【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成28年3月26日に愛知株式会社が、早稲田大学に、熊澤工が発明した椅子を納入した。平成28年3月28日に愛知株式会社が、東京理科大学に、熊澤工が発明した椅子を納入した。平成28年3月28日に愛知株式会社が、松山大学に、熊澤工が発明した椅子を納入した。平成28年3月29日に愛知株式会社が、千葉大学に、熊澤工が発明した椅子を納入した。
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
平座金やばね座金など、ボルトなどによる固定を行うときに同時に固定される部品の組み付けを簡便なものとすることが従来から望まれている。
本開示は、組み付けを容易なものとすることができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、一端が支持体に支持される回転軸の外周面を摺動して回転する回転体が前記回転軸から脱落することを抑制する固定装置であって、雄ねじ、及び、雌ねじ、のいずれか一方を有する取付部であって、前記支持体に備えられ、雌ねじ、及び、雄ねじのいずれか一方を有する被取付部に対して締結された状態において、前記回転体の脱落を抑制する取付部と、前記回転軸の外側に嵌められる少なくとも1つの外嵌部と、前記取付部と、前記少なくとも1つの外嵌部と、を所定の位置関係に保つ保持部と、を備え、前記所定の位置関係とは、前記取付部の有する前記雄ねじ及び前記雌ねじのいずれか一方の軸と、前記被取付部の有する前記雌ねじ及び前記雄ねじのいずれか一方の軸と、が同一直線上に位置する場合において、前記直線と直交する平面に前記回転軸及び前記少なくとも1つの外嵌部を投影したときに、(i)前記少なくとも1つの外嵌部における前記回転軸が挿入される開口に前記回転軸が収まる位置関係、及び、(ii)前記直線を中心に前記少なくとも1つの外嵌部を回転させたときに、前記開口に前記回転軸が収まる状態となり得る位置関係、のうちの少なくともいずれか一方である、固定装置である。
【0007】
このような構成であれば、取付部を被取付部に取り付ける場合に、保持部に保持される外嵌部が回転軸の外側に嵌め易い位置となる。よって、外嵌部を回転軸の外側に嵌めた状態で取付部を被取付部に取り付ける作業を容易なものとすることができる。
【0008】
なお、上述した(i)、(ii)に記載される「開口に回転軸が収まる」とは、厳密な意味で微小なずれをも許容しないという意味ではなく、取り付け作業が容易になるという効果を奏する範囲において、微小なずれがあってもよい。例えば、固定装置を取り付ける者が、取り付け作業を行うときに、上記(ii)の場合における回転操作とは別に、僅かに位置を調整することで、上述したように外嵌部の開口に回転軸が収まるものも含む。
【0009】
上記固定装置において、前記保持部は、前記取付部及び前記少なくとも1つの外嵌部の周囲を囲う形状であって、少なくとも、前記取付部を操作するための第1の開口と、前記取付部と前記被取付部とを締結するための雄ねじが通過するための第2の開口と、が形成されていてもよい。
【0010】
このような構成であれば、雄ねじを雌ねじに締結する操作を容易に行うことができる。
上記固定装置において、前記保持部は、前記1つ以上の外嵌部と前記回転体との間に位置し、前記回転体と接触する接触面を有していてもよい。
【0011】
このような構成であれば、回転体が回転するときに、保持部の接触面と回転体との間に摩擦力を発生させることができる。よって、その摩擦力を接触面の材質により調整することができる。
【0012】
上記固定装置において、前記回転軸は、貫通孔が形成された筒状の部材であって、前記被取付部は前記支持体に形成される雌ねじであって、前記取付部は、前記雌ねじに対して締結可能に構成された雄ねじを有しており、該雄ねじが前記回転軸の前記貫通孔を通過して前記雌ねじに締結される構成であってもよい。
【0013】
このような構成であれば、回転軸を支持体に固定しつつ回転体の脱落を抑制することができる。
上記固定装置において、前記回転軸及び前記少なくとも1つの外嵌部は、該少なくとも1つの外嵌部が前記回転軸の外側に嵌められた状態において、前記回転軸の中心軸を中心とした相対的な回転変位が抑制されるように構成されていてもよい。
【0014】
このような構成であれば、外嵌部が回転軸に対して回転しないため、外嵌部が回転することにより取付部の締結が緩んでしまうことを抑制できる。
