(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記活性部ライフタイム制御部は、前記半導体基板の上面と垂直な深さ方向において、前記半導体基板の中央よりも上側に配置された上側活性部ライフタイム制御部を有し、
前記第1方向において、前記上側活性部ライフタイム制御部と前記上側端部ライフタイム制御部とが連続していない
請求項3に記載の半導体装置。
前記活性部ライフタイム制御部は、前記半導体基板の上面と垂直な深さ方向において、前記半導体基板の中央よりも下側に配置された下側活性部ライフタイム制御部を有し、
前記第2方向において、前記下側活性部ライフタイム制御部と前記下側端部ライフタイム制御部とが連続している
請求項6に記載の半導体装置。
前記端部ライフタイム制御部は、前記半導体基板の上面と垂直な深さ方向において、前記半導体基板の中央よりも下側に配置された下側端部ライフタイム制御部を有し、且つ、前記半導体基板の中央よりも上側に配置された上側端部ライフタイム制御部を有さない
請求項1または2に記載の半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0017】
本明細書においては半導体基板の深さ方向と平行な方向における一方の側を「上」、他方の側を「下」と称する。基板、層またはその他の部材の2つの主面のうち、一方の面を上面、他方の面を下面と称する。「上」、「下」の方向は重力方向、または、半導体装置の実装時における基板等への取り付け方向に限定されない。
【0018】
本明細書では、X軸、Y軸およびZ軸の直交座標軸を用いて技術的事項を説明する場合がある。本明細書では、半導体基板の上面と平行な面をXY面とし、半導体基板の上面と垂直な深さ方向をZ軸とする。
【0019】
各実施例においては、第1導電型をN型、第2導電型をP型とした例を示しているが、第1導電型をP型、第2導電型をN型としてもよい。この場合、各実施例における基板、層、領域等の導電型は、それぞれ逆の極性となる。また、本明細書においてP+型(またはN+型)と記載した場合、P型(またはN型)よりもドーピング濃度が高いことを意味し、P−型(またはN−型)と記載した場合、P型(またはN型)よりもドーピング濃度が低いことを意味する。
【0020】
本明細書においてドーピング濃度とは、ドナーまたはアクセプタ化した不純物の濃度を指す。本明細書において、ドナーおよびアクセプタの濃度差をドーピング濃度とする場合がある。また、ドーピング領域におけるドーピング濃度分布のピーク値を、当該ドーピング領域におけるドーピング濃度とする場合がある。
【0021】
図1は、本発明の一つの実施形態に係る半導体装置100の上面の構造を示す図である。半導体装置100は、半導体基板10を備える。半導体基板10は、シリコン基板であってよく、炭化シリコン基板であってよく、窒化ガリウム等の窒化物半導体基板等であってもよい。本例の半導体基板10はシリコン基板である。本明細書では、上面視における半導体基板10の外周の端部を、外周端140とする。上面視とは、半導体基板10の上面側からZ軸と平行に見た場合を指す。
【0022】
半導体装置100は、活性部120およびエッジ終端構造部90を備える。活性部120は、半導体装置100をオン状態に制御した場合に半導体基板10の上面と下面との間で主電流が流れる領域である。つまり、半導体基板10の上面から下面、または下面から上面に、半導体基板10の内部を深さ方向に電流が流れる領域である。
【0023】
活性部120には、トランジスタ部70およびダイオード部80が設けられている。本明細書では、トランジスタ部70およびダイオード部80をそれぞれ素子部または素子領域と称する場合がある。素子部が設けられた領域を活性部120としてよい。なお、半導体基板10の上面視において2つの素子部に挟まれた領域も活性部120とする。
【0024】
図1の例では、素子部に挟まれてゲートランナー48が設けられている領域も活性部120に含めている。活性部120は、半導体基板10の上面視においてエミッタ電極が設けられた領域、および、エミッタ電極が設けられた領域に挟まれた領域とすることもできる。
図1の例では、トランジスタ部70およびダイオード部80の上方にエミッタ電極が設けられる。
【0025】
トランジスタ部70は、IGBT等のトランジスタを含む。ダイオード部80は、半導体基板10の上面において、予め定められた第1方向においてトランジスタ部70と交互に配置されている。第1方向は、
図1におけるX軸方向である。本明細書では第1方向を配列方向と称する場合がある。
【0026】
それぞれのダイオード部80には、半導体基板10の下面に接する領域にN+型のカソード領域が設けられている。
図1において実線で示すダイオード部80は、半導体基板10の下面にカソード領域が設けられた領域である。本例の半導体装置100において、半導体基板の下面に接する領域のうちカソード領域以外の領域は、P+型のコレクタ領域である。
【0027】
ダイオード部80は、カソード領域をZ軸方向に投影した領域である。トランジスタ部70は、半導体基板10の下面にコレクタ領域が設けられ、且つ、半導体基板10の上面にN+型のエミッタ領域を含む単位構造が周期的に設けられた領域である。X軸方向におけるダイオード部80とトランジスタ部70との境界は、カソード領域とコレクタ領域との境界である。本明細書では、カソード領域をZ軸方向に投影した領域を、Y軸方向に活性部120の端部まで伸ばした部分(
図1において、ダイオード部80の実線をY軸方向に延長した破線で示している)も、ダイオード部80に含める。
【0028】
活性部120において、Y軸方向における両端には、トランジスタ部70が設けられてよい。活性部120は、ゲートランナー48によりY軸方向に分割されてよい。活性部120のそれぞれの分割領域には、トランジスタ部70およびダイオード部80がX軸方向に交互に配置されている。
【0029】
エッジ終端構造部90は、半導体基板10の上面において、活性部120と半導体基板10の外周端140との間に設けられる。エッジ終端構造部90は、半導体基板10の上面において活性部120を囲むように環状に配置されてよい。本例のエッジ終端構造部90は、半導体基板10の外周端140に沿って配置されている。エッジ終端構造部90は、半導体基板10の上面側の電界集中を緩和する。エッジ終端構造部90は、例えばガードリング、フィールドプレート、リサーフおよびこれらを組み合わせた構造を有する。
【0030】
半導体基板10の上面において、エッジ終端構造部90および活性部120の間には、ゲート金属層50が設けられている。ゲート金属層50と半導体基板10との間には層間絶縁膜が設けられているが、
図1では省略している。
【0031】
ゲート金属層50は、半導体基板10の上面視で、活性部120を囲うように設けられてよい。ゲート金属層50は、活性部120の外に設けられるゲートパッド116と電気的に接続される。ゲートパッド116は、ゲート金属層50と、活性部120との間に配置されてよい。ゲート金属層50と活性部120との間には、エミッタ電極と電気的に接続されるエミッタパッド118等のパッドが設けられてよい。
【0032】
ゲート金属層50はアルミニウムまたはアルミニウム‐シリコン合金で形成されてよい。ゲート金属層50は、トランジスタ部70に電気的に接続され、トランジスタ部70にゲート電圧を供給する。
【0033】
ゲートランナー48は、ゲート金属層50と電気的に接続され、活性部120の上方まで延伸する。少なくとも一つのゲートランナー48は、活性部120をX軸方向に横断して設けられてよい。ゲートランナー48は、トランジスタ部70にゲート電圧を供給する。ゲートランナー48は、不純物がドーピングされたポリシリコン等の半導体材料で形成されてよく、金属で形成されてもよい。ゲートランナー48は、半導体基板10の上方または内部に設けられており、半導体基板10とゲートランナー48とは絶縁膜で絶縁されている。
【0034】
本例の半導体装置100は、温度センス部110、温度センス配線112および温度センスパッド114を備える。温度センス部110は、活性部120の上方に設けられる。温度センス部110は、半導体基板10の上面視で、活性部120の中央に設けられてよい。温度センス部110は、活性部120の温度を検知する。温度センス部110は、単結晶または多結晶のシリコンで形成されるpn型温度センスダイオードであってよい。
【0035】
温度センス配線112は、半導体基板10の上面視で、活性部120の上方に設けられる。温度センス配線112は、温度センス部110と接続される。温度センス配線112は、半導体基板10の上面において活性部120と外周端140との間の領域まで延伸し、温度センスパッド114と接続される。温度センス配線112は、pn型温度センスダイオードのp型層に電気的に接続するアノード電極の配線112−1と、n型層に電気的に接続するカソード電極の配線112−2とを含んでよい。温度センスパッド114は、アノードパッド114−1と、カソードパッド114−2とを含んでよい。
【0036】
図2は、半導体基板10の内部に設けられるライフタイム制御部の配置例を示す図である。
図2においては、ライフタイム制御部が設けられる領域を、
図1に示した上面図にハッチングを付して示している。
図2においては、
