【実施例1】
【0013】
本実施例に係る複合材1について説明する。
図1に示すように、本実施例の複合材1は、木質部材12a,12b,12cにより構成される木質材10と、金属板20a,20bと、を備えている。木質部材12a,12b,12cと、金属板20a,20bとは、互いに平行に配置され、z方向(上下方向)に積層されている。なお、以下の明細書において、例えば、木質部材12を区別する必要があるときは、木質部材12a,12bのように添字のアルファベットを用いて記載し、区別する必要のないときは単に木質部材12と記載する場合がある。また、他の構成要素についても同一構成のものについて区別する必要がないときは、上記と同様に添字のアルファベットを省略して単に数字で記載することがある。
【0014】
複合材1は、x方向に長尺に伸びており、x方向とy方向のアスペクト比が大きく、x方向とz方向のアスペクト比も大きくなっている。複合材1のy方向の寸法をWとすると、例えば、Wは90mm以上、かつ、180mm以下とすることができる。また、複合材1のz方向の寸法をHとすると、例えば、Hは180mm以上、かつ、450mm以下とすることができる。例えば、複合材1の断面は、W×Hが、90mm×180mm、90mm×240mm、90mm×300mm、90mm×360mm、120mm×180mm、120mm×240mm、120mm×300mm、120mm×360mm、150mm×180mm、150mm×240mm、150mm×300mm、150mm×360mmとすることができ、複合材1は、建築材として汎用性の高い寸法にすることができる。複合材1は、例えば、建築物の梁、登り梁、胴差、桁類又は柱等の長尺の建築材に用いることができる。
【0015】
木質部材12a,12b,12cは、略直方体状であり、x方向に長尺に伸びている。すなわち、木質部材12a,12b,12cは、x方向とy方向のアスペクト比が大きく、x方向とz方向のアスペクト比も大きくなっている。木質部材12a,12b,12cのx方向の寸法は互いに略一致しており、木質部材12a,12b,12cのy方向の寸法は、互いに略一致している。木質部材12は、無垢材等の1部品からなるものであってもよいし、集成材や合板、LVL(単板積層材)、CLT(直交集成材)等の複数の部品を組み合わせたものであってもよいし、チップボード、MDF(中密度繊維板)等の木質系繊維板であってもよい。木質部材12a,12bの間には、金属板20aが配置されており、木質部材12b,12cの間には、金属板20bが配置されている。
【0016】
金属板20は、板状の部材であり、鋼材を用いて形成されている。金属板20は、x方向に伸びており、x方向とy方向のアスペクト比が大きな略矩形状の鋼板となっている。金属板20a,20bの形状は、略一致している。金属板20のy方向の寸法は、木質材10のy方向の寸法より小さくされている。金属板20のx方向の寸法は、木質材10のx方向の寸法と略一致している。金属板20の板厚(z方向の寸法)は、例えば、0.5mmとなっている。このように、金属板20の板厚が薄くされているため、例えば、複合材1を製造する前の状態では、金属板をコイル状にして保管することができる。金属板をコイル状にして保管すると、保管スペースを少なくすることができ、また、搬入や取扱いをより容易にすることができる。また、金属板をコイル状にすると、金属板の製造場所と木質材との取付け場所を分離することができる。金属板20aの上面(z方向(+))は、木質部材12aと接しており、下面(z方向(−))は木質部材12bと接している。すなわち、金属板20aは、木質部材12a,12bの間に配置されている。また、金属板20bの上面(z方向(+))は、木質部材12bと接しており、下面(z方向(−))は木質部材12cと接している。すなわち、金属板20bは、木質部材12b,12cの間に配置されている。
図2に示すように、金属板20には、複数の開口部22が設けられている。また、金属板20は、上方向(z方向(+))に突出する複数の突出部24(請求項に記載した第1突出部の一例)と、下方向(z方向(−))に突出する複数の突出部26(請求項に記載した第2突出部の一例)を備えている。なお、本実施例では金属板に鋼材を用いているが、このような構成に限定されない。複合材の用途に応じて金属板の材料を選択することができる。また、金属板20のy方向の寸法は、木質材10のy方向の寸法より小さくされているが、このような構成に限定されない。例えば、金属板20のy方向の寸法と、木質材10のy方向の寸法とは、略一致していてもよい。また、本実施例の金属板20の板厚は0.5mmであるが、このような構成に限定されない。金属板20の板厚を0.5mmより大きくしてもよいし、0.5mmより小さくしてもよい。金属板20の板厚を大きくすると、複合材の強度をより高くすることができる。
【0017】
開口部22は、平面視すると円形であり、金属板20をz方向に貫通している。すなわち、金属板20aの開口部22は、金属板20aの木質部材12aと対向する表面から木質部材12bと対向する表面に貫通している。