上記固定装置において、前記少なくとも1つの外嵌部は、前記取付部が前記被取付部に締結された状態において、前記回転体を前記支持体の方向に押圧するバネ部材を含む構成であってもよい。
【0015】
このような構成であれば、バネ部材によって、回転体が回転するときの摩擦力を調整することができる。
本開示の第2の態様は、支持体と、一端が前記支持体に支持される回転軸と、前記回転軸の外周面を摺動して回転する回転体と、前記回転体が前記回転軸から脱落することを抑制する固定装置と、を備える回転体支持機構であって、前記固定装置は、雄ねじ、及び、雌ねじ、のいずれか一方を有する取付部であって、前記支持体に備えられ、雌ねじ、及び、雄ねじのいずれか一方を有する被取付部に対して締結された状態において、前記回転体の脱落を抑制する取付部と、前記回転軸の外側に嵌められる少なくとも1つの外嵌部と、前記取付部と、前記少なくとも1つの外嵌部と、を所定の位置関係に保つ保持部と、を備え、前記所定の位置関係とは、前記取付部の有する前記雄ねじ及び前記雌ねじのいずれか一方の軸と、前記被取付部の有する前記雌ねじ及び前記雄ねじのいずれか一方の軸と、が同一直線上に位置する場合において、前記直線と直交する平面に前記回転軸及び前記少なくとも1つの外嵌部を投影したときに、(i)前記少なくとも1つの外嵌部における前記回転軸が挿入される開口に前記回転軸が収まる位置関係、及び、(ii)前記直線を中心に前記少なくとも1つの外嵌部を回転させたときに、前記開口に前記回転軸が収まる状態となり得る位置関係、のうちの少なくともいずれか一方である、回転体支持機構である。
【0016】
このような構成であれば、第1の態様の固定装置による効果と同様の効果を奏することができる。
本開示の第3の態様は、少なくとも座体を支持する支持体と、一端が前記支持体に支持される回転軸と、前記回転軸の外周面を摺動して回転する前記座体と、前記座体が前記回転軸から脱落することを抑制する固定装置と、を備える椅子であって、前記固定装置は、雄ねじ、及び、雌ねじ、のいずれか一方を有する取付部であって、前記支持体に備えられ、雌ねじ、及び、雄ねじのいずれか一方を有する被取付部に対して締結された状態において、前記回転体の脱落を抑制する取付部と、前記回転軸の外側に嵌められる少なくとも1つの外嵌部と、前記取付部と、前記少なくとも1つの外嵌部と、を所定の位置関係に保つ保持部と、を備え、前記所定の位置関係とは、前記取付部の有する前記雄ねじ及び前記雌ねじのいずれか一方の軸と、前記被取付部の有する前記雌ねじ及び前記雄ねじのいずれか一方の軸と、が同一直線上に位置する場合において、前記直線と直交する平面に前記回転軸及び前記少なくとも1つの外嵌部を投影したときに、(i)前記少なくとも1つの外嵌部における前記回転軸が挿入される開口に前記回転軸が収まる位置関係、及び、(ii)前記直線を中心に前記少なくとも1つの外嵌部を回転させたときに、前記開口に前記回転軸が収まる状態となり得る位置関係、のうちの少なくともいずれか一方である、椅子である。
【0017】
このような構成の椅子では、第1の態様の固定装置による効果と同様の効果を奏することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
[1.実施形態]
[1−1.全体構成]
椅子1は、
図1に示すように、背もたれ2と、座体3と、左右一対の脚部4と、脚部4を左右方向に連結する支持フレーム5と、を備え、同一の椅子1を前後方向に重ねる収納、いわゆるネスティングが可能なネスティングチェアーである。脚部4は左右対称形である。座体3が、回転体に相当する。
【0020】
背もたれ2は、板状の部材を、平面視で後方に向けて凸となる円弧状とすることで、全体として着席者の背中に沿うような形状とされたものである。背もたれ2の左右両側の下端には、下方に延びる一対の背側連結片11が形成されている。
【0021】
支持フレーム5は、支持フレーム5の左右方向の端部側それぞれの上部から上方に延びて、一対の背側連結片11と連結する一対の支持側連結片13を備えている。
一対の背側連結片11、及び、一対の支持側連結片13は、座体3の後端側を左右から挟む位置関係で配置され、この座体3を、左右方向に延びる後述する軸部材40を回転軸として回動可能に固定している。これにより、座体3は、
図1A、
図1Cに示される、着座面が地面に沿った面となるように倒す使用状態と、
