(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記解析手段は、前記運賃情報を計算する際に前記利用者の定期券情報の有無を確認し、前記定期券情報が存在するときは、前記乗車経路を定期券区間とその他の運賃区間とに区別するとともに前記運賃区間毎の運賃を再計算する、
請求項2に記載の乗車経路再現装置。
交通機関の利用者が乗車券として使用したときに入場駅、出場駅及び乗車運賃を含む乗車履歴が自動的に記録される記録メディアから前記乗車履歴を読み出すリーダと、前記利用者の現在位置及び時刻情報を検出するセンサとを備え、所定の記録媒体にアクセス可能なコンピュータを乗車経路再現装置として動作させるためのコンピュータプログラムであって、
前記コンピュータを、
前記リーダを通じて前記乗車履歴を読み出す読出手段、
前記センサを通じて前記現在位置及び前記時刻情報を周期的に検出する検出手段、
検出した前記現在位置と前記記録媒体に格納されている駅の配置情報とを照合することにより前記入場駅と前記出場駅との間に存在する1又は複数の途中駅を特定するとともに、特定した各途中駅の駅間移動に要した時間と前記記録媒体に格納されている時刻表情報とを照合することにより前記利用者が乗車した交通機関の種別を特定する探索手段、
前記特定した種別に応じた乗車運賃を計算するとともに、前記途中駅、前記種別及び前記計算した乗車運賃の情報を前記乗車履歴と関連付け、これにより前記入場駅から前記途中駅を経て前記出場駅に至る、運賃情報の表示を伴う乗車経路の再現を可能にする解析手段、として機能させ、
前記解析手段は、前記探索手段により特定された途中駅及び交通機関の種別の少なくとも一方、あるいは前記記録メディアから読み出した乗車履歴を、外部から入力された修正指示に基づいて修正又は削除する、
コンピュータプログラム。
交通機関の利用者が乗車券として使用したときに入場駅、出場駅及び乗車運賃を含む乗車履歴が自動的に記録される記録メディアから前記乗車履歴を読み出すリーダと、前記利用者の現在位置及び時刻情報を検出するセンサとを備え、所定の記録媒体にアクセス可能なコンピュータを乗車経路再現装置として動作させるためのコンピュータプログラムであって、
前記コンピュータを、
前記リーダを通じて前記乗車履歴を読み出す読出手段、
前記センサを通じて前記現在位置及び前記時刻情報を周期的に検出する検出手段、
検出した前記現在位置と前記記録媒体に格納されている駅の配置情報とを照合することにより前記入場駅と前記出場駅との間に存在する1又は複数の途中駅を特定するとともに、特定した各途中駅の駅間移動に要した時間と前記記録媒体に格納されている時刻表情報とを照合することにより前記利用者が乗車した交通機関の種別を特定する探索手段、
前記特定した種別に応じた乗車運賃を計算するとともに、前記途中駅、前記種別及び前記計算した乗車運賃の情報を前記乗車履歴と関連付け、これにより前記入場駅から前記途中駅を経て前記出場駅に至る、運賃情報の表示を伴う乗車経路の再現を可能にする解析手段、として機能させ、
前記解析手段は、前記時刻表情報を参照して、前記特定した各途中駅及び前記交通機関の種別に応じて運賃区間を識別し、識別した運賃区間毎に前記運賃情報を計算する、
コンピュータプログラム。
請求項1乃至3のいずれか1項に記載された乗車経路再現装置との間で通信を行うコンピュータを、乗車管理装置として動作させるためのコンピュータプログラムであって、
前記コンピュータを、
前記乗車経路再現装置から前記乗車履歴、当該乗車履歴と関連付けられた前記途中駅、前記種別及び前記計算した乗車運賃の情報を前記利用者の識別情報と共に取得し、これにより前記入場駅から前記途中駅を経て前記出場駅に至る、運賃情報の表示を伴う乗車経路を利用者毎に再現する制御手段、
前記交通機関の利用結果を表す帳票を保持する帳票保持手段、
再現された前記乗車経路を前記帳票の所定領域へ転記し、転記された帳票を利用者毎に保管する帳票管理手段、
として機能させるコンピュータプログラム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態例を説明する。
