(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6784353
(24)【登録日】2020年10月27日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】安全具取付用支柱
(51)【国際特許分類】
E04G 21/32 20060101AFI20201102BHJP
【FI】
E04G21/32 D
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-156081(P2016-156081)
(22)【出願日】2016年8月9日
(65)【公開番号】特開2018-25000(P2018-25000A)
(43)【公開日】2018年2月15日
【審査請求日】2019年8月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100172096
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 理太
(74)【代理人】
【識別番号】100089886
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 雅雄
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 健太朗
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 健
【審査官】
瓦井 秀憲
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−049542(JP,A)
【文献】
実開昭58−089546(JP,U)
【文献】
実開昭62−035019(JP,U)
【文献】
米国特許第6036146(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0263903(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/32
E04G 5/00
A62B 35/00
E04D 15/00
E02D 23/00
E01F 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物の構築に使用する型枠の上部に設置される安全具取付用支柱において、
前記型枠に支持された角筒状の支持基部と、該支持基部内にスライド可能に挿入された支柱本体とを備え、
前記支持基部は、互いに平行な側板の上端縁に一対の係合凹部を備え、
前記支柱本体は、上端部外周に突設された安全具連結部材と、該安全具連結部材より下方の外周に突設されたロックピンとを備え、
該ロックピンは、前記安全具連結部材と交差する方向に突出し、
前記支柱本体を軸回りに回転させることにより、前記ロックピンが前記係合凹部と係合する位置と、係合しない位置とで切り替わるようにし、且つ、前記ロックピンが前記係合しない位置に切り替えられた際、前記安全具連結部材が前記支持基部の上縁部に係合するようにしたことを特徴とする安全具取付用支柱。
【請求項2】
前記安全具連結部材は、親綱の端部が連結可能なフック状又はリング状に形成されている請求項1に記載の安全具取付用支柱。
【請求項3】
前記支持基部は、前記型枠を構成する型枠板を支持する型枠支柱である請求項1又は2に記載の安全具取付用支柱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にケーソン等のコンクリート構造物の製作に使用される内型枠の上部に設置され、親綱等の安全具を取り付けるための安全具取付用支柱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のケーソンの製作では、外型枠内に桝状の内型枠を設置し、外型枠と内型枠との間、或いは、内型枠間に鉄筋を配設してコンクリートを打設する作業を下層より順次繰り返し、段階的に所望の高さまでコンクリートを打設する工法が広く用いられている。
【0003】
その際、内型枠は、各段のコンクリートを打設する毎に地上で組み上げた後、クレーン等で吊り上げて設置するようになっている。
【0004】
一方、内型枠の上端位置は、下層に打設されたコンクリート上面から2〜3メートル高い位置にあり、また、ケーソンの製作が進むにつれ、設置される内型枠上端の地上からの高さも順次高くなっていく。
【0005】
よって、型枠上端付近の高所で作業員が安全に作業を進めるためには、型枠の上部に親綱支柱を設置し、この親綱支柱間に命綱を連結可能な親綱を取り付けることが求められる。
【0006】
従来、この親綱支柱の設置は、内型枠を設置した後、親綱支柱をクレーンで吊り上げて設置位置まで揚重し、吊り上げた親綱支柱を固定具によって内型枠に固定していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014−43678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述の如き従来の技術では、各段のコンクリートを構築する毎に内型枠とは別個に各親綱支柱をクレーンで吊り上げて設置しなければならないため、作業効率が悪いという問題があった。
【0009】
