【文献】
行正徹,うつ病の病態生理−活動量、R-R間隔の観点から−,バイオメディカル・ファジィ・システム学会年次大会講演論文集,2008年10月11日,Vol.21,pp.72-75
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記LFは、拍動間隔を周波数スペクトル変換して二乗して得たパワースペクトルを周波数Lf1からLf2まで定積分した値であり、前記HFは、拍動間隔を周波数スペクトル変換して二乗して得たパワースペクトルを周波数Hf1からHf2まで定積分した値である請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.うつ状態判定方法
本発明の第1のうつ状態判定方法は、被検者の拍動間隔と、被検者の動きに伴う加速度または角速度(以下、「活動量」と記載する)と、を計測し、下記(1)式〜(6)式のうち少なくとも一つの式が計算され、かつその計算された式が満足される場合に被検者が双極性障害であると判定するものである。
[A]被検者の覚醒時間帯における、
拍動間隔/活動量<C1 ・・・(1)
HF/活動量<C2 ・・・(2)
(LF/HF)/活動量<C3 ・・・(3)
[B]被検者の睡眠時間帯における、
拍動間隔×活動量<C4 ・・・(4)
HF×活動量<C5 ・・・(5)
(LF/HF)×活動量<C6 ・・・(6)
但し、LFは、拍動間隔を周波数スペクトル変換するステップを含んで得たパワースペクトルを周波数Lf1からLf2まで定積分した値であり、HFは、前記パワースペクトルを周波数Hf1からHf2まで定積分した値であり、Hf1>Lf1、Hf2>Lf2であり、C1〜C6は定数である。
【0020】
また、本発明の第2のうつ状態判定方法は、被検者の拍動間隔と、被検者の動きに伴う加速度または角速度(以下、「活動量」と記載する)と、を計測し、下記(7)式〜(9)式の全ての式を計算し、下記(7)式〜(9)式のうち少なくとも一つの式が満足される場合に被検者が大うつ病性障害であると判定するものである。
[C]被検者の覚醒時間帯における、
拍動間隔×活動量<C7 ・・・(7)
HF/活動量>C8 ・・・(8)
(LF/HF)×活動量<C9 ・・・(9)
但し、LFは、拍動間隔を周波数スペクトル変換するステップを含んで得たパワースペクトルを周波数Lf1からLf2まで定積分した値であり、HFは、前記パワースペクトルを周波数Hf1からHf2まで定積分した値であり、Hf1>Lf1、Hf2>Lf2であり、C7〜C9は定数である。
【0021】
さらに、本発明の第3のうつ状態判定方法は、被検者の拍動間隔と、被検者の動きに伴う加速度または角速度(以下、「活動量」と記載する)と、を計測し、下記(1)式〜(9)式の全ての式を計算し、かつ下記(1)式〜(9)式のうち少なくとも一つの式が満足される場合に被検者がうつ状態であると判定する。
[A]被検者の覚醒時間帯における、
拍動間隔/活動量<C1 ・・・(1)
HF/活動量<C2 ・・・(2)
(LF/HF)/活動量<C3 ・・・(3)
[B]被検者の睡眠時間帯における、
拍動間隔×活動量<C4 ・・・(4)
HF×活動量<C5 ・・・(5)
(LF/HF)×活動量<C6 ・・・(6)
[C]被検者の覚醒時間帯における、
拍動間隔×活動量<C7 ・・・(7)
HF/活動量>C8 ・・・(8)
(LF/HF)×活動量<C9 ・・・(9)
但し、LFは、拍動間隔を周波数スペクトル変換するステップを含んで得たパワースペクトルを周波数Lf1からLf2まで定積分した値であり、HFは、前記パワースペクトルを周波数Hf1からHf2まで定積分した値であり、Hf1>Lf1、Hf2>Lf2であり、C1〜C9は定数である。
【0022】
本発明のうつ状態判定方法は、被検者の拍動間隔を計測する。拍動間隔とは心拍あるいは脈拍の間隔を指す(単位:ms)。心拍間隔は、心電図からR波とR波の間隔を読み取ること、あるいは隣り合う心拍同士の間隔を計測することにより取得する。脈拍間隔は、隣り合う脈拍同士の間隔を計測することにより取得する。拍動間隔またはその揺動は、自律神経活動を示しているといわれている。
【0023】
拍動間隔として、心電信号におけるR波とR波との間隔であるRR間隔(以下、「RRI」と記載する)を用いることが好ましい。RRIは信号のピークがはっきり出ることにより拍動間隔の精度が高くなるため、ピーク位置の誤認識が起こりにくい。
【0024】
本発明のうつ状態判定方法は、被検者の動きに伴う加速度または角速度である活動量を計測する。活動量が被検者の動きに伴う加速度の場合、加速度Aは被検者の動きに伴う加速度と被検者に作用する重力加速度との合成値であり、重力加速度g(=9.8m/s
2)に対する比で表される(単位:無次元量)。具体的には、以下の(10)式で表されるように、加速度Aは、被検者の動きに伴う加速度であるX軸、Y軸、Z軸方向の加速度x、y、zの二乗和の平方根から、被検者に作用する重力加速度g(=9.8m/s
2)分として(g/g)=1を減じた値である(ここで単位gは重力加速度の大きさを表す)。被検者の立位時であって動きがないときには、x、y、zの値はほぼ0となるため、被検者の身長方向の加速度の大きさはほぼ1である。
【0026】
一方、角速度Ωは被検者のX軸、Y軸、Z軸周りの角速度ω
x、ω
y、ω
zの二乗和の平方根であり、単位はrad/sまたは1/sである。つまり、角速度Ωは以下の(11)式で表される。
【0028】
角速度は回転を検出するため、例えば、睡眠時間帯における被検者の寝返りの頻度などを検出するのに適している。
【0029】
本発明のうつ状態判定方法は、覚醒時間帯における判定条件[A]と睡眠時間帯における判定条件[B]とに大別される。覚醒時間帯とは被検者の目が覚めている、つまり起きている時間帯を指す。一方、睡眠時間帯とは、被検者が眠っている時間帯であり、覚醒時間帯以外の時間帯を指す。覚醒時間帯と睡眠時間帯は、被検者の生活環境や精神状態により様々な態様を示すものであり、時間長や時間帯が特に限定されるものではない。
【0030】
本発明において、覚醒時間帯と睡眠時間帯の分類は、被検者へのアンケートによって覚醒開始時間と睡眠開始時間を自己申告してもらうことにより行ってもよいし、後述するうつ状態判定装置に設けられる入力手段により行ってもよい。そのほか、例えば特開2010−179133号公報や特開2009−297474号公報に記載の公知の睡眠状態計測方法等を適用することもできる。より客観的に覚醒時間帯と睡眠時間帯を分類するためには、被検者の動きに伴い計測される加速度を用いることが好ましい。この分類方法によれば、被検者の自己申告は不要であるため、被検者の検査負担が軽減される。また、被検者の申告漏れや申告誤りによる覚醒時間帯と睡眠時間帯の分類ミスの発生も抑止される。
【0031】
覚醒時間帯と睡眠時間帯の分類には、被検者の身長方向の加速度TAから算出される負加速度NAを用いることが好ましい。一般に、睡眠時間帯の身長方向の加速度が立位時に負の値となるように加速度計が調整されている場合、睡眠時間帯の身長方向の加速度は、覚醒時間帯の身長方向の加速度と比べて大きい傾向にあるからである。このように、身長方向の加速度は、覚醒時間帯と睡眠時間帯で差があることから、覚醒時間帯と睡眠時間帯の分類に適している。本発明において身長方向とは、被検者の足部から頭部へ向かう方向である。