図1Bに示される、着座面を地面と交差する面となるように座体3を跳ね上げる収納状態と、の間で回動可能となる。以下の説明では、背側連結片11と支持側連結片13とを合わせて座支持部15と記載する。
【0022】
座体3は、平面視で略矩形の板状の部材であって、中央部には着座面となるシート状部材17が張り掛けられている。また座体3は、使用状態において、全体的に後端部から前端部に向かう若干の上り勾配の傾斜面となっており、その前端部は下方向に垂れ下がる垂下片となっている。
【0023】
この座体3には、左右一対の座支持部15に対応する位置それぞれに、座支持部15に対して座体3を固定するための一対の座側固定片19が備えられ、ここに軸部材40を通して固定することにより、座体3全体が背もたれ2や脚部4に対して回転可能となる。
【0024】
[1−2.座体を回転可能に支持する支持機構]
図2A及び
図2Bに示されるように、座支持部15は、支持側連結片13が背側連結片11の内部に挿入される形で連結してなるものである。
【0025】
座体3を回転可能に支持する支持機構は、
図3Aに示されるように、座支持部15、座側固定片19、軸部材40、固定装置50などを備える。座支持部15が支持体に相当し、軸部材40が回転軸に相当する。また、この支持機構が、回転体支持機構に相当する。なお
図3Aにおいては、理解を容易にする目的で固定装置50は断面図としていない。
図4の軸ボルト80、
図6の軸ボルト80においても同様である。
【0026】
座側固定片19には貫通孔31が形成されている。また、背側連結片11の内側面にも貫通孔32が形成されている。支持側連結片13には、溝33が形成されており、溝33の奥には雌ねじ34が形成されている。雌ねじ34が、被取付部に相当する。
【0027】
図4に示されるように、この貫通孔31、貫通孔32、溝33に対して、軸部材40が挿入される。軸部材40の一端は、座支持部15によって支持される。座体3は、軸部材40を中心として回転するが、その際、貫通孔31の内側面が軸部材40の外周面を摺動する。軸部材40が挿入されることによって、支持側連結片13が背側連結片11から抜けることが抑制され、13と11とが係脱不能になる。
【0028】
図3Bに示されるように、貫通孔32は円形の孔であるが、溝33は壁面の一部が中央側に進出して、その部分の幅が狭くなっている。貫通孔31は、貫通孔32とほぼ同軸、同径である。雌ねじ34は、貫通孔31、貫通孔32、溝33の中心軸と同軸となるように形成されている。
【0029】
軸部材40の支持側連結片13からの脱落と、座側固定片19の軸部材40からの脱落と、を防止するように、固定装置50が取り付けられる。
[1−3.軸部材の構成]
図5A〜
図5Dに示されるように、軸部材40は、筒状の部材であって、軸貫通孔41が形成されている。なお、ここでいう筒状とは、中空状であって、両端に開口が形成されている形状をいう。
【0030】
軸部材40は、外周の反対側の2箇所に切り欠き部42が形成されている。切り欠き部42は、円筒の壁面の一部を、軸方向に拡がる平面によって切り欠いた形状であって、2つの切り欠き部42の平面は平行である。
【0031】
軸部材40の平面視における外縁の形状は、
図5Aに示されるように、円の両端の2箇所が平行に切り取られた形状となっている。2つの切り欠き部42の間の距離をL1とし、切り欠き部42が形成されていない部分の軸部材40の直径をL2とすると、L1<L2となる。なお以下の説明において、軸部材40の外縁形状又は外形とは、上述した平面視の形状を意味する。
【0032】
上述した溝33は、この軸部材40の外縁形状に合わせた溝形状となっている。具体的には、溝33の狭い部分の幅はL1より僅かに大きいが、L2より小さい。よって、軸部材40が溝33に挿入されると、軸部材40は座支持部15に対して回転不能となる。
【0033】
一方、貫通孔31は、L2よりも僅かに大きい直径の孔となっている。よって、座体3は軸部材40に対して回転可能となる。
[1−4.固定装置の構成]
図6A、
図6Bに示されるように、固定装置50は、座金60、カメ座金70、軸ボルト80、ケース90を有する。ケース90は、軸カバー91と、軸キャップ92と、を有する。なお、座金60及びカメ座金70が外嵌部に相当し、軸ボルト80が取付部に相当し、ケース90が保持部に相当する。またカメ座金70がバネ部材に相当する。
【0034】
