【実施例1】
【0015】
図1は、本発明の実施例1に係る端子圧着電線の製造方法によって製造される端子圧着電線10の分解斜視図である。
図2は、本発明の実施例1に係る端子圧着電線の製造方法によって製造される端子圧着電線10の斜視図である。
図3は、コネクタハウジング100の端子収容室110に圧着端子30が収容された状態の端子圧着電線10を説明するための図である。
本発明の実施例1に係る端子圧着電線の製造方法は、圧着端子30が電線20に圧着された端子圧着電線の製造方法である。
【0016】
まず、端子圧着電線10について説明する。
端子圧着電線10は、電線20の端末部に露出された導体部21に圧着端子30が圧着されることによって電線20の導体部21と圧着端子30とが電気的に接続されるものである。
【0017】
電線20は、導体部21と、導体部21の外周を包囲する絶縁被覆部22と、を有してなる。
導体部21は、アルミニウム、あるいはアルミニウム合金、又は、銅、あるいは銅合金等の導電性の線材からなる複数の素線21aが束ねられてなる。
なお、この実施例1では、導体部21は、複数の素線21aが束ねられてなるものを例示したが、これに限らず、単芯線からなるものであっても構わない。
絶縁被覆部22は、絶縁性の合成樹脂からなり、導体部21の外周を包囲するように形成されることによって、導体部21を外部から絶縁可能に保護するものである。
この電線20の端末部は、絶縁被覆部22が剥されることによって導体部21が露出された状態になっている。この露出した導体部21に圧着端子30の後述する導体圧着部33が圧着されることによって圧着端子30が電線20に電気的に接続されるようになっている。
【0018】
圧着端子30は、先端部33dにテーパ部33cが設けられた一対の圧着片33b、33bを有し、かつ、基材30aに対してメッキが施されることによって表面30dにメッキPが形成されてなる。
この圧着端子30は、銅、あるいは銅合金等からなる基材30aに対して錫メッキ、あるいは、ニッケルによる下地に錫メッキ等のメッキが施された板状金属部材Bがプレス工程や、折り曲げ工程を施されることによって所定形状に成形されたものである。
圧着端子30は、不図示の接続相手に接続する部分となる相手端子接続部31と、電線20の端末部に圧着される圧着部32と、を有してなる。
【0019】
相手端子接続部31は、角筒状をなす接続本体部31aの筒内に設けられた弾性接触片31bに接続相手端子Cが接触されるようになっている(
図3参照)。この相手端子接続部31は、接続相手端子Cとしての雄端子が接続する雌端子を構成している。
また、相手端子接続部31は、接続本体部31aの表面に突設された係止突起31cによってコネクタハウジング100の端子収容室110内に係止されるようになっている。
なお、相手端子接続部31は、雌端子を構成するものを例示したが、これに限らず、接続相手端子Cに接続できる構成になっていれば、その他の端子構成であっても構わない。
【0020】
圧着部32は、電線20の延在方向に間隔をあけた2箇所に設けられている。
1つの圧着部32は、電線20の露出された導体部21に圧着される導体圧着部33であり、もう1つの圧着部32は、電線20の絶縁被覆部22に圧着される被覆圧着部34である。これら導体圧着部33と被覆圧着部34との間は中間部35によって連結されている。
また、導体圧着部33は、繋ぎ部36によって相手端子接続部31に連結されている。
導体圧着部33と、中間部35と、被覆圧着部34とは、電線20の延在方向に沿って底壁33a、34a、35aを連続するようにして互いに連結されている。
【0021】
導体圧着部33は、底壁33aと、底壁33aの両縁に立設された一対の圧着片33b、33bと、を有してなる。
各圧着片33b、33bの先端部33dにはテーパ部33cが設けられ、このテーパ部33cによって各圧着片33b、33bの先端部33dが電線20の導体部21内に入り込み易くなり、導体圧着部33が導体部21に確実に圧着されることによって、電気接続性能が向上されるようになっている。
【0022】
被覆圧着部34は、底壁34aと、底壁34aの両縁に立設された一対の圧着片34b、34bと、を有してなる。
【0023】
このような圧着端子30は、板状金属部材Bにプレス工程、および、折り曲げ工程を施すことによって所定の形状に成形される。
より具体的には、圧着端子30は、上述した一般的なプレス工程として、抜き打ち工程の後、テーパ成形工程が行われる。
このためテーパ成形工程で、治具AによってメッキPが押圧され、メッキPがテーパ部33cの成形とともにテーパ部33cに沿って移動されることによって、テーパ部33cに微細なメッキ条P1がバリとして発生する。