【0032】
[1]覚醒時間帯と睡眠時間帯の第1の分類方法
被検者の身長方向の加速度TAを用いた覚醒時間帯と睡眠時間帯の分類方法について説明する。本発明では、被検者の身長方向の加速度TAを計測し、下記[D]の条件に従い、負加速度NAを算出して臥位時間帯を算出し、覚醒時間帯と睡眠時間帯を分類することが好ましい。以下、単に「第1の分類方法」ということがある。
[D](1)負加速度NAの算出
(1a)被検者の立位時においてTA≧0の場合、NA=(−1)×(TA)
(1b)被検者の立位時においてTA<0の場合、NA=TA
(2)臥位時間帯の算出
(2a)第1臥位時間帯L
m1:NA≧C10(C10は定数)が第1所定時間T
1以上である時間帯
(2b)第2臥位時間帯L
m2:前記第1臥位時間帯L
m1が2以上あって、隣り合う2つの第1臥位時間帯L
m11、L
m12の間のNA<C10である間隙時間帯L
smが第2所定時間T
2以内の場合、前記隣り合う2つの第1臥位時間帯L
m11、L
m12と前記間隙時間帯L
smを合計した時間帯
(3)覚醒時間帯と睡眠時間帯の分類
(3a)睡眠時間帯:所定計測単位時間中、前記第1臥位時間帯L
m1と、前記第2臥位時間帯L
m2のうち最長の時間帯
(3b)覚醒時間帯:所定計測単位時間から前記睡眠時間帯を除いた時間帯
【0033】
臥位時間帯はうたた寝、昼寝、睡眠等により、臥位の姿勢を取っている時間帯である。このため、臥位時間帯から睡眠時間帯を抽出することによって、覚醒時間帯と睡眠時間帯を分類することが可能となる。
【0034】
所定計測時間とは、計測を行う合計時間を指す。第1のうつ状態判定方法では、覚醒時間帯における(1)式〜(3)式と睡眠時間帯における(4)式〜(6)式のうち、少なくとも一つの式が計算され、かつその計算された式が満足するかを判定すればよい。したがって、第1のうつ状態判定方法において、所定計測時間は、覚醒時間帯と睡眠時間帯のいずれか一方が得られる時間長であることが好ましい。より好ましくは、覚醒時間帯と睡眠時間帯の両方が得られる時間長である。
一方、第2および第3のうつ状態判定方法では、覚醒時間帯および睡眠時間帯における全ての条件式を計算する必要がある。このため、第2および第3のうつ状態判定方法において、所定計測時間は覚醒時間帯と睡眠時間帯の両方が得られる時間長である。
うつ状態の検出精度を向上させるため、所定計測時間は、2以上の覚醒時間帯と、2以上の睡眠時間帯が得られる時間長であることが好ましい。したがって、所定計測時間は2日以上であることが好ましく、3日以上であることがより好ましい。また、所定計測時間が長いほど信頼性の高いデータが取得できるが被検者への負担を考慮して、例えば14日以内、より好ましくは10日以内に設定することができる。
【0035】
第1の分類方法では、所定計測単位時間における睡眠時間帯を1つに特定しているため、うつ状態の判定の条件式(1)式〜(9)式による判定回数を少なくすることができる。
【0036】
第1の分類方法に記載の負加速度および臥位時間帯の算出、覚醒時間帯と睡眠時間帯の分類の詳細について説明する。
[D](1)負加速度NAの算出
被検者の身長方向の加速度TAから負加速度NAを算出する。条件(1a)および(1b)に示すように、負加速度は、被検者の立位時における身長方向の加速度TAが正の値の場合は身長方向の加速度に−1を乗算した値を負加速度NAとし、身長方向の加速度TAが負の値の場合は当該負の値を負加速度NAとする。
【0037】
[D](2)臥位時間帯の算出
臥位時間帯を第1臥位時間帯と第2臥位時間帯の2種類に分けて算出する。条件(2a)の通り、第1臥位時間帯L
m1はNA≧C10(C10は定数)が第1所定時間T
1以上である時間帯である。第1臥位時間帯L
m1の算出では、覚醒時間帯と睡眠時間帯の分類精度を高めるために第1所定時間T
1によるしきい値を設けている。第1所定時間T
1は、例えば、好ましくは30分、より好ましくは45分、さらに好ましくは1時間に設定することができる。NA≧C10が第1所定時間T
1未満である時間帯も実際には臥位状態であるといえるが、比較的短い時間のうたた寝や昼寝等、活動リズムの観点から本来の睡眠と評価することができない時間を睡眠時間帯に分類することを防ぐために、本分類方法では臥位時間帯とみなしていない。
【0038】
条件[D](2)では条件(2a)のみを用いて臥位時間帯を算出してもよい。しかし、被検者によっては睡眠時間帯に頻繁に臥位以外の姿勢を取ることもあり、この場合には睡眠時間帯の推定が困難になる。このため、上記[D]のように条件(2b)により第2臥位時間帯を算出する方法を条件(2a)と組み合わせることが好ましい。
【0039】
条件(2b)の通り、第2臥位時間帯L
m2は、前記第1臥位時間帯L
m1が2以上あって、隣り合う2つの第1臥位時間帯L
m11、L
m12の間のNA<C10である間隙時間帯L
smが第2所定時間T
2以内の場合、前記隣り合う2つの第1臥位時間帯L
m11、L
m12と前記間隙時間帯L
smを合計した時間帯である。このように第2臥位時間帯を算出しているのは、第1臥位時間帯L
m1が細切れになっている場合、2つの第1臥位時間帯L
m11、L
m12の間の間隙時間帯L
smも含めて1つの臥位時間帯(第2臥位時間帯L
m2)として分類するためである。ここで、第2所定時間T
2は、例えば、好ましくは30分、より好ましくは45分、さらに好ましくは1時間に設定することができる。また、第1所定時間T
1と第2所定時間T
2は同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0040】
なお、定数C10(単位:無次元量)の値は特に制限されないが、例えば−0.85であることが好ましく、−0.8であることがより好ましく、−0.75であることがさらに好ましい。
【0041】
[D](3)覚醒時間帯と睡眠時間帯の分類
条件(3a)の通り、所定計測単位時間中、前記第1臥位時間帯L
m1と、前記第2臥位時間帯L
m2のうち最長の時間帯を睡眠時間帯とする。また、条件(3b)の通り、所定計測単位時間から前記睡眠時間帯を除いた時間を覚醒時間帯とする。
【0042】
所定計測単位時間は、日毎の睡眠時間帯を推定するために設定される時間長である。所定計測単位時間は12時間以上であることが好ましく、18時間以上であることがより好ましく、また、24時間以内であることが好ましい。日勤者でも夜勤者でも18時前後の時間には覚醒しているのが一般的であるから、所定計測単位時間の始点は、17時〜19時に好ましく設定される。
【0043】
臥位時間帯の算出は、上記[D](2)の算出方法以外に、被検者に臥位開始時間と終了時間を自己申告してもらうことにより行ってもよい。
【0044】
[2]覚醒時間帯と睡眠時間帯の第2の分類方法
下記条件[E]に従い、臥位時間帯を算出して、覚醒時間帯と睡眠時間帯を分類してもよい。以下、単に「第2の分類方法」ということがある。
[E](1)負加速度NAの算出
(1a)被検者の立位時においてTA≧0の場合、NA=(−1)×(TA)
(1b)被検者の立位時においてTA<0の場合、NA=TA
(2)臥位時間帯の算出
