(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6784370
(24)【登録日】2020年10月27日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】草刈り作業機
(51)【国際特許分類】
A01D 34/43 20060101AFI20201102BHJP
A01D 57/00 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
A01D34/43
A01D57/00 J
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-229159(P2016-229159)
(22)【出願日】2016年11月25日
(65)【公開番号】特開2018-82672(P2018-82672A)
(43)【公開日】2018年5月31日
【審査請求日】2019年10月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000171746
【氏名又は名称】株式会社ササキコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】蒲田 義明
(72)【発明者】
【氏名】中村 太秋
【審査官】
竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−011796(JP,A)
【文献】
実公平04−042992(JP,Y2)
【文献】
実公平04−011460(JP,Y2)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0146924(US,A1)
【文献】
特開2002−027818(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0123760(US,A1)
【文献】
実開平07−039340(JP,U)
【文献】
実開昭63−045144(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/00 − 43/077
A01D 57/00 − 65/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタ後方に装着されて草刈作業を行なう草刈り作業機において、
草刈り作業部の前方且つトラクタの走行輪後方位置に草引起し手段が設けられていて、該草引起し手段は、回転板又は回転機枠外周に草引き起こしのための棒材で形成されたタインが放射状に複数取付けられ、前記回転板又は回転機枠の回転軸は、進行方向と交差する方向に設けられ、圃場面に接地させた前記タインの抵抗力により自転させ、自転するタインによって倒伏した草を引き起こし、後方に位置する前記草刈作業部で草を刈り取ることを特徴とした草刈作業機。
【請求項2】
前記回転板又は回転機枠の回転軸は、平面視進行方向と交差するとともに、水平面に対し傾斜して設けられていることを特徴とした請求項1記載の草刈作業機。
【請求項3】
前記回転板又は回転機枠は、圃場面に向け弾性部材で付勢され前記草刈作業部側に保持されていて、付勢力を調整可能に設けられていることを特徴とした請求項1又は請求項2のいずれかに記載の草刈作業機
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタに装着されトラクタの後方に草刈作業部を位置させ草刈作業を行なう草刈作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の草刈り作業機の構成として、例えば、同一出願人による実開昭60−133739号公報「農用トラクタに連結する草刈機」(特許文献1)、また、特開2009−273390号公報「草刈り作業機」(特許文献2)が開示されている。特許文献1による草刈機は、トラクタ後方に装着され、垂下する2個の刈取部材を設け、刈取刃が水平回転して草刈作業が行われるものである。
【0003】
また、特許文献2の草刈り作業機は、走行車であるトラクタの後部に連結され、トラクタの走行により圃場や牧場等で前方に移動しながら草刈作業をするフレールモアが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭60−133739号公報
【特許文献2】特開2009−273390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トラクタ等の走行機の後方に装着されて作業を行なう草刈り作業機の場合、前進することによって走行機の走行輪によって刈り取られるべき草が前方に押し倒されて、倒伏した状態となり、後方に位置する草刈作業部での刈取で刈残しが発生するという問題があった。
【0006】
このことから本発明の目的は、トラクタ等の走行機の後方に装着されて草刈作業を行なう草刈り作業機において、トラクタ走行輪の走行跡の刈残しを解消した草刈作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、トラクタ後方に装着されて草刈作業を行なう草刈り作業機において、
