(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6784386
(24)【登録日】2020年10月27日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】三流体ノズルおよび該三流体ノズルを用いた噴霧方法
(51)【国際特許分類】
B05B 7/08 20060101AFI20201102BHJP
B05B 7/04 20060101ALI20201102BHJP
B05B 7/06 20060101ALI20201102BHJP
B01D 53/50 20060101ALI20201102BHJP
B01D 53/56 20060101ALI20201102BHJP
B01D 53/68 20060101ALI20201102BHJP
F23G 5/00 20060101ALI20201102BHJP
F23G 7/06 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
B05B7/08
B05B7/04
B05B7/06
B01D53/50ZAB
B01D53/56 300
B01D53/68 100
F23G5/00 D
F23G7/06 E
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-145277(P2016-145277)
(22)【出願日】2016年7月25日
(65)【公開番号】特開2018-15680(P2018-15680A)
(43)【公開日】2018年2月1日
【審査請求日】2019年5月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】390002118
【氏名又は名称】株式会社いけうち
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】特許業務法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平松 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】神吉 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】西垣 俊吾
(72)【発明者】
【氏名】中井 志郎
【審査官】
横島 隆裕
(56)【参考文献】
【文献】
特許第4346380(JP,B2)
【文献】
特開2002−159889(JP,A)
【文献】
特開2015−097987(JP,A)
【文献】
特開2013−010089(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00−17/08
B01D 53/34−53/96
F23G 5/00−5/38
F23G 7/06−7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内管、中管、外管を備えた三重管を備え、前記外管と中管との間の環状の外周通路は第一の気体の通路、前記中管と内管との間の環状の中間通路は液体の通路、前記内管で囲む中心通路は第二の気体の通路とし、噴射側に前記外周通路と中間通路との連通路を備え、該連通路より噴射側に気液混合通路を設けると共に該気液混合通路の噴射側端に前記内管を囲む噴口を設け、
前記外周通路と中間通路との連通路は旋回流路とし、
前記内管の先端の噴口から噴射する前記第二の気体を外周に噴射する気液混合ミストと内部混合または外部混合させて噴霧させる構成としている三流体ノズル。
【請求項2】
前記内管の噴射側先端を前記中管および外管の噴射側先端より外部に突出させ、前記内管を囲む環状の前記噴口より噴射する気液混合ミストの中心部分に前記第二の気体を吹き込んで外部混合させる構成としている請求項1に記載の三流体ノズル。
【請求項3】