【0024】
圧着端子30は、プレス工程の後に折り曲げ工程が施されることによって、
図1に示すような状態になる。
すなわち、折り曲げ工程が施された圧着端子30は、導体圧着部33および被覆圧着部34がそれぞれの一対の圧着片33b、34bの先端部が開いた略U字状に屈曲された状態になっている。
【0025】
次に、
図4−
図6を用いて、端子圧着電線の製造方法について詳細に説明する。
図4は、プレス・折り曲げ加工機400によって板状金属部材Bにプレス工程、および、折り曲げ工程が施された圧着端子30に対して電流印加工程として電流印加装置200によって電流を印加している様子を示した図である。
図5は、
図4に示した複数の圧着端子30のうち電流が印加されている圧着端子30周辺を拡大して示した図である。
図6は、圧着端子30が電線20に圧着される端子圧着工程の流れを説明するための図である。
なお、
図4に示したプレス・折り曲げ加工機400とは、基材30aに対してメッキPが施された圧着端子30の原材料となる板状金属部材Bに対して上述したプレス工程、および、折り曲げ工程を施す装置である。
【0026】
圧着端子30の原材料となる板状金属部材Bに対してプレス・折り曲げ加工機400によって、プレス工程、および、折り曲げ工程が施された複数の圧着端子30がプレス・折り曲げ加工機から連続的に送り出される(
図4参照)。
ここで複数の圧着端子30は、一端30b側を連結部B1で連結された状態になっている。
より具体的には、複数の圧着端子30は、各圧着端子30に対応した連結部B1が帯状のキャリア部B2に接続され、このキャリア部B2と各連結部B1とによって連結された状態になっている。
複数の圧着端子30は、キャリア部B2がプレス・折り曲げ加工機400からの圧着端子30の送り出し方向に引き出されることによって、プレス・折り曲げ加工機400から連続的に送り出されるようになっている。
【0027】
このようにしてプレス・折り曲げ加工機400から連続的に送り出された各圧着端子30に対して電流印加工程が施される(
図4および
図5参照)。
電流印加工程は、圧着端子30にテーパ部33cを形成した後に、メッキPが溶融する温度以上、かつ、基材30aが溶融する温度未満で圧着端子30に熱が付加されるように圧着端子30の一端30bと他端30cとの間を通電させる電流を印加する工程である。
より具体的には、電流印加工程は、電流印加装置200を用いて、圧着端子30の両端に異なる電極の通電プローブ210、210を接触させることによって、圧着端子30の一端30bと他端30cとの間を通電させ、印加された電流の値に応じた熱を圧着端子30の全体に付加する工程である。
なお、圧着端子に印加される電流値は、メッキおよび基材の種類によって適宜定められる。
このようにして圧着端子30の全体にメッキPが溶融される温度の熱が付加され、テーパ部33cに発生したメッキ条P1が溶融されることによって、メッキ条P1はメッキ条P1周辺のメッキPと同程度のなだらかな表面状態になって消失される。
この電流印加工程は、キャリア部B2と各連結部B1とによって連結された状態でプレス・折り曲げ加工機から連続的に送り出される各圧着端子30に対して連続的に施される。
【0028】
互いに連結された複数の圧着端子30の各圧着端子30に対して電流印加工程が施された後、不図示のリール巻機によって帯状のキャリア部B2がリール状に巻き取られる。
【0029】
キャリア部B2をリール状に巻き取られた複数の圧着端子30は、端子圧着装置300の不図示の投入機にセットされ、端子圧着装置300によって端子圧着工程が施されることによって各圧着端子30が電線20に圧着される(
図6参照)。
なお、端子圧着装置300は、圧着端子30を電線20に対して所定形状で圧着するため互いに対向配置された一対の加締め冶具であるアンビル310とクリンパ320とを有してなり、不図示の駆動機構によってクリンパ320がアンビル310に対して離接可能に駆動されるようになっている。
この端子圧着工程は、まず、プレス工程から折り曲げ工程までの一連の処理が完了された圧着端子30の圧着部32が、折り曲げ側の面に電線20がセットされた状態でアンビル310の端子載置面310aに載置される(
図6(a)参照)。
ここで圧着端子30は、導体圧着部33の一対の圧着片33b、33bの先端部33dがクリンパ320の開口320bに向けられた状態になっている。
なお、被覆圧着部34については、導体圧着部33とは電線20に圧着される部分が異なるものの、アンビル310およびクリンパ320によって導体圧着部33と同様に変形されるためその説明を省略する。