草刈り作業部の前方且つトラクタの走行輪後方位置に草引起し手段が設けられていて、該草引起し手段は、回転板又は回転機枠外周に草引き起こしのための棒材で形成されたタインが放射状に複数取付けられ、前記回転板又は回転機枠の回転軸は、進行方向と交差する方向に設けられ、圃場面に接地させた前記タインの抵抗力により自転させ、自転するタインによって倒伏した草を引き起こし、後方に位置する前記草刈作業部で草を刈り取ることを特徴とした草刈作業機を提案する。
【0008】
上記課題を解決するために、請求項2に記載の発明は、前記回転板又は回転機枠の回転軸は、平面視進行方向と交差するとともに、水平面に対し傾斜して設けられていることを特徴とした請求項1記載の草刈作業機を提案する。
【0009】
上記課題を解決するために、請求項3に記載の発明は、前記回転板又は回転機枠は、圃場面に向け弾性部材で付勢され前記草刈作業部側に保持されていて、付勢力を調整可能に設けられていることを特徴とした請求項1又は請求項2のいずれかに記載の草刈作業機を提案する。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、草刈作業部の前方且つトラクタの走行輪後方に位置させて設けた草引起し手段によって、トラクタ走行輪によって倒伏した草を引き起こすため、後方に位置する草刈作業部での刈残しが解消される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施例の草刈作業機の一部断面した側面図である。
【
図2】本発明の実施例の草刈作業機の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の一形態を、
図1及び
図2に基づいて説明する。
図1は本発明の実施例の草刈機の一部断面した側面図、
図2は同じく平面図を示したものである。本例の説明においては、
図1、
図2の左側を作業進行方向前方側として説明する。
【0013】
本例における草刈作業機の草刈作業部は、進行方向と直交する水平回転軸に多数の草刈用刈刃を放射状に設け草刈りを行うフレールモアの場合について説明を行う。本願発明は、水平回転する刈刃を有する草刈作業機についても適用できる。
【0014】
草刈作業部20の前方側には、走行機であるトラクタ1に装着するための装着部が設けられている。トラクタ1側には作業機装着用の3点リンク機構が後方に設けられていて、装着された作業機を昇降自在に連結することができる。3点リンク機構は、上方中央部にトップリンク12が上下回動自在に、下方には左右一対のロアリンク11が上下回動自在に設けられている。トップリンク12及びロアリンク11の後端部にそれぞれ連結される連結枠であるクイックヒッチ15を介して草刈作業機2は装着される。
【0015】
クイックヒッチ15は、中央上方部をトップリンク12とトップリンクピン14により連結し、下方の左右をロアリンクピン13によってロアリンク11に連結し3点リンク機構に取付けられる。クイックヒッチ15の上方中央部には、上方に開口したフック151が後方側に設けられ、フック151は草刈作業部2側の中央部上方位置に水平に設けられたトップピン16に係合される。また、下方側の左右部には草刈作業部2側に設けた水平方向のロワピン17、17に係合するための後方側に解放したU字状の溝部と、係合したロワピン17、17の抜けを阻止する回動フック150、150が設けられている。
【0016】
トラクタ1と草刈作業機2との連結は、トラクタ1側に取付けたクイックヒッチ15のフック151を草刈作業機2側のトップピン16に下方から掬い上げるように係合させると、下方側のロアピン17、17がクイックヒッチ15側に引き寄せられ、U字状の溝部に係合される。そして、回動フック150、150で抜け止めを行い連結が行われる。連結を解除するときは、逆の順序で、回動フック150、150を解除し、草刈作業機2を地上面に下すと、ロアピン17、17が後方に離れ、さらにトップピン16がフック151から離間して連結が解除される。
【0017】
草刈作業機2中央前方部には、入力ケース25が設けられ入力軸(図示せず)が前方側に突設されている。入力軸は、トラクタ1側のPTO軸とユニバーサルジョイント5によって連結され、トラクタ1側から動力が入力される。入力された動力は、入力ケース25内のベベルギヤによって方向が変換され、左右水平に設けたパイプフレーム26内に挿通された出力軸によって、本例における進行方向左側端に設けた伝動ケース27に伝達される。伝動ケース27内には出力軸とその下方の刈刃軸200の端部に設けたVプーリがそれぞれ固着されて設けられていて、Vプーリに架け渡されたVベルトによって動力が刈刃軸200に伝達され回転される。
【0018】
刈刃軸200は、進行方向と直交する水平軸で、放射状に軸方向に多数刈刃201が設けられている。本例における刈刃軸200は、進行方向に対し掬い上げるように回転して草刈作業が行われる。刈刃軸200は、伝動ケース27側と他方の側板28側を軸受によって保持されて回転自在であり、上方部は飛散防止用の刈刃軸カバー29で覆われている。
【0019】