一方、内型枠を地上で組み立てる際に予め親綱支柱を内型枠の上部に取り付けておくことも考えられるが、その場合には、内型枠をクレーンで吊り上げる際、取り付けた親綱支柱が吊り上げ用のワイヤと干渉して内型枠の揚重作業に支障を来すおそれがあり、実際には実現困難であった。
【0010】
そこで、本発明は、このような従来の問題に鑑み、ケーソン等のコンクリート構造物の製作に使用する型枠の上部に容易且つ効率的に設置可能な親綱支柱等の安全具取付用支柱の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の如き従来の問題を解決するための請求項1に記載の発明の特徴は、コンクリート構造物の構築に使用する型枠の上部に設置される安全具取付用支柱において、前記型枠に支持された角筒状の支持基部と、該支持基部内にスライド可能に挿入された支柱本体とを備え、前記支持基部は、互いに平行な側板の上端縁に一対の係合凹部を備え、前記支柱本体は、上端部外周に突設された安全具連結部材と、該安全具連結部材より下方の外周に突設されたロックピンとを備え、該ロックピンは、前記安全具連結部材と交差する方向に突出し、前記支柱本体を軸回りに回転させることにより、前記ロックピンが前記係合凹部と係合する位置と、係合しない位置とで切り替わるようにし、且つ、前記ロックピンが前記係合しない位置に切り替えられた際、前記安全具連結部材が前記支持基部の上縁部に係合するようにした安全具取付用支柱にある。
【0012】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記安全具連結部材は、親綱の端部が連結可能なフック状又はリング状に形成されていることにある。
【0013】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、前記支持基部は、前記型枠を構成する型枠板を支持する型枠支柱であることにある。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る安全具取付用支柱は、上述したように、コンクリート構造物の構築に使用する型枠の上部に設置される安全具取付用支柱において、前記型枠に支持された角筒状の支持基部と、該支持基部内にスライド可能に挿入された支柱本体とを備え、前記支持基部は、互いに平行な側板の上端縁に一対の係合凹部を備え、前記支柱本体は、上端部外周に突設された安全具連結部材と、該安全具連結部材より下方の外周に突設されたロックピンとを備え、該ロックピンは、前記安全具連結部材と交差する方向に突出し、前記支柱本体を軸回りに回転させることにより、前記ロックピンが前記係合凹部と係合する位置と、係合しない位置とで切り替わるようにし、且つ、前記ロックピンが前記係合しない位置に切り替えられた際、前記安全具連結部材が前記支持基部の上縁部に係合するようにしたことにより、収縮した状態で内型枠内に収容されるので、内型枠をクレーンによる4点以上の多点吊りによって揚重する場合であっても、吊り上げ用のワイヤと干渉することがなく、内型枠を安定した状態で揚重することができる。また、型枠と安全具取付用支柱とを別々に揚重する必要がなく、作業効率の向上を図ることができる。
【0015】
また、本発明において、前記安全具連結部材は、親綱の端部が連結可能なフック状又はリング状に形成されていることにより、好適に親綱を取り付けることができる。
【0016】
更に、本発明において、前記支持基部は、前記型枠を構成する型枠板を支持する型枠支柱であることにより、支持基部と型枠支柱を兼用することとによって、部材数の低減が図れ、経費を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る安全具取付用支柱の使用態様の一例を示す平面図である。
【
図2】
図1中の安全具取付用支柱を示す側面図であって、(a)は使用時の状態、(b)は収容した状態を示す図である。
【
図3】(a)は同上の使用時の状態を示す平面図、(b)は同収容時の状態を示す平面図である。
【
図4】同上の安全具取付用支柱を備えたケーソン用内型枠の揚重時の状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明に係る安全具取付用支柱1の実施態様を
図1〜
図4に示した実施例に基づいて説明する。尚、図中符号1は安全具取付用支柱、符号2は安全具取付用支柱1が設置される内型枠である。
【0019】
内型枠2は、ケーソン等のコンクリート構造物を下層より段階的に構築する際に使用され、各段を構築する毎に地上で組み立てられ、クレーンによって下段のコンクリート打設部上に設置されるようになっている。
【0020】
この内型枠2は、メタルフォーム等の型枠板3,3...からなる型枠パネル4を備え、各型枠パネル4が四方に配設されて桝形状を成している。
【0021】
そして、この内型枠2には、その四隅部に安全具取付用支柱1が設置され、使用時には、安全具取付用支柱1を内型枠2上端より突出させ、支柱間に親綱5等の安全具が取り付けられるようにしている。
【0022】
安全具取付用支柱1は、
図2、
図3に示すように、内型枠2に固定される角筒状の支持基部6と、支持基部6内にスライド可能に挿入された支柱本体7とを備え、支持基部6に対し支柱本体7をスライドさせることにより伸縮できるようになっている。
【0023】
支持基部6は、両端が開口した角筒状に形成され、その互いに平行な側板6a,6aの上端縁に一対の係合凹部8,8を備えている。
【0024】
係合凹部8,8は、上側に開口した半円切り欠き状に形成され、後述するロックピン9,9が着脱可能に係合するようになっている。