図1に示した符号の一部を省略している。
【0037】
ライフタイム制御部は、半導体基板の内部に不純物を注入すること等により意図的にライフタイムキラーが形成された領域である。ライフタイムキラーは、キャリアの再結合中心であって、結晶欠陥であってよく、空孔、複空孔、これらと半導体基板10を構成する元素との複合欠陥、転位、ヘリウム、ネオンなどの希ガス元素、白金などの金属元素などでよい。ライフタイム制御部は、半導体基板10にヘリウム等を注入することで形成できる。
【0038】
ライフタイム制御部は、エッジ終端構造部90に設けられる端部ライフタイム制御部を含む。
図2においては、端部ライフタイム制御部の一例として、上側端部ライフタイム制御部150を示している。上側端部ライフタイム制御部150は、エッジ終端構造部90において半導体基板10の内部に設けられる。また、上側端部ライフタイム制御部150は、Z軸方向において半導体基板10の中央と、半導体基板10の上面との間に配置されている。
【0039】
上側端部ライフタイム制御部150は、X軸方向において少なくとも2つ以上のダイオード部80(例えばダイオード部80A、80B)と対向する範囲131に連続して設けられている。これにより、半導体装置100のターンオフ時(すなわち、トランジスタ部70のターンオフ時)において、エッジ終端構造部90からトランジスタ部70のエミッタ領域に抜けるキャリアを減少させることができる。このため、半導体装置100のターンオフ耐量が向上する。
【0040】
図2の例では、上側端部ライフタイム制御部150は、半導体基板10の上面と平行な面において活性部120を囲んで環状に設けられている。これにより、エッジ終端構造部90からトランジスタ部70のエミッタ領域に抜けるキャリアを更に減少させることができる。上側端部ライフタイム制御部150は、半導体基板10の上面において活性部120から離れて配置されてよい。
【0041】
ライフタイム制御部は、活性部120に設けられる活性部ライフタイム制御部を更に備えてよい。
図2においては、活性部ライフタイム制御部の一例として、上側活性部ライフタイム制御部152を示している。上側活性部ライフタイム制御部152は、活性部120において半導体基板10の内部に設けられる。また、上側活性部ライフタイム制御部152は、Z軸方向において半導体基板10の中央と、半導体基板10の上面との間に配置されている。
【0042】
本例の上側活性部ライフタイム制御部152の少なくとも一部は、ダイオード部80に設けられる。上側活性部ライフタイム制御部152は、ダイオード部80の全体と重なってよい。
図2の例においては、上側活性部ライフタイム制御部152のX軸方向の幅は、ダイオード部80のX軸方向の幅よりも大きい。
【0043】
また、上側活性部ライフタイム制御部152は、半導体基板10の上面と平行な面内で、第1方向と垂直な第2方向(本例ではY軸方向)において上側端部ライフタイム制御部150と連続している。なお、ライフタイム制御部が連続する(または接続する)とは、ほぼ同一濃度のライフタイムキラーが連続して設けられている状態を指してよく、ライフタイムキラーが設けられていない領域(例えば、半導体基板10の深さ方向における中心領域)よりも高濃度のライフタイムキラーが連続して設けられている状態を指してもよい。ほぼ同一濃度とは、例えば2倍以内の濃度を指す。本例において第2方向はY軸方向である。上側活性部ライフタイム制御部152は、Y軸方向において、活性部120を横断するように設けられてよい。この場合、上側端部ライフタイム制御部150のうち、Y軸方向において対向する上側端部ライフタイム制御部150−1および150−2を接続するように、上側活性部ライフタイム制御部152が設けられる。
【0044】
半導体基板10の上面において、トランジスタ部70の少なくとも一部の領域には、上側活性部ライフタイム制御部152が設けられていない。これにより、上側活性部ライフタイム制御部152に起因する、トランジスタ部70におけるリーク電流を低減できる。
【0045】
なおX軸方向において、上側活性部ライフタイム制御部152と上側端部ライフタイム制御部150とは、連続していなくてよい。つまり、上側活性部ライフタイム制御部152と上側端部ライフタイム制御部150との間に、上側のライフタイム制御部が設けられていない領域が存在する。当該領域は、X軸方向において活性部120の端部に設けられたトランジスタ部70の上方の領域であってよい。つまり、上側端部ライフタイム制御部150および上側活性部ライフタイム制御部152は、活性部120のX軸方向端部のトランジスタ部70の少なくとも一部分と重ならないように配置されている。これにより、トランジスタ部70におけるリーク電流を低減できる。
【0046】
図3は、
図1における領域130の近傍を拡大した図である。本例の半導体装置100は、半導体基板10の内部に設けられ、且つ、半導体基板10の上面に露出する、ガードリング92、ゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、P+型のウェル領域11、N+型のエミッタ領域12、P−型のベース領域14およびP+型のコンタクト領域15を備える。本明細書では、ゲートトレンチ部40またはダミートレンチ部30を単にトレンチ部と称する場合がある。また、本例の半導体装置100は、半導体基板10の上面の上方に設けられたエミッタ電極52およびゲート金属層50を備える。エミッタ電極52およびゲート金属層50は互いに分離して設けられる。
【0047】
ゲート金属層50の外側(Y軸方向正側)には、エッジ終端構造部90が配置されている。エッジ終端構造部90は、上述したように1つ以上のガードリング92を有してよい。ガードリング92は、半導体基板10の内部に設けられた、P型の領域である。ガードリング92は、ゲート金属層50の外側において、活性部120を囲んで環状に設けられる。
【0048】
エミッタ電極52およびゲート金属層50と、半導体基板10の上面との間には層間絶縁膜が設けられるが、
図3では省略している。本例の層間絶縁膜には、コンタクトホール56、コンタクトホール49およびコンタクトホール54が、当該層間絶縁膜を貫通して設けられる。
【0049】
エミッタ電極52は、コンタクトホール54を通って、半導体基板10の上面におけるエミッタ領域12、コンタクト領域15およびベース領域14と接触する。また、エミッタ電極52は、コンタクトホール56を通って、ダミートレンチ部30内のダミー導電部と接続される。エミッタ電極52とダミー導電部との間には、不純物がドープされたポリシリコン等の、導電性を有する材料で形成された接続部25が設けられてよい。接続部25と半導体基板10の上面との間には、酸化膜等の絶縁膜が設けられる。
【0050】
ゲート金属層50は、コンタクトホール49を通って、ゲートランナー48と接触する。なお
図1においては、領域130におけるゲートランナー48を省略している。活性部120の端部においては、ゲートランナー48を介さずに、ゲート金属層50とゲートトレンチ部40とが接続されてもよい。
【0051】
ゲートランナー48は、不純物がドープされたポリシリコン等で形成される。ゲートランナー48は、半導体基板10の上面において、ゲートトレンチ部40内のゲート導電部と接続される。ゲートランナー48は、ダミートレンチ部30内のダミー導電部とは接続されない。本例のゲートランナー48は、コンタクトホール49の下方から、ゲートトレンチ部40の先端部41まで設けられる。
【0052】
ゲートランナー48と半導体基板10の上面との間には、酸化膜等の絶縁膜が設けられる。ゲートトレンチ部40の先端部41においてゲート導電部は半導体基板10の上面に露出している。ゲート導電部の上方における絶縁膜には、ゲート導電部およびゲートランナー48を接続するコンタクトホールが設けられている。なお、
図3では平面視で、エミッタ電極52とゲートランナー48が重なっている箇所があるが、エミッタ電極52とゲートランナー48は図示しない絶縁膜を挟んで互いに電気的に絶縁している。
【0053】
エミッタ電極52およびゲート金属層50は、金属を含む材料で形成される。例えば、各電極の少なくとも一部の領域はアルミニウムまたはアルミニウム‐シリコン合金で形成される。各電極は、アルミニウム等で形成された領域の下層にチタンやチタン化合物等で形成されたバリアメタルを有してよく、コンタクトホール内においてタングステン等で形成されたプラグを有してもよい。
【0054】
1つ以上のゲートトレンチ部40および1つ以上のダミートレンチ部30は、半導体基板10の上面において所定の配列方向(本例ではX軸方向)に沿って所定の間隔で配列される。本例のトランジスタ部70においては、配列方向に沿って1つ以上のゲートトレンチ部40と、1つ以上のダミートレンチ部30とが交互に設けられている。
【0055】
本例のゲートトレンチ部40は、配列方向と垂直な長手方向(本例ではY軸方向)に沿って直線状に延伸する2つの直線部39と、2つの直線部39を接続する先端部41とを有してよい。先端部41の少なくとも一部は、半導体基板10の上面において曲線状に設けられることが好ましい。ゲートトレンチ部40の2つの直線部39において、長手方向に沿った直線形状の端である端部どうしを先端部41が接続することで、直線部39の端部における電界集中を緩和できる。本明細書では、ゲートトレンチ部40のそれぞれの直線部39を、一つのゲートトレンチ部40として扱う。