次に、クリンパ320がアンビル310に向けて下降開始される(
図6(b)参照)。
ここで導体圧着部33の一対の圧着片33b、33bの先端部33dがクリンパ320の屈曲誘導面320aに摺接されながら屈曲開始される。
さらにクリンパ320がアンビル310に向けて下降完了位置まで下降されると、圧着端子30の電線20への圧着が完了される(
図6(c)参照)。
なお、端子圧着装置300は、アンビル310およびクリンパ320によって圧着端子30を電線20に圧着する際、連結部B1を分断することによって圧着端子30をキャリア部B2から離脱するようになっている。
【0030】
本発明の実施例1に係る端子圧着電線の製造方法は、圧着端子30にテーパ部33cを形成した後に、電流印加工程によって、メッキPが溶融する温度以上、かつ、基材30aが溶融する温度未満で圧着端子30に熱が付加されるように圧着端子30の一端30bと他端30cとの間を通電させる電流を印加するため、圧着端子30の全体にメッキPが溶融される温度の熱が付加され、テーパ部33cに発生したメッキ条P1が溶融されることによって、メッキ条P1は該メッキ条P1周辺のメッキPと同程度のなだらかな表面状態になって消失されるので、電線20に圧着される圧着端子30のメッキPが剥がれることによって電気接続の信頼性が低下することを防ぐことができる。
【0031】
また、本発明の実施例1に係る端子圧着電線の製造方法は、基材30aに対してメッキPが施された圧着端子30の原材料となる板状金属部材Bがテーパ部33cの成形を含むプレス工程、および、プレス工程の後に、電線20に圧着される前の圧着端子30の形に折り曲げ工程が施され、かつ、複数の圧着端子30が一端30bを連結部で連結された状態で各圧着端子30に一端30bと他端30cとの間を通電させる電流を印加するようにしているので、複数の圧着端子30の各圧着端子30に対して連続的に電流印加工程を施し易く、結果的に、電流印加工程の自動化を容易に行うことができる。
【実施例2】
【0032】
次に、
図7を用いて本発明の実施例2に係る端子圧着電線の製造方法について説明する。
図7は、本発明の実施例2に係る端子圧着電線の製造方法に関し、電線20に圧着完了された状態の圧着端子30に対して電流印加工程を施す様子を示した図である。
本発明の実施例1に係る端子圧着電線の製造方法は、圧着端子30が電線20に圧着される前に電流印加工程が施される方法を例示したが、本発明の実施例2に係る端子圧着電線の製造方法は、電線20に圧着された状態の圧着端子30に対して電流印加工程が施される点で実施例1と異なる。
なお、その他の構成は実施例1と同様であり、実施例1と同一構成部分には同一符号を付している。
【0033】
この実施例2の端子圧着電線の製造方法は、電線20に圧着された状態の圧着端子30に、メッキPが溶融する温度以上、かつ、基材30aが溶融する温度未満で熱が付加されるように圧着端子30の一端30bと他端30cとの間を通電させる電流を印加するようにしている。
具体的には、
図7に示すように、電線20に圧着された状態の圧着端子30の両端に異なる電極の通電プローブ210、210を接触させることによって、圧着端子30の一端30bと他端30cとの間を通電させ、印加された電流の値に応じた熱が圧着端子30の全体に付加されるようにしている。
このようにして圧着端子30に熱が付加されることによって、メッキPが溶融され、結果的に、テーパ部33cに発生したメッキ条P1が溶融されることによって、メッキ条P1周辺のメッキと同程度のなだらかな表面状態になって消失する。
【0034】
本発明の実施例2に係る端子圧着電線の製造方法は、実施例1の端子圧着電線の製造方法と同様に、圧着端子30にテーパ部33cを形成した後に、電流印加工程によって、メッキPが溶融する温度以上、かつ、基材30aが溶融する温度未満で圧着端子30に熱が付加されるように圧着端子30の一端30bと他端30cとの間を通電させる電流を印加するため、圧着端子30の全体にメッキPが溶融される温度の熱が付加され、テーパ部33cに発生したメッキ条P1が溶融されることによって、メッキ条P1はメッキ条P1周辺のメッキPと同程度のなだらかな表面状態になって消失されるので、電線20に圧着される圧着端子30のメッキPが剥がれることによって電気接続の信頼性が低下することを防ぐことができる。
【0035】
以上、本発明者によってなされた発明を、上述した発明の実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、上述した発明の実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。