臥位時間帯:NA≧C10(C10は定数)を満足する時間帯
(3)覚醒時間帯と睡眠時間帯の分類
(3a)睡眠時間帯:所定計測単位時間中、条件[E](2)で算出した臥位時間帯の合計
(3b)覚醒時間帯:所定計測単位時間から条件[E](3a)で算出した睡眠時間帯を除いた時間帯
[E](2)は、第1の分類方法に比べて条件式が単純化されているため、臥位時間帯を容易に算出することができる。第2の分類方法によれば覚醒時間帯と睡眠時間帯を容易に分類することができるため、リアルタイムで分類する必要がある場合に適している。
【0045】
[3]覚醒時間帯と睡眠時間帯の第3の分類方法
また、下記条件[F]を用いて、臥位時間帯を算出して、覚醒時間帯と睡眠時間帯を分類してもよい。以下、単に「第3の分類方法」ということがある。
[F](1)負加速度NAの算出
(1a)被検者の立位時においてTA≧0の場合、NA=(−1)×(TA)
(1b)被検者の立位時においてTA<0の場合、NA=TA
(2)臥位時間帯の算出
臥位時間帯:NA≧C10(C10は定数)を満足する時間帯
(3)覚醒時間帯と睡眠時間帯の分類
(3a)睡眠時間帯:所定計測単位時間中、条件[F](2)で算出した臥位時間帯のうち最長の時間帯
(3b)覚醒時間帯:所定計測単位時間から条件[F](3a)で算出した睡眠時間帯を除いた時間帯
本方法は、睡眠時に中途半端な時間で起きずに連続して眠ることができる被検者に対して有効である。
【0046】
[4]覚醒時間帯と睡眠時間帯の第4の分類方法
さらに、下記条件[G]を用いて、臥位時間帯を算出して、覚醒時間帯と睡眠時間帯を分類してもよい。以下、単に「第4の分類方法」ということがある。
[G](1)負加速度NAの算出
(1a)被検者の立位時においてTA≧0の場合、NA=(−1)×(TA)
(1b)被検者の立位時においてTA<0の場合、NA=TA
(2)臥位時間帯の算出
臥位時間帯:NA≧C10(C10は定数)を満足する時間帯
(3)覚醒時間帯と睡眠時間帯の分類
(3a)睡眠時間帯:所定計測単位時間中、条件[G](2)で算出した臥位時間帯のうち、第3所定時間T
3以上連続した時間帯の合計
(3b)覚醒時間帯:所定計測単位時間中、条件[G](3a)で算出した睡眠時間帯を除いた時間帯
第3所定時間T
3は、睡眠時以外の状態で臥位になったと推定される時間帯を覚醒時間帯とみなすために設定される時間長である。第3所定時間T
3は例えば15分以上、好ましくは30分以上、より好ましくは1時間以上に設定することができる。第4の分類方法では、細切れに分類された睡眠時間帯を積算することにより実質的な睡眠時間帯を推定するため、睡眠時に中途半端な時間で起きてしまう中途覚醒の不眠症を抱えた被検者に対して有効である。
【0047】
上述したように加速度を用いて覚醒時間帯と睡眠時間帯を分類する場合、当該加速度(例えば、身長方向の加速度TAや負加速度NA)は、加速度−時間波形に対してモルフォロジー演算を行った後の値であることが好ましい。モルフォロジー演算は、画像処理でノイズ除去のために用いられる。このため、加速度−時間波形に対してモルフォロジー演算を行った後の値を各条件式に適用すれば、得られた加速度のうち、所定計測時間と比較して短時間(例えば、所定計測時間の1/150時間以内)に変化する値は除去される。このため、加速度−時間波形の全体の輪郭が抽出されて、覚醒時間帯と睡眠時間帯を分類しやすくなる。モルフォロジー演算は、身長方向の加速度TAに対して行ってもよく、負加速度NAに対して行ってもよい。各条件式による判定回数を減少することができるため、うつ状態の判定に必要な時間の短縮が図られる。
【0048】
モルフォロジー演算に要する処理時間を短縮するために、2値化処理がなされた加速度−時間波形に対してモルフォロジー演算を行うことも好ましい。2値化処理では、例えば、加速度が所定値(しきい値)C
B以上の場合に加速度を0とみなし、加速度が所定値C
B未満の場合に加速度を1とみなす。所定値C
Bの値は特に制限されないが、例えば−0.85gであることが好ましく、−0.8gであることがより好ましく、−0.75gであることがさらに好ましい(ここで単位gは重力加速度の大きさを表す)。
【0049】
モルフォロジー演算は、例えば、線を太くする処理を行う膨張演算、線を細くする処理を行う収縮演算、収縮演算後に膨張演算を行うオープニング処理、膨張演算後に収縮演算を行うクロージング処理がある。本発明において、モルフォロジー演算後の加速度を用いて覚醒時間帯と睡眠時間帯を分類する場合、モルフォロジー演算が、所定の時間幅で行われるオープニング処理とクロージング処理の少なくともいずれか一方であることが好ましい。また、モルフォロジー演算として、オープニング処理およびクロージング処理の両方を行うことがより好ましい。このように膨張演算と収縮演算を組み合わせることによって、加速度−時間波形の全体の輪郭を抽出しやすくなるため、覚醒時間帯と睡眠時間帯をより一層分類しやすくなる。
【0050】
オープニング処理やクロージング処理を行う回数は特に限定されないが、オープニング処理、クロージング処理をそれぞれ1回以上実施することが好ましく、オープニング処理、クロージング処理をそれぞれ2回以上実施することがより好ましい。
【0051】
膨張演算や収縮演算を行う際の時間幅についても適宜設定すればよいが、例えば、1回目のオープニング処理及びクロージング処理の時間幅を2分とし、2回目のオープニング処理およびクロージング処理の時間幅を5分とすることができる。このように処理回数を重ねる毎に、処理時の時間幅を大きくすることが好ましい。このように、オープニング処理およびクロージング処理の時間幅を段階的に大きくすることで、所定計測時間と比較して短時間に変化した加速度のデータが除去されるのを抑止する。
【0052】
LFは、時間信号fである拍動間隔を周波数スペクトル変換するステップを含んで得たパワースペクトルを周波数Lf1からLf2まで定積分した値であり、HFは、前記パワースペクトルを周波数Hf1からHf2まで定積分した値であり、Hf1>Lf1、Hf2>Lf2である。例えば、LFは、時間信号fである拍動間隔を周波数スペクトル変換したもの(周波数スペクトルF)を二乗することにより得られるパワースペクトルF
2(第1のパワースペクトル)を周波数Lf1からLf2まで定積分した値であり、HFは、前記パワースペクトルF
2(第1のパワースペクトル)を周波数Hf1(>Lf1)からHf2(>Lf2)まで定積分した値とすることができる。第1のパワースペクトルF
2を用いて計算されるLF、HFの単位はms
2である。周波数スペクトル変換の方法としては、例えば高速フーリエ変換(FFT)、ウェーブレット解析、最大エントロピー法などを用いることができる。なお、本明細書においては、FFTを用いた場合を例として説明するが、もちろん他の方法を用いることも可能である。
【0053】
本明細書においては、拍動間隔をスプライン補間しサンプリング間隔Δtで再サンプリングした拍動間隔RRI
kの離散フーリエ変換Gは、以下の(I)式で表され、パワースペクトルF
2(第1のパワースペクトル)(単位:ms
2/Hz)は、以下の(II)式で表される。ここで、kは時系列、Nはデータ数を表し、Sは任意のスケールであり、一般にパワースペクトルではS=1である。