座金60は、
図7A〜
図7Cに示されるように、環状の板状の部材である。座金60の中央には開口61が形成されている。この座金60は、例えば金属で形成することができる。この座金60が、外嵌部の一例である。
【0035】
開口61の形状は、
図7Aに示されるように、開口61の中央に進出する一対の壁面63によって、円の両端の2箇所が平行に切り取られた形状となっている。一対の壁面63の間の距離をL3、円である部分の直径をL4とすると、L3<L4となる。
【0036】
開口61は、軸部材40の外縁形状にあわせた形状となっていて、軸部材40が挿入可能である。固定装置50が座支持部15に取り付けられたときには、座金60は軸部材40の外側に嵌められる。また、L3は上述したL1より僅かに大きいが、L2より小さい。よって、座金60は軸部材40の中心軸を中心とした軸部材40に対する相対的な回転変位が抑制される。
【0037】
座金60の外縁は略円形であるが、両端の2箇所に、切り欠き62が形成されている。
カメ座金70は、
図7D〜
図7Fに示されるように、環状の板状の部材である。カメ座金70の中央には開口71が形成されている。このカメ座金70は、例えば金属で形成することができる。このカメ座金70が、外嵌部の一例である。
【0038】
開口71は円形であって、軸部材40が挿入可能である。固定装置50が座支持部15に取り付けられたときには、カメ座金70は軸部材40の外側に嵌められる。
カメ座金70は、
図7E、
図7Fから明らかなように、平面状ではなく、1つの側面から見て円弧状に折り曲げられた曲面状である。
【0039】
軸ボルト80は、
図8A〜
図8Dに示されるように、ネジ頭81と、軸体82と、雄ねじ83と、六角溝84と、を有する。
ネジ頭81は、円板状の部材である。軸体82は、ネジ頭81から延び出す円柱状の部材である。雄ねじ83は、軸体82の延び出した先端側の側面に形成されている。六角溝84は、ネジ頭81における軸体82が延び出す面とは反対側の面に形成されている。
【0040】
雄ねじ83は、雌ねじ34に対して締結可能であって、雄ねじ83が軸部材40に形成された軸貫通孔41を通過して雌ねじ34に締結されることで、固定装置50が座支持部15に固定される。このとき、
図4に示されるように、ネジ頭81が軸部材40に接触しており、軸部材40の座支持部15からの脱落が抑制される。
【0041】
ケース90は、
図6Bに示されるように、座金60、カメ座金70、軸ボルト80を、保持する。このケース90は、例えば合成樹脂で構成することができる。
軸カバー91は、
図9A〜
図9Dに示されるように、環状の部材であって、中心に第1開口部93が形成される円形の板状の円板部94と、円板部94の外縁部から、円板部94と直交するように延び出し、筒体を形成する外周部95と、を有する。外周部95の内側には、円周方向に長さを有し、間隔を空けて配置される複数の突起96が形成されている。第1開口部93が、第1の開口に相当する。
【0042】
軸キャップ92は、
図9E〜
図9Hに示されるように、環状の部材であって、中心に第2開口部97が形成される円形の板状の円板部98と、円板部98の外縁部から、円板部98と直交するように延び出し、筒体を形成する外周部99と、を有する。外周部99の外側には、円周方向に長さを有する突条である係止部100が形成されている。第2開口部97が、第2の開口に相当する。
【0043】
第2開口部97は、開口61と同様の形状であって、軸部材40が挿入可能であり、かつ、軸部材40の中心軸を中心として軸キャップ92が軸部材40に対して回転できない形状となっている。
【0044】
また外周部99の内側には、中央に向けて進出する壁面部101が対向する2箇所に形成されている。外周部99の内部の形状は、座金60の外形よりも僅かに大きい形状であって、座金60が挿入されると、切り欠き62と壁面部101とが向かい合って近接し、外周部99の内部で座金60が回転できないように、その位置が定められる。座金60が軸キャップ92に挿入された状態では、
図9Iに示されるように、開口61と、第2開口部97と、は形状が重なる。
【0045】
固定装置50は、
図6Aに示される順に、座金60、カメ座金70、軸ボルト80を並んだ状態でそれらをケース90に収めることで完成する。軸ボルト80の軸体82は、座金60の開口61及びカメ座金70の開口71に挿入された状態となる。
【0046】
