋まったシート状に形成されて、第2層34は、線状伝送部材20の被覆24と異なる樹脂を材料とした不織布で形成されているシート部材30を採用することができる。このシート部材30において例えば、第1層32の樹脂材料が溶けて第2層34の繊維間に入り込んだ状態で固まることによって第1層32と第2層34とが積層した状態に固定されている。
【0043】
シート部材30には、線材保持部36と、被覆破断抑制部40とが設けられている。
【0044】
線材保持部36は、主面上に配設された線状伝送部材20の被覆24と直接固定されて線状伝送部材20を保持する部分である。上述したようにここでは第1層32の主面上に線状伝送部材20が配設されて直接固定されている。このため、ここでは第1層32のうち線状伝送部材20が配設されて直接固定された部分が線材保持部36とされている。このとき、線材保持部36は、被覆24と相性の良い材料で形成されるとともに、被覆24の周囲になるべく多く接することができるように一部が主面上に盛り上がって形成された部37を有する。この盛り上がり部37は、例えば、直接固定時に、第1層32のうち線状伝送部材の側方部分において線状伝送部材から離れた部分が押圧されて、線状伝送部材側に寄せられることによって形成される。この盛り上がり部37が形成されることにより、線材保持部36と被覆24との間で、剥離強度を含む固定強度が高められ、線材保持部36と被覆24とが剥離しにくくなっている。
【0045】
被覆破断抑制部40は、線材保持部36の周囲に設けられる。被覆破断抑制部40は、線状伝送部材20に剥離する力がかけられた際に、被覆24の破断及び線材保持部36と被覆24との剥離よりも先に破断される部分である。ここでは被覆破断抑制部40として、厚み方向分離促進部42が形成されている。またここでは被覆破断抑制部40として、面内方向分離促進部46も形成されている。
【0046】
厚み方向分離促進部42は、線状伝送部材20に剥離する力がかけられた際に、被覆24の破断及び線材保持部36と被覆24との剥離よりも先に、シート部材30が厚み方向に分離する態様で破断するように形成されている。ここでは第2層34を構成する不織布が、厚み方向分離促進部42として機能する。すなわち第2層34を構成する不織布の内部で剥離することによって、シート部材30が厚み方向に分離する態様の破断が生じるように形成されている。ここで不織布は、繊維同士が相互に絡み合ったり接着したりして結合することによって形成される。不織布の内部で剥離するとは、不織布の一部で集中的に繊維が、ほどけたり、ちぎれたりして不織布が分離することを言う。
【0047】
不織布は、例えば以下のように形成される。すなわち、まず乾式法、スパンボンド法などの種々の方法によって短繊維又は長繊維がシート状に集合したウェブが形成される。そして、積層された複数のウェブ間の繊維同士がサーマルボンド、ニードルパンチなどの種々の方法で結合されて、不織布となる。このとき、例えばウェブを構成する繊維を少なくしたり、ウェブ間の結合力を弱くしたりすることによって、繊維同士の結合力を弱くすることができ、もって被覆24の破断よりも先に不織布の内部の剥離を生じさせやすくすることができる。
【0048】
不織布の内部において、一部が他の部分よりも剥離が生じやすいように形成されていてもよいし、不織布の内部における剥離のしやすさが一様となるように形成されていてもよい。前者の場合、剥離する位置を調整しやすくなる。後者の場合、応力のかかり具合などによって、適宜任意の箇所が剥離する。
【0049】
なお、厚み方向分離促進部42は、第1層32内で分離するように形成されていることもあり得るし、第1層32と第2層34との間で分離するように形成されていることもあり得る。これらの例について、詳しくは後述する。シート部材30が、第1層32と第2層34との間で分離することだけでなく、第1層32内又は第2層34内で分離することを含めて、厚み方向のいずれかの位置で分離することを層間剥離などと呼ぶこともある。
【0050】
面内方向分離促進部46は、線状伝送部材20に剥離する力がかけられた際に、被覆24の破断及び線材保持部36と被覆24との剥離よりも先に、シート部材30のうち線状伝送部材20の側方部が面内方向に分離する態様で破断するように形成されている。ここでは面内方向分離促進部46として、断続的破断部48が設けられている。断続的破断部48は、
