(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水中ロボットの作業のため或いは作業領域の確認のために、水中ロボットの位置を把握する必要がある。地上では、位置情報の把握の一つのツールとして、GPSの利用が知られている。しかしながら、水中ロボットは、水面下に位置するため、GPS衛生電波を受信することができない。また、水中ロボットが、例えば、水深1000m以上の深さを移動する場合、母船との通信等によってロボットの位置を把握することも難しい。
【0005】
そこで、本発明は、水中を移動可能なロボットの位置をより正確に算出可能な位置計測システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る位置計測システムは、水中を移動可能なロボットと水面との間に位置しておりロボットの位置を計測する位置計測装置と、ロボットと位置計測装置とを接続する接続ラインと、水中に係留された少なくとも一つの標識体と、を備え、位置計測装置は、少なくとも一つの標識体の情報を取得する情報取得部と、情報取得部を制御して情報を取得せしめると共に、情報取得部で取得された上記情報に基づいて少なくとも一つの標識体と位置計測装置との相対位置を算出することによって、ロボットの位置を算出する制御部と、を有する。
【0007】
上記構成では、位置計測装置の情報取得部が、水中に係留された少なくとも一つの標識体の情報を取得する。その情報に基づいて、制御部が、少なくとも一つの標識体と位置計測装置との相対位置を算出することによって、ロボットの位置を特定する。位置計測装置は、ロボットに接続ラインを介して接続されており、ロボットと水面との間に位置するので、ロボットが水中を移動しても水面下においてロボットと一定の位置関係を維持できる。この場合、水中に位置しておりロボットとの位置関係を維持可能な位置計測装置でロボットの位置を計測するので、水中においてもロボットの位置をより正確に計測可能である。
【0008】
一実施形態において、位置計測装置は、接続ラインの鉛直方向に対する傾きを計測する傾き計測部と、を有し、情報処理部は、相対位置と傾きとからロボットの位置を算出してもよい。
【0009】
位置計測装置がロボットの真上に位置していなくても、上記構成では、より確実に、ロボットの位置を特定できる。
【0010】
一実施形態において、位置計測装置は、水中において位置計測装置の位置を調整する位置調整部と、接続ラインの鉛直方向に対する傾きを計測する傾き計測部と、を有し、制御部は、傾き計測部で計測された傾きが、0を含む所定範囲内になるように、位置調整部を制御して、位置計測装置を移動せしめてもよい。
【0011】
この場合、位置計測装置が、ロボットのほぼ真上に位置し得るので、ロボットの位置をより容易に特定しやすい。
【0012】
一実施形態において、情報取得部は、位置計測装置の外側を撮影する撮影部を有し、制御部は、撮影部で撮影された情報取得部の外側の画像内における標識体の画像を情報として上記相対位置を算出してもよい。
【0013】
標識体を撮影することによって、ロボットの位置を特定できるので、ロボットの位置を容易に特定可能である。
【0014】
一実施形態において、上記情報取得部は、少なくとも一つの標識体を計測するための光を、位置計測装置の外側に出力する光源部と、少なくとも一つの標識体によって反射してきた光を検出する受光部と、を有し、制御部は、受光部で検出された光に対応する信号を情報として前記相対位置を算出してもよい。
【0015】
この場合、光を送出し、標識体で反射してきた光を受けることによって、標識体の情報を取得している。そのため、水中という暗い場所でも標識体の情報をより確実に取得出来る。
【0016】
一実施形態において、複数の標識体を有し、複数の標識体はそれぞれ異なる識別情報を有してもよい。
【0017】