図1は、本発明をネットワークシステムに適用した場合の構成図である。このネットワークシステムは、デジタル通信網の一例となるインターネットなどのネットワークNに接続された乗車管理サーバ1と、交通機関の利用者が保持する携帯端末2および乗車券カード3とを含んで構成される。携帯端末2は、GPS(Global Positioning system)からGPSデータを受信したり、複数のアクセスポイント(AP)4のいずれかを介してネットワークN上の乗車管理サーバ1と通信を行う機能を有するスマートフォン、タブレット端末、ノートパソコンなどである。交通機関は、例えば鉄道(JR、私鉄、地下鉄、新幹線を含む)であるものとする。
【0013】
乗車券カード3は、Suica(登録商標)やPASMO(登録商標)など、鉄道の利用者が乗車券として利用可能なプリペイド型の記録メディア(記録媒体)であり、利用時に入場駅、出場駅及び乗車運賃を含む乗車履歴が自動的に記録される。
【0014】
[乗車管理サーバ]
まず、乗車管理サーバ1の構成例について説明する。乗車管理サーバ1は、携帯端末2と通信を行う乗車管理装置として動作するコンピュータ(サーバ)である。
図2は、乗車管理サーバ1のハードウエア構成図である。乗車管理サーバ1は、CPU11,RAM12,ROM13を入出力バスB1に接続して構成される。入出力バスB1には、HDD14、通信I/F15、入力I/F16、出力I/F17も接続される。CPU(Central Processing Unit,以下同じ)11は、サーバ用コンピュータプログラムを実行することにより、乗車管理サーバ1の動作を統括的に制御する。RAM(Random Access Memory,以下同じ)12は、CPU11のワークメモリ、バッファメモリとして機能する。ROM(Read Only Memory,以下同じ)13は、プログラムROMとデータROMとを含む。プログラムROMには、サーバ用コンピュータプログラムの動作環境を整える基本制御プログラムが格納される。データROMは、サーバ用コンピュータプログラムを実行する上で必要となるパラメータが格納される。HDD(Hard Disc Drive)14は、サーバ用コンピュータプログラムや後述する各種データベース(DB)などを格納する。通信I/F(I/FはInterfaceの略,以下同じ)15は、ネットワークNやAP4を介して携帯端末2との通信を可能にする。入力I/F16は、図示しないキーボードなどの入力デバイスからのデータ入力を可能にする。出力I/F17は、図示しないディスプレイやプリンタなどへのデータ出力を可能にする。
【0015】
図3は、CPU11がサーバ用コンピュータプログラムを実行することにより、乗車管理サーバ1に形成される機能の構成図である。乗車管理サーバ1は、HDD14に、運行状況DB141、利用者DB142、帳票DB143を構築するとともに、主制御部110、通信制御部120、入出力制御部130として機能する。
【0016】
運行状況DB141は、携帯端末2に提供する運行遅延・停止情報、ダイヤ変更情報などが交通機関毎に保持する(運行情報保持手段)。これらの情報は、リアルタイムに更新される。利用者DB142には、登録された利用者の属性や再現された乗車経路などが当該利用者のID(識別情報)と関連付けて保持されている。帳票DB143は、交通機関の利用結果を表す各種帳票を保持する(帳票保持手段)。帳票は、例えば、利用者毎又は利用者のグループ毎の交通費申請書、出張報告書などである。文字や図表の記入領域が設けられており、後述する乗車経路のうち駅名や時刻情報が文字領域に転記され、経路図は図表の記入領域に転記される。
【0017】
主制御部110は、各DB141〜143への情報の格納(保持)、更新、読み出しを制御するとともに、携帯端末2への運行状況の提供や利用者(携帯端末2)毎の乗車経路の再現、交通費精算、帳票発行などに関する各種処理を行う。通信制御部120は、通信I/F15を制御することにより、携帯端末2との間に通信路を確立する。入出力制御部130は、入力I/F16を制御して入力デバイスからの情報入力を受け付けるとともに、出力I/F17を制御して図示しないディスプレイやプリンタへの情報を出力する。
【0018】
[携帯端末]
次に、携帯端末2の構成例を説明する。携帯端末2は、GPS(Global Positioning system)から緯度、経度、高度、水平精度、垂直精度、速度、方角、タイムスタンプを受信する機能と、複数のアクセスポイント(AP)4のいずれかを介してインターネットN上の乗車管理サーバ1と通信を行う機能と、乗車券カード3へのアクセスを行う機能を有するコンピュータである。例えばスマートフォン、タブレット端末、ノートパソコンなどを携帯端末2として利用することができる。交通機関は、例えば鉄道(JR、私鉄、地下鉄、新幹線を含む)であるものとする。