【0056】
少なくとも一つのダミートレンチ部30は、ゲートトレンチ部40のそれぞれの直線部39の間に設けられる。これらのダミートレンチ部30は、ゲートトレンチ部40と同様に直線部29および先端部31を有してよい。他の例では、ダミートレンチ部30は直線部29を有し、先端部31を有さなくてもよい。
図3に示した例では、トランジスタ部70において、ゲートトレンチ部40の2つの直線部39の間に、ダミートレンチ部30の2つの直線部29が配置されている。
【0057】
ダイオード部80においては、複数のダミートレンチ部30が、半導体基板10の上面においてX軸方向に沿って配置されている。ダイオード部80におけるダミートレンチ部30のXY面における形状は、トランジスタ部70に設けられたダミートレンチ部30と同様であってよい。
【0058】
ダミートレンチ部30の先端部31および直線部29は、ゲートトレンチ部40の先端部41および直線部39と同様の形状を有する。ダイオード部80に設けられたダミートレンチ部30と、トランジスタ部70に設けられた直線形状のダミートレンチ部30は、Y軸方向における長さが同一であってよい。
【0059】
エミッタ電極52は、ゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、ウェル領域11、エミッタ領域12、ベース領域14およびコンタクト領域15の上方に設けられる。ウェル領域11と、コンタクトホール54の長手方向の端のうちゲート金属層50が設けられる側の端とは、XY面内において離れて設けられる。ウェル領域11の拡散深さは、ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の深さよりも深くてよい。ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の、ゲート金属層50側の一部の領域はウェル領域11に設けられる。ゲートトレンチ部40の先端部41のZ軸方向における底部、ダミートレンチ部30の先端部31のZ軸方向における底部は、ウェル領域11に覆われていてよい。
【0060】
トランジスタ部70およびダイオード部80のそれぞれには、各トレンチ部に挟まれたメサ部60が1つ以上設けられる。メサ部60とは、トレンチ部に挟まれた半導体基板10の領域において、トレンチ部の最も深い底部よりも上面側の領域である。
【0061】
各トレンチ部に挟まれたメサ部60には、ベース領域14が設けられる。ベース領域14は、ウェル領域11よりもドーピング濃度の低い第2導電型(P−型)である。
【0062】
メサ部60のベース領域14の上面には、ベース領域14よりもドーピング濃度の高い第2導電型のコンタクト領域15が設けられる。本例のコンタクト領域15はP+型である。半導体基板10の上面においてウェル領域11は、コンタクト領域15のうちY軸方向において最も端に配置されたコンタクト領域15から、ゲート金属層50の方向に離れて設けられてよい。半導体基板10の上面において、ウェル領域11とコンタクト領域15との間には、ベース領域14が露出している。
【0063】
トランジスタ部70においては、半導体基板10の内部に設けられたドリフト領域よりもドーピング濃度が高い第1導電型のエミッタ領域12が、メサ部60−1の上面に選択的に設けられる。本例のエミッタ領域12はN+型である。エミッタ領域12の半導体基板10の深さ方向(−Z軸方向)に接するベース領域14のうち、ゲートトレンチ部40に接する部分が、チャネル部として機能する。ゲートトレンチ部40にオン電圧が印加されると、Z軸方向においてエミッタ領域12とドリフト領域との間に設けられたベース領域14において、ゲートトレンチ部40に接する部分に電子の反転層であるチャネルが形成される。ベース領域14にチャネルが形成されることで、エミッタ領域12とドリフト領域との間にキャリアが流れる。
【0064】
本例では、各メサ部60のY軸方向における両端部には、ベース領域14−eが配置されている。本例では、それぞれのメサ部60の上面において、ベース領域14−eに対してメサ部60の中央側で接する領域は、コンタクト領域15である。また、ベース領域14−eに対して、コンタクト領域15とは逆側で接する領域はウェル領域11である。
【0065】
本例のトランジスタ部70のメサ部60−1においてY軸方向両端のベース領域14−eに挟まれる領域には、コンタクト領域15およびエミッタ領域12がY軸方向に沿って交互に配置されている。コンタクト領域15およびエミッタ領域12のそれぞれは、X軸方向においてメサ部60−1を挟む一方のトレンチ部から、他方のトレンチ部まで設けられている。
【0066】
トランジスタ部70のメサ部60のうち、ダイオード部80との境界に設けられた1つ以上のメサ部60−2には、メサ部60−1のコンタクト領域15よりも面積の大きいコンタクト領域15が設けられている。メサ部60−2にはエミッタ領域12が設けられていなくてよい。本例のメサ部60−2においては、ベース領域14−eに挟まれた領域全体に、コンタクト領域15が設けられている。
【0067】
本例のトランジスタ部70の各メサ部60−1においてコンタクトホール54は、コンタクト領域15およびエミッタ領域12の各領域の上方に設けられる。メサ部60−2におけるコンタクトホール54は、コンタクト領域15の上方に設けられる。各メサ部60においてコンタクトホール54は、ベース領域14−eおよびウェル領域11に対応する領域には設けられていない。トランジスタ部70の各メサ部60におけるコンタクトホール54は、Y軸方向において同一の長さを有してよい。
【0068】
ダイオード部80において、半導体基板10の下面と接する領域には、N+型のカソード領域82が設けられる。
図3においては、カソード領域82が設けられる領域を破線で示している。半導体基板10の下面と接する領域においてカソード領域82が設けられていない領域には、P+型のコレクタ領域が設けられてよい。
【0069】
トランジスタ部70は、Z軸方向においてコレクタ領域と重なる領域のうち、コンタクト領域15およびエミッタ領域12が設けられたメサ部60と、当該メサ部60に接するトレンチ部とが設けられた領域であってよい。ただし、ダイオード部80との境界におけるメサ部60−2には、エミッタ領域12に代えてコンタクト領域15が設けられていてよい。
【0070】
ダイオード部80のメサ部60−3の上面には、ベース領域14が配置されている。ただし、ベース領域14−eに接する領域には、コンタクト領域15が設けられてもよい。コンタクト領域15の上方で、コンタクトホール54が終端している。なお、
図3の例ではダイオード部80が5つのメサ部60−3とメサ部60−3を挟む
6つのダミートレンチ部30を有しているが、ダイオード部80におけるメサ部60−3とダミートレンチ部30の数はこれに限定されない。ダイオード部80には、より多くのメサ部60−3およびダミートレンチ部30が設けられてよい。
【0071】
図2に示したように、X軸方向においてダイオード部80よりも広い範囲に、上側活性部ライフタイム制御部152が設けられてよい。
図3では、上側活性部ライフタイム制御部152が設けられる範囲を矢印で示している。上側活性部ライフタイム制御部152は、トランジスタ部70の領域のうち、X軸方向においてダイオード部80に接する一部の領域にも設けられる。
【0072】
上側活性部ライフタイム制御部152が、X軸方向においてトランジスタ部70に設けられる長さL1は、例えば100μm以上、150μm以下である。他の例では、L1は、半導体基板10のZ軸方向における厚みの1倍以上、1.5倍以下であってもよい。L1は、トランジスタ部70のX軸方向における長さの1/5以下であってよく、1/10以下であってもよい。
【0073】
また、半導体装置100は、下側活性部ライフタイム制御部162を有してもよい。下側活性部ライフタイム制御部162については後述する。
図3においては、下側活性部ライフタイム制御部162が設けられるX軸方向の範囲を矢印で示している。下側活性部ライフタイム制御部162は、トランジスタ部70の少なくとも一部の領域に設けられ、ダイオード部80の少なくとも一部の領域には設けられていない。本例の下側活性部ライフタイム制御部162は、トランジスタ部70およびダイオード部80のX軸方向における境界と、トランジスタ部70の一部およびダイオード部80の一部を含む範囲に設けられている。
【0074】
トランジスタ部70における上側活性部ライフタイム制御部152の端部と、トランジスタ部70における下側活性部ライフタイム制御部162の端部とのX軸方向の距離L2は、例えば50μm以上、100μm以下である。他の例では、距離L2は半導体基板10のZ軸方向における厚みの0.5倍以上、1.0倍以下であってもよい。
【0075】
図4は、
図2におけるA−A断面の一例を示す図である。A−A断面は、ダイオード部80、トランジスタ部70およびエッジ終端構造部90を含むXZ面と平行な断面である。
【0076】
本例の半導体装置100は、当該断面において、半導体基板10、層間絶縁膜38、エミッタ電極52およびコレクタ電極24を有する。層間絶縁膜38は、半導体基板10の上面のすくなくとも一部を覆って設けられる。層間絶縁膜38には、コンタクトホール54等の貫通孔が設けられている。コンタクトホール54により、半導体基板10の上面が露出する。層間絶縁膜38は、PSG、BPSG等のシリケートガラスであってよく、酸化膜または窒化膜等であってもよい。