この構成では、複数の標識体と位置計測装置との相対関係に基づいてロボットの位置を計測できるので、ロボットの位置をより正確に計測可能である。その際、複数の標識体が異なる識別情報を有することで、位置計測装置は、各標識体を検出可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、水中を移動可能なロボットの位置をより正確に計測可能な位置計測システムを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。以下の説明においては、同一の要素には同一の符号を用いると共に、重複する説明を省略する。
【0021】
図1は、一実施形態に係る位置計測システムの模式図である。位置計測システム10は、海中を移動しながら作業するロボット12の海中での位置を計測するシステムである。海中の意味には、海底も含む。ロボット12は、海中において、所定の作業を行う機能を備えたロボット12であれば特に限定されない。所定の作業の例は、海中探査、海底掘削及び資源(例えば、メタンハイドレート及びレアメタル鉱等)採掘などを含む。これらの所定の作業を行うロボット12の例は、海中探査ロボット、海底掘削ロボット、及び資源採掘ロボットを含む。
図1では、一例として、水深Dが1000m以上の深さの海底を移動しながら作業するロボット12を模式的に示している。このようなロボット12は、海底を移動可能なようにキャタピラといった移動装置と、所定の作業を行うための機構及びロボットの各要素の制御を行う制御装置を備えている。
【0022】
位置計測システム10は、ロボット12にケーブル(接続ライン)14によって接続された位置計測装置16を備える。位置計測装置16は、浮力生成部としての浮体ボール18によってロボット12と海面との間に配置されている。浮体ボール18と位置計測装置16とは例えばワイヤ20によって接続されていてもよい。位置計測装置16は、海底から離れている。位置計測装置16と海底との間の距離dの例は50m〜100mである。これは、ケーブル14の長さを調整することによって実現され得る。一実施形態において、位置計測装置16は、海面上の母船22とケーブル24によって接続されていてもよい。一実施形態において、ケーブル14,24は連続した一つのケーブルでもよい。以下の説明において、ケーブルは、例えば、通信線及び電力線の少なくとも一方を必要な本数含み、それらが保護部材で被覆されたものを意味し、ワイヤは、鉄索又は鋼索などのように、一定の強度を確保した金属線を意味する。
【0023】
位置計測装置16の周囲には、4つの標識体26が配置されている。
図1では、図示の便宜上、2つの標識体26を示している。4つの標識体26の位置は、海中の所定位置に配置されていれば特に限定されない。一実施形態において、4つの標識体26は、予定しているロボット12の作業領域28の周縁上に配置されている。
図2は、ロボットの作業領域の一例を示す模式図である。
図2において、破線で囲まれる領域がロボット12の作業領域である。
図2は、海面上からみた作業領域28を模式的に示している。
図2の例では、作業領域28は四角形状であり、4つの標識体26は、作業領域28の4つの角部28a,28b,28c,28dにそれぞれ配置されている。
【0024】
再度、
図1を利用して、標識体26について説明する。標識体26は、海底にアンカリングされることによって、海中に係留されている。具体的には、標識体26は、沈められたアンカー30にワイヤ32で接続されると共に、浮力生成部としての浮体ボール34にワイヤ36で接続されている。一実施形態において、ワイヤ32,36の剛性及び浮体ボール34の浮力は、標識体26がアンカー30のほぼ真上に維持されるように選択され得る。一実施形態において、標識体26の海底からの距離は、位置計測装置16の海底からの距離dとほぼ同じであり得る。
【0025】
標識体26の例は、再帰反射原理を利用したマイクロビーズ塗料を塗布した反射板、コーナーキューブリフレクタ又はコーナーキューブプリズムを用いた符号反射板を含む。
【0026】
4つの標識体26は、それらを識別可能なように異なる識別情報を有する。このような識別情報は、例えば、マイクロビーズ塗料を塗布した反射板では、マイクロビーズ塗料の塗布による図柄(例えば、所定の数字、アルファベット又は所定の図形記号など)を標識体26毎に変えることで実現され得る。