【0019】
図4は、携帯端末2のハードウエア構成図である。携帯端末2は、CPU21,RAM22,ROM23を有するコンピュータを入出力バスB2に接続して構成される。入出力バスB2には、半導体メモリなどで構成されるストレージユニット24、通信I/F25、入出力I/F26、GPSユニット28及びNFCリーダ29も接続される。
【0020】
CPU21は、乗車経路再現用アプリケーションプログラム(以下、「本アプリ」と略称する)を実行することにより、携帯端末2を、それを保持する利用者が乗車した交通機関の乗車経路を再現可能にする乗車経路再現装置として動作させる。RAM22はCPU21のワークメモリ、バッファメモリとして機能する。ROM23は、本アプリの動作を可能にする基本制御プログラム(オペレーティングシステム、関数など)やパラメータデータ(関数呼び出しデータなど)などが格納される。ストレージユニット24は、本アプリ、あるいは、本アプリによって処理されたデータなどを格納する。通信I/F25は、ネットワークNやAP4を介して乗車管理サーバ1との通信を可能にする。入出力I/F26は、図示しない筐体に設けられたタッチパネル27への情報出力と、タッチパネル27からの情報入力とを可能にする。タッチパネル27には、本アプリを起動あるいは終了させるためのアイコンを含むUI(User Interface) 部品などが表示される。GPSユニット28は、GPS5からのGPSデータを受信し、現在位置や時刻などを出力するセンサの一種である。NFC(Near Field Communication)リーダ29は、乗車券カード3から乗車履歴を読み取るリーダである。
【0021】
図5は、CPU21が本アプリを実行することにより、携帯端末2に形成される機能の構成図である。携帯端末2は、ストレージユニットに、路線DB241、時刻表DB242、UI部品243、設定テーブル244を構築する。携帯端末2は、また、主制御部210、バッファ220、NFC読出部231、トラッキング部232、通信制御部233、入出力制御部234、経路解析部235として機能する。
【0022】
路線DB241は、駅毎に利用可能な交通機関の路線情報が、各駅の配置情報(緯度、経度、つながりなど)と共に格納されている。路線情報には、特急、快速、普通列車、列車名などの種別も含まれる。時刻表DB242は、駅毎の交通機関の時刻表情報(運賃を含む)などが格納されている。UI部品243には、UI部品群が格納されている。例えば、タッチパネル27の画面に表示される画面部品、画面上に表示されない機能部品、機能付加部品が格納されている。画面部品は、入力フィールド、チェックボックス、表など、画面に表示される機能を提供する部品である。機能部品は、画面上で利用する機能を提供する部品である。機能付加部品は、入力フィールドへの入力時に文字列を補完するオートコンプリーション機能、フォーカス制御機能など、画面部品に対して機能を付加する部品である。設定テーブル244は、各種設定値やリストなどが格納されている。設定テーブル244には、利用者の定期券や周遊券利用区間など(便宜上、「定期券情報」と呼ぶ)も設定することができる。
【0023】
主制御部210は、各DB241〜244への情報の格納(保持)、更新、読み出しを制御するとともに、乗車経路再現に関する各種処理を行う。バッファ220は、後述するトラッキングデータや乗車券カード3から読み出したデータを蓄積、保存する。
NFC読出部231は、NFCリーダ29を介して乗車券カード3から乗車履歴を読み取り、これを保存する。この機能は独自に作成しても良いが、より簡便には既存の機能、例えば株式会社アクシスが提供しているソフトウェアである「Suica Reader」の読み取り機能との連携によっても実現が可能である。
【0024】
トラッキング部232は、タッチパネル27に表示された本アプリのアイコンが選択された後、GPSユニット28を通じて、現在位置(緯度、経度、高度)及び時刻情報(タイムスタンプ)を設定テーブル244に設定された時間間隔で周期的に検出する。この時間間隔は、駅間走行に要する時間よりも短い時間、例えば1分未満とする。現在位置には、水平精度、垂直精度などを含めてもよい。また、速度と角度が含まれてもよい。周期的に検出することを「トラッキング」と呼び、これによる検出データを「トラッキングデータ」と呼ぶ。トラッキングデータは、削除指示があるまでバッファ220に蓄積しておく。