ケース90は、軸ボルト80に対する座金60とカメ座金70の位置を所定の位置関係に保つ。ここでいう所定の位置関係を、
図10A、
図10Bを用いて説明する。
図10Aは、雄ねじ83の中心軸、つまり軸体82の中心軸と、雌ねじ34の中心軸と、がいずれも直線A上に位置する場合において、上記直線Aと直交する平面に軸部材40及び座金60を投影した図である。この場合とは、例えば、雄ねじ83と雌ねじ34とを締結させて固定装置50を座支持部15に取り付けようとして、雄ねじ83と雌ねじ34の中心軸を同一直線上に位置させた状態や、締結の過程の状態、締結が完了した状態などが該当する。
【0047】
座金60は、直線Aを中心に座金60を回転させると、開口61に軸部材40が収まる状態となり得る。このような位置関係が、上述した所定の位置関係の一例である。
また
図10Bは、
図10Aと同様の場合において、軸部材40とカメ座金70とを上記平面に投影した図である。カメ座金70の開口71には40が収まる。このような位置関係が、上述した所定の位置関係の一例である。
【0048】
説明を
図6Bに戻る。ケース90は、座金60、カメ座金70、及び軸ボルト80のネジ頭81の周囲を囲う形状である。
第1開口部93は、六角溝84に対して挿入される六角レンチ等の工具を挿入可能に構成されており、そのような工具を使用することにより、軸ボルト80の操作が可能となる。また第2開口部97は、雄ねじ83及び軸部材40が通過可能に構成されている。
【0049】
固定装置50は、雄ねじ83が雌ねじ34に締結された状態において、カメ座金70が、ネジ頭81と座金60に圧縮され、その反力によって座体3を座支持部15の方向に押圧する。また円板部98は、座金60と座体3との間に位置し、座体3と接触する接触面となる。
【0050】
[1−5.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)本実施形態の椅子1は、固定装置50を座支持部15に取り付けることによって、座体3が座支持部15から脱落することを抑制できる。ケース90には座金60及びカメ座金70が、軸ボルト80に対して所定の位置関係で配置されているため、それらを同時にかつ容易に取り付けることができる。
【0051】
座金60は、ネジ頭81を回転させて雄ねじ83と雌ねじ34との締結を進めつつ、軸キャップ92とともに回転させることで、軸部材40が挿入可能な位置に容易に合わせることができる。またカメ座金70は、その回転位置にかかわらず、軸部材40を挿入することができる。
【0052】
特に、本実施形態では、軸部材40における座支持部15及び座側固定片19から突出する部分の長さが短いため、突出部分に座金60及びカメ座金70を直接挿入しても脱落しやすく、ケース90による固定を行うことなく座金60及びカメ座金70を適切な位置としたまま軸ボルト80を締結することは困難であるが、固定装置50を用いることで、容易に取り付けを行うことができる。
【0053】
なお固定装置50に含まれる座金60は、ネジ頭81が座体3の回転に伴って回転し、締結が緩んでしまうことを抑制しており、カメ座金70は、座体3の回転に適度な摩擦力を与えることができる。
【0054】
(1b)ケース90には、軸ボルト80を操作するための第1開口部93が形成されているため、工具を用いて容易に軸ボルト80を操作することができる。
(1c)ケース90には、軸ボルト80の軸体82が通過するための第2開口部97が形成されているため、座支持部15への固定装置50の取り付けを容易に実現することができる。
【0055】
(1d)ケース90には、座体3が回転するときに接触する接触面を有しているため、ケース90と座体3との摩擦力で摩擦を行うことができる。本実施形態では90に合成樹脂を用いているため、摩擦力が高くなりすぎたり、摩擦面で破損が生じたりすることを抑制できる。
【0056】
(1e)座金60は、開口61が軸部材40の外形に合わせた形状となっており、軸部材40の外側に嵌められたときに軸部材40に対して回転不能となっている。そのため、座体3の回転に伴って座金60が回転してしまい、軸ボルト80を回転させて締結が緩んでしまうことを抑制できる。
【0057】
なお本実施形態においては、座体3の回転による摩擦力などが座金60に加わらない構成となっているが、ケース90に破損が生じて摩擦力が加わることとなった場合や、そもそもケース90の構成が実施形態と相違し、座金60に摩擦力が加わる構成である場合に有効である。