図1に示すように、シート部材30のうち線状伝送部材20の側方部に線状伝送部材20の長手方向に沿って断続的に破断されて形成されている。断続的破断部48は、いわゆるミシン目状に形成された部分である。線状伝送部材20の長手方向に沿って短破断部49が間隔をあけて複数形成されて断続的破断部48をなしている。
【0051】
このとき断続的破断部48は、
図2に示すように、シート部材30のうち線状伝送部材20側の主面から厚み方向中間部までの深さで形成されている。これにより、シート部材30が面内方向分離促進部46における破断に加えて、厚み方向分離促進部42でも破断し得る。つまり、面内方向分離促進部46としての断続的破断部48がシート部材30の厚み寸法よりも小さい深さ寸法で形成されることによって、厚み方向に応力が集中しやすい箇所が存在し、この部分で厚み方向に分離するように設けられている。従って、シート部材30の厚み寸法よりも小さい深さ寸法で形成された断続的破断部48は、厚み方向分離促進部42としても機能しているととらえることができる。
【0052】
なお
図1に示す例では、線状伝送部材20の間にも断続的破断部48が形成されているが、このことは必須の構成ではない。例えば、断続的破断部48は、並列方向の一番外側の線状伝送部材20の外側方に形成されているとよい。また例えば、断続的破断部48は、被覆24の強度の弱い線状伝送部材20を挟む位置に形成されているとよい。被覆24の強度の弱い線状伝送部材20としては、例えば被覆24の厚み寸法が小さい線状伝送部材20などが考えられる。線状伝送部材20が一般電線である場合に、被覆24の厚み寸法が小さい場合としては、例えば径の小さい一般電線が用いられることが考えられる。径の小さい一般電線としては、例えば電流値の小さい信号線などに用いられることが多い。
【0053】
被覆破断抑制部40は、シート部材30の端部(面内方向端部)に設けられている。ここでは、面内方向に一様でない断続的破断部48が、シート部材30の端部に設けられている。なお、不織布の内部の剥離は、面内方向のいずれの位置でも一様とされている。
【0054】
被覆破断抑制部40の破断強度が、線材保持部36と被覆24との剥離強度及び被覆24の破断強度より弱く形成されることによって、線状伝送部材20に剥離する力がかけられた際に、被覆破断抑制部40が被覆24の破断及び線材保持部36と被覆24との剥離よりも先に破断されることも考えられる。被覆破断抑制部40の破断強度、線材保持部36と被覆24との剥離強度及び被覆24の破断強度については、例えば同じ種類の剥離試験(例えばJIS K6854の各試験)で別々に試験した結果を用いて評価することができる。このように被覆破断抑制部40の破断強度が、線材保持部36と被覆24との接合強度及び被覆24の機械的強度より弱く形成されていると、被覆破断抑制部40が被覆24の破断及び線材保持部36と被覆24との剥離よりも先に破断しやすくなり、被覆24の破断を抑制することができる。
【0055】
このとき線材保持部36と被覆24との剥離強度が、被覆24の破断強度より強く形成されていると、線材保持部36と被覆24との剥離よりも、被覆24の破断が先に生じやすい。このような場合でも、これらよりも強度が強い被覆破断抑制部40が設けられているため、被覆24の破断を抑制することができる。
【0056】
<動作>
線状伝送部材20にシート部材30から剥離する力がかけられた際の配線部材10の動作について、
図3及び
図4を加えて説明する。
図3及び
図4は、それぞれ実施形態に係る配線部材10に線状伝送部材20をシート部材30から剥離させる力がかけられた際の動作を説明する側面図及び横断面図である。配線部材10に線状伝送部材20をシート部材30から剥離させる力がかけられる動作としては特に限定されるものではなく、配線部材10の製造時、車両への組付時又は組付け後など、配線部材10に想定される種々の状態において起こり得る動作である。
図3に示す例では、シート部材30における線状伝送部材の両側方部がクランプなどの固定部品によって車両に固定されたり、シート部材30における他方主面が接着剤又は両面粘着テープなどによって車両に固定されたりした状態で、コネクタCを移動させる動作が想定されている。
【0057】
上述したように、線状伝送部材20にシート部材30から剥離する力がかけられた際、シート部材30からの線状伝送部材20の剥離および被覆24の破断よりも先に、被覆破断抑制部40が破断する。ここでは、厚み方向分離促進部42及び面内方向分離促進部46が破断する。
【0058】