前記中間通路は旋回部を備え、前記液体を旋回させながら流通させると共に、前記外周通路の前記第一の気体を旋回させながら前記液体に衝突混合させて微細化させる構成としている請求項1または請求項2に記載の三流体ノズル。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の三流体ノズルを用い、前記液体と前記第
一の気体との気液混合ミストで前記第二の気体を囲んだ状態で噴霧する噴霧方法。
【請求項5】
内管、中管、外管を備えた三重管を備え、前記外管と中管との間の環状の外周通路は第一の気体の通路、前記中管と内管との間の環状の中間通路は液体の通路、前記内管で囲む中心通路は第二の気体の通路とし、噴射側に前記外周通路と中間通路との連通路を備え、該連通路より噴射側に気液混合通路を設けると共に該気液混合通路の噴射側端に前記内管を囲む噴口を設け、前記内管の先端の噴口から噴射する前記第二の気体を外周に噴射する気液混合ミストと内部混合または外部混合させて噴霧させる構成としている三流体ノズルを用い、
前記液体と前記第一の気体との気液混合ミストで前記第二の気体を囲んだ状態で噴霧する噴霧方法。
【請求項6】
前記三流体ノズルはゴミ焼却設備等の排気ガス冷却塔内に取り付けられ、
前記外周通路を流通させる第一の気体は圧搾空気、前記中心通路を流通させる第二の気体は還元用ガス、前記中間通路を流通させる液体はガス冷却用の冷却水とし、
前記圧搾空気と冷却水とを内部混合して排気ガス冷却用の気液混合ミストを生成させ、
前記気液混合ミストの環状の噴口の中心を通して前記還元用ガスの噴口を外部に突出させ、該噴口より噴射する還元用ガスを前記気液混合ミストで囲み、排気ガスを前記混合ミストで冷却した後に前記還元用ガスと接触させる請求項4または5に記載の噴霧方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は三流体ノズルおよび該三流体ノズルを用いた噴霧方法に関し、詳しくは、2つの気体流路と1つの液体流路から供給される三流体を混合噴霧する三流体ノズルに関し、特に、石炭焚きボイラーやゴミ焼却設備の排ガス冷却塔において排ガス冷却用および排気ガス中に含まれる大気汚染物質(HCl、SOx、NOx等)の除去のための反応ガスの噴き込みを兼用できるノズルとして好適に用いられるものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴミ焼却設備の排ガス冷却塔内には、冷却液(水)と圧搾空気とを混合噴射する二流体ノズルからなる排気ガス冷却用のノズルが設置されている。また、排気ガス中のNOx等の大気汚染物質を除去するためにアンモニアガス等からなる還元用ガスを噴射する一流体ノズルからなる還元用ガス噴射ノズルが設置され、2種類のノズルが設置されている場合がある。
【0003】
前記排気ガス冷却用の二流体ノズルと還元用ガス噴射用の1流体ノズルとからなる2種類のノズルを設置している場合、通常、まず、2流体ノズルから排気ガス中に冷却用の気液混合ミストを噴射して排気ガスを水冷し、ついで、1流体ノズルからアンモニアガス等からなる還元用ガスを排気ガス中に噴射している。
しかしながら、最初の二流体ノズルからの冷却用ミストの噴射で排気ガスの冷却が十分になされていないと、つづく還元用の一流体ノズルから噴射するアンモニアガスは高温の排気ガスに接触し、排気ガス中のSOxと反応して硫安が生成する問題がある。よって、還元用ガスを高温の排気ガスと直接接触させないように噴き込むことが好ましい。
かつ、排気ガス冷却用の二流体ノズルと還元用ガス噴射用の一流体ノズルの2種類のノズルを設置すると、コスト高になる問題がある。
【0004】
前記した問題に対して、本出願人はゴミ焼却設備の排気ガス冷却塔内に設置するスプレーノズルとして、特許第4346380号公報(特許文献1)で、排気ガスの冷却と排気ガス中の大気汚染成分の除去とを兼ねて、2種類の液体と1種類の気体とを混合噴霧する三流体ノズルを提供している。具体的には、
図6に示すように、該三流体ノズル100は内管101、中管102、外管103からなる3重管からなり、内管101で囲まれた中心流路111、内管101と中管102との間の中間流路112、中管102と外管103との間の外周流路113を備え、前記中心流路111、中間流路112、外周流路113に第1液体、第2液体、気体をそれぞれ挿通し、これら2種類の液体と圧搾空気とを混合して噴霧している。