現在位置の情報は、駅の識別などに使用する。水平精度と垂直精度は、検出精度の算出に用いる。速度と方角は、トラッキング間隔の算出などに使用する。このトラッキングデータにより、乗車中の時間の経過情報、列車の速度や加速度を算出することができる。
【0025】
通信制御部233は、通信I/F25を制御することによりネットワークNを介して乗車管理サーバ1との間に通信路を確立する。乗車管理サーバ1のアドレスなども設定テーブル244に設定されている。入出力制御部234は、入出力I/F26を制御してタッチパネル27への情報の出力やタッチパネル27からの情報入力を受け付ける。
【0026】
経路解析部235は、乗車経路の解析処理を行う。この処理は、大別して経路探索の処理と経路再現のための処理の2種類となる。経路探索の処理は、バッファ220に蓄積された当該周期のトラッキングデータのうち、現在位置と路線DB241に格納されている駅の配置情報とを照合することにより、利用者が利用した入場駅と出場駅との間に存する1又は複数の途中駅を特定するとともに、特定した各途中駅の駅間移動に要した時間と時刻表DB242に格納されている時刻表情報とを照合することにより利用者が乗車した列車の種別を特定する処理である。
具体的には、現在位置を起点として設定テーブル244に設定された所定の距離範囲に存在する駅の有無を探索する。距離範囲は、GPSユニット28の誤差の範囲と駅間を区別できる範囲とを考慮して1〜2[km]の範囲とした。この距離範囲で一つの駅が識別された場合、経路解析部235は、当該駅に関わるトラッキングデータを保存(蓄積されたままと)する。複数の駅が存在する場合はその中から所定条件を満たす一つの駅を識別し、識別した駅を入場駅、途中駅(入場駅と出場駅との間の駅)又は出場駅として特定する。当該距離範囲に一つの駅も存在しなかった場合は、当該周期のトラッキングデータを、駅が識別された場合と区別して一時的に保存しておき、それを次の駅が識別された時点又は後述する乗車経路を生成する際に削除指示を出す。
【0027】
なお、現在位置の変化は無いが時刻情報だけが変化する状態が検出された場合、経路解析部235では、それを乗車待ち状態又は停車状態と認識する。駅の識別ないし列車の種別の特定に際しては、乗車管理サーバ1にアクセスして運行状況DB141に運行遅延などがないかどうかを確認するようにしても良い。そのようにすることで、再現経路の正確度が増す。このような処理を、本アプリが起動している間繰り返す。これにより、入場駅、途中駅、出場駅のような複数の駅、乗車した列車の種別とが逐次特定されるので、駅の識別情報毎にそれぞれ時刻情報と関連付けてバッファ220に保存する。
【0028】
経路再現の処理は、乗車券カード3からNFC読出部231で読み取った乗車履歴と、バッファ220に保存されたトラッキングデータ(蓄積されたデータのうち削除されたなかったもの)及び特定された駅の識別情報などに基づいて、乗車経路の再現を可能にする処理である。
具体的には、経路解析部235は、特定した列車の種別に応じた乗車運賃(追加運賃など)を計算するとともに、途中駅、列車の種別及び計算した乗車運賃の情報を乗車履歴と関連付ける。入場駅と出場駅については乗車履歴のものを採用し、途中駅についてはバッファ220に保存された駅の識別情報及び時刻情報を採用して乗車経路を組み立てる。乗車経路の組立は、本願出願人が提供する「駅すぱあと」(本願出願人の登録商標)のエンジンを用いることができる。また、時刻表DB242の時刻表情報を参照して、特定した各途中駅及び列車の種別に応じて運賃区間を識別し、識別した運賃区間毎に運賃情報を計算する。運賃は、乗車券カード3に記録された運賃のほかに、特定した列車の種別が特急料金や指定席券などの追加料金が必要であるものであった場合は、追加料金も併せて計算する。その際、利用者の定期券情報の有無を確認し、定期券情報が存在するときは、乗車経路を定期券区間とその他の運賃区間とに区別するとともに運賃区間毎の運賃を再計算する。これにより入場駅から途中駅を経て出場駅に至る、運賃情報の表示を伴う乗車経路の再現が可能となる。
【0029】