すなわち、線状伝送部材20に剥離する力がかけられた際に、断続的破断部48における複数の短破断部49が繋がって一の長破断部となり、もってシート部材30が面内方向に分離する。このときシート部材30において厚み方向に沿って断続的破断部48が達していない他方主面側部分は面内方向に分離せず、つながったままとなる。
【0059】
また線状伝送部材20に剥離する力がかけられた際に、不織布の内部の剥離が生じ、もってシート部材30が厚み方向に分離する。より詳細には、シート部材30の厚み方向において断続的破断部48の底の部分に応力が集中する。これにより、シート部材30の面内方向における断続的破断部48の間の部分において、不織布の内部の剥離が生じ、もって厚み方向に分離する。
【0060】
このように線状伝送部材20にシート部材30から剥離する力がかけられた際、シート部材30からの線状伝送部材20の剥離および被覆24の破断よりも先に、被覆破断抑制部40が破断することによって、シート部材30と線状伝送部材20とが強固に固定されている場合でも、被覆24の破断が抑制される。
【0061】
なお、被覆破断抑制部40が破断されていない状態が、配線部材10が車両に搭載された通常状態であってもよい。この場合、例えば搭載作業中の通常行われないイレギュラーな作業、又は車両搭載後のイレギュラーな動作によって、被覆24の破断の代わりに被覆破断抑制部40が破断されうる。また被覆破断抑制部40が破断された状態が、配線部材10が車両に搭載された通常状態であってもよい。この場合、例えば搭載作業として通常行われる作業によって、被覆24の破断の代わりに被覆破断抑制部40が破断されうる。またこの場合、配線部材10が車両に搭載された通常状態で、被覆破断抑制部40が破断する余地が残っていてもよい。
【0062】
以上のように構成された配線部材10によると、被覆破断抑制部40が被覆24の破断及び線材保持部36と被覆24との剥離よりも先に破断するため、被覆24の破断を抑制することができる。
【0063】
また被覆破断抑制部40は、シート部材30が厚み方向に分離する態様で破断するように形成されているため、シート部材30の一部は面内方向につながったままとすることができる。
【0064】
また被覆破断抑制部40は、シート部材30のうち線状伝送部材20の側方部が面内方向に分離する態様で破断するように形成されているため、厚み方向分離促進部42と併用された場合に、面内方向の一部を厚み方向に分離させることができる。
【0065】
またシート部材30が断続的に破断された断続的破断部48がシート部材30のうち線状伝送部材20の側方部に線状伝送部材20の長手方向に沿って形成されているため、断続的破断部48によってシート部材30のうち線状伝送部材20の側方部が破断しやすい。
【0066】
また断続的破断部48は、シート部材30のうち線状伝送部材20側の主面から厚み方向中間部までの深さで形成されているため、シート部材30の厚み方向への破断も生じさせることができる。
【0067】
また不織布の内部で剥離することによって被覆破断抑制部40の破断が生じるように形成されているため、不織布によって簡易に被覆破断抑制部40を形成することができる。
【0068】
またシート部材30は、不織布で形成された第2層34に積層されて、線状伝送部材20と直接固定されている第1層32をさらに含むため、線状伝送部材20と直接固定されている第1層32とは異なる第2層34に不織布の層を設けることができる。
【0069】
線状伝送部材20を剥離させる力は、シート部材30の端部にかかりやすい。より詳細には、またシート部材30の面内方向中間部は、別途カバーなどが設けられることによって剥離力が線状伝送部材20に及びにくくすることが容易である。これに対してシート部材30の面内方向端部は、別途カバーなどが設けられても、剥離力が線状伝送部材20に及びやすい。このような場合でも、被覆破断抑制部40がシート部材30の端部に設けられているため、シート部材30の端部において被覆24の破断を抑制できる。
【0070】
{変形例}
図5は、第1変形例に係る配線部材110に線状伝送部材20をシート部材130から剥離させる力がかけられた際の動作を説明する横断面図である。
【0071】