【0077】
エミッタ電極52は、トランジスタ部70およびダイオード部80において、半導体基板10および層間絶縁膜38の上面に設けられる。エミッタ電極52は、コンタクトホール54の内部にも設けられており、コンタクトホール54により露出する半導体基板10の上面21と接触している。
【0078】
コレクタ電極24は、半導体基板10の下面23に設けられる。コレクタ電極24は、半導体基板10の下面23全体と接触してよい。エミッタ電極52およびコレクタ電極24は、金属等の導電材料で形成される。本明細書において、エミッタ電極52とコレクタ電極24とを結ぶ方向を深さ方向(Z軸方向)と称する。コレクタ電極24からエミッタ電極52に向かう方向をZ軸方向の正方向とする。
【0079】
上述したように、エッジ終端構造部90には、上側端部ライフタイム制御部150が設けられている。また、ダイオード部80の全体と、トランジスタ部70の一部の領域には、上側活性部ライフタイム制御部152が設けられている。上側端部ライフタイム制御部150および上側活性部ライフタイム制御部152は、半導体基板10の上面21と垂直な深さ方向において、半導体基板10の中央よりも上側に配置されている。上側端部ライフタイム制御部150および上側活性部ライフタイム制御部152は、半導体基板10の上面21から、半導体基板10の厚みの1/4以内の深さに設けられてよい。上側端部ライフタイム制御部150および上側活性部ライフタイム制御部152は、上面21からみて、トレンチ部の底部よりも深い位置に設けられてよく、ウェル領域11の底部よりも深い位置に設けられてもよい。上側端部ライフタイム制御部150および上側活性部ライフタイム制御部152は、同一の深さ位置に設けられてよく、異なる深さ位置に設けられてもよい。
【0080】
本例の上側端部ライフタイム制御部150は、X軸方向においてエッジ終端構造部90の一部の領域だけに設けられているが、エッジ終端構造部90の全体に設けられていてもよい。また、活性部120(本例ではトランジスタ部70)の一部にも上側端部ライフタイム制御部150が設けられてよい。
【0081】
上側端部ライフタイム制御部150を設けることで、エッジ終端構造部90から活性部120にキャリアが流れることを抑制できる。また、上側活性部ライフタイム制御部152を設けることで、ダイオード部80等のトレンチ部底部近傍におけるキャリアのライフタイムが低下する。これにより、ダイオード部80の逆回復特性が改善する。また、トランジスタ部70とダイオード部80との境界部にも上側活性部ライフタイム制御部152を設けることで、境界部近傍におけるキャリアの集中を抑制してターンオフ破壊、逆回復破壊、短絡破壊等の破壊耐量を改善できる。
【0082】
エッジ終端構造部90には、複数のガードリング92、複数のフィールドプレート94およびチャネルストッパ174が設けられている。ガードリング92の上面は、層間絶縁膜38により覆われている。フィールドプレート94は、金属またはポリシリコン等の導電材料で、層間絶縁膜38上に形成されている。フィールドプレート94は、層間絶縁膜38に設けられた貫通孔を通って、ガードリング92に接続されている。
【0083】
チャネルストッパ174は、半導体基板10の外周端140における上面21および側面に露出して設けられる。チャネルストッパ174は、ドリフト領域18よりもドーピング濃度の高いN型の領域である。
【0084】
活性部120(本例ではトランジスタ部70)とエッジ終端構造部90との間には、ウェル領域11およびゲート金属層50が設けられる。ウェル領域11は、半導体基板10の上面21に露出してよい。ウェル領域11の上面は層間絶縁膜38で覆われており、層間絶縁膜38上にゲート金属層50が配置されている。層間絶縁膜38上には、ゲートランナー48が設けられていてもよい。ウェル領域11は、X軸方向においてゲート金属層50よりも広い範囲に設けられることが好ましい。
【0085】
ダイオード部80およびトランジスタ部70における半導体基板10の上面側には、P−型のベース領域14が設けられる。半導体基板10の内部においてベース領域14の下方には、N−型のドリフト領域18が配置されている。それぞれのトレンチ部は、半導体基板10の上面から、ベース領域14を貫通して、ドリフト領域18に達して設けられる。
【0086】
当該断面において、トランジスタ部70の各メサ部60−1には、N+型のエミッタ領域12、P−型のベース領域14およびN+型の蓄積領域16が、半導体基板10の上面側から順番に配置されている。蓄積領域16は、ドリフト領域18よりもドナーが高濃度に蓄積している。蓄積領域16の下方にはドリフト領域18が設けられる。蓄積領域16は、各メサ部60におけるベース領域14の下面全体を覆うように設けられてよい。つまり、蓄積領域16はトレンチ部にX軸方向で挟まれてよい。ドリフト領域18とベース領域14との間に、ドリフト領域18よりも高濃度の蓄積領域16を設けることで、キャリア注入促進効果(IE効果、Injection‐Enhancement effect)を高めて、トランジスタ部70におけるオン電圧を低減することができる。
【0087】
なお、トランジスタ部70のコンタクト領域15を通過するXZ断面においては、トランジスタ部70の各メサ部60−1には、エミッタ領域12に代えて、コンタクト領域15が設けられている。また、メサ部60−2には、エミッタ領域12に代えて、コンタクト領域15が設けられている。コンタクト領域15は、ラッチアップを抑制するラッチアップ抑制層として機能してよい。
【0088】
当該断面においてダイオード部80の各メサ部60−3には、P−型のベース領域14およびN+型の蓄積領域16が、半導体基板10の上面側から順番に配置される。蓄積領域16の下方にはドリフト領域18が設けられる。ダイオード部80には、蓄積領域16が設けられていなくともよい。
【0089】
トランジスタ部70において、半導体基板10の下面23に接する領域には、P+型のコレクタ領域22が設けられている。ダイオード部80において半導体基板10の下面23に接する領域には、N+型のカソード領域82が設けられている。
【0090】
本例の半導体基板10には、ドリフト領域18とコレクタ領域22との間、および、ドリフト領域18とカソード領域82との間に、N+型のバッファ領域20が設けられている。バッファ領域20のドーピング濃度は、ドリフト領域18のドーピング濃度よりも高い。バッファ領域20は、ベース領域14の下面側から広がる空乏層が、P+型のコレクタ領域22およびN+型のカソード領域82に到達することを防ぐフィールドストップ層として機能してよい。
【0091】
半導体基板10の上面21側には、1以上のゲートトレンチ部40、および、1以上のダミートレンチ部30が設けられる。各トレンチ部は、半導体基板10の上面21から、ベース領域14を貫通して、ドリフト領域18に到達する。エミッタ領域12、コンタクト領域15および蓄積領域16の少なくともいずれかが設けられている領域においては、各トレンチ部はこれらの領域も貫通して、ドリフト領域18に到達する。トレンチ部がドーピング領域を貫通するとは、ドーピング領域を形成してからトレンチ部を形成する順序で製造したものに限定されない。トレンチ部を形成した後に、トレンチ部の間にドーピング領域を形成したものも、トレンチ部がドーピング領域を貫通しているものに含まれる。
【0092】
ゲートトレンチ部40は、半導体基板10の上面側に設けられたゲートトレンチ、ゲート絶縁膜42およびゲート導電部44を有する。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁を覆って設けられる。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁の半導体を酸化または窒化して形成してよい。ゲート導電部44は、ゲートトレンチの内部においてゲート絶縁膜42よりも内側に設けられる。つまりゲート絶縁膜42は、ゲート導電部44と半導体基板10とを絶縁する。ゲート導電部44は、ポリシリコン等の導電材料で形成される。
【0093】
ゲート導電部44は、ゲート絶縁膜42を挟んで、ベース領域14と対向する領域を含む。当該断面におけるゲートトレンチ部40は、半導体基板10の上面において層間絶縁膜38により覆われる。ゲート導電部44に所定の電圧が印加されると、ベース領域14のうちゲートトレンチに接する界面の表層に電子の反転層によるチャネルが形成される。
【0094】
ダミートレンチ部30は、当該断面において、ゲートトレンチ部40と同一の構造を有してよい。ダミートレンチ部30は、半導体基板10の上面21側に設けられたダミートレンチ、ダミー絶縁膜32およびダミー導電部34を有する。ダミー絶縁膜32は、ダミートレンチの内壁を覆って設けられる。ダミー導電部34は、ダミートレンチの内部に設けられ、且つ、ダミー絶縁膜32よりも内側に設けられる。ダミー絶縁膜32は、ダミー導電部34と半導体基板10とを絶縁する。ダミー導電部34は、ゲート導電部44と同一の材料で形成されてよい。例えばダミー導電部34は、ポリシリコン等の導電材料で形成される。ダミー導電部34は、深さ方向においてゲート導電部44と同一の長さを有してよい。当該断面におけるダミートレンチ部30は、半導体基板10の上面21において層間絶縁膜38により覆われる。なお、ダミートレンチ部30およびゲートトレンチ部40の底部は、下側に凸の曲面状(断面においては曲線状)であってよい。