編集部236は、上記の乗車経路をタッチパネル27に表示するための画面(レイアウト)の編集と、必要に応じて乗車管理サーバ1へ送信するためのデータ構造の編集とを行う。前者の編集では、UI部品243に格納されたUI部品を用いて、入場駅から途中駅を経て出場駅に至る、運賃情報の表示を伴う乗車経路を1つの画面に表示されるように、文字サイズや経路の表示レイアウトなどを編集する。また、乗車券カード3から読み取った乗車履歴、トラッキングデータから特定してリスト化された途中駅の情報、列車の種別などの確認や修正指示入力用の画面、後述するガイダンス情報なども編集する。
後者の編集では、上記の乗車経路に利用者の識別情報を関連付け、乗車管理サーバ1において乗車経路を再現できるようにデータ構造を編集する。
【0030】
[運用形態]
次に、上記のように構成されるネットワークシステムの運用形態例を、各機能の詳細内容と共に説明する。ここでは、利用者が、携帯端末2と乗車券カード3とを所持してJR高円寺駅から自動改札で入場し、JR新宿駅の自動改札で出場した後、小田急線新宿駅から小田急線の列車に乗車して、小田急線小田原駅の自動改札から出場した場合の例を示す。
【0031】
<携帯端末の動作>
図6は、携帯端末2における処理ないし制御の手順説明図である。携帯端末2は、利用者による本アプリの起動を待つ(S101:No)。本アプリの起動は、例えば携帯端末2のUI表示画面に表示された、本アプリのアイコンを利用者がタップすることで起動する。本アプリが起動すると(S101:Yes)、携帯端末2の制御は主制御部210に移る。主制御部210は、トラッキング開始指示の入力を待つ(S102:No)。トラッキング開始指示の入力は、所定のUI部品への利用者の操作入力であるが、本アプリの起動後、自動的に入力されるようにしても良い。
【0032】
このトラッキング開始指示が入力されると(S102:Yes)、主制御部210は、トラッキング部232にトラッキングを開始させる(S103)。トラッキング部232はトラッキングデータを周期的に取得し、逐次バッファ220に蓄積する。
【0033】
トラッキング開始後、利用者が、乗車券カード3を利用してJR高円寺駅の自動改札からJR路線に入場すると、その乗車券カード3にJR高円寺駅の駅名、入場日時などが自動的に記録される。主制御部210は経路解析部235に、経路探索の処理を実行させる。経路解析部235は、バッファ220に記録されたトラッキングデータをもとに、駅の識別情報及び時刻情報を特定して逐次リスト化し、これをバッファ220の他の領域に保存する(S104)。
【0034】
本例の場合、トラッキング開始指示後の最初の周期のトラッキングによりJR高円寺駅が識別され、入場駅として特定される。この場合は、駅が特定されたことを示すフラグを当該周期のトラッキングデータに関連付け、リストアップされる。しかし、次の周期のトラッキングでは、利用者(携帯端末2)は駅間を移動中であるため、駅が識別されず、フラグによる関連付けは行われない。その次の周期のトラッキングでは、次の駅であるJR中野駅が途中駅として特定され、フラグが関連付けられ、リストアップされる。その際、2回目の周期のトラッキングデータについては削除指示が出され、バッファ220から削除される。なお、削除するトラッキングデータだけにフラグを立てておき、事後に一斉削除するようにしても良い。
経路解析部235は、リストアップされた駅が増える度に駅間移動に要した時間を計算し、この時間が最も類似する列車及びその種別を時刻表DB242に格納されている時刻表情報の中から特定し、バッファ220に保存する。
【0035】
ところで、乗車経路の探索の処理において、そこを通過することが不自然となる駅又は通過することがない駅を識別し、それを途中駅と特定してしまう場合がある。本例の場合はJR線を利用して高円寺駅→中野駅→東中野駅→大久保駅→新宿駅へと移動するのが一般的であるが、新宿駅付近では、JR線と平行して西武新宿線があり、新宿駅の隣の大久保駅から最も近い駅は西武新宿駅となる。そのため、トラッキングのタイミングによっては、大久保駅と新宿駅との間で西武新宿駅が特定されてしまう場合がある。この場合、大久保駅と新宿駅との間に西武新宿駅が途中駅としてリストに登場する。しかし、JR大久保駅から西武新宿駅で乗り換えて新宿駅に向かうことは、通常はあり得ないことである。そこで、本実施形態では、乗車経路に含めない途中駅の組み合わせを定めた除外駅リストを設定テーブル244に設定しておき、トラッキングで一つの駅を識別する際に除外駅リストに含まれる駅については当該駅の識別を中止するようにした。これにより、西武新宿駅はリストから除外されるので、精度の高い乗車経路の再現が可能となる。