【0056】
他方、LFおよびHFの値として、拍動間隔を周波数スペクトル変換した値から得たパワースペクトルF(第2のパワースペクトル)(単位:ms)を所定の区間で定積分したものも本発明のうつ状態判定方法に含まれる。このように、パワースペクトルとして拍動間隔を周波数スペクトル変換した値を用いれば、より簡便にLFおよびHFの値を算出することができる。第2のパワースペクトルFを用いて計算されるLF、HFは無次元量である。パワースペクトルF(第2のパワースペクトル)は、以下の(III)式で表される。
【0058】
次に、LF、HFの詳細な算出方法について、
図1を用いて説明する。
図1は、本発明に係るパワースペクトル積分の説明図である。
図1の縦軸はパワースペクトル密度(単位:ms
2/Hz)であり、横軸は周波数(単位:Hz)である。LFは、パワースペクトルF
2を例えば0.04Hz(Lf1)から0.15Hz(Lf2)まで定積分した値であり、
図1において斜線によりハッチングがされている部分の面積である。一方、HFは、パワースペクトルF
2を例えば0.15Hz(Hf1)から0.4Hz(Hf2)まで定積分した値であり、
図1において縦線によりハッチングがされている部分の面積である。
図1では、Lf2とHf1がいずれも0.15Hzと等しくなるように積分範囲を設定したが、Lf1<Hf1及びLf2<Hf2の関係を満たしていれば、Lf2とHf1は同一の値であっても異なる値でもよい。ここでは、パワースペクトル積分の方法を、第1のパワースペクトルF
2を用いて説明したが、第2のパワースペクトルFによる定積分も同様に行うことができる。なお、条件式(1)式〜(9)式の判定を行う前に、算出されたLF、HFに異常値とみなすべきものが含まれていないかを判断し、異常値と判断された値を判定の対象から除外することが好ましい。これにより、異常値が活動リズムの判定結果に影響を及ぼすことを防止できる。
【0059】
周波数スペクトル変換により得られるパワースペクトルは、血圧の変動に由来する成分でMayer−Wave関連成分ともいわれるLFと、呼吸に由来する成分HFとに分けられる。血圧変動成分LFは0.1Hz周辺のパワースペクトルであり、交感神経活動と副交感神経活動の双方に関連している。一方、呼吸由来の成分HFは0.3Hz周辺のパワースペクトルで、副交感神経活動に関連していると考えられている。
以上のことから、交感神経活動及び副交感神経活動を示すLFの積分範囲は、少なくとも0.1Hzを含み、Lf1<0.1<Lf2であることが好ましい。また、Lf1は0.03Hzであることがより好ましく、0.04Hzであることがさらに好ましい。Lf2は0.16Hzであることがより好ましく、0.15Hzであることがさらに好ましい。
また、副交感神経活動を示すHFの積分範囲は、少なくとも0.3Hzを含み、Hf1<0.3<Hf2であることが好ましい。Hf1は0.14Hzであることがより好ましく、0.15Hzであることがさらに好ましい。Hf2は0.41Hzであることがより好ましく、0.4Hzであることがさらに好ましい。
【0060】
(1)式〜(3)式、(7)式〜(9)式を用いたうつ状態の判定において、所定計測時間中の覚醒時間帯の全ての時間帯で当該式を満足するときに、うつ状態であると判定してもよい。これにより、判定条件が厳しく設定されるため、うつ状態の判定精度を高めることができる。なお、所定計測時間中に覚醒時間帯が複数存在している場合には、複数の覚醒時間帯の全ての時間帯で(1)式〜(3)式、(7)式、(8)式または(9)式を満足するときにうつ状態と判定してもよい。
【0061】
同様に、(4)式〜(6)式を用いたうつ状態の判定において、所定計測時間中の睡眠時間帯の全ての時間帯で当該式を満足するときに、うつ状態であると判定してもよい。また、所定計測時間中に睡眠時間帯が複数存在している場合には、複数の睡眠時間帯の全ての時間帯で(4)式〜(6)式を満足するときにうつ状態と判定してもよい。
【0062】
式中に含まれるC1〜C9は定数である。具体的なC1〜C9の値は特に制限されるものではなく、パワースペクトル積分の積分範囲、活動量の種類(加速度または角速度)、被検者の年齢、性別等の条件に応じて適宜設定することができる。
【0063】
(1)式は、被検者の覚醒時間帯において、拍動間隔/活動量<C1を満足する場合にうつ状態であると判定するものである。拍動間隔は副交感神経活動を示しており、活動量は被検者の動きを示している。例えば活動量が加速度の場合には、C1は4000msであることが好ましく、5000msであることがより好ましく、6000msであることがさらに好ましい。拍動間隔/活動量は、C1が4000ms以上の場合に健常者とうつ状態患者との差が最も大きくなるため、うつ状態を判定するための良い指標となる。なお、うつ状態の判定をしやすくするために、(1)式は(拍動間隔/活動量)/100<C11としてもよい(C11は定数)。このときC11は、C1を100で除した値、つまりC11=C1/100で表される。
なお、(1)式の左辺は覚醒時間帯における(拍動間隔/活動量)の平均値であることが好ましい。所定計測時間中に覚醒時間帯が複数存在する場合には、(1)式の左辺はそれら全ての覚醒時間帯における(拍動間隔/活動量)の平均値であってもよい。これにより、条件式を満足するか否かの判定回数を減らすことができる。
【0064】
(2)式は、被検者の覚醒時間帯において、HF/活動量<C2を満足する場合にうつ状態であると判定するものである。HFは拍動間隔と同様に副交感神経活動を示している。従って、(2)式は(1)式と同じく副交感神経活動と、活動量からうつ状態を判定するための良い指標となる。例えば活動量として加速度を用いて、第1のパワースペクトルF
2から得られるHFの積分範囲を0.15Hz〜0.4Hzにした場合、C2は2000ms
2であることが好ましく、3000ms
2であることがより好ましく、4000ms
2であることがより好ましい。うつ状態の判定をしやすくするために、(2)式は(HF/活動量)/100<C21としてもよい(C21は定数)。このときC21は、C2を100で除した値、つまりC21=C2/100で表される。
【0065】
(3)式は、被検者の覚醒時間帯において、(LF/HF)/活動量<C3を満足する場合にうつ状態であると判定するものである。LFは交感神経活動と副交感神経活動の両方を示しているため、LF/HFは副交感神経活動に対する交感神経活動の優位性を表している。従って、本発明においてLF/HFは、交感神経活動を示す指標として用いられていることから、(3)式は交感神経活動と活動量からうつ状態を判定する方法である。例えば活動量として加速度を用いて、第1のパワースペクトルF
2から得られるLFの積分範囲を0.04Hz〜0.15Hz、HFの積分範囲を0.15Hz〜0.4Hzにした場合、C3は20であることが好ましく、30であることがより好ましく、40であることがさらに好ましい。ここでC3は無次元量である。
【0066】
(4)式は、被検者の睡眠時間帯において、拍動間隔×活動量<C4を満足する場合にうつ状態であると判定するものである。(1)式と同様に、(4)式では副交感神経活動と活動量からうつ状態を判定する。例えば活動量が加速度の場合には、C4は35msであることが好ましく、40msであることがより好ましく、45msであることがさらに好ましい。