【0095】
図5は、
図2におけるB−B断面の一例を示す図である。B−B断面は、トランジスタ部70およびエッジ終端構造部90を含むYZ面と平行な断面である。エッジ終端構造部90、ゲート金属層50およびウェル領域11の構造は、
図4に示したA−A断面とほぼ同一である。
【0096】
トランジスタ部70は、半導体基板10の上面において、Y軸方向に沿ってコンタクト領域15およびエミッタ領域12を交互に有する。コンタクト領域15およびエミッタ領域12は、コンタクトホール54を介してエミッタ電極52と接続している。Y軸方向において最もウェル領域11に近いコンタクト領域15と、ウェル領域11との間には、ベース領域14が設けられている。当該ベース領域14の上面は層間絶縁膜38で覆われている。ベース領域14は、コンタクト領域15およびエミッタ領域12の下方にも設けられている。ベース領域14とドリフト領域18との間には、蓄積領域16が設けられている。
【0097】
上述したように、エッジ終端構造部90には、上側端部ライフタイム制御部150が設けられている。なお、当該断面におけるトランジスタ部70には、上側活性部ライフタイム制御部152が設けられていない。
【0098】
本例の上側端部ライフタイム制御部150は、Y軸方向においてエッジ終端構造部90の一部の領域だけに設けられているが、エッジ終端構造部90の全体に設けられていてもよい。また、活性部120(本例ではトランジスタ部70)の一部にも上側端部ライフタイム制御部150が設けられてよい。
【0099】
上側端部ライフタイム制御部150を設けることで、エッジ終端構造部90から活性部120にキャリアが流れることを抑制できる。また、トランジスタ部70に上側活性部ライフタイム制御部152を設けないことで、上側活性部ライフタイム制御部152を起因とするトランジスタ部70におけるリーク電流を抑制できる。
【0100】
図6は、
図2におけるC−C断面の一例を示す図である。C−C断面は、ダイオード部80およびエッジ終端構造部90を含むYZ面と平行な断面である。エッジ終端構造部90、ゲート金属層50およびウェル領域11の構造は、
図4に示したA−A断面とほぼ同一である。
【0101】
ダイオード部80は、半導体基板10の上面において、Y軸方向に沿ってベース領域14を有する。コンタクトホール54のY軸方向の端部の下方には、コンタクト領域15が設けられていてもよい。コンタクト領域15とウェル領域11との間のベース領域14は、層間絶縁膜38により覆われている。ベース領域14とドリフト領域18との間には、蓄積領域16が設けられている。
【0102】
上述したように、エッジ終端構造部90には、上側端部ライフタイム制御部150が設けられている。また、ダイオード部80には、上側活性部ライフタイム制御部152が設けられている。
【0103】
上側端部ライフタイム制御部150と、上側活性部ライフタイム制御部152は、半導体基板10の上面視において連続して設けられている。
図6の例では、上側端部ライフタイム制御部150と、上側活性部ライフタイム制御部152は、同一の深さ位置に設けられている。他の例では、上側端部ライフタイム制御部150と、上側活性部ライフタイム制御部152は、異なる深さ位置に設けられてもよい。この場合、上側端部ライフタイム制御部150の端部と、上側活性部ライフタイム制御部152の端部とは重なりあってもよい。例えば上側活性部ライフタイム制御部152は、上側端部ライフタイム制御部150よりも上面21から離れて設けられてよい。これにより、上側活性部ライフタイム制御部152に起因するリーク電流を抑制できる。また、上側端部ライフタイム制御部150が、上側活性部ライフタイム制御部152よりも上面21から離れて設けられてもよい。これにより、エッジ終端構造部90の下面23側から、活性部120の上面21側にキャリアが流れることを、より抑制できる。
【0104】
図7は、半導体基板10の内部に設けられるライフタイム制御部の配置例を示す図である。
図7においては、ライフタイム制御部が設けられる領域を、
図1に示した上面図にハッチングを付して示している。
図7においては、
図1に示した符号の一部を省略している。
【0105】
図7においては、端部ライフタイム制御部の一例として、下側端部ライフタイム制御部160を示している。下側端部ライフタイム制御部160は、エッジ終端構造部90において半導体基板10の内部に設けられる。また、下側端部ライフタイム制御部160は、Z軸方向において半導体基板10の中央と、半導体基板10の下面との間に配置されている。
【0106】
下側端部ライフタイム制御部160は、X軸方向において少なくとも2つ以上のダイオード部80と対向する範囲に連続して設けられている。これにより、半導体装置100のターンオフ時(すなわち、トランジスタ部70のターンオフ時)において、エッジ終端構造部90からトランジスタ部70のエミッタ領域に抜けるキャリアを減少させることができる。このため、半導体装置100のターンオフ耐量が向上する。
【0107】
図7の例では、下側端部ライフタイム制御部160は、半導体基板10の上面と平行な面において活性部120を囲んで環状に設けられている。これにより、エッジ終端構造部90からトランジスタ部70のエミッタ領域に抜けるキャリアを更に減少させることができる。下側端部ライフタイム制御部160は、半導体基板10の上面において活性部120から離れて配置されてよい。下側端部ライフタイム制御部160は、カソード領域82の全面とは重ならないようにカソード領域82の一部に重なるように配置されてよい。これにより、ダイオード部80の特性への影響を低減しつつ、エッジ終端構造部90から活性部120へのキャリアの移動を抑制できる。
【0108】
図7においては、活性部ライフタイム制御部の一例として、下側活性部ライフタイム制御部162を示している。半導体装置100は、
図1から
図6において説明した上側のライフタイム制御部に加えて
図7に示す下側のライフタイム制御部を有してよく、上側のライフタイム制御部を有さずに下側のライフタイム制御部を有してもよい。下側活性部ライフタイム制御部162は、活性部120において半導体基板10の内部に設けられる。また、下側活性部ライフタイム制御部162は、Z軸方向において半導体基板10の中央と、半導体基板10の
下面との間に配置されている。
【0109】
本例の下側活性部ライフタイム制御部162の少なくとも一部は、ダイオード部80およびトランジスタ部70と重なるように配置されている。ただし、ダイオード部80の一部と、トランジスタ部70の一部は、下側活性部ライフタイム制御部162と重なっていない。より具体的には、それぞれのダイオード部80において、X軸方向におけるトランジスタ部70との境界近傍に下側活性部ライフタイム制御部162が設けられている。つまり、それぞれのダイオード部80に対して、X軸方向の2つの端部のそれぞれに下側活性部ライフタイム制御部162が設けられている。ただし、下側活性部ライフタイム制御部162は、ダイオード部80のX軸方向の中央の領域には重なっていない。
【0110】
また、下側活性部ライフタイム制御部162は、半導体基板10の上面と平行な面内で、第2方向において下側端部ライフタイム制御部160と連続している。下側活性部ライフタイム制御部162は、Y軸方向において活性部120を横断するように設けられてよい。この場合、下側端部ライフタイム制御部160のうち、Y軸方向において対向する下側端部ライフタイム制御部160−1および160−2を接続するように、下側活性部ライフタイム制御部162が設けられる。
【0111】
半導体基板10の上面において、トランジスタ部70の少なくとも一部の領域には、下側活性部ライフタイム制御部162が設けられていない。X軸方向において、下側活性部ライフタイム制御部162と下側端部ライフタイム制御部160とは、連続していなくてよい。つまり、下側活性部ライフタイム制御部162と下側端部ライフタイム制御部160との間に、下側のライフタイム制御部が設けられていない領域が存在する。当該領域は、X軸方向において活性部120の端部に設けられたトランジスタ部70の上方の領域であってよい。つまり、下側端部ライフタイム制御部160および下側活性部ライフタイム制御部162は、活性部120の端部のトランジスタ部70の少なくとも一部分と重ならないように配置されている。
【0112】
図8Aは、
図7におけるA−A断面の一例を示す図である。本例の半導体装置100は、上側および下側のライフタイム制御部を備えている。A−A断面は、ダイオード部80、トランジスタ部70およびエッジ終端構造部90を含むXZ面と平行な断面である。上側のライフタイム制御部の構造は、
図4と同様である。
【0113】