【0005】
前記三流体ノズルでは、第1液体として排ガス中に含まれる酸性成分(HCl、SOx)を中和する苛性ソーダ等を含む中和剤水溶液、第2液体として第1液体を希釈する排水からなる水を用いている。前記第1液体と第2液体との混合でカルシウム水和物からなるスケールが生成するため外部混合してノズルの目詰まりを防止している。さらに、圧搾空気からなる気体と混合して、水滴の微細化を図って排気ガス中に噴霧し、反応を促進している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4346380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記のように、特許文献1の三流体ノズルでは、第1液体を中和剤の水溶液としているため、中和剤の水溶液を調整してノズルに供給する必要があり、還元用ガスをガスの状態でノズルに供給する場合と比較して作業手数がかかる問題がある。
しかしながら、還元用ガスを噴射する一流体ノズルを用いて、NOxを除去するためにアンモニアガス等の還元用ガスを排気ガス中に直接吹き込むと、前記のように、反応する前に還元用ガスが熱分解したり、SOxと反応して硫安が生成する問題がある。また、還元用ガスの供給圧力が低いと、還元用ガスを排気ガス中に噴き込んだ際に排気ガスの流れに押し流され、還元用ガスが全体に行き届かず反応効率が悪くなる問題がある。
【0008】
本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、第一の気体と第二の気体と液体との三流体を混合噴射するノズルにおいて、第一の気体と液体とを混合して気液混合ミストを生成すると共に、該気液混合ミストで第二の気体を囲み、対象流体である排気ガスと気液混合ミストを接触させた後に第二の気体と接触させて反応させることができる三流体ノズルを提供することを課題としている。
具体的には、例えば、第一の気体の圧搾空気と冷却水からなる液体との冷却用の気液混合ミストを排気ガスに噴射するノズルと第二の気体の還元用ガスを排気ガスに噴射するノズルとを別体とせずに1個のノズルとしながら、排気ガスの冷却機能と、該排気ガスに直接接触させない状態で還元用ガスを吹き込んで効率良く反応させることができる機能を有する三流体ノズルを提供することを課題としている。
さらに、第二の気体の還元用ガスの供給圧が低いと、還元用ガスが排気ガスの流れに押し流され冷却塔内で偏流となり、還元用ガスが全体に行き届かず反応効率が悪くなるという問題を解消することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、第一の発明として、内管、中管、外管を備えた三重管を備え、前記外管と中管との間の環状の外周通路は第一の気体の通路、前記中管と内管との間の環状の中間通路は液体の通路、前記内管で囲む中心通路は第二の気体の通路とし、噴射側に前記外周通路と中間通路との連通路を備え、該連通路より噴射側に気液混合通路を設けると共に該気液混合通路の噴射側端に前記内管を囲む噴口を設け、
前記内管の先端の噴口から噴射する前記第二の気体を外周に噴射する気液混合ミストと内部混合または外部混合させて噴霧させる構成としている三流体ノズルを提供している。
【0010】
前記外部混合では、内管の噴射側先端を前記中管および外管の噴射側先端より外部に突出させ、前記内管を囲む環状の噴口より噴射する気液混合ミストの中心部分に前記第二の気体を吹き込んで外部混合させる構成としていることが好ましい。
【0011】
前記中間通路は旋回部を備え、前記液体を旋回させながら流通させると共に、前記外周通路と中間通路との連通路は旋回流路とし、前記外周通路の前記第一の気体を旋回させながら前記液体に衝突混合させて微細化させる構成としていることが好ましい。
【0012】
前記第一の発明の三流体ノズルは、石炭焚きボイラー設備やゴミ焼却設備の排気ガス冷却塔内に取り付けられ、前記中心通路に供給する前記第二の気体は排気ガス中の大気汚染物質と反応して還元する還元用ガス、前記中間通路に供給する液体は排気ガスの冷却水、前記外周通路に供給する第一の気体は圧搾空気としていることが好ましい。