図3に示すように、開口部22は、金属板20上においてx方向(
図3(a)では左右方向)に等間隔に配置されており、y方向(
図3(a)では縦方向)に等間隔に配置されている。x方向(
図3(a)では左右方向)に隣り合う開口部22a,22bの間に、突出部24,26が配置されている。開口部22には、図示しない接着剤が配置(充填)されている。接着剤の種類は特に限定されないが、例えば、エポキシやシリコン等の通常の建築用集成材に用いることができるものであることが好ましい。金属板20aの開口部22に配置された接着剤によって、木質部材12a,12bが接着されている。上記の接着剤は、木質部材と金属部材とを接着させることと比較して、木質部材同士を接着させる際により強固に接着させることができる。このため、開口部22を介して木質部材12aと木質部材12bとをより強固に接着させることができ、木質部材12a,12b及び金属板20aが分離することを防止することができる。同様に、木質部材12bと木質部材12cも、金属板20bの開口部22に配置される接着剤により接着されている。なお、本実施例の開口部22は円形であるが、このような構成に限定されない。金属板20を貫通し、接着剤を配置できる形状であればよく、例えば、矩形であってもよい。
【0018】
金属板20は、複数の突出部24と、複数の突出部26を備えている。突出部24,26は、x方向(
図3(a)では左右方向)に隣り合う開口部22a,22bの間に配置される。突出部24,26は、金属板20を切り起こして形成される。したがって、金属板20には、突出部24,26と一致する形状の開口28が設けられる。1つの開口28が設けられる箇所に、突出部24,26が1つずつ形成される。具体的には、開口28は、x方向とy方向に平行な略矩形に設けられる。開口28の外周のx方向に平行な2辺に切り込みが入れられ、開口28が設けられる内部には対角線状に切り込みが入れられる。開口28の外周のy方向に平行な1辺を上方(z方向(+))に垂直に折り曲げることで、突出部24が形成され、他方の1辺を下方(z方向(−))に垂直に折り曲げることで、突出部26が形成される。すなわち、突出部24,26は、z方向に平行に配置される。突出部24,26は、金属板20の表面からz方向に、例えば、10mm突出している。金属板20aの突出部24は、木質部材12aに食い込んでおり、金属板20aの突出部26は、木質部材12bに食い込んでいる。このため、金属板20aは、突出部26によって木質部材12a,12bに固定されている。突出部24,26を木質部材12に食い込ませ、金属板20と木質部材12が互いにすべりを防止しつつ一体化することにより、複合材1はせん断と曲げに対する強度が向上されている。なお、本実施例の突出部は、金属板を切り起こすことで形成したが、このような構成に限定されない。例えば、金属板の表面に突出部を接合してもよい。また、突出部24,26の大きさは、10mmとなっているが、このような構成に限定されない。突出部は10mmより大きくしてもよいし、10mmより小さくしてもよい。突出部を大きくすると、複合材1のせん断と曲げに対する耐力を高くすることができる。また、突出部の数を多く設置することにより、複合材1のせん断と曲げに対する耐力を高くすることができる。
【0019】
複合材1は、その内部に金属板20を備えており、金属板20は、複合材1の補強の役割を果たしている。このため、複合材1の剛性が高くなり、複合材1の許容応力度を高くすることができる。また、例えば、複合材1を梁材として用いた際に、複合材1にかかる荷重が大きく、最下層の木質部材12cが破断した場合でも、複合材1の最下層の部材が木質部材12cに代わり金属板20bとなるため、複合材1の許容応力度を高く保つことができる。すなわち、金属板20bが最下層になると、荷重等による金属板20bの破断より先に、金属板20bと木質部材12bとのせん断剥離が起こることが想定される。しかし、上述したように、複合材1は、金属板20bと木質部材12bとが強固に接合され、せん断と曲げに対する耐力が高くされているため、複合材1は、高い許容応力度を維持することができる。
【0020】
複合材1には、開口部22が設けられているため、複合材1を他の部材と接合するときに、ボルト等の接合部材を開口部22に挿入することができる。このため、接合部材を複合材に貫通させる際に、複合材1の内部に配置される金属板20が、接合部材の貫通を阻害することを回避することができる。また、上述したように、金属板20の板厚は薄くされているため、金属板の開口部以外の部分であっても、接合部材を容易に金属板20に貫通させることができる。このため、複合材1は金属板20を備えていても、建築材として取扱い易いものとすることができる。
【0021】