【0025】
また、支持基部6には、型枠に固定するための固定具10を備え、この固定具10を介して筒軸方向を上下に向けて内型枠2の内側に固定されている。
【0026】
固定具10は、特に限定されないが、本実施例では、支持基部6の外側面から突出した平板状に形成され、型枠板(メタルフォーム)のリブ部3a,3aと重ね合わせた状態でボルト11を貫通させ、ボルト締めすることにより型枠パネル4の背面側に固定できるようになっている。
【0027】
支柱本体7は、鋼管等により中空円柱状に形成され、その上端外周に安全具連結部材12が突設され、安全具連結部材12より下方の外周にロックピン9,9が突設されている。
【0028】
この支柱本体7は、外径が支持基部6の側板間幅よりも小さく、支持基部6に対して軸回りで回転可能に挿入されている。
【0029】
安全具連結部材12は、親綱5の端部が連結可能なフック状又はリング状に形成され、支柱本体7の外周から外向きに突出している。
【0030】
ロックピン9,9は、溶接等によって支柱本体7の外周に突設され、両端間距離は、支持基部6の互いに平行な側板間距離よりも長く、且つ、支持基部6内側の対角線方向距離よりも短く形成されている。
【0031】
よって、ロックピン9,9は、支持基部6の上端より引き出された位置で、支柱本体7を軸回りに回転させることにより、
図3(a)に示す係合凹部8,8と係合可能な位置と、
図3(b)に示す係合しない位置、即ち、支持基部6内をスライド移動可能な位置とで切り替わるようになっている。
【0032】
即ち、支柱本体7は、ロックピン9,9が係合凹部8,8と係合可能な位置に切り替えられた際には、ロックピン9,9を介して支持基部6に下降不能且つ回転不能に支持され、係合しない位置に切り替えられた際には、支持基部6に対し上下スライド自在な状態になっている。
【0033】
また、ロックピン9,9は、支柱本体7の下端から一定高さに突設され、支柱本体7を使用時の位置、又は、ロックピン9,9が切り替え可能な位置まで引き出した場合であっても、支柱本体7の下側部は、支持基部6内に挿入され、支柱本体7が支持基部6に回転可能に保持されている。
【0034】
一方、安全具連結部材12は、
図3(b)に示すように、支持基部6に対し支柱本体7を軸回りに回転させ、ロックピン9,9が支持基部6と係合しない位置に切り替えられた場合、支持基部6の上縁部(本実施例では、支持基部6の四隅部上縁)と係合するようになっており、支持基部6より支柱本体7が抜け落ちないようになっている。
【0035】
このように構成された安全具取付用支柱1は、内型枠2を地上で組み立てた際に、内型枠2に取り付けられ、
図4に示すように、内型枠2とともにクレーンによって揚重されるようになっている。
【0036】
その際、安全具取付用支柱1は、
図2(b)及び
図3(b)に示すように、支柱本体7の周方向位置を支持基部6の係合凹部8,8と係合しない位置に切り替えられ、支柱本体7の上側部がスライド可能な状態で支持基部6内に収容され、安全具連結部材12が支持基部6の上端縁に支持される。
【0037】
よって、安全具取付用支柱1は、収縮した状態で内型枠2内に収容され、内型枠2をクレーンによる4点以上の多点吊りによって揚重する場合であっても、吊り上げ用のワイヤ10,10...と干渉することがなく、内型枠2を安定した状態で揚重することができる。
【0038】
一方、内型枠2の設置が完了したら、支柱本体7をロックピン9,9が支持基部6の上端開口より引き出されるまで引き上げ、
図2(a)、
図3(a)に示すように、その位置で支柱本体7を軸回りに回転させ、ロックピン9,9を係合凹部8,8に係合させる。
【0039】
これによって、支柱本体7が内型枠2の上端より上向きに突出し、
図1に示すように、支柱本体7の上端外周に突設された安全具連結部材12に親綱5の端部を連結することによって、親綱5を支柱間に取り付けることができる。
【0040】
そして、内型枠2の上端開口部を蓋板で閉鎖し、安全な足場が確保された場合には、親綱5を取り外すとともに、支柱本体7をロックピン9,9が係合凹部8,8と係合しない位置に回転させ内型枠2内に収納することによって、広い作業スペースを確保することもできる。
【0041】
また、この安全具取付用支柱1は、内型枠2に取り付けられているので、内型枠2とともに撤去することができ、その際に支柱本体7を内型枠2内に収容しておくことによって、クレーンによる多点吊りの際にも支柱が吊りワイヤと干渉しないで安定して移動させることができる。
【0042】
尚、上述の実施例では、安全具として親綱5を例に説明したが、安全具を鋼管等からなる手すり等にしてもよい。その場合、安全具取付部材をクランプ部材等の手すりの端部を固定可能なものとする。
【0043】
また、上述の実施例では、安全具取付用支柱1を内型枠2の四隅部に設置した例について説明したが、支柱の取り付け位置は、これに限定されない。
【0044】
更には、特に図示しないが、安全具取付用支柱1を構成する支持基部6は、内型枠2の型枠板3a,3a...を支持する型枠支柱を角筒材によって構成し、この型枠支柱を支持基部6に兼用してもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 安全具取付用支柱
2 内型枠
3 型枠板(メタルフォーム)
4 型枠パネル
5 親綱
6 支持基部
7 支柱本体
8 係合凹部
9 ロックピン
10 固定具
11 ボルト
12 安全具連結部材