【0013】
また、第二の発明として、前記第一の発明の三流体ノズルを用い、前記液体と前記第一の気体との気液混合ミストで前記第二の気体を囲んだ状態で噴霧する噴霧方法を提供している。
前記第一の気体と第二の気体とは異なる種類の気体であっても、同種の気体であってもよい。
【0014】
前記三流体ノズルはゴミ焼却設備等の排気ガス冷却塔内に取り付けられ、
前記外周通路を流通させる第一の気体は圧搾空気、前記中心通路を流通させる第二の気体は還元用ガス、前記中間通路を流通させる液体はガス冷却用の冷却水とし、
前記圧搾空気と冷却水とを内部混合して排気ガス冷却用の気液混合ミストを生成させ、 前記気液混合ミストの環状の噴口の中心を通して還元用ガスの噴口を外部に突出させ、該噴口より噴射する還元用ガスを前記気液混合ミストで囲み、排気ガスを前記混合ミストで冷却した後に前記還元用ガスと接触させることが好ましい。
【0015】
前記のように、本発明の三流体ノズルを用い、第一の気体の圧搾空気と冷却水からなる液体を内部混合した排気ガス冷却用の気液混合ミストの中心部に、還元用ガスの第二の気体を噴射して外部混合することにより、高温の排気ガスを気液混合ミストで冷却するとともに、スプレーパターンの中心部の第二の気体の還元用ガスにより排気ガス中の大気汚染物質を還元することができる。かつ、第二の気体の還元用ガスは、第一の気体と液体の気液混合ミストの勢いに乗って、排気ガス中に吹き込まれるため、排気ガスに流されることなく、排気ガス冷却塔の中心まで行き届くため、第二の気体の還元用ガスの供給圧力が低圧でも良く、かつ、化学当量比に抑えることができる。
【0016】
噴霧対象に応じて前記外部混合に代えて、前記気液混合通路の環状の噴口の内部側に前記中心通路の噴口を位置させ、該中心通路の噴口より噴射する第二の気体の外周に気液混合ミストを噴射して内部混合としてもよい。
【0017】
本発明の三流体ノズルを用いて噴霧すると、従来の二流体ノズルと比べて、噴霧パターンは狭角となり、流速・噴霧の勢いが増大する。これは、狭いダクト内で広角の噴霧パターンだと壁面が濡れてしまう場合や、排気ガスの流れが高速で従来の二流体ノズルでは勢い不足の場合などに好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の三流体ノズルによれば、第一の気体と液体との気液混合ミストで第二の気体を囲んだ状態で噴射している。これにより、排気ガス冷却塔に本発明の三流体ノズルを取り付けると、排気ガスに冷却用ミストを噴射するノズルと大気汚染物質を除去する還元用ガスを噴射するノズルとを別体とせずに1個のノズルとしながら、排気ガスを冷却した後に該冷却した排気ガスに還元用ガスを接触させることができる。即ち、高温の排気ガスに直接接触させない状態で還元用ガスを排気ガス中に吹き込んで効率良く反応させることができる。
かつ、第二の気体は第一の気体と液体の気液混合ミストの勢いに乗って噴射されるため、排気ガスに流されることなく、冷却塔の中心から奥へと行き届く。よって、第二の気体の還元用ガスの供給圧力は低圧でも足り、化学当量比に抑えることができる。また、排気ガスが気液混合ミストにより目的の温度まで冷却されるまでは、第二の気体は気液混合ミストで周りを覆われているため、熱分解されずに済む。さらに、排気ガス冷却用と還元用ガス噴き込み用のノズルを1個のノズルで賄えるので、設備コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第一実施形態の三流体ノズルの断面図である。
【
図5】第二実施形態の三流体ノズルの噴射側部分の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至
図4に外部混合型の第1実施形態の三流体ノズルを示す。
該実施形態の三流体ノズル1はゴミ焼却設備の排気ガス冷却塔内に取り付けるノズルであり、排気ガスに冷却ミストを噴霧すると共に、排気ガス中の大気汚染物質を除去するため還元用ガスを冷却ミストと同時に噴霧するノズルである。
【0021】