なお、(4)式の左辺は睡眠時間帯における(拍動間隔×活動量)の平均値であることが好ましい。所定計測時間中に睡眠時間帯が複数存在する場合には、(4)式の左辺はそれら全ての睡眠時間帯における(拍動間隔×活動量)の平均値であってもよい。
【0067】
(5)式は、被検者の睡眠時間帯において、HF×活動量<C5を満足する場合にうつ状態であると判定するものである。(2)式と同様に、(5)式では副交感神経活動と活動量からうつ状態を判定する。例えば活動量として加速度を用いて、第1のパワースペクトルF
2から得られるHFの積分範囲を0.15Hz〜0.4Hzにした場合、C5は20ms
2であることが好ましく、40ms
2であることがより好ましく、60ms
2であることがさらに好ましい。
【0068】
(6)式は、被検者の睡眠時間帯において、(LF/HF)×活動量<C6を満足する場合にうつ状態であると判定する。(6)式は交感神経活動と活動量からうつ状態を判定する方法である。例えば活動量として加速度を用いて、第1のパワースペクトルF
2から得られるLFの積分範囲を0.04Hz〜0.15Hz、HFの積分範囲を0.15Hz〜0.4Hzにした場合、C6は0.045であることが好ましく、0.100であることがより好ましく、0.300であることがさらに好ましい。ここでC6は無次元量である。うつ状態の判定をしやすくするために、(6)式は(LF/HF)×活動量×100<C61としてもよい(C61は定数)。このときC61は、C6に100を乗じた値、つまりC61=C6×100で表される。
【0069】
後述する検証結果によれば、双極性障害の患者は(1)式〜(6)式の条件を満たす傾向にあることから、(1)式〜(6)式の条件はうつ状態の中でも特に双極性障害を判定するのに適している。したがって、本発明の第1のうつ状態の判定方法では、上記(1)式〜(6)式のうち、少なくとも一つの式が計算され、かつその計算された式が満足される場合に被検者が双極性障害であると判定する。
【0070】
第1のうつ状態判定方法において、[A]の条件、つまり(1)式〜(3)式の条件のうち、少なくとも一つが満足され、[B]の条件、つまり(4)式〜(6)式の条件のうち少なくとも一つが満足される場合に被検者がうつ状態であると判定することが好ましい。覚醒時間帯と睡眠時間帯の両方の時間帯での測定データを用いることにより、うつ状態の判定精度を向上させることができる。
【0071】
第1のうつ状態判定方法において、(1)式〜(6)式の全ての式が計算され、計算された全ての式が満足される場合に被検者がうつ状態であると判定してもよい。これにより、うつ状態の判定精度を向上させることができる。
【0072】
(7)式は、覚醒時間帯において、拍動間隔×活動量<C7を満足する場合にうつ状態であると判定する。(1)式と同様に、(7)式では副交感神経活動と活動量からうつ状態を判定する。例えば活動量が加速度の場合には、C7は130msであることが好ましく、140msであることがより好ましく、150msであることがさらに好ましい。
なお、(1)式と同様に、(7)式の左辺は覚醒時間帯における(拍動間隔×活動量)の平均値であることが好ましい。所定計測時間中に覚醒時間帯が複数存在する場合には、(7)式の左辺はそれら全ての覚醒時間帯における(HF/活動量)の平均値であってもよい。
【0073】
(8)式は、覚醒時間帯において、HF/活動量>C8を満足する場合にうつ状態であると判定する。(2)式と同様に、(8)式では副交感神経活動と、活動量からうつ状態を判定する。例えば活動量が加速度の場合には、C8は1600ms
2であることが好ましく、1550ms
2であることがより好ましく、1500ms
2であることがさらに好ましい。なお、うつ状態の判定をしやすくするために、(8)式は(HF/活動量)/100<C81としてもよい(C81は定数)。このときC81は、C8を100で除した値、つまりC81=C8/100で表される。
【0074】
(9)式は、覚醒時間帯において、(LF/HF)×活動量<C9を満足する場合にうつ状態であると判定する。(6)式と同様に、(9)式は交感神経活動と活動量からうつ状態を判定する。例えば活動量として加速度を用いて、第1のパワースペクトルF
2から得られるLFの積分範囲を0.04Hz〜0.15Hz、HFの積分範囲を0.15Hz〜0.4Hzにした場合、C9は0.5であることが好ましく、0.55であることがより好ましく、0.6であることがさらに好ましい。ここでC9は無次元量である。うつ状態の判定をしやすくするために、(9)式は(LF/HF)×活動量×100<C91としてもよい(C91は定数)。このときC91は、C9に100を乗じた値、つまりC91=C9×100で表される。
【0075】
後述する検証結果によれば、大うつ病性障害の患者は(7)式〜(9)式の条件を満たす傾向にあることから、(7)式〜(9)式の条件はうつ状態の中でも特に大うつ病性障害を判定するのに適している。したがって、第2のうつ状態判定方法では、上記(7)式〜(9)式の全ての式を計算し、そのうち少なくとも一つの式が満足される場合に被検者が大うつ病性障害であると判定する。
【0076】
また、上記(7)式〜(9)式の全ての式を計算し、計算された全ての式が満足される場合に被検者が大うつ病性障害であると判定してもよい。これにより、うつ状態の判定精度を向上させることができる。
【0077】
第3のうつ状態判定方法は、上記(1)式〜(9)式の全ての式が計算され、かつ(1)式〜(9)式のうち少なくとも一つの式が満足される場合に被検者がうつ状態であると判定するものである。第3のうつ状態判定方法は、双極性障害や大うつ病性障害のいずれかのうつ状態の疑いがある患者を検出するのに適している。
【0078】
第1〜3のうつ状態判定方法において、判定に用いる式の数は特に限定されない。少なくとも1式を満足すればうつ状態であると判定することも可能であり、全ての式を満足した場合にうつ状態であると判定することも可能である。少なくとも1式を満足すればうつ状態と判定する方法であれば、より広い範囲でうつ状態の疑いのある患者をスクリーニングすることが可能である。また、全ての式を満足する場合にうつ状態であると判定する方法であれば、高い精度でうつ状態の判定を行うことができる。
【0079】
2.うつ状態判定装置
本発明のうつ状態判定装置は、計測部と、処理部と、判定部とを備える。計測部は、被検者の心拍を計測する心電計や心拍センサ、または被検者の脈波を計測して脈拍を求める脈波センサと、被検者の活動量を計測する加速度センサまたは角速度センサ等である。処理部は、計測部により計測された拍動間隔に基づき、周波数スペクトル変換を行い、パワースペクトル積分値を算出し、うつ状態の判定に用いるLF及びHFを算出する。判定部は、計測部で計測された拍動間隔と活動量、及び処理部で得られたLF及びHFを用いて判定データを作成して、所定値C1〜C9と判定データを比較することによりうつ状態の判定を行う。処理部及び判定部は、うつ状態の判定に用いる判定データの作成や、所定値と判定用データの比較等を行うソフトウェアを搭載するコンピュータや計測機器等である。
【0080】