上述したように、エッジ終端構造部90には、下側端部ライフタイム制御部160が設けられている。また、ダイオード部80の一部と、トランジスタ部70の一部の領域には、下側活性部ライフタイム制御部162が設けられている。下側端部ライフタイム制御部160および下側活性部ライフタイム制御部162は、半導体基板10の上面21と垂直な深さ方向において、半導体基板10の中央よりも下側に配置されている。下側端部ライフタイム制御部160および下側活性部ライフタイム制御部162は、半導体基板10の下面23から、半導体基板10の厚みの1/4以内の深さに設けられてよい。下側端部ライフタイム制御部160および下側活性部ライフタイム制御部162は、同一の深さ位置に設けられてよく、異なる深さ位置に設けられてもよい。
【0114】
本例の下側端部ライフタイム制御部160は、X軸方向においてエッジ終端構造部90の一部の領域だけに設けられているが、エッジ終端構造部90の全体に設けられていてもよい。また、活性部120(本例ではトランジスタ部70)の一部にも下側端部ライフタイム制御部160が設けられてよい。
【0115】
下側端部ライフタイム制御部160を設けることで、エッジ終端構造部90から活性部120にキャリアが流れることを効率よく抑制できる。また、下側活性部ライフタイム制御部162を設けることで、上側活性部ライフタイム制御部152に起因するリーク電流特性を改善できる。下側活性部ライフタイム制御部162を設けることで、ドリフト領域18に生じた少数キャリアの正孔が、短いライフタイムで多数キャリアの電子と相殺する。このため、トランジスタ部70のリーク電流特性を改善できる。また、トランジスタ部70のオン電圧とターンオン損失のトレードオフを良好にできる。
【0116】
X軸方向における上側端部ライフタイム制御部150の端部位置X
150と、下側端部ライフタイム制御部160の端部位置X
160とは、同一であってよい。他の例では、端部位置X
150は、端部位置X
160よりも、活性部120側に配置されていてもよい。つまり、上側端部ライフタイム制御部150のほうが、下側端部ライフタイム制御部160よりも、X軸方向において活性部120側に広い範囲に設けられてよい。
【0117】
他の例では、端部位置X
150は、端部位置X
160よりも、半導体基板10の外周端140側に配置されていてもよい。これにより、エッジ終端構造部90の下面23側から、活性部120の上面21側に流れるキャリアを抑制しつつ、リーク電流の起因となりうる上側端部ライフタイム制御部150を、トランジスタ部70から遠く配置できる。
【0118】
上側活性部ライフタイム制御部152の、トランジスタ部70におけるX軸方向の端部位置(X軸正側の端部位置)をXT
152とする。また、下側活性部ライフタイム制御部162の、トランジスタ部70におけるX軸方向の端部位置(X軸正側の端部位置)をXT
162とする。
【0119】
端部位置XT
162は、端部位置XT
152よりも、ダイオード部80側(X軸負側)に配置されてよい。つまり、下側活性部ライフタイム制御部162がトランジスタ部70に設けられる長さは、上側活性部ライフタイム制御部152がトランジスタ部70に設けられる長さよりも小さい。これにより、ダイオード部80の動作時に、トランジスタ部70のエミッタ領域12からダイオード部80のカソード領域82への正孔の注入を抑制することができる。このため、ダイオード部80の逆回復特性を改善することができる。
【0120】
図8Bは、
図8AのE−E断面における上側端部ライフタイム制御部150および下側端部ライフタイム制御部160のライフタイムキラー濃度分布の一例を示す図である。上側活性部ライフタイム制御部152は、上側端部ライフタイム制御部150と同様のライフタイムキラー濃度分布を有してよい。下側活性部ライフタイム制御部162は、下側端部ライフタイム制御部160と同様のライフタイムキラー濃度分布を有してよい。
【0121】
上側端部ライフタイム制御部150は、ヘリウムイオンを上面側から照射した例である。下側端部ライフタイム制御部160は、ヘリウムイオンを下面側から照射した例である。本明細書の各図では、キラー領域のライフタイムキラー濃度のピーク位置を×印で示している。ヘリウムイオン等を上面側から照射する場合は、ピーク位置より上面側に、ピーク濃度より低い濃度のライフタイムキラー(ライフタイムキラーの濃度分布におけるテイル部分)が分布してよい。
【0122】
ヘリウムイオンを下面側から照射する場合は、ピーク位置よりも下面側に、ピーク濃度より低い濃度のライフタイムキラーが分布してよい。下側端部ライフタイム制御部160のライフタイムキラー濃度のピーク濃度は、上側端部ライフタイム制御部150のライフタイムキラー濃度のピーク濃度より高くてよく、低くてもよい。下側端部ライフタイム制御部160のライフタイムキラー濃度は、上側端部ライフタイム制御部150のライフタイムキラー濃度よりも2倍以上、5倍以下の範囲で高くてよい。
【0123】
上側端部ライフタイム制御部150のライフタイムキラー濃度分布の幅w1は、
下側端部ライフタイム制御部160のライフタイムキラー濃度分布の幅w2より大きくてよい。幅w1およびw2は、ピーク濃度P1またはピーク濃度P2の半値全幅(FWHM)であってよい。あるいは、幅w1およびw2は、ピーク濃度P1またはピーク濃度P2の10%の値における全幅(F10%WHM)であってよい。あるいは、幅w1およびw2は、ピーク濃度P1またはピーク濃度P2の1%の値における全幅(F1%WHM)であってよい。
【0124】
幅w1が幅w2よりも大きい場合は、上面21からピーク濃度P1の深さ位置Dp1までの距離が、下面23からピーク濃度P2深さ位置Dp2までの距離より大きくてよい。逆に、幅w1が幅w2よりも小さい場合は、上面21からピーク濃度P1の深さ位置Dp1までの距離が、下面23からピーク濃度P2の深さ位置Dp2までの距離より小さくてよい。ピーク濃度の位置を深くする場合、半導体基板10の深さ方向において、ライフタイム制御領域を大きな幅で形成すると、再結合中心の濃度分布がなだらかにできる。これにより、印加電圧の増加によってリーク電流が急激に増加することを防ぐことができる。
【0125】
なお、
図8Bの縦軸に示されるライフタイムキラーの濃度分布は、ヘリウム濃度であってもよいし、ヘリウム照射によって形成された結晶欠陥密度であってもよい。結晶欠陥は、格子間ヘリウム、空孔、複空孔等であってよい。これらの結晶欠陥により、キャリアの再結合中心が形成される。形成された再結合中心のエネルギー準位(トラップ準位)を介して、キャリアの再結合が促進される。ライフタイムキラー濃度は、トラップ準位密度に対応する。
【0126】
本例においては、下側のライフタイム制御部のライフタイムキラー濃度を、上側のライフタイム制御部のライフタイムキラー濃度よりも高くすることで、リーク電流に寄与する上側のライフタイムキラー濃度を維持しつつ、全体のライフタイムキラー濃度を高めることができる。これにより、トランジスタ部70のリーク電流特性を維持しつつ、トランジスタ部70のオン電圧とターンオフ損失のトレードオフを調整することができる。
【0127】
図9は、
図7におけるB−B断面の一例を示す図である。上述したように、エッジ終端構造部90には、下側端部ライフタイム制御部160が設けられている。また、当該断面におけるトランジスタ部70には、下側活性部ライフタイム制御部162が設けられていない。
【0128】
本例の下側端部ライフタイム制御部160は、Y軸方向においてエッジ終端構造部90の一部の領域だけに設けられているが、エッジ終端構造部90の全体に設けられていてもよい。また、活性部120(本例ではトランジスタ部70)の一部にも下側端部ライフタイム制御部160が設けられてよい。下側端部ライフタイム制御部160を設けることで、エッジ終端構造部90から活性部120にキャリアが流れることを効率よく抑制できる。
【0129】
Y軸方向における上側端部ライフタイム制御部150の端部位置Y
150と、下側端部ライフタイム制御部160の端部位置Y
160とは、同一であってよい。他の例では、端部位置Y
150は、端部位置Y
160よりも、活性部120側に配置されていてもよい。つまり、上側端部ライフタイム制御部150のほうが、下側端部ライフタイム制御部160よりも、Y軸方向において活性部120側に広い範囲に設けられてよい。
【0130】
他の例では、端部位置Y
150は、端部位置Y
160よりも、半導体基板10の外周端140側に配置されていてもよい。これにより、エッジ終端構造部90の下面23側から、活性部120の上面21側に流れるキャリアを抑制しつつ、リーク電流の起因となりうる上側端部ライフタイム制御部150を、トランジスタ部70から遠く配置できる。
【0131】
図10は、
図7におけるC−C断面の一例を示す図である。上述したように、エッジ終端構造部90には、下側端部ライフタイム制御部160が設けられている。また、ダイオード部80には、下側活性部ライフタイム制御部162が設けられている。
【0132】
下側端部ライフタイム制御部160と、下側活性部ライフタイム制御部162は、半導体基板10の上面視において連続して設けられている。
図10の例では、下側端部ライフタイム制御部160と、下側活性部ライフタイム制御部162は、同一の深さ位置に設けられている。他の例では、下側端部ライフタイム制御部160と、下側活性部ライフタイム制御部162は、異なる深さ位置に設けられてもよい。この場合、下側端部ライフタイム制御部160の端部と、下側活性部ライフタイム制御部162の端部とは重なりあってもよい。例えば下側端部ライフタイム制御部160は、下側活性部ライフタイム制御部162よりも下面23に近く設けられてよい。これにより、エッジ終端構造部90の下面23側から活性部120の上面21側に流れるキャリアを減少させやすくなる。