三流体ノズル1は、内管2、中管3、外管4を同心状に重ねた3重管構造である。外管4と中管3との間の環状通路を第一の気体A1を流通させる外周通路5としている。前記中管3と内管2との間の環状通路を液体Qを流通させる中間通路6としている。前記内管2で囲まれる通路を第二の気体A2を流通させる中心通路7としている。本実施形態では、前記第一の気体A1は圧搾空気(コンプレッサーエア)とし、第二の気体A2はアンモニアガス等からなる還元用ガスとしている。液体Qは排気ガスを冷却する液であり、ゴミ焼却炉あるいは/および溶融炉で発生する排水からなる。
【0022】
図1に示すように、第一の気体A1(以下、圧搾空気A1と称す)は外周通路5と連通させて外管4に設けた流入口5iに配管50を連結させて供給している。排水からなる冷却用液体Q(以下、冷却水Qと称す)は外周通路5の供給側閉鎖部より突出する中間通路6と連通させて外管4に設けた流入口6iに配管51を連結して供給している。還元用ガスからなる第二の気体A2(以下、還元用ガスA2と称す)は中心通路7の供給側端の開口を流入口7iとし、配管52を連結して供給している。
【0023】
外周通路5、中間通路6、中心通路7は供給側(X1)から噴射側(X2)に向けて直線状に延在させている。噴射側端は外管4に設けた噴射側先端壁4aで外周通路5を閉鎖すると共に中管3の噴射側環状端3aに当接させている。前記噴射側先端壁4aの中心に設けた穴4bの中央に内管2の噴射側部2aを隙間をあけて外部に突出させている。前記隙間が圧搾空気A1と冷却水Qとの混合ミストの噴口8となり、外部に突出した内管2の噴射側先端開口が還元用ガスA2の噴口9となる。即ち、噴口8から噴霧する冷却ミストの中央に噴口9から噴霧する還元用ガスA2が噴射されるようにしている。
【0024】
前記噴口8に近接した位置の中管3に、
図3に示すように、外周通路5と中間通路6とを連続させる旋回流路10からなる連通路を設け、外周通路5を流れる圧搾空気A1を旋回させながら中間通路6に流れる冷却水Qに吹き込んでいる。該旋回流路10は、
図2および
図3に示すように、円環状の中管3に流路方向に隣接して2組の旋回流路10A、10Bを設けている。各組の旋回流路10A、10Bはそれぞれ中管3の外周面から内周面にかけて偏芯して直線状に延在させた4つの貫通穴10Aー1〜10Aー4、10B−1〜10B−4からなり、貫通穴10A−1〜10A−4と10B−1〜10B−4とは周方向位置をずらせている。このように、中管3の外周面から内周面にかけて穿設した合計8つの貫通穴を通して外周通路5の圧搾空気A1を中間通路6に旋回させて流入させている。これにより旋回流路10より下流の中間通路6を気液混合通路6hとしている。
【0025】
また、前記圧搾空気A1の旋回流路10より上流の中間通路6に最小断面積の絞り部6bを設けている。さらに、絞り部6bの上流に中間通路6の内周壁となる内管2の外周面2cに円弧状突出部からなるワーラー部2dを設け、該ワーラー部2dを中管3の拡径部3eの内周面に当接させて中間通路6に旋回部6cを設けている。該中間通路6を流入する冷却水Qは旋回部6cで旋回させながら噴射側へと流通させている。
【0026】
このように、中間通路6を旋回しながら流れる冷却水Qに、噴射側の貫通穴10A−1〜10A−4、10B−1〜10B−4を通して圧搾空気A1を外周から流入して衝突混合させ、冷却水Qを微細化して気液混合ミストMを生成している。この気液混合ミストMは気液混合通路6hを旋回しながら噴射側へと流通し、環状の噴口8から噴霧している。
【0027】
内管2の内部の中心通路7には還元用ガスA2を供給しており、内管2は噴射側に向けて流路面積を段階的に減少している。内管2の噴射側部2aは最小断面積として環状の噴口8の中心を通して外部に突出させ、突出端の噴口9より噴射する還元用ガスA2が外周の環状の噴口8より噴射される気液混合ミストMの中心に吹き込まれるようにしている。
【0028】
前記構造とした三流体ノズル1では、