本発明の第1のうつ状態判定装置の判定部では、下記(1)式〜(6)式のうち少なくとも一つの式が計算され、かつその計算された式が満足される場合に被検者が双極性障害であると判定する。
[A]被検者の覚醒時間帯における、
拍動間隔/活動量<C1 ・・・(1)
HF/活動量<C2 ・・・(2)
(LF/HF)/活動量<C3 ・・・(3)
[B]被検者の睡眠時間帯における、
拍動間隔×活動量<C4 ・・・(4)
HF×活動量<C5 ・・・(5)
(LF/HF)×活動量<C6 ・・・(6)
被検者の拍動間隔と活動量を計測して、(1)式〜(6)式の条件を用いることにより、容易にかつ高い精度でうつ病の一種である双極性障害であるかを容易に判定することができ、早期発見および早期治療を行うことができる。
【0081】
本発明の第2のうつ状態判定装置の判定部では、下記(7)式〜(9)式の全ての式を計算し、下記(7)式〜(9)式のうち少なくとも一つの式が満足される場合に被検者が大うつ病性障害であると判定する。
[C]被検者の覚醒時間帯における、
拍動間隔×活動量<C7 ・・・(7)
HF/活動量>C8 ・・・(8)
(LF/HF)×活動量<C9 ・・・(9)
被検者の拍動間隔と活動量を計測して、(7)式〜(9)式の条件を用いることにより、容易にかつ高い精度でうつ病の一種である大うつ病性障害であるかを容易に判定することができ、早期発見および早期治療を行うことができる。
【0082】
本発明の第3のうつ状態判定装置の判定部では、下記(1)式〜(9)式の全ての式を計算し、下記(1)式〜(9)式のうち少なくとも一つの式が満足される場合に被検者がうつ状態であると判定する。
[A]被検者の覚醒時間帯における、
拍動間隔/活動量<C1 ・・・(1)
HF/活動量<C2 ・・・(2)
(LF/HF)/活動量<C3 ・・・(3)
[B]被検者の睡眠時間帯における、
拍動間隔×活動量<C4 ・・・(4)
HF×活動量<C5 ・・・(5)
(LF/HF)×活動量<C6 ・・・(6)
[C]被検者の覚醒時間帯における、
拍動間隔×活動量<C7 ・・・(7)
HF/活動量>C8 ・・・(8)
(LF/HF)×活動量<C9 ・・・(9)
被検者の拍動間隔と活動量を計測して、(1)式〜(9)式の条件を用いることにより、容易にかつ高い精度でうつ状態であるかを容易に判定することができ、うつ状態の早期発見および早期治療を行うことができる。
【0083】
但し、LFは、拍動間隔を周波数スペクトル変換するステップを含んで得たパワースペクトルを周波数Lf1からLf2まで定積分した値であり、HFは、前記パワースペクトルを周波数Hf1からHf2まで定積分した値であり、Hf1>Lf1、Hf2>Lf2であり、C1〜C9は定数である。
【0084】
以上のとおり、本発明の第1〜第3のうつ状態判定装置は、判定部で用いられる条件式が異なる以外は構成が共通しているため、以下の実施の形態1〜6では「うつ状態判定装置」としてまとめて説明する。
【0085】
(実施の形態1)
図2は、本発明の実施の形態1に係るうつ状態判定装置1の構成を示すブロック図である。
図2に示すうつ状態判定装置1は、計測部であるセンサ10と、解析機50とを備える。
【0086】
(1)計測部
センサ10は、拍動間隔を検出する拍動計測部12と、活動量を検出する活動量計測部13とから構成される計測部11を備える。センサ10は、小型軽量であり、本体裏面の電極(図示せず)を被検者の胸部に密着させた状態で、被検者の肌に本体ごと取りつけることができるので、服の下に隠れ目立たない。
本発明のうつ状態判定装置は、拍動間隔として、心電信号におけるR波とR波との間隔であるRR間隔(RRI)を用いることが好ましい。RRIは信号のピークがはっきり出ることにより拍動間隔の精度が高くなるため、ピーク位置の誤認識が起こりにくい。
なお、本実施の形態においては、拍動間隔としてRRIを、活動量として加速度を計測した。
【0087】
拍動計測部12は、電極を被検者の胸部に密着させた状態で心電信号を計測し、この心電信号に基づきRRIを算出して解析機50へ送信する。なお、センサ10の拍動計測部12が心電信号に基づきRRIを算出したが、RRIの算出は後述する処理部51で行われてもよい。
【0088】
拍動計測部12では、心拍を測定する代わりに脈波を測定してもよい。脈波は、人の指先や耳たぶ等に波長が700nm〜1200nmの近赤外線を照射し、近赤外線の反射量を接触あるいは非接触で測定することができる。脈波を測定する場合は、比較的測定器を体に取り付け易いという利点があり、特に非接触で測定するタイプを使用した場合には、測定器を体に取り付ける煩わしさがなくなるので、広く普及する可能性がある。このように測定した脈波の隣り合うピーク同士の間隔から脈拍間隔を求めることができる。
【0089】
計測部11の活動量計測部13では、被検者のX軸、Y軸、Z軸方向における加速度を計測して解析機50へ送信する。加速度を計測するセンサの種類は特に限定されず、例えば、ピエゾ抵抗体型加速度センサ、圧電型加速度センサ、静電容量型加速度センサなどを用いることができる。ピエゾ抵抗体型加速度センサは、半導体を用いているため小型で量産化がしやすい。圧電型加速度センサは、比較的高い加速度の検出がしやすい。静電容量型加速度センサはピエゾ抵抗体型加速度センサに比べて高感度で、検出可能な加速度の範囲が広く、温度依存性も小さい。
【0090】
活動量として、加速度の代わりに角速度を検出してもよい。角速度を計測するセンサの種類は特に限定されず、例えば、回転型、振動型、ガス型、光ファイバー型、リングレーザー型の角速度センサを用いることができる。
【0091】
計測部11で計測された拍動間隔及び活動量のデータを解析機50の受信部52に送信する方法として、無線通信を用いてもよいし、有線通信を用いてもよい。特に無線通信でデータを送受する場合は、内蔵するバッテリーの持ちを向上させるために、例えば3個分のRRIをまとめて送信する等により送受信の頻度を下げることが好ましい。また、このとき活動量である加速度はRRIと同じタイミングで送受することが好ましい。
【0092】
消費電力を抑制する観点から、本発明に係るセンサは電源をON状態にしてから所定時間経過した後、自動的に電源がOFF状態になることも好ましい。所定時間はうつ状態の判定に必要なデータ数を考慮して設定すればよく、例えば24時間や48時間などに設定することができる。
【0093】
(2)処理部
解析機50は、処理部51と判定部81を備え、処理部51は受信部52、周波数スペクトル変換部55、パワースペクトル積分算出部56を備える。受信部52では、センサ10から送信されるRRIと活動量を受信する。
【0094】
周波数スペクトル変換部55では、FFT等の周波数スペクトル変換方法を用いて、受信部52から送信された時間信号であるRRIを周波数スペクトルに変換する。次に、パワースペクトル積分算出部56では、周波数スペクトル変換部55で得られたスペクトルからパワースペクトルを算出して、所定の周波数範囲で積分を行うことにより、LF及びHFを求める。具体的には、以下のような処理が行われる。まず、周波数スペクトル変換部55で得られた周波数スペクトルからパワースペクトルを算出すると、縦軸がパワースペクトル密度、横軸が周波数の分布図が得られる。次に、Lf1〜Lf2の範囲、及びHf1〜Hf2の範囲でパワースペクトルを積分することにより、LFとHFをそれぞれ求める。なお、Lf1<Hf1、Lf2<Hf2である。なお、パワースペクトルの具体的な算出方法は、「1.うつ状態判定方法」で述べたとおりであり、パワースペクトルとして、例えば第1のパワースペクトルF