図1では、識別情報の一例として、□及び○といった図柄を標識体26に付しており、ハッチングを便宜的に付して図示している。或いは、上記識別情報は、符号反射板においては、符号化の方法を標識体26毎に変えることによって、実現され得る。
【0027】
一実施形態において、標識体26は、所定の識別情報を示すように配置された複数のLED等の発光源と、それに電力を供給する蓄電池といった電力装置を有してもよい。この形態でも、例えば、LED等の発光源の配置を変えることなどによって、4つの標識体26は、それらを識別可能なように異なる識別情報を有する。
【0028】
図3を利用して位置計測装置16について詳細に説明する。
図3は、位置計測装置の概略構成を示すブロック図である。位置計測装置16は、ロボット12に対する位置計測装置16の位置を調整する位置調整部38と、位置調整部38に固定された装置本体部40とを有する。
【0029】
位置調整部38は、位置計測装置16を移動させるための推進装置である。位置調整部38は、推進機構部42と、それを駆動する駆動部44とを有する。推進機構部42は、2つ以上のスクリュー装置を含む。駆動部44の例は、スクリュー装置が有する回転翼を駆動する電動モータである。
【0030】
装置本体部40は、情報取得装置(情報取得部)46と、照明装置48と、傾き計測装置(傾き計測部)50と、制御装置(制御部)52と、電力装置54と、通信装置56とを有する。
【0031】
情報取得装置46は、標識体26の情報を取得する装置である。情報取得装置46は、位置計測装置16の外側を撮影する撮影部58を有する。
【0032】
一実施形態において、撮影部58は、撮像素子及びレンズなどを含むカメラと、カメラに位置計測装置16の周囲360度を映し込む反射部とを有してもよい。反射部は、位置計測装置16の周囲を一度にカメラに映し込む一つのミラー(例えば、円錐状のミラー)でもよいし、或いは、光を反射するミラーと、そのミラーを回転させる回転機構とを有してもよい。一実施形態において、撮影部58は、位置計測装置16の周囲を撮影可能なように異なる方向を向いた複数のカメラを有してもよい。
【0033】
照明装置48は、撮影部58による撮影のために、位置計測装置16の外側を照らすための装置である。一実施形態において、照明装置48は、位置計測装置16の周囲を照明可能なように配置された複数の光源(例えば、LEDランプ)を有してもよい。一実施形態において、照明装置48は、一つの光源と、その光源からの光を位置計測装置16の周囲に放射可能な反射部を有してもよい。反射部は、情報取得装置46の場合と同様に、光源からの光を位置計測装置16の周囲に一度に放射可能なミラーでもよいし、或いは、光源からの光を反射するミラーと、そのミラーを回転させる回転機構とを有していてもよい。
【0034】
傾き計測装置50は、ケーブル14の鉛直方向からの傾きを計測するセンサである。電力装置54は、位置計測装置16の構成要素、例えば、情報取得装置46、照明装置48、傾き計測装置50、制御装置52及び通信装置56並びに位置調整部38等に適宜電力を供給する。電力装置54の例は蓄電池である。
【0035】
制御装置52は、位置計測装置16の構成要素、例えば、情報取得装置46、照明装置48、傾き計測装置50、電力装置54及び通信装置56等を制御する。制御装置52は、更に、情報取得装置46で得られた画像及び傾き計測装置50で得られたケーブル14の傾斜角とから、ロボット12の位置を算出する。
【0036】
ロボット12の位置の算出の際、制御装置52は、情報取得装置46から得られた画像情報を処理するので、制御装置52は画像処理部としても機能している。制御装置52は、上記画像処理と共に、傾き計測装置50からの計測結果をロボット12の位置計測のために処理するため、制御装置52は、情報処理部としても機能している。一実施形態において、制御装置52は、傾き計測装置50で得られたケーブル14の傾斜角が、0を含む所定範囲になるように、位置調整部38を制御してもよい。上記傾斜角の所定範囲は、海中におけるケーブル14の傾斜角の許容範囲に対応し、予め決定しておけばよい。所定範囲の例は、±20度、好ましくは±10度である。
【0037】