【0133】
図11は、
図7における領域132の拡大図である。領域132は、ダイオード部80と、X軸方向においてダイオード部80の両側に配置されたトランジスタ部70を含んでいる。
【0134】
上述したように、上側活性部ライフタイム制御部152は、X軸方向においてダイオード部80よりも広い範囲に設けられる。下側活性部ライフタイム制御部162は、ダイオード部80のX軸方向における各端部81と、端部81に接するダイオード部80の一部と、端部81に接するトランジスタ部70の一部とに重なるように設けられる。ただし、上側活性部ライフタイム制御部152がトランジスタ部70に重なるX軸方向の長さは、下側活性部ライフタイム制御部162がトランジスタ部70に重なるX軸方向の長さより大きい。また、下側活性部ライフタイム制御部162は、上面視でカソード領域82とコレクタ領域22とのpn接合に重なるように設けられて良い。
【0135】
図12は、
図11におけるD−D断面を示す図である。D−D断面は、トランジスタ部70およびダイオード部80を含むXZ面である。上述したように、上側活性部ライフタイム制御部152は、X軸方向においてダイオード部80の全体と、トランジスタ部70の一部の領域とに設けられる。上側活性部ライフタイム制御部152のX軸方向における端部位置をXT
152とする。
【0136】
また、下側活性部ライフタイム制御部162は、X軸方向において、端部81の両側におけるダイオード部80の一部の領域と、トランジスタ部70の一部の領域とに設けられる。下側活性部ライフタイム制御部162のトランジスタ部70におけるX軸方向の端部位置をXT
162とし、ダイオード部80におけるX軸方向の端部位置をXD
162とする。
【0137】
X軸方向における端部位置XT
152と端部位置XT
162との距離L2は、上述したように50μm以上、100μm以下であってよい。X軸方向における端部81と端部位置XD
162との距離L3は、一例として10μm以上、20μm以下である。
【0138】
図13は、上側端部ライフタイム制御部150の他の例を示す図である。本例の上側端部ライフタイム制御部150は、半導体基板10の上面視において、エッジ終端構造部90の全体と重なるように設けられている。上側端部ライフタイム制御部150は、ゲート金属層50の少なくとも一部と重なっていてよく、ゲート金属層50の全体と重なっていてよく、活性部120の一部と重なっていてもよい。本例の上側端部ライフタイム制御部150は、
図1から
図12において説明した、各態様の半導体装置100に適用してよい。
【0139】
図14は、上側活性部ライフタイム制御部152の他の例を示す図である。本例の上側活性部ライフタイム制御部152は、半導体基板10の上面視において、ゲートランナー48、温度センス部110および温度センス配線112の少なくとも一部の領域の下方に設けられている。上側活性部ライフタイム制御部152は、ゲートランナー48、温度センス部110および温度センス配線112の全ての領域の下方に設けられてよい。また、上側活性部ライフタイム制御部152は、半導体基板10の内部に設けられたウェル領域11の全体と重なるように設けられてもよい。このような構成によっても、ウェル領域11等の下方から、トランジスタ部70およびダイオード部80にキャリアが移動することを抑制できる。本例の上側活性部ライフタイム制御部152は、
図1から
図13において説明した、各態様の半導体装置100に適用してよい。
【0140】
図15は、下側端部ライフタイム制御部160および下側活性部ライフタイム制御部162の他の例を示す図である。本例の下側端部ライフタイム制御部160は、半導体基板10の上面視において、エッジ終端構造部90の全体と重なるように設けられている。下側端部ライフタイム制御部160は、ゲート金属層50の少なくとも一部と重なっていてよく、ゲート金属層50の全体と重なっていてよく、活性部120の一部と重なっていてもよい。
【0141】
図15に示すように、下側端部ライフタイム制御部160のY軸方向における端部は、カソード領域82のY軸方向における端部と対向して配置されてよい。つまり、下側端部ライフタイム制御部160のY軸方向における端部と、カソード領域82のY軸方向における端部とは、Y軸方向における位置が同一であってよい。これにより、ダイオード部80の特性への影響を低減しつつ、エッジ終端構造部90から活性部120へのキャリアの移動を効率よく抑制できる。本例の下側端部ライフタイム制御部160は、
図1から
図14において説明した、各態様の半導体装置100に適用してよい。
【0142】
また、本例の下側活性部ライフタイム制御部162は、半導体基板10の上面視において、ゲートランナー48、温度センス部110および温度センス配線112の少なくとも一部の領域と重なるように設けられている。下側活性部ライフタイム制御部162は、ゲートランナー48、温度センス部110および温度センス配線112の全ての領域と重なるように設けられてよい。また、下側活性部ライフタイム制御部162は、半導体基板10の内部に設けられたウェル領域11の全体と重なるように設けられてもよい。このような構成によっても、ウェル領域11等の下方から、トランジスタ部70およびダイオード部80にキャリアが移動することを抑制できる。本例の下側活性部ライフタイム制御部162は、
図1から
図14において説明した、各態様の半導体装置100に適用してよい。
【0143】
図16は、下側端部ライフタイム制御部160の他の例を示す図である。本例の下側端部ライフタイム制御部160は、活性部120のX軸方向の端部に配置されたトランジスタ部70の全体と重なるように配置されている。これにより、エッジ終端構造部90からY軸方向にキャリアが移動して、ダイオード部80に到達することを更に抑制できる。本例の下側端部ライフタイム制御部160は、
図1から
図15において説明した、各態様の半導体装置100に適用してよい。
【0144】
図17は、B−B断面の他の例を示す図である。上述したように、上側端部ライフタイム制御部150は、エッジ終端構造部90より広い範囲に設けられてよい。本例の上側端部ライフタイム制御部150は、エッジ終端構造部90の全体と、ゲート金属層50の下方に設けられたウェル領域11の一部と重なる範囲に設けられている。上側端部ライフタイム制御部150は、ウェル領域11の全体と重なる範囲に設けられてもよい。
【0145】
下側端部ライフタイム制御部160も、エッジ終端構造部90より広い範囲に設けられてよい。本例の下側端部ライフタイム制御部160は、エッジ終端構造部90の全体と、ゲート金属層50の下方に設けられたウェル領域11の全体と、トランジスタ部70の一部と重なる範囲に設けられている。下側端部ライフタイム制御部160は、コンタクトホール54と重なる位置まで設けられてもよい。
【0146】
図17においては、カソード領域82の端部81のY軸上の位置を点線で示している。上述したように、下側端部ライフタイム制御部160の端部位置Y
160は、端部81と対向して配置されてよい。本明細書においてライフタイム制御部の端部は、各軸方向においてドリフト領域18からキラー領域に向けてライフタイムキラーの濃度分布を測定した場合に、ライフタイムキラーの濃度がドリフト領域18におけるライフタイムキラーの濃度よりも高くなり始める点である。ただし、当該点が不明瞭な場合には、ライフタイムキラーの濃度が、ライフタイム制御部におけるピーク濃度の半値(または1/10)となる位置を端部としてもよい。
【0147】
図18は、A−A断面の他の例を示す図である。上述したように、上側端部ライフタイム制御部150は、エッジ終端構造部90より広い範囲に設けられてよい。本例の上側端部ライフタイム制御部150は、エッジ終端構造部90の全体と、ゲート金属層50の下方に設けられたウェル領域11の一部と重なる範囲に設けられている。上側端部ライフタイム制御部150は、ウェル領域11の全体と重なる範囲に設けられてもよい。
【0148】
下側端部ライフタイム制御部160も、エッジ終端構造部90より広い範囲に設けられてよい。本例の下側端部ライフタイム制御部160は、エッジ終端構造部90の全体と、ゲート金属層50の下方に設けられたウェル領域11の全体と、トランジスタ部70の一部と重なる範囲に設けられている。
【0149】
また、いずれかのライフタイム制御部は、半導体基板10の深さ方向におけるライフタイムキラーの濃度分布において複数のピークを有してよい。
図18の例では、下側活性部ライフタイム制御部162が複数のピークを有している。より下面23に近い下側活性部ライフタイム制御部162は、トランジスタ部70においてX軸方向により長く設けられてよい。このような構造により、トランジスタ部70のコレクタ領域22から、ダイオード部80の上面21側に移動するキャリアを、効率よく再結合させることができる。
【0150】
図19Aは、上側ライフタイム制御部の他の配置例を示す図である。本例の半導体装置100は、端部ライフタイム制御部が、上側端部ライフタイム制御部150を有さない点で、
図1から
図18において説明した各例と相違する。他の構造は、
図1から