2を用いてもよく、第2のパワースペクトルFを用いてもよい。
【0095】
(3)判定部
本発明のうつ状態判定装置の判定部81は、判定データ作成部82と、所定値格納部83と、比較部84を備える。まず、判定データ作成部82では、うつ状態の判定に用いる条件式(1)式〜(9)式に必要な判定データを作成する。RRI及び活動量は、処理部51の受信部52から送信されて、HF及びLFは処理部51のパワースペクトル積分算出部56から判定部81の判定データ作成部82に送信される。これらのデータを乗除することにより条件式の左辺に記載される判定データを作成する。第1のうつ状態判定装置では、判定部81の判定データ作成部82において、(1)式〜(6)式のうち少なくとも1つの式の左辺を計算する。第2のうつ状態判定装置では(7)式〜(9)式の全ての式の左辺を計算する。同様に、第3のうつ状態判定装置では(1)式〜(9)式の全ての式の左辺を計算する。
【0096】
所定値格納部83にはうつ状態の判定に用いる(1)式〜(9)式の右辺に記載される所定値C1〜C9のうち必要なデータが格納されている。所定値C1〜C9を適宜変更することができるように、所定値格納部83には入力手段が設けられることが好ましい。
【0097】
比較部84では、判定データ作成部82で作成された判定用データを条件式の左辺に代入し、所定値格納部83に格納されている所定値を条件式の右辺に代入することにより、条件式の計算を行う。そして、左辺と右辺の大小を比較して、各条件式を満足するか判定する。第1のうつ状態判定装置の比較部では、(1)式〜(6)式のうち少なくとも一つの式が計算され、かつその計算された式が満足される場合に被検者が双極性障害であると判定する。第2のうつ状態判定装置の比較部では、(7)式〜(9)式の全ての式を計算し、(7)式〜(9)式のうち少なくとも一つの式が満足される場合に被検者が大うつ病性障害であると判定する。第3のうつ状態判定装置の比較部では、(1)式〜(9)式の全ての式を計算し、(1)式〜(9)式のうち少なくとも一つの式が満足される場合に被検者がうつ状態であると判定する。
【0098】
解析機50には、判定部81からうつ状態の判定結果を被検者等に通知する通知部91が設けられることが好ましい。通知方法は、音声、静止画、動画など特に限定されない。医師やカウンセラーなどの専門家、被検者やその家族等、通知対象者の専門知識レベルに応じて通知内容を変えることも可能である。ここではうつ状態判定装置1に通知部91が設けられる例を示したが、うつ状態判定装置1とは別の通知用機器に判定結果を送信し、被検者等へ結果を通知してもよい。通知用機器としては、例えば外付けモニタ、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、スピーカー、イヤホンなどが挙げられる。
【0099】
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2に係るうつ状態判定装置2の構成を示すブロック図である。
図3に示すうつ状態判定装置2は、センサ10と、解析機60とを備える。なお、実施の形態1のうつ状態判定装置1と同様の構成要素についてはその説明を省略する。
【0100】
解析機60は、処理部61と、判定部81を備え、処理部61は、受信部62、異常値検出部63、異常値除去部64、周波数スペクトル変換部65、パワースペクトル積分算出部66を含む。
異常値検出部63は、受信部62から出力されたRRI及び活動量が、異常値とみなすべきものであるか否かを判断する。RRIが異常値とみなすべきものであるか否かは次のように判断する。実施の形態2では、RRI(秒単位)の逆数を60倍して瞬時心拍数を算出し、1拍分前の瞬時心拍数との差の絶対値が第1の所定数(本実施の形態では、「18」とする)以下である直近の複数点(本実施の形態では、「8点」とする)における平均を算出する。次に当該平均と評価対象のRRIに対応する瞬時心拍数との差の絶対値が第2の所定数(本実施の形態では「35」とする)以上である場合に、評価対象のRRIを異常値とみなす。ここで、第1の所定数は30が好ましく、より好ましくは20、さらに好ましくは15である。また、第2の所定数は50が好ましく、より好ましくは40、さらに好ましくは30である。
【0101】
なお、第1の所定数、第2の所定数、直近の複数点の数を、個人差等に応じて適宜変更してもよい。例えば、第1の所定数を30以下、第2の所定数を30以上、直近の複数点の数を4〜20の範囲内で適宜変更してもよい。
【0102】
活動量は、体動がない場合はゼロであるため、マイナスの値になることはない。従って、活動量がマイナスの値になっているときには異常値とみなすことが好ましい。
【0103】
異常値除去部64は、異常値検出部63により異常値とみなされたRRIを周波数スペクトル変換部65におけるデータ処理の対象から除外する。また、異常値除去部64は、異常値検出部63により異常値とみなされたRRI及び活動量を判定データ作成部82におけるデータ処理の対象から除外する。
【0104】
(実施の形態3)
図4は、本発明の実施の形態3に係るうつ状態判定装置3の構成を示すブロック図である。
図4に示すうつ状態判定装置3は、センサ20と、解析機50とを備える。なお、実施の形態1のうつ状態判定装置1と同様の構成要素についてはその説明を省略する。
【0105】
センサ20の計測部21には、拍動計測部22と、活動量計測部23に加えて、覚醒状態または睡眠状態を入力する入力手段24が設けられることが好ましい。これにより、覚醒時間帯の開始時と睡眠時間帯の開始時に被検者が自ら入力手段24を操作することにより、覚醒情報及び睡眠情報を得ることができる。入力手段24とは、例えば、センサの表面に設けられたスイッチであり、このスイッチはボタン型でもよく、レバー型でもよく、その方式は特に限定されない。
【0106】
入力手段24はうつ状態判定装置3のセンサ20ではなく、解析機50に設けられることも好ましい。これにより、センサ20に入力手段24が設けられる場合に比べて、睡眠時の寝返りなどに伴って被検者が無意識のうちに入力手段24を操作することを防止することができる。
【0107】
(実施の形態4)
図5は、本発明の実施の形態4に係るうつ状態判定装置4の構成を示すブロック図である。
図5に示すうつ状態判定装置4は、センサ30と、解析機50とを備える。なお、実施の形態1のうつ状態判定装置1と同様の構成要素についてはその説明を省略する。
【0108】
センサ30の計測部31には、拍動計測部32と、活動量計測部33に加えて、体温計測部34となる体温計測手段が設けられることが好ましい。うつ状態の場合は低体温になりやすいことが知られている。うつ状態では夜型の生活になりやすくなり、日の光を浴びる機会が減少するため、体内時計を正常に合わせることが困難になるためである。さらに、うつ状態の患者は夜間であっても体温が高いため、身体が休まらない状態になる(非特許文献3)。このため、体温計測手段(体温計測部34)により体温データを取得して、上記の(1)式〜(9)式によるうつ状態の判定と組み合わせることにより、うつ状態の判定精度をさらに向上させることができる。