【0036】
また、高円寺駅から新宿駅に向かう途中で他の列車に乗り換えることがあり得るが、乗り換えた列車が新宿駅に停車しない場合、そのような乗換は現実的でないものとなる。そのため、本実施形態では、タッチパネル27を通じて必ず停車する駅の設定を可能としている。設定された駅を「設定駅」と呼ぶ。この設定駅の情報を設定テーブル244に保持しておき、路線情報(又は時刻表情報)によれば当該設定駅で停車しない列車の識別を中止するようにした。本例の場合の設定駅は新宿駅で、JR高円寺駅で利用可能な路線はJR総武線とJR中央線快速であり、駅の探索を続けていくとJR中野駅で東京メトロ東西線に乗り換え可能であることが判明するが、東京メトロ東西線を利用すると新宿駅に停車しない。そこで、路線DB241を参照し、JR中野駅から乗換可能な列車では設定駅である新宿駅に停車しない場合、当該列車の識別を中止することとした。これにより精度の高い列車及びその種別の特定が可能となる。
【0037】
設定駅が設定されている場合、経路解析部235は、設定駅に到着したときに検出された時刻情報と時刻表DB242に格納された時刻表情報とを比較して列車の種別を特定するようにしても良い。すなわち、設定駅について定められた時刻表情報と最も類似する時刻に発車又は到着する列車の種別を特定するようにしても良い。例えば、乗換の設定駅である新宿駅に到着し、かつ、目的駅である設定駅である小田原駅に向かう場合において、新宿駅で検出された時刻情報は、
図8に示されるように16:35であったとする。この時刻で新宿駅から乗車可能な小田急列車は、16:33発の各駅停車、16:40発の特急「はこね41号」、16:41発の急行の3つであるが、時刻表情報によれば、その各駅停車は小田原駅に停車しないため、識別が中止される。また、16:41発の急行列車も時刻表情報によれば小田原駅18:16着となっているにも関わらず、小田原駅で検出された時刻情報は17:56であるから除外される。そのため、利用者は16:40発の特急「はこね41号」に乗車していたと特定する。
このように、除外駅リスト、設定駅の設定、設定駅における到着又は発車の時刻との比較を行う技術を応用することで、例えば地下鉄やトンネル内など、GPSが利用できず、途中駅の特定ができない状態でも、その補完が可能になる。
【0038】
図6に戻り、以上の乗車経路を探索する処理をトラッキング終了指示が入力されるまで繰り返す(S105:No)。トラッキング終了指示は、目的となる出場駅(小田原駅)の自動改札から出場した後、任意の時点で入力することができる。出場駅の自動改札から出場する際、乗車券カード3には、出場駅である小田原駅の識別情報、出場時刻、運賃(残高)が自動的に記録される。これにより、JR高円寺駅を入場駅、小田原駅を出場駅とする一つの経路候補データが完結する。
【0039】
トラッキング終了指示の入力があると(S105:Yes)、主制御部210は、入出力制御部234を制御して、タッチパネル27に乗車履歴の読み出しを指示するための案内画面を表示させる(S106)。トラッキング終了指示の入力は、所定のUI部品への利用者の操作入力による。案内情報に従い、利用者が乗車券カード3をNFCリーダ29にかざすと、NFC読出部231は、乗車履歴を読み取り、それをバッファ220に保存する。読み取りの完了を待ち(S107:No)、完了したときは(S107:Yes)、経路解析部235が乗車経路解析の処理を行い、乗車経路の再現を可能にする(S108)。すなわち、入場駅から途中駅を経て出場駅に至る乗車経路を運賃区間毎に組み立てる。その際、運賃区間(JR区間と小田急区間)毎に運賃情報を計算し、乗車履歴に含まれていない追加料金が発生した場合は、その情報を運賃情報に含めておく。
【0040】
編集部236は、再現された乗車経路をタッチパネル27に表示するための画面を編集する。入出力制御部234は、この画面を入出力I/F26を介してタッチパネル27に表示させる(S109)。これにより、利用者は、自分が入場駅から入場した後、いくつかの途中駅を経て出場駅に至る、運賃情報の表示を伴う乗車経路を視認することができる。