通信装置56は、位置計測装置16で得られたロボット12の位置を母船22に送る。母船22と通信装置56との通信は、ケーブル24を利用して行ってもよいし、無線通信を利用して行ってもよい。
【0038】
上記構成の位置計測システム10では、制御装置52の制御によって、情報取得装置46の撮影部58が、位置計測装置16の周囲360度を撮影する。制御装置52は、照明装置48に撮影方向を照明させると共に、傾き計測装置50にケーブル14の傾きを計測させる。情報取得装置46は、撮影した画像情報を制御装置52に入力する。傾き計測装置50は、ケーブル14の傾きを制御装置52に入力する。制御装置52は、入力された情報に基づいて、ロボット12の位置を算出する。
【0039】
制御装置52によるロボット12の位置の算出方法の一例について説明する。制御装置52は、入力された画像(以下、入力画像とも称す)を解析して、入力画像中の4つの標識体26を識別する。画像中における特定の画像の識別(或いは抽出)は、公知の画像処理技術を適用すればよい。標識体26の識別には、各標識体26固有の識別情報を利用すればよい。制御装置52は、入力画像内で識別した4つの標識体26の画像を標識体26の情報として使用して、位置計測装置16と4つの標識体26との相対位置を算出する。相対位置は、例えば、入力画像中における各標識体26の画像の位置及び大きさなどから位置計測装置16と各標識体26との間の距離及び方位角を得ることによって算出され得る。制御装置52は、上記相対位置と、傾き計測装置50の計測結果とから、ロボット12の位置を算出する。これにより、ロボット12の海中での位置が特定される。
【0040】
一実施形態において、海流などによってロボット12の真上から位置計測装置16の横ずれが生じた場合、すなわち、傾き計測装置50の計測装置が許容範囲を超えた場合、制御装置52は、位置調整部38によって、位置計測装置16をロボット12の真上に維持してもよい。
【0041】
具体的には、制御装置52は、駆動部44を制御して、推進機構部42が有する少なくとも一つのスクリュー装置を駆動する。この駆動により、主に水平方向及び水平回転の推進力を位置調整部38に発生させ、位置計測装置16の位置を、位置計測装置16をロボット12の真上に維持する。位置調整部38によって位置計測装置16がロボット12の真上に位置している場合には、制御装置52によるロボット12の位置計測の際、傾き計測装置50の計測結果は所定範囲内(好ましくは実質的に0)となるので、制御装置52は、4つの標識体26と位置計測装置16との相対位置によってロボット12の位置を算出し得る。
【0042】
位置計測システム10によれば、位置計測装置16とロボット12とはケーブル14で接続されているので、位置計測装置16はロボット12が移動しても、ロボット12に追従する。そのため、位置計測装置16は、ロボット12と位置関係を維持できる。位置計測装置16は、上記のようにロボット12に追従しながら、水中において、ロボット12の位置を計測する。そのため、位置計測システム10によれば、GPS衛生電波を受信できない水中であってもロボット12の位置をより正確に計測できる。
【0043】
位置計測装置16で計測したロボット12の位置を母船22に送ることで、ロボット12が実際に作業した作業領域を把握できる。母船22がロボット12の位置を把握できるので、ロボット12の位置が作業領域28からずれた場合等は、ロボット12の位置を修正できる。これは、例えば、ケーブル14,24を介して、母船22からロボット12の位置を修正するための指示信号をロボット12に送ってもよいし、或いは、ロボット12自体を改めて所定の作業領域28内に配置し直しても良い。その結果、ロボット12が作業領域28を適切に作業可能である。
【0044】
水深Dが1000m以上の海底でロボット12が作業する場合、例えば、母船22とロボット12とをワイヤ或いはケーブルで繋いで、ロボット12の位置を把握することも考えられる。しかしながら、この場合、海流などよるワイヤ又はケーブルの状態把握が困難なため、ロボット12の位置の計測が困難であると共に、誤差も大きくなる。
【0045】
これに対して、位置計測システム10では、ロボット12から所定距離d(例えば、50m〜100m)程度の上方でロボット12の位置を計測するため、ロボット12の位置をより正確に計測できる。