【0109】
一般に体温は口腔、腋下、鼓膜など環境温度による影響が小さい身体の深部で測定されるが、本発明のうつ状態判定装置の計測部は、心拍や脈波を測定するために被検者の肌に取りつけられるものであるため、深部体温を直接計測することは困難である。したがって、ここでの体温とは深部体温だけではなく、体表面温も含むものとする。また、体温を直接測定せずに計測部を構成する部材、例えばセンサの基板の温度を測定することも可能である。被検者の体温が上昇すればセンサの基板温度も上昇するため、センサの基板温度を測定すれば相対的に体温の変化を計測することができる。体温計測手段は温度センサであればその種類は特に限定されず、例えば白金、ニッケル、銅などの金属測温抵抗体、熱電対、サーミスタ、IC化温度センサ、水晶温度計などを用いることができる。
【0110】
(実施の形態5)
図6は、本発明の実施の形態5に係るうつ状態判定装置5の構成を示すブロック図である。
図6に示すうつ状態判定装置5は、センサ40と、解析機70とを備える。なお、実施の形態1のうつ状態判定装置1と同様の構成要素についてはその説明を省略する。
【0111】
センサ40には、拍動計測部42と活動量計測部43から構成される計測部41で取得した生体情報を一時的に保存するデータ保存部44が設けられることが好ましい。センサ40で取得したデータを逐次的に解析機70に送信してデータを処理する必要がないため、データ通信によって消費する電力量を抑制することができる。例えば、被検者が自宅でセンサを用いて計測を行い、後日、医療機関にある解析機を用いて医師がうつ状態であるか否かを判定する場合などに適している。
【0112】
解析機70の処理部71は、周波数スペクトル変換及びパワースペクトル積分を行うためにデータ保存部44に保存されたRRIのデータを読み出す。判定部81では、データ保存部44から読み出したRRI及び活動量のデータと、周波数スペクトル変換部75及びパワースペクトル積分算出部76で算出されたLF及びHFを用いてうつ状態の判定を行う。なお、小型軽量なセンサを得るために、データ保存部44には公知の半導体メモリを用いることが好ましい。
【0113】
(実施の形態6)
図7は、本発明の実施の形態6に係るうつ状態判定装置6の構成を示すブロック図である。
図7に示すうつ状態判定装置6は、センサ10と、解析機100とを備える。なお、実施の形態1のうつ状態判定装置1と同様の構成要素についてはその説明を省略する。
【0114】
センサ10の計測部11の活動量計測部13ではX、Y、Z軸のうちいずれか1軸が身長方向の加速度と一致している。これは、身長方向の加速度の値を用いて覚醒時間帯と睡眠時間帯の分類を行うためである。
【0115】
解析機100は、処理部101と、判定部81を備え、処理部101は、受信部102、周波数スペクトル変換部105、パワースペクトル積分算出部106、モルフォロジー演算部107を含む。
【0116】
モルフォロジー演算部107では、受信部102から出力された負加速度−時間波形のノイズを除去するために負加速度−時間波形に対してモルフォロジー演算を行う。ここでモルフォロジー演算としては上述したように、例えば、膨張演算、収縮演算、オープニング処理、クロージング処理、これらの組み合わせを適用することができる。なお、
図7には示していないが、処理部101には、モルフォロジー演算部107での処理前に、所定値C
Bをしきい値として負加速度の値の大きさを2値化する2値化処理部を設けることもできる。2値化処理部では、例えば、負加速度TがC
B以上であれば負加速度Tは0とみなされ、負加速度TがC
B未満であれば1とみなされる。このように、モルフォロジー演算に先立って、加速度に対して2値化処理を行うことにより、モルフォロジー演算に要する処理時間を短縮することができる。所定値C
Bの値は特に制限されないが、例えば−0.85gであることが好ましく、−0.8gであることがより好ましく、−0.75gであることがさらに好ましい(ここで単位gは重力加速度の大きさを表す)。
【0117】
判定部81では、処理部101のモルフォロジー演算部107で処理された負加速度の値から臥位時間帯を算出し、覚醒時間帯と睡眠時間帯を分類する。覚醒時間帯と睡眠時間帯の分類方法は、上述した第1〜第4の分類方法が好ましく用いられる。
【0118】
(検証)
実施の形態1のうつ状態判定装置1を用いて、本発明のうつ状態判定方法およびうつ状態判定装置の有用性についての検証を行った。うつ状態であると医師に診断されている12名(内訳:双極性障害患者が4名、大うつ病性障害患者が8名)と健常者10名の合計22名の女性の被検者に小型の心電計を4日間装着してもらい、RRI(単位:ms)と活動量(加速度)(単位:無次元量)を測定した。心電計で測定したRRIを周波数スペクトル変換して、得られた第1のパワースペクトルF
2(単位:ms
2/Hz)についてパワースペクトル積分を行うことによりLF及びHF(単位:ms
2)を算出した。そして得られたRRI、活動量、LF及びHF/LFの値を、本発明のうつ状態判定方法(1)式〜(9)式に適用し、各式を満足するか検証した。なお、本検証において(1)式〜(9)式の所定値はC1=4000ms、C2=2000ms
2、C3=20、C4=35ms、C5=20ms
2、C6=0.045、C7=150ms、C8=1500ms
2、C9=0.6であった。LF及びHFの積分範囲はLf1=0.04Hz、Lf2=0.15Hz、Hf1=0.15Hz、Hf2=0.4Hzとした。覚醒時間帯及び睡眠時間帯の分類には第1の分類方法を用いた。
【0119】
本発明の第1のうつ状態判定方法の(1)式〜(6)式をそれぞれ被検者に適用し、6式中4式以上を満足する場合に双極性障害と判定し、6式中3式以下を満足する場合に双極性障害ではないと判定する基準を採用した。その結果、医師から双極性障害と診断されている4名のうち3名を本発明のうつ状態判定方法において双極性障害と判定することができた(双極性障害の検出率:75%)。他方、双極性障害ではないと医師から診断されている18名のうち16名を双極性障害ではないと判定することができた(双極性障害ではないとの検出率:89%)。
【0120】
第2のうつ状態判定方法の(7)式〜(9)式をそれぞれ被検者に適用し、3式全てを満足する場合に大うつ病性障害と判定し、3式中2式以下を満足する場合に大うつ病性障害ではないと判定する基準を採用した。その結果、医師から大うつ病性障害と診断されている8名のうち6名を本発明のうつ状態判定方法において大うつ病性障害と判定することができた(大うつ病性障害の検出率:75%)。他方、大うつ病性障害ではないと医師から診断されている14名のうち11名を本発明のうつ状態判定方法において大うつ病性障害ではないと判定することができた(大うつ病性障害ではないとの検出率:79%)。
【0121】
以上のように、本発明に係るうつ状態判定装置を用いて、高い確率でうつ状態であることを判定できた。よって、本発明に係るうつ状態判定方法及びうつ状態判定装置は、容易にかつ高い精度でうつ状態の判定が可能である。