通信制御部233は、再現された乗車経路を利用者の識別情報と共に、乗車管理サーバ1へ送信する(S110)。これにより、乗車管理サーバ1においても、乗車経路を再現することができる。
【0041】
ここで、乗車券カード3からの乗車履歴の読み出しの処理について、詳しく説明する。
図7は、この処理の手順説明図である。すなわち、主制御部210は、カード検出のコールバック設定を行い(S201)、乗車券カード3の検出と、当該乗車券カード3の識別情報(ID)の取得とを行う(S202)。IDを解析した結果、それが規格に則った乗車券カード(規格カード)でない場合は処理を終える(S203:No)。規格カードであった場合、主制御部210は、当該乗車券カード3にブロックデータの出力をリクエストする(S204)。乗車券カード3がリクエストに応答しない場合は、処理を終える(S204:No)。応答した場合は、ブロックデータを数値、文字列に変換する(S205)。変換した数値、文字列を解析し、乗車履歴かどうかを判定する(S205)。乗車履歴でなければ、処理を終える(S205:No)。乗車履歴であった場合は、入場駅、出場駅を取得する(S206)。その後、入場駅の残高と出場後の残高から利用金額を算出する(S207)。次のブロックデータがある場合は、S205の処理に戻る(S208:Yes)。次のブロックデータが無い場合は、経路候補データとしてバッファ220に保存する(S208:No、S209)。
【0042】
なお、経路候補データは、入場駅と出場駅の組み合わせ毎に表形式で保存される。そのため、1日に複数の経路候補データが保存される場合がある。また、保存された経路候補データは、適宜、タッチパネル27に表示され、その内容を確認したり、操作(削除など)することができる。表示される経路候補データの例を
図9に示す。
図9(a)の例では、利用日付、分類、入場駅、出場駅、金額、操作の項目が経路候補データ毎に関連付けて保存され、表示されている。「利用日付」は乗車券カード3を利用した日時であり、表示上は日付だけであるが、時刻順に並べられる。「種別」は、チャージ、運賃支払、物販(自動販売機等の使用)のいずれかが乗車券カード3の相手方装置に応じて自動的に記入される。「入場駅」は利用者が入場した駅の識別情報であり、「出場駅」は利用者が出場した駅の識別情報である。「金額」は引き落とし金額である。「操作」は本実施形態では削除の指示が記入される。
【0043】
各経路候補データには図示しないユニークなIDが連番で付与されており、乗車券カード3から追加で読み込む際は、IDを基に差分のみが取り込まれ、重複分は取り込まれない。
図9(b)は、
図9(a)の差分となる3つの経路候補データが取り込まれ、保存される例が示されている。
図9(c)は、利用者が「操作」の項目で削除が指示された状態が示されている。図示の例では、「種別」がチャージ及び物販となる経路候補データが削除され、運賃支払いに関するものだけが残されている。チャージ及び物販に関するものは、そもそも乗車経路の再現ができないものだからである。なお、経路候補データが削除されても乗車券カード3からは削除されない。
【0044】
本実施形態において、利用者がJR高円寺駅から新宿駅へ移動する際に、経路解析部235が、新宿駅の手前で経路再現に不適切な西武新宿駅が特定されることを除外駅リストにより中止することは上述した通りであるが、これは、例えば利用者によって予め除外駅リストが設定されていることが前提となる。利用者が路線情報に詳しくない場合、あるいは路線情報が変更された場合、除外駅リストが設定されないこととなる。そこで、本実施形態では、除外駅リストが設定されていない場合においても、タッチパネル27にリスト修正画面を表示し、外部からの修正指示の入力を受け付け、これにより、経路再現に不適切な駅を手動で除外できるようにした。本例の場合、JR高円寺駅から新宿駅まで探索を継続すると、
図10のように、途中駅及び時刻情報を含めたリスト修正画面が表示される。
図10の例では、西武新宿駅が誤って特定されており、この状態を放置すると、乗車経路を再現する際に、高田馬場駅なども登場することになり、複雑な乗車経路となってしまう。そのため、手動で西武新宿駅を削除することにより正しいリストに修正し、保存することができる。
【0045】