草刈作業部20の後方には、草刈作業部20の地上面からの高さを調整して草刈高さを調整するゲージ輪21が左右一対設けられている。ゲージ輪21、21の高さ調整は、ゲージ輪21、21が保持されているゲージ輪フレーム23を上下回動自在に草刈作業部20側に連結して設け、同じく草刈作業部20側の上方部に前方側の一端を上下回動自在に設けた高さ調整ロッド24の後端部をゲージ輪フレーム23に上下回動自在に連結し、高さ調整ロッド24を伸縮して行う。高さ調整ロッド24は、雄雌のネジが螺合されて内挿されていて、前端部に設けたハンドル22を回転するとネジ部が進退して伸縮が行われる。ハンドル22を回転させ高さ調整ロッド24を伸ばすと、ゲージ輪21、21が取付けられたゲージ輪フレーム23が下方に回動して、草刈作業部20が地上面に対し上昇し刈高さが高くなる。逆に、高さ調整ロッド24を縮めると刈高さが低くなる。ゲージ輪21、21は、水平方向の回転軸に回転自在に設けられるとともに、回転軸より偏心した垂直方向の水平回転軸により保持され、キャスター輪状に設けられている。
【0020】
草刈作業部20の前方位置、且つ、トラクタ1の走行輪10後方部には、トラクタ走行輪10によって倒伏した草の引起しを行うための草引起し手段3が左右一対設けられている。左右の草引起し手段3、3は、左右対称となっているので一方の草引起し手段について説明する。草引起し手段3、3は、パイプフレーム26の前方に平行に設けた角パイプで構成される連結フレーム36にスライドブラケット39によって取付けられ保持されている。スライドブラケット39は連結フレーム36を挟み込むように締結して設けられる。連結フレーム36は、伝動ケース27側と他方の側板28側とに架け渡されて設けられている。スライドブラケット39の締結を緩めて連結フレーム36への取付け位置を変更することで左右の位置調整が可能となっていて、装着されるトラクタ1の走行輪10の位置に合わせて調整が可能である。
【0021】
草引起し手段3は、進行方向に対し交差する方向に回転軸32を有し、回転軸32には平板状の回転板30が回転自在に設けられ、回転板30の外周には、放射状に草掻き揚げ用のタイン31が取付けられていて、回転軸32は第1サポートアーム34と第2サポートアーム35によって草刈作業部20側に保持されて構成されている。
【0022】
回転板30の外周に取付けられたタイン31は、ピアノ線等の線材で構成され回転軸32に対し放射状に取付けられていて、先端部が地上面に接地してトラクタ1の走行による接地抵抗により回転板30が自転する。進行方向に対し交差する方向に回転軸32を有する回転板30が自転して、外周のタイン31によって先端部が走行輪10によって倒伏した草を掻き上げて立たせる。本例においては、タイン31の先端部を回転方向側に曲げて設けたものと、直線状のものとを交互に設けている。タイン31の形状は回転板30の傾斜条件等を加味して任意の形状に設定してもよい。
【0023】
回転軸32は、下端部に回転板30を回転自在に保持して、上端部を回転軸32と略直交する方向に延設した第1サポートアーム34に軸方向摺動自在に保持されている。回転板30と第1サポートアーム34との間には、スプリング33が挿入され、回転板30は軸方向下方に付勢されている。第1サポートアーム34は草刈作業部20側に延設され、端部を前記スライドブラケット39に上下回動自在に保持されている。
【0024】
また、第1サポートアーム34の中間部とスライドブラケット39側に連結した第2サポートアーム35が設けられ、丸棒材で構成されて第1サポートアーム34側が上下回動自在に、スライドブラケット39側が軸方向摺動自在に連結され、間にスプリング36が挿入されている。スプリング36の付勢力を調整することによって、第1サポートアーム34部を上方に付勢して、回転板30部の下方への付勢力を調整する。
【0025】
本例における回転軸32は、前方且つ内側に向け傾斜して進行方向と交差する方向に設けられている。本例においては側面視前方に15度角、平面視内側前方に20度角傾斜させている。傾斜角度は、草の倒伏状況や走行速度等の条件によって最も草の掻き揚げ効率が良い角度に任意に設定すると良い。回転軸32の進行方向と交差させる角度は、直行する場合は進行速度と同一に回転するため、直行位置より平面視前後に傾斜させ、また、左右方向にも傾斜させることによりタイン31の自転方向と走行方向又は速度の差異によりタイン31が草を掻き上げる。
【0026】
回転板30は、丸パイプや丸棒等で構成した機枠で構成して回転機枠としてもよく、タイン31を取り付け可能に構成されていればよい。また、タイン31が接地してその抵抗力によって自転するとともに、進行方向に対し交差する方向に回転することで、倒伏した草を掻き上げる。掻き上げられて立上った草は、直後に通過する草刈作業部20によって刈り取られる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
この発明は、トラクタ等の走行機後方に装着されて草刈作業を行なう草刈作業機に利用できる。
【符号の説明】
【0028】
1 トラクタ
10 走行輪
11 ロアリンク
12 トップリンク
13 ロアリンクピン
14 トップリンクピン
15 クイックヒッチ(連結枠)
16 トップピン
17 ロアピン
2 草刈作業機
20 草刈作業部
200 刈刃軸
201 刈刃
21 ゲージ輪
22 ハンドル
23 ゲージ輪フレーム
24 高さ調整ロッド
25 入力ケース
26 パイプフレーム
27 伝動ケース
28 側板
29 刈刃軸カバー
3 草引起し手段
30 回転板
31 タイン
32 回転軸
33 スプリング
34 第1サポートアーム
35 第2サポートアーム
36 スプリング
5 ユニバーサルジョイント