【0058】
[2.その他の実施形態]
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることはいうまでもない。
【0059】
(2a)上記実施形態では、保持部の一例としてケース90を例示したが、保持部の構成はケース90の形状に限定されず、座金60及びカメ座金70と、軸ボルト80との位置関係を保つことのできる様々な形状とすることができる。
【0060】
例えば、
図11A〜
図11Cに示されるケース110のように、1つの部品からなるものであってもよい。このケース110は、筒状の部材であって、一端には複数の爪111が形成されており、他端には座金60の外形よりも小さい開口112が形成されている。
【0061】
そして一端側から座金60、カメ座金70、軸ボルト80を順に挿入することにより、
図11Cに示されるような固定装置120が完成する。固定装置120は、複数の爪111が、座金60、カメ座金70、軸ボルト80がケース110から脱落してしまうことを抑制する。
【0062】
(2b)上記実施形態では、軸部材40が座支持部15に対して着脱可能である構成を例示したが、軸部材40が座支持部15に対して固定されていてもよい。
例えば、
図12Aに示されるように、回転軸131が支持側連結片13と一体に構成されており、回転軸131の先端に雌ねじ132が形成される構成であってもよい。なお、この場合は、背側連結片11と支持側連結片13は上記実施形態よりも上方にて接続している。この場合では支持側連結片13が支持体に相当する。
【0063】
また、例えば、
図12Bに示されるように、固定装置140は軸ボルト80に代えて雌ねじが形成されたナット141が備えられる構成であってもよい。また、支持側連結片13と一体に構成される回転軸142の内部を通過するように、着脱可能なボルト143が支持側連結片13に備えられる構成であってもよい。つまり支持体である支持側連結片13に備えられる雄ねじは、着脱可能な構成とすることができる。支持体に雌ねじを備える場合も同様である。
【0064】
もちろん、
図12Cに示されるように、上述した固定装置140が、支持側連結片13と一体に構成された回転軸145であって、先端に雄ねじ146が形成されたものに取り付けられる構成であってもよい。
【0065】
(2c)上記実施形態では、椅子1の座体3の支持機構に固定装置50を用いる構成を例示したが、椅子以外において、本発明の固定装置、回転体支持機構を採用してもよい。
(2d)上記実施形態では、座金60及びカメ座金70の両方が用いられる固定装置50を例示したが、いずれか一方のみが用いられる構成であってもよいし、他の部品、特に軸部材40の外側に嵌められる部品が用いられる構成であってもよい。例えば、波バネ、皿バネなどを用いることにより、カメ座金70と同様に、座体3の回転の摩擦力を調整することができる。また、巻きばねを用いて座体3が収納状態となるように付勢することにより、座体3の跳ね上げを行いやすくしたり、自動的に収納状態となるようにしたりすることができる。
【0066】
(2e)上記実施形態では、円板部98が座金60と座体3との間に挟まれており、座体3が回転するときには円板部98の表面を摺動する構成を例示したが、座金60が座体3に接触した状態で座体3が回転する構成であってもよい。また、固定装置50の構成要素以外のものが固定装置50と座体3との間に配置される構成であってもよい。
【0067】
(2f)上記実施形態では、軸部材40の外形と座金60の開口61の外形とを略一致させることで、座金60の軸部材40に対する相対的な回転が抑制される構成を例示したが、相対的な回転を抑制するための形状は実施形態の形状に限定されない。例えば、軸部材40の外周に形成された第1係止部に、開口61を構成する壁面に形成された第2係止部が係止して、相対的な回転が抑制されるように構成されていてもよい。第1係止部及び第2係止部は、突起や溝などの形状とすることができる。なお、実施形態における切り欠き部42及び壁面63は、第1係止部及び第2係止部に該当する。
【0068】
(2g)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。なお、特許請求の範囲に記載した文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。