上記の例において西武新宿駅が誤りであることを容易に判断できるようにするため、ガイダンス情報をタッチパネル27に表示するようにしても良い。例えば、路線DB241に格納された路線情報からJR高円寺駅が出場駅となる場合の路線情報を抽出し、トラッキングデータと照合して、
図11のように表示させるようにしても良い。図示の路線情報には西武新宿駅が存在しないため、
図10のリストが誤りであることを容易に判断することができる。
上記例では、特定された途中駅の例であるが、列車の種別を修正するようにしても良い。また、上記例では、路線情報(駅の配置情報)を基に修正可能にする場合の例であるが、出場駅を出発する列車の時刻表情報を基にガイダンス情報を作成し、タッチパネル27に表示するようにしても良い。
【0046】
乗車券カード3から読み出した乗車履歴のうち、そもそも乗車経路の再現ができないものを削除できることは
図9(a)〜(c)に示した通りであるが、プライベート部分の乗車経路の再現を回避するなど、乗車経路の再現を選択的に行うようにしても良い。例えば乗車券カード3から乗車履歴を読み取り、経路候補データとして保存する際に、
図12のように「確認」の項目を設定しておき、特定の経路候補データだけについて、乗車経路の再現を可能にしても良い。
【0047】
<乗車管理サーバの動作>
乗車経路の再現に関する主たる動作は、上記のように携帯端末2で行うが、乗車管理サーバ1は、携帯端末2における途中駅や列車の種別の特定が正確なものとなるように、種々の形で携帯端末2の動作をサポートする。
例えば、主制御部110は、列車の運行遅延・停止情報、ダイヤ変更情報を運行状況DB141に保持しておき、携帯端末2の求めに応じて保持されている情報を通知する。また、携帯端末2の求めに応じて乗車経路の再現を乗車管理サーバ1において行うようにすることができる。すなわち、携帯端末2からネットワークNを介して乗車履歴、当該乗車履歴と関連付けられた途中駅、列車の種別及び乗車運賃の情報を利用者の識別情報と共に取得し、これにより、利用者が入場した入場駅から途中駅を経て出場駅に至る、運賃情報の表示を伴う乗車経路を利用者毎に再現する。
【0048】
乗車管理サーバ1は、また、再現された、運賃情報の表示を伴う乗車経路を、所定の帳票(例えば旅費精算書、出張報告書など)の所定領域へ転記し、転記された帳票を利用者毎に利用者DB142に保管する帳票管理手段として動作する。保管された帳票は、電子データとして利用者が指定した電子機器へ出力される。あるいは、出力I/F17を介してプリンタなどの出力装置へ出力するようにする。
【0049】
<変形例>
上記の実施形態では、乗車経路を再現する上で必要となる路線情報(駅の配置情報)、時刻表情報などを携帯端末2が保持する場合の例について説明したが、例えば
図13に示すように、これらの情報を乗車管理サーバ1で保持するようにしても良い。すなわち、路線・時刻表DB541、運行状況DB542、地
図DB543、利用者DB544、帳票DB545を乗車管理サーバ1に備え、主制御部510が、携帯端末2と協働で乗車経路の再現のための処理を行うようにしても良い。
路線・時刻表DB541は、路線DB241と時刻表DB242とを合体した内容のものである。地
図DB543は、地域毎又は全国の駅周辺の地図情報を格納したものである。運行状況DB542は運行状況DB141、利用者DB544は利用者DB142、帳票DB545は帳票DB143と同じものである。
【0050】
乗車経路の再現のための処理を携帯端末2と協働で行う場合、主制御部510は、例えば、携帯端末2からの求めに応じて、必要なエリア(特定地域、都内、関東地区、東日本地区、全国)の路線情報及び時刻表情報を携帯端末2へ送信する。あるいは、携帯端末2から乗車履歴やトラッキングデータを受け取り、主制御部510において乗車経路を再現した後、それを携帯端末2へ送信し、タッチパネル27に表示させる。その際、駅毎の地図情報を地
図DB543から読み出し、再現した乗車経路を地図上に太い線で強調表示させるようにしても良い。
【0051】
なお、本実施形態では、記録メディアの例として乗車券カード3を用いる場合の例を示したが、記録メディアは、携帯端末2に搭載されている乗車券カード機能でも代用が可能である。また、本実施形態では、交通機関の例として鉄道の場合の例を示したが、乗合バス又は乗合バスと鉄道とを組み合わせた路線についても適用が可能である。この場合、駅は、停留所と読み替えることになる。