図18において説明したいずれかの態様の半導体装置100と同一である。端部ライフタイム制御部は、下側端部ライフタイム制御部160を有している。
【0151】
本例のそれぞれの上側活性部ライフタイム制御部152は、Y軸方向においてエッジ終端構造部90まで延伸して設けられている。上側活性部ライフタイム制御部152は、エッジ終端構造部90までは設けられていなくてもよい。この場合であっても、上側活性部ライフタイム制御部152は、カソード領域82の全体と重なるように設けられている。上側活性部ライフタイム制御部152のY軸方向の端部は、活性部120に設けられてよく、ゲート金属層50の下方に設けられていてよく、ウェル領域11の下方に設けられていてもよい。
【0152】
図19Bは、
図19AにおけるB−B断面を示す図である。本例の半導体装置100は、上側端部ライフタイム制御部150を有さない点で、
図17に示したB−B断面と相違する。他の構造は、
図17の例と同一である。エッジ終端構造部90において上側端部ライフタイム制御部150を有さない場合、活性部からエッジ終端構造部90に広がる空乏層は、ライフタイム制御部のライフタイムキラーを含まない。これにより、リーク電流の発生を抑えることができる。さらに、エッジ終端構造部90において下側端部ライフタイム制御部160を有することで、エッジ終端構造部90のコレクタ領域22からコンタクトホール54の端部に正孔が集中することを抑えることができる。
【0153】
図19Cは、
図19AにおけるA−A断面を示す図である。本例の半導体装置100は、上側端部ライフタイム制御部150を有さない点で、
図18に示したA−A断面と相違する。他の構造は、
図18の例と同一である。
【0154】
図20は、半導体装置100の上面構造の他の例を示す図である。本例の半導体装置100は、X軸方向に配列されたトランジスタ部70のうち、X軸方向における端部に設けられたトランジスタ部70−eのX軸方向における幅W1が、他のトランジスタ部70の幅W2と異なっている。
図20に示すように、トランジスタ部70−eの幅W1は、他のトランジスタ部70の幅W2よりも大きくてよい。幅W1は、幅W2の1.1倍以上であってよく、1.2倍以上であってよく、1.5倍以上であってもよい。
【0155】
図21は、半導体装置100の上面構造を示す図である。
図21における上面構造は、
図1に示した半導体装置100と同一である。
図21に示すように、トランジスタ部70−eの幅W1は、他のトランジスタ部70の幅W2より小さくてもよい。幅W1は、幅W2の2/3以下であってよく、半分以下であってよく、1/3以下であってもよい。
【0156】
図22は、
図20に示した領域134を拡大した上面図である。領域134の構造は、
図1から
図21において説明した各態様の半導体装置100に適用してよい。
図22においては、ライフタイム制御部を省略している。
【0157】
領域134は、活性部120のX軸方向における端部を含む。活性部120のX軸方向の端部には、トランジスタ部70が設けられている。本例では、X軸方向におけるトランジスタ部70とゲート金属層50との間に、第1終端領域182および第2終端領域184が設けられている。半導体装置100は、第1終端領域182および第2終端領域184の一方だけを備えていてもよい。第1終端領域182および第2終端領域184において、半導体基板10の下面23にはコレクタ領域22が設けられている。
【0158】
図23は、
図22におけるF−F断面の一例を示す図である。F−F断面は、ゲート金属層50、第1終端領域182、第2終端領域184およびトランジスタ部70を含む
XZ断面である。
図23においては、ライフタイム制御部を省略している。
【0159】
第2終端領域184は、X軸方向においてトランジスタ部70と接している。第2終端領域184は、X軸方向に配列された複数のダミートレンチ部30が設けられている。
図22に示すように、第2終端領域184には、トランジスタ部70のメサ部60よりも、コンタクト領域15の上面視の面積が大きいメサ部60が設けられてよい。これにより、第2終端領域184において正孔が引き抜きやすくなる。このため、エッジ終端構造部90等の外周端140側の構造と、トランジスタ部70との間に流れる電流を抑制できる。
【0160】
第2終端領域184の少なくとも一部のメサ部60は、蓄積領域16が設けられなくてよい。
図22および
図23の例では、第2終端領域184において、トランジスタ部70側の一部のメサ部60には蓄積領域16が設けられ、ゲート金属層50側の一部のメサ部60には蓄積領域16が設けられていない。
【0161】
第2終端領域184の少なくとも一部のダミートレンチ部30は、ウェル領域11の内部に設けられてもよい。
図22および
図23の例では、第2終端領域184において、ゲート金属層50側の一部のダミートレンチ部30が、ウェル領域11の内部に設けられている。つまり、活性部120において、X軸方向に配列されたトレンチ部のうち、最も外側に配置されたトレンチ部が、ウェル領域11の内部に設けられている。これにより、比較的に電界が集中しやすいトレンチ部を保護できる。
【0162】
第1終端領域182は、X軸方向において第2終端領域184とゲート金属層50との間に設けられている。第1終端領域182には、トレンチ部が設けられていない。第1終端領域182の上面には、コンタクト領域15が露出していてよい。第1終端領域182は、Y軸方向に延伸する複数のコンタクトホール54を有してよい。コンタクトホール54は、エミッタ電極52と、コンタクト領域15とを接続する。第1終端領域182は、上面視においてウェル領域11と重なって設けられてよい。第1終端領域182におけるコンタクトホール54のY軸方向における長さは、トランジスタ部70におけるコンタクトホール54のY軸方向における長さと同一であってよく、より長くてもよい。
【0163】
第1終端領域182を設けることで、第2終端領域184の外側でも正孔を引き抜くことができる。このため、エッジ終端構造部90等の外周端140側の構造と、トランジスタ部70との間に流れる電流を抑制できる。
【0164】
図24は、
図21におけるG−G断面の一例を示す図である。G−G断面は、エッジ終端構造部90、ゲート金属層50、第1終端領域182、第2終端領域184、複数のトランジスタ部70および複数のダイオード部80を含む
XZ断面である。G−G断面においては、下側ライフタイム制御部を省略している。本例の半導体装置100は、
図1から
図23において説明したいずれの下側ライフタイム制御部を有していてもよい。また、
図24においては、半導体基板10の下面から上面に流れる電流の大きさを、模式的に矢印の太さで示している。
【0165】
本例においては、トランジスタ部70−eの幅W1が、他のトランジスタ部70の幅W2よりも小さい。このため、トランジスタ部70−eにおいて流れる電流は、他のトランジスタ部70において流れる電流よりも小さくなる。このため、トランジスタ部70−eから、活性部120とウェル領域11との境界153に流れる電流を緩和できる。境界153は、ウェル領域11のX軸方向の端部のうち、トランジスタ部70−eに最も近い端部である。
【0166】
活性部120と、ウェル領域11との境界153には電界が集中しやすい。このため、活性部120と、ウェル領域11との境界153に電流が多く流れると、境界153に電界と電流の両方が集中して破壊されやすくなる。本例では、活性部120とウェル領域11との境界153に流れる電流を緩和できるので、境界153における破壊を抑制できる。
【0167】
図25は、
図20におけるG−G断面の一例を示す図である。本例においては、トランジスタ部70−eの幅W1が、他のトランジスタ部70の幅W2よりも大きい。この場合、半導体装置100は、上側境界ライフタイム制御部151を有してよい。上側境界ライフタイム制御部151は、活性部120とウェル領域11との境界153と重なって配置されている。当該ウェル領域11は、ゲート金属層50の下方に配置されたウェル領域11である。上側境界ライフタイム制御部151は、境界153から、第2終端領域184と重なる位置までX軸方向に延伸して設けられていてよく、トランジスタ部70−eと重なる位置までX軸方向に延伸して設けられていてもよい。
【0168】
また、上側境界ライフタイム制御部151は、境界153から、第1終端領域182と重なる位置までX軸方向に延伸して設けられていてよく、ゲート金属層50と重なる位置までX軸方向に延伸して設けられていてよく、エッジ終端構造部90と重なる位置までX軸方向に延伸して設けられていてもよい。上側境界ライフタイム制御部151は、上側端部ライフタイム制御部150と接続されていてもよい。つまり、上側境界ライフタイム制御部151が、
上側端部ライフタイム制御部150の位置まで延伸していてもよい。
【0169】
本例によれば、トランジスタ部70−eの幅W1が大きいので、トランジスタ部70−eには、比較的に大きな電流が流れる。一方で、境界153の下方に上側境界ライフタイム制御部151を設けることで、境界153に流れる電流を緩和できる。このため境界153における破壊を抑制できる。
【0170】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、請求の範囲の記載から明らかである。