【0046】
ロボット12が、海底を掘削して、メタンハイドレート及びレアメタル鉱といった資源を採掘するロボットである場合、ロボット12が備える採掘装置による海底の泥・砂の巻き上げによりロボット12の周囲が懸濁しやすい。或いは、ロボット12が海底火山近傍を探査する場合などにおいては、ロボット12の周囲が懸濁しやすい。このような場合でも、位置計測システム10では、位置計測装置16がロボット12と離して配置されるので、上記懸濁状態の影響を回避してロボット12の位置を計測できる。その結果、ロボット12の位置をより正確に同定できる。
【0047】
情報取得装置46は、撮影部58によって、標識体26の画像を得ることで、標識体26の情報を取得している。そのため、標識体26を容易に識別しやすい。標識体26の識別情報については例示したが、撮影部58を使用する場合、例えば、標識体26の外形形状を標識体26毎に変えていてもよい。この場合、各標識体26の外形形状自体が識別情報であり得る。
【0048】
(第2の実施形態)
図4は、位置計測装置の他の実施形態を示す図面である。
図4は、
図3の場合と同様に、第2の実施形態に係る位置計測装置の概略構成を示すブロック図である。
図4に示した位置計測装置60は、位置計測装置16の代わりに、位置計測システム10において使用され得る。
【0049】
位置計測装置60は、位置調整部38と、装置本体部62とを有する。位置調整部38は、位置計測装置60の場合と同様に、推進機構部42と、駆動部44とを有する。
【0050】
装置本体部62は、情報取得装置(情報取得部)64と、傾き計測装置(傾き計測部)50と、制御装置(制御部)66と、電力装置54と、通信装置56とを有する。
【0051】
情報取得装置64は、レーザ光を位置計測装置60の外側に出力するレーザ光源を含む光源部68と、光源部68から出力され標識体26で反射してきたレーザ光を検出する光検出器を含む受光部70とを有する。受光部70は検出した光に対応する信号を制御装置66に入力する。
【0052】
光源部68が有するレーザ光源の例は半導体レーザである。受光部70が有する光検出器の例はフォトダイオードである。ただし、例えば、CCDイメージセンサといったイメージセンサを光検出器として使用してもよい。受光部70は、上記レーザ光を検出するために、レーザ光が有する所定波長に対して感度を選択的に有するように構成されていてもよい。
【0053】
一実施形態において、光源部68から出力され4つの標識体26でそれぞれ反射された反射光を受光部70が受光できるように、光源部68は複数のレーザ光源を有し、受光部70は、各レーザ光源に対応した光検出器を有してもよい。このような形態では、複数のレーザ光源は、水平面内において異なる方向にレーザ光を出力できるように、配置されていればよい。
【0054】
一実施形態において、情報取得装置64は、位置計測装置60の外側にレーザ光を送出すると共に、4つの標識体26からの反射光を受光部70が受光できるように、反射部を更に有してもよい。このような形態では、光源部68はレーザ光源であり、受光部70は光検出器であり得る。一実施形態において、反射部は、ミラーと、鉛直方向を中心軸としてミラーを回転可能な回転機構とを含み得る。この場合、光源部68から出力されたレーザ光を反射部のミラーで反射することで、上記レーザ光を位置計測装置60の外側に出力する。その際、回転機構を利用してミラーを鉛直方向周りに回転させることで、位置計測装置60の周囲360度にレーザ光を出力する。受光部70は、標識体26によって反射され位置計測装置60に戻ってきた光であって、ミラーによって反射して受光部70に入力されたレーザ光を検出する。
【0055】
制御装置66は、受光部70から入力される信号を解析して、各標識体26からの信号を得る。標識体26で反射したレーザ光は、標識体26の識別情報を含むので、制御装置66は、入力された信号と、各標識体26固有の識別情報を比較することによって、各標識体26からの信号を得る。このように得られた各標識体26からの反射レーザ光に対応する信号を、各標識体26を示す情報として使用して、制御装置66は、ロボット12の位置を算出する。
【0056】
一実施形態において、制御装置66は、制御装置52の場合と同様にして、傾き計測装置50で得られたケーブル24の傾斜角が0を含む所定範囲になるように、推進装置を制御してもよい。
【0057】
第2の実施形態で説明しているように、レーザ光を使用する場合には、標識体26としては、第1の実施形態で説明した帰反射原理を利用したマイクロビーズ塗料を塗布した反射板、コーナーキューブリフレクタ又はコーナーキューブプリズムを用いた符号反射板が好適に使用され得る。
【0058】
位置調整部38が有する推進機構部42及び駆動部44と、電力装置54と、通信装置56の構成は、第1の実施形態の場合と同様であるため、説明を省略する。
【0059】
位置計測装置16の代わりに、位置計測装置60を利用した位置計測システム10では、制御装置66の制御によって、情報取得装置64の光源部68が、位置計測装置60の周囲にレーザ光を出射する。制御装置66は、傾き計測装置50にケーブル14の傾きを計測させる。情報取得装置64の受光部70は、標識体26からの反射レーザ光を検出して、その光に対応した信号を制御装置66に入力する。傾き計測装置50は、ケーブル14の傾きを制御装置66に入力する。制御装置66は、入力された情報に基づいて、ロボット12の位置を算出する。
【0060】
情報取得装置64からの信号を利用した制御装置66によるロボット12の位置の計測方法の一例を説明する。制御装置66は、前述したように情報取得装置64から入力された信号を解析して、各標識体26の信号を得る。制御装置66は、計測された各標識体26からの反射レーザ光に対応する信号を、各標識体26を示す情報として使用して、位置計測装置60と、4つの標識体26との相対位置を算出する。相対位置は、例えば、位置計測装置60から送出されるレーザ光と、反射レーザ光との位相差(換言すれば、時間差)によって、各標識体26と位置計測装置60との距離を算出すると共に、各標識体26からの反射レーザ光の受光方向(或いは、レーザ光の出力方向)によって、位置計測装置60に対する各標識体26の方位を計測することによって、算出され得る。得られた上記相対位置と、傾き計測装置50の計測結果とによって、制御装置66は、ロボット12の位置を算出する。このようにして、ロボット12の位置が計測され、海中におけるロボット12の位置が特定される。
【0061】
上記のように、位置計測装置60から送出されるレーザ光と、反射レーザ光との位相差によって、各標識体26と位置計測装置60との距離が算出され得るので、光源部68と受光部70とを有する情報取得装置64は測距センサとしても機能している。
【0062】
位置計測装置60を利用した位置計測システム10の構成は、位置計測装置16の代わりに位置計測装置60を利用している点以外は、位置計測装置16を利用した位置計測システム10と同じ構成を有する。そのため、位置計測装置60を利用した位置計測システム10は、位置計測装置16を利用した位置計測システム10と少なくとも同じ作用効果を有する。加えて、レーザ光を位置計測装置60から送出してその反射レーザ光を受光することによって、標識体26を検出しているので、暗い水中でも標識体26を好適に検出し得る。
【0063】
以上、本発明の種々の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0064】
例えば、標識体26の数は4つに限らず、1,2,又は3つでもよいし、5個以上でもよい。標識体26の位置も、予め指定しておけば作業領域の周縁上に限らない。標識体26自体が例示したように、LED等の発光源を有し、標識体26から光が出力されている場合には、第1の実施形態における位置計測装置16は照明装置を有さなくてもよい。上記のように、標識体26から光が出力されている場合には、位置計測装置60は、光源部68を有さなくてもよい。
【0065】