図4に示すように、環状の噴口8から噴霧される気液混合ミストMの中心に還元用ガスA2が噴出され、外部混合状態としている。この状態で中央の還元用ガスA2は外周の気液混合ミストMに囲まれた状態で排気ガス中に噴射される。よって、排気ガスは気液混合ミストMと接触して冷却され、温度が低下した排気ガスに還元用ガスA2が接触することとなる。よって、還元用ガスA2が高温の排気ガスと接触して反応前に熱分解したり、SOxとアンモニアガスとが反応して硫安を生成することを防止できる。
【0029】
前記圧搾空気A1と冷却水Qとの供給圧は略同圧のP1とし、還元用ガスA2の供給圧P2を、P1>P2としている。このように、還元用ガスA2の供給圧を低減しても、外周の気液混合ミストMの勢いに乗せて還元用ガスA2を排気ガス中に吹き込むことができる。その結果、還元用ガスA2を低い圧力で吹き込んでも排気ガスの流れに押されることはなく、冷却塔の全体に還元用ガスを行きわたらせて排気ガス中の大気汚染物質と還元用ガスを反応させることができる。よって、還元用ガスの供給量を化学当量比に抑えることができ、還元用ガスが高価であるためコスト低減が図れる。かつ、還元用ガスを過剰に吹き込むと副生成物が発生し後処理の手数がかかるが、化学当量比としているため副生成物は殆ど発生せず後処理の手数を省くことができる。
特に、排気ガス冷却用のノズルと還元用ガス吹き込み用のノズルを1個のノズルで共用できるため、設備コストを大幅に低減できる。
【0030】
図5に内部混合型の第2実施形態の三流体ノズル1−Bを示す。
該内部混合型の三流体ノズル1−Bは、内管2の噴出側先端の噴口9−Bを外周の気液混合ミストMの噴口8より手前の内部側に位置させている。他の構成は第1実施形態の三流体ノズル1と同様であり、同一部号を付して説明を省略する。かつ、外周通路5に圧搾空気からなる第一の気体A1、中間通路6に排気ガス冷却水からなる液体Q、中心通路7に還元用ガスからなる第二の気体A2を別々の配管から供給している。
【0031】
噴口8の内部中央に噴口9−Bを位置させているため、噴口9−Bから噴射する還元用ガスの第二の気体A2は気液混合ミストMで囲む状態で外部に噴射され、排気ガス中に吹き込まれる。このように、排気ガス冷却用の気液混合ミストMと還元用ガスとを内部混合とすることにより、還元用ガスは冷却水の微粒化用気体としての効果が増大する。したがって、微粒化性能が増大した分だけ、第一の気体の供給量を低減でき、ランニングコストの低減を図ることができる。かつ、同気水比とした場合は、従来の二流体ノズルを用いる場合と比べて微粒化を促進できる。
【0032】
前記第1、第2実施形態の三流体ノズルはゴミ焼却設備の排気ガス冷却塔に取り付け、排気ガス冷却用と大気汚染物質の除去用を兼ねるものであるが、石炭焚きボイラー等の他の用途にも好適に利用できる。他用途に用いる場合、三流体ノズルから噴射する三流体の第一の気体A1、第二の気体A2、および液体Qの種類は変更される。また、第二の気体の必要圧力は第一の気体と同一圧力でなくてもよく低圧でもよく、かつ、第一の気体に混合して使用できない第二の気体も利用できる。例えば、PSA副生成物として窒素ガスが余剰にある設備であれば、第一の気体として圧搾空気(コンプレッサーエアー)、第二の気体として窒素ガスを用い、窒素ガスの分だけ圧搾空気の使用量を削減することができる。
【0033】
また、第一の気体と第二の気体を同じ種類の気体、例えば圧搾空気としてもよい。つまり、三流体ノズルを二流体ノズルとして用いることで、従来の二流体ノズルを用いる場合と比べて、気水比の低減(ランニングコストの低減)を図ることもできる。
また、三流体ノズルでは、従来の二流体ノズルと比べて、噴霧パターンは狭角となり、流速・噴霧の勢いが増大する。これは、狭いダクト内で広角の噴霧パターンだと壁面が濡れてしまう場合や、排気ガスの流れが高速で従来の二流体ノズルでは勢い不足の場合などに好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0034】
1、1−B 三流体ノズル
2 内管
3 中管
4 外管
5 外周通路
6 中間通路
6c 旋回部
7 中心通路
8、9 噴口
10(10A、10B) 旋回流路
50、51、52 配管
A1 第一の気体(圧搾空気)
A2 第二の気体(還元用ガス)
Q 液体(冷却水)