第1変形例に係る配線部材110は、第1層132内で厚み方向に分離するように形成されている事例である。例えば、断続的破断部148の深さ寸法が第1層132の厚み寸法よりも小さい値に設定されるなどして、第1層132内に応力集中が起こりやすいことによって、第1層132内で厚み方向に分離するように形成される。また応力集中が起こりやすい形状が付与されない場合には、例えば第1層132の剥離強度が、第1層132と第2層134との結合力、及び第2層134の剥離強度よりも弱くされることによって、第1層132と第2層134との間で厚み方向に分離するように形成される。
【0072】
図6は、第2変形例に係る配線部材210に線状伝送部材20をシート部材230から剥離させる力がかけられた際の動作を説明する横断面図である。
【0073】
第2変形例に係る配線部材210は、第1層232と第2層234との間で厚み方向に分離するように形成されている事例である。例えば、断続的破断部248の深さ寸法が第1層232の厚み寸法と同じ値に設定されるなどして、第1層232と第2層234との間に応力集中が起こりやすいことによって、第1層232と第2層234との間で厚み方向に分離するように形成される。また応力集中が起こりやすい形状が付与されない場合には、例えば第1層232と第2層234との結合力が、第1層232の剥離強度、及び第2層234の剥離強度よりも弱くされることによって、第1層232と第2層234との間で厚み方向に分離するように形成される。
【0074】
図7は、第3変形例に係る配線部材310に線状伝送部材20をシート部材330から剥離させる力がかけられた際の動作を説明する横断面図である。
【0075】
第3変形例に係る配線部材310は、厚み方向分離促進部42が設けられていない事例である。例えば、断続的破断部348の深さ寸法がシート部材330の厚み寸法と同じ値に設定されるなどして、厚み方向分離促進部42が設けられていない状態とすることができる。この場合、シート部材330のうち断続的破断部348の間の厚み方向全体部分が、面内方向に分離する。厚み方向分離促進部42が設けられていない場合であって、面内方向分離部が設けられている場合、分離後も線材保持部336の厚みが薄くなることを抑制できる。
【0076】
そのほか、これまでシート部材30に面内方向分離促進部46が設けられるものとして説明してきたが、このことは必須の構成ではない。シート部材30に面内方向分離促進部46が設けられていない場合もあり得る。例えば、実施形態におけるシート部材30に断続的破断部48が設けられていない場合などが考えられる。この場合、シート部材のうち厚み方向に分離する部分が面内方向全体的に広がっていく。なおこの場合でも、通常、線状伝送部材20をシート部材から剥離させる力は面内方向の一部にかかるものであり、シート部材全体が厚み方向に分離することは抑制される。
【0077】
またこれまで面内方向分離促進部46として、断続的破断部48が設けられるものとして説明してきたが、このことは必須の構成ではない。面内方向分離促進部46として、例えば厚み方向に凹む溝、縁部の切れ込みなど、応力が集中しやすいその他の構造が形成されていてもよい。
【0078】
またこれまで線状伝送部材20を剥離させる力がシート部材30の端部に位置する部分にかかるものとして説明してきたが、このことは必須の構成ではない。例えば、シート部材30の中間部において被覆24とシート部材30が直接固定されていない部分が存在し、その部分の線状伝送部材20が周辺部材にひっかかるなどして、線状伝送部材20を剥離させる力がシート部材30の中間部に位置する部分にかかる場合もあり得る。従って、そのような箇所に、断続的破断部48などの面内方向に一様でない被覆破断抑制部40が設けられていてもよい。
【0079】
なお上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
【0080】
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
シート部材と線状伝送部材の被覆とが直接固定されている配線部材において、線状伝送部材にシート部材から剥離する力がかけられた際、線状伝送部材の被覆が破断することを抑制できる技術を提供することを目的とする。配線部材は、線状伝送部材と、シート部材と、を備える。線状伝送部材は、伝送線本体と、前記伝送線本体を覆う被覆とを含む。シート部材は、主面上に配設された前記線状伝送部材の前記被覆と直接固定されて前記線状伝送部材を保持する線材保持部と、前記線材保持部の周囲に設けられ前記線状伝送部材に剥離する力がかけられた際に前記被覆の破断及び前記線材保持部と前記被覆との剥離よりも先に破断される被覆破断抑制部と、を含む。