位置計測装置16,60は位置調整部38を有さなくてもよい。この場合、制御装置52,66が傾き計測装置50の計測結果を考慮して、ロボット12の位置を算出すればよい。ただし、位置調整部38によって、位置計測装置16,60がロボット12の真上近傍にあれば、傾きの影響を低減してより正確にロボット12の位置を把握できる。逆に、位置計測装置16,60は傾き計測装置50を有さなくてもよい。この場合、位置計測装置16,60は、位置調整部38によって位置計測装置16,60が常にロボット12の直上に位置するように調整しておけばよい。このような、ロボット12と、位置計測装置16,60との位置関係であれば、位置計測装置16,60と標識体26との相対位置を算出することによって、ロボット12の位置が算出され得る。
【0066】
撮影部58を有する情報取得装置46と、光源部68及び受光部70を有する情報取得装置46とを例示したが、情報取得装置はこれらの形態に限定されない。情報取得装置は、光学的計測(画像取得を含む)によって、標識体26の情報を取得できるものであればよい。
【0067】
標識体26を複数有する形態では、位置計測装置16,60は、制御装置52,66が位置調整部38を制御して、鉛直方向を軸としてその周りに位置計測装置16,60を回転させながら、各標識体26の情報を取得してもよい。このような形態では、例えば、情報取得装置46の撮影部58はカメラであり、情報取得装置64の光源部68及び受光部70は、それぞれレーザ光源及び光検出器であり得る。
【0068】
これまでの説明では、海中で作業するロボットについて説明したが、ロボットは、海中に限らず、水中で作業するロボットであればよい。そのため、例えば、湖沼又は河川中において作業するロボットに対しても位置計測システムは適用され得る。
【0069】
位置計測装置16,60で計測したロボット12の位置を母船22に送信する代わりに又は母船22への送信に加えて、ケーブル14を介して又は無線通信でロボット12に送信してもよい。このような形態では、例えば、ロボット12が有する制御装置(又は制御システム)に、入力されるロボット12の位置に応じてロボット12の移動を制御する機能を持たせておけば、ロボット12がより正確に、所定の作業領域28内で作業が可能である。
【0070】
位置計測装置16,60で計測したロボット12の位置を母船22及びロボット12の少なくとも一方に送信する形態を例示したが、例えば、位置計測装置16,60が、適宜計測したロボット12の位置を記録する記憶装置を有していてもよい。この場合、ロボット12の作業が終了した後に、その記録装置のデータを参照することで、ロボット12の作業領域を把握できる。
【0071】
ロボット12と、位置計測装置16,60とを、通信用の導線を含むケーブル14で接続した形態を例示したが、ロボット12と位置計測装置16,60とを接続する接続ラインは、ワイヤであってもよい。
【0072】
光源部68はレーザ光源を有し、レーザ光を出力するとして説明したが、標識体26を検出可能な光を送出できればよい。
【0073】
傾き計測装置50は、ケーブル14の傾きの変動をケーブル14の振動として検出し、その検出結果を制御装置52に入力してもよい。この場合は、制御装置52は、ケーブル14の振動が低減するように、位置調整部38を制御してもよい。或いは、ケーブル14の振動を計測する振動計測装置を位置計測装置16,60が別途有してもよい。
【0074】
位置計測装置16は、電力装置54を備えているが、位置調整部38と、情報取得装置46と、傾き計測装置50と、制御装置52と、通信装置56それぞれが電池といった電力供給部を備えていてもよい。或いは、位置計測装置16の構成要素への電力の供給は、例えば、ロボット12からケーブル14を介して行ってもよい。
【0075】
更に、位置計測装置16,60は、慣性センサ(例えば、ジャイロスコープ又は加速度センサ)及び地磁気センサを更に備えていてもよい。この場合、慣性センサ及び地磁気センサからのデータに基づいて、制御装置52が位置調整部38を制御して、位置計測装置16,60の姿勢制御を行うと共に、ロボット12の位置を計測する際のデータの補間に使用され得る。その結果、より正確にロボット12の位置を計測可能である。
【0076】
例示した種々の実施形態などは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜組み合わせられ得る。