複合材1は、複合材1内部に接着剤が用いられると共に、突出部24,26が木質部材12に食い込むことで複合材1が固定されている。このため、木質部材同士を接着する間、養生する必要がない。養生する必要がないため、養生する条件によって複合材の性能や強度が左右されることがなく、ばらつきの少ない複合材1を形成することができる。また、例えばカーブした形状の金属板の両面に木質部材を固定することにより、複合材をカーブした形状にすることができる。また、曲線形状の複合材(曲線材)は、複数の木質部材と複数の金属板を径方向に積層させることで形成してもよい。このとき、径方向の位置によって各金属板の長さを変えることにより、曲率を一定に保持することができる。このため、木質部材を変形させるための治具を使用する必要はなく、より容易に所望の形状の複合材を形成することができる。
【0022】
本実施例の複合材1では、金属板20のx方向の寸法が複合材1のx方向の寸法と略一致しており、また、平行に2枚の金属板20が配置されているが、このような構成に限定されない。複合材1は、その内部に金属板20を配置することにより、剛性を高くし、強度を向上させることができる。このため、複合材のx方向と略同一の寸法で金属板を配置する以外に、複合材の強度を高めるために金属板を効果的に配置することができる。例えば、複合材1を梁材として用いる場合に、荷重等によりモーメントやせん断力が大きく作用する部分に金属板を配置し、モーメントやせん断力がほとんど作用しない部分には金属板を配置しない構成とすることができる。また、モーメントやせん断力がかかる大きさに応じて、配置する金属板の枚数を増加させることができる。このような構成によると、必要な部分に必要な枚数の金属板を配置することができ、重量を少なくできかつ効果的に複合材を補強することができる。したがって、複合材に働く各種応力が大きくなる部分に応じて金属板を配置することで、最適な補強を自由に行うことができる。
【0023】
また、本実施例の金属板20には、開口部22を格子状に整列して設けたが、このよう構成に限定されない。例えば、千鳥整列するように金属板上に開口部を設けてもよい。また、開口の大きさは、本実施例の開口部22より小さくしてもよいし、さらに大きくしてもよい。例えば、金属板は、開口部が全体の80〜90%を占めるエキスパンド網状に成形してもよい。したがって、金属板に対する開口部の割合は10〜90%とすることができる。また、本実施例では、開口部22と突出部24,26とを別個に設けたが、このような構成に限定されない。例えば、突出部を設けるために金属板を切り起こす際に生じる開口(すなわち、本実施例でいう開口28)を、金属板に設ける開口部(すなわち、本実施例でいう開口部22)としてもよい。
【0024】
本実施例の複合材1は、梁や柱等の建築材に用いることができる長尺の部材であるが、このような構成に限定されない。例えば、2辺のアスペクト比が小さい板状のものであってもよく、このような複合材は、床、壁、屋根、スラブ等として用いることができる。このような構成であっても、複合材にかかる荷重等の負荷に応じて、最適な部分に最適な枚数の金属板を配置することで、複合材を好適に補強することができる。
【0025】
本実施例の複合材1は、外層に木質部材12a,12cを配置しているが、このような構成に限定されない。例えば、外層に金属板が配置されていてもよく、複合材の用途に応じて選択することができる。また、外層に配置する木質部材として化粧材を用いることで、外観のよい複合材を製造することができる。外層に木質部材を配置すると、もえしろ設計となり、火災等に強い複合材となる。また、火災等により木質部分が焼失してしまっても、金属板は残存する。このため、火災等により木質部分が焼失しても複合材の骨格を保持することができ、建築物が倒壊する可能性を低くすることができる。
【実施例2】
【0026】
図4に示すように、実施例2の複合材100は、木質部材112a,112b,112cから構成される木質材110と、金属板120a,120bとが、y方向に積層した構成となっている。なお、複合材100は、実施例1の複合材1に対して、木質部材112及び金属板120が積層する方向が相違し、その他の構成については略同一となっている。したがって、金属板120の開口部及び突出部は、実施例1の金属板20と同様の構成となっている。
【0027】
複合材100は、例えば梁材として用いた際に、z方向の荷重により負荷がかかり下面から破損する場合、まず積層する木質部材112a,112b,112cの下面(xy面)が金属板120a,120bのz方向の下縁まで破損する。このような状態になると、金属板120a,120bの破損より先に、金属板120と木質部材112との接着面のせん断剥離が起こることが想定される。しかし、本実施例の複合材100においても、金属板120と木質部材112とのせん断剥離に対する耐力が高くされているため、複合材100は、高い許容応力度を維持することができる。さらに、複合材100にボルト等の接合部材がy方向に貫通された場合には、複合材100にはy方向に締め付けられる力が作用し、せん断力に対する強度をより向上させることができる。
【0028】
以上、本